JP3818946B2 - 多段式浮上ろ材上向流ろ過装置 - Google Patents

多段式浮上ろ材上向流ろ過装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水、上水原水、工場排水など懸濁粒子、リン酸イオン、フッ素イオン、金属イオン、色度成分、COD成分など除去対象物質を含有する被処理水(以下「原水」ともいう)の新概念による浮上分離装置に関し、原水中の除去対象物質を、従来の凝集沈殿法又は浮上分離の100倍以上の超高速度で浮上分離できる革新技術に関する。
【0002】
本発明の適用分野は、従来の凝集沈殿法が適用される分野にすべて適用できるが、特に、合流式下水道の雨天時越流水(「CSO」と略称される)、又は下水処理施設に流入する下水、湖沼水の浄化、上水処理の超高速固液分離技術として好適な革新技術に関する。
【0003】
【従来の技術】
従来、懸濁液からSSをろ過除去する技術は、砂、アンスラサイトなどの粒状鉱物をろ材とする深層ろ過が公知であるが、下水などの有機性SSを除去しようとすると、目詰まりが激しく、実用的でなかった。
【0004】
アンスラサイト、砂以外の各種粒状固体(例えばプラスチック粒子)をろ材とするろ過法も検討されているが、ろ材粒径を大きくして目詰まりを少なくすると、SSの除去率が悪化してしまうなどの矛盾点が生じた。特に、下水などが含む有機性SSは粘着力が強いので、これら下水などを対象として非常に大きなろ過速度が取れ、SS除去率が高く、かつ目詰まりが少ないという相反する要求を満足できる下水ろ過技術は従来無かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
最近合流式下水道における雨天時越流水(CSO)の公共用水域への汚濁負荷が大きな問題になっている。合流式下水道の雨天時越流水(CSO)は短時間に膨大な水量が発生するので、超高速度で固液分離でき、SSが除去された処理水を公共用水域に放流する必要があるが、従来超高速度で固液分離する優秀な技術がなかった。
本発明は、このような実情よりなされたものであり、下水などの有機性SSのろ過に適した超高速ろ過装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の手段により前記の課題を解決した。
(1)仕切り板で上下方向に多段に区画された浮上ろ材ろ過層を有する上向流ろ過装置の各区画に、前記ろ過層の上下を区画するように浮上ろ材流出阻止用多孔部材を配備し、前記各区画のろ過層の下方に被処理水流入部と前記最上段のろ過層の上方にろ過水流出部を配備し、かつ各ろ過層の底部の浮上ろ材流出阻止用多孔部材下に開閉弁付き排水口を設け、前記多段ろ過層の各段の底部に散気部材を設け、かつ下から2段目以上の各ろ過層に、下段のろ過層の上方の前記多孔部材の上に開口し、そのろ過層内を高さ方向に貫いてそのろ過層の上方の前記多孔部材の上で開口するろ過水・気泡流出管を設けたことを特徴とする多段式浮上ろ材上向流ろ過装置。
(2)前記(1)に記載の多段式浮上ろ材上向流装置の被処理水流入を止め、各ろ過層を散気したのち空気泡をろ過水・気泡流出管を経由して装置外に排出した後、排水口の開閉弁を開放し、ろ過水の下降水流をろ過層に生起させ、ろ過層を下向きに膨張させ捕捉されていたSSを下方部に排出し、各ろ過層内の水を排水することを特徴とする多段式上向流ろ過装置の洗浄方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の上向流ろ過装置を図1に示す。以下に図1を参照しながら、本発明の構成例を説明し、その後作用について記述するが、以下の構成例及び作用の説明は本発明を制限するものではない。
【0008】
図1において、上向流ろ過装置1は仕切り板2で3層の多段ろ床に区画されており、その下層ろ床を3A、中間層ろ床を3B、最上層ろ床を3Cとする。3A〜3Cにはリング状の浮上性中空円筒ろ材4が充填されており、ろ過層5、5、5の上部にろ材4浮上阻止用の多孔部材(網など)6、及び排水時のろ材の流出を阻止するため各区画の底部には多孔部材(網など)6が設けてある。
ろ材4は、各ろ床3の空間いっぱいには充填されておらず、下部に膨張できる余裕空間Sを有する。ろ材4は浮力によって多孔部材(網など)6の位置にまで押し上げられている。
【0009】
各ろ床3に充填される浮上ろ材は、中空円筒ろ材4などの充填空隙率が大きいものを用いる。筒状粒状体の筒の側面部に水が通過できる開口部を開けておくと、下水中のSSが筒の内部に沈殿し、除去され易くなるので好都合である。ろ過層5の厚さは0.7〜0.8m程度が好適であり、ろ材4の粒径は直径が10mm、長さ10mm程度の粒径のろ材4を用いることがSS除去効果を高めることができ好ましい。また、洗浄し易くするため浮上ろ材4の比重は0.9以上で1.0に近い方が好ましい。
【0010】
しかして、原水9は原水供給管11より各ろ床3A、3B、3Cの下部に供給され、原水9は、各ろ床3A、3B、3Cをろ過速度1m/min以上という高速度で上向流で通過してろ過され、ろ過層5を垂直方向に貫通しているろ過水・気泡流出管8から上段の区画に流出し、最終的に最上段のろ過水流出管13からろ過水4として装置1外に流出してゆく。
【0011】
したがって、3段のろ床3A、3B、3Cの場合は、設置面積当たり単一ろ過層の3倍の処理能力が得られ、3m3/m2・min以上という極めて大きな処理能力を発揮でき、極めて設置面積が小さなろ過装置1で多量の原水9をろ過処理できる。
たとえば、本発明の3段ろ過装置1によれば、10万m3/日という多量の雨天時下水を、わずか一辺4.8m角のろ過装置でろ過できるという顕著な効果がある。
【0012】
ろ床3を構成する中空円筒状ろ材4は、粒状体の内部及び側面が空隙であるため、充填空隙率が95%以上と極めて大きく保てる。従って、多量のSSを捕捉しても空隙率が大きいままで維持できるため、高いろ過速度で通水してもろ過抵抗の増加が少ない。粒径10mm程度の中空円筒状ろ材4が充填されているろ過層5を原水9が通過する間に、下水中の粒子のうち粒径が50ミクロン以下の小さいものは除去されないが、粒径が70ミクロン以上の粒子がろ過除去されるので、凝集剤を添加することなくSS除去率は50%〜60%程度が得られる。
【0013】
以上のような方法でろ過を続けると、ろ床3A、3B、3Cのろ過抵抗が所定値(たとえば2m水頭)に達するので、原水9の流入を止め、ろ床3A、3B、3Cを次のような方法で洗浄する。
まず、各ろ過層5、5、5の底部の散気部材7から空気泡を吐出させて、ろ過層5、5、5内の粒状体を激しく撹乱させ、付着されていたSSを剥離する。空気泡はろ過層5、5中央のろ過水・気泡流出管8を通って装置1外に出てゆく。次に洗浄廃水流出弁17を開放し、洗浄廃水19を排水し、各ろ過層5、5、5区画内の水のほぼすべてを排出する。このような簡単な操作でろ過層5、5、5が短時間(5分程度)で効果的に洗浄される。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例により何等制限されるものではない。
【0015】
(実施例1)
図1に示した本発明の3段式上向流ろ過装置(透明塩化ビニール樹脂製、カラム直径200mmφの円筒、高さ4000mm)を用いて、団地下水(平均SS含有量130mg/リットル、平均BOD 110mg/リットル)を対象にして、ろ過速度1m/minという高ろ過速度で上向流ろ過を行い下水からのSS除去試験を行った。
【0016】
ろ過層構成は、材質が比重0.9のポリプロピレンであり、大きさが直径10mmφ、長さ80mmであり、側面の壁に斜め格子状の開口部を開けたものからなる中空円筒粒状物を、厚み1mの層として充填したもので構成した。
【0017】
前記3段式上向流ろ過装置に、下水に含まれる平均SS量が130mg/リットルという高SSの原水を、ろ過速度1m/minという高ろ過速度でろ過処理した結果、ろ過抵抗が2m水頭に達するまでのろ過持続時間は45分間であり、その間の平均処理水SSは、35mg/リットルという好成績が得られた。
ろ過速度が1m/minであり、3段式ろ過装置なので、装置単位設置面積あたりのろ過可能水量は、3(m3/m2・min)という従来考えることができなかった驚異的な高ろ過速度が得られた。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の優れた効果が得られる。
(1)単位設置面積あたりの処理水量が従来考えられなかったほど大きい。従って極めてコンパクトな装置で大水量の雨天時下水をろ過処理できる。
(2)ろ過層空隙率が大きいので、ろ過層の目詰まりによるろ過抵抗の増加が少ない。
(3)充填層が短時間かつ効果的に洗浄でき、しかも洗浄用水として処理水を多量に使用する必要がないので、処理水生産効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多段式浮上ろ材上向流ろ過装置の一実施態様を示す説明用略図である。
【符号の説明】
1 上向流ろ過装置
2 仕切り板
3A、3B、3C ろ床
4 浮上性中空円筒ろ材
5 ろ過層
6 多孔部材(網)
7 散気装置
8 ろ過水・気泡流出管
9 原水
10 ポンプ
11 原水供給管
12 ろ床上部
13 ろ過水流出管
14 ろ過水
15 ブロワ
16 洗浄時排気
17 洗浄廃水流出弁
18 洗浄廃水流出管
19 洗浄廃水

Claims (2)

  1. 仕切り板で上下方向に多段に区画された浮上ろ材ろ過層を有する上向流ろ過装置の各区画に、前記ろ過層の上下を区画するように浮上ろ材流出阻止用多孔部材を配備し、前記各区画のろ過層の下方に被処理水流入部と前記最上段のろ過層の上方にろ過水流出部を配備し、かつ各ろ過層の底部の浮上ろ材流出阻止用多孔部材下に開閉弁付き排水口を設け、前記多段ろ過層の各段の底部に散気部材を設け、かつ下から2段目以上の各ろ過層に、下段のろ過層の上方の前記多孔部材の上に開口し、そのろ過層内を高さ方向に貫いてそのろ過層の上方の前記多孔部材の上で開口するろ過水・気泡流出管を設けたことを特徴とする多段式浮上ろ材上向流ろ過装置。
  2. 請求項1に記載の多段式浮上ろ材上向流装置の被処理水流入を止め、各ろ過層を散気したのち空気泡をろ過水・気泡流出管を経由して装置外に排出した後、排水口の開閉弁を開放し、ろ過水の下降水流をろ過層に生起させ、ろ過層を下向きに膨張させ捕捉されていたSSを下方部に排出し、各ろ過層内の水を排水することを特徴とする多段式上向流ろ過装置の洗浄方法。
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