JP3819864B2 - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,主として内燃機関の燃料供給系に使用される電磁式燃料噴射弁に関し,特に,弁ボディの外周面にモールド成形される合成樹脂製被覆体に,該被覆体の外周面に嵌合される弾性材製のクッションリングの一端面を支承する座面を形成し,前記クッションリングを燃料供給管のジョイント筒により前記座面側に押圧することでエンジンの吸気系構造体に保持するようにした電磁式燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝる電磁式燃料噴射弁は,例えば特許文献1に開示されるように,既に知られている。また弁ハウジングの被覆体に,弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設けた電磁式燃料噴射弁も従来知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−145595号公報
【0004】
【発明が酵決しようとする課題】
ところで,特許文献1に開示された電磁式燃料噴射弁におけるクッションリングは,該燃料噴射弁をエンジンの吸気系構造体に専ら弾性支持するためのものである。また後者の燃料噴射弁では,被覆体の工具孔に詰め物を施して,雨水等の浸入を防ぐようにしているが,部品点数及び組立工数が増えてコストの面で不利となる。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,弁ハウジングの被覆体に,弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設けた場合,その工具孔を,特別な詰め物を施さずとも閉鎖するようにした,安価な電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,弁ボディの外周面にモールド成形される合成樹脂製被覆体に,該被覆体の外周面に嵌合される弾性材製のクッションリングの一端面を支承する座面を形成し,前記クッションリングを燃料供給管のジョイント筒により前記座面側に押圧することでエンジンの吸気系構造体に保持するようにした電磁式燃料噴射弁において,前記被覆体に,前記弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設け,この工具孔を前記クッションリングで水密に閉鎖することを第1の特徹とする。
【0007】
尚,前記吸気系構造体は,後述する本発明の実施例中のスロットルボディBに対応する。
【0008】
この第1の特徴によれば,被覆体の工具孔に挿入した工具により燃料入口筒の制御部を簡単に操作することができ,しかもその操作後は,燃料噴射弁を弾性支持するためのクッションリングを利用して工具孔を水密に閉鎖することができるので,特別な詰め物を施すことなく,工具孔への雨水等の浸入を防ぎ,弁ボディの発錆を回避することができ,また部品点数及び組立工程の削減によりコストの低減を図ることができる。
【0009】
また本発明は,第1の特徹に加えて,前記弁ボディを,可動コアを有する弁組立体及びこの弁組立体を閉弁方向に付勢する弁ばねを収容する弁ハウジングと,この弁ハウジングに連なり前記可動コアを吸引し得る中空の固定コアと,この固定コアに連なる燃料入口筒と,前記固定コアの外周に固設されてコイルを収容するコイルハウジングとで構成し,前記燃料入口筒には,前記弁ばねの固定端を進退させて該弁ばねのセット荷重を調整するリテーナパイプを挿入し,前記燃料入口筒の,前記工具孔に臨む部分を前記制御部となし,前記弁ばねのセット荷重調整後,この制御部をカシメることにより該燃料入口筒にリテーナパイプを固定することを第2の特徹とする。
【0010】
この第2の特徴によれば,リテーナパイプの進退による弁ばねのセット荷重の調整後,,被覆体の工具孔からカシメ工具により燃料入口筒の制御部をカシメることにより,燃料入口筒に該リテーナパイプを簡単に固定することができ,したがって弁ばねのセット荷重の調整作業を容易に行うことができる。
【0011】
さらに本発明は,第2の特徹に加えて,前記燃料入口筒を前記コイルハウジングより小径に形成すると共に,前記被覆体の,前記コイルハウジングを覆う大径部と,前記燃料入口筒を覆う小径部との境界に形成される段部を前記座面としたことを第3の特徴とする。
【0012】
この第3の特赦によれば,被覆体の,コイルハウジングを覆う大径部と,燃料入口筒を覆う小径部との間に必然的に形成される段部をクッションリングの座面に利用することで,被覆体に特別な座面を形成する必要がなく,被覆体の形状の構造の簡素化,延いては電磁式燃料噴射弁の小型化に寄与し得る。
【0013】
さらにまた本発明は,第1〜第3の特徴の何れかに加えて,前記クッションリングの内周面を前記被覆体外周面に,その全周に亙り水密に密着させることを第4の特徴とする。
【0014】
この第4の特徴によれば,クッションリングの回転方向嵌合位置に関係なく,クッションリングにより工具孔を確実に水密に閉鎖することが可能であり,組立性の向上に寄与し得る。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例に係る電磁式燃料噴射弁の,エンジンのスロットルボディへの取り付け状態を示す縦断面図,図2は2−2線断面図,図3は図2の3−3線断面図,図4はリテーナパイプの固定要領を示す,図3に対応する断面図である。
【0017】
先ず,図2により,電磁式燃料噴射弁Iの構成について詳細に説明する。電磁式燃料噴射弁Iの弁ハウジング2は,前端に弁座8を有する円筒状の弁座部材3と,この弁座部材3の後端部に同軸に結合される磁性筒体4と,この磁性筒体4の後端に同軸に結合される非磁性筒体6とで構成される。
【0018】
弁座部材3は,その外周面から環状肩部3bを存して磁性筒体4側に突出する連結筒部3aを後端部に有しており,この連結筒部3aを磁性筒体4の前端部内周面に圧入して,磁性筒体4の前端面を環状肩部3bに当接させることにより,弁座部材3及び磁性筒体4は互いに同軸且つ液密に結合される。磁性筒体4及び非磁性筒体6は,対向端面を突き合わせて全周に亙りレーザビーム溶接により互いに同軸且つ液密に結合される。
【0019】
弁座部材3は,その前端面に開口する弁孔7と,この弁孔7の内端に連なる円錐状の弁座8と,この弁座8の大径部に連なる円筒状のガイド孔9とを備えている。弁座部材3の前端面には,上記弁孔7と連通する複数の燃料噴孔11を有する鋼板製のインジェクタプレート10が液密に全周溶接される。
【0020】
非磁性筒体6の内周面には,その後端側から中空円筒状の固定コア5が液密に圧入固定される。その際,非磁性筒体6の前端部には,固定コア5と嵌合しない部分が残され,その部分から弁座部材3に至る弁ハウジング2内に弁組立体Vが収容される。
【0021】
弁組立体Vは,前記弁座8と協働して弁孔7を開閉する半球状の弁部16及びそれを支持する弁杆部17からなる弁体18と,弁杆部17に連結され,磁性筒体4から非磁性筒体6に跨がって,それらに挿入されて固定コア5に同軸で対置される可動コア12とからなっている。弁杆部17は,前記ガイド孔9より小径に形成されており,その外周には,半径方向外方に突出して,前記ガイド孔9の内周面に摺動可能に支承される前後一対のジャーナル部17a,17aが一体に形成される。その際,両ジャーナル部17a,17aは,両者の軸方向間隔を極力あけて配置される。
【0022】
弁組立体Vには,可動コア12の後端面から始まり半球状弁部16の球面中心Oを超えて行き止まりとなる縦孔19と,この縦孔19を,可動コア12外周面に連通する複数の第1横孔20aと,同縦孔19を両ジャーナル部17a,17a間の弁杆部17外周面に連通する複数の第2横孔20bと,同縦孔19を前側のジャーナル部17aより弁部18寄りで弁杆部17外周に連通する複数の第3横孔20cとが設けられる。その際,第3横孔20cは弁部18の球面中心Oよりも前寄りに配置されることが望ましく,また前側のジャーナル部17aは,弁部16の球面中心Oに極力近接して配置することが望ましい。
【0023】
縦孔19の途中には,固定コア5側を向いた環状のばね座24が形成されている。
【0024】
固定コア5は,可動コア12の縦孔19と連通する中空部21を有し,この中空部21に内部が連続する燃料入口筒26が固定コア5の後端に一体に連設される。燃料入口筒26は,固定コア5の後端に連なる縮径部26aと,それに続く拡径部26bとからなっており,その縮径部26aから中空部21に亙り挿入,固定されるリテーナパイプ23と前記ばね座24との間に可動コア12を弁体18の閉弁側に付勢する弁ばね22が縮設される。その際,リテーナパイプ23の中空部21への挿入深さにより弁ばね22のセット荷重が調整される。そのセット荷重の調整については,後で詳述する。
【0025】
燃料入口筒26の拡径部26bには燃料フィルタ27が装着される。
【0026】
弁組立体Vにおいて,可動コア12には,固定コア5の吸引面5aと対向する吸引面12aに嵌合凹部13が形成され,この嵌合凹部13に,前記弁ばね22を囲繞するカラー状のストッパ要素14が圧入により固定され,又は嵌合後,溶接もしくはカシメにより固定される。ストッパ要素14は非磁性材料で構成される。
【0027】
上記ストッパ要素14は可動コア12の吸引面12aから突出していて,通常,弁体18の開弁ストロークに相当する間隙sを存して固定コア5の吸引面5aと対置される。ストッパ要素14の吸引面12aから突出量gは,コイル30の励磁により可動コア12が固定コア5に吸引されて,可動コア12のストッパ要素14が固定コア5の吸引面5aに当接したとき,両コア5,12の吸引面5a,12a間に形成されるエアギャップに相当する。
【0028】
弁ハウジング2の外周には,固定コア5及び可動コア12に対応してコイル組立体28が嵌装される。このコイル組立体28は,磁性筒体4の後端部から非磁性筒体6全体にかけてそれらの外周面に嵌合するボビン29と,これに巻装されるコイル30とからなっており,このコイル組立体28を囲繞するコイルハウジング31の前端が磁性筒体4の外周面に溶接され,その後端には,固定コア5の後端部外周からフランジ状に突出するヨーク5bの外周面に溶接される。コイルハウジング31は円筒状をなし,且つ一側に軸方向に延びるスリット31aが形成されている。
【0029】
以上において,弁ハウジング2,固定コア5,ヨーク5a,燃料入口筒26及びコイルハウジング31によって弁ボディ1が構成される。この弁ボディ1の外周には,弁座部材3及び磁性筒体4の前端部と,燃料入口筒26の拡径部26bの後端部とを残して,その外周を覆う合成樹脂製の被覆体32が射出成形によりモールド成形される。その成形の際,合成樹脂はコイルハウジング31のスリット31aを通して内部にも充填されてコイル30を埋封する。また同時に,コイル30に連なる接続端子33を備えて被覆体32外周から突出するたカプラ34(図1参照)をも被覆体32と共に形成する。
【0030】
燃料入口筒26の拡径部26bはコイルハウジング31より小径になっており,これに伴ない被覆体32は,コイルハウジング31を覆う大径部32aと,燃料入口筒26を覆う小径部32bとの境界の段部32cとからなるように成形され,また前記カプラ34は,段部32cに近接して成形される。
【0031】
図2及び図3に示すように,上記を小径部32bには,同一直径線に並んで燃料入口筒26の縮径部26aの外周面に達する一対の工具孔40,40が設けられる。小径部32bの,これら工具孔40,40に露出する部分は制御部A,Aとされる。
【0032】
而して,前記弁ばね22のセット荷重の調整に当たっては,燃料入口筒26の縮径部26aから固定コア5の中空部21にリテーナパイプ23が隙間嵌めにより挿入され,その挿入深さを加減することにより,弁ばね22のセット荷重は調整される。その調整後,図4に示すように,工具孔40,40に挿入したカシメ工具T,Tをもって前記記制御部A,Aを半径方向内方へカシメることにより,燃料燃料入口筒26にリテーナパイプ23が固定される。
【0033】
こうして,弁ばね22のセット荷重が調整された後,被覆体32の小径部32b外周面には,ゴム等の弾性材からなるクッションリング35が工具孔40,40の開口部を閉鎖するように嵌合される。このクッションリング35は,その内径に小径部32b外周面に対する締め代が付与されていて,小径部32b外周面に全周に亙り水密に密着するようになっており,これにより工具孔40,40を水密に閉鎖することができる。被覆体32の大径部32a及び小径部32b間の段部32cは,このクッションリング35の一端面を支承する座面に形成される。
【0034】
また弁ハウジング2の,被覆体32の前端面から露出した部分の外周面にもクッションリング36が嵌合され,これは被覆体32の前端面で支承される。
【0035】
上記燃料噴射弁Iは,図1に示すように,エンジンの吸気系の一部を構成するスロットルボディBに取り付けられる。
【0036】
即ち,エンジンのスロットルボディBの一側壁には,スロットルバルブ41より下流の吸気道42に,その下流側に向かって斜めに開口する噴射弁受け入れ孔43と,その後端に連なる環状凹部44とが設けられ,噴射弁受け入れ孔43に燃料噴射弁Iの弁座部材3が,また環状凹部44にクッションリング36がそれぞれ挿入される。
【0037】
またスロットルボディBの一側壁には,燃料ポンプの吐出燃料を誘導する燃料供給管45を支持するブラケット46がボルト48で固着される。この燃料供給管45は一側にジョイント筒47を一体に形成しており,このジョイント筒47は,燃料噴射弁Iの被覆体32の小径部32b後端部にシール部材37を介して嵌合すると共に,このジョイント筒47前端のフランジ部47aでクッションリング35を座面32c側,即ちスロットルボディB側に押圧するように配置される。こうして燃料噴射弁Iは,前後のクッションリング35,36を介してスロットルボディB及び燃料供給管45との間で弾性支持される。その際,フランジ部47a及び座面32cは,クッションリング35の各端面に全周に亙り水密に密着し,これによっても,前記工具孔40,40は外部と水密に遮断される。
【0038】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0039】
コイル30を通電により励磁すると,それにより生ずる磁束が固定コア5,コイルハウジング31,磁性筒体4及び可動コア12を順次走り,その磁力により弁組立体Vの可動コア12が弁ばね22のセット荷重に抗して固定コア5に吸引され,弁体18が弁座8から離座するので,弁孔7が開放され,弁座部材3内の高圧燃料が弁孔7を出て,燃料噴孔11からスロットルボディBの吸気道42下流側に向けて噴射される。
【0040】
このとき,弁組立体Vの可動コア12に嵌合固定されたストッパ要素14が固定コア5の吸引面5aに当接することにより,弁体18の開弁限界が規定され,可動コア12の吸引面12aは,エアギャップgを存して固定コア5の吸引面5aと対向し,固定コア5との直接接触が回避される。特にストッパ要素14の,可動コア12の吸引面12aからの突出量の寸法管理により,上記エアギャップgを精密且つ容易に得ることができ,ストッパ要素14が非磁性であることゝ相俟って,コイル30の消磁時の両コア5,12間の残留磁気は速やかに消失して,弁体18の閉弁応答性を高めることができる。
【0041】
弁組立体Vは,その開閉動作中,弁杆部17上の前後一対のジャーナル部17a,17aが弁座部材3の内周面に摺動することにより,常に倒れのない適正な姿勢に保持されるので,燃料噴射特性の安定化を図ることができる。
【0042】
また弁組立体Vの外周面には,縦孔19に連通する第1〜第3横孔20a〜20cが開口しているから,縦孔19の流入した燃料は,第1〜第3横孔20a〜20cを通して,ジャーナル部17a,17aの摺動面,並びに可動コア12及び磁性筒体4間の間隙に供給され,ジャーナル部17a,17aのの摺動面の潤滑は勿論,可動コア12及び磁性筒体4の冷却を効果的に行うことができ,弁組立体Vの応答性及び耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0043】
また可動コア12を横切る第2横孔20bは,コイル30の励,消磁時,可動コア12に渦電流が生ずることを抑え,渦電流に起因する可動コア12の加熱を防ぐことができる。
【0044】
さらに半球状の弁部16の球面近くまで延びる深い縦孔19は,第1〜第3横孔20a〜20cと共に,燃料通路の役目を果す他に,弁組立体Vの贅肉を除去する役目をも果たし,弁組立体Vの軽量化,延いては応答性の向上に寄与する。
【0045】
ところで,このような電磁式燃料噴射弁Iにおいて,リテーナパイプ23の燃料入口筒26への挿入深さを加減して弁ばね22のセット荷重を調整した後は,被覆体32の工具孔40,40からカシメ工具T,Tにより燃料入口筒26の制御部A,Aをカシメることにより,燃料入口筒26にリテーナパイプ23を簡単に固定することができ,したがって弁ばね22のセット荷重の調整作業を容易に行うことができる。
【0046】
しかも上記調整後は,工具孔40,40は,燃料噴射弁IをスロットルボディBに弾性支持するためのクッションリング35により,これを水密に閉鎖するようにしたので,特別な詰め物を施すことなく,工具孔40,40への雨水等の浸入を防ぎ,弁ボディ1の発錆を回避することができる。その結果,部品点数及び組立工程が削減され,コストの低減を図ることができる。
【0047】
この場合,クッションリング35は,その内周面が被覆体32外周面に全周に亙り密着するようになっているから,クッションリング35の回転方向嵌合位置に関係なく,工具孔40,40を確実に水密に閉鎖することが可能であり,組立性の向上に寄与し得る。
【0048】
またクッションリング35を支承する座面32cは,被覆体32の,コイルハウジング31を覆う大径部32aと,燃料入口筒26を覆う小径部32bとの間に必然的に形成される段部を利用するので,そのための特別な座面を形成する必要がなく,被覆体32の形状の構造の簡素化,延いては電磁式燃料噴射弁Iの小型化に寄与し得る。
【0049】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,弁ボディの外周面にモールド成形される合成樹脂製被覆体に,該被覆体の外周面に嵌合される弾性材製のクッションリングの一端面を支承する座面を形成し,前記クッションリングを燃料供給管のジョイント筒により前記座面側に押圧することでエンジンの吸気系構造体に保持するようにした電磁式燃料噴射弁において,前記被覆体に,前記弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設け,この工具孔を前記クッションリングで水密に閉鎖するので,被覆体の工具孔に挿入した工具により燃料入口筒の制御部を簡単に操作することができ,しかもその操作後は,燃料噴射弁を弾性支持するためのクッションリングを利用して工具孔を水密に閉鎖することができ,したがって特別な詰め物を施すことなく,工具孔への雨水等の浸入を防ぎ,弁ボディの発錆を回避することができ,また部品点数及び組立工程の削減によりコストの低減を図ることができる。
【0051】
また本発明の第2の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記弁ボディを,可動コアを有する弁組立体及びこの弁組立体を閉弁方向に付勢する弁ばねを収容する弁ハウジングと,この弁ハウジングに連なり前記可動コアを吸引し得る中空の固定コアと,この固定コアに連なる燃料入口筒と,前記固定コアの外周に固設されてコイルを収容するコイルハウジングとで構成し,前記燃料入口筒には,前記弁ばねの固定端を進退させて該弁ばねのセット荷重を調整するリテーナパイプを挿入し,前記燃料入口筒の,前記工具孔に臨む部分を前記制御部となし,前記弁ばねのセット荷重調整後,この制御部をカシメることにより該燃料入口筒にリテーナパイプを固定するので,リテーナパイプの進退による弁ばねのセット荷重の調整後,被覆体の工具孔からカシメ工具により燃料入口筒の制御部をカシメることにより,燃料入口筒に該リテーナパイプを簡単に固定することができ,したがって弁ばねのセット荷重の調整作業を容易に行うことができる。
【0052】
さらに本発明の第3の特徴によれば,第2の特徴に加えて,前記燃料入口筒を前記コイルハウジングより小径に形成すると共に,前記被覆体の,前記コイルハウジングを覆う大径部と,前記燃料入口筒を覆う小径部との境界に形成される段部を前記座面としたので,被覆体の,コイルハウジングを覆う大径部と,燃料入口筒を覆う小径部との間に必然的に形成される段部をクッションリングの座面に利用することで,被覆体に特別な座面を形成する必要がなく,被覆体の形状の構造の簡素化,延いては電磁式燃料噴射弁の小型化に寄与し得る。
【0053】
さらにまた本発明の第4の特徴によれば,第1〜第3の特徴の何れかに加えて,前記クッションリングの内周面を前記被覆体外周面に,その全周に亙り水密に密着させるので,クッションリングの回転方向嵌合位置に関係なく,クッションリングにより工具孔を確実に水密に閉鎖することが可能であり,組立性の向上に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る電磁式燃料噴射弁の,エンジンのスロットルボディへの取り付け状態を示す縦断面図
【図2】2−2線断面図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】リテーナパイプの固定要領を示す,図3に対応する断面図
【符号の説明】
A・・・・・制御部
B・・・・・吸気系構造体(スロットルボディ)
I・・・・・電磁式燃料噴射弁
1・・・・・弁ボディ
5・・・・・固定コア
12・・・・可動コア
22・・・・弁ばね
23・・・・リテーナパイプ
26・・・・燃料入口筒
30・・・・コイル
31・・・・コイルハウジング
32・・・・被覆体
32a・・・大径部
32b・・・小径部
32c・・・段部(座面)
35・・・・クッションリング
40・・・・工具孔
45・・・・燃料供給管
47・・・・ジョイント筒
【発明の属する技術分野】
本発明は,主として内燃機関の燃料供給系に使用される電磁式燃料噴射弁に関し,特に,弁ボディの外周面にモールド成形される合成樹脂製被覆体に,該被覆体の外周面に嵌合される弾性材製のクッションリングの一端面を支承する座面を形成し,前記クッションリングを燃料供給管のジョイント筒により前記座面側に押圧することでエンジンの吸気系構造体に保持するようにした電磁式燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝる電磁式燃料噴射弁は,例えば特許文献1に開示されるように,既に知られている。また弁ハウジングの被覆体に,弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設けた電磁式燃料噴射弁も従来知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−145595号公報
【0004】
【発明が酵決しようとする課題】
ところで,特許文献1に開示された電磁式燃料噴射弁におけるクッションリングは,該燃料噴射弁をエンジンの吸気系構造体に専ら弾性支持するためのものである。また後者の燃料噴射弁では,被覆体の工具孔に詰め物を施して,雨水等の浸入を防ぐようにしているが,部品点数及び組立工数が増えてコストの面で不利となる。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,弁ハウジングの被覆体に,弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設けた場合,その工具孔を,特別な詰め物を施さずとも閉鎖するようにした,安価な電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,弁ボディの外周面にモールド成形される合成樹脂製被覆体に,該被覆体の外周面に嵌合される弾性材製のクッションリングの一端面を支承する座面を形成し,前記クッションリングを燃料供給管のジョイント筒により前記座面側に押圧することでエンジンの吸気系構造体に保持するようにした電磁式燃料噴射弁において,前記被覆体に,前記弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設け,この工具孔を前記クッションリングで水密に閉鎖することを第1の特徹とする。
【0007】
尚,前記吸気系構造体は,後述する本発明の実施例中のスロットルボディBに対応する。
【0008】
この第1の特徴によれば,被覆体の工具孔に挿入した工具により燃料入口筒の制御部を簡単に操作することができ,しかもその操作後は,燃料噴射弁を弾性支持するためのクッションリングを利用して工具孔を水密に閉鎖することができるので,特別な詰め物を施すことなく,工具孔への雨水等の浸入を防ぎ,弁ボディの発錆を回避することができ,また部品点数及び組立工程の削減によりコストの低減を図ることができる。
【0009】
また本発明は,第1の特徹に加えて,前記弁ボディを,可動コアを有する弁組立体及びこの弁組立体を閉弁方向に付勢する弁ばねを収容する弁ハウジングと,この弁ハウジングに連なり前記可動コアを吸引し得る中空の固定コアと,この固定コアに連なる燃料入口筒と,前記固定コアの外周に固設されてコイルを収容するコイルハウジングとで構成し,前記燃料入口筒には,前記弁ばねの固定端を進退させて該弁ばねのセット荷重を調整するリテーナパイプを挿入し,前記燃料入口筒の,前記工具孔に臨む部分を前記制御部となし,前記弁ばねのセット荷重調整後,この制御部をカシメることにより該燃料入口筒にリテーナパイプを固定することを第2の特徹とする。
【0010】
この第2の特徴によれば,リテーナパイプの進退による弁ばねのセット荷重の調整後,,被覆体の工具孔からカシメ工具により燃料入口筒の制御部をカシメることにより,燃料入口筒に該リテーナパイプを簡単に固定することができ,したがって弁ばねのセット荷重の調整作業を容易に行うことができる。
【0011】
さらに本発明は,第2の特徹に加えて,前記燃料入口筒を前記コイルハウジングより小径に形成すると共に,前記被覆体の,前記コイルハウジングを覆う大径部と,前記燃料入口筒を覆う小径部との境界に形成される段部を前記座面としたことを第3の特徴とする。
【0012】
この第3の特赦によれば,被覆体の,コイルハウジングを覆う大径部と,燃料入口筒を覆う小径部との間に必然的に形成される段部をクッションリングの座面に利用することで,被覆体に特別な座面を形成する必要がなく,被覆体の形状の構造の簡素化,延いては電磁式燃料噴射弁の小型化に寄与し得る。
【0013】
さらにまた本発明は,第1〜第3の特徴の何れかに加えて,前記クッションリングの内周面を前記被覆体外周面に,その全周に亙り水密に密着させることを第4の特徴とする。
【0014】
この第4の特徴によれば,クッションリングの回転方向嵌合位置に関係なく,クッションリングにより工具孔を確実に水密に閉鎖することが可能であり,組立性の向上に寄与し得る。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例に係る電磁式燃料噴射弁の,エンジンのスロットルボディへの取り付け状態を示す縦断面図,図2は2−2線断面図,図3は図2の3−3線断面図,図4はリテーナパイプの固定要領を示す,図3に対応する断面図である。
【0017】
先ず,図2により,電磁式燃料噴射弁Iの構成について詳細に説明する。電磁式燃料噴射弁Iの弁ハウジング2は,前端に弁座8を有する円筒状の弁座部材3と,この弁座部材3の後端部に同軸に結合される磁性筒体4と,この磁性筒体4の後端に同軸に結合される非磁性筒体6とで構成される。
【0018】
弁座部材3は,その外周面から環状肩部3bを存して磁性筒体4側に突出する連結筒部3aを後端部に有しており,この連結筒部3aを磁性筒体4の前端部内周面に圧入して,磁性筒体4の前端面を環状肩部3bに当接させることにより,弁座部材3及び磁性筒体4は互いに同軸且つ液密に結合される。磁性筒体4及び非磁性筒体6は,対向端面を突き合わせて全周に亙りレーザビーム溶接により互いに同軸且つ液密に結合される。
【0019】
弁座部材3は,その前端面に開口する弁孔7と,この弁孔7の内端に連なる円錐状の弁座8と,この弁座8の大径部に連なる円筒状のガイド孔9とを備えている。弁座部材3の前端面には,上記弁孔7と連通する複数の燃料噴孔11を有する鋼板製のインジェクタプレート10が液密に全周溶接される。
【0020】
非磁性筒体6の内周面には,その後端側から中空円筒状の固定コア5が液密に圧入固定される。その際,非磁性筒体6の前端部には,固定コア5と嵌合しない部分が残され,その部分から弁座部材3に至る弁ハウジング2内に弁組立体Vが収容される。
【0021】
弁組立体Vは,前記弁座8と協働して弁孔7を開閉する半球状の弁部16及びそれを支持する弁杆部17からなる弁体18と,弁杆部17に連結され,磁性筒体4から非磁性筒体6に跨がって,それらに挿入されて固定コア5に同軸で対置される可動コア12とからなっている。弁杆部17は,前記ガイド孔9より小径に形成されており,その外周には,半径方向外方に突出して,前記ガイド孔9の内周面に摺動可能に支承される前後一対のジャーナル部17a,17aが一体に形成される。その際,両ジャーナル部17a,17aは,両者の軸方向間隔を極力あけて配置される。
【0022】
弁組立体Vには,可動コア12の後端面から始まり半球状弁部16の球面中心Oを超えて行き止まりとなる縦孔19と,この縦孔19を,可動コア12外周面に連通する複数の第1横孔20aと,同縦孔19を両ジャーナル部17a,17a間の弁杆部17外周面に連通する複数の第2横孔20bと,同縦孔19を前側のジャーナル部17aより弁部18寄りで弁杆部17外周に連通する複数の第3横孔20cとが設けられる。その際,第3横孔20cは弁部18の球面中心Oよりも前寄りに配置されることが望ましく,また前側のジャーナル部17aは,弁部16の球面中心Oに極力近接して配置することが望ましい。
【0023】
縦孔19の途中には,固定コア5側を向いた環状のばね座24が形成されている。
【0024】
固定コア5は,可動コア12の縦孔19と連通する中空部21を有し,この中空部21に内部が連続する燃料入口筒26が固定コア5の後端に一体に連設される。燃料入口筒26は,固定コア5の後端に連なる縮径部26aと,それに続く拡径部26bとからなっており,その縮径部26aから中空部21に亙り挿入,固定されるリテーナパイプ23と前記ばね座24との間に可動コア12を弁体18の閉弁側に付勢する弁ばね22が縮設される。その際,リテーナパイプ23の中空部21への挿入深さにより弁ばね22のセット荷重が調整される。そのセット荷重の調整については,後で詳述する。
【0025】
燃料入口筒26の拡径部26bには燃料フィルタ27が装着される。
【0026】
弁組立体Vにおいて,可動コア12には,固定コア5の吸引面5aと対向する吸引面12aに嵌合凹部13が形成され,この嵌合凹部13に,前記弁ばね22を囲繞するカラー状のストッパ要素14が圧入により固定され,又は嵌合後,溶接もしくはカシメにより固定される。ストッパ要素14は非磁性材料で構成される。
【0027】
上記ストッパ要素14は可動コア12の吸引面12aから突出していて,通常,弁体18の開弁ストロークに相当する間隙sを存して固定コア5の吸引面5aと対置される。ストッパ要素14の吸引面12aから突出量gは,コイル30の励磁により可動コア12が固定コア5に吸引されて,可動コア12のストッパ要素14が固定コア5の吸引面5aに当接したとき,両コア5,12の吸引面5a,12a間に形成されるエアギャップに相当する。
【0028】
弁ハウジング2の外周には,固定コア5及び可動コア12に対応してコイル組立体28が嵌装される。このコイル組立体28は,磁性筒体4の後端部から非磁性筒体6全体にかけてそれらの外周面に嵌合するボビン29と,これに巻装されるコイル30とからなっており,このコイル組立体28を囲繞するコイルハウジング31の前端が磁性筒体4の外周面に溶接され,その後端には,固定コア5の後端部外周からフランジ状に突出するヨーク5bの外周面に溶接される。コイルハウジング31は円筒状をなし,且つ一側に軸方向に延びるスリット31aが形成されている。
【0029】
以上において,弁ハウジング2,固定コア5,ヨーク5a,燃料入口筒26及びコイルハウジング31によって弁ボディ1が構成される。この弁ボディ1の外周には,弁座部材3及び磁性筒体4の前端部と,燃料入口筒26の拡径部26bの後端部とを残して,その外周を覆う合成樹脂製の被覆体32が射出成形によりモールド成形される。その成形の際,合成樹脂はコイルハウジング31のスリット31aを通して内部にも充填されてコイル30を埋封する。また同時に,コイル30に連なる接続端子33を備えて被覆体32外周から突出するたカプラ34(図1参照)をも被覆体32と共に形成する。
【0030】
燃料入口筒26の拡径部26bはコイルハウジング31より小径になっており,これに伴ない被覆体32は,コイルハウジング31を覆う大径部32aと,燃料入口筒26を覆う小径部32bとの境界の段部32cとからなるように成形され,また前記カプラ34は,段部32cに近接して成形される。
【0031】
図2及び図3に示すように,上記を小径部32bには,同一直径線に並んで燃料入口筒26の縮径部26aの外周面に達する一対の工具孔40,40が設けられる。小径部32bの,これら工具孔40,40に露出する部分は制御部A,Aとされる。
【0032】
而して,前記弁ばね22のセット荷重の調整に当たっては,燃料入口筒26の縮径部26aから固定コア5の中空部21にリテーナパイプ23が隙間嵌めにより挿入され,その挿入深さを加減することにより,弁ばね22のセット荷重は調整される。その調整後,図4に示すように,工具孔40,40に挿入したカシメ工具T,Tをもって前記記制御部A,Aを半径方向内方へカシメることにより,燃料燃料入口筒26にリテーナパイプ23が固定される。
【0033】
こうして,弁ばね22のセット荷重が調整された後,被覆体32の小径部32b外周面には,ゴム等の弾性材からなるクッションリング35が工具孔40,40の開口部を閉鎖するように嵌合される。このクッションリング35は,その内径に小径部32b外周面に対する締め代が付与されていて,小径部32b外周面に全周に亙り水密に密着するようになっており,これにより工具孔40,40を水密に閉鎖することができる。被覆体32の大径部32a及び小径部32b間の段部32cは,このクッションリング35の一端面を支承する座面に形成される。
【0034】
また弁ハウジング2の,被覆体32の前端面から露出した部分の外周面にもクッションリング36が嵌合され,これは被覆体32の前端面で支承される。
【0035】
上記燃料噴射弁Iは,図1に示すように,エンジンの吸気系の一部を構成するスロットルボディBに取り付けられる。
【0036】
即ち,エンジンのスロットルボディBの一側壁には,スロットルバルブ41より下流の吸気道42に,その下流側に向かって斜めに開口する噴射弁受け入れ孔43と,その後端に連なる環状凹部44とが設けられ,噴射弁受け入れ孔43に燃料噴射弁Iの弁座部材3が,また環状凹部44にクッションリング36がそれぞれ挿入される。
【0037】
またスロットルボディBの一側壁には,燃料ポンプの吐出燃料を誘導する燃料供給管45を支持するブラケット46がボルト48で固着される。この燃料供給管45は一側にジョイント筒47を一体に形成しており,このジョイント筒47は,燃料噴射弁Iの被覆体32の小径部32b後端部にシール部材37を介して嵌合すると共に,このジョイント筒47前端のフランジ部47aでクッションリング35を座面32c側,即ちスロットルボディB側に押圧するように配置される。こうして燃料噴射弁Iは,前後のクッションリング35,36を介してスロットルボディB及び燃料供給管45との間で弾性支持される。その際,フランジ部47a及び座面32cは,クッションリング35の各端面に全周に亙り水密に密着し,これによっても,前記工具孔40,40は外部と水密に遮断される。
【0038】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0039】
コイル30を通電により励磁すると,それにより生ずる磁束が固定コア5,コイルハウジング31,磁性筒体4及び可動コア12を順次走り,その磁力により弁組立体Vの可動コア12が弁ばね22のセット荷重に抗して固定コア5に吸引され,弁体18が弁座8から離座するので,弁孔7が開放され,弁座部材3内の高圧燃料が弁孔7を出て,燃料噴孔11からスロットルボディBの吸気道42下流側に向けて噴射される。
【0040】
このとき,弁組立体Vの可動コア12に嵌合固定されたストッパ要素14が固定コア5の吸引面5aに当接することにより,弁体18の開弁限界が規定され,可動コア12の吸引面12aは,エアギャップgを存して固定コア5の吸引面5aと対向し,固定コア5との直接接触が回避される。特にストッパ要素14の,可動コア12の吸引面12aからの突出量の寸法管理により,上記エアギャップgを精密且つ容易に得ることができ,ストッパ要素14が非磁性であることゝ相俟って,コイル30の消磁時の両コア5,12間の残留磁気は速やかに消失して,弁体18の閉弁応答性を高めることができる。
【0041】
弁組立体Vは,その開閉動作中,弁杆部17上の前後一対のジャーナル部17a,17aが弁座部材3の内周面に摺動することにより,常に倒れのない適正な姿勢に保持されるので,燃料噴射特性の安定化を図ることができる。
【0042】
また弁組立体Vの外周面には,縦孔19に連通する第1〜第3横孔20a〜20cが開口しているから,縦孔19の流入した燃料は,第1〜第3横孔20a〜20cを通して,ジャーナル部17a,17aの摺動面,並びに可動コア12及び磁性筒体4間の間隙に供給され,ジャーナル部17a,17aのの摺動面の潤滑は勿論,可動コア12及び磁性筒体4の冷却を効果的に行うことができ,弁組立体Vの応答性及び耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0043】
また可動コア12を横切る第2横孔20bは,コイル30の励,消磁時,可動コア12に渦電流が生ずることを抑え,渦電流に起因する可動コア12の加熱を防ぐことができる。
【0044】
さらに半球状の弁部16の球面近くまで延びる深い縦孔19は,第1〜第3横孔20a〜20cと共に,燃料通路の役目を果す他に,弁組立体Vの贅肉を除去する役目をも果たし,弁組立体Vの軽量化,延いては応答性の向上に寄与する。
【0045】
ところで,このような電磁式燃料噴射弁Iにおいて,リテーナパイプ23の燃料入口筒26への挿入深さを加減して弁ばね22のセット荷重を調整した後は,被覆体32の工具孔40,40からカシメ工具T,Tにより燃料入口筒26の制御部A,Aをカシメることにより,燃料入口筒26にリテーナパイプ23を簡単に固定することができ,したがって弁ばね22のセット荷重の調整作業を容易に行うことができる。
【0046】
しかも上記調整後は,工具孔40,40は,燃料噴射弁IをスロットルボディBに弾性支持するためのクッションリング35により,これを水密に閉鎖するようにしたので,特別な詰め物を施すことなく,工具孔40,40への雨水等の浸入を防ぎ,弁ボディ1の発錆を回避することができる。その結果,部品点数及び組立工程が削減され,コストの低減を図ることができる。
【0047】
この場合,クッションリング35は,その内周面が被覆体32外周面に全周に亙り密着するようになっているから,クッションリング35の回転方向嵌合位置に関係なく,工具孔40,40を確実に水密に閉鎖することが可能であり,組立性の向上に寄与し得る。
【0048】
またクッションリング35を支承する座面32cは,被覆体32の,コイルハウジング31を覆う大径部32aと,燃料入口筒26を覆う小径部32bとの間に必然的に形成される段部を利用するので,そのための特別な座面を形成する必要がなく,被覆体32の形状の構造の簡素化,延いては電磁式燃料噴射弁Iの小型化に寄与し得る。
【0049】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,弁ボディの外周面にモールド成形される合成樹脂製被覆体に,該被覆体の外周面に嵌合される弾性材製のクッションリングの一端面を支承する座面を形成し,前記クッションリングを燃料供給管のジョイント筒により前記座面側に押圧することでエンジンの吸気系構造体に保持するようにした電磁式燃料噴射弁において,前記被覆体に,前記弁ボディに設けられる制御部を操作する工具の挿入のための工具孔を設け,この工具孔を前記クッションリングで水密に閉鎖するので,被覆体の工具孔に挿入した工具により燃料入口筒の制御部を簡単に操作することができ,しかもその操作後は,燃料噴射弁を弾性支持するためのクッションリングを利用して工具孔を水密に閉鎖することができ,したがって特別な詰め物を施すことなく,工具孔への雨水等の浸入を防ぎ,弁ボディの発錆を回避することができ,また部品点数及び組立工程の削減によりコストの低減を図ることができる。
【0051】
また本発明の第2の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記弁ボディを,可動コアを有する弁組立体及びこの弁組立体を閉弁方向に付勢する弁ばねを収容する弁ハウジングと,この弁ハウジングに連なり前記可動コアを吸引し得る中空の固定コアと,この固定コアに連なる燃料入口筒と,前記固定コアの外周に固設されてコイルを収容するコイルハウジングとで構成し,前記燃料入口筒には,前記弁ばねの固定端を進退させて該弁ばねのセット荷重を調整するリテーナパイプを挿入し,前記燃料入口筒の,前記工具孔に臨む部分を前記制御部となし,前記弁ばねのセット荷重調整後,この制御部をカシメることにより該燃料入口筒にリテーナパイプを固定するので,リテーナパイプの進退による弁ばねのセット荷重の調整後,被覆体の工具孔からカシメ工具により燃料入口筒の制御部をカシメることにより,燃料入口筒に該リテーナパイプを簡単に固定することができ,したがって弁ばねのセット荷重の調整作業を容易に行うことができる。
【0052】
さらに本発明の第3の特徴によれば,第2の特徴に加えて,前記燃料入口筒を前記コイルハウジングより小径に形成すると共に,前記被覆体の,前記コイルハウジングを覆う大径部と,前記燃料入口筒を覆う小径部との境界に形成される段部を前記座面としたので,被覆体の,コイルハウジングを覆う大径部と,燃料入口筒を覆う小径部との間に必然的に形成される段部をクッションリングの座面に利用することで,被覆体に特別な座面を形成する必要がなく,被覆体の形状の構造の簡素化,延いては電磁式燃料噴射弁の小型化に寄与し得る。
【0053】
さらにまた本発明の第4の特徴によれば,第1〜第3の特徴の何れかに加えて,前記クッションリングの内周面を前記被覆体外周面に,その全周に亙り水密に密着させるので,クッションリングの回転方向嵌合位置に関係なく,クッションリングにより工具孔を確実に水密に閉鎖することが可能であり,組立性の向上に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る電磁式燃料噴射弁の,エンジンのスロットルボディへの取り付け状態を示す縦断面図
【図2】2−2線断面図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】リテーナパイプの固定要領を示す,図3に対応する断面図
【符号の説明】
A・・・・・制御部
B・・・・・吸気系構造体(スロットルボディ)
I・・・・・電磁式燃料噴射弁
1・・・・・弁ボディ
5・・・・・固定コア
12・・・・可動コア
22・・・・弁ばね
23・・・・リテーナパイプ
26・・・・燃料入口筒
30・・・・コイル
31・・・・コイルハウジング
32・・・・被覆体
32a・・・大径部
32b・・・小径部
32c・・・段部(座面)
35・・・・クッションリング
40・・・・工具孔
45・・・・燃料供給管
47・・・・ジョイント筒
Claims (4)
- 弁ボディ(1)の外周面にモールド成形される合成樹脂製被覆体(32)に,該被覆体(32)の外周面に嵌合される弾性材製のクッションリング(35)の一端面を支承する座面(32c)を形成し,前記クッションリング(35)を燃料供給管(45)のジョイント筒(47)により前記座面(32c)側に押圧することでエンジンの吸気系構造体(B)に保持するようにした電磁式燃料噴射弁において,
前記被覆体(32)に,前記弁ボディ(1)に設けられる制御部(A)を操作する工具(T)の挿入のための工具孔(40)を設け,この工具孔(40)を前記クッションリング(35)で水密に閉鎖することを特徹とする,電磁式燃料噴射弁。 - 請求項1記載の電磁式燃料噴射弁において,
前記弁ボディ(1)を,可動コア(12)を有する弁組立体(V)及びこの弁組立体(V)を閉弁方向に付勢する弁ばね(22)を収容する弁ハウジング(2)と,この弁ハウジング(2)に連なり前記可動コア(12)を吸引し得る中空の固定コア(5)と,この固定コア(5)に連なる燃料入口筒(26)と,前記固定コア(5)の外周に囲設されてコイル(30)を収容するコイルハウジング(31)とで構成し,前記燃料入口筒(26)には,前記弁ばね(22)の固定端を進退させて該弁ばね(22)のセット荷重を調整するリテーナパイプ(23)を挿入し,前記燃料入口筒(26)の,前記工具孔(40)に臨む部分を前記制御部(A)となし,前記弁ばね(22)のセット荷重調整後,この制御部(A)をカシメることにより該燃料入口筒(26)にリテーナパイプ(23)を固定することを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。 - 請求項2記載の電磁式燃料噴射弁において,
前記燃料入口筒(26)を前記コイルハウジング(31)より小径に形成すると共に,前記被覆体(32)の,前記コイルハウジング(31)を覆う大径部(32a)と,前記燃料入口筒(26)を覆う小径部(32b)との境界に形成される段部を前記座面(32c)としたことを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。 - 請求項1〜3の何れかに記載の電磁式燃料噴射弁において,
前記クッションリング(35)の内周面を前記被覆体(32)外周面に,その全周に亙り水密に密着させることを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
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