JP3817630B2 - 2次元角度センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2次元角度センサに関するものである。
【0002】
【技術的背景】
X線用大型ミラー、大型液晶パネル、シリコン・ウエハなど、表面の形状計測が重要な課題となっている。
例えば、マルチメディア社会を支える半導体デバイスの高機能化、低価格化につれて、半導体デバイスの主要材料であるシリコン・ウエハの大口径化は、現行の200mm径から300mm径へと着々と移行しつつある。また、4GDRAMの量産化に対応するために、2000年代後半には次世代の400mm径シリコンウエハが主流になると見込まれ、その製造技術を確立するための研究開発が急ピッチで進められている。しかし、この次世代ウエハに要求される平坦度は0.1μm程度と非常に高く、それを高精度で迅速に評価するための測定技術の開発が急務になっている。
この平面形状や平坦度の測定には、高精度で小型の2次元角度センサが必要である。
【0003】
図1に示すように、2次元角度センサは、試料面110の2次元傾斜角変化を検出するものである。また、入射する光ビームを細くすることで、試料面の局部傾斜を検出することもできる。この図では、原理を簡便に示すために光源を図示していない。2次元傾斜を検出するには、同図に示す光てこと呼ばれる方法は一番簡便である。Z軸方向に沿ってレーザ・ビーム142を試料面110に入射する。試料が傾斜した場合は、スクリーン170上の反射光線の光点の位置が傾斜角に応じて変化する。光点の座標変化量Δx,Δyを検出することによって、次式よりX,Y軸回りの傾斜角変化Δα,Δβを求めることができる。
【数1】
Figure 0003817630
ただし、Lは試料面からスクリーンまでの距離である。
しかし、この方法には、試料面からスクリーンまでの距離Lが変化した場合は測定結果に誤差が生じてしまう問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高精度で小型の2次元角度センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、検出対象に光ビームを投光するための光源と、前記光ビームによる前記検出対象からの反射光の光路中に設けたレンズとを有する2次元角度を検出する2次元角度センサにおいて、前記レンズの焦点付近に設けたN×N(N≧)に等分割されたフォトダイオードによる検出素子を備え、前記光源からの光ビームは四角形又はそれに近い形とし、前記検出素子上の前記反射光のスポットの幅を前記検出素子のN×N(N≧)に分割された間隔幅(セル間隔)とほぼ同じとし、分割した検出素子の(i,j),(i+1,j),(i,j+1),(i+1,j+1)番目(i=1,・・・,N),(j=1,・・・,N)の光電流を計算することで、(i,j)番目の分割された検出素子の位置から角度を検出することを特徴とする。
前記検出素子を前記レンズの光軸上で移動する位置調整機構を備えることにより、検出素子上のスポット・サイズを制御することで、自由に感度と測定範囲を選択することができる。前記光源からの光ビームを四角形又はそれに近い形とすることで、円形のスポットを使用した場合よりも線形誤差を低減し、角度検出精度を向上することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
本発明では、検出感度および精度を高めるために、図1の試料面110とスクリーン170の間にコリメート・レンズを入れ、オートコリメーションの原理による角度検出を行う。この構成を図2に示す。
図2に示すように、試料面110をコリメート・レンズ130の焦点位置に置くと、試料面傾斜とスクリーン上の光点座標との関係はレンズの焦点距離fのみに依存することになり、傾斜検出精度は向上できる。この場合のX軸,Y軸回り傾斜角の変化Δα,Δβは次式のように表される。
【数2】
Figure 0003817630
このとき、オートコリメータ・レンズの焦点付近に置かれるフォトダイオードの光軸上における位置を調整することによって,フォトダイオード上の光スポットのサイズを制御することができる。それによって、自由にセンサの分解能及び測定範囲を選択できる。また、センサのコンパクト化のために焦点距離の短いオートコリメータ・レンズを利用しても、高い角度検出分解能が実現できる。
さて、シリコン・ウエハ等の平坦度の測定に用いる2次元角度センサの場合を考えると、角度センサの出力には、試料面の形状変化による傾斜成分と走査案内(スピンドルとスライダ)の姿勢変化が含まれる。両者とも非常に小さいと考えられるため、スクリーンの位置に置く2次元角度センサを高感度なものにする必要がある。
【0006】
オートコリメーション方式による2次元傾斜角検出の感度は、レンズの焦点距離とスクリーン上光点の2次元位置検出感度によって決まる。角度センサのコンパクト化の観点からは、レンズの焦点距離をなるべく短くするのが望ましいので、角度検出感度を向上させるには、光点位置検出感度の高い受光素子を利用する必要がある。
2次元光点位置検出には、2次元半導体位置検出素子(2D PSD)が最も一般的に用いられる(図2の2D PSD120)。
2次元PSDの受光面の幅をXY方向共にLとし、それによって検出される光スポットの2次元位置をΔx,Δyとすると、Δx,ΔyはPSDの光電流出力IX1,IX2,IY1,IY2によって計算される2次元PSDのX,Y出力xout_PSD,yout_PSDから、次のように求めることができる。
【数3】
Figure 0003817630
以上の式から分かるように、xout_PSD/Δx(又は、xout_PSD/Δβ)及びyout_PSD/Δy(又はyout_PSD/Δα)で定義される2次元PSDの位置検出感度は、主に受光面の幅によって決まる。位置検出感度は受光面の幅に反比例するため、短い受光面幅のほうが高感度化に有利である。オートコリメータ・レンズ(対物レンズ)の焦点距離を40mmとした場合、0.01秒の試料面の傾斜Δα(又はΔβ)に対応するPSD上のスポット移動量Δy(又はΔx)は4nmと非常に小さい。要求されるセンサの角度分解能を0.01秒とし、センサのダイナミックレンジ(測定範囲と分解能との比)を10000とすると、必要な受光面幅が約40μmまでとなる。それ以上の受光面幅が角度分解能を低下させる。しかし、市販のPSDの受光面幅は数mmオーダになっており、市販PSDの角度分解能は要求される角度分解能より約100倍も低いことになる。
【0007】
さて、2次元角度センサの受光素子として利用可能なものに、2×2の4分割フォトダイオード(QPD)がある。図3にその構成を示している。
図3において、レーザ・ダイオード・ユニット140からのレーザ・ビームは、ビーム径より小さい四角形の開口部を有するスリット板146を通って四角形となり、偏光ビーム・スプリッタ(PBS),1/4λプレートを介して、試料面に四角形又はそれに近い形状の光スポットとして入射する。このレーザ・ビームによる光スポットは、試料面110で反射して、1/4λプレートを介して偏光ビーム・スプリッタ(PBS)150で直角に光路を変え、レンズ130の焦点付近に設置されている2次元位置検出素子に入射する。
図3の拡大図に示すように、本発明の実施形態においては、4分割PDを対物レンズの焦点位置から若干ずれたところに置いて、PD上のスポットの幅をDとする。図3の構成では、光スポット145の形状を四角とし、スポットの強度分布を均一とする。4分割PDの2次元出力を次のように求めることができる。なお、実施形態では、レーザユニット140の円形の光ビームの光路にビーム径よりも小さい、四角あるいはそれに近い形の開口を有する板146を入れることによって、円形の光ビームを四角形あるいはそれに近い形に変えている。
【数4】
Figure 0003817630
ここではI,I,I,Iは4分割PDのそれぞれのセルからの光電流出力である。
この式(7),(8)から、PDを用いたときの検出感度はスポットのサイズに反比例することが分かる。スポットのサイズは、オートコリメーション・ユニット光軸上の4分割PDの位置の関数になっているため、その光軸上の位置を位置調整機構129で調整し、スポットのサイズを調整することによって、自由に測定範囲と分解能を変えることができる。この方法を使って、極めて高い角度感度を得ることができる。
図3に示すように、4分割PD上のスポットを四角あるいはそれに近い形にすることによって、通常の光ビームから得られる丸いスポットの場合より、センサの出力の線形性を高めることができる。丸いスポットの場合は、式(7)(8)の関係は非線形になる。
4分割PDを利用すれば、丸いスポットの場合でも直線性は落ちるものの、PDの光軸上における位置を焦点位置の付近で微調整することによって、レンズの焦点距離に依存せずに、きわめて高い感度を実現することができる。
光ビームを四角形あるいはそれに近い形とする場合は、光ビーム径より小さい開口を用いているので、レーザ・ダイオード・ユニットから出た平行光の中心部のみを使うことになるため、光ビームの強度分布がより均一となり、センサ出力の線形性向上に有利である。さらに、開口部での光回析の影響を低減するために、四角形開口のコーナ部を丸くしてもよい。
なお、光ビームを四角形あるいはそれに近い形状とすることは、開口部146を用いず、レーザ・ダイオード・ユニット内部で行うこともできる。
【0008】
上述では、4分割PD(図4(a)参照)を用いて2次元角度センサを構成している場合で説明したが、図4(b)に示すように、多数(例えば20×20)に分割したフォトダイオードを用いることにより、ダイナミックレンジを大幅に向上させることができる。以下にこれについて詳しく説明する。
図4(b)に示すように、多分割型PDはN×N(Nが2より大きい)の四角形のPDセルからなる。セルのピッチ(セル間隔)をX,Y方向ともCとする。また,図のようにX方向にi=1,2,・・・,N,Y方向にj=1,2,・・・,Nと番号を付ける。スポットが図に示すようにセル(i,j),(i,j+1),(i+1,j),(i+1,j+1)に跨ったときの場合を考える。図のようにセル(1,1)を原点としたときのスポットのX,Y方向位置をそれぞれΔX,ΔYとし,それに対応する角度変化をΔα,Δβとする。それらを次の式により表すことができる。
【数5】
Figure 0003817630
ここで、i=1,2,・・・,N,j=1,2,・・・,N,N>=2であり、Δx,Δyはセル(i,j)を原点としたときのスポットのX,Y方向位置で、Δα,Δβはそれに対応する角度である。Δx,Δy及びΔα,Δβは、それぞれセル(i,j),(i,j+1),(i+1,j),(i+1,j+1)の光電流出力から次のように求めることができる。
【数6】
Figure 0003817630
ここで、i=1,2,・・・,N,j=1,2,・・・,Nであり、Ii,j+1,Ii+1,j+1,Ii+1,j,Ii,jはそれぞれセル(i,j+1),(i+1,j+1),(i+1,j),(i,j)の光電流出力である。また,Dは光スポット幅で,セル間隔Cとほぼ同じに設定する。
このようにして,式(11),(12)で決まる高い分解能を維持したまま、式(9)(10)に示すように,測定範囲及びダイナミックレンジをN/2倍拡大することができる。
【0009】
【実施例】
図5に実際に作成した、図4と同じ構成で光ビームを円形とした場合の2次元角度センサを示す。図5において、波長が780nmの半導体レーザ140が光源として用いられている。光源から出た光は直径1mmの平行ビームにコリメートされる。ユニットをコンパクトにするために、対物レンズ130を焦点距離が40mmのアクロマチック・レンズにした。受光素子は4分割PD128を用いて2次元検出を行う。試料面からの反射光は対物レンズを通った後4分割PDに入る。センサはサイズが90(L)x60(W)x30(H)mmのコンパクトな設計になっている。
図6に、図5に示した4分割PDを用いた2次元角度センサの校正結果の一例を示す。角度検出感度が高くなるように、4分割PDの光軸上における位置を調整した。分解能が0.05秒のニコン製光電式オートコリメータを校正基準として用いた。計測では、試料110が手動傾斜ステージに載せられ、それぞれX軸回りとY軸回りの傾斜ができるようになっている。試料面の傾斜を同時に試作のセンサとニコン・オートコリメータで計測し、校正結果とした。図6では、横軸は単位が秒のニコン・オートコリメータの読みで、縦軸は式(7),(8)で定義されるセンサの出力で、単位はパーセンテージである。X方向出力はY軸回りの傾斜(Δβ)に対応し、Y方向出力はX軸回りの傾斜(Δα)に対応している。図から分かるように、角度センサは範囲が約200秒の2次元傾斜を検出できる。
【0010】
以下に、本発明についての特徴を述べる。
1.センサのコンパクト化のために焦点距離の短いオートコリメータ・レンズを利用して、高い角度検出分解能が実現できる。
また、オートコリメータ・レンズの焦点付近に置かれるフォトダイオードの光軸上における位置を調整することによって、フォトダイオード上の光スポットのサイズを制御することで、センサの分解能及び測定範囲を変えることができる。
それによって、自由にセンサの分解能及び測定範囲を選択できる。
2.4分割フォトダイオードに入射する光スポットの形を円形から四角形又はそれに近い形に変えることで、センサの出力の線形性が向上し、精度が向上する。
3.実施例の4つの四角形セルからなる2×2の4分割フォトダイオードを、多数に分割されたN×N(たとえば20×20)の多素子にすることでダイナミックレンジを大幅に向上させることができる。
【0011】
【発明の効果】
上述するように、本発明により、高精度で小型の2次元角度センサを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の2次元角度センサの構成を示す図である。
【図2】本発明の2次元角度センサの基本的構成を示す図である。
【図3】実施形態の2次元角度センサの構成を示す図である。
【図4】2次元角度センサに用いるフォトダイオードの受光部を示す図である。
【図5】実施例の2次元角度センサの構成例を示す図である。
【図6】実施例の2次元角度センサの出力を校正した結果を示す図である。
【符号の説明】
110 試料面
128 4分割フォトダイオード(QPD)
129 QPD位置調整機構
130 コリメート・レンズ
140 レーザ・ユニット
142 レーザ・ビーム
144 光軸
145 光スポット
146 四角形の開口部を有する板
150 偏光ビーム・スプリット(PBS)
152 1/4波長板
170 スクリーン

Claims (1)

  1. 検出対象に光ビームを投光するための光源と、
    前記光ビームによる前記検出対象からの反射光の光路中に設けたレンズとを有する2次元角度を検出する2次元角度センサにおいて、
    前記レンズの焦点付近に設けたN×N(N≧)に等分割されたフォトダイオードによる検出素子を備え、
    前記光源からの光ビームは四角形又はそれに近い形とし、
    前記検出素子上の前記反射光のスポットの幅を前記検出素子のN×N(N≧)に分割された間隔幅とほぼ同じとし、
    分割した検出素子の(i,j),(i+1,j),(i,j+1),(i+1,j+1)番目(i=1,・・・,N),(j=1,・・・,N)の光電流を計算することで、(i,j)番目の分割された検出素子の位置から角度を検出することを特徴とする2次元角度センサ。
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