JP3823864B2 - 画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および記録媒体 - Google Patents
画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および記録媒体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真フィルム等に照射された画像を電化結合素子(CCD:Charge Coupled Device)等の画像読取装置によりRGBの3色の色信号として変換した画像情報を、感光材料に再生するための画像情報として処理する画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および記録媒体に関する。特に、入力画像の露光状態が低輝度部または高輝度部に集中しているか否かに関わらず、入力画像を良好な出力画像に処理することができる画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、写真フィルム等に照射された画像は、以下に説明するような手順を経ることにより感光材料により再生されていた。
【0003】
先ず、図9に示すように、ステップ101にて、写真フィルムへの画像照射が行われる(以下、各ステップを単にSと記載する)。次に、CCD等の画像読取装置により、フィルム上に照射された画像の情報を取得し、RGBの3色のアナログ信号として変換する(S102)。
【0004】
更に、上記S102にて変換された3色のアナログ信号を、アナログ/デジタル(A/D)変換装置によりA/D変換する(S103)。その後、後述する露光特性曲線を用いて、S103で得られたデジタル値を出力デジタル値として変換する(S104)。
【0005】
S104の後、S103で得られたデジタル値を用いて、後述する濃度特性曲線を用いて、濃度補正処理(ガンマ補正)が行われ(S105)、再生画像の濃淡が決定される。
S105により濃度補正処理が行われた出力画像情報に基づいて、プリンタ等の画像出力装置を用いて、感光材料等の上に画像が再生される(S106)。
【0006】
上記S101〜S106を経ることにより、写真フィルム等に照射された画像を感光材料等に再生することができる。
【0007】
次に、上記S104における露光特性曲線を用いて、入力されたデジタル値から出力デジタル値を得る手順についてより具体的に説明する。
【0008】
すなわち、写真フィルムがネガフィルムである場合、CCDのアナログ出力値をS103においてA/D変換したデジタル値をxとし、対数変換値をyとすると、xとyとの関係は以下の式(10)のようになる。
【0009】
y=65535-65535×log(x)/log(4095)…式(10)
一方、写真フィルムがポジフィルムである場合、上記xとyとの関係は以下の式(11)のようになる。
【0010】
y=65535×xn/(4095)n(nはべき乗数)…式(11)
なお、上記式(10)において、xは、たとえば12ビットのデジタルデータであれば、0〜4095の値を取り得る。さらに、xは、CCDのアナログ出力値をA/D変換したのみの値であることから、ネガフィルム上に記録された入力画像の露光量(入力画像データの輝度情報)を表していると考えてよい。
【0011】
すなわち、xが取り得る値の範囲を低輝度部、中間輝度部、高輝度部の3つの区間に分けた場合、xが低輝度部としての0付近の値に集中していれば、ネガフィルム上に記録された入力画像の濃度は全体的に濃く、オーバー露光状態である。一方、xが高輝度部としての4095付近の値に集中している場合、ネガフィルム上に記録された入力画像の濃度は全体的に淡く、アンダー露光状態である。
【0012】
また、yは、たとえば16ビットのデジタルデータであれば、0〜65535の値を取り得る。また、上記式(10)における入力値xと出力値yとの関係を、図10に示す。
【0013】
次に、上記式(10)により求められたyを入力値とし、S105において、たとえば図11(a)に示すような濃度特性曲線を用いて濃度補正処理を行うことにより、人間の目に自然な階調として見えるような濃度に補正された出力値を得ることができる。
【0014】
なお、濃度特性曲線とは、図11(a)に示すように、入力値が増加するに従って出力値を単調増加させる曲線であって、入力値が0あるいは65535に近づくにつれて傾斜が緩やかとなる曲線である。また、濃度特性曲線においては、出力値が0に近づくほど、濃度が濃く(黒く)なり、出力値が65535に近づくほど、濃度が淡く(白く)なる。
【0015】
ところで、上記濃度特性曲線を用いる濃度補正処理においては、入力画像の露光が適正に行われている場合(以下、このような露光状態を適正露光という)、濃度特性曲線への入力値が0〜65535の範囲において均等に分布する。したがって、濃度補正処理後の出力値も0〜65535の範囲において均等に分布し、良好な濃度分布の出力画像を得ることができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィルム上の画像における露光がオーバー/アンダー露光である等の理由により、入力画像データの輝度情報が高輝度部あるいは低輝度部に偏る場合には、出力画像が軟調となってしまうという問題が生じる。その理由について、ネガフィルム上のアナログ画像をデジタル画像として再生する場合を例に挙げて以下に説明する。なお、軟調な画像とは、濃度の濃い部分と淡い部分との濃度格差が小さい画像をいう。
【0017】
先ず、ネガフィルム上の画像における露光がアンダー露光である場合は、露光特性曲線への入力値は65535付近の値に集中する。したがって、図10から明らかなように、露光特性曲線を用いる対数変換後の出力値、すなわち濃度特性曲線への入力値は、0付近の値に集中する。したがって、図11(a)に示すような適正露光時の濃度特性曲線をそのまま用いて濃度補正処理をしたのでは、適切な濃度分布の出力画像を得ることができない。
【0018】
そこで、通常、アンダー露光である場合には、図11(a)に示すような適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のマイナス方向に平行移動させた曲線である、図11(b)に示すような濃度特性曲線を用いて濃度補正処理を行う。これにより、0付近に集中した入力値に対して濃度補正処理を行うことができる。
【0019】
しかしながら、図11(b)に示すような濃度特性曲線を用いる濃度補正処理において、出力値の最小値は、0よりも大きな値である同図中Aで示す値となる。したがって、適正露光時には出力値として0〜65535の範囲の値を取り得たが、アンダー露光時における濃度補正処理後の出力値は、それよりも狭い範囲であるA〜65535の範囲の値しか取り得ない。したがって、上記したように出力画像の濃度が軟調になってしまうという問題が生じるのである。
【0020】
一方、ネガフィルム上の画像における露光がオーバー露光である場合については、露光特性曲線への入力値は0付近の値に集中する。したがって、図10から明らかなように、露光特性曲線を用いる対数変換後の出力値、すなわち濃度特性曲線への入力値は、65535付近の値に集中する。したがって、図11(a)に示すような適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のプラス方向に移動させた曲線である、図11(c)に示すような濃度特性曲線を用いた濃度補正処理が行われている。
【0021】
しかしながら、図11(c)に示すような濃度特性曲線を用いる濃度補正処理において、出力値の最大値は、65535よりも小さな値である同図中Bで示すような値となる。
したがって、オーバー露光時における濃度補正処理後の出力値は、0〜Bの範囲の値しか取り得ない。それゆえ、オーバー露光時においても、アンダー露光時と同様、出力画像の濃度が軟調になってしまうという問題が生じるのである。
【0022】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、入力画像データの輝度情報が偏った場合であっても、豊富な階調の出力画像を得ることができる画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および記録媒体を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像処理装置は、上記課題を解決するために、入力画像データの輝度情報を入力軸とし、出力画像データの濃度情報を出力軸とした場合、単調増加な曲線にて表される濃度特性曲線を用いて、入力画像データの輝度情報を変換することにより出力画像データを得る画像処理装置において、入力画像データの輝度情報が取り得る値の範囲を低輝度部、中間輝度部、高輝度部の3つの区間に分けた場合、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が、低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する輝度情報判断手段と、上記濃度特性曲線を2つの部分に分割するための分割位置を上記濃度特性曲線の入力軸上に設定し、以下の(条件1)または(条件2)に従って、上記濃度特性曲線の傾斜率を決定する傾斜率決定手段とを備えていることを特徴としている。
【0024】
(条件1)上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が小さい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が大きい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
【0025】
(条件2)上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が大きい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が小さい部分の上記濃度特性曲線 の形状は維持する。
【0026】
また、本発明の画像処理方法は、上記課題を解決するために、入力画像データの輝度情報を入力軸とし、出力画像データの濃度情報を出力軸とした場合、単調増加な曲線にて表される濃度特性曲線を用いて、入力画像データの輝度情報を変換することにより出力画像データを得る画像処理方法において、入力画像データの輝度情報が取り得る値の範囲を低輝度部、中間輝度部、高輝度部の3つの区間に分けた場合、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が、低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する第1のステップと、上記濃度特性曲線を2つの部分に分割するための分割位置を上記濃度特性曲線の入力軸上に設定し、以下の(条件1)または(条件2)に従って、上記濃度特性曲線の傾斜率を決定する第2のステップとを備えていることを特徴としている。
【0027】
(条件1)上記第1のステップにより入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が小さい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が大きい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
【0028】
(条件2)上記第1のステップにより入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が大きい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が小さい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
【0029】
本発明の画像処理装置または画像処理方法は、入力画像データの輝度情報を入力軸とし、出力画像データの濃度情報を出力軸とした場合、単調増加な曲線にて表される濃度特性曲線を用いて、入力画像データの輝度情報を変換する。
【0030】
しかしながら、入力画像データの輝度情報が狭い範囲に偏っていると、出力画像データの濃度も狭い値の範囲でしか出力されず、出力画像が軟調になってしまう場合がある。
【0031】
そこで、本発明の画像処理装置では、特に、入力画像データの輝度情報の分布に基づき、上記濃度特性曲線の傾斜を大きくする傾斜率決定手段を備えていることを特徴としている。
【0032】
また、本発明の画像処理方法では、特に、入力画像データの輝度情報の分布に基づき、上記濃度特性曲線の傾斜を大きくする第2のステップを備えていることを特徴としている。
【0033】
すなわち、本発明では、入力画像データの輝度情報の分布に基づいて、傾斜率決定手段あるいは第2のステップにより濃度特性曲線の傾斜を大きくすることができる。ここで、濃度特性曲線は単調増加な曲線にて表されることから、傾斜を大きくすれば、傾斜を大きくする前よりも、同じ入力値の範囲に対する出力値の範囲を広くすることができる。
【0034】
これにより、出力画像の濃度が軟調になってしまうということを防止し、豊富な階調の出力画像を得ることができる。
【0035】
また、上記構成によれば、輝度情報判断手段あるいは第1のステップにより、入力画像データの輝度情報が上記3つの区間のいずれに集中しているのかを判断し、入力画像データの輝度情報の分布を判断する。入力画像データの輝度情報が3つの区間のうち、いずれに集中しているかは、入力画像データの輝度情報についてのヒストグラムを作成する等により、簡易に判断することができる。なお、入力画像データの輝度情報がある区間に集中している状態とは、その区間に輝度情報が属する画素の数が、他の区間に輝度情報が属する画素の数よりも多い状態を指している。
【0036】
したがって、入力画像データの輝度情報の分布を簡易な処理にて把握することができる。これにより、より簡易な処理で出力画像の濃度が軟調になってしまうということを防止し、豊富な階調の出力画像を得ることができる。
【0037】
さらに、上記構成によれば、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する。
【0038】
たとえば、入力画像データの輝度情報が16ビットのデータであるならば、入力画像データの輝度情報が65535×0〜65535×1/3の範囲にある画素数が全画素数の80%以上である場合、入力画像データの輝度情報は高輝度部に集中していると判断する。なお、このような場合、入力画像データがフィルム上に焼き付けられた写真をCCDにより読み取ったデータであるならば、フィルム上の画像はオーバー露光状態である。
【0039】
ここで、入力画像データの輝度情報は、CCD等の撮像系からの出力値を用いることにより、簡易な処理で算出することができる。また、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合も、簡易な処理にて算出することができる。
【0040】
これにより、簡易な処理で入力画像の露光状態を判断することができる。
【0041】
ところで、入力画像データの輝度情報が低輝度部あるいは高輝度部に集中している場合、濃度特性曲線への入力値は狭い範囲に偏ってしまう。このように狭い範囲の入力値に対して、傾斜率決定手段あるいは第1のステップにより濃度特性曲線全体の傾斜を大きくすると、傾斜を大きくする前後において出力画像の濃度が全体的に変化する。したがって、出力画像の印象が全く変わってしまい、好ましくない場合がある。
【0042】
そこで、本発明の画像処理装置は、特に、傾斜率決定手段が、上記濃度特性曲線を2つの部分に分割するための分割位置を上記濃度特性曲線の入力軸上に設定するとともに、上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が小さい部分の傾斜を大きくする一方、上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が大きい部分の傾斜を大きくする。
【0043】
すなわち、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中している場合は、分割位置よりも入力値が小さい部分の濃度特性曲線の傾斜を大きく調整すれば、出力画像における濃度が濃い部分(低輝度部分)の階調を豊富に表現することができる。一方で、分割位置よりも入力値が大きな部分の濃度特性曲線の傾斜は調整しないので、出力画像において濃度が淡い部分(高輝度部分)から得られる印象は変化しない。
【0044】
一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中している場合は、分割位置よりも入力値が大きな部分の濃度特性曲線の傾斜を大きく調整すれば、出力画像における濃度が淡い部分(高輝度部分)の階調を豊富に表現することができる。一方で、分割位置よりも入力値が小さな部分の濃度特性曲線の傾斜は調整しないので、出力画像において濃度が濃い部分から得られる印象は変化しない。
【0045】
したがって、傾斜率決定手段あるいは第1のステップによる調整前後において、出力画像から得られる印象を維持しつつ、豊富な階調の出力画像を得ることができる。
【0046】
また、本発明の画像処理装置は、上記課題を解決するために、上記構成の画像処理装置において、上記濃度特性曲線における入力軸をx軸、出力軸をy軸、入力値が0からMAX1までの範囲の値をとり、出力値が0からMAX2までの範囲の値を取り得るとした場合、上記傾斜率決定手段は、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定する一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1、MAX2)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定することを特徴としている。
【0047】
また、本発明の画像処理方法は、上記課題を解決するために、上記構成の画像処理方法において、上記濃度特性曲線における入力軸をx軸、出力軸をy軸、入力値が0からMAX1までの範囲の値をとり、出力値が0からMAX2までの範囲の値を取り得るとした場合、上記第1のステップは、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定する一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1、MAX2)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定するステップであることを特徴としている。
【0048】
上記構成によれば、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように濃度特性曲線が調整される。したがって、出力画像の濃度として0、すなわち完全な黒色を再生することが可能となる。
【0049】
また、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1,MAX2)を通るように濃度特性曲線が調整される。したがって、出力画像の濃度としてMAX2、すなわち完全な白色を再生することが可能となる。
【0050】
これにより、完全な黒色または白色が表現され、さらに鮮明な階調の出力画像を得ることができる。
【0051】
また、本発明のプログラムは、上記課題を解決するために、上記いずれかの構成の画像処理方法における各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムであることを特徴としている。
【0052】
上記のプログラムによれば、本発明の画像処理方法をコンピュータに実行させるので、入力画像データの輝度情報が偏った場合であっても、豊富な階調の出力画像を得ることができるという効果を奏する。
【0053】
また、本発明の記録媒体は、上記課題を解決するために、上記構成のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であることを特徴としている。
【0054】
上記の記録媒体によれば、入力画像データの輝度情報が偏った場合であっても、豊富な階調の出力画像を得る画像処理方法を実行するプログラムを、コンピュータに供給することが容易となるという効果を奏する。
【0055】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0056】
図1に示すように、本実施形態に係るデジタル露光システムは、フィルムスキャナ1と、A/D変換部2と、画像処理部(画像処理装置)3と、画像再生部4とを備えている。
【0057】
フィルムスキャナ1は、たとえばネガフィルム上に照射された画像をCCD等の画像読取装置を用いて読み取るとともに、該画像に応じた画像データをRGBの3色のアナログ色信号としてA/D変換部2に出力する。A/D変換部2は、フィルムスキャナ1から出力されたアナログ色信号をデジタル信号としてA/D変換する。
【0058】
画像処理部3は、A/D変換部2から入力されるデジタル色信号に対して、入力画像の露光状態に対応する濃度補正処理を行い、後段の画像再生部4に出力するものである。画像処理部3の具体的な構成、および入力画像の露光状態に対応する濃度補正処理を行う手順については後述する。
【0059】
画像再生部4は、画像処理部3からの画像データに基づいて感光材料である印画紙を露光することにより、印画紙上に画像を焼き付けるデジタルプリンタである。印画紙に露光する露光部としては、デジタル画像データに応じて印画紙への照射光を変調できるものであればよい。たとえば、PLZT露光ヘッド、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)、LCD(液晶表示装置)、LEDパネル、レーザー、FOCRT(Fiber Optic Canthode Ray Tube)、CRT等を露光ヘッドとして用いることができる。
【0060】
なお、画像再生部4は、ネガフィルムのスキャニングと印画紙の露光とを両方行うことができる構成であってもよい。この場合、デジタル露光システムを画像処理部3と画像再生部4とで構成することにより、フィルムスキャナ1を省略することができるので、システムの簡素化を図ることができる。
【0061】
次に、画像処理部3の構成について具体的に説明する。
【0062】
図1に示すように、画像処理部3は、対数変換部5と、露光状態判断部(輝度情報判断手段、傾斜率決定手段)6と、濃度補正処理部7とを備えている。
【0063】
対数変換部5は、A/D変換部2からのデジタル値を対数変換するものである。対数変換の具体的な方法については、従来技術の欄において説明したS104(図9)における手順と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
露光状態判断部6は、露光特性曲線(図10参照)の出力値に基づき、RGB各色の信号について平均値と、最大値と、最小値とを算出するとともに、該出力値に基づくヒストグラムを作成するものである。
【0065】
さらに、露光状態判断部6は、平均値、最大値、および最小値のうち少なくとも1つ、あるいは上記ヒストグラムに基づいて、画像処理部3への入力画像の露光状態を判断し、その露光状態に基づき、後段の濃度補正処理部7における濃度補正処理に用いる濃度特性曲線の形状を調整する。露光状態判断部6が露光状態を判断する手順、および濃度特性曲線の形状を調整する手順については後述する。
【0066】
濃度補正処理部7は、露光状態判断部6により調整された濃度特性曲線を用いて、濃度補正処理を行うものである。
【0067】
上記構成により、画像処理部3は、露光状態判断部6により判断された露光状態により調整された濃度特性曲線を用いて、濃度補正処理部7において濃度補正処理を行う。
【0068】
次に、露光状態判断部6が露光状態を判断するとともに、濃度特性曲線を調整する手順についてより具体的に説明する。なお、以下の説明では、フィルムスキャナ1がネガフィルム上の画像を読み取る場合について説明する。
【0069】
図2に示すように、露光状態判断部6は、先ず、RGB各色の色信号について、露光特性曲線(図10参照)を用いる対数変換の出力値の、平均値と、最大値と、最小値とを算出する(S1)。さらに、露光状態判断部6は、露光特性曲線を用いる対数変換の出力値のヒストグラムを、RGB各色について作成する(S2)。
【0070】
上記S1およびS2を踏むことにより、露光状態判断部6は、入力画像の露光状態を判断する。その詳細については後述する。
【0071】
その後、露光状態判断部6は、S1において算出された平均値と、最大値と、最小値とに基づいて求められる傾斜調整係数α(詳細は後述する)に基づき、濃度特性曲線の傾斜を調整する(S3)。次に、S2において作成された濃度値のヒストグラムに基づいて求められる領域分割位置Pと、圧縮係数β(詳細は後述する)とに基づいて濃度特性曲線を調整する(S4)。
【0072】
上記S3およびS4を踏むことにより、露光状態判断部6は、入力画像の露光状態に適した濃度補正処理を行うことができるように濃度特性曲線の調整を行う。その詳細は後述する。
【0073】
以上のように、S1〜S4を踏むことにより、露光状態判断部6は、画像処理部3への入力画像の露光状態を判断するとともに、判断された露光状態に適した濃度補正処理を濃度補正処理部7において行うことができるように濃度特性曲線の形状を変化させる。
【0074】
次に、上記S1およびS2において、露光状態判断部6が入力画像の露光状態を判断する手順についてより詳細に説明する。
【0075】
先ず、S2で作成されたヒストグラムにおいて、対数変換後の出力値が0〜65535×1/3の部分を低輝度部、65535×1/3〜65535×2/3の部分を中輝度部、65535×2/3×65535×1の部分を高輝度部とする。そして、たとえば、図3(a)に示すように、露光特性曲線による対数変換後の出力値について65535×2/3〜65535×3/3の範囲(高輝度部)である画素数が全画素数の80%以上である場合、濃度特性曲線による濃度補正処理への入力値は65535付近の値に集中すると考えられる。
【0076】
すなわち、このような場合は、ネガフィルムにおける画像の露光状態がオーバー露光であると判断する。なお、65535×2/3〜65535×3/3の範囲にある画素数が全画素数の何割以上ある場合にオーバー露光と判断するかは、任意の割合を設定することにより判断することができる。
【0077】
さらに、同図に示すように、上記S2において作成されたヒストグラムの形状として、最大値である65535付近に対数変換後の出力値の分布が偏る形状であるほど、露光状態判断部6は、ネガフィルムにおける画像がよりオーバー気味の露光状態であると判断する。あるいは、対数変換後の出力値の平均値が65535に近い値であるほど、ネガフィルムにおける画像がよりオーバー気味の露光状態であると判断するようにしてもよい。
【0078】
一方、図3(b)に示すように、上記S2で作成されたヒストグラムにおいて、露光特性曲線による対数変換後の出力値について65535×0〜65535×1/3の範囲(低輝度部)にある画素数が全画素数の80%以上である場合、濃度特性曲線による濃度補正処理への入力値は0付近の値に集中すると考えられる。すなわち、このような場合は、ネガフィルムにおける画像の露光状態がアンダー露光状態であると露光状態判断部6により判断される。さらに、同図に示すように、最小値の0付近に上記S2で作成されるヒストグラムの分布が偏るほど、ネガフィルムにおける画像はよりアンダー気味の露光状態であると露光状態判断部6により判断される。対数変換後の出力値の平均値が0に近い値であるほど、アンダー気味の露光状態であると露光状態判断部6が判断するようにしてもよい。
【0079】
以上のように、S2において作成されたヒストグラムに基づいて、画像処理部3への入力画像の露光状態を判断する。
【0080】
次に、上記S3およびS4において、露光状態に適した濃度補正処理を行うことができるように濃度特性曲線を調整する手順について説明する。
【0081】
先ず、上記S3における、S1において求められた濃度値の平均値等から、傾斜調整係数αを算出する手順について具体的に説明する。
【0082】
S3においては、露光特性曲線を用いる対数変換における出力値の平均値をave、最大値をmax、最小値をminとした場合、以下の式(1)、式(2)に基づき、αmaxおよびαminを算出する。
【0083】
αmin=Amin×(ave-min)/(Gmid−Gmin) …式(1)
αmax=Amax×(max-ave)/(Gmax−Gmid) …式(2)
なお、上記式(1)および式(2)におけるAmin、Amaxは、任意の値とすることができる。また、上記式(1)および式(2)におけるGmaxは、濃度特性曲線における入力値の軸をx軸、出力値の軸をy軸とした場合における、y=65535となる濃度特性曲線上の点のx座標である。一方、Gminは、y=0となる濃度特性曲線上の点のx座標である。また、Gmidは、GmaxとGmidとの平均値である。
【0084】
たとえば、図4(a)に示すように、露光状態判断部6によりアンダー露光と判定され、適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のマイナス方向に平行移動させた曲線を濃度特性曲線として用いる場合、Gminは、マイナスの値をとる。一方、図5(a)に示すように、オーバー露光と判定され、適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のプラス方向に平行移動させた曲線を濃度特性曲線として用いる場合は、Gmaxは、65535よりも大きな値となる。
【0085】
次に、上記式(1)、式(2)により算出されたαminとαmaxとを比較し、αminとαmaxとのうち小さな方をαとする。もし、このように決定されたαが1よりも大きな値である場合は、α=1としてαを決定する。
【0086】
上記のように決定された傾斜調整係数αを用いて、濃度特性曲線の形状を変化させる。具体的には、調整前の濃度特性曲線の傾きを1/α倍し、濃度特性曲線の傾斜を急なものとする。なお、傾斜調整係数αを用いて濃度特性曲線の形状を変化させる際には、調整前の濃度特性曲線上において任意の基準点を定めておき、調整後の濃度特性曲線がその基準点を通るようにする。
【0087】
たとえば、図4(a)に示したような濃度特性曲線は、傾斜調整係数αを用いて調整を行うことにより、図4(b)に示すように、調整前の濃度特性曲線よりも傾斜が急である濃度特性曲線となる。なお、図4(b)に示すように、傾斜調整係数αを用いた調整を行った後の濃度特性曲線上の点で、y=65535となる点のx座標をGmax’とし、y=0となるx座標をGmin’とする。
【0088】
一方、図5(a)に示したような濃度特性曲線は、傾斜調整係数αを用いて調整を行うことにより、図5(b)に示すように、調整前の濃度特性曲線よりも傾斜が急である濃度特性曲線となる。
【0089】
なお、上記Gmin’が0よりも小さな値である場合は、Gminも0よりも小さな値であるといえる。すなわち、このような場合は、適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のマイナス方向に平行移動させた曲線を濃度特性曲線として用いる場合であって、ネガフィルム上における画像がアンダー露光状態と判定された場合であるといえる。
【0090】
一方、上記Gmax’が65535よりも大きな値である場合は、Gmaxも65535よりも大きな値であるといえる。すなわち、このような場合は、適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のプラス方向に平行移動させた曲線を濃度特性曲線として用いる場合であって、ネガフィルム上における画像がオーバー露光状態と判定された場合であるといえる。
【0091】
次に、上記S4における領域分割位置Pと、圧縮係数βとを求める手順について説明する。
【0092】
上記Gmin’が0よりも小さな値である場合、すなわち、アンダー露光である場合には、以下の式(3)および式(4)に基づいて、領域分割位置Pおよび圧縮係数βが算出される。
【0093】
P=Bmin×(0+Gmax’)/2 …式(3)
β=Cmin×(P−0)/(P−Gmin’) …式(4)
なお、上記式(3)・式(4)において、Bmin・Cminは、それぞれ任意の値に設定することができる。
【0094】
そして、濃度特性曲線における入力値がGmin’からPまでの部分(傾斜調整係数αにより調整後のもの)を、1/β倍に圧縮する。たとえば、傾斜調整係数αにより調整した後の濃度特性曲線が図4(b)に示したようなものであれば、領域分割位置Pおよび圧縮係数βにより調整することにより、濃度特性曲線は図4(c)に示すように、入力値P以下の部分の傾斜が圧縮前よりも急な形状となる。なお、濃度特性曲線において圧縮した部分と圧縮しない部分とが入力値Pにおいて連続するよう、濃度特性曲線上の入力値Pに対する出力値は固定したままで、Gmin’からPまでの部分を圧縮する。
【0095】
一方、Gmax’が65535よりも大きな値である場合、すなわち、オーバー露光である場合には、以下の式(5)および式(6)に基づいて、領域分割位置Pおよび圧縮係数βが算出される。
【0096】
P=Bmax×(Gmin’+65535)/2 …式(5)
β=Cmax×(65535−P)/(Gmax’−P) …式(6)
なお、上記式(5)および式(6)において、Bmax、Cmaxは任意の値とすることができる。
【0097】
そして、濃度特性曲線における入力値がPからGmax’までの部分(傾斜調整係数αにより調整後のもの)を、1/β倍に圧縮する。たとえば、傾斜調整係数αにより調整した後の濃度特性曲線が図5(b)に示したようなものであれば、領域分割位置Pおよび圧縮係数βにより調整することにより、濃度特性曲線は図5(c)に示すように、入力値P以上の部分の傾斜が圧縮前よりも急な形状となる。なお、濃度特性曲線において圧縮した部分と圧縮しない部分とが入力値Pにおいて連続するよう、濃度特性曲線上の入力値Pに対する出力値は固定したままで、PからGmax’までの部分を圧縮する。
【0098】
以上に説明したように、露光状態判断部6は、傾斜調整係数α、領域分割位置P、および圧縮係数βを算出することにより、ネガフィルム上の画像がアンダー露光状態である場合には図4(c)に示すように、調整前よりも傾斜が急となるように濃度特性曲線の形状を変化させる。一方、ネガフィルム上の画像がオーバー露光状態である場合には、図5(c)に示すように、調整前よりも傾斜が急となるように濃度特性曲線の形状を変化させる。
【0099】
ここで、図4(c)に示すように、S3およびS4における調整後の濃度特性曲線において入力値が0であるときの出力値A’は、S3およびS4における調整前の濃度特性曲線において入力値が0であるときの出力値Aよりも小さいものとなっている。一方、図5(c)に示すように、S3およびS4の調整後の濃度特性曲線において入力値が65535であるときの出力値B’は、S3およびS4における調整前の濃度特性曲線において入力値が65535であるときの出力値Bよりも大きいものとなっている。
【0100】
すなわち、アンダー露光時において、S3およびS4における調整後の濃度特性曲線を濃度補正処理に用いると、濃度補正処理後の出力値は、調整前において取り得た範囲であるA〜65535よりも広いA’〜65535の範囲の値をとることが可能である。したがって、出力画像の濃度が軟調になってしまうということを防止し、豊富な階調の出力画像を得ることができる。
【0101】
一方、オーバー露光時においても、S3およびS4における調整後の濃度特性曲線を濃度補正処理に用いると、濃度補正処理後の出力値は、調整前において取り得た範囲である0〜Bよりも広い0〜B’の範囲の値をとることが可能であり、豊富な階調の出力画像を得ることができる。
【0102】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図6ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、上記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、実施の形態1で述べた各種の特徴点については、本実施の形態についても組み合わせて適用し得るものとする。
【0103】
本実施の形態に係るデジタル露光システムは、実施の形態1のデジタル露光システムと同様、図1に示すように、フィルムスキャナ1と、A/D変換部2と、画像処理部3と、画像再生部4とを備えている。さらに、画像処理部3は、対数変換部5と、露光状態判断部6と、濃度補正処理部7とを備えている。
【0104】
本実施の形態に係るデジタル露光システムが実施の形態1のデジタル露光システムと異なる点は、露光状態判断部6が、実施の形態1において説明したような傾斜調整係数α等により濃度特性曲線を調整しない点である。すなわち、本実施の形態における露光状態判断部6は、以下に説明する手順により濃度特性曲線の形状を調整する。
【0105】
図6に示すように、露光状態判断部6は、濃度特性曲線の入力値の軸をx軸、出力値の軸をy軸とした場合における、y=65535となる濃度特性曲線上の点のx座標であるMAXを算出する(S11)。
【0106】
その後、S12にて、MAX>65535であるか否かを判定し、S12にて「YES」である場合、すなわちMAX>65535である場合、濃度特性曲線の形状を調整する(S13)。S13における濃度特性曲線の形状の調整に関しては後述する。
【0107】
一方、S12にて「NO」である場合には、y=0となる濃度特性曲線上の点のx座標であるMINを算出する(S14)。その後、S15にて、MIN<0であるか否かを判定する。
【0108】
S15にて「YES」である場合、すなわちMIN<0である場合、濃度特性曲線の形状を調整する(S16)。S16における濃度特性曲線の形状の調整に関しては後述する。なお、S15にて「NO」である場合、濃度特性曲線の調整は行わない。
【0109】
上記したように、露光状態判断部6は、(1)MAX>65535である場合、および(2)MIN<0である場合に、濃度特性曲線の形状を調整する。以下、(1)および(2)のそれぞれの場合について行われる濃度特性曲線の調整手順について具体的に説明する。
【0110】
(1)MAX>65535である場合
MAX>65535である場合は、図7(a)に示すように、適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のプラス方向に平行移動させた曲線を濃度特性曲線として用いる場合である。
すなわち、MAX>65535である場合は、オーバー露光状態といえる。
【0111】
この場合、露光状態判断部6は、以下の式(7)により、領域分割位置Qを算出する。
【0112】
Q=Dmax×(MIN+65535)/2 …式(7)
なお、上記式(7)において、Dmaxは任意の値とすることができる。
【0113】
次に、図7(b)に示すように、濃度特性曲線上においてx座標がQとなる点と、(65535,65535)とを結ぶ曲線を、入力値がQから65535までの間における濃度特性曲線として設定する。なお、入力値がMINからQまでにおける濃度特性曲線の形状は変化させない。以上のようにして、S13における濃度特性曲線の調整が行われる
(2)MIN<0である場合
MIN<0である場合は、図8(a)に示すように、適正露光時の濃度特性曲線を入力軸のマイナス方向に平行移動させた曲線を濃度特性曲線として用いる場合である。すなわち、MIN<0である場合は、アンダー露光状態といえる。
【0114】
この場合、露光状態判断部6は、以下の式(8)により、領域分割位置Qを算出する。
【0115】
Q=Dmin×(0+MAX)/2 …式(8)
なお、上記式(8)において、Dminは任意の値とすることができる。
【0116】
次に、図8(b)に示すように、濃度特性曲線上においてx座標がQとなる点と、(0,0)とを結ぶ曲線を、入力値が0からQまでの間における濃度特性曲線として設定する。なお、入力値がQからMAXまでにおける濃度特性曲線の形状は変化させない。以上のようにして、S15における濃度特性曲線の調整が行われる。
【0117】
上記(1)および(2)について説明したような手順に従って、濃度特性曲線の形状を調整することにより、出力値が取り得る値の範囲は、アンダー露光であるか、オーバー露光であるか否かに関わらず、0〜65535の範囲となる。これにより、豊富な出力階調の出力画像を得ることができる。
【0118】
なお、本実施の形態においては、S12の判断の前に、S15の判断を行ってもよい。
この場合、MINが0よりも小さくない場合に、MAXを算出し、MAXが65535よりも大きければS13と同様の手順により濃度特性曲線の調整を行う。
【0119】
なお、上記した各実施形態の説明においては、画像処理部3への入力画像データが、ネガフィルム上に記録された画像をCCD等の撮像系により読み取ったデータである場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0120】
すなわち、画像処理部3への入力画像データは、デジタルカメラ等により撮影されたデータであってもよい。この場合、上記した各実施形態の説明における「入力画像がアンダー露光である場合」とは、デジタルカメラにより撮影されたデータの輝度情報が低輝度部に集中している場合に相当する。一方、「入力画像がオーバー露光である場合」とは、デジタルカメラにより撮影されたデータの輝度情報が高輝度部に集中している場合に相当する。
【0121】
また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0122】
【発明の効果】
本発明の画像処理装置は、以上のように、入力画像データの輝度情報が取り得る値の範囲を低輝度部、中間輝度部、高輝度部の3つの区間に分けた場合、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が、低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する輝度情報判断手段と、上記濃度特性曲線を2つの部分に分割するための分割位置を上記濃度特性曲線の入力軸上に設定し、以下の(条件1)または(条件2)に従って、上記濃度特性曲線の傾斜率を決定する傾斜率決定手段とを備えているものである。
【0123】
(条件1)上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が小さい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が大きい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
【0124】
(条件2)上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が大きい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が小さい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
【0125】
また、本発明の画像処理方法は、以上のように、入力画像データの輝度情報が取り得る値の範囲を低輝度部、中間輝度部、高輝度部の3つの区間に分けた場合、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が、低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する第1のステップと、上記濃度特性曲線を2つの部分に分割するための分割位置を上記濃度特性曲線の入力軸上に設定し、以下の(条件1)または(条件2)に従って、上記濃度特性曲線の傾斜率を決定する第2のステップとを備えている方法である。
【0126】
(条件1)上記第1のステップにより入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が小さい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が大きい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
【0127】
(条件2)上記第1のステップにより入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が大きい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が小さい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
【0128】
すなわち、本発明では、入力画像データの輝度情報の分布に基づいて、傾斜率決定手段あるいは第2のステップにより濃度特性曲線の傾斜を大きくすることができる。ここで、濃度特性曲線は単調増加な曲線にて表されることから、傾斜を大きくすれば、傾斜を大きくする前よりも、同じ入力値の範囲に対する出力値の範囲を広くすることができる。
【0129】
これにより、出力画像の濃度が軟調になってしまうということを防止し、豊富な階調の出力画像を得ることができるという効果を奏する。
【0130】
また、上記構成によれば、入力画像データの輝度情報の分布を簡易な処理にて把握することができる。これにより、より簡易な処理で出力画像の濃度が軟調になってしまうということを防止し、豊富な階調の出力画像を得ることができるという効果を奏する。
【0131】
さらに、上記構成によれば、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する。
【0132】
ここで、入力画像データの輝度情報は、CCD等の撮像系からの出力値を用いることにより、簡易な処理で算出することができる。また、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合も、簡易な処理にて算出することができる。
【0133】
これにより、より簡易な処理で入力画像の露光状態を判断することができるという効果を奏する。
【0134】
また、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中している場合は、分割位置よりも入力値が小さい部分の濃度特性曲線の傾斜を大きく調整すれば、出力画像における濃度が濃い部分の階調を豊富に表現することができる。一方で、分割位置よりも入力値が大きな部分の濃度特性曲線の傾斜は調整しないので、出力画像において濃度が淡い部分から得られる印象は変化しない。
【0135】
一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中している場合は、分割位置よりも入力値が大きな部分の濃度特性曲線の傾斜を大きく調整すれば、出力画像における濃度が淡い部分の階調を豊富に表現することができる。一方で、分割位置よりも入力値が小さな部分の濃度特性曲線の傾斜は調整しないので、出力画像において濃度が濃い部分から得られる印象は変化しない。
【0136】
したがって、傾斜率決定手段あるいは第1のステップによる調整前後において、出力画像から得られる印象を維持しつつ、豊富な階調の出力画像を得ることができるという効果を奏する。
【0137】
また、本発明の画像処理装置は、以上のように、上記構成の画像処理装置において、上記濃度特性曲線における入力軸をx軸、出力軸をy軸、入力値が0からMAX1までの範囲の値をとり、出力値が0からMAX2までの範囲の値を取り得るとした場合、上記傾斜率決定手段は、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定する一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1、MAX2)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定するものである。
【0138】
また、本発明の画像処理方法は、以上のように、上記構成の画像処理方法において、上記濃度特性曲線における入力軸をx軸、出力軸をy軸、入力値が0からMAX1までの範囲の値をとり、出力値が0からMAX2までの範囲の値を取り得るとした場合、上記第1のステップは、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定する一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1、MAX2)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定するステップである方法である。
【0139】
上記構成によれば、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように濃度特性曲線が調整される。したがって、出力画像の濃度として0、すなわち完全な黒色を再生することが可能となる。
【0140】
また、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1,MAX2)を通るように濃度特性曲線が調整される。したがって、出力画像の濃度としてMAX2、すなわち完全な白色を再生することが可能となる。
【0141】
これにより、完全な黒色または白色が表現され、さらに鮮明な階調の出力画像を得ることができるという効果を奏する。
【0142】
また、本発明のプログラムは、以上のように、上記いずれかの構成の画像処理方法における各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0143】
上記のプログラムによれば、本発明の画像処理方法をコンピュータに実行させるので、入力画像データの輝度情報が偏った場合であっても、豊富な階調の出力画像を得ることができるという効果を奏する。
【0144】
また、本発明の記録媒体は、以上のように、上記構成のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0145】
上記の記録媒体によれば、入力画像データの輝度情報が偏った場合であっても、豊富な階調の出力画像を得る画像処理方法を実行するプログラムを、コンピュータに供給することが容易となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る画像処理装置および該画像処理装置を含むデジタル露光システムの構成を示すブロック図である。
【図2】 図1の画像処理装置が濃度特性曲線を調整する手順を示すフローチャートである。
【図3】 (a)は、入力画像がオーバー露光の場合に、図1の画像処理装置が露光特性曲線からの出力値に基づいて作成するヒストグラムであり、(b)は、入力画像がアンダー露光の場合に、図1の画像処理装置が露光特性曲線からの出力値に基づいて作成するヒストグラムである。
【図4】 (a)は、傾斜調整係数αによる調整前の濃度特性曲線を示すグラフであり、(b)は、傾斜調整係数αによる調整後の濃度特性曲線を示すグラフであり、(c)は、領域分割位置Pおよび圧縮係数βによる調整後の濃度特性曲線を示すグラフである。
【図5】 (a)は、傾斜調整係数αによる調整前の濃度特性曲線を示すグラフであり、(b)は、傾斜調整係数αによる調整後の濃度特性曲線を示すグラフであり、(c)は、領域分割位置Pおよび圧縮係数βによる調整後の濃度特性曲線を示すグラフである。
【図6】 本発明の他の実施形態に係る画像処理装置が濃度特性曲線を調整する手順を示すフローチャートである。
【図7】 (a)は、図6のフローチャートにしたがった調整が行われる前の濃度特性曲線を示すグラフであって、(b)は、図6のフローチャートにしたがった調整が行われた後の濃度特性曲線を示すグラフである。
【図8】 (a)は、図6のフローチャートにしたがった調整が行われる前の濃度特性曲線を示すグラフであって、(b)は、図6のフローチャートにしたがった調整が行われた後の濃度特性曲線を示すグラフである。
【図9】 従来の画像処理装置を含むデジタル露光システムが行う画像処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】 入力画像の露光量とその対数変換値との関係を示す露光特性曲線のグラフである。
【図11】 (a)は、適正露光時の濃度特性曲線を表すグラフであり、(b)は、アンダー露光時の濃度特性曲線を表すグラフであり、(c)は、オーバー露光時の濃度特性曲線を表すグラフである。
【符号の説明】
1 フィルムスキャナ
2 A/D変換部
3 画像処理部(画像処理装置)
4 画像再生部
5 対数変換部
6 露光状態判断部(輝度情報判断手段、傾斜率決定手段)
7 濃度補正処理部
Claims (6)
- 入力画像データの輝度情報を入力軸とし、出力画像データの濃度情報を出力軸とした場合、単調増加な曲線にて表される濃度特性曲線を用いて、入力画像データの輝度情報を変換することにより出力画像データを得る画像処理装置において、
入力画像データの輝度情報が取り得る値の範囲を低輝度部、中間輝度部、高輝度部の3つの区間に分けた場合、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が、低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する輝度情報判断手段と、
上記濃度特性曲線を2つの部分に分割するための分割位置を上記濃度特性曲線の入力軸上に設定し、以下の(条件1)または(条件2)に従って、上記濃度特性曲線の傾斜率を決定する傾斜率決定手段とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
(条件1)上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が小さい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が大きい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
(条件2)上記輝度情報判断手段により入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が大きい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が小さい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。 - 上記濃度特性曲線における入力軸をx軸、出力軸をy軸、入力値が0からMAX1までの範囲の値をとり、出力値が0からMAX2までの範囲の値を取り得るとした場合、
上記傾斜率決定手段は、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定する一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1、MAX2)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。 - 入力画像データの輝度情報を入力軸とし、出力画像データの濃度情報を出力軸とした場合、単調増加な曲線にて表される濃度特性曲線を用いて、入力画像データの輝度情報を変換することにより出力画像データを得る画像処理方法において、
入力画像データの輝度情報が取り得る値の範囲を低輝度部、中間輝度部、高輝度部の3つの区間に分けた場合、入力画像データの輝度情報が予め設定された範囲内である画素数の、入力画像データ中における全画素数に対する割合に基づき、入力画像データの輝度情報が、低輝度部、中間輝度部、高輝度部のいずれに集中しているのか判断する第1のステップと、
上記濃度特性曲線を2つの部分に分割するための分割位置を上記濃度特性曲線の入力軸上に設定し、以下の(条件1)または(条件2)に従って、上記濃度特性曲線の傾斜率を決定する第2のステップとを備えていることを特徴とする画像処理方法。
(条件1)上記第1のステップにより入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が小さい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が大きい部分の上記濃度特性曲線の形状は維持する。
(条件2)上記第1のステップにより入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、上記濃度特性曲線において上記分割位置よりも入力値が大きい部分の傾斜を大きくし、上記分割位置よりも入力値が小さい部分の上記濃度特性曲線の 形状は維持する。 - 上記濃度特性曲線における入力軸をx軸、出力軸をy軸、入力値が0からMAX1までの範囲の値をとり、出力値が0からMAX2までの範囲の値を取り得るとした場合、
上記第1のステップは、入力画像データの輝度情報が低輝度部に集中していると判断された場合には、座標(0,0)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定する一方、入力画像データの輝度情報が高輝度部に集中していると判断された場合には、座標(MAX1、MAX2)を通るように上記濃度特性曲線の傾斜を決定するステップであることを特徴とする請求項3に記載の画像処理方法。 - 請求項3または4のいずれか1項に記載の画像処理方法における各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
- 請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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