JP3819343B2 - 圧電振動ジャイロ用柱状振動子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車のナビゲーションシステムや姿勢制御、カメラー体型VTRの手振れ防止装置等に用いられるジャイロスコープの内、特に圧電振動ジャイロ用柱状振動子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電振動ジャイロは、速度を持つ物体に角速度が与えられると、その物体自身に速度方向と直角な方向にコリオリ力が発生するという力学現象を利用した角速度センサである。
【0003】
電気的な信号を印加することで機械的な振動(駆動振動)を励起させることができ、且つ、駆動振動と直交する方向の機械的な振動(検出振動)の大きさを電気的に検出可能とした系において、予め、駆動振動を励起させた状態で、駆動振動面と検出振動面が交わる線と平行な軸を中心とした角速度を与えると、前述のコリオリ力の作用により、検出振動が発生し、出力電圧として検出される。検出された出力電圧は駆動振動の大きさおよび角速度に比例するため、駆動振動の大きさを一定にした状態では、出力電圧の大きさから角速度の大きさを求めることができる。
【0004】
振動ジャイロ用振動子には、様々な形状の振動子が提案されているが、圧電体からなる柱状の音片振動子は形状が簡素なことから小形で安価な振動ジャイロによく利用されている。また、圧電振動ジャイロ用柱状振動子の中でも、更なる小形・安価を目的とし柱状振動子の電極や支持の構造に工夫を施したものがこれまで提案されてきた。
【0005】
本出願人は、特許第3122925号公報に圧電振動ジャイロ用柱状振動子を提案している。その構造を図5に示す。図5に示すように、圧電体からなる柱状体21の一側面に、駆動電極23と検出電極22および24を備え、図中X方向の駆動振動の励振とY方向の検出振動の検出を可能とし、圧電振動ジャイロ用柱状振動子としての機能を満たすものである。一側面に全ての電極が備えられていることから、複数の側面に電極が備えられているのと比較し、スクリーン印刷やフォトリソグラフィー技術等で電極を形成し易い。従って、小形で安価な圧電振動ジャイロ用柱状振動子が得られる。しかしながら、この柱状振動子の支持については、特に小形で安価にできうる構造を提案することができず今後に課題を残していた。
【0006】
柱状振動子の支持の構造に関しては、従来、例えば、図6の特開平9−273934号公報に示されるものが提案されている。図6に示すように、導電性を有すると同時に屈曲部を有する支持部材35,36,37を用い、検出電極32,34と駆動電極33とを有する圧電体のバイモルフからなる柱状体31を支持することで、柱状振動子の図中X方向の駆動振動およびY方向の検出振動を抑制することなく、つまりは、振動ジャイロの感度等の諸特性に悪影響を及ぼすことなく、柱状振動子の電気的接続と機械的接続を同時に行い生産性を向上させることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6に示す従来の柱状振動子では、支持部材を柱状振動子の駆動電極33や検出電極32,34に接続するために精度良く位置決めした後、半田38等で接続する工程が必要であった。支持部材は、エッチング加工や曲げ加工もしくは抜き加工等で容易に得ることができるが、形状が細長いため、そりやねじれ等による寸法精度にばらつきが生じ易く、精度良く柱状振動子の屈曲振動のノード位置に支持部材を位置決めし、柱状振動子の電極に半田等で接続することは容易ではなかった。また、柱状振動子を中空に浮かせる構造であるので、機械的強度を十分考慮する必要があり、半田等の接続にある程度の接合面積を確保する必要があり、小形化の妨げもあった。
【0008】
本発明の目的は、電極形成および支持部材の組立てが容易で、機械的強度を損なうことのない、小型で安価な圧電振動ジャイロ用柱状振動子およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、圧電体からなる少なくとも1つ以上の平らな側面を有する柱状体に、第1の方向に屈曲振動させるのに必要な1つの駆動電極と、前記第1の方向に垂直な方向である第2の方向の屈曲振動を検出するのに必要な2つの検出電極を、前記1つの平らな側面に備え、前記屈曲振動のノード位置近傍で支持部材により支持される圧電振動ジャイロ用柱状振動子において、前記駆動電極および前記検出電極は前記支持部材と各々一体的に形成された金属体であることを特徴とする圧電振動ジャイロ用柱状振動子であり、圧電振動ジャイロ用柱状振動子において前記柱状体の前記1つの平らな側面にそれより面積が広い金属板を接合する工程と、前記金属板をエッチング加工することにより前記電極と前記支持部材を各々同時に形成する工程よりなる圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法により実現できる。
【0010】
即ち、本発明は、圧電体からなる柱状体の一側面に、第1の方向に屈曲振動させる1つの駆動電極と、前記第1の方向に垂直な方向である第2の方向の屈曲振動を検出する2つの検出電極を形成し、前記屈曲振動のノード位置近傍で支持部材により支持する圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法において、前記柱状体の一側面に、該側面より面積が広い金属板を接合する工程と、前記金属板をエッチング加工することにより、前記電極と前記支持部材を各々同時に形成する工程よりなる圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法である。
【0011】
また、本発明は、圧電体からなる柱状体の一側面に、第1の方向に屈曲振動させる1つの駆動電極と、前記第1の方向に垂直な方向である第2の方向の屈曲振動を検出する2つの検出電極を形成し、前記屈曲振動のノード位置近傍で支持部材により支持する圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法において、前記柱状体の一側面より面積が広い金属板上に物理的気相成長法、液相成長法、もしくは圧電体の微粒子を高速で衝突させる方法のいずれかで前記圧電体からなる柱状体を形成して、前記柱状体の一側面と前記金属板を接合する工程と、前記金属板をエッチング加工することにより、前記電極と前記支持部材を各々同時に形成する工程よりなる圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態における圧電振動ジャイロ用柱状振動子およびその製造方法について、以下に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子の斜視図である。本発明における柱状振動子は、圧電体からなる断面四角形の柱状体1の一側面に、金属からなる線状の駆動電極3および検出電極2,4の計3本の電極を、柱状体1の長手方向に平行に施してなる。尚、柱状体1には、検出電極2,4を短絡し、駆動電極3との間に、高電界を印加する。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子における屈曲振動の腹部近傍の断面図である。図2に示すように、柱状体1の腹部付近の断面図における図中矢印Pの方向に分極処理が施される。この構成により、本発明における柱状振動子は、図中X方向の駆動振動の励振とY方向の検出振動の検出を可能とし、圧電振動ジャイロ用柱状振動子としての機能を満たす。
【0015】
また、図1に示すように、各々の電極を、屈曲振動のノード近傍にて、柱状体1の側面から突出させ、電極を延長形成すると同時に途中に屈曲部を持たせる。延長形成された電極は、柱状体の支持の役割を果たすと同時に、各電極の入出力配線の機能を兼ねる。延長形成された電極の先端は、駆動検出回路につながる端子等に接続固定する(図示せず)。尚、本発明の柱状振動子は、特許第3122925号公報の簡易的構成の回路に接続することで、圧電振動ジャイロとして機能する。
【0016】
次に、本発明の実施の形態における具体的な製造方法について、図3および図4を用いて以下に説明する。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造工程において、金属板と圧電体の接合の一例を示す説明図である。図3(a)は、圧電体平板に凹凸を形成した状態の説明図である。図3(b)は、圧電体平板と金属板とを接合した状態の説明図であり、図3(c)は、図3(b)の状態で下側を研磨した状態の説明図である。
【0018】
図3(a)に示すように、圧電体平板11の片面にダイシング等により、等間隔にスリットを形成し、圧電体平板に凹凸を形成する。次に、凸面11aをそのまま、あるいはメタライジング処理後に鏡面研磨し、凸面11aに金属板5を重ねあわせ、高温中あるいは真空中で加圧することで、図3(b)に示すように、圧電体平板11と金属板5を強固に接合する。
【0019】
接合後、圧電体平板11を底面11b側から凸部が完全に独立するまで、研磨等で削り落とし、図3(c)に示すように、複数の柱状体1が金属板5に精度良く等間隔に配列接合されたものが得られる。図3(c)に示すものを得る方法としては、この外に、真空蒸着・スパッタ等の物理的気相成長法やゾルゲル法・水熱合成法等の液相成長法による圧電膜形成、更には圧電体の微粒子を高速で金属板に衝突させる方法等で、複数の柱状体1を金属板5に精度良く配列し直接的に接合させることができる。
【0020】
図4は、本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造工程において、金属板のエッチング加工の一例を示す説明図である。図4(a)は、複数の柱状体を接合した金属板の拡大図であり、図4(b)は、表面全体をレジストコーティングした状態の説明図であり、図4(c)は、レジストをパターニングした状態の説明図であり、図4(d)は、金属板をエッチングした状態の説明図であり、図4(e)は、仕上がった柱状振動子の説明図である。
【0021】
図4(a)は、複数の柱状体を接合した金属板5の内、一つの柱状体を拡大し示すものである。次の段階として、図4(b)に示すように、表面全体をレジスト6にてコーティングする。
【0022】
次に、所定のパターンを有するメタルマスクを用いて露光し、不要な部分を除去することで、図4(c)に示すように、レジスト6をパターニングする。次に、金属板5の露出部分をエッチングすることで、図4(d)に示す形状に金属板5を加工する。次に、すべてのレジストを削除することで、図4(e)に示すように、電極と支持部が一体となった柱状振動子が同時に複数得ることができる。
【0023】
最後に、個片にカットすることで、図1に示す柱状振動子が得られる。尚、個片にカットする前の段階では、複数の柱状体における各々の電極が支持部材を介して短絡しているため、この段階にて、複数の柱状体を一度に分極処理することが生産性上好ましい。
【0024】
【発明の効果】
本発明における圧電振動ジャイロ用柱状振動子およびその製造方法によれば、構成部材の寸法精度にばらつきが生じ難いため、電極形成および支持部材の組立てを精度良く容易に実現できる。また、分極処理も含め、複数の柱状振動子を同時に製造することが可能となり生産性にも優れる。また、組立てに半田等を使用することがないため、組立てばらつきによる機械的強度のばらつきが生じ難く、また柱状体の側面の大部分にて支持部材が接合される構造であることから、機械的強度にも優れる。このため、信頼性を損なうことなく小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子の斜視図。
【図2】本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子における屈曲振動の腹部近傍の断面図。
【図3】本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造工程において、金属板と圧電体の接合の一例を示す説明図。図3(a)は、圧電体平板に凹凸を形成した状態の説明図。図3(b)は、圧電体平板と金属板とを接合した状態の説明図、図3(c)は、図3(b)の状態で下側を研磨した状態の説明図。
【図4】本発明の実施の形態による圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造工程において、金属板のエッチング加工の一例を示す説明図。図4(a)は、複数の柱状体を接合した金属板の拡大図、図4(b)は、表面全体をレジストコーティングした状態の説明図、図4(c)は、レジストをパターニングした状態の説明図、図4(d)は、金属板をエッチングした状態の説明図、図4(e)は、仕上がった柱状振動子の説明図。
【図5】従来における振動ジャイロ用柱状振動子を示す斜視図。
【図6】従来における他の振動ジャイロ用柱状振動子を示す斜視図。
【符号の説明】
1,21,31 柱状体
2,4,22,24,32,34 検出電極
3,23,33 駆動電極
5 金属板
6 レジスト
11 圧電体平板
11a 凸面
11b 底面
35,36,37 支持部材
38 半田
Claims (2)
- 圧電体からなる柱状体の一側面に、第1の方向に屈曲振動させる1つの駆動電極と、前記第1の方向に垂直な方向である第2の方向の屈曲振動を検出する2つの検出電極を形成し、前記屈曲振動のノード位置近傍で支持部材により支持する圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法において、前記柱状体の一側面に、該側面より面積が広い金属板を接合する工程と、前記金属板をエッチング加工することにより、前記電極と前記支持部材を各々同時に形成する工程よりなることを特徴とする圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法。
- 圧電体からなる柱状体の一側面に、第1の方向に屈曲振動させる1つの駆動電極と、前記第1の方向に垂直な方向である第2の方向の屈曲振動を検出する2つの検出電極を形成し、前記屈曲振動のノード位置近傍で支持部材により支持する圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法において、前記柱状体の一側面より面積が広い金属板上に物理的気相成長法、液相成長法、もしくは圧電体の微粒子を高速で衝突させる方法のいずれかで前記圧電体からなる柱状体を形成して、前記柱状体の一側面と前記金属板を接合する工程と、前記金属板をエッチング加工することにより、前記電極と前記支持部材を各々同時に形成する工程よりなることを特徴とする圧電振動ジャイロ用柱状振動子の製造方法。
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