JP3817927B2 - 光照射製版用スタンプユニット及びその製版方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光照射製版用スタンプユニットに関し、特に、光エネルギー吸収性物質を含有した多孔性樹脂層を有する印材が保持された光照射製版用スタンプユニット及びその製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、光エネルギー吸収性物質を含有した多孔性樹脂層を有する印材が保持されたスタンプユニットの1つとして、例えば本出願人による特願平9−249983号に開示されているようなものがある。このスタンプユニットは、グリップ(取っ手)部材、ホルダ部材およびスカート部材を備えている。そして、ホルダ部材がスカート部材内で上下に移動可能となるようにホルダ部材とグリップ部材とが連結され、また、ホルダ部材の下面に印材(印面形成部材)が熱接着により配設されており、その周縁部からインクが漏れないようにされている。かかるスタンプユニットでは、印材は、カーボンブラック等の光エネルギ吸収物質を分散させた軟質多孔性樹脂からなる下側層と、インクを貯溜するとともに下側層に均一に圧力が印加されるようにする硬質多孔性樹脂からなる上側層とからなる2層構造に形成されていてよい。
【0003】
この印材を製版するには、まず、スタンプ製造装置内でロール状の透明フィルムを搬送しつつサーマルヘッドおよび転写リボンを介して透明な原稿フィルムに文字、画像を印刷してポジ原稿を作成し、そして、このポジ原稿と印材の下側層とが対向し且つ両者の間に透明アクリル板(印材よりも高い融点をもつ)を介在させた状態で印材が加圧されるように、ホルダ部材をスタンプ製造装置にセットする。
【0004】
この状態で、キセノン管を発光させると、ポジ原稿を通して光が印材の下側層に照射される。これにより、原稿の透明部分に対応して光が照射された下側層の部分は、光エネルギー吸収物質の発熱作用によって溶融後固化されるので、シールされてインクを透過しない状態となる。一方、原稿の印刷部分は光によって加熱され温度が上昇するが、その熱が透明アクリル板によって遮られる。従って、印刷部分に対応した下側層の部分は、光が照射されないだけでなく原稿の印刷部分からの伝導熱で溶融固化されることもなく、原稿の文字等に対応してシールされないでそのまま残存することとなる。これにより、所望パターンのシール部(非印刷部)と非シール部(印刷部)とが印材の下面に混在した印判が形成される。従って、スタンプ印刷時に印材を印刷用紙に接触させると、印材上方から供給されたインクが印材の下側層の非シール部だけから印刷用紙に付着して所望の文字等がスタンプ印刷されることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のスタンプユニットでは、下側層に直接印判が形成されることから、ホルダ部材の輸送中、ホルダ部材がユーザーに渡った後印材の製版に至るまでの間、及び、印材の製版中において下側層(印面)を保護することが望ましい。印材の下側層を保護するためには、例えば、ホルダ部に対して保護フィルムを固着して下側層を被覆することが考えられる。しかし、保護フィルムをホルダ部に固着するに当たり、例えば、ホルダ部に粘着性の接着剤層を形成し、かかる接着剤層により保護フィルムを接着する場合には、粘着性の接着剤層が印材の下側層に悪影響を及ぼしてしまい、この結果、ポジ原稿に従った適正な印判を形成できないという問題がある。これに起因して、従来においては、保護フィルムを単に印材の下側層に密着させておくだけの措置しか講じ得ず、そのため、保護フィルムが印材から剥がれ易く、印材を保護するには不充分なものである。
【0006】
また、印材をホルダ部に取り付けるについては、印材の周縁を接着治具を使用してホルダ部材に熱接着しているのが一般的であるが、印材とホルダ部材には樹脂成分が含有されており、かかる樹脂成分が熱接着時に接着治具に付着する問題がある。これを防止するため従来においては、接着治具に特殊な処理を施したり、印面成形部材とホルダ部との間に耐熱性フィルムを介在させながら熱接着を行う等の対策を採っている。しかし、接着治具に特殊な処理を施すことは、結果的にスタンプユニットのコストの高騰を招き、また、熱接着時に印材とホルダ部との間に耐熱性フィルムを介在させるのは煩雑な作業であり、接着作業をスムーズに行うことができない。
【0007】
そこで、従来スタンプ製造装置側に用いられていた透明アクリル板に代えて、印材を被覆する透光性フィルムを予め印材とともに印材の周縁部においてホルダ部材に熱接着しておくことが提案されている(本出願人による特願平10−56727号)。しかしながら、かかる透光性フィルムおよび印材とホルダ部材との熱接着の際には、印材と透光性フィルムとが過度に熱接着されてしまうことがある。また、同様に製版時にも、印材と透光性フィルムとが過度に熱接着されてしまうことがある。このように、印材と透光性フィルムとが過度に接着されてしまうと、製版後に透光性フィルムを印材から剥離する際に印材の下側層(軟質多孔性樹脂)までもが透光性フィルムと一緒になって剥がれてしまうことがある。そして、印材の下側層が剥がれると、本来インクが滲出すべきではない個所からインクが滲出することになり、美しいスタンプ画像を形成することができなくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明の主な目的は、印材とともに熱接着される透光性フィルムを製版後に印材から剥離する際に印材表面の多孔性樹脂層が剥離されることがなく、そのため不必要な個所からインクを滲出させることのない光照射製版用スタンプユニット及びその製版方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の光照射製版用スタンプユニットは、光エネルギー吸収性物質を含有した多孔性樹脂層を有する印材と、嵌入口が形成されたホルダ部材と、前記印材及び前記ホルダ部材のいずれよりも溶融温度が高く且つ前記印材と対向する面に剥離材が塗付された透光性フィルムとを備えている光照射製版用スタンプユニットにおいて、前記印材が前記嵌入口から前記ホルダ部材に嵌入されており、前記印材の周縁部と、前記印材を被覆するように配置された前記透光性フィルムとが、前記ホルダ部材における前記嵌入口の端縁に共に熱接着されている。
【0010】
請求項1のスタンプユニットによると、印材と透光性フィルムとの間に剥離材が介在しているために、熱接着時または製版時に接着された印材と透光性フィルムとを容易に剥離することができる。そのため、製版後に透光性フィルムを剥離除去する際に、印材の多孔性樹脂層が透光性フィルム側に付着して印材から剥がれてしまうということがなく、多孔性樹脂層の剥がれによるインク滲出を大幅に抑制できるようになる。なお、請求項1でいう剥離材とは、印材と透光性フィルムとの接着強度を実質的に低下させて、印材と透光性フィルムとを剥離させるのに必要な力を減少させるような材料をいうものとする。
【0011】
また、透光性フィルムが印材を被覆するように配置されているので、製版までの間において印材の印面を保護することができるとともに、熱接着時にホルダ部材や印材の樹脂成分が熱接着治具に付着することを防止できる。ここに、透光性フィルムに含有される樹脂成分の溶融温度はホルダ部材及び印材に含有される樹脂成分の溶融温度よりも高いことが望ましい。さらに、透光性フィルムが印材を被覆するように配置されているので、透光性フィルムが製版時における断熱壁として機能することにより、製版時に本来溶融されるべきではない部分の多孔性樹脂層が溶融するのを抑制することができてスタンプ画質を向上させることが可能となる。
【0012】
また、請求項2の光照射製版用スタンプユニットは、前記剥離材が、前記透光性フィルムの両面に塗付されている。
【0013】
請求項2の光照射製版用スタンプユニットによると、透光性フィルムの両面に剥離材が塗付されているので、請求項1による利点に加えて、熱接着時に透光性フィルムの樹脂成分が接着治具に貼り付くのを防止できるとともに、製版時に原稿のインクが透光性フィルムに貼り付くのを防止できる。なお、透光性フィルムの印材と対向していない側の面に塗付される剥離材は、請求項1でいう剥離材と必ずしも同じ材料である必要はなく、別材料であってもよい。特に、透光性フィルムの両面で同じ剥離材を用いる場合には、剥離材は、上述した条件に加えて、透光性フィルムと原稿のインクとの接着強度および透光性フィルムと熱接着治具との貼り付き強度を実質的に低下させて、これらの剥離に必要な力を減少させるような材料であることが好ましい。
【0014】
また、請求項3の光照射製版用スタンプユニットは、前記剥離材が、シリコン系樹脂である。
【0015】
請求項3の光照射製版用スタンプユニットによると、剥離材が特に剥離性に優れ且つ安価なシリコン系樹脂であるため、低コストにより請求項1および2による効果を増強することが可能である。また、シリコン系樹脂は上述した剥離材として必要な条件を満たしているため、これを透光性フィルムの両面に塗付することで好適な結果が得られる。
【0016】
また、請求項4の光照射製版用スタンプユニットの製版方法は、嵌入口が形成されたホルダ部材と、光エネルギー吸収性物質を含有した多孔性樹脂層を有しており前記嵌入口から前記ホルダ部材に嵌入された印材と、前記印材及び前記ホルダ部材のいずれよりも溶融温度が高く且つ前記印材と対向する面に剥離材が塗付された透光性フィルムとを備えており、前記印材の周縁部と、前記印材を被覆するように配置された前記透光性フィルムとが、前記ホルダ部材における前記嵌入口の端縁に共に熱接着されている光照射製版用スタンプユニットを製版する方法であって、前記透光性フィルムが前記ホルダ部材に設けられたままで、前記印材の前記多孔性樹脂層にポジ原稿を通して光を照射する照射工程と、前記照射工程が行われた後に前記透光性フィルムを前記ホルダ部材から剥離する剥離工程とを備えている。
【0017】
【0018】
また、ホルダ部材、印材及び透光性フィルムは、接着治具を介して同時に熱接着されることが望ましい。このように、接着治具を使用してホルダ部材、印材及び保護フィルムを同時に熱接着すれば、一度の接着作業によりこれらを互いに熱接着することが可能となる。
【0019】
また、透光性フィルムにおける熱接着部の外側には、透光性フィルムをホルダ部材の下端縁から剥がす際にユーザによって把持される把持部が形成されていることが望ましく、透光性フィルムは、スタンプ印刷が行われる前に、把持部にて把持されてホルダ部材の下端縁から剥がされるが、このように透光性フィルムに把持部を形成しておけば、スタンプ印刷の開始時に、保護フィルムをホルダ部材から容易且つ簡単に剥がすことが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態において用いられるスタンプユニット用ホルダ部材の概略的な全体斜視図であり、図2はホルダ部材の側面図、図3はホルダ部材の側断面図、図4は平面図、図5は底面図である。なお、図3〜図5においては、説明の都合上、印材および透明フィルム(透光性フィルム)の図示が省略されている。ホルダ部材4は、図9にその全体分解斜視図を示すスタンプユニットの一部品として用いられる。図9に示すスタンプユニット1は、スタンプ印刷時にスタンプユニット1全体を支持するスカート部材2と、スカート部材2内で上下方向に摺動可能に配置されるとともにその下端部に熱接着により印材3が保持されたホルダ部材4と、ホルダ部材4に嵌合連結され、スタンプ印刷時にホルダ部材4を下方に移動させて印材3を印刷用紙(図示せず)に押し付けるためのグリップ部材5と、ホルダ部材4の印材3をカバーおよび保護するためのキャップ部材60とを備えている。
【0022】
図1〜図5において、ホルダ部材4は、スカート部材2の上部スカート部13と下部スカート部15(図12〜図14参照)のそれぞれの形状に合わせて、上部ホルダ部30および下部ホルダ部31とから一体に構成されている。また、ホルダ部材4のインクパック収納部22には、フィルム材から形成された袋状のパック内にインクが充填されてなるインクパック6(図9参照)を収納可能である。
【0023】
上部ホルダ部30は、平面視で略長方形状の筒状体を構成する周壁32を有し、周壁32における前側壁および後側壁(図2中には、その一方のみを図示する)の上部には、3つの長穴状の凹溝33が水平方向に整列して形成されている。また、3つの凹溝33の間には、周壁32の壁面から外側下方に傾斜する楔状の規制突起34がそれぞれ設けられている。ここに、各凹溝33には、グリップ部材5のリブ係止溝54(図15〜図17参照)が嵌合され、これによりホルダ部材4とグリップ部材5とが固定連結されるものである。また、規制突起34は、スタンプ印刷時にホルダ部材4を下方に移動する際に、スカート部材2における上部スカート部13の外壁12の上端縁に当接して、ホルダ部材4の下方移動量を規制する作用を行う。
【0024】
また、上ホルダ部30の周壁32の両端面(図2中、左右端面)には、周壁32の壁面から外側下方に向かって傾斜した楔状の傾斜突起35が設けられている。かかる傾斜突起35は、スカート部材2の下側からホルダ部材4を挿入する際に、上スカート部13の垂直溝19(図13参照)内にて上下に摺動可能に挿嵌され、また、傾斜突起35の下端には、捻りバネ16(図13参照)の他端が係止される。これにより、ホルダ部材4は、傾斜突起35と垂直溝19との協働によりスカート部材2内で上下方向に摺動可能にされ、また、捻りバネ16の一端が上スカート部13のバネ係止部17(図13参照)に係止され、且つ、他端が傾斜突起35の下端に係止されることに基づき、ホルダ部材4はスカート部材2内で常時上方に付勢されることになる。
【0025】
ホルダ部材4の上部ホルダ部30の周壁32に囲まれたほぼ直方体領域であるインクパック収納部22は、その底面23が平坦面となっており、その中央には下部ホルダ部31に連通するインク供給孔24が設けられている。また、インク供給孔24には、インクパック6を切断開封するための切断リブ25が、底面23よりも若干突出して設けられている。
【0026】
インクパック収納部22の内壁面には、ホルダ部材4の上端から後述する支持柱27の底面にまで達する長穴状の4つのインク補充孔26が設けられている。かかるインク補充孔26は、インクパック6により供給されたインクの印材3における貯溜量が少なくなった時に、ユーザによりインクパックを用いることなく予備的にインクを補給する際に使用される。このとき、インクは、グリップ部材5を取り外した状態でインク補充孔26から注入される。
【0027】
また、図5に示すように、ホルダ部材4の下部ホルダ部31には、長さ数mmの多数の円柱状の支持柱27が格子状に配置されている。支持柱27は下部ホルダ部31の下端から若干引っ込んだ位置であってホルダ部材4に保持された印材3と接触する位置にまで伸延しており、支持柱27の底面は実質的に一つの平面を形成している。また、下部ホルダ部31は、上部ホルダ部30から連続して一体に形成され、周壁32より外側で一回り大きい周壁38を有する。なお、ホルダ部材4は、ABS樹脂、ポリアセタールコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン等のポリオレフィン系樹脂、PC樹脂等のいずれかによって形成されている。
【0028】
切断リブ25は、グリップ部材5を押下した際に、厚紙板37との間でインクパック6を挟圧し、インクパック6を破断して開封する作用を行う。かかるインクパック6の開封を確実に行うべく、切断リブ25の両縁部は、尖って形成されている。また、インク供給孔24は、切断リブ25によって開封されたインクパック6から流出したインクを下方に案内するものであり、これによりインクは印材3に含浸されていく。
【0029】
下部ホルダ部31を構成する周壁38の長手壁の外側には、その略中央位置にて内方に向かって傾斜溝43が楔状に形成されており、また、傾斜溝43の両側には、1つまたは2つの検出溝44が形成されている。ここに、傾斜溝43は、本出願人による特願平9−249983号の明細書、図面に開示されたスタンプ製造装置を使用して、印材3から印判を形成する際に、ホルダ部材4をスタンプ製造装置における所定製版位置にセットするための溝である。このとき、傾斜溝43は、その両側が傾斜面に形成されているので、スタンプ製造装置における位置決め機構とホルダ部材4との位置関係が多少ずれた場合においても、位置決め機構の位置決め部材と傾斜面とのカム作用に基づき、ホルダ部材4は、位置決め部材が傾斜溝43の中央位置に当接するように移動されることとなる。これにより、ホルダ部材4は、スタンプ製造装置の所定製版位置にセットされる。また、検出溝44は、その個数および形成位置がホルダ部材4のサイズに従って変更されており、スタンプ製造装置の位置決め機構内に設けられた溝センサとの協働により、ホルダ部材4のサイズを特定するために使用される。なお、周壁38の一壁面における傾斜溝43および検出溝44の形成位置は、他壁面における傾斜溝43、検出溝44の形成位置と回転対称となるように設定されている。これは、ホルダ部材4をスタンプ製造装置の位置決め機構による所定製版位置にセットする際に、前壁と後壁を逆転してセットした場合においても、印材3の製版を可能とするためである。
【0030】
また、周壁38の長手壁における下部位置には、図2に示すように、一対の係止突起45が形成されている。かかる係止突起45は、後述するキャップ部材60の係止溝62に係止され、キャップ部材60を下部ホルダ部31の下端に取り付けるために使用される。これにより、周壁38の下端に保持された印材3の印面はキャップ部材60により保護される。
【0031】
また、ホルダ部材4の下端面には、支持柱27とほぼ接するように印材3が嵌入されているとともに、印材3を覆うように2枚の透明フィルム91、92が設けられている。印材3は、図9に示すように、例えば気孔率90%程度のポリビニルホルマールである厚さ3mmの硬質多孔性樹脂からなる上側層71と、上側層71と同じ材料からなる厚さ2mmの硬質多孔性樹脂である中間層72と、例えばカーボンブラック等の光エネルギ吸収物質を分散させた気孔率65%程度のウレタン系樹脂である軟質多孔性樹脂からなる下側層73との3層構造に形成されている。中間層72と下側層73は格子点状に塗付された接着剤によって互いに固定されているが、上側層71と中間層72は人為的に接着されていないフリー状態である。
【0032】
下側層73に含有されるカーボンブラックの重量比率は、例えば、ポリウレタン系発泡樹脂の場合、その樹脂に対し、通常0.1重量%〜15重量%、好ましくは、1.0重量%〜15重量%である。なお、下側層73において、カーボンブラックの代わりに使用される光エネルギー吸収性物質としては、塩化銀、臭化銀等が挙げられる。また、下側層73はウレタン系樹脂以外に、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、または、ゴム系樹脂を主原料とするものであってもよい。
【0033】
このように印材3を3層構造とすることには、以下のような利点がある。すなわち、現在インクパック6を用いた1回のインク供給によるスタンプ印刷可能回数を例えば5千〜1万回のスタンプ印刷が可能なほどに増やすことが望まれており、そのためには印材の硬質多孔性樹脂層の厚みを大きくする必要がある。しかし、硬質多孔性樹脂層はその厚みが大きくなると所定形状に切断加工する際に過大な”ばり”や”だれ”が生じてしまう。こういった”ばり”や”だれ”が過大であると、所望の形状の樹脂層が得られなくなったり切断後の後処理が必要になるなどの問題を生じることになる。そこで、本実施の形態では、硬質多孔性樹脂層を複数用いて1層当りの厚みを抑制しつつ硬質多孔性樹脂層の全体厚みを確保することにより、”ばり”や”だれ”の問題を回避するとともに硬質多孔性樹脂層に所望以上のインクが貯溜されるようにしたものである。
【0034】
図6に、ホルダ部材4の下端面近傍での拡大断面図を示す。透明フィルム91、92は、1枚のフィルムが折り曲げられたものであって、図1および図2に示すようにその両端部は粘着テープ99によってホルダ部材4の側壁に粘着されている。透明フィルム91は、印材3およびホルダ部材4とともに印材3の周縁部近傍3aにおいて互いに熱接着されている。一方、透明フィルム92は、透明フィルム91とは離隔しており、印材3またはホルダ部材4とも熱接着されていない。ともに厚さ0.025mm〜0.2mm程度の透明フィルム91、92は、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムからなっており、その融点は通常のPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムよりも高く約250℃である。従って、透明フィルム91、92の融点は、下側層73の融点(軟質ポリウレタン系樹脂の場合は約105〜110℃、軟質ポリオレフイン系樹脂の場合は約70℃である)やホルダ部材4の融点(180〜200℃)より高い。
【0035】
図7に、透明フィルム91の拡大断面図を示す。図7から明らかなように、透明フィルム91の両面には、ともに厚さ数μmのシリコン樹脂層93、94が塗付されている。また、図示は省略するものの、透明フィルム92の両面にも同様のシリコン樹脂層が塗付されている。シリコン樹脂層93、94は、印材3の下側層73と透明フィルム91との接着強度または付着性を実質的に低下させて、下側層73と透明フィルム91とを剥離させるのに必要な力を減少させる性質を有しているとともに、透明フィルム92と原稿のインクとの接着強度および透光性フィルム92と熱接着治具102(図8参照)との貼り付き強度を実質的に低下させて、これらの剥離に必要な力を減少させる性質を有している。なお、シリコン樹脂層93、94は、少なくとも下側層73の溶融温度において上述の性質を有していればよい。シリコン樹脂層93、94は、グラビアコータもしくはバーコータにて塗付することによって形成可能である。
【0036】
つまり、透明フィルム91の印材3と対向する面に塗付されたシリコン樹脂層93は、透明フィルム91と印材3の下側層73との剥離材として機能する。従って、本実施の形態のホルダ部材4では、印材3とホルダ部材4と透明フィルム91との相互の熱接着時または製版時に接着された印材3の下側層73と透明フィルム91とを、製版後に容易に剥離することができる。そのため、製版後に透明フィルム91を剥離除去する際に、印材3の下側層73が透明フィルム91側に付着して印材3から剥がれてしまうということがほとんどなくなる。よって、本実施の形態のホルダ部材4によると、印材3の下側層73である軟質多孔性樹脂層の剥がれによるインク滲出を大幅に抑制できて、良好なスタンプ画面が得られる。なお、シリコン樹脂コート層93、94の代わりにフッ素樹脂コート層を用いても同様の効果が期待できる。
【0037】
また、本実施の形態のホルダ部材4では、透明フィルム91、92が印材3を被覆するように配置されているので、製版までの間において印材3の印面を保護することができる。また、透明フィルム91、92はホルダ部材4や印材3よりも融点が高く、熱接着時にホルダ部材4や印材3の樹脂成分が熱接着治具に付着することも防止できる。さらに、透明フィルム91、92が印材3を被覆するように配置されているので、透明フィルム91、92が製版時における断熱壁として機能することにより、製版時に本来溶融されるべきではない部分(原稿の印刷部分)の下側層73が溶融するのを抑制することができてスタンプ画質を向上させることができる。
【0038】
また、透明フィルム92の印材3とは反対側の面に塗付されたシリコン樹脂層94は、透明フィルム92と原稿のインクとの剥離材兼透光性フィルム92と熱接着治具との剥離材として機能する。従って、本実施の形態のホルダ部材4では、製版時に原稿のインクが透明フィルム92に貼り付くのを防止できるとともに、熱接着時に透明フィルム92の樹脂成分が接着治具に貼り付くのを防止できる。そのため、インクの付いた原稿の損傷を防止できて原稿を何度でも繰り返して使用することができ、さらに接着治具に特殊な処理を施す必要もなくなる。
【0039】
また、本実施の形態では、透明フィルム91、92を2層有しているために、製版時に本来溶融されるべきではない部分(原稿の印刷部分)の下側層73が溶融するのを透明フィルムが1層だけの場合よりも効果的に抑制することができて、透明フィルム91、92による断熱効果を高めることができる。そのため、優れた画質のスタンプ画像が得られる。さらに、本実施の形態では、透明フィルム91、92のそれぞれの両面にシリコン樹脂層93、94が塗付されているので、断熱効果がより一層高く、得られるスタンプ画像の画質もより優れている。なお、本実施の形態では、1枚の透明フィルムを2枚に折って用いているが、2枚の透明フィルムを重ねて用いてもよいし、透明フィルム1枚だけを用いてもよい。
【0040】
次に、印材3および透明フィルム91をホルダ部材4の下端縁に熱接着する方法について、図8に基づき説明する。図8は印材3および透明フィルム91をホルダ部材4の下端縁4Aに熱接着する状態を一部省略して模式的に示す分解斜視図である。図8において、ホルダ部材4は下部ホルダ部31を上方に向けて配置されており、従って、下端縁4Aは上方に位置している。
【0041】
図8において、接着治具102は、平面視で長方形状を有する筒状に形成されており、図示しない加熱制御装置によりその加熱制御が行われる。ここに、接着治具102の加熱温度(接着温度)としては、200℃〜240℃の範囲に設定されている。また、接着治具102は、その形状に基づき接着面103を有する。透明フィルム91は透明フィルム92と連続して1枚のフィルムとして形成されている。透明フィルム91を構成する樹脂成分の溶融温度は、接着治具102の接着温度よりも低く、且つ、ホルダ部材4や印材3に含有されている樹脂成分の溶融温度よりも高くされている。また、透明フィルム91上には、接着治具102の接着面103に対応して、接着代96が形成される。接着代96は2つの部分からなり、内側の接着代96Aは、印材3の側縁3Aとホルダ部材4の下端縁4Aの内側とが接着される部分に対応し、また、外側の接着代96Bは、ホルダ部材4における下端縁4Aの幅に対応している。かかる透明フィルム91にて接着代96の外側には、把持部97が形成されている。
【0042】
このような構成において、透明フィルム91をホルダ部材4の下端縁4Aに熱接着するには、まず、図8に示すようにホルダ部材4を配置するとともに、ホルダ部材4の下部ホルダ部31内に印材3を配置する。この後、印材3の印面を被覆するように透明フィルム91を載置する。この状態を保持したまま、所定温度に加熱制御した接着治具102を下方に移動するとともに、接着治具102の接着面103と透明フィルム91の接着代96とを一致させつつ、接着治具102を下方に押圧し、この状態で所定時間(1〜5秒、望ましくは3秒)保持する。
【0043】
これにより、印材3の周縁3Aとホルダ部材4の下端縁4A内側とが相互に接着され、また、透明フィルム91の接着代96Aと印材3の周縁3Aの上部とが剥離可能な状態で接着される。これと同時に、透明フィルム91の接着代96Bとホルダ部材4の下端縁4Aとが剥離可能な状態で接着される。このように、印材3、ホルダ部材4及び透明フィルム91は、接着治具102によって同時に熱接着されるものである。そして、透明フィルム91が接着された後に透明フィルム92が図面上側に折り曲げられ、これら透明フィルム91、92が折り重ねられる。そして折り重ねられた透明フィルム91、92の両端部は粘着テープ99によって、ホルダ部材4の側壁に粘着固定される。
【0044】
ここに、ホルダ部材4、印材3及び透明フィルム91はそれぞれ樹脂成分を含有しており、透明フィルム91に含有される樹脂成分の溶融温度はホルダ部材4及び印材3に含有される樹脂成分の溶融温度よりも高くされており且つその表面には剥離材としてのシリコン樹脂層93、94が塗付されているので、透明フィルム91に含有される樹脂成分は、ホルダ部材4の下端縁4Aに対して強固に接着されることはなく、スタンプ印刷を行う際に透明フィルム91を簡単にホルダ部材4から剥がすことができる。
【0045】
また、接着治具102を使用してホルダ部材4、印材3及び透明フィルム91を同時に熱接着することにより、一度の接着作業によりホルダ部材4、印材3及び透明フィルム91の相互を熱接着することができる。このとき、透明フィルム91に含有される樹脂成分の溶融温度が他の樹脂成分の溶融温度よりも高く且つその表面には剥離材としてのシリコン樹脂層93、94が塗付されているので、従来のように透明フィルム91がホルダ部材4に対して強固に接着されることはない。
【0046】
更に、透明フィルム91を透明樹脂フィルムから構成することにより、キセノン管等の発光管を発光させてポジ原稿に従って印材3を選択的に溶融固化させることにより印判を作成する際においても、透明フィルム91を介して印材3を被覆した状態で印判の形成を行うことができる。従って、印判形成時においても印材3の印面を保護することが可能となる。また、透明フィルム91における接着代96の外側には、透明フィルム91をホルダ部材4の下端縁4Aから剥がす際に把持される把持部97が形成されているので、スタンプ印刷の開始時に、透明フィルム91をホルダ部材4から容易且つ簡単に剥がすことができる。
【0047】
次に、本実施の形態のホルダ部材4を用いて構成されるスタンプユニットについて説明する。図9は、本実施の形態のスタンプユニットの概略的な全体分解斜視図であり、図10は、ホルダ部材のインクパック収納部に未開封のインクパック6が収納された状態でのスタンプユニットの側断面図である。図11は、インクパック収納部22のインクパック6が開封された直後のスタンプユニットの側断面図である。
【0048】
ホルダ部材4のインクパック収納部22には、フィルム材から形成された袋状のパック内にインクが充填されてなるインクパック6を収納可能である。インクパック6には印材3において貯溜可能なインク量とほぼ等しい量のインクが袋詰めされている。そして、インクパック6とグリップ部材5の底面との間には、厚板紙37が配置され得る。上記フィルム材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等が単独で若しくはこれらを2種類以上貼り合せたものが使用されている。
【0049】
次に、スタンプユニット1のスカート部材2について、図12〜図14をさらに参照して説明する。図12はスカート部材2の側面図、図13はスカート部材2の端面図、図14はスカート部材2の側断面図である。これらの図において、スカート部材2は、平面視で略長方形の挿通孔10を有しており、挿通孔10にはホルダ部材4を摺動可能に挿通する内壁11が設けられている。また、スカート部材2は、内壁11の外側で内壁11と一体に形成された外壁12を有する上部スカート部13と、外壁12に連続して若干裾広がりとなるように形成された外壁14を有する下部スカート部15とから一体に構成されている。
【0050】
上部スカート部13の両端面(左右端面)の内壁11の上方位置には、ホルダ部材4を挿通孔10内で常時上方に付勢すべく捻りバネ16の一端を係止するバネ係止部17が形成されている。また、バネ係止部17の斜め下方位置には、捻りバネ16のコイル部が外挿されてコイル部の位置決めを行う半月状の位置決め突起18が形成されている。さらに、内壁11の略中央位置には、ホルダ部材4の両端面に形成された傾斜突起35(後述する)を上下に摺動可能に挿嵌する垂直溝19が形成されている。かかる垂直溝19は、スタンプ印刷時にホルダ部材4が下方に移動する際に、ホルダ部材4の傾斜突起35を上下方向に案内する作用を行う。また、垂直溝19と位置決め突起18との間には、捻りバネ16が端面から離れる方向に動くのを規制して、捻りバネ16と傾斜突起35の下端との係止が解除されないようにするために捻りバネ16が挿入される開口部(図示せず)を有するバネずれ抑制部材9が設けられている。
【0051】
下部スカート部材15は、スタンプ印刷時に印刷用紙上に載置されてスタンプユニット1全体を印刷用紙上で支持するものであり、下部スカート部材15を構成する外壁14の四隅の下端位置には、外壁14の下端縁を印刷用紙の紙面から離間した状態で支持する支持突起20が設けられている。なお、下部スカート部材15における外壁14の四面中央位置には、スタンプ印刷面の中心を示す下向き矢印部21が形成されている。
【0052】
次に、グリップ部材5について、図15〜図17をさらに参照して説明する。図15はグリップ部材5の側面図、図16はグリップ部材5の底面図、図17はグリップ部材5の幅方向における断面図である。
【0053】
これらの図において、グリップ部材5の上面には、前記のように印材3に形成したスタンプ内容を表示するラベル等を貼付するためのラベル貼付部50が形成されている。また、グリップ部材5の内部において、その上壁下面からは、図10、図16および図17に示すように、ホルダ部材4の上部ホルダ部30の周壁32内に挿嵌される挿嵌部51が形成されている。かかる挿嵌部51は、厚紙板37を介してホルダ部材4内に配置されたインクパック6を押圧する作用を行う。
【0054】
また、挿嵌部51は、底面視において図16に示すように、基本的に長方形状を有しており、その両側位置で相互に対向する位置には4つの凹部52が形成されている。かかる凹部52は、グリップ部材5の挿嵌部51をホルダ部材4の周壁32内に挿嵌する際に、周壁32に沿って形成されたインク補充孔26に対応した位置に設けられている。なお、凹部52が二対形成されているのは、どのような状態でグリップ部材5の挿嵌部51を周壁32内に挿嵌した場合においても、インク補充孔26の壁部が挿嵌の支障とならないようにするためである。また、グリップ部材5の内壁面には、複数個(図16には、12個)のリブ53が垂直方向に形成されており、また、各リブ53の下端近傍にはリブ係止溝54が一体に形成されている。リブ係止溝54は、前記した周壁32の外面上部に形成された各凹溝33に嵌合されるものであり、これによりホルダ部材4とグリップ部材5とが一体に連結されるものである。
【0055】
次に、ホルダ部材4の下部ホルダ部31の下端部に取り付けられるキャップ部材60について図18および図19をさらに参照して説明する。図18はキャップ部材60の側面図、図19はキャップ部材60の側断面図である。各図において、キャップ部材60は上方を開放した箱状を有しており、その外壁両側面の略中央位置には、図18に示すように、キャップ部材60をホルダ部材4に取り付ける際、および、取り外す際に指により把持される把持部61が形成されている。また、キャップ部材60の両側内壁面には、前記周壁38に形成された一対の係止突起45が係止される一対の係止溝62が設けられている。キャップ部材60の各係止溝62が周壁38の各係止突起45に係止されることにより、キャップ部材60は周壁38に取り付けられ、これによりキャップ部材60を介して周壁38の下端に保持された印材3の印面が保護されるものである。
【0056】
また、図20に示すように、厚板紙37は、ホルダ部材4のインクパック収納部22の平面形状と対応した4つの凹部28を有しており且つインクパック収納部22の内側寸法よりも若干大きいサイズに形成されている。図10に示すように、インクパック収納部22内にインクパック6を配置した状態でグリップ部材5をホルダ部材4に対して下方に移動させると、厚板紙37の作用によりグリップ部材5からの押圧力がインクパック6に対して略均一に及ぼされる。
【0057】
これにより、平坦面であるインクパック収納部22の底面23と厚板紙37との間でインクパック6が挟み込まれ、切断リブ25によってインクパック6が切断開封される。そして、図11に示すように、インクパック6は2つの平坦面の間でいわば押しつぶされることになるので、インクパック6内のインクは、インク供給孔24からほとんど残らず下方に流下して印材3に供給されるものである。このように、インクパック収納部22の底面23と厚板紙37という2つの平坦面でインクパック6を挟み込むことによって、インクパック6内のインクを残らず流出させて無駄を生じることなく印材3にインクを供給することが可能となる。
【0058】
このスタンプユニット1では、インクパック6を切断するための切断リブ25が、インク供給孔24内において底面23から若干突出して設けられている。そのため、グリップ部材5とホルダ部材4とを組み合わせる際の切断リブ25によるインクパック6の開封が容易である。また、切断リブ25がインク供給孔24内に設けられているので、インクパック6の切断位置がインク供給孔24と対向している。従って、インクパック6から流れ出たインクは迅速にインク供給孔24に流れ込む。よって、インクパック6の開封時からインクが印材3に達するまでの時間が短縮される。
【0059】
また、前記のようなサイズを有する厚紙板37をインクパック6の上側に配置する際に、厚板紙37の側端縁が容易に変形可能であるから厚板紙37をホルダ部材4内部に簡単に配置可能であるとともに、厚板紙37をホルダ部材4の内部にて任意の位置で固定することが可能となる。これに基づき、ホルダ部材4内部にインクパック6を配置した状態で輸送等を行うことが可能となる。さらに、厚紙板37は、インク吸収能を有していることから、後述するように、グリップ部材5を下方に移動させてホルダ部材4内でインクパック6を開封する際に、インクパック6からその上側に流出したインクを吸収してインクがスタンプユニット1の外部に漏出することを防止することができる。
【0060】
次に、本実施の形態のホルダ部材4を用いてスタンプユニット1を製造する方法について説明する。まず、図1に示した透明フィルム91、92が設けられたホルダ部材4を、スタンプ製造装置(図示せず)の所定製版位置にセットする。このとき、下部ホルダ部31に形成された傾斜溝43の傾斜面と位置決め機構の位置決め部材とのカム作用に基づき、ホルダ部材4は、スタンプ製造装置の所定製版位置にセットされる。また、各検出溝44と位置決め機構内に設けられた溝センサとの協働により、ホルダ部材4のサイズが特定される。
【0061】
そして、スタンプ製造装置内でロール状の原稿印刷用透明フィルムを搬送しつつサーマルヘッドおよび転写リボンを介して文字、画像をこの透明フィルムに印刷してポジ原稿を作成する。さらに、このポジ原稿と印材3の下側層とが対向するように、印材3が加圧された状態となるようにホルダ部材4をセットする。この状態で、キセノン管を発光させると、ポジ原稿を通して光が印材3の下側層73に照射される。これにより、原稿の透明部分に対応して光が照射された下側層73の一部分だけが光吸収材の発熱作用によって溶融された後固化されてシールされる。一方、溶融固化されなかった部分の印材3の下側層73は、原稿の文字等に対応してそのまま残存することとなる。これにより、印材3の下面にシール部と非シール部とが混在した印判が形成される。
【0062】
印材3の製版終了後、透明フィルム91、92をホルダ部材4から剥離する。そして、上部スカート部13の両端面において、捻りバネ16のコイル部が予め位置決め突起18に位置決めされるとともに、捻りバネ16の一端がバネ係止部17に係止された状態のスカート部材2の挿通孔10内に、ホルダ部材4が下方から挿通される。このとき、ホルダ部材4における上部ホルダ部30の周壁32の両端面に形成された傾斜突起35は、スカート部材2の垂直溝19内を上方に摺動され、また、傾斜突起35がその楔形状に従って捻りバネ16の他端を乗り越えた時点で捻りバネ16の他端が各傾斜突起35の下端に係止される。この状態で、ホルダ部材4は、スカート部材2内で捻りバネ16の付勢力により上方に付勢されるとともに、捻りバネ16の付勢力に抗してホルダ部材4を下方向に摺動可能となる。
【0063】
前記のようにホルダ部材4とスカート部材2とを組み立てた後、インクパック収納部22内部にインクパック6を収納し且つインクパック6上に厚板紙37を配置してから、グリップ部材5の挿嵌部51をホルダ部材4の周壁32内に挿嵌する(図10に示す状態)。このように、挿嵌部51を周壁32内に挿嵌した状態でさらにグリップ部材5を押下すると、ホルダ部材4内のインクパック6は、厚紙板37と切断リブ25との間で挟圧されていく。このとき、インクパック6に及ぼされる押圧力は、厚紙板37の作用に基づき、インクパック6に対して略均一に及ぼされることとなる。従って、インクパック6は切断リブ25と接触する部位で破断開封され、これよりインクパック6は切断リブ25の形成位置に対応して略中央位置で開封されることとなり、インクパック6から流出したインクを、切断リブ25の周囲にて略均一に分散することができる。また、厚紙板37は、インク吸収能を有していることから、前記のように、グリップ部材5を下方に移動させてホルダ部材4内でインクパック6を開封する際に、インクパック6からその上側に流出したインクを吸収してインクがスタンプユニット1の外部に漏出することを防止することができる。
【0064】
また、切断リブ25によってインクパック6が開封された際にインクが一度に流出することとなるが、周壁32と切断リブ25との間に形成される空間は、インクパック6から流出するインクの貯留部となるので、インクパック6が開封された際にインクが一度に流出した場合においても、インクがホルダ部材4から外部に漏出することを防止することができる。
【0065】
インクパック6から流出したインクは、切断リブ25の周囲に形成されたインク供給孔24から下方に案内されて印材3上に一時的に溜まるが(図11に示す状態)、数分間の時間をかけて印材3に含浸される。このとき、インク供給孔24は切断リブ25の周囲に形成されており且つインク供給孔24の下方には互いに離隔した支持柱27が設けられているので、インクパック6からのインクを、印材3の全体に渡って均一に含浸させることができる。
【0066】
なお、前記のようにグリップ部材5を下方に移動させることによりインクパック6を開封した時点で、グリップ部材5の各リブ53の下端に形成されたリブ係止溝54は、ホルダ部材4の周壁32に形成された各凹部33に嵌合され、これによりホルダ部材4とグリップ部材5とが一体に連結される。従って、前記のように印材3にインクを含浸させた後、印材3に形成された印判に従って文字等のスタンプ印刷を行う場合には、グリップ部材5とホルダ部材4とは一体に移動し、これよりスタンプ印刷が可能となるものである。
【0067】
また、印材3に含浸されたインクが少なくなって適正な濃度でスタンプ印刷を行うことができなくなった場合には、グリップ部材5をホルダ部材4から取り外し、厚板紙37およびインクがなくなったインクパック6の袋状パックをホルダ部材4から取り出すとともに、インクが充填された新たなインクパック6をホルダ4内に配置して前記と同様の操作を行うことにより、スタンプ印刷を再開することができる。また、インクパック6および厚板紙37を取り外すことなく、ホルダ部材4の周壁32の一内壁面に形成されたインク補充孔26からインクを補給してスタンプ印刷を再開することも可能である。
【0068】
以上説明した通り、本実施の形態のホルダ部材4を用いたスタンプユニット1では、印材3に対してインクを供給する場合、ホルダ部材4の内部にインクパック6を配置した状態で、グリップ部材5を下方に押圧することにより、ホルダ部材4内のインクパック6が厚板紙37と切断リブ25との間で挟圧され、開封される。これにより、インクパック6内のインクは、インク供給孔24から下方に流下して印材3に供給されるものである。このように、印材3に対してワンタッチで簡単にインクの供給を行うことができる。
【0069】
また、文字等のスタンプ印刷を繰り返すことにより印材3に含浸されているインクが少なくなって印刷文字等の濃度が低下することに起因して、印材3に対してインクの補給が必要な場合には、インクがなくなった袋状のパックを新たなインクパック6に取り替えるだけの簡単な作業によりインクの補給を行ってスタンプ印刷を再開することができる。
【0070】
さらに、インクパック6に接触する切断リブ25、および、インクを印材3に供給するためのインク供給孔24が形成されているので、切断リブ25によって簡単且つ迅速にインクパック6を開封することが可能であり、また、インク供給孔24を介して、インクパック6から流出したインクを迅速に印材3に含浸させることが可能となる。
【0071】
また、インクパック6から流出したインクは、切断リブ25の周囲に形成されたインク供給孔24から下方に案内されて印材3に含浸され、このとき、インク供給孔24は切断リブ25の周囲に形成されており且つインク供給孔24の下方には互いに離隔した支持柱27が設けられているので、インクパック6からのインクは、ホルダ部材4の底部全体に渡って均一に分散され、これによりインクを印材3の全体に渡って均一に含浸させることができる。
【0072】
以上本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、本実施の形態のスタンプユニット1は、印材3が硬質多孔性樹脂層2層と軟質多孔性樹脂層1層の合計3層からなっているが、硬質多孔性樹脂層を3層以上設けて印材3を4層以上としてもよい。また、インク供給孔の形状や配置なども適宜変更することが可能である。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の光照射製版用スタンプユニットによると、印材と透光性フィルムとの間に剥離材が介在しているために、熱接着時または製版時に接着された印材と透光性フィルムとを容易に剥離することができる。そのため、製版後に透光性フィルムを除去する際に、印材の多孔性樹脂層が透光性フィルム側に付着して印材から剥がれてしまうということがなく、多孔性樹脂層の剥がれによるインク滲出を大幅に抑制できるようになる。従って、スタンプ印刷さえた画質を向上させることが可能である。
【0074】
また、透光性フィルムが印材を被覆するように配置されているので、製版までの間において印材の印面を保護することができるとともに、熱接着時にホルダ部材や印材の樹脂成分が熱接着治具に付着することを防止できる。さらに、透光性フィルムが印材を被覆するように配置されているので、透光性フィルムが製版時における断熱壁として機能することにより、製版時に本来溶融されるべきではない部分の多孔性樹脂層が溶融するのを抑制することができてスタンプ画質を向上させることが可能となる。
【0075】
また、請求項2の光照射製版用スタンプユニットによると、透光性フィルムの両面に剥離材が塗付されているので、請求項1による利点に加えて、熱接着時に透光性フィルムの樹脂成分が接着治具に貼り付くのを防止できるとともに、製版時に原稿のインクが透光性フィルムに貼り付くのを防止できる。
【0076】
また、請求項3の光照射製版用スタンプユニットによると、剥離材が特に剥離性に優れ且つ安価なシリコン系樹脂であるため、低コストにより請求項1および2による効果を増強することが可能である。
【0077】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態で用いられるスタンプユニット用ホルダ部材の斜視図である。
【図2】 図1に示されたホルダ部材の側面図である。
【図3】 図1に示されたホルダ部材の側断面図である。
【図4】 図1に示されたホルダ部材の平面図である。
【図5】 図1に示されたホルダ部材の底面図である。
【図6】 図1に示されたホルダ部材の下端部近傍の拡大断面図である。
【図7】 図1に示されたホルダ部材に用いられている透明フィルムの拡大断面図である。
【図8】 印材および透明フィルムをホルダ部材の下端縁に熱接着する状態を一部省略して模式的に示す分解斜視図である。
【図9】 図1に示されたホルダ部材を用いたスタンプユニットの全体分解斜視図である。
【図10】 図9のスタンプユニットのインクパック未開封時の側断面図である。
【図11】 図9のスタンプユニットのインクパック開封直後の側断面図である。
【図12】 図9に示されたスカート部材の側面図である。
【図13】 図9に示されたスカート部材の端面図である。
【図14】 図9に示されたスカート部材の側断面図である。
【図15】 図9に示されたグリップ部材の側面図である。
【図16】 図9に示されたグリップ部材の底面図である。
【図17】 図9に示されたグリップ部材の断面図である。
【図18】 図9に示されたキャップ部材の側面図である。
【図19】 図9に示されたキャップ部材の側断面図である。
【図20】 図9に示された厚板紙の平面図である。
【符号の説明】
1 スタンプユニット
2 スカート部材
3 印材
4 ホルダ部材
5 グリップ部材
6 インクパック
24 インク供給孔
25 切断リブ
26 インク補充孔
27 支持柱
37 厚板紙
91、92 透明フィルム
93、94 シリコン樹脂層
Claims (4)
- 光エネルギー吸収性物質を含有した多孔性樹脂層を有する印材と、嵌入口が形成されたホルダ部材と、前記印材及び前記ホルダ部材のいずれよりも溶融温度が高く且つ前記印材と対向する面に剥離材が塗付された透光性フィルムとを備えている光照射製版用スタンプユニットにおいて、
前記印材が前記嵌入口から前記ホルダ部材に嵌入されており、
前記印材の周縁部と、前記印材を被覆するように配置された前記透光性フィルムとが、前記ホルダ部材における前記嵌入口の端縁に共に熱接着されていることを特徴とする光照射製版用スタンプユニット。 - 前記剥離材が、前記透光性フィルムの両面に塗付されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射製版用スタンプユニット。
- 前記剥離材が、シリコン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の光照射製版用スタンプユニット。
- 嵌入口が形成されたホルダ部材と、光エネルギー吸収性物質を含有した多孔性樹脂層を有しており前記嵌入口から前記ホルダ部材に嵌入された印材と、前記印材及び前記ホルダ部材のいずれよりも溶融温度が高く且つ前記印材と対向する面に剥離材が塗付された透光性フィルムとを備えており、前記印材の周縁部と、前記印材を被覆するように配置された前記透光性フィルムとが、前記ホルダ部材における前記嵌入口の端縁に共に熱接着されている光照射製版用スタンプユニットを製版する方法であって、
前記透光性フィルムが前記ホルダ部材に設けられたままで、前記印材の前記多孔性樹脂層にポジ原稿を通して光を照射する照射工程と、
前記照射工程が行われた後に前記透光性フィルムを前記ホルダ部材から剥離する剥離工程とを備えていることを特徴とする光照射製版用スタンプユニットの製版方法。
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