JP3817933B2 - 画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法などに適用される画像形成方法であり、特に、デジタル静電潜像から画像を得るための画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法においては、感光体上に形成された静電潜像に現像剤中のトナーを付着させトナー画像を形成し、これを転写材である紙やプラスチックフィルム上に転写後、加熱等により定着して画像を形成する。ここで用いる現像剤は、トナーとキャリアからなる二成分現像剤と、トナーのみからなる非磁性あるいは磁性の一成分現像剤とがあるが、二成分現像剤はキャリアが現像剤の攪拌・搬送・帯電等の機能を分担し、制御性が良い等の特徴を有しているため、現在広く用いられている。
【0003】
一方、電子写真法を用いたプリンターや複写機ではここ数年でカラー化が進み、また装置の解像度の向上から静電潜像が細密化してきている。これに伴い、静電潜像に対し忠実に現像を行い、より高画質画像を得るために、近年、トナーの小径化が進んでいる。特にデジタル潜像を有彩色トナーにより現像・転写・定着するフルカラー複写機においては、7〜8μmの小粒径トナーを採用して、ある程度の高画質を達成している。
【0004】
これらプリンターや複写機において、紙やプラスチックフィルム等の転写材表面に付着させた未定着のトナー画像を定着する方法としては、常温で圧力ロールのみを用いる圧力定着方式、加熱ロールを用いる熱ロール方式(以下、「接触加熱型定着方式」という)等の接触定着方式と、オーブン加熱によるオーブン定着方式、キセノンランプ等によるフラッシュ定着方式、マイクロ波等による電磁波定着方式、溶剤蒸気を用いる溶剤定着方式等の非接触定着方式とがある。
【0005】
接触定着方式の中で、圧力定着方式は、圧力定着トナーの定着強度が低いため、ほとんど採用されていないのが実情である。これに対し、接触加熱型定着方式は、熱効率が良く、比較的コンパクトであり、温度制御がし易く、かつ信頼性が高いことから、現在広く使用されている。
【0006】
接触加熱型定着方式は、高画質を達成する必要のあるフルカラー複写機においても主流となっているが、その場合、熱定着に使用する加熱ロールや加圧ロールの材料構成、定着ニップ構造等が、フルカラー画像の発色性や画像光沢、画像の広がり等の画質に関係する特性や、定着時における転写材のロールからの離型性を決定している。
【0007】
画像を定着するためにはトナーを転写材上で十分に溶融させることが必要となる。転写材上の溶融したトナーと接触する加熱ロール表面には、転写材との離型性を確保すべく多量のシリコーンオイルを供給しておくことが多い。しかしながら、定着時転写材上にこのシリコーンオイルが転移してしまい、定着後の転写材への鉛筆あるいはボールペン等による加筆が困難になる等の問題がある。このような問題を解決すべく、シリコーンオイルの供給量を低減したり、あるいはシリコーンオイルを用いないいわゆるオイルレス定着ロール方式が検討されてはいるものの、これらはプリント枚数の増加とともに離型性が徐々に低下するため、オフセット現象の発生までの耐久性について、より一層の向上が望まれている。
【0008】
また、フルカラー複写機においては、シアン、マゼンタ、およびイエローの各トナーのうち、単色、および2色あるいは3色を重ね合わせることによりフルカラー画像を形成しているが、特に上記3色のトナーを重ね合わせるプロセスブラックでは、転写材上の未定着のトナー画像(以下、「転写画像」という)の画像厚みが極めて大きくなりやすい。このような画像厚みの大きなプロセスブラックの部位は、加熱ロールによる定着時に転写画像に加わる圧力が大きくなり、単色画像等の画像厚みが比較的小さい部位に比べてトナーが溶融しやすくなるため、画像光沢が高くなり、同一画像内で画像光沢の高い部位と低い部位とが混在することとなり、見た目の質感が大きく低下する場合がある。この現象を防止するため、加熱ロール表面に硬度の低いゴム層を設けることにより、転写画像に対する加熱ロール表面の追従性を改良する試みが為されてはいるものの、上記画像光沢の程度差による画質低下を完全には解決しきれていない。
【0009】
さらに、このような画像厚みの大きい部分については、既述の如くトナーが溶融しやすくなるため、加熱ロールへのトナーのオフセットが生じやすいといった問題;画像厚みが大きいがゆえに、定着時にトナーが横方向に広がる割合が大きく、細線を含む画像を定着した場合に当該細線が太くなってしまい、解像度が低下する問題;そして定着後の画像厚みも大きくなるため、外力が加わった場合に傷つきやすく、画像の耐久性が低いといった問題;がある。
【0010】
これに対し、非接触定着方式では、未定着の転写画像のトナー層を押しつぶすことなく定着できるため、上記接触定着方式の欠点の多くを解消できる。
しかしながら、非接触定着方式では、未定着の転写画像のトナー層が押しつぶされることによる問題はないものの、転写材上の未定着の転写画像の画像厚みが大きくなると、以下に示すような非接触定着方式特有の問題が生じてくる。
【0011】
1)非接触定着方式のうち、最も一般的なオーブン定着方式では、画像厚みが大きい転写画像を定着するに十分なだけトナーを溶融すべく、特にフルカラー画像形成における2次色あるいは3次色の場合には、十分な発色性を確保すべく、加熱温度を高く、または、加熱時間を長くする必要が生じ、エネルギーコストの上昇を招く。
2)細線や微小ドットの画像においては、溶融トナー自身の自己凝集性のため未定着の転写画像の画像厚みよりもより厚くなる傾向があり、外的な力により画像が壊れやすい。
【0012】
このように非接触定着方式のメリットである、未定着の転写画像のトナー層を押しつぶすことなく定着できることは、逆にデメリットともなり、未定着の転写画像の画像厚みがより大きくなる大粒径のトナーを用いた場合や、異なる色相のトナーを積層してなるフルカラー画像を形成する場合には、上記デメリットが顕著となる。言い換えれば、非接触方式のメリットを生かしつつ、デメリットを最小限に抑えるには、未定着の転写画像の画像厚みをより小さくすることが望まれる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、細線再現性および階調性が良好で、かつ、オフセット印刷によって形成される画像と同等またはそれ以上の画質を達成することが可能な画像形成方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、非接触型定着装置を用いるメリットを生かしつつ、デメリットを最小限に抑え得る画像形成方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により達成される。即ち、本発明は、
<1>潜像担持体上に形成された静電潜像を、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する着色粒子からなるトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写材上に転写して転写画像を形成する転写工程と、転写材上に転写された転写画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法において、
前記着色剤が顔料粒子であり、着色粒子の真比重及び体積平均粒径、並びに着色粒子中の顔料濃度が以下の式(1)を満たし、転写工程で、転写材上に転写される転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量が、0.40mg/cm2 以下であり、
定着工程が、非接触型定着装置を用いて転写材上に転写された転写画像を定着する工程である、
ことを特徴とする画像形成方法である。
25≦a・D・C≦90・・・(1)
(式中、aは着色粒子の真比重(g/cm 3 )を、Dは着色粒子の体積平均粒径(μm)を、Cは着色粒子中の顔料濃度(重量%)をそれぞれ示す。)
【0015】
また、本発明は、
<2>潜像担持体上に形成された静電潜像を、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する着色粒子からなるトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写材上に転写して転写画像を形成する転写工程と、転写材上に転写された転写画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法において、
前記着色剤が顔料粒子であり、着色粒子の真比重及び体積平均粒径、並びに着色粒子中の顔料濃度が以下の式(1)を満たし、転写工程で、転写材上に転写される転写画像が、少なくともシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナーにより積層された画像であり、転写材上にシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナーによりプロセスブラックが形成された際の転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量が、3色合計で1.20mg/cm2 以下であり、
定着工程が、非接触型定着装置を用いて転写材上に転写された転写画像を定着する工程である、
ことを特徴とするフルカラーの画像形成方法である。
25≦a・D・C≦90・・・(1)
(式中、aは着色粒子の真比重(g/cm 3 )を、Dは着色粒子の体積平均粒径(μm)を、Cは着色粒子中の顔料濃度(重量%)をそれぞれ示す。)
【0016】
さらに本発明は、以下の構成を併せ持つことが好ましい。
(i)<2>の本発明において、転写工程で、転写材上に転写される転写画像が、少なくともさらにブラックのトナーの4色のトナーにより積層された画像であること。
(ii)<1>または<2>の本発明において、トナー画像を形成するトナーが、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する着色粒子からなり、かつ、着色粒子の体積平均粒径が1.0〜5.0μmであり、1.0μm以下の着色粒子が20個数%以下であり、5.0μmを超える着色粒子が10個数%以下であること、より好ましくは、さらに1.0〜2.5μmの着色粒子が5〜50個数%の範囲であること。
【0018】
(iii)トナー画像を形成するトナーが、さらに外添剤を有すること、より好ましくはその外添剤が、少なくとも30nm以上200nm以下の一次粒子平均粒径を有する超微粒子の1種以上と、5nm以上30nm未満の一次粒子平均粒径を有する極超微粒子の1種以上とからなり、
下式(2)で求められる着色粒子表面に対する外添剤の被覆率が、超微粒子Faおよび極超微粒子Fb の双方について20%以上であり、全外添剤の被覆率の合計が100%以下であること。
F=√3・D・ρt ・(2π・d・ρa )−1・C×100 ・・・(2)
(上記式中、Fは被覆率(%)、Dは着色粒子の体積平均粒径(μm)、ρt は着色粒子の真比重、dは外添剤の一次粒子平均粒径(μm)、ρa は外添剤の真比重、およびCは外添剤の重量x(g)と着色粒子の重量y(g)との比(x/y)をそれぞれ表す。)
【0019】
(i v)非接触型定着装置が、非接触型加熱定着装置であること、より好ましくはその非接触型加熱定着装置が、
トナー画像が転写された転写材を支持し、装置内で搬送を行うための搬送手段と、
該搬送手段によって搬送される転写材の片面に、もしくは両面に対向して配置された熱源を有し、該熱源からの熱の輻射および/または対流によりトナー画像を加熱して定着を行う加熱手段と、
を有する定着装置であること。
(v)定着工程の後に、さらに加圧ロールにて、転写材を加圧する加圧工程を設けること。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の画像形成方法を工程毎に分けて詳細に説明する。
[現像工程]
本発明において現像工程とは、潜像担持体上に形成された静電潜像を、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する着色粒子からなるトナーにより現像してトナー画像を形成する工程であり、電子写真においては、潜像担持体に対向して配置された現像剤担持体の表面に現像剤層を形成せしめ、該現像剤層により潜像担持体表面に形成された静電潜像を現像する。現像剤層は、現像剤担持体表面に磁性キャリアがブラシ状に形成され、これにトナーが付着したいわゆる磁気ブラシにより形成される。以下、本発明に用いることが好ましいトナーおよびキャリアについて説明する。
【0021】
A.トナー
本発明に好ましく用いられるトナーは、着色粒子の体積平均粒径が1.0〜5.0μmであり、1.0μm以下の着色粒子が20個数%以下であり、5.0μmを超える着色粒子が10個数%以下であるトナーである。
【0022】
以下、本発明に好ましく用いられるトナーについて、詳細に説明する。
(a)着色粒子の粒径および粒度分布
細線の再現性や階調性の向上を達成する上で、着色粒子の体積平均粒径としては少なくとも5.0μm以下であることが好ましい。5.0μmを超えると、粗大粒子の比率が大きくなり細線再現性や階調性が低下する場合がある。なお、本発明でいう「細線の再現性」とは、主として30〜60μm、好ましくは30〜40μmの幅の細線を忠実に再現可能か否かを意味し、さらに同程度の径のドットを再現し得るかについても考慮に入れたものである。
【0023】
一方、着色粒子の体積平均粒径の下限値としては、1.0μm以上とすることが好ましい。1.0μm未満であると、トナー粒子全体に占める1〜2μm領域の小径トナーの割合が多くなるため、トナーとしての粉体流動性、現像性、あるいは転写性が悪化し、感光体表面に残留するトナーのクリーニング性が低下する等、粉体特性低下に伴う種々の不具合が生じてくる可能性があるからである。
【0024】
以上を考慮して、着色粒子の体積平均粒径の範囲としては1.0〜5.0μmであり、好ましくは2.0〜4.5μm、より好ましくは2.0〜4.0μm、さらに好ましく2.0〜3.5μmである。本発明において、体積平均粒径の範囲を以上のような範囲にすることにより、転写工程で、単色の場合転写材上に転写される転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量を0.40mg/cm2 以下、あるいは、フルカラーの場合転写材上にシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナーによりプロセスブラックが形成された際の転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量を1.20mg/cm2 以下とした場合にも、細線再現性、階調性、あるいは粒状性が良好となり、一般にトナー重量を低減した場合に生ずる可能性がある細線や微小ドットのかすれの問題が解消される。
【0025】
本発明に用いるトナーにおいては、さらに着色粒子の粒度分布を規定することが好ましい。具体的には、全着色粒子中、1.0μm以下の着色粒子が20個数%以下であり、5.0μmを超える着色粒子が10個数%以下であるような粒度分布とすることが好ましい。
【0026】
全着色粒子中1.0μm以下の着色粒子が20個数%を超えると、非画像部のカブリが発生し易く、またクリーニング不良も生じ易くなる。さらに好ましくは、全着色粒子中1.0μm以下の着色粒子が10個数%以下である。
【0027】
一方、全着色粒子中5.0μmを超える着色粒子が10個数%を超えると、本発明の目的とするところの細線再現性の向上が達成しづらくなってしまう。さらに好ましくは、全着色粒子中5.0μmを超える着色粒子が5個数%以下である。
【0028】
また、着色粒子の粒度分布の大粒径側を規定するパラメーターとして、本発明においては5.0μmを超える着色粒子の個数%を用いたが、基準とする粒径を他の数値で規定することもできる。具体的には4.0μmを基準の粒径とした場合、全着色粒子中、4.0μm以下の着色粒子が75個数%以上であることが好ましい。なお、本発明のトナーにおける着色粒子の体積平均粒径や粒度分布の状況から見て、全着色粒子中4.0μm以下の着色粒子が75個数%以上である場合には、5.0μmを超える着色粒子は、一般に10個数%以下となる。
【0029】
本発明におけるトナー中の着色粒子の粒度分布としては、得られる画像の極ハイライト部の再現に要求される微小ドットを忠実に再現すべく、さらに全着色粒子中、1.0〜2.5μmの着色粒子が5〜50個数%であることが好ましく、より好ましくは10〜45個数%である。1.0〜2.5μmの着色粒子が50個数%を超えると現像時により大径側の着色粒子が選択的に消費される選択現像が生じやすく、1.0〜2.5μmの比較的小径の着色粒子が消費されにくくなり、多数枚複写時のカブリやクリーニング不良といった不具合を起こしやすくなるため好ましくない。一方、1.0〜2.5μmの着色粒子が5個数%未満であると微小ドットの再現性が低下しやすいため、好ましくない。
【0030】
このような粒度分布の着色粒子を得るためには、粉砕法で得る場合には粉砕および分級の条件を、重合法で得る場合には重合条件を、それぞれ適宜設定すればよい。通常の粉砕法で出来る限り粒径を小さくしようとすると、過粉砕が生じにくくなり、本発明における着色粒子の粒度分布に近い粉砕物が得られ、分級機を使用して粒度分布を調整する必要がほとんどなく、また、粒度分布調整の必要があるとしても、除去する粉砕物の量が少なく、粉砕法によることが製造のコストを低く抑えられるため、好ましい。
【0031】
なお、着色粒子の粒度分布は種々の方法で測定できるが、本発明においてはコールターカウンターTA2型(コールター社製)を用い、アパーチャー径を50μmとして測定を行い、1μm以下の着色粒子の個数分布を測定する時のみアパーチャー径を30μmとして測定を行った。
【0032】
具体的には、塩化ナトリウム水溶液(10g/リットル)中に分散液(界面活性剤:トリトンX100)2〜3滴と測定試料を加え、超音波分散機で1分間分散処理を行った後、上記装置を用いて測定を実施した。
【0033】
(b)着色剤
本発明に用いるトナーにおいては、画像の単位面積当たりのトナーの重量を低減させても、十分な画像濃度が達成でき、画像の耐水性、耐光性、あるいは耐溶剤性を確保するために、着色粒子に含まれる着色剤としては、着色力が高く、耐水性、耐光性、あるいは耐溶剤性に優れた顔料粒子を用いることが好ましい。
【0034】
(c)外添剤
本発明に用いるトナーにおいては、帯電制御を目的とした外添剤を添加することが好ましい。特に、後述のq/d値を適切に調整するのに外添剤の添加は極めて有効となる。
外添剤として使用可能な無機微粉末の材料としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化鉄などの金属酸化物、窒化チタンなどの窒化物、チタン化合物などが挙げられる。外添剤の添加量としては、着色粒子100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部であり、より好ましくは0.1〜8重量部である。
【0035】
トナーに上記無機微粉末を添加する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサーに無機微粉末と着色粒子とを入れ、混合するという従来公知の方法を採用することができる。
【0036】
さらに本発明に用いられるトナーにおいては、粉体流動性や粉体付着性等の粉体特性を良好なものとし、転写効率および帯電性の低下を防止し、環境依存性を緩和するために、また、後述のq/d値を適切に調整するために、外添剤として、少なくとも30nm以上200nm以下の一次粒子平均粒径を有する超微粒子の1種以上と、5nm以上30nm未満の一次粒子平均粒径を有する極超微粒子の1種以上とを用いることが好ましい。
【0037】
超微粒子は、着色粒子同士、あるいは、着色粒子と感光体またはキャリアとの付着力を低減させ、現像性、転写性、あるいはクリーニング性の低下を防止する働きがある。超微粒子の平均一次粒子径は、30nm以上200nm以下、より好ましくは35nm以上150nm以下、さらに好ましくは35nm以上100nm以下である。200nmを超えるとトナーから脱離しやすくなり、付着力低減効果が発揮できなくなる。一方、30nm未満では、後述の極超微粒子の働きをするものとなってしまう。
【0038】
極超微粒子は、トナー(着色粒子)の流動性を向上させ、凝集度を低下させるとともに、熱凝集の抑制等の効果より環境安定性の向上に寄与する。極超微粒子の平均一次粒子径は、5nm以上30nm未満、より好ましくは5nm以上29nm未満、さらに好ましくは10nm以上29nm以下である。5nm未満であるとトナーが受けるストレスにより着色粒子表面に埋没しやすい。一方、30nm以上では、前述の超微粒子の働きをするものとなってしまう。なお、本明細書において「一次粒子径」とは球相当の一次粒子径をいう。
【0039】
超微粒子としては、疎水化された酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化鉄などの金属酸化物、窒化チタンなどの窒化物、チタン化合物からなる微粒子が挙げられ、疎水化された酸化ケイ素からなる微粒子であることが好ましい。疎水化は、疎水化処理剤により処理することにより為され、疎水化処理剤としてはクロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シリル化イソシアネートのいずれも使用可能である。具体的にはメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ter−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0040】
極超微粒子としては、疎水性のチタン化合物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化鉄などの金属酸化物、窒化チタンなどの窒化物からなる微粒子が挙げられ、なかでも、チタン化合物微粒子であることが好ましい。
【0041】
また、チタン化合物微粒子としては、高度に疎水性であり、焼成処理がないため凝集体を発生しにくく、外添時に分散性が良好であるメタチタン酸とシラン化合物との反応生成物であることが好ましい。また、その際のシラン化合物としては、トナーの帯電制御が良好であり、キャリアや感光体への付着性を低減できるアルキルアルコキシシラン化合物および/またはフルオロアルキルアルコキシシラン化合物が好ましく用いられる。
【0042】
メタチタン酸とアルキルアルコキシシラン化合物および/またはフルオロアルキルアルコキシシラン化合物との反応生成物であるメタチタン酸化合物としては、硫酸加水分解反応により合成されたメタチタン酸を解膠処理した後、ベースのメタチタン酸をアルキルアルコキシシラン化合物および/またはフルオロアルキルアルコキシシラン化合物とを反応させたものが好適に使用できる。メタチタン酸と反応させるアルキルアルコキシシランとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等が、また、フルオロアルキルアルコキシシラン化合物としては例えばトリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン等が使用可能である。
【0043】
超微粒子と極超微粒子との2種類の外添剤を使用することにより、両者の添加による効果を併せ持つものとなる。
【0044】
しかし、外添剤の添加量が全体として多過ぎると、遊離の(着色粒子に付着していない)外添剤が発生し、感光体やキャリア表面が外添剤で汚染されやすくなる。また、超微粒子と極超微粒子とはともにある程度の添加量が無ければ、両者を添加することによる効果が得られない。さらに、超微粒子の量が多過ぎると粉体付着力低減効果が得られず、極超微粒子の量が多過ぎると粉体流動性改善効果が得られない。従って、外添剤の添加量を適切にコントロールしてやる必要がある。
【0045】
上記、外添剤を添加することによる効果の出現や、各種粉体特性の変動は、添加する外添剤の絶対量に依存するものではなく、着色粒子表面に対する被覆率に依存するものである。ここで、外添剤の着色粒子表面に対する被覆率について説明する。
【0046】
外添剤を一定の大きさ(直径d)の真球と見立て、かつ凝集のない一次粒子が着色粒子表面上に単層で付着していると仮定した場合、着色粒子表面上に付着した外添剤の最密パッキング(最も密に並んだ状態)としては、図1に示すように1つの外添剤22に6つの外添剤22a〜22fが隣接する六方最密パッキングである(図1は着色粒子表面の一部のみを拡大して示した平面図である)。
【0047】
このように図1に示すような状態が理想状態としての被覆率100%であるとした場合に、実際の外添剤の重量が、実際の着色粒子の重量に対してどの程度であるかを%で表したものを、本発明にいう被覆率とする。
【0048】
即ち、実際の状態における、着色粒子の体積平均粒径をD(μm)、着色粒子の真比重をρt 、外添剤の一次粒子平均粒径をd(μm)、外添剤の真比重をρa 、および、外添剤の重量x(g)と着色粒子の重量y(g)との比(x/y)をCとした場合に、被覆率F(%)は、
F=C/{2π・d・ρa /(√3・D・ρt )}×100
となり、これを整理すると下式(1)の通りになる。
【0049】
F=√3・D・ρt ・(2π・d・ρa )-1・C×100 ・・・(1)
(上記式中、Fは被覆率(%)、Dは着色粒子の体積平均粒径(μm)、ρt は着色粒子の真比重、dは外添剤の一次粒子平均粒径(μm)、ρa は外添剤の真比重、およびCは外添剤の重量x(g)と着色粒子の重量y(g)との比(x/y)をそれぞれ表す。)
【0050】
本発明においては、以上の式(1)で求められる着色粒子表面に対する外添剤の被覆率が、超微粒子Fa および極超微粒子Fb の双方について20%以上であり、全外添剤の被覆率の合計が100%以下であることが好ましい。なお、「全外添剤の被覆率の合計」とは、添加される各外添剤についての被覆率を個々に計算し、得られた各外添剤の被覆率を合計したものを指す。
【0051】
超微粒子の被覆率Fa が20%未満であると、超微粒子を添加する効果が得られなくなる。超微粒子の被覆率Fa は、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜60%である。
【0052】
極超微粒子の被覆率Fb が20%未満であると、極超微粒子を添加する効果が得られなくなる。極超微粒子の被覆率Fbは、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜60%である。
【0053】
全外添剤の被覆率の合計が100%を超えると、遊離の外添剤が多く発生するため、感光体やキャリア表面が外添剤で汚染されやすくなる。全外添剤の被覆率の合計は、好ましくは40〜100%、さらに好ましくは50〜90%である。
【0054】
超微粒子の被覆率Fa (%)と、極超微粒子の被覆率Fb (%)との関係としては、下式(3)を満たすことがより好ましい。
0.5≦Fb /Fa ≦4.0 ・・・(3)
この範囲を外れると、超微粒子または極超微粒子を添加する効果が得られにくくなるため好ましくない。また、超微粒子または極超微粒子を添加する効果を最適なものとするためには、下式(3’)を満たすことがさらに好ましい。
0.5≦Fb /Fa ≦2.5 ・・・(3’)
【0055】
トナーに上記超微粒子および極超微粒子を添加する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサーに超微粒子、極超微粒子および着色粒子を入れ、混合するという従来公知の方法を採用することができる。
【0056】
(d)帯電量qと粒径dとの関係(q/d値)
本発明に用いられるトナーは、個々の着色粒子の帯電状態を適切にコントロールすることが好ましい。即ち、トナー全体としての帯電量ではなく、トナーの粒子個々の帯電状態が、得られる画像に大きな影響を与える。一方、トナーの粒子個々の粒径も画質に大きな影響を与えるため、トナーの粒子個々の帯電量の度数分布のみを規定したのでは、画質との関係を十分に説明できない。そこで、本発明に用いられるトナーにおいては、トナーの粒子個々の帯電量と粒径との関係を適正なものに規定することが好ましい。
【0057】
即ち、温度20℃、湿度50%環境下におけるトナーの帯電量をq(fC)、トナーの粒径をd(μm)と表した場合に、q/d値の度数分布における、ピーク値が1.0以下であり、かつ、ボトム値が0.005以上であることが好ましい。なお、q/d値としては、正帯電トナーの場合には、上記数値規定がそのまま適用されるが、負帯電トナーの場合には、トナーの帯電量q(fC)の値を正負逆転させた後に、上記数値規定が適用される。
【0058】
温度20℃、湿度50%環境下を帯電量の測定環境としたのは、一般に室温とされる標準的な環境での帯電量を規定することが、本発明の目的とする各種性能を達成する上で最適であるためである。即ち、かかる標準的な環境で上記条件を満たすようなトナーは、多少環境条件が異なってきた場合にも、本発明の目的とするところの高画質を得る上での適切な帯電量分布を大きく外れるものではなく、極めて安定的に高性能を発揮し得る。勿論、より高温高湿や低温低湿環境において、上記帯電量分布であるようなトナーであることが好ましいことは、いうまでもない。
【0059】
個々のトナーについて、q/d値を測定し、その度数分布をグラフにした場合、上限値および下限値のある大略正規分布になる。本発明において、このグラフの頂点となる点のq/d値をピーク値、下限値(負帯電トナーの場合には、正負逆転させた後における下限値)となる点のq/d値をボトム値とする。
【0060】
本発明に用いられるトナーにおいては、このq/d値の度数分布における、ピーク値が1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70である。ピーク値が1.0を超えると、度数分布が狭くなるように設定したとしても、キャリアや感光体表面に対するトナーの付着力が大きくなるため現像性や転写性が悪化し画像濃度が低下したり、さらには、感光体表面に残留するトナーのクリーニング性が低下したりする可能性があり、好ましくない。また、ピーク値が1.0を超え、かつ電荷分布が広くなるように設定した場合には、上記同様の問題の他、個々のトナーの帯電性のばらつきが大きくなるため、現像性や転写性が不均一となる可能性がある。
【0061】
一方、q/d値が0に近づき過ぎたり、正負逆の値となったり(即ち、逆極性トナー)すると、画像部に抜けが生じたり、非画像部にカブリが生じる場合がある。従って、q/d値の度数分布における、ボトム値を一定以上の値に保つことが望まれ、具体的には0.005以上であることが好ましく、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上である。
【0062】
なお、上記q/d値の度数分布における、上限値(負帯電トナーの場合には、絶対値における上限値)となる値については、特に規定する必要はない。q/d値の度数分布は、既述の如く大略正規分布を示すものであり、ピーク値およびボトム値を規定すれば、上限値は自ずと定まってくるからである。
【0063】
q/d値の度数分布は、例えば特開昭57−79958号公報に示すチャージスペクトログラフ法(以下、「CSG法」という)により測定することができる。以下、具体的な測定方法について説明する。
【0064】
図2は、CSG法によりq/d値の度数分布を測定するための測定装置10の概略斜視図である。測定装置10は、円筒状の胴部12と、その下側開口部を閉塞するフィルター14と、上側開口部を閉塞するメッシュ16と、メッシュ16の中央から胴部12内部へ突出させたサンプル供給筒18と、胴部12の下側開口部から空気を吸引する吸引ポンプ(不図示)と、胴部12の側面から電場Eを与える電場発生装置(不図示)とからなる。
【0065】
吸引ポンプは、胴部12の下側開口部のフィルター14を介して、フィルター14の全面に均一に、胴部12内側の空気を吸引するように設定されている。それに伴い上側開口部のメッシュ16から空気が流れ込み、胴部12内側には、垂直下方向に一定の空気流速Vaの層流が生ずる。さらに電場発生装置により、空気流と直交する方向に均一かつ一定の電場Eが与えられている。
【0066】
以上のような状態とした胴部12の内部に、サンプル供給筒18から測定対象となるトナーの粒子を徐々に投下する(落下させる)。サンプル供給筒18先端のサンプル出口20から出てきたトナーの粒子は、電場Eの影響を受けなければ、空気の層流の影響を受けつつ垂直下方向に飛行し、フィルター14の中心Oに到達する(このとき、サンプル出口20とフィルター14との距離kがトナーの直進飛行距離となる)。フィルター14は粗目のポリマーフィルター等からなり、空気は十分に通すが、トナーの粒子は透過することなく、フィルター14上に残る。しかし電荷を帯びた有色トナーの場合は、電場Eの影響を受け、中心Oよりも電場Eの進行方向に位置がずれてフィルター14上に到達する(図2中の点T)。この点Tと中心Oとの距離(変位)xを測定し、その度数分布を求めることにより、q/d値の度数分布を求めることができる(本発明において、実際には、画像解析によりピーク値とボトム値を直接求めた。)。
【0067】
より具体的に説明すると、上記のようにして測定装置10により得られた変位x(mm)と、トナーの帯電量q(fC)と、トナーの粒径d(μm)との関係は、下式(4)により表される。
q/d = (3πηVa/kE)×x ・・・(4)
式(4)中、ηは空気の粘度(kg/m・sec.)、Vaは空気流速(m/sec.)、kはトナーの直進飛行距離(m)、Eは電場(V/m)をそれぞれ表す。
【0068】
本発明においては、式(4)の各条件が、以下の数値になるように、図2に示す測定装置10の各条件を設定して測定を行っている。
空気の粘度η=1.8×10-5(kg/m・sec.)
空気流速Va=1(m/sec.)
トナーの直進飛行距離k=10(cm)
電場E=190V/cm
【0069】
上記値を式(4)に代入すると以下のようになる。
q(fC)/d(μm) ≒ 0.09・x
【0070】
測定対象となるトナーの粒子をサンプル供給筒18に投下するに際し、該トナーは予め帯電させておく必要がある。トナーのq/d値が上記度数分布となる必要があるのは、実際に静電潜像を現像するに際してであり、測定対象となるトナーをキャリアと混合した二成分系現像剤とした上で、装置条件に類似した条件で振とう等を行い、これをq/d値の度数分布の測定に供するのが本発明の趣旨にかなうものである。
【0071】
従って、本発明においては、測定対象となるトナーの粒子の帯電条件を以下に示すように規定した(勿論、実際に静電潜像を現像する際のトナーを装置等から直接サンプリングして測定したものが、上記q/d値の度数分布の条件を満たすことがより好ましい)。
【0072】
本発明においては、トナーとキャリアとからなる、実際に使用する静電潜像現像剤をガラスビンに入れ、ターブラ振とう機にて2分間攪拌して帯電させたものをq/d値の度数分布の測定に供した。
【0073】
このようにして、q/d値の度数分布を求めることができる。勿論、本発明において、q/d値の度数分布は以上のようなCSG法以外の方法によっても求めることができるが、CSG法によれば誤差の少ないものとなる。
【0074】
(d)着色粒子
本発明におけるトナーにおいて、着色粒子は、一般に結着樹脂および着色剤を含有する。
【0075】
着色粒子に含有される結着樹脂は、ガラス転移点が50〜80℃であることが好ましく、より好ましくは55〜75℃である。ガラス転移点が50℃未満であると熱保存性が低下し、80℃を超えると低温定着性が低下するため、それぞれ好ましくない。
【0076】
また、結着樹脂の軟化点としては80〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90〜150℃、さらに好ましくは100〜140℃である。軟化点が80℃未満であると熱保存性が低下し、150℃を超えると低温定着性が低下するため、それぞれ好ましくない。
さらに結着樹脂の数平均分子量としては1000〜50000、重量平均分子量としては7000〜500000の範囲がそれぞれ好ましい。
【0077】
結着樹脂としては、トナーの結着樹脂として従来より用いられているものが特に制限なく用いられるが、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー、およびスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーとしては、下記のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、この他のアクリル系またはメタクリル系モノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルケトンモノマー、N−ビニル化合物モノマー等から適宜選ばれる1種または2種以上のモノマーを重合させて得られるポリマーが好適に用いられる。
【0078】
スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、ブチルスチレン、などのスチレン誘導体、などのスチレン誘導体が挙げられる。
【0079】
また(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、などの(メタ)アクリル酸エステル類、などが挙げられる。
【0080】
他のアクリル系またはメタクリル系モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、メタアクリルアミド、グリシジルメタアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0081】
またビニルエーテルモノマーとしては、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類が挙げられる。
【0082】
また、ビニルケトンモノマーとしては、例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類が挙げられる。
【0083】
また、N−ビニル化合物モノマーとしては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールなどのN−ビニル化合物などが挙げられる。
【0084】
本発明においては、定着性の観点からポリエステルが結着樹脂として好適に用いられる。かかるポリエステルとしては、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合によって合成されるものが使用できる。
【0085】
多価のアルコールモノマーとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど脂肪族アルコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールなどの脂環式アルコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノール−誘導体、多価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸などの芳香族カルボン酸およびその酸無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸等の飽和および不飽和カルボン酸およびその酸無水物が使用できる。
【0086】
着色粒子に含有される着色剤としては、従来公知の顔料を用いることができる。
使用可能な顔料の種類としてはカーボンブラック、ニグロシン、黒鉛、C.I.ピグメントレッド48:1、48:2、48:3、53:1、57:1、112、122、123、5、139、144、149、166、177、178、222、C.I.ピグンメトイエロー12、14、17、97、180、188、93、94、138、174、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントブルー15:3、15、15:2、60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられ、このなかでも特に、カーボンブラック、C.I.ピグメントレッド48:1、48:2、48:3、53:1、57:1、112、122、123、C.I.ピグンメトイエロー12、14、17、97、180、188、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。これら顔料は単独で使用可能な他、2種以上組み合せて使用してもよい。
【0087】
本発明者らは既に、カラートナーの着色力、透明性を改善するために、メルトフラッシング法によりトナーの着色剤である顔料微粒子の結着樹脂中の分散粒子平均粒径を円相当径で0.3μm以下にして使用する方法を提案したが(特開平4−242752号)、この手法は、着色粒子中の着色剤濃度を高くする必要のある本発明に用いられるトナーに極めて有効である。即ち、顔料粒子を結着樹脂中に分散する手段としてのメルトフラッシング法とは、顔料製造工程の顔料含水ケーキ中の水分を溶融した結着樹脂で置換する方法であり、この方法によれば、顔料微粒子の結着樹脂中の分散粒子平均粒径を円相当径で0.3μm以下にすることが容易であり、このように小粒径の顔料微粒子を用いれば、トナーの透明性を確保でき、良好な色再現が可能となるため好ましい。
【0088】
本発明に好ましく用いられるトナーにおいて、着色粒子は体積平均粒径が5.0μm以下であり、着色粒子一個あたりの着色力を高くする必要がある。特に、着色粒子を転写材上で重ねあわせて発色させるフルカラー画像の場合、着色粒子の透明性が良好でないと赤、緑等の二次色やプロセスブラックの様な三次色を表現する際、上層の着色粒子により下層の発色が疎外され、良好な色再現が為されないことがあるが、結着樹脂中の顔料粒子の分散粒子平均粒径を円相当径で0.3μm以下にして使用することでこの問題を解決することが可能となる。
【0089】
なお、本発明において顔料微粒子の結着樹脂中の分散粒子平均粒径の円相当径とは、着色粒子の一部を取り出し、樹脂で包埋後、着色粒子中の顔料粒子の分散状態を観察できるように観察用薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率15,000倍の拡大写真を撮影し、画像解析装置にて顔料粒子の面積を測定し、該面積に相当する円の直径を計算した値をいう。
【0090】
既述の如く本発明に好ましく用いられるトナーは小粒径であり、従来のより粒径の大きいトナーと同様の顔料濃度では、十分な画像濃度が得られない。また、本発明に好ましく用いられるトナーは小粒径であると一口に言っても、その体積平均粒径には2.0μmから5.0μmまでと幅があり、ベタ画像における転写材上の単位面積当たりのトナーの重量(TMA)にも大きな差が出てくる。従って、必要な顔料濃度は、TMAに応じて設定することが望ましい。
【0091】
転写材にトナーが単層で形成されると仮定すれば、TMAは着色粒子の体積平均粒径D(μm)および比重aで決定するものであり、着色粒子中の顔料濃度C(%)は、以下の関係式(5)を満たすものとすることが望ましい。
25≦a・D・C≦90 ・・・(5)
【0092】
a・D・C(以下、略して「aDC」という)の値が25未満であると、着色力が十分でなく所望の画像濃度を得にくく、所望の画像濃度を得るために現像時形成するトナーの量を多くすると、折角小径化したにも拘らず、画像の厚みが増し、細線の再現性も低下し、転写性も低下し、さらに、表面平滑性のある程度高い転写材を用いても、得られる画像の光沢の均質性が損なわれてしまうため、好ましくない。
【0093】
一方、aDCの値が90を超えると、十分な画像濃度は得られるものの、少量の非画像部へのトナーの飛び散りによる地汚れが生じやすくなる、顔料の補強効果により着色粒子の溶融粘度が上昇し定着性が悪化する、等の不具合を生ずる可能性があるため好ましくない。
【0094】
また、色の違いにより着色力にも相違があり、各色毎に以下の関係式(5−1)〜(5−4)を満たすものとすることが、より好ましい。
シアン: 25≦a・D・C≦90 ・・・(5−1)
マゼンタ: 25≦a・D・C≦60 ・・・(5−2)
イエロー: 30≦a・D・C≦90 ・・・(5−3)
ブラック: 25≦a・D・C≦60 ・・・(5−4)
【0095】
勿論、同一色の顔料であっても化学構造式等の違いにより、着色力は異なってくるため、顔料濃度は用いる顔料の種類に応じて、好ましくは上記範囲内で適宜設定すればよい。
【0096】
着色粒子は、粉砕法あるいは懸濁重合や乳化重合による重合法等、従来より公知の如何なる方法によっても製造することができるが、本発明においては既述の如く粉砕法によることが望ましい。ここで、粉砕法とは、結着樹脂と着色剤、必要に応じてその他添加剤等を予備混合した後、混練機にて溶融混練し、冷却後粉砕、分級を行い規定粒度分布に揃えるものである。
【0097】
(e)その他の添加剤
本発明に好ましく用いられるトナーには色再現性、透明性に影響を与えない範囲において、必要に応じて帯電制御剤、 離型剤などを添加してもよい。帯電制御剤としてはクロム系アゾ染料、 鉄系アゾ染料、 アルミニウムアゾ染料、 サリチル酸金属錯体、有機ホウ素化合物などを挙げることができる。離型剤としては、低分子量プロピレン、低分子量ポリエチレンなどのポリオレフィンやパラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、モンタンワックス等の天然ワックスおよびその誘導体などを挙げることができる。
【0098】
(f)トナーの凝集度
本発明に好ましく用いられるトナーは、その凝集度が30以下であることが好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。ここで凝集度とは、トナー間の凝集性を表す指標で、その値が大きいとトナー間の凝集力が大きいことを表す。
【0099】
凝集度を30以下とすることで、トナーの小粒径化による流動性の低下や、キャリアとの攪拌性の低下を抑制でき、トナー補給不良、帯電の立ち上がり性の低下、帯電分布の悪化および帯電量の低下からくる地汚れや濃度低下、さらに保存性を改善することができる。トナーの凝集度が30より大きいと、流動性の悪化やキャリアとの攪拌性の悪化による地汚れや濃度低下による濃度ムラをまねき、また、保存性も悪化する。なお、特に前述の如く超微粒子と極超微粒子の2種類の外添剤を添加することとすれば、外添剤の粒径および被覆率のバランスにより、凝集度は極めて低い値となる。
【0100】
凝集度は、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用いることにより測定することができる。具体的には、以下の通りである。
目開き45μm、38μmおよび26μmのふるいを直列的に配置し、最上段の45μmのふるい上に正確に秤量した2gのトナーを投入し、振幅1mmの振動を90秒間与え、振動後の各ふるい上のトナー重量を測定し、それぞれの重量に順に0.5、0.3および0.1の値を乗じて加算し、得られた数値に100を乗じたものである。なお、本発明において、試料は22℃/50%RHの環境下で約24時間放置したものを用い、測定は22℃/50%RHの環境下で行った。
【0101】
B.キャリア
上記本発明に好ましく用いられるトナーは、キャリアとともに混合され、二成分系の静電潜像現像剤として使用される。
【0102】
トナーとともに好ましく用いられるキャリアとしては特に限定されるものではなく、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子、磁性体粒子を芯材として、その表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチル系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メチル系樹脂などの公知の樹脂等で被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる被覆樹脂型キャリア粒子、或いは結着樹脂中に磁性体微粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア粒子等を挙げることができる。
【0103】
なかでも、樹脂被覆層を有する被覆樹脂型キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため、特に好ましい。
樹脂被膜層の材料としては、当業界で従来よりキャリアの樹脂被膜層の材料として使用されているあらゆる樹脂から選択することができる。また樹脂の種類は単独でも2種以上でもよい。
【0104】
キャリアの粒径としては、体積平均粒子径として45μm以下であることが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。キャリアの体積平均粒子径を45μm以下とすることにより、トナー(着色粒子)の小粒径化による帯電の立ち上がりや帯電分布の悪化および帯電量の低下に由来する地汚れや濃度ムラを改善することができる。
【0105】
トナーと、キャリアとの混合比としては、重量比で1:100〜20:100の範囲が好ましく、より好ましくは2:100〜15:100の範囲、さらに好ましくは3:100〜10:100の範囲である。
【0106】
[転写工程]
本発明において定着工程とは、潜像担持体上に形成されたトナー画像を紙等の転写材上に転写して転写画像を形成する工程であり、一般に静電引力を利用して行われる。現像工程で得られたトナー画像をそのまま転写材に転写することの他、中間転写体を用い、該中間転写体に一旦転写した後に転写材に転写する手段も採ることが可能である。
【0107】
フルカラーの画像を得ようとする場合には、現像工程で少なくともシアン、マゼンタおよびイエローの3色、さらに必要に応じてブラックの4色のトナーを用いて現像されたトナー像を、積層して転写することにより行われる。このとき、中間転写材を用いて、中間転写体上にこれらを一旦積層転写した後、一括して転写体に転写することは、位置ずれのない、発色性の良好な画像を得る上で好ましいものである。
【0108】
本発明では、単色の画像を得ようとする場合、転写工程で、転写材上に転写される転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量(TMA)を、0.40mg/cm2 以下、好ましくは0.35mg/cm2 以下、より好ましくは0.30mg/cm2 以下とする。
【0109】
このように転写画像の単位面積当たりのトナー重量を低く抑えることにより、得られる画像の画像厚みを小さく保つ。そして後述の定着工程において、非接触型定着装置を用いて定着することにより、転写画像を押しつぶすことなく定着でき、細線再現性の低下、接触定着装置を用いた場合の定着ロールへのオフセット発生、および、画像厚みの差から生じる画像光沢差といった各種問題が解決される。また、TMAが低く、画像厚みが小さいため、非接触方式による定着装置であっても低い温度で定着することができる。
【0110】
一方、得られる画像におけるトナーの十分な発色を確保するためには、転写工程で、転写材上に転写される転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量(TMA)の下限値として、0.10mg/cm2 以上であることが好ましく、より好ましくは0.15mg/cm2 以上である。
【0111】
また、フルカラーの画像を得ようとする場合、転写工程で、転写材上に転写される転写画像が、少なくともシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナーにより積層された画像であり、転写材上にシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナーによりプロセスブラックが形成された際の転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量(TMA)を、1.20mg/cm2 以下、好ましくは1.05mg/cm2 以下、より好ましくは0.90mg/cm2 以下とする。
【0112】
このようにフルカラーの画像を得ようとする場合にも、転写画像の単位面積当たりのトナー重量を低く抑えることにより、得られる画像の画像厚みを小さく保つ。フルカラー画像においては、各色トナーによる転写画像を積層するため、単色の場合に比べ画像厚みが大きくなり、画像厚みの差から生じる画像光沢差が生じやすく、画像厚みを低下することによる効果が極めて大きい。従って、後述の定着工程において、非接触型定着装置を用いて定着することにより、転写画像を押しつぶすことなく定着でき、細線再現性の低下、2次色や3次色の場合のトナーの混色性低下、接触定着装置を用いた場合の定着ロールへのオフセット発生、および、画像厚みの差から生じる画像光沢差といった各種問題が解決される。また、一般のフルカラー画像形成装置に比べ転写画像のトナー重量が低く、画像厚みが小さいため、非接触方式による定着装置であっても低い温度で定着することができる。
【0113】
一方、得られる画像におけるトナーの十分な発色を確保するためには、転写工程で、転写材上に転写される転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量(TMA)の下限値として、0.10mg/cm2 以上であることが好ましく、より好ましくは0.15mg/cm2 以上である。
【0114】
このとき、より視覚的に違和感のない良好な画質の画像を得るためには、転写材上に転写される転写画像の1色あたりのトナー重量としては、0.40mg/cm2 以下とすることが好ましく、より好ましくは0.35mg/cm2 以下、より好ましくは0.30mg/cm2 以下である。
【0115】
[定着工程]
本発明において定着工程とは、転写材上に形成された転写画像を定着する工程である。そして本発明では、この転写工程において、TMAを低く抑えた転写画像を、非接触型定着装置を用いて定着する。非接触型定着装置を用いることにより、転写画像を押しつぶすことなく定着でき、接触方式による定着装置の欠点である細線再現性の低下、2次色や3次色の場合のトナーの混色性低下、定着ロールへのオフセット発生、および、画像厚みの差から生じる画像光沢差といった各種問題を解決しつつ、オフセット印刷によって形成される画像と同等またはそれ以上の画質を達成することができる。
【0116】
本発明に適用可能な非接触型定着装置の具体例としては、オーブン加熱による非接触型加熱方式(オーブン定着方式)、溶剤蒸気を用いる溶剤定着方式、キセノンランプ等によるフラッシュ定着方式、マイクロ波等による電磁波定着方式、湿式定着方式等の定着装置が挙げられる。
【0117】
非接触型加熱方式とは、一般にオーブン定着方式と呼ばれるもので、未定着トナー像が形成された転写材に、熱風や、熱源からの熱の輻射および/または対流により熱を加え、定着する方式である。
【0118】
溶剤定着方式とは、未定着トナー像が形成された転写材を、定着用の溶剤蒸気の雰囲気にさらして定着する方式である。具体的な構成としては、特開昭62−160476号公報等に記載がある。
【0119】
フラッシュ定着方式とは、未定着トナー像が形成された転写材に、キセノン等の発光スペクトルを短時間照射し、その輻射熱により、定着する方式である。具体的な構成としては、特開平7−295430号公報、特開平9−234928号公報等に記載がある。
【0120】
電磁波定着方式とは、予めトナーに磁性体粒子を分散させておき、これを用いて未定着トナー像を転写材に形成し、これにマグネトロンが発生するマイクロ波等を照射して該トナー中の磁性体粒子を加熱し、トナー全体が加熱され、定着する方式である。具体的な構成としては、特開平5−40368号公報等に記載がある。
【0121】
本発明においては、これらの非接触方式による各種定着装置のうち、前記本発明におけるトナーをそのまま定着できる非接触加熱方式によるもの(本発明において、かかる定着装置を「非接触型加熱定着装置」という)が好ましい。
以下に、非接触型加熱定着装置の具体的な構成について、具体例を挙げて説明する。勿論、本発明に適用可能な非接触型加熱定着装置は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0122】
図3は、本発明に適用可能な非接触型加熱定着装置30を用いた画像形成装置の一例を示す模式側断面図である。長尺状の転写材40は、転写材ロール36aおよび巻き取りロール36bにより張架され、巻き取りロール36bが矢印方向に回転することにより、非接触型加熱定着装置30に挿通される。転写材40は、非接触型加熱定着装置30に挿通されるに先立って、転写・現像装置38a,38bに挿通され、表面に未定着の転写画像が形成される。本発明では、この現像・転写装置38a,38bが、前記現像工程および転写工程の構成を為すものとなる。なお、このとき現像・転写装置38aと、現像・転写装置38bとにより、転写材40の両面に転写画像を形成することとすれば、一度に両面コピーが可能となり、高速コピーや装置の小型化の観点から好ましいものとなる。
【0123】
非接触型加熱定着装置30内は、転写材40の搬送路の上下に、熱源である上ヒータ34aと下ヒータ34bとを配置して、転写材40を両面から加熱することができるように構成される。そして、上下ヒータ34a,34bからの熱の輻射および/または対流により転写材40表面の転写画像が加熱され定着が行われる。なお、現像・転写装置38aのみにより転写材40の片面に転写画像を形成する場合には、下ヒータ34bは必須ではなく、上ヒータ34aからの熱の輻射および/または対流のみにより転写材40表面の転写画像が加熱され定着が行われる構成であってもよい。
【0124】
偏平なカップ状の上ハウジング32aが、上ヒータ34aの、転写材40に面した方向を除く周囲を取り囲むように配置される。一方、偏平なカップ状の下ハウジング32bが、下ヒータ34bの、転写材40に面した方向を除く周囲を取り囲み、上ハウジング32aに対向して配置される。この上下ハウジング32a,32bは、必須の構成ではないが、このような構成を採ることにより、上下ヒータ34a,34bからの熱を有効に転写材40表面の転写画像に作用させることができる。
【0125】
そして、片面または両面に形成された転写画像が定着された後、巻き取りロール36bに巻き取られ、画像形成が終了する。
【0126】
以上の画像形成装置においては、長尺状の転写材40表面に画像を形成する態様について説明したが、転写材搬送装置を用いて、紙等の転写材を現像・転写装置および非接触型加熱定着装置に挿通させる形態であってもよい。転写材搬送装置としては、ネットベルトを用いる方式や、従来より用いられているグリッパーによる搬送方式、その他任意の搬送方式が挙げられる。
ネットベルトを用いる方式の場合、図3における転写材40の代わりにネットベルトがロール36a,bに張架される(図3は、長尺状の転写材40を用いる場合の図であるため、ネットベルトの戻りは図示されない)。そしてネットベルト上に転写材が載置され、必要に応じて吸引手段等によりネットベルト上に転写材が固定され、現像・転写装置および非接触型加熱定着装置に挿通される。ネットベルトは、例えばガラス繊維等、耐熱性を有する材料で形成され、無端状のベルトとして構成されていればよい。
【0127】
[加圧工程]
以上、本発明に必須の工程である現像工程、転写工程および定着工程について説明したが、定着工程により転写画像が定着された後の転写材について、さらに対向する一対のロール(本発明において、これを「加圧ロール」という)に挿通して加圧することにより、画像の厚みを低減し、より視覚的な違和感のない高画質な画像を得ることもできる。この場合画像は、既に定着されているため、加圧ロールにより加圧しても大きな形状変形は起こらず、細線再現性の低下や、転写材表面の凹部にトナーの粒子が入り込むことに起因する発色性低下、混色性低下あるいはオフセット現象等の不具合が起こることがない。
【0128】
加圧ロールにより転写材を加圧するに際しては、加圧ロール表面をある程度の加熱することが望まれる。しかし、非接触型定着装置にて定着を行う本発明では、接触型定着装置にて定着を行う場合のような画像厚みの差による画像光沢の差は生じないため、画像厚みがある程度大きくても画像の質感に大きな影響は及ぼさない。また、加圧ロールにより一旦定着したトナーを再溶融させてしまうほど加熱を行うと、当該加圧ロールに対するオフセットが生ずる可能性もある。従って、加圧ロール表面を加熱するに際しては、トナーを完全に再溶融させてしまわない程度の加熱をすることが望まれる。加圧ロール表面の温度は、一対のロールによるニップ幅や、加圧ロールの周半径あるいは回転速度等によって最適な値は異なるが、下式(6)を満たすように表面温度を調整することが好ましい。
Tm+10 ≦ Rt ≦ Tm+50 ・・・(6)
(上記式中、Tmはトナー中の着色粒子の軟化点(℃)を、Rtは加圧ロールの表面温度(℃)をそれぞれ表す。)
【0129】
なお、転写材が定着工程の後、直ちに当該加圧工程に供され、転写材表面のトナーの温度が加圧工程に供されるに適した温度となるようにしておけば、加圧ロールを加熱しておく必要はない。
加圧ロールの構成としては、従来より接触加熱定着装置として用いられているものがそのまま転用でき、例えば、鋼板、アルミニウム、ステンレス等の金属からなる円筒体や、これらの材料からなる円筒体の表面に耐熱性の樹脂(フッ素樹脂等)を被覆したもの等が挙げられる。勿論、加熱装置に関する部材はについては、接触加熱定着装置に用いられるほどの強さの加熱は不要であり、加熱装置に関する部材は除すことも可能である。
【0130】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1. 1次色画像形成の実施例
1)マゼンタフラッシング顔料の作製例
ポリエステル樹脂(ビスフェノールA型ポリエステル:ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物−シクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸、重量平均分子量:11,000、数平均分子量:3,500、Tg:65℃)70重量部とマゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)含水ペースト(顔料分40重量%)75重量部をニーダー型混練機に入れ混合し、徐々に加熱した。120℃で混練を継続して、水相と樹脂相が分離した後、水を除去し、さらに樹脂相を混練して水を取り除き、脱水してマゼンタフラッシング顔料を得た。
【0131】
上記成分をバンバリーミキサーにより溶融混錬し、冷却後ジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級を行い、マゼンタ着色粒子を得た。
【0132】
3)マゼンタトナーの作製
前記マゼンタ着色粒子に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2 )微粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物微粒子とを、それぞれの着色粒子の表面に対する被覆率が40%となるように添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、マゼンタトナーを作製した。
尚、ここでいう着色粒子の表面に対する被覆率とは、前述の式(2)により求められる値F(%)をいう。
【0133】
4)キャリアの作製
体積平均粒子径40μmのCu−Znフェライト微粒子100重量部にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.1重量部を含有するメタノール溶液を添加し、ニーダーで被覆した後、メタノールを留去し、さらに120℃で2時間加熱して上記シラン化合物を完全に硬化させた。この粒子に、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体(共重合比40:60)をトルエンに溶解させたものを添加し、真空減圧型ニーダーを使用してパーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体のコーティング量が0.5重量%となるように樹脂被覆型キャリアを製造した。
【0134】
5)現像剤の作製
得られたマゼンタトナー4重量部を、得られた樹脂被覆型キャリア100重量部に混合して、マゼンタ静電潜像現像剤を作製し、これを以下に示す実施例1の現像剤として使用した。
【0135】
前記マゼンタ静電潜像現像剤の製造方法において、用いた顔料粒子の種類、着色粒子の粉砕分級条件、外添剤の被覆率、顔料濃度等の諸条件を代えて、同様に、実施例2〜実施例8に用いたトナー、比較例1〜比較例4に用いたトナーを製造した。実施例2〜実施例8の外添剤の被覆率は、実施例1と同様40%であった。
実施例1〜実施例8に用いたトナーの諸特性、および比較例1〜比較例4に用いたトナーの諸特性を表1と表2に各々示す。また、各々のTMA、(測定条件については後述する。)を表1および表2にまとめて示す。
尚、表中、Mはマゼンタ、Kはブラック、Cはシアン、Yはイエローを示す。Mのトナーに使用した顔料粒子は実施例1と同様であり、Kのトナーに使用したのはカーボンブラックであった。C、Yのトナーに使用した顔料粒子は、以下の方法により製造されたフラッシング顔料を使用した。
【0136】
<シアンフラッシング顔料>
マゼンタ顔料含水ペーストをシアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)含水ペースト(顔料分40重量%)に代えた他はマゼンタフラッシング顔料と同様にしてシアンフラッシング顔料を作製した。
<イエローフラッシング顔料>
マゼンタ顔料含水ペーストをイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー17)含水ペースト(顔料分40重量%)に代えた他はマゼンタフラッシング顔料と同様にしてイエローフラッシング顔料を作製した。
【0137】
表1
【0138】
【表1】
【0139】
表2
【0140】
【表2】
【0141】
尚、粒子の粒径および粒度分布の測定は、コールターカウンター社製コールターカウンターTA−II型を用いて測定した。このとき、トナー(着色粒子)の平均粒子径が5μmを超える場合は100μmのアパーチャーチューブを使用し、5μm以下のものはアパーチャー径を50μmとして測定を行い、1μm以下の粒子の個数分布を測定する時には、アパーチャー径を30μmとして測定を行った(粒度測定について、以降の実施例および比較例について同様)。
【0142】
・実施例1
複写機(「A color935」、富士ゼロックス社製の改造機)を用いて、コート紙(「FX J」、富士ゼロックス社製)上に、前記のようにして得られたマゼンタ静電潜像現像剤を用いて未定着画像を形成し、図3に示す非接触型加熱定着装置30により未定着画像を定着した。なお、非接触型加熱定着装置30は以下の通りである。
【0143】
<非接触型加熱定着装置30の仕様>
上ヒータ34a:250℃
下ヒータ34b:250℃
定着スピード :180mm/sec
定着時間 :5sec
【0144】
TMAを以下の様に測定した。さらに、得られた画像について以下の評価を行った。TMAについては表1に、他の評価結果については表3に、それぞれ示す。
【0145】
<TMAの測定>
面積率100%のベタ画像をコート紙上に転写し、当該画像部分の単位面積当たりのトナーの重量(TMA:mg/cm2 )を測定した。具体的な測定方法としては、10cm2 の面積の未定着ベタ画像をコート紙上に形成し、これを秤量し、次いでエアブローによりコート紙上のトナーを除去した後、コート紙のみの重量を測定し、トナー除去前後の重量差からTMAを算出した。
【0146】
<画像濃度>
面積率100%のベタ画像を作成し、X−Rite404(X−Rite社製)を用いて、当該画像部分の画像濃度を測定した。画像濃度1.5以上を許容範囲とした。表2中、○および×は、以下の意味である。
○ : 画像濃度が1.5以上である。
× : 画像濃度が1.5未満である。
【0147】
<細線再現性評価試験>
感光体上に線幅50μmになるように細線の画像を形成し、それを転写材に転写および定着した。転写材上の定着像の細線の画像をVH−6200マイクロハイスコープ(キーエンス社製)を用いて倍率175倍で観察した。具体的な評価基準は以下の通りである。なお、G1およびG2を許容範囲とした。
G1:細線がトナーにより均一に埋まり、エッジ部での乱れもない。
G2:細線がトナーによって均一に埋まっているが、エッジ部で僅かなぎざつきが見られる。
G3:細線がトナーによってほぼ均一に埋まっているが、エッジ部でのぎざつきが目立つ。
G4:細線がトナーによって均一に埋まっておらず、エッジ部でのぎざつきが目立つ。
【0148】
<ソリッド画像の画像光沢均一性評価>
得られた画像について、画像内の光沢差、および画像部と非画像部(コート紙)との光沢差を目視にて観察した。G1およびG2を許容範囲とした。
G1:画像内および画像部と非画像部に光沢差はまったく観察されず、画像の光沢均一性は極めて良好であった。
G2:画像部と非画像部には若干光沢差が観察されたが、画像内にはグロス差は観察されず、画像全体としては光沢均一性が良好であった。
G3:画像内および画像部と非画像部の双方に若干光沢差が観察され、画像の光沢均一性は若干劣っていた。
G4:画像内および画像部と非画像部の双方に光沢差が観察され、画像の光沢均一性は劣っていた。
G5:画像内および画像部と非画像部の双方に著しい光沢差が観察され、画像の光沢均一性は著しく劣っていた。
【0149】
・実施例2〜実施例8
その他作製した静電潜像現像剤を用いて、実施例1と同様に画像を形成し、TMAを測定し、さらに前記評価を行った。TMAについては表1および表2に、他の評価結果については表3に、それぞれまとめて示す。
【0150】
・比較例1〜比較例4
上記作製した比較例用の静電潜像現像剤を用い、非接触型加熱定着装置30を用いる代わりにA−color(富士ゼロックス社製)の定着装置を用いて接触定着を行った他は、実施例1と同様に画像を形成し、TMAを測定し、さらに前記評価を行った。TMAについては表2に、他の評価結果については表3に、それぞれまとめて示す。
【0151】
【表3】
【0152】
2. 3次色画像形成の実施例
・実施例9〜実施例10
実施例1で用いた非接触型加熱定着装置30を使用して、C、M、Yのトナーを組み合わせて3次色の画像を形成し(実施例9〜実施例10)、前記と同様な評価および、以下に示す絵柄画像の光沢均一性の評価を行った。
トナーの組み合わせ、TMA、および画像の画質評価結果を表4にまとめて示す。表4中、「実n」は「実施例nに用いた現像剤」を、「比n」は「比較例nに用いた現像剤」を示す(以下同様)。なお、絵柄画像の光沢均一性評価の内容は後述する。
【0153】
・比較例5
比較例1〜4で用いた定着装置を使用して、C、M、Yのトナーを組み合わせて3次色の画像を形成し、実施例9と同様な評価を行った。トナーの組み合わせ、TMA、および画像の画質評価結果を表4にまとめて示す。
【0154】
・実施例11
A−color(富士ゼロックス社製)の改造定着装置(加熱ロールの表面温度を130℃になるようにしたもの)を用いて、実施例9における定着操作の後に、画像表面を加熱ロールと加圧ロールとで加圧した。実施例9と同様に各種評価試験を実施したところ、画像濃度は1.9となり、発色性が向上した。TMA、および画像の画質評価結果を表4に示す。
【0155】
<絵柄画像の光沢均一性評価>
絵柄画像について、画像内の光沢差および画像部と非画像部(コート紙)との光沢差を目視にて観察した。G1およびG2を許容範囲とした。
G1:画像内および画像部と非画像部に光沢差はまったく観察されず、画像の光沢均一性は極めて良好であった。
G2:画像部と非画像部には若干光沢差が観察されたが、画像内にはグロス差は観察されず、画像全体としては光沢均一性が良好であった。
G3:画像内および画像部と非画像部の双方に若干光沢差が観察され、画像の光沢均一性は若干劣っていた。
G4:画像内および画像部と非画像部の双方に著しい光沢差が観察され、画像の光沢均一性は著しく劣っていた。
G5:画像内および画像部と非画像部の双方に著しい光沢差が観察され、画像の光沢均一性は著しく劣っていた。
【0156】
<画像定着強度評価>
文字画像を作成し、一定荷重をかけて文字画像部分が外側になるように折り曲げて、折り曲げ部分の画像の欠損の度合いを定性的に評価した。
G1:画像の欠損が見られない。
G2:画像の欠損が見られる。
G3:画像全体が大きく欠損する。
【0157】
【表4】
【0158】
【発明の効果】
本発明によれば、細線再現性および階調性が良好で、かつ、オフセット印刷によって形成される画像と同等またはそれ以上の画質を達成することが可能な画像形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、非接触型定着装置を用いるメリットを生かしつつ、デメリットを最小限に抑え得る画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】着色粒子表面に対する外添剤の被覆率を説明するための、着色粒子表面の一部の拡大平面図である
【図2】CSG法によりq/d値の度数分布を測定するための測定装置の概略斜視図である。
【図3】本発明に適用可能な非接触型定着装置を用いた画像形成装置の一例を示す模式側断面図である。
【符号の説明】
10:測定装置
12:胴部
14:フィルター
16:メッシュ
18:サンプル供給筒
20:サンプル出口
22、22a〜22f:外添剤
30:非接触型加熱定着装置
32a:上ハウジング
32b:下ハウジング
34a:上ヒータ
34b:下ヒータ
36a:転写材ロール
36b:巻き取りロール
38a,38b:現像・転写装置
40:転写材
Claims (2)
- 潜像担持体上に形成された静電潜像を、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する着色粒子からなるトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写材上に転写して転写画像を形成する転写工程と、転写材上に転写された転写画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法において、
前記着色剤が顔料粒子であり、着色粒子の真比重及び体積平均粒径、並びに着色粒子中の顔料濃度が以下の式(1)を満たし、転写工程で、転写材上に転写される転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量が、単色で0.40mg/cm2 以下であり、 定着工程が、非接触型定着装置を用いて転写材上に転写された転写画像を定着する工程である、
ことを特徴とする画像形成方法。
25≦a・D・C≦90・・・(1)
(式中、aは着色粒子の真比重(g/cm 3 )を、Dは着色粒子の体積平均粒径(μm)を、Cは着色粒子中の顔料濃度(重量%)をそれぞれ示す。) - 潜像担持体上に形成された静電潜像を、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する着色粒子からなるトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、潜像担持体上に形成されたトナー画像を転写材上に転写して転写画像を形成する転写工程と、転写材上に転写された転写画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法において、
前記着色剤が顔料粒子であり、着色粒子の真比重及び体積平均粒径、並びに着色粒子中の顔料濃度が以下の式(1)を満たし、転写工程で、転写材上に転写される転写画像が、少なくともシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナーにより積層された画像であり、転写材上にシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナーによりプロセスブラックが形成された際の転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー重量が、3色合計で1.20mg/cm2 以下であり、
定着工程が、非接触型定着装置を用いて転写材上に転写された転写画像を定着する工程である、
ことを特徴とするフルカラーの画像形成方法。
25≦a・D・C≦90・・・(1)
(式中、aは着色粒子の真比重(g/cm 3 )を、Dは着色粒子の体積平均粒径(μm)を、Cは着色粒子中の顔料濃度(重量%)をそれぞれ示す。)
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