JP3820296B2 - シャッタ装置およびこれを備えたカメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、往復運動する幕構成部材の動作端に配置されたストッパに幕構成部材の端面が衝突したときの衝撃を吸収する衝撃緩衝機構を有したシャッタ装置に関し、さらに詳しくは、フォーカルプレンシャッタのように高速で走行するためにストッパとの衝突時に大きな衝撃が発生し、且つ必要な耐久保証回数の多い幕構成部材の衝撃を吸収するのに最適なブレードタイプのシャッタ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブレードタイプのシャッタ装置は、基端部がシャッタ地板等の固定部分に枢着されて回動可能なアーム部材(例えば、駆動アームと補助アームの2本から構成される部材)と、このアーム部材の先端部に枢着保持された薄板状の遮光ブレードとから構成される先幕および後幕構成部材を有し、アーム部材の回動に伴って先幕ブレードおよび後幕ブレードにより形成されたスリットを走らせることにより、所定のシャッター動作が行われる構成になっている。
【0003】
このようなシャッタ装置において、各幕構成部材、特に後幕構成部材の走行終了時にアーム部材に急激な制動停止を駆けると、これに枢着されているブレード自体の持つ慣性力によりブレードの枢着部に過大な力が加わる。このため、駆動アーム、補助アームおよびブレード等の走行終了位置に、これらと衝突した際に弾性変形して衝撃を和らげる緩衝部材(弾性部材)を設けることが多い。
【0004】
例えば、実公平7−40980号公報にて提案されているシャッタ装置では、アーム用緩衝部材を設け、このアーム用緩衝部材を回転可能にして弾性変形部を均等に使用できるようにしている。また、実公平4−8410号公報にて提案されているシャッタ装置では、アームとブレードの両方にそれぞれ当接する緩衝部材を設け、アームをアーム用緩衝部材に当接させた後に、ブレードをブレード用緩衝部材に当接させるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のシャッタ装置では、緩衝部材にアームやブーレドが衝突した際に衝突力が作用する方向に、緩衝部材の剛体(シャッタ地板等)による支持部や剛体への突当て部が設けられていたため、スペース的に緩衝部材について十分な厚さを確保することが難しく、十分な緩衝効果が得られないことが多かった。
【0006】
しかも、衝突時には、緩衝部材におけるこれら支持部や突当て部と衝突面とに挟まれた部分には局所的に多大な応力が作用することとなり、弾性変形が許容できないときには繰り返し応力によって緩衝部材に亀裂が生ずるおそれがあった。
そこで、本願発明は、幕構成部材の衝突の際の衝突力を分散させて受け止め、小さくても(薄くても)十分な緩衝効果が得られる弾性部材を備えたシャッタ装置およびこれを備えたカメラを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本願発明では、遮光用の幕構成部材と、この幕構成部材の動作端に設けられて幕構成部材に当接する弾性部材とを有したシャッター装置において、弾性部材の剛体による支持部又は剛体への突当て部を、この弾性部材における幕構成部材との当接面に垂直な方向から外して設けている。
【0008】
すなわち、本願発明では、衝突した幕構成部材から弾性部材が受ける衝突力を弾性部材の剛体(シャッタ地板等)による支持部や剛体への突当て部がある方向以外の方向に分散作用させて、弾性部材が小さくても十分な緩衝効果が得られるようにするとともに、弾性部材における支持部や突当て部と当接面とに挟まれた部分に多大な応力が集中的に作用するのを防止している。
【0009】
また、本願発明では、回動可能なアーム部材とこのアーム部材に取り付けられた遮光ブレードとを有して構成される幕構成部材を備えたシャッタ装置において、幕構成部材の動作端において幕構成部材と当接し、幕構成部材との当接位置に応じて異なる弾性力を備えた弾性部材を有することを特徴とする。ここで、弾性部材が幕構成部材におけるアーム部材と当接する構成において、弾性部材のうちアーム部材の回動中心からの距離が遠い部分ほど、小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きくなるようにしている。
【0010】
すなわち、幕構成部材における弾性部材に対する衝突エネルギーは、アーム部材の回動中心から離れるほど大きくなるので、回動中心から離れた位置ほど弾性変形し易くして、衝突エネルギーを効果的に吸収できるようにしている。
【0011】
具体的には、距離が遠い部分に、開口や切り欠きを形成して弾性変形し易くすればよい。
【0012】
但し、遮光ブレードに当接する弾性部材については、遮光ブレードのアーム部材への取付部からの距離が近い部分ほど、小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きいものとして、薄板状の遮光ブレードを衝突初期に柔らかく受け止めるとともに、衝突後期までの間に確実に全衝突エネルギーを吸収することができるようにするのが望ましい。なお、この場合、弾性部材の当接面と当接時(衝突時)の遮光ブレードの動作方向とのなす角度を30〜150度の範囲で設定するのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は、カメラに用いられるシャッタ装置のシャッタ羽根の走行系と駆動系の一部とを抜粋して示した分解斜視図で、シャッタ走行前の状態を示している。1はシャッタ地板、2はカバー板で、支柱100,101,102,103によりシャッタ地板1との間に一定間隔を保つよう取付けられている。
【0014】
40は先幕駆動レバーである。4は先幕駆動アーム、5は先幕補助アームで、先幕側のスリットを形成するブレード81と遮光の為のブレード82〜85とからなる先幕ブレードをピン41〜45,51〜55で枢着する。先幕駆動アーム4および先幕補助アーム5は、シャッタ地板1にカシメや一体成形等により一体的に設けられた軸104,105によって枢着されている。先幕駆動アーム4は、軸104のスラスト方向に先幕駆動アーム4の板厚の3倍以下のガタを許容された状態で軸スラスト方向での位置を規制されている。
【0015】
60は後幕駆動レバーである。6は後幕駆動アーム、7は後幕補助アームで、後幕側のスリットを形成するブレード91と遮光の為のブレード92〜94とからなる後幕ブレードを、ピン61〜64,71〜74で枢着する。後幕駆動アーム6および後幕補助アーム7は、シャッタ地板1にカシメや一体成形等により一体的に設けられた軸106,107によって枢着されている。
【0016】
なお、軸104,106はそれぞれ、先幕駆動レバー40,後幕駆動レバー60の枢着軸と同軸上に設けられている。
【0017】
後幕駆動アーム6は、軸106のスラスト方向に後幕駆動アーム6の板厚の3倍以下のガタを許容された状態でスラスト方向での位置を規制されている。
【0018】
また、後幕補助アーム7には、後幕補助アーム7の回転中心側にカム形状部を有した長孔7aが形成されている。
【0019】
3は仕切板で、シャッタ地板1とカバー板2との間に支柱100〜103の段部又はワッシャ16〜19等の規制手段によってシャッタ地板1とカバー板2に対して傾けて取り付けられ、先幕ブレード群と後幕ブレード群の走行スペースを分離している。仕切板3は、少なくともシャッタスリット形成羽根のたわみ剛性以上のたわみ剛性を有する薄板、例えばシャッタスリット形成羽根がプラスチックを素材とするものであればアルミ・鉄等の薄板で構成されている。
【0020】
以上のように構成された先幕駆動レバー40、先幕駆動アーム4、先幕補助アーム5及び先幕ブレード81〜85が先幕構成部材であり、一方、後駆動レバー60、後幕駆動アーム6、後幕補助アーム7及び後幕ブレード91〜94が後幕構成部材である。
【0021】
図2,図5,図8,図11はそれぞれ、シャッタ走行前、シャッタ走行中盤、シャッタ走行終盤、シャッタ走行終了時のシャッタ羽根の走行系を図1の上方から見たようすを示している。なお、各図においてシャッタ地板1は省略されている。また、図3,図6,図9,図12はそれぞれ、図2,図5,図8,図11のシャッタ羽根走行系を左側から見た側面図である。なお、これらの図では、駆動アームと補助アームの枢着部を重点的に抜粋し、シャッタ地板1を加え、シャッタ地板1の板厚方向を拡大して表現している。
【0022】
さらに、図4,図7,図10,図13はそれぞれ、図2,図5,図8,図11のシャッタ羽根走行系を左側から見た部分側面図で、ブレード走行部を重点的に抜粋し、シャッタ地板1を加え、シャッタ地板1の板厚方向を拡大して表現している。また、図14,図15,図16はそれぞれ、図2,図5,図8の補助アーム枢着部を抜粋し拡大して表現している。なお、シャッタ作動機構については本発明の主旨とはならないので図示を省略した。
【0023】
上記のように構成されたシャッタ装置では、レリーズ操作後の露光前準備動作、例えばミラーアップや絞り込み作動の完了した時点でまず先幕構成部材が図2のチャージ完了位置から、不図示の駆動バネの付勢力で図2の下方向に移動して、先幕ブレード81〜85によるアパーチャの遮光を解除して、フィルムを露光させる。
【0024】
次に、設定されたシャッタ秒時後に、後幕構成部材が図2のチャージ完了位置からアパーチャを後幕ブレード群91〜94にて遮光するように、不図示の駆動バネの付勢力で下方向に移動して図5の状態となり、図11の状態でシャッタ露光動作は完了する。
【0025】
さらに、次のカメラシーケンス、例えばフィルム巻き上げ動作に連動して、先幕構成及び後幕構成は図11の走行完了位置からチャージされて、両構成が上方向に移動することにより図2のチャージ完了位置に復帰させられる。
【0026】
10はコイル部を有するトーションバネで構成された安定バネであり、先幕構成部材と後幕構成部材の露光(走行)時の作動をスムーズに安定したバランスを保って行うために設けられている。
【0027】
図2に示すように、シャッタがチャージされた状態では、先幕ブレード81〜85が展開した状態でシャッタ開口を覆い、後幕ブレード91〜94はアパーチャの上方に重なり合って収納される。この時、安定バネ10は、先幕補助アーム5の孔5aと後幕補助アーム7の長孔7aとに連接され、安定バネ10のコイル中心から開き方向に発生する付勢力は、先幕補助アーム5を時計方向へ付勢するので先幕構成部材内に存在するガタは走行方向側へガタ詰めされる。また、同付勢力は、後幕補助アーム7を反時計方向へ付勢するので、後幕構成部材内に存在するガタは走行方向とは反対側へガタ詰めされる。
【0028】
このように安定バネ10の付勢力により、先幕構成部材および後幕構成部材は各構成部材内のガタを一定方向に寄せることができるので、各幕構成部材を常に一定の位置からスタートさせることができる。
【0029】
そして、この状態からシャッタがレリーズされると、不図示の駆動バネの力で先駆動レバー40に植設されたピン40aと先幕駆動アーム4に形成された穴4aとを介して、図2上において先幕駆動アーム4および先幕補助アーム5は時計方向に回動し、さらに安定バネ10の付勢力も加算されて、先幕ブレードを走行させ、シャッタ開口を開く。
【0030】
そして、所定時間後に不図示の駆動バネの力で後駆動レバー60に植設されたピン60aと後幕駆動アーム6に形成された孔6aとを介して、図2上において後幕駆動アーム6および後幕補助アーム7は時計方向に回動し、さらに安定バネ10の付勢力が負荷となりながら、後幕ブレードを走行させ、シャッタ開口を覆う。
【0031】
図14に示すように、後幕補助アーム7には安定バネ10との連接部として、後幕補助アーム7の長手方向から幅方向へ変化させていくカム形状部を有した長穴7aがあり、カム形状部の長手方向は後幕補助アーム7の幅方向に沿う形状になっている。
【0032】
図2(図14)の状態から図5(図15)の状態へ走行する過程で、カム形状部における安定バネ10の端末部10bの係合位置に立てた垂線(以下、係合位置垂線という)と同係合位置と軸107の軸中心とを結んだ線(以下、軸向き線という)とがなす角度が徐々に小さくなる(α1>α2)ことと、先行する先幕補助アーム7の移動による安定バネ10のチャージ角が(θ2−θ1)だけ減少することとが相まって、安定バネ10の後幕補助アーム7に与える回転負荷は減少し、先幕補助アーム5に与える回転付勢力も減少していく。
【0033】
例えばここで、先幕の後幕に対する先行量が通常の先行量よりも小さければ、安定バネ10のチャージ角が通常よりも大きくなるため、先幕補助アーム5に与えられる回転付勢力は通常よりも大きくなり、先幕を後押しするので、先幕が速くなるように制御される。また、先幕の後幕に対する先行量が通常の先行量よりも大きければ、安定バネ10のチャージ角が通常よりも小さくなるので、後幕補助アーム7に与えられる回転負荷は通常よりも小さくなり、後幕の走行を妨げる力が弱まるので、後幕が速くなるように制御される。
【0034】
さらに、図8に示すように、図5(図15)の状態から図8(図16)の状態へ走行する過程では、上記係合位置垂線と軸向き線とのなす角度がさらに小さくなる(α2>α3)ここと、先行する先幕補助アーム7の移動により安定バネ10のチャージ角が(θ3−θ2)だけ減少することとが相まって、安定バネ10の後幕補助アーム7に与える回転負荷は減少し、先幕補助アーム5に与える回転付勢力も減少していく。
【0035】
例えばここで、先幕の後幕に対する先行量が通常の先行量よりも小さければ、後幕補助アーム7に与える回転負荷が通常よりも大きくなり、後幕の走行を妨げるので後幕が遅くなるように制御される。また、先幕の後幕に対する先行量が通常の先行量よりも大きければ、安定バネ10のチャージ角が通常よりも小さくなるので、先幕補助アーム5に与える回転付勢力は通常よりも小さくなり、先幕が遅くなるように制御される。
【0036】
なお、この後、図8から図11の状態へ走行する過程においても同様になる。
以上のように、高速秒時露光時には、幕走行初期から終了に向けて、チャージされた安定バネ10はそのチャージ角を徐々に減じるので、先幕への補助力(走行方向付勢力)および後幕への負荷力(反対方向付勢力)が徐々に減じていく。
また、図3に示すように、先幕補助アーム5と後幕補助アーム7とは安定バネ10によって隔てられている。また、先幕補助アーム5は先幕駆動アーム4よりも寸法S1分シャッタ地板1側へ寄せられており、後幕補助アーム7は後幕駆動アーム6よりも寸法A1分カバー板2側へ寄せられている。
【0037】
さらに、図17に示すように、安定バネ10の端末部10bには、後幕補助アーム7との係合部において、長孔7aの端面に対してアームを安定バネ10のコイル部側へ滑らせ得る一定方向に角度Qの傾斜が設けてあり、またバネ端部10dがシャッタ地板1に当接しているので、後幕補助アーム7は安定バネ10のコイル部側へ寄せられる。なお、角度Qは、およそ5〜45度の範囲に称呼寸法が設定される。
【0038】
安定バネ10の端末部10aにも、先幕補助アーム5との係合部において孔5aの端面に対して先幕補助アーム5を安定バネ10のコイル部側へ滑らせ得る方向に傾斜が設けてあり、バネ端部10cがカバー板2に当接しているので、後幕補助アーム5を安定バネ10のコイル部側へ寄せる働きをしている。
【0039】
さらに、安定バネ10の端末部10aは、先幕補助アーム5とカバー板2との間に介在して先幕補助アーム5をカバー板2に一定距離以上近づかないように規制している。また、安定バネ10の端末部10bは、後幕補助アーム7とシャッタ地板1との間に介在して後幕補助アーム7がシャッタ地板1に一定距離以上近かないように規制している。
【0040】
シャッタがレリーズされて、図6および図7の状態から図9および図10の状態に移行する時、安定バネ10のチャージ角が減少し、安定バネ10の付勢力が減少するのと同時に、先幕補助アーム5は先幕駆動アーム4に引っぱられ、かつ安定バネ10の付勢力に後押しされながら先幕駆動アーム4へ近づく側へ移動していく。つまり、先幕駆動アーム4と先幕補助アーム5との間には図中左右方向に引っ張り合う力が生ずるが、先幕駆動アーム4は左右方向のガタが規制されており左側に寄らないので、先幕補助アーム5が右側に移動する。これにより、これら先幕駆動アーム4,先幕補助アーム5の間隔はS1≧S2≧S3のように変化する。
【0041】
一方、後幕補助アーム7は後幕駆動アーム6に押され、かつ安定バネ10の付勢力が負荷となりながら後幕駆動アーム6から遠ざかる側へ移動していく。つまり、後幕駆動アーム6と後幕補助アーム7との間には図中左右方向に押し合う力が生ずるが、後幕駆動アーム6は左右方向のガタが規制されており左側に寄らないので、後幕補助アーム7が右側に移動する。これにより、これら後幕駆動アーム6,後幕補助アーム7の間隔はA1≦A2≦A3のように変化する。
【0042】
先幕補助アーム5と後幕補助アーム7に挟まれて位置する安定バネ10は、シャッタ地板1およびカバー板2に当接するバネ端部10d,10cを支点としているので、安定バネ10のコイル部がシャッタ地板1やカバー板2に近づきすぎない適度な範囲で移動可能となっている。そして、安定バネ10と先幕補助アーム5と後幕補助アーム7との3者間で作用反作用を及ぼし合いながら、これらがシャッタ地板1側へ微小に寄せられる。このとき、先幕駆動アーム4と後幕駆動アーム6との間隔はK1≦K2≦K3のように変化する傾向を示し、先幕補助アーム5と後幕補助アーム7との間隔H1,H2,H3はほぼ一定に保たれながら、後幕補助アーム7がシャッタ地板1に対して両者の間隔がJ1≧J2≧J3となるように微小に寄せられる。
【0043】
このように動作する各アーム5〜7に枢着された各ブレード81〜85,91〜94は、各アームの動作に伴って仕切り板3の傾斜に沿って走行する。図4のチャージ完了位置にてレリーズされると、ます先幕ブレード81が図の下方へ走行を開始し、次に後幕ブレード91が仕切り板3の傾斜に向かって図の下方へ走行を開始する。
先幕ブレード81の板面は、図7の状態に移行する間に、仕切り板3の板面の傾斜に添うような姿勢に制御され、後幕ブレード91の板面は図10の状態に移行する間に、仕切り板3の板面の傾斜に添うような姿勢に制御される。
【0044】
図7に示す位置から、先幕ブレード81がカバー板2のアパーチャ2aと仕切り板3のアパーチャ3aとの間の隙間へ突入する際、先幕駆動アーム4側にある先幕ブレード端面81bとピン41は、この先幕駆動アーム4の進路方向へ突入する。このとき、通常は、ピン41がカバー板2の板面と接触したり図示しないブレーキ機構の作用を受けたりして、先幕補助アーム5よりも先幕駆動アーム4に先に制動がかかる。
【0045】
この際、安定バネ10の規制により先幕補助アーム5が一定以上先幕駆動アーム4(仕切り板3)側へ近寄らない位置にいるので、先幕補助アーム5がカバー板2側へ振られ、その反作用で先幕駆動アーム4は仕切り板3側へ振られる。ことにより、先幕駆動アーム4側にある先幕ブレード端面81bは仕切り板3側へ振られ、先幕補助アーム5側にある先幕ブレード端面81aはカバー板2側へ振られる。但し、安定バネ10の規制によって先幕補助アーム5のカバー板2側への振られ量が抑制されているので、先幕ブレード端面81bは仕切り板3側へ向かう。このため、ピン41,51と先幕ブレード端面81bは、カバー板2のアパーチャ2aと仕切り板3のアパーチャ3aとの隙間へスムーズに突入する。
【0046】
一方、図10に示す位置から後幕ブレード91がシャッタ地板1のアパーチャ1aと仕切り板3のアパーチャ3aとの間の隙間へ突入する際、後幕補助アーム7とともにこの後幕補助アーム7側にある後幕ブレード端面91a側が安定バネ10の規制により一定以上シャッタ地板1側や仕切り板3側へ近づかないようになっており、かつ後幕ブレード端面91b側が仕切り板3側へ近づこうとしているので、後幕ブレード91の板面は仕切り板3の板面に対して抑角を持った姿勢で仕切り板3のアパーチャ3aへ突入する。
【0047】
例えばこの直前に、ブレーキ機構を有する場合には通常、後幕補助アーム7よりも後幕駆動アーム6に対して先に制動がかかる。このとき、安定バネ10の規制により後幕補助アーム7が一定以上後幕駆動アーム6側(仕切り板3側)へ近寄らない位置にいるので、後幕補助アーム7が仕切り板3側へ振られ、その反作用で後幕駆動アーム6がシャッタ地板1側へ振られる。これにより、後幕駆動アーム6側にある後幕ブレード端面91bはシャッタ地板1側へ振られ、後幕補助アーム7側にある後幕ブレード端面91aは仕切り板3側へ振られる。但し、安定バネ10の規制によって後幕補助アーム7の仕切り板3側への振られ量が抑制されており、かつ後幕駆動アーム6は周知のように規制されていてシャッタ地板1側への振られ量が抑制されているので、後幕ブレード91はその枢着部から発生する板厚方向に振幅を持つ波打ち現象を起こす。
【0048】
このため、後幕ブレード91の枢着ピン71部にてまず仕切り板3側へ振れが生じ、さらに後幕ブレード91の先端側はスペーサ14,15によってある程度振幅が規制されているので、反作用により図8の後幕ブレード端面91aの中央部でシャッタ地板1側へ凸となるような振幅を発生する。後幕ブレード端面91aの中央部の振幅が仕切り板3側へ凸とならないうちに後幕ブレード端面91aが仕切り板3のアパーチャ3aを通過し、後幕ブレード端面91aが仕切り板3アパーチャ3aに衝突することなく、かつピン61,71とシャッタ地板1のアパーチャ1aとの衝突が緩和されて、スムーズに後幕走行を終了する。
【0049】
図11に示すように、シャッタ走行終了位置には、先幕駆動アーム4が当接するアームストッパ11と、このアームストッパ11よりも先幕駆動アーム4の回動中心(軸104)から離れて位置し、先幕ブレード81〜85および後幕ブレード91が当接するブレードストッパ12とが設けられている。これらアームストッパ11およびブレードストッパ12は、ブチルゴム,クロロプレンゴム,ウレタンゴム,シリコンゴム等の弾性体で構成されている。
【0050】
アームストッパ11への先幕駆動アーム4の当接とブレードストッパ12への先幕ブレード81の当接はほぼ同時に行われるが、上記回動中心からの距離が遠い分、先幕駆動アーム4のアームストッパ11に対する衝突エネルギーよりも先幕ブレード81のブレードストッパ12に対する衝突エネルギーの方が大きく、しかも、先幕駆動アーム4よりも先幕ブレード81の剛性が弱いため、ブレードストッパ12はアームストッパ11よりも小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きくなるように、形状や材料が選定されている。
【0051】
また、図18に示すように、アームストッパ11は、孔11bを2箇所に有しており、これら孔の中心同士を結ぶ直線および孔同士の中点を通る前記直線の垂線を挟んで対称な形状に形成されている。アームストッパ11は、一方の孔11bがシャッタ地板1に設けられた軸100に嵌合して装着され、下端部がカバー板2の立ち曲げ部2dに突き当てられている。これにより軸100回りでの先幕駆動アーム4の当接方向への回転が規制される。
【0052】
ここで、アームストッパ11における先幕駆動アーム4の中間部の当接を受ける面(当接面)11aは、先幕駆動アーム4の中間部の形状に沿って形成されており、しかも、軸100に嵌合する孔(剛体による支持部)11bと、カバー板2の立ち曲げ部2dへの突き当て面(剛体への突き当て面)とが上記当接面に垂直な方向から外れた位置に設けられている。
【0053】
このため、図18に示すように、例えば上記当接面における、先幕駆動アーム4の回転半径(先幕駆動アーム4の回動中心104からの距離)L1の位置との当接位置では、衝突力F1に対してアームストッパ11が受ける力は、J1方向とC1方向とに分散される。また、回転半径L2の位置との当接位置では衝突力F2を受けるが、剛体がF2方向に無いので、F2はJ2方向およびC2方向に分散される。これにより、アームストッパ11における上記当接面と軸100との間に挟まれた部分に過度の応力が作用するのを防止することができる。
【0054】
さらに、軸100に嵌合しない孔11bを設けたことにより、アームストッパ11のうち先幕駆動アーム4の回転半径が大きい部分の衝突力を受ける部分ほど、小さな力で弾性変形し、かつ弾性変形許容量が大きくなるようになっている。すなわち、アームストッパ11のうち回転半径L2の部分の衝突を受ける部分の方が、回転半径L1の部分の衝突を受ける部分の方よりも、小さな力で弾性変形し、かつ弾性変形許容量が大きい。このため、回転半径が大きいほど大きくなる先幕駆動アーム4の衝突エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0055】
こうしてシャッタ走行終了時には、先幕駆動アーム4はアームストッパ11に、先幕ブレード81はブレードストッパ12にそれぞれほぼ同時に当接を開始し、アームストッパ11およびブレードストッパ12が弾性変形して衝撃を吸収した後、先幕駆動アーム4の走行方向への回動が終了し、アームストッパ11およびブレードストッパ12の弾性変形の復帰とともに、図11に示す状態に先幕駆動アーム4および先幕ブレード81が戻されて停止する。
【0056】
(第2実施形態)
図19には、本願発明の第2実施形態であるシャッタ装置を示している。本実施形態のシャッタ装置は、第1実施形態のシャッタ装置とアームストッパ11の形状において異なる。図19において、111はアームストッパであり、第1実施形態のアームストッパ11における軸110と嵌合しない孔11bを、切り欠き111bに変更した形状に形成されている
このようなアームストッパ111の先幕駆動アーム4との当接面のうち、先幕駆動アーム4の回転半径L0の部分に当接する部分には、衝突力F0が働くが、第1実施形態と同様に、F0方向には剛体が無いので、衝突力F0はJ0方向とC0方向とに分散される。さらに、切り欠き111bを設けたことにより、アームストッパ111のうち先幕駆動アーム4の回転半径が大きい部分の衝突力を受ける部分ほど、小さな力で弾性変形し、かつ弾性変形許容量が大きくなるようになっている。
【0057】
(第3実施形態)
図20には、本願発明の第3実施形態であるシャッタ装置を示している。本実施形態のシャッタ装置は、上記各実施形態のシャッタ装置とアームストッパの形状において異なる。図20において、112はアームストッパであり、このアームストッパ112は、軸100との嵌合部近傍の略円形部と、この略円形部の左上部から斜め情報に延びる延設部とを有して形成されている。略円形部分には、8の字型の穴112cが形成されており、この穴112cのうち一方の円形孔部分が軸100に嵌合している。
【0058】
また、略円形部の下端部はカバー板2の立ち曲げ部2dに突き当てられ、これにより軸100回りでの先幕駆動アーム4の中間部の当接方向への回転が規制される。さらに、延設部の左端面は、カバー板2の立ち曲げ部2eに突き当てられ、これにより軸100回りでの先幕駆動アーム4の上部の当接方向への回転が規制される。
【0059】
延設部には先幕駆動アーム4における上部の衝突を受ける当接面112aが形成されており、この当接面112aは先幕駆動アーム4の上部の形状に沿うように形成されている。また、略円形部にも先幕駆動アーム4における中間部の衝突を受ける当接面112bが形成されており、この当接面112bは先幕駆動アーム4の中間部の形状に沿うように形成されている。ここで、略円形部における環状部分は延設部以下の肉厚を有し、しかも穴112cのうち軸100に嵌合しない部分を有するため、延接部よりも先幕駆動アーム4の回転半径が大きい部分の衝突力を受ける略円形部の方が小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きい。
【0060】
シャッタ走行終了時には、先幕駆動アーム4の上部と中間部はそれぞれ当接面112aと当接面112bにほぼ同時に当接を開始し、アームストッパ112が衝撃吸収のため弾性変形した後、先幕駆動アーム4の走行方向への回動が終了し、アームストッパ112の弾性変形の復帰とともに図20の状態に先幕駆動アーム4が戻されて停止する。
【0061】
(第4実施形態)
図21には、本願発明の第4実施形態であるシャッタ装置を示している。本実施形態のシャッタ装置は、上記各実施形態のシャッタ装置とアームストッパの数および形状において異なる。図21において、114は先幕駆動アーム4の中間部の衝突を受ける第1アームストッパであり、115は先幕駆動アーム4の上部の衝突を受ける第2アームストッパである。
【0062】
第1アームストッパ114は、環状に形成され、中央孔がシャッタ地板1に設けられた軸110に嵌合して装着され、下端部がカバー部材2の立ち曲げ部2dに突き当てられている。また、第2アームストッパ115は、板状に形成され、カバー部材2の立ち曲げ部2eに取り付けられている。
【0063】
ここで、第1アームストッパ114は、第2アームストッパ115以上の肉厚を有し、かつ第2アームストッパ115よりも柔らかい材料で作られているため、第2アームストッパ115よりも先幕駆動アーム4の回転半径が大きい部分の衝突力を受ける第1アームストッパ114の方が、小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きい。
【0064】
シャッタ走行終了時には、先幕駆動アーム4の中間部と上部はそれぞれ、第1アームストッパ114と第2アームストッパ115にほぼ同時に当接を開始し、アームストッパ114,115が衝撃吸収のため弾性変形した後、先幕駆動アーム4の走行方向への回動が終了し、アームストッパ114,115の弾性変形の復帰とともに図21の状態に先幕駆動アーム4が戻されて停止する。
【0065】
(第5実施形態)
図22には、本願発明の第5実施形態であるシャッタ装置を示している。本実施形態のシャッタ装置は、上記各実施形態のシャッタ装置とブレードストッパの形状において異なる。
【0066】
図22において、117はブレードストッパである。このブレードストッパ117は、第1実施形態のブレードストッパ12と同様の保持形式をとっているが、後幕ブレード端面91aの衝突を受ける当接面117bは、ブレード端面91aに対して10度以下の角度で傾斜しており、ブレード端面91aの作動入射方向(矢印T)との間で角度Sをなしている。なお、角度Sは30°〜150°の範囲で設定するのが望ましい。
【0067】
さらに、ブレードストッパ117には、先幕駆動アーム4に対するブレード91の枢支軸に近づくほど小さな力で弾性変形し、変形許容量が大きくなるようにするために、切り欠き117cが設けられている。
【0068】
また、先幕ブレード端面81bとの当接面117aも、先幕ブレード端面81bに対して10度以下の角度で傾斜し、ブレード端面81bの衝突入射方向(衝突時の動作方向)との間で角度Sをなしている。なお、角度Sも30〜150度の範囲で設定するのが望ましい。
【0069】
さらに、ブレードストッパ117には、先幕駆動アーム4に対するブレード81の枢支軸に近づくほど小さな力で弾性変形し、変形許容量が大きくなるようにするために、カバー板2の立ち曲げ部2fとの間に隙間を設けるための浮き面117dが形成されている。
【0070】
このような構成のブレードストッパ117を用いることにより、薄板状のブレード81,91を衝突初期に柔らかく受け止めることができるとともに、衝突後期までの間に確実に全衝突エネルギーを吸収することができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明では、衝突した幕構成部材から弾性部材が受ける衝突力を弾性部材の剛体(シャッタ地板等)による支持部や剛体への突当て部がある方向以外の方向に分散作用させるようにしているので、弾性部材が小さくても十分な緩衝効果を得ることができ、また弾性部材における支持部や突当て部と当接面とに挟まれた部分に多大な応力が集中的に作用するのを防止することができる。
【0072】
また、本願発明では、弾性部材の中でもアーム部材における回動中心から離れた部分に当接する部分ほど弾性変形し易くしているので、衝突エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0073】
また、遮光ブレードの端面に当接する弾性部材について、遮光ブレードのアーム部材への取付部からの距離が近い部分ほど、小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きいものとすれば、薄板状の遮光ブレードを衝突初期に柔らかく受け止めるとともに、衝突後期までの間に確実に全衝突エネルギーを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるシャッタ装置の分解斜視図である。
【図2】上記シャッタ装置のチャージ状態を示す平面図である。
【図3】上記シャッタ装置のチャージ状態を示す側面図である。
【図4】上記シャッタ装置のチャージ状態を示す部分側面図である。
【図5】上記シャッタ装置のシャッタ走行中盤状態を示す平面図である。
【図6】上記シャッタ装置のシャッタ走行中盤状態を示す側面図である。
【図7】上記シャッタ装置のシャッタ走行中盤状態を示す部分側面図である。
【図8】上記シャッタ装置のシャッタ走行終盤状態を示す平面図である。
【図9】上記シャッタ装置のシャッタ走行終盤状態を示す側面図である。
【図10】上記シャッタ装置のシャッタ走行終盤状態を示す部分側面図である。
【図11】上記シャッタ装置のシャッタ走行終了状態を示す平面図である。
【図12】上記シャッタ装置のシャッタ走行終了状態を示す側面図である。
【図13】上記シャッタ装置のシャッタ走行終了状態を示す部分側面図である。
【図14】上記シャッタ装置のチャージ状態における安定バネ近傍の部分拡大図である。
【図15】上記シャッタ装置のシャッタ走行中盤における安定バネ近傍の部分拡大図である。
【図16】上記シャッタ装置のシャッタ走行終盤における安定バネ近傍の部分拡大図である。
【図17】上記図14におけるY方向矢視拡大図である。
【図18】上記シャッタ装置のシャッタ走行終了時におけるストッパ部近傍の部分拡大図である。
【図19】本発明の第2実施形態であるシャッタ装置のシャッタ走行終了時におけるストッパ部近傍の部分拡大図である。
【図20】本発明の第3実施形態であるシャッタ装置のシャッタ走行終了時におけるストッパ部近傍の部分拡大図である。
【図21】本発明の第4実施形態であるシャッタ装置のシャッタ走行終了時におけるストッパ部近傍の部分拡大図である。
【図22】本発明の第5実施形態であるシャッタ装置のシャッタ走行終了時におけるストッパ部近傍の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
2 カバー板
3 仕切り板
4 先幕駆動アーム
5 先幕補助アーム
6 後幕駆動アーム
7 後幕補助アーム
10 安定バネ
11,111,112,114,115 アームストッパ
12,117 ブレードストッパ
13〜15 スペーサ
16〜19 ワッシャ
40 先幕駆動レバー
41〜45,51〜55 先幕ブレードピン
81〜85 先幕ブレード
60 後幕駆動レバー
61〜64,71〜74 後幕ブレードピン
91〜94 後幕ブレード
100〜103,110 軸
104 先幕駆動軸
105 先幕補助軸
106 後幕駆動軸
107 後幕補助軸
Claims (6)
- 回動可能なアーム部材とこのアーム部材に取り付けられた遮光ブレードとを有して構成される幕構成部材を備えたシャッタ装置において、
前記幕構成部材の動作端において前記幕構成部材と当接し、前記幕構成部材との当接位置に応じて異なる弾性力を備えた弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記幕構成部材におけるアーム部材と当接し、
前記弾性部材のうち前記アーム部材の回動中心からの距離が遠い部分ほど、小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きいことを特徴とするシャッタ装置。 - 前記距離が遠い部分に、開口又は切り欠きを形成したことを特徴とする請求項1に記載のシャッタ装置。
- 前記弾性部材は、前記幕構成部材における遮光ブレードと当接し、
前記弾性部材のうち、前記遮光ブレードの前記アーム部材への取付部からの距離が近い部分ほど、小さな力で弾性変形し、かつ変形許容量が大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のシャッタ装置。 - 前記弾性部材における前記遮光ブレードとの当接面と、該当接面との当接時における遮光ブレードの動作方向とのなす角度が30度〜150度の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のシャッタ装置。
- 前記弾性部材の剛体による支持部又は剛体への突当て部を、この弾性部材における前記幕構成部材との当接面に垂直な方向から外して設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のシャッタ装置。
- 請求項1から5のいずれか1つに記載のシャッタ装置を備えたことを特徴とするカメラ。
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1996
- 1996-12-27 JP JP35066996A patent/JP3820296B2/ja not_active Expired - Lifetime
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