JP3822510B2 - (チオ)エーテルの製造方法および(チオ)アセタールの製造方法 - Google Patents

(チオ)エーテルの製造方法および(チオ)アセタールの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、(チオ)エーテルの製造方法と(チオ)アセタールの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、水性媒体中において高効率でエーテル、チオエーテル、そしてアセタールやチオアセタールを脱水反応により合成することのできる新しい方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
従来より、アルコールの脱水縮合によるエーテルの合成法や、カルボニル化合物とアルコール化合物との脱水縮合によるアセタールの合成方法が知られている。
【0003】
しかしながら、これら従来の方法においては触媒等を用いて有機溶媒中での反応であって、反応後の有機溶媒の回収や処分については環境に与える負荷が大きいという問題があり、反応の基質による制約や反応効率の点からも実用的には改善すべき課題があった。
【0004】
また、医薬品、農薬等の生理活性物質の合成において重要であって、しかもエーテル、アセタールと類似の構造をもつチオエーテルやチオアセタールについてはその合成が必ずしも容易でなく、チオールとハロゲン化物との反応によるチオエーテルの合成のようにハロゲン化物を経由することが必要であって、ハロゲンの処理等について環境への負荷や反応操作上の効率等の点で問題が残されていた。
【0005】
そこで、この出願の発明は、上記のとおりの従来の問題点を解消し、有機溶媒やハロゲン化物等による環境への負荷の問題が軽減され、しかも、チオエーテル、チオアセタールの場合にも、エーテルやアセタールと同様に簡便に、かつ高効率で合成することを可能とする新しい技術手段を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、同一または別異のアルコール化合物を、水、あるいは水と親和性のある有機溶媒との混合溶液である、水性媒体中において界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸の存在下に反応させることを特徴とするエーテルの製造方法を提供し、第2には、チオール化合物とアルコール化合物とを、水、あるいは水と親和性のある有機溶媒との混合溶液である、水性媒体中において界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸の存在下に反応させることを特徴とするチオエーテルの製造方法を提供し、第3には、上記第1または第2の方法において、界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸がアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とするエーテルまたはチオエーテルの製造方法を提供する。
【0007】
また、この出願の発明は、第4には、カルボニル化合物をアルコール化合物またはチオール化合物と、水、あるいは水と親和性のある有機溶媒との混合溶液である、水性媒体中において界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸の存在下に反応させることを特徴とするアセタールまたはチオアセタールの製造方法を、第5には、この方法において、界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸がアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とするアセタールまたはチオアセタールの製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0009】
まずこの出願の発明のエーテルもしくはチオエーテルの製造方法においては、次式
【0010】
【化1】
Figure 0003822510
【0011】
のいずれかの反応式に従って、エーテルもしくはチオエーテルを脱水反応によって合成する。この場合のアルコール化合物やチオール化合物を示すR1OH,R1SH、R2OHの符号R1およびR2については、同一または別異のものであってよく、各々、置換基を有していてもよい炭化水素である。この場合の炭化水素基としては、脂肪族または脂環式の飽和もしくは不飽和の炭化水素、あるいは芳香族や複素環式の炭化水素のうちの各種のものであってよい。また、これらは、脱水反応を阻害しないものであれば、各種の置換基を有していてもよく、たとえば、炭化水素基としてのアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基をはじめ、アルコキシ基、チオエーテル基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルバメート基等の各種のものが例示される。
【0012】
原料としての反応成分R1OHまたはR1SHとR2OHとの使用割合については特に限定的でなく、通常は、当量比として、0.1:1〜1:0.1程度の割合とすることができる。
【0013】
そしてこの出願の発明においては、同様に脱水反応によって、カルボニル化合物とアルコール化合物もしくはチオール化合物とからアセタールを合成する方法が提供される。
【0014】
この場合のカルボニル化合物はアルデヒド化合物またはケトン化合物のいずれでもよく、脂肪族、脂環式、芳香族あるいは複素環式の炭化水素基をもつ各種の、また、脱水反応を阻害しない各種の置換基を有していてもよいものである。ケトン化合物の場合には、カルボニル基を形成する炭素原子が環構成原子であってもよい。アルコール化合物およびチオール化合物は上記の各種のものであってよく、多価アルコール化合物、多価チオール化合物であってもよい。
【0015】
この脱水反応においても、原料反応成分としてのカルボニル化合物とアルコール化合物もしくはチオール化合物の使用割合は、限定的ではないが、通常は当量比として0.1:1〜1:0.1程度とすることができる。
【0016】
以上のとおりの脱水反応によるエーテル、チオエーテル、アセタール、そしてチオアセタールの合成において、この出願の発明では、いずれの場合も共通して水性媒体中において反応を行うことを特徴としている。
【0017】
水性媒体としては、水、あるいは水と親和性のある有機溶媒との混合であってよい。水のみでも円滑に反応が進行するという優れた特徴を有している。
【0018】
また、この出願の発明では、水性媒体中での脱水反応において、界面活性剤型のルイス(Lewis) 酸またはブロンステッド(Bronsted)酸を存在させ、触媒もしくは反応促進剤としていることを特徴としている。
【0019】
このようなこの出願の発明の触媒または反応促進剤としては、好適にはアニオン界面活性剤型のブロンステッド酸としての、一般式としてRSO3H、RSO4H、RCOOH(Rは、アルキル基,アルキルアリール基またはアリールアルキル基を示す)で表わされるものが例示される。この場合のアルキルとしては長鎖のものがより好ましい。
【0020】
なお、この出願の発明における上記の「界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸」との規定については、たとえば、水に溶けて水の表面張力を低下させる作用を有する界面活性剤の必須の構成部分を成し、ルイス酸、またはブロンステッド酸として考慮されるものであることを意味している。
【0021】
この出願の発明の脱水反応においての上記の触媒または反応促進剤の使用割合は、その種類も考慮して、特に限定的ではないが、反応基質としてのアルコール化合物(R1OH)やチオール化合物(R1 SH)、そしてカルボニル化合物に対して、0.2モル%〜20モル%程度を実際的な目安とすることができる。
【0022】
また、いずれの反応についても、反応温度、圧力等の各条件について特に限定はなく、たとえば反応温度では、5℃〜100℃程度の範囲を考慮することができる。
【0023】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【0024】
【実施例】
<実施例1>
脱水反応による各種のエーテルの合成を、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)(10mol%)の存在下に、水中において行った。
【0025】
その結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
Figure 0003822510
【0027】
表1に示されているように、たとえば、エントリー1の場合には、30℃の反応温度、7時間の反応で、収率90%の反応成績で、エントリー2および3では、80℃の反応で、91%および89%の収率で、高効率でのエーテル合成が実現されている。
<実施例2>
実施例1と同様にDBSA(10mol%)の存在下に、水中において各種のチオエーテルの合成を行った。
【0028】
その結果を表2に示した。高い収率で、高効率にチオエーテルが合成されることが確認された。
【0029】
【表2】
Figure 0003822510
【0030】
<実施例3>
実施例2において、DBSAに代えて、アルキルベンゼンスルホン酸のアルキル基の炭素数を8および10にしたものを用いて、エントリー2の反応を行った。
【0031】
その結果、各々、収率87%および90%で、対応するチオエーテルが合成されることが確認された。
<実施例4>
DBSA(10mol%)の存在下において、水中での反応で、ジチオアセタールを合成した。
【0032】
その結果を表3に示した。
【0033】
【表3】
Figure 0003822510
【0034】
優れた収率でジチオアセタールが合成されることが確認された。
<実施例5>
実施例4のエントリー4の反応を、DBSA(1mol%)の条件で行った。その結果、次に示したように96%の反応収率を得た。なお、濾別とその後の水洗という簡便な手段で生成物は回収される。
【0035】
【化2】
Figure 0003822510
【0036】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、有機溶媒やハロゲン化物等による環境への負荷の問題が軽減され、しかも、チオエーテル、チオアセタールの場合にも、エーテルやアセタールと同様に簡便に、かつ高効率で合成することが可能とされる。

Claims (5)

  1. 同一または別異のアルコール化合物を、水、あるいは水と親和性のある有機溶媒との混合溶液である、水性媒体中において界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸の存在下に反応させることを特徴とするエーテルの製造方法。
  2. チオール化合物とアルコール化合物とを、水、あるいは水と親和性のある有機溶媒との混合溶液である、水性媒体中において界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸の存在下に反応させることを特徴とするチオエーテルの製造方法。
  3. 請求項1または2の方法において、界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸がアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とするエーテルまたはチオエーテルの製造方法。
  4. カルボニル化合物をアルコール化合物またはチオール化合物と、水、あるいは水と親和性のある有機溶媒との混合溶液である、水性媒体中において界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸の存在下に反応させることを特徴とするアセタールまたはチオアセタールの製造方法。
  5. 請求項4の方法において、界面活性剤型のルイス酸またはブロンステッド酸がアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とするアセタールまたはチオアセタールの製造方法。
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