JP3815877B2 - 窯炉および耐火物 - Google Patents
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- C03B5/42—Details of construction of furnace walls, e.g. to prevent corrosion; Use of materials for furnace walls
- C03B5/43—Use of materials for furnace walls, e.g. fire-bricks
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窯炉およびその加熱室を構成するための耐火物の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、窯炉の熱効率を高めて加熱処理を施す製品の製造コストを低減すると共に省エネルギに寄与するために、耐火物によって外部空間から遮蔽された加熱室すなわち炉内へのその耐火物内面からの輻射効率を高めることが提案されている。例えば、特開昭55−60171号公報等に記載されている炉壁構造、特開昭55−158135号公報等に記載されている硝子溶融炉、特開平3−163174号公報等に記載されているコーティング方法により断熱性コーティングを施した炉壁等がそれである。これら各公報に記載された技術によれば、加熱室を構成する耐火物の内面に高い輻射率を有する顔料粒子を含むコーティング膜が施されていることから、炉外に向かう熱がそのコーティング膜に吸収され且つ加熱室内に向かって輻射されるため、外部へ放射される熱量が少なくなって熱効率が高められると考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記各公報に記載された技術では、顔料粒子として炭化珪素、窒化珪素、或いはカーボン等の非酸化物が用いられている。そのため、上記コーティング膜を施した耐火物を酸化性雰囲気下において高温で使用すると、次第に酸化して輻射率が低下させられるという問題がある。したがって、長期間の使用を考慮すると、コーティング膜が高輻射率に維持される実用上の最高使用温度は800(℃) 程度に過ぎず、このようなコーティング膜の適用はガラス溶融炉や焼鈍炉等の比較的低温の窯炉に限定されていた。しかも、輻射による熱効率の向上効果顕著に得られるのは900(℃) 以上の温度域であることから、それよりも低温である上記の使用温度では十分な熱効率向上効果延いては省エネルギ効果が得られているとはいえないのである。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、一層高い熱効率が得られる窯炉およびその窯炉を構成するための耐火物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の窯炉の要旨とするところは、耐火物によって外部空間から遮蔽された加熱室を備えた窯炉であって、(a) 前記耐火物の表面のうちの前記加熱室に面する内面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含み、そのガラス膜は、それら顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有することにある。
【0006】
【第1発明の効果】
このようにすれば、窯炉は、耐火物の表面のうちの加熱室に面する内面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含んで構成され、更に、そのガラス膜は、顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有して構成される。そのため、加熱室を構成する耐火物の内面には顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜が設けられることから、その顔料粒子の輻射率に従って定められるガラス膜の輻射率に応じてその耐火物の輻射能が向上させられる。この場合において、顔料粒子とガラス組織との界面には、そのガラス組織よりも二酸化珪素含有率が高いことから顔料粒子との反応性が相対的に低くされた顔料被覆層が備えられるため、耐火物の表面にガラス膜を設けるための焼成中および窯炉の使用中における顔料粒子とガラス組織との界面反応やその顔料粒子の酸化等が、その界面に設けられた顔料被覆層によって好適に抑制される。したがって、顔料粒子の本来の輻射率がそのままガラス組織中において生かされると共に、高温で使用される場合にも界面反応や酸化に起因する顔料粒子の輻射率の低下が抑制されるため、ガラス膜延いては耐火物に高い輻射率が付与され且つ維持される。これにより、輻射による熱効率向上効果の大きい高温域で高い輻射率を維持したまま窯炉を使用し得るため、一層高い熱効率が得られる。
【0007】
因みに、本発明者等の知見によれば、上記のガラス膜の焼成過程や使用中に高温に曝されることによってガラス組織と顔料粒子との反応が生じると、顔料粒子の輻射率が低下させられると共にガラス膜の耐熱性が低下させられる。また、顔料粒子が酸化させられた場合にもその輻射率が低下することが知られている。そのため、高輻射率を利用する目的で顔料粒子をガラス組織中に分散させる場合には、上記の反応や酸化を抑制することが重要となるのである。なお、例えば、米国特許第4,093,771 号等には、ガラス膜を生成するための焼成過程において急速加熱する技術が記載されている。しかしながら、このような急速加熱方法では、焼成過程における上記反応の抑制効果が不十分であると共に、使用中における反応抑制の必要性は何ら考慮されていないのである。
【0008】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の耐火物の要旨とするところは、窯炉において外部空間から遮蔽された加熱室を構成するために用いられる耐火物であって、(a) 前記加熱室の内面を構成するための一面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含み、そのガラス膜は、それら顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有することにある。
【0009】
【第2発明の効果】
このようにすれば、耐火物は、加熱室の内面を構成するための一面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含んで構成され、更に、そのガラス膜は、顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有して構成される。そのため、加熱室を構成するための耐火物の内面には顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜が設けられることから、その顔料粒子の輻射率に従って定められるガラス膜の輻射率に応じてその耐火物の輻射能が向上させられる。この場合において、顔料粒子とガラス組織との界面には、そのガラス組織よりも二酸化珪素含有率が高いことから顔料粒子との反応性が相対的に低くされた顔料被覆層が備えられるため、耐火物の表面にガラス膜を設けるための焼成中およびその耐火物で加熱室を構成した窯炉の使用中における顔料粒子とガラス組織との界面反応やその顔料粒子の酸化等が、その界面に設けられた顔料被覆層によって好適に抑制される。したがって、顔料粒子の本来の輻射率がそのままガラス組織中において生かされると共に、高温で使用される場合にも界面反応や酸化に起因する顔料粒子の輻射率の低下が抑制されるため、ガラス膜延いては耐火物に高い輻射率が付与され且つ維持される。これにより、この耐火物で窯炉を構成することにより、輻射による熱効率向上効果の大きい高温域で高い輻射率を維持したまま窯炉を使用し得るため、一層高い熱効率が得られる。
【0010】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記第1発明および第2発明において、前記顔料被覆層は、二酸化珪素を 85(wt%) 以上含むものである。このようにすれば、二酸化珪素の含有率が十分に高いことから、顔料粒子とガラス組織との界面反応が一層抑制される。
【0011】
また、好適には、前記顔料被覆層は、0.1 乃至数 (μm)程度の厚さに設けられる。このようにすれば、ガラス膜の軟化点や熱膨張率等の熱的特性に大きく影響しない範囲で顔料被覆層の厚さが十分に厚くされていることから、顔料粒子とガラス組織との界面反応が一層確実に抑制される。
【0012】
また、好適には、前記顔料粒子は四硼化珪素(SiB4)或いは六硼化珪素(SiB6)等の珪素硼化物、二珪化モリブデン(MoSi2 )、炭化珪素、酸化鉄、窒化珪素、および酸化クロムのうち少なくとも一種から構成される。このようにすれば、これらは十分に高い輻射率を有するものであることから、一層高い輻射率を有するガラス膜延いては耐火物或いは窯炉が得られる。なお、一層好適には、前記顔料粒子は珪素硼化物である。このようにすれば、珪素硼化物は極めて高い輻射率を有することから、ガラス膜を構成する顔料粒子として一層好適に用いられるが、その反面、非酸化物であることも相俟ってガラス組織との高い反応性を有することから、顔料被覆層を設けた効果が一層顕著に得られる。
【0013】
また、好適には、前記ガラス組織はボロシリケート・ガラスから成るものである。このようにすれば、二酸化珪素を主成分とし且つ硼酸を含むボロシリケート・ガラスはガラスの中でも高い耐熱性および耐熱衝撃性を有することから、一層高い耐熱性、耐熱衝撃性、および高い輻射性を要求される窯炉の被膜として好適な構造体のガラス膜が得られる。このようなボロシリケート・ガラスとしては、例えば、二酸化珪素含有率が 96(%) 程度の高純度シリカ・ガラスに酸化硼素を数 (%) 添加して焼成した反応硬化ガラス(reaction cured glass:例えば前記の米国特許第4,093,771 号等参照)や、二酸化珪素含有率が 81(%) 程度の硼珪酸ガラス等が好適に用いられる。なお、前者においても酸化硼素が添加され且つ焼成されることから高純度シリカ・ガラス粒子の表面には硼素が浸透することによってボロシリケートの層が形成される。したがって、何れのガラスにおいても顔料粒子との界面近傍におけるガラス組織の二酸化珪素含有率は 80(%) 程度に過ぎないことから、前記のように顔料被覆層の二酸化珪素含有率を 85(%) 程度に設定すれば十分に界面反応の抑制効果が得られるのである。なお、ボロシリケート・ガラスは可及的に二酸化珪素純度が高いことが耐熱性の観点から望まれ、耐熱性を低下させる傾向にあるナトリウム(Na)、カリウム(K )等のアルカリ金属やマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、および鉄(Fe)、チタニウム(Ti)、鉛(Pb)等は可及的に少なく、一層好適には総量で1(wt%) 以下とされることが望ましい。
【0014】
因みに、従来の窯炉のコーティング膜は、顔料粒子が無機材料から成る結合剤で相互に結合されることで多孔質の耐火物表面に設けられていた。そのため、耐火物表面における固着強度が低いことから、窯炉が長期間使用されている間に加熱および冷却が繰り返され、或いは加熱室内の温度分布に起因する熱衝撃が生じると、それらに起因してコーティング膜の剥離や脱落が生じ易く、このことからも使用温度が低く制限されていたのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において各部の寸法比等は必ずしも正確に描かれていない。
【0016】
図1は、本発明の一実施例の窯炉10の構造を模式的に示す図である。図において、窯炉10は、例えば陶磁器やセラミックス等の焼成に用いられる炉床昇降式の電気炉であって、炉壁12、天井14、および図に示される加熱位置とそれよりも下方であって図示しない被加熱物載置位置との間で昇降可能な炉床16によって構成された幅300(mm) 程度、高さ340(mm) 程度、奥行き300(mm) 程度の大きさの箱型の加熱室18を備えると共に、その加熱室18内において相対向する一対の炉壁12、12の内面に沿って、長手状の複数本のヒータ20が天井14から炉床16に貫通して設けられている。なお、窯炉10にはヒータ20に接続された制御装置、加熱室18内の温度を測定するための温度センサ、および炉床16の昇降機構等が備えられているが、これらは省略されている。
【0017】
上記の炉壁12、天井14、および炉床16は、それぞれ厚さ数(cm)程度の平板状の無機繊維質断熱材すなわち耐火物(例えばイソライト工業株式会社製 カオウール1400ボード等。以下、単に断熱材という)から構成されるものであって、炉壁12および天井14の加熱室18側の内面22はガラス膜24によって覆われている。なお、焼成物やそれを載置する棚板等との反応を避けるため、炉床16の内面すなわち加熱室18の底面26にはガラス膜24が設けられていない。
【0018】
また、上記のガラス膜24は、例えば0.3 〜1(mm) 程度の厚さを備えたものであって、図2に模式的に示されるように、ガラス組織28と、そのガラス組織28中に略均一に分散させられた顔料粒子30とから構成されている。上記のガラス組織28は、例えば後述の製造工程で説明されるように米国特許第4,093,771 号に記載されている反応硬化ガラスであり、全体がボロシリケート・ガラスから成って例えば2 ×10-6 (/℃) 程度の熱膨張率を有するものであるが、後述の高純度シリカ・ガラスに由来してガラス組織28の核を成す純度 96(wt%) 程度の高純度シリカ含有ボロシリケート・ガラスから成る多孔質部28bと、その高純度シリカ・ガラスと酸化硼素とから生成されてシリカ含有率が 82(wt%) 程度の緻密質部28aとから構成されている。
【0019】
また、上記の顔料粒子30は、例えば、平均粒径が 10(μm)程度の四硼化珪素(SiB4)であり、ガラス膜24全体に対して2.5(wt%) 程度の割合で含まれている。この顔料粒子30の周囲すなわちガラス組織28との界面には、例えば0.1 〜数 (μm)程度の厚さのシリカ・ガラス層32が備えられている。このシリカ・ガラス層32は、例えば純度 99(%) 程度の高純度シリカ・ガラスから成るものであり、本実施例においてはこれが顔料被覆層に相当する。すなわち、シリカ・ガラス層32すなわち顔料被覆層は、ガラス組織28のうち顔料粒子30との界面近傍に位置する緻密質部28aよりも高いシリカ含有率となっている。そのため、顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が抑制されていることから、ガラス膜24は、後述の図7に示されるように例えば 1200(℃) 程度の高温下においても0.9 以上、図示はしないが1400( ℃) においても0.8 以上の高い輻射率を有しており、更に、 1350(℃) 以上の高い耐熱性を備えている。すなわち、窯炉10は、内面22にガラス膜24が設けられているにも拘わらず、 1350(℃) もの高温で運転可能である。
【0020】
ところで、上記のように構成されるガラス膜24は、例えば図3に示される工程に従って断熱材表面に設けられる。以下、図に従って膜形成方法を説明する。
【0021】
先ず、工程1AのRCG製造工程においてガラス・フリットから反応硬化ガラス原料粉体を製造する。このRCG製造工程は、例えば図4に詳しく示されるものである。図4において、工程A1の酸化硼素溶解工程において、例えば純度5N(99.999 %以上) の酸化硼素粉末(例えばフルウチ化学株式会社製)20(g) を 85(℃) 程度に加熱したイオン交換水272(cc) 中に溶解して酸化硼素水溶液を作製する。次いで、工程A2の溶剤添加工程において、例えばエタノール(特級試薬が望ましい。例えば関東科学株式会社製)137(g)をその酸化硼素水溶液中に添加し、工程A3のガラス・フリット混合工程において、その水溶液中に更に高純度シリカ・ガラス・フリットを400(g)程度加えてスラリを作製する。したがって、本実施例においては酸化硼素粉末の添加量は8.5(wt%) 程度である。なお、高純度シリカ・ガラス・フリットとしては、例えば、SiO2 96(%) 、 B2O3 3(%) 、Al2O3 0.4(%) 程度の組成で、比表面積200(m2/g) 、気孔率 28(%) 程度の物性を備えた多孔質の二成分系ガラス(例えばコーニング・インターナショナル株式会社製 バイコール#7930等)が好適に用いられる。そして、工程A4の攪拌工程において、この混合物を例えばホット・プレート等で 85(℃) 程度で保温しつつ攪拌してスラリ中のエタノールと水分とを除去する。
【0022】
工程A5の乾燥工程においては、工程A4においてエタノールおよび水分がある程度除去されて攪拌困難な程度まで粘性が増大したスラリを、例えばオーブン等に入れて 70(℃) 程度で更に乾燥することにより、残余のエタノールおよび水分を除去する。このようにして乾燥が終了した後、工程A6の解砕工程において乾燥物を手でほぐし、更に工程A7の分級工程において#16程度の篩を用いて分級することにより例えば 1(mm)程度以上の粗大粒子を除去する。工程A8の焼成工程においては、解砕・分級した乾燥物を純度 63(%) 程度のシリカ製容器に入れ、例えば1000〜 1100(℃) ×2(hr) 程度の条件で焼成する。これにより、高純度シリカ・ガラス・フリットと酸化硼素とが反応させられる。そして、工程A9の粉砕工程において、焼成されることによって塊となったガラス・フリットをポット式ボール・ミル等を用いて粉砕し、最後に工程A10の分級工程において#330〜300程度の篩によって分級して 45(μm)程度以上の粗大粒子を除去することにより、反応硬化ガラス原料粉体が得られる。
【0023】
図3に戻って、工程1Bの顔料被覆工程においては、顔料粒子30すなわち四硼化珪素(例えば米国 CERAC社製B−1088等)を高純度シリカ・ガラス膜で被覆する。この顔料被覆工程は図5に詳しく示されるものである。先ず、工程B1の無機高分子希釈工程においては、例えば、プリセラミック・ポリマ(加熱処理によってセラミックスとなる無機高分子)であるペルヒドロポリシラザン(例えば東燃株式会社製)をキシレン等の溶剤を用いて 10(wt%) 程度の濃度に希釈する。ペルヒドロポリシラザンは、珪素、窒素、および水素から構成されるものであって、例えば図6に示されるような構造を有した分子量600 〜900 程度、密度1.3(g/cm3)程度の無色透明の液状物であり、不純物量が数(ppm) 以下と極めて高い純度を有している。
【0024】
工程B2の顔料粒子分散工程では、上記の希釈された無機高分子液内に顔料粒子である純度 98(%) 以上の四硼化珪素を無機高分子液に対して10〜 20(wt%) 程度となるように調合し、振動ミル等によって30分間程度攪拌して、顔料粒子30が分散させられた分散液を作製する。続く工程B3の噴霧乾燥工程においては、この分散液をスプレー・ドライヤ等で噴霧して熱風乾燥する。このとき、噴霧乾燥条件は例えば熱風入口温度が110(℃) 程度、出口温度が 70(℃) 程度である。これにより、顔料粒子30の表面に付着させられた無機高分子液が乾燥され且つ縮合させられて、その表面に無機高分子膜が形成される。そして、工程B4の熱処理工程においては、例えば大気中400(℃) 程度の条件で熱処理が施される。これにより、その無機高分子膜中の珪素が大気中の酸素と結合させられて二酸化珪素(シリカ)が生成されると共に、無機高分子膜中の窒素と水素が結合させられてアンモニア(NH3 )が生成されて消散させられる。このため、顔料粒子30の表面にその無機高分子膜から生成された極めて純度の高いシリカ・ガラス膜が例えば0.1 〜数 (μm)程度の膜厚に形成される。本実施例においては、工程B1乃至B3が無機高分子膜形成工程に、工程B4の熱処理工程が加熱生成工程にそれぞれ対応し、上記シリカ・ガラス膜が顔料被覆膜に相当する。
【0025】
図3に戻って、工程2の混合工程においては、上記のようにして作製した反応硬化ガラス原料粉体を例えば234(g)程度、シリカ・ガラス膜を施した顔料粒子30を例えば6.0(g)程度、エタノール等の有機溶剤を386(g)程度、および2%メチルセルロース水溶液(メチルセルロースは、例えば信越化学工業株式会社製 メトローズ65SH−4500等)等の有機結合剤を39.2(g) 程度を、アルミナ玉石と共にアルミナ製磁器ポット内に入れて密閉し、回転ポット台上で例えば5時間程度回転させて混合する。これにより、反応硬化ガラス原料粉体および顔料粒子30が分散させられたペースト(スラリ)が得られる。なお、エタノールは分散剤として、メチルセルロースは後の塗布工程において塗布膜の適度な厚みを得るための保形剤としてそれぞれ機能するものであるが、両者の添加量は混合時の粘度をも考慮して適宜決定される。続く工程3の塗布工程においては、ポットから排出したペースト(コーティング・スラリ)をスプレー・ガンに充填し、前記図1に示される窯炉10の炉壁12および天井14の内面に吹き付け塗布する。このとき、吐出圧力は例えば3(kgf/cm2)程度以下に設定される。また、塗布の間はヒータ20が全て取り外されると共に、ペーストが断熱材12、14に過剰にしみ込むことを抑制する目的で、塗布面に予め有機溶剤が十分にしみ込まされる。そして、室温に保ったまま例えば24時間程度放置して有機溶剤を除去した後、工程4の焼付工程において、例えば加熱室18内に例えば20(l/min) 程度の流量で30分間程度窒素(N2)ガスを流して炉内雰囲気を窒素ガスに置換した後、更に窒素ガスを流しつつ 1375(℃) ×1.5 時間程度の条件で熱処理を施すことにより、塗布膜から前記ガラス膜24が生成される。なお、窒素ガスの導入は、予め窯炉10に窒素ガス導入穴が設けられている場合にはそれを利用し、または、側壁12或いは天井14等の一乃至数箇所に窒素ガス導入穴を穿設して行う。また、焼付工程における昇温速度は、例えば200(℃/hr) 程度である。したがって、ガラス膜24を構成するガラス組織28中には、顔料粒子30がシリカ・ガラス膜で覆われた状態で含まれており、このシリカ・ガラス膜が前記シリカ・ガラス層32を構成している。本実施例においては、混合工程がペースト作製工程に、焼付工程が加熱処理工程にそれぞれ対応する。
【0026】
この場合において、本実施例では、顔料粒子30は表面にシリカ・ガラス膜(すなわちシリカ・ガラス層32)が設けられた状態で反応硬化ガラス原料粉体等と混合され、断熱材12、14上で焼き付けられることから、その焼き付け中において反応硬化ガラス原料粉体から生成されるガラス組織28と反応することがシリカ・ガラス膜によって抑制される。そのため、ガラス組織28の組成が変化させられることが抑制されると共に、顔料粒子30がガラス組織28中に溶け込んで輻射率に寄与し得る量が減じられることが好適に抑制されて、高い耐熱性および高い輻射性を共に備えたガラス膜24が得られる。
【0027】
ここで、図7は、上記のようにしてガラス膜24が設けられた本実施例の断熱材12、14の輻射率の温度依存性を評価した結果を、ガラス膜24を設けていない断熱材12、14の評価結果(比較例)と共に示すものである。なお、輻射率は室温から800(℃) までの範囲においてはよく知られたFT−IRによる発光スペクトル測定で求め、 1200(℃) においては射出式輻射率測定装置によって熱電対指示温度と放射温度計指示温度との比等に基づいて求めた黒体放射に対する放射発散度の相対値である。
【0028】
図から明らかなように、本実施例のガラス膜24を設けた断熱材12、14によれば、室温(25℃程度)において0.95程度と極めて高い輻射率を示し、しかも、 1200(℃) 程度の高温下においても0.90以上と輻射率が高く保たれる。これに対して、比較例においては、室温においては同程度の輻射率が得られるものの、400(℃) 程度から低下が著しく、 1200(℃) では0.6 程度まで低下する。すなわち、本実施例によれば、焼付直後において従来と同等以上の高い輻射率が得られるだけでなく、その後高温に曝される使用中においても、従来よりも 30(%) 程度高い輻射率に維持される。なお、上記図7の比較例は、ガラス膜24が設けられていないことから断熱材12、14そのものの輻射率を表している。
【0029】
また、図示はしないが、図1の窯炉10の場合と同様なガラス膜24をガラス溶解炉の内壁に施したところ、例えばNa2O-CaO-SiO2 系のガラス粉末の溶融に必要な電力(電気量)がガラス膜24を設けない場合に比較して 14(%) 程度削減できることが確かめられた。すなわち、本実施例によれば、窯炉10の内壁面の輻射率が高められることから、加熱室18から窯炉10の外部へ放出されようとする熱がガラス膜24に吸収され且つ加熱室18内に効率良く輻射されることから、炉外への放出熱量が少なくなって熱効率が高められ、必要な電力が少なくなるのである。
【0030】
要するに、本実施例においては、窯炉10は、断熱材12、14の表面のうちの加熱室18に面する内面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子30がガラス組織28中に分散させられたガラス膜24を含んで構成され、更に、そのガラス膜24は、顔料粒子30とガラス組織28との界面においてその顔料粒子30を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織28内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さのシリカ・ガラス層32を有して構成される。そのため、加熱室18を構成する断熱材12、14の内面には顔料粒子30がガラス組織28中に分散させられたガラス膜24が設けられることから、その顔料粒子30の輻射率に従って定められるガラス膜24の輻射率に応じてその断熱材12、14の輻射能が向上させられる。この場合において、顔料粒子30とガラス組織28との界面には、そのガラス組織28よりも二酸化珪素含有率が高いことから顔料粒子30との反応性が相対的に低くされたシリカ・ガラス層32が備えられるため、断熱材12、14の表面にガラス膜24を設けるための焼成中および窯炉10の使用中における顔料粒子30とガラス組織28との界面反応やその顔料粒子30の酸化等が、その界面に設けられたシリカ・ガラス層32によって好適に抑制される。したがって、顔料粒子30の本来の輻射率がそのままガラス組織28中において生かされると共に、高温で使用される場合にも界面反応や酸化に起因する顔料粒子30の輻射率の低下が抑制されるため、ガラス膜24延いては断熱材12、14に高い輻射率が付与され且つ維持される。これにより、輻射による熱効率向上効果の大きい高温域で高い輻射率を維持したまま窯炉10を使用し得るため、一層高い熱効率が得られ、延いては、窯炉10外の温度上昇が抑制される。
【0031】
また、本実施例においては、シリカ・ガラス層32は、二酸化珪素を 99(wt%) 以上含むものである。そのため、二酸化珪素の含有率が十分に高いことから、顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が一層抑制される。
【0032】
また、本実施例によれば、顔料粒子30として用いられる四硼化珪素は、極めて高い輻射率を有することから、ガラス膜24の輻射率を高めるために好適に用いられるが、その反面、非酸化物であることも相俟ってガラス組織28との高い反応性を有するものである。したがって、シリカ・ガラス層32を設けた効果が一層顕著に得られる。
【0033】
また、本実施例においては、前記シリカ・ガラス層32は、0.1 乃至数 (μm)程度の厚さに設けられる。そのため、ガラス膜24の使用温度や熱膨張率等の熱的特性に大きく影響しない範囲でシリカ・ガラス層32の厚さが十分に厚くされていることから、顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が一層確実に抑制される。
【0034】
また、本実施例においては、ガラス組織28は、二酸化珪素を主成分とし且つ硼酸を含むボロシリケート・ガラスである。このようにすれば、ボロシリケート・ガラスはガラスの中でも高い耐熱性および耐熱衝撃性を有することから、一層高い耐熱性、耐熱衝撃性、および高い輻射性を要求される窯炉10の被膜として好適なガラス膜24が得られると共に、そのガラス膜24が剥離し難いことから、加熱室18内の雰囲気が比較的清浄に保たれる。
【0035】
また、本実施例においては、ガラス膜24を形成するに際しては、ガラス膜24中でのガラス組織28と顔料粒子30との界面におけるそのガラス組織28内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さのシリカ・ガラス層32をその顔料粒子30の表面に設ける工程1Bの顔料被覆工程が工程2の混合工程に先立って実施される。そのため、混合工程においては、高い含有率で二酸化珪素を含むことからガラス組織28との反応性が低いシリカ・ガラス層32が設けられた顔料粒子30とガラス粉末とを含むペーストが作製されるため、工程4の焼付工程において加熱処理される際にそのガラス組織28と顔料粒子30との界面反応がそのシリカ・ガラス層32によって抑制される。また、ガラス膜24が製造された後の窯炉10の使用時においても、その界面反応が同様にシリカ・ガラス層32によって抑制される。
【0036】
また、本実施例においては、前記顔料被覆工程は、珪素を含む無機高分子から成る無機高分子膜を前記顔料粒子30表面に形成する工程B1乃至B3の無機高分子膜形成工程と、前記無機高分子膜が形成された前記顔料粒子30を酸化雰囲気において所定温度で加熱処理することにより、その無機高分子膜から前記所定の含有率で二酸化珪素を含む前記シリカ・ガラス層32を生成する工程B4の熱処理工程とを、含むものである。このようにすれば、高分子膜形成工程において、珪素を含む無機高分子膜が顔料粒子30表面に形成され、熱処理工程において酸化雰囲気で加熱処理することにより無機高分子膜から前記シリカ・ガラス層32が生成される。そのため、シリカ・ガラス層32は、無機高分子の形態で顔料粒子30表面に膜形成されることから、薄く一様な厚さの膜を好適に形成し得るが、その無機高分子は珪素を含むものであることから、酸化雰囲気で加熱処理することによって無機高分子中の珪素が酸化されて、所定の含有率で二酸化珪素を含むシリカ・ガラス層32が生成される。したがって、所定の厚さを有し且つ所定の含有率で二酸化珪素を含むシリカ・ガラス層32を好適に形成できる。
【0037】
また、本実施例においては、前記無機高分子膜形成工程は、前記無機高分子を含む液中に前記顔料粒子30が分散させられた分散液を噴霧乾燥することにより前記無機高分子膜を形成する工程B3の粉霧乾燥工程を含むものである。このようにすれば、無機高分子および顔料粒子30が含まれる分散液を噴霧乾燥することによって、その顔料粒子30の表面に無機高分子膜が形成される。そのため、顔料粒子30の表面を覆う無機高分子を含む液が噴霧乾燥によって速やかに乾燥されることによって無機高分子膜が形成されることから、一層薄く且つ一様な厚さの無機高分子膜を得ることができる。
【0038】
また、本実施例においては、前記無機高分子は、水素(H )、窒素(N )、珪素(Si)から成るペルヒドロポリシラザンである。このようにすれば、酸化雰囲気で焼成されることによって珪素と酸素が結合させられて二酸化珪素が生成され、顔料粒子30の表面に無機高分子膜が形成される一方、水素と窒素が結合させられてアンモニア(NH3 )が生成されて速やかに消散させられる。したがって、形成された無機高分子膜、延いてはそれから生成されるシリカ・ガラス層32が極めて高い含有率で二酸化珪素を含むものとなるため、一層顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が抑制される。
【0039】
また、本実施例においては、前記工程4の焼付工程は、非酸化性雰囲気下で加熱するものである。このようにすれば、焼成雰囲気中に酸素が存在しないことからガラス膜24の焼付け時における顔料粒子30の酸化が一層抑制される。
【0040】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施される。
【0041】
例えば、実施例においては、窯炉10の加熱室18を構成する耐火物として厚さが数(cm)程度の無機繊維質断熱材12、14が用いられていたが、耐火物の種類や厚さは窯炉10の用途や使用温度等に応じて適宜定められる。
【0042】
また、実施例においては、ガラス組織28を構成するガラスフリットに高シリカ・ガラスフリットに酸化硼素が添加されたものが用いられていたが、当初から酸化硼素を含むガラスフリットが用いられてもよく、酸化硼素を含まないガラスフリットがそのまま用いられてもよい。用いられるガラスの組成は、窯炉10の用途やその内面に要求される耐熱性、輻射率などによって適宜変更される。
【0043】
また、実施例においては、顔料粒子30として平均粒径が 10(μm)程度の四硼化珪素が用いられていたが、顔料粒子30の種類は窯炉10の用途や要求される輻射率、顔料粒子30自身の耐熱性などを考慮して、六硼化珪素(SiB6)等の他の珪素硼化物、アルミナ(Al3O3 )、二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3 )、酸化鉄(Fe2O3 )、ムライト(3Al2O3・2SiO2 )、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2 )、粘土、チタン酸アルミニウム(AlTiO3)、窒化珪素(Si3N4 )、炭化珪素(SiC )、大理石、石灰石、雲母、ガラス、白色陶器、レンガ(赤)、石綿等の比較的高い全輻射率を有する種々の材料から1乃至数種類が適宜選択して用いられる。また、顔料粒子30の平均粒径は、良好な分散性が得られる範囲で適宜設定され、例えば四硼化珪素の場合には1 〜10 (μm)程度のものが好適に用いられる。なお、顔料粒子は、必ずしも略球形のものが用いられなくともよく、例えば、ペレット状や短繊維状のもの等でもよく、形状に拘わらず同様な効果を得ることができる。
【0044】
また、実施例においては、顔料粒子(四硼化珪素粉末)26の表面にシリカ・ガラス層32を形成するための無機高分子としてペルヒドロポリシラザンが用いられていたが、工程B4の熱処理工程に示されるような加熱等によってシリカ・ガラス層32を形成し得る珪素を含むものであれば他の無機高分子が用いられても差し支えない。
【0045】
また、実施例においては、ガラスフリットに添加される酸化硼素の量は8.5(wt%) 程度とされていたが、その添加量はガラス組織28の耐熱性や強度等およびガラスフリットの組成等を考慮して適宜設定されるものであり、例えば酸化硼素を含まないガラスフリットに対しては8 〜 13(wt%) 程度の範囲で適宜変更される。
【0046】
また、実施例においては、焼付工程が窒素雰囲気下、徐速加熱によって行われていたが、雰囲気は適宜変更され、酸化雰囲気であっても差し支えない。本発明によれば、顔料粒子がシリカ・ガラスによって覆われていることから、その酸化やガラス組織28との反応が生じ難いためである。また、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気に代えてアルゴン等の不活性ガス雰囲気であってもよく、真空下で焼付が施されてもよい。
【0047】
また、反応硬化ガラス原料粉体と顔料粒子30との混合割合等のガラス膜24の組成ひいては物性を定める種々の数値は窯炉10の使用目的等に応じて適宜設定されるものである。
【0048】
また、実施例においては、ガラス膜24が0.3 〜1(mm) 程度の膜厚で設けられていたが、厚さは使用条件等に応じて適宜変更される。但し、厚くし過ぎるとガラス膜24が焼付け時における膨張に起因して破損し易いため、1(mm) 以下とされることが望ましい。
【0049】
また、実施例においては、ガラス膜24が炉壁12および天井14上の略全面に設けられていたが、その一部だけに設けられていても本発明の効果を得ることができる。但し、熱効率の大きな向上効果を得るためには、その塗布面積が可及的に大きいことが望まれるため、略全面に設けることが望ましい。また、焼成物の処理上の問題が生じない場合には、炉床16の底面26の略全面或いはその一部にガラス膜24を設けてもよい。
【0050】
その他、一々例示はしないが本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の窯炉の構造を模式的に示す図である。
【図2】図1の窯炉の炉壁の断面を模式的に示す図である。
【図3】図1の窯炉の炉壁へのガラス膜の形成方法を説明する工程図である。
【図4】図3の工程図におけるRCG製造工程を説明する工程図である。
【図5】図3の工程図における顔料被覆工程を説明する工程図である。
【図6】無機高分子の構造を説明する図である。
【図7】図1の窯炉の炉壁の輻射率の温度依存性を従来の炉壁と比較して示す図である。
【符号の説明】
10:窯炉
{12:炉壁、14:天井}(耐火物)
18:加熱室
22:内面
24:ガラス膜
28:ガラス組織
30:顔料粒子
32:シリカ・ガラス層(顔料被覆層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、窯炉およびその加熱室を構成するための耐火物の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、窯炉の熱効率を高めて加熱処理を施す製品の製造コストを低減すると共に省エネルギに寄与するために、耐火物によって外部空間から遮蔽された加熱室すなわち炉内へのその耐火物内面からの輻射効率を高めることが提案されている。例えば、特開昭55−60171号公報等に記載されている炉壁構造、特開昭55−158135号公報等に記載されている硝子溶融炉、特開平3−163174号公報等に記載されているコーティング方法により断熱性コーティングを施した炉壁等がそれである。これら各公報に記載された技術によれば、加熱室を構成する耐火物の内面に高い輻射率を有する顔料粒子を含むコーティング膜が施されていることから、炉外に向かう熱がそのコーティング膜に吸収され且つ加熱室内に向かって輻射されるため、外部へ放射される熱量が少なくなって熱効率が高められると考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記各公報に記載された技術では、顔料粒子として炭化珪素、窒化珪素、或いはカーボン等の非酸化物が用いられている。そのため、上記コーティング膜を施した耐火物を酸化性雰囲気下において高温で使用すると、次第に酸化して輻射率が低下させられるという問題がある。したがって、長期間の使用を考慮すると、コーティング膜が高輻射率に維持される実用上の最高使用温度は800(℃) 程度に過ぎず、このようなコーティング膜の適用はガラス溶融炉や焼鈍炉等の比較的低温の窯炉に限定されていた。しかも、輻射による熱効率の向上効果顕著に得られるのは900(℃) 以上の温度域であることから、それよりも低温である上記の使用温度では十分な熱効率向上効果延いては省エネルギ効果が得られているとはいえないのである。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、一層高い熱効率が得られる窯炉およびその窯炉を構成するための耐火物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の窯炉の要旨とするところは、耐火物によって外部空間から遮蔽された加熱室を備えた窯炉であって、(a) 前記耐火物の表面のうちの前記加熱室に面する内面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含み、そのガラス膜は、それら顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有することにある。
【0006】
【第1発明の効果】
このようにすれば、窯炉は、耐火物の表面のうちの加熱室に面する内面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含んで構成され、更に、そのガラス膜は、顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有して構成される。そのため、加熱室を構成する耐火物の内面には顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜が設けられることから、その顔料粒子の輻射率に従って定められるガラス膜の輻射率に応じてその耐火物の輻射能が向上させられる。この場合において、顔料粒子とガラス組織との界面には、そのガラス組織よりも二酸化珪素含有率が高いことから顔料粒子との反応性が相対的に低くされた顔料被覆層が備えられるため、耐火物の表面にガラス膜を設けるための焼成中および窯炉の使用中における顔料粒子とガラス組織との界面反応やその顔料粒子の酸化等が、その界面に設けられた顔料被覆層によって好適に抑制される。したがって、顔料粒子の本来の輻射率がそのままガラス組織中において生かされると共に、高温で使用される場合にも界面反応や酸化に起因する顔料粒子の輻射率の低下が抑制されるため、ガラス膜延いては耐火物に高い輻射率が付与され且つ維持される。これにより、輻射による熱効率向上効果の大きい高温域で高い輻射率を維持したまま窯炉を使用し得るため、一層高い熱効率が得られる。
【0007】
因みに、本発明者等の知見によれば、上記のガラス膜の焼成過程や使用中に高温に曝されることによってガラス組織と顔料粒子との反応が生じると、顔料粒子の輻射率が低下させられると共にガラス膜の耐熱性が低下させられる。また、顔料粒子が酸化させられた場合にもその輻射率が低下することが知られている。そのため、高輻射率を利用する目的で顔料粒子をガラス組織中に分散させる場合には、上記の反応や酸化を抑制することが重要となるのである。なお、例えば、米国特許第4,093,771 号等には、ガラス膜を生成するための焼成過程において急速加熱する技術が記載されている。しかしながら、このような急速加熱方法では、焼成過程における上記反応の抑制効果が不十分であると共に、使用中における反応抑制の必要性は何ら考慮されていないのである。
【0008】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の耐火物の要旨とするところは、窯炉において外部空間から遮蔽された加熱室を構成するために用いられる耐火物であって、(a) 前記加熱室の内面を構成するための一面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含み、そのガラス膜は、それら顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有することにある。
【0009】
【第2発明の効果】
このようにすれば、耐火物は、加熱室の内面を構成するための一面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含んで構成され、更に、そのガラス膜は、顔料粒子とガラス組織との界面においてその顔料粒子を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有して構成される。そのため、加熱室を構成するための耐火物の内面には顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜が設けられることから、その顔料粒子の輻射率に従って定められるガラス膜の輻射率に応じてその耐火物の輻射能が向上させられる。この場合において、顔料粒子とガラス組織との界面には、そのガラス組織よりも二酸化珪素含有率が高いことから顔料粒子との反応性が相対的に低くされた顔料被覆層が備えられるため、耐火物の表面にガラス膜を設けるための焼成中およびその耐火物で加熱室を構成した窯炉の使用中における顔料粒子とガラス組織との界面反応やその顔料粒子の酸化等が、その界面に設けられた顔料被覆層によって好適に抑制される。したがって、顔料粒子の本来の輻射率がそのままガラス組織中において生かされると共に、高温で使用される場合にも界面反応や酸化に起因する顔料粒子の輻射率の低下が抑制されるため、ガラス膜延いては耐火物に高い輻射率が付与され且つ維持される。これにより、この耐火物で窯炉を構成することにより、輻射による熱効率向上効果の大きい高温域で高い輻射率を維持したまま窯炉を使用し得るため、一層高い熱効率が得られる。
【0010】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記第1発明および第2発明において、前記顔料被覆層は、二酸化珪素を 85(wt%) 以上含むものである。このようにすれば、二酸化珪素の含有率が十分に高いことから、顔料粒子とガラス組織との界面反応が一層抑制される。
【0011】
また、好適には、前記顔料被覆層は、0.1 乃至数 (μm)程度の厚さに設けられる。このようにすれば、ガラス膜の軟化点や熱膨張率等の熱的特性に大きく影響しない範囲で顔料被覆層の厚さが十分に厚くされていることから、顔料粒子とガラス組織との界面反応が一層確実に抑制される。
【0012】
また、好適には、前記顔料粒子は四硼化珪素(SiB4)或いは六硼化珪素(SiB6)等の珪素硼化物、二珪化モリブデン(MoSi2 )、炭化珪素、酸化鉄、窒化珪素、および酸化クロムのうち少なくとも一種から構成される。このようにすれば、これらは十分に高い輻射率を有するものであることから、一層高い輻射率を有するガラス膜延いては耐火物或いは窯炉が得られる。なお、一層好適には、前記顔料粒子は珪素硼化物である。このようにすれば、珪素硼化物は極めて高い輻射率を有することから、ガラス膜を構成する顔料粒子として一層好適に用いられるが、その反面、非酸化物であることも相俟ってガラス組織との高い反応性を有することから、顔料被覆層を設けた効果が一層顕著に得られる。
【0013】
また、好適には、前記ガラス組織はボロシリケート・ガラスから成るものである。このようにすれば、二酸化珪素を主成分とし且つ硼酸を含むボロシリケート・ガラスはガラスの中でも高い耐熱性および耐熱衝撃性を有することから、一層高い耐熱性、耐熱衝撃性、および高い輻射性を要求される窯炉の被膜として好適な構造体のガラス膜が得られる。このようなボロシリケート・ガラスとしては、例えば、二酸化珪素含有率が 96(%) 程度の高純度シリカ・ガラスに酸化硼素を数 (%) 添加して焼成した反応硬化ガラス(reaction cured glass:例えば前記の米国特許第4,093,771 号等参照)や、二酸化珪素含有率が 81(%) 程度の硼珪酸ガラス等が好適に用いられる。なお、前者においても酸化硼素が添加され且つ焼成されることから高純度シリカ・ガラス粒子の表面には硼素が浸透することによってボロシリケートの層が形成される。したがって、何れのガラスにおいても顔料粒子との界面近傍におけるガラス組織の二酸化珪素含有率は 80(%) 程度に過ぎないことから、前記のように顔料被覆層の二酸化珪素含有率を 85(%) 程度に設定すれば十分に界面反応の抑制効果が得られるのである。なお、ボロシリケート・ガラスは可及的に二酸化珪素純度が高いことが耐熱性の観点から望まれ、耐熱性を低下させる傾向にあるナトリウム(Na)、カリウム(K )等のアルカリ金属やマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、および鉄(Fe)、チタニウム(Ti)、鉛(Pb)等は可及的に少なく、一層好適には総量で1(wt%) 以下とされることが望ましい。
【0014】
因みに、従来の窯炉のコーティング膜は、顔料粒子が無機材料から成る結合剤で相互に結合されることで多孔質の耐火物表面に設けられていた。そのため、耐火物表面における固着強度が低いことから、窯炉が長期間使用されている間に加熱および冷却が繰り返され、或いは加熱室内の温度分布に起因する熱衝撃が生じると、それらに起因してコーティング膜の剥離や脱落が生じ易く、このことからも使用温度が低く制限されていたのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において各部の寸法比等は必ずしも正確に描かれていない。
【0016】
図1は、本発明の一実施例の窯炉10の構造を模式的に示す図である。図において、窯炉10は、例えば陶磁器やセラミックス等の焼成に用いられる炉床昇降式の電気炉であって、炉壁12、天井14、および図に示される加熱位置とそれよりも下方であって図示しない被加熱物載置位置との間で昇降可能な炉床16によって構成された幅300(mm) 程度、高さ340(mm) 程度、奥行き300(mm) 程度の大きさの箱型の加熱室18を備えると共に、その加熱室18内において相対向する一対の炉壁12、12の内面に沿って、長手状の複数本のヒータ20が天井14から炉床16に貫通して設けられている。なお、窯炉10にはヒータ20に接続された制御装置、加熱室18内の温度を測定するための温度センサ、および炉床16の昇降機構等が備えられているが、これらは省略されている。
【0017】
上記の炉壁12、天井14、および炉床16は、それぞれ厚さ数(cm)程度の平板状の無機繊維質断熱材すなわち耐火物(例えばイソライト工業株式会社製 カオウール1400ボード等。以下、単に断熱材という)から構成されるものであって、炉壁12および天井14の加熱室18側の内面22はガラス膜24によって覆われている。なお、焼成物やそれを載置する棚板等との反応を避けるため、炉床16の内面すなわち加熱室18の底面26にはガラス膜24が設けられていない。
【0018】
また、上記のガラス膜24は、例えば0.3 〜1(mm) 程度の厚さを備えたものであって、図2に模式的に示されるように、ガラス組織28と、そのガラス組織28中に略均一に分散させられた顔料粒子30とから構成されている。上記のガラス組織28は、例えば後述の製造工程で説明されるように米国特許第4,093,771 号に記載されている反応硬化ガラスであり、全体がボロシリケート・ガラスから成って例えば2 ×10-6 (/℃) 程度の熱膨張率を有するものであるが、後述の高純度シリカ・ガラスに由来してガラス組織28の核を成す純度 96(wt%) 程度の高純度シリカ含有ボロシリケート・ガラスから成る多孔質部28bと、その高純度シリカ・ガラスと酸化硼素とから生成されてシリカ含有率が 82(wt%) 程度の緻密質部28aとから構成されている。
【0019】
また、上記の顔料粒子30は、例えば、平均粒径が 10(μm)程度の四硼化珪素(SiB4)であり、ガラス膜24全体に対して2.5(wt%) 程度の割合で含まれている。この顔料粒子30の周囲すなわちガラス組織28との界面には、例えば0.1 〜数 (μm)程度の厚さのシリカ・ガラス層32が備えられている。このシリカ・ガラス層32は、例えば純度 99(%) 程度の高純度シリカ・ガラスから成るものであり、本実施例においてはこれが顔料被覆層に相当する。すなわち、シリカ・ガラス層32すなわち顔料被覆層は、ガラス組織28のうち顔料粒子30との界面近傍に位置する緻密質部28aよりも高いシリカ含有率となっている。そのため、顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が抑制されていることから、ガラス膜24は、後述の図7に示されるように例えば 1200(℃) 程度の高温下においても0.9 以上、図示はしないが1400( ℃) においても0.8 以上の高い輻射率を有しており、更に、 1350(℃) 以上の高い耐熱性を備えている。すなわち、窯炉10は、内面22にガラス膜24が設けられているにも拘わらず、 1350(℃) もの高温で運転可能である。
【0020】
ところで、上記のように構成されるガラス膜24は、例えば図3に示される工程に従って断熱材表面に設けられる。以下、図に従って膜形成方法を説明する。
【0021】
先ず、工程1AのRCG製造工程においてガラス・フリットから反応硬化ガラス原料粉体を製造する。このRCG製造工程は、例えば図4に詳しく示されるものである。図4において、工程A1の酸化硼素溶解工程において、例えば純度5N(99.999 %以上) の酸化硼素粉末(例えばフルウチ化学株式会社製)20(g) を 85(℃) 程度に加熱したイオン交換水272(cc) 中に溶解して酸化硼素水溶液を作製する。次いで、工程A2の溶剤添加工程において、例えばエタノール(特級試薬が望ましい。例えば関東科学株式会社製)137(g)をその酸化硼素水溶液中に添加し、工程A3のガラス・フリット混合工程において、その水溶液中に更に高純度シリカ・ガラス・フリットを400(g)程度加えてスラリを作製する。したがって、本実施例においては酸化硼素粉末の添加量は8.5(wt%) 程度である。なお、高純度シリカ・ガラス・フリットとしては、例えば、SiO2 96(%) 、 B2O3 3(%) 、Al2O3 0.4(%) 程度の組成で、比表面積200(m2/g) 、気孔率 28(%) 程度の物性を備えた多孔質の二成分系ガラス(例えばコーニング・インターナショナル株式会社製 バイコール#7930等)が好適に用いられる。そして、工程A4の攪拌工程において、この混合物を例えばホット・プレート等で 85(℃) 程度で保温しつつ攪拌してスラリ中のエタノールと水分とを除去する。
【0022】
工程A5の乾燥工程においては、工程A4においてエタノールおよび水分がある程度除去されて攪拌困難な程度まで粘性が増大したスラリを、例えばオーブン等に入れて 70(℃) 程度で更に乾燥することにより、残余のエタノールおよび水分を除去する。このようにして乾燥が終了した後、工程A6の解砕工程において乾燥物を手でほぐし、更に工程A7の分級工程において#16程度の篩を用いて分級することにより例えば 1(mm)程度以上の粗大粒子を除去する。工程A8の焼成工程においては、解砕・分級した乾燥物を純度 63(%) 程度のシリカ製容器に入れ、例えば1000〜 1100(℃) ×2(hr) 程度の条件で焼成する。これにより、高純度シリカ・ガラス・フリットと酸化硼素とが反応させられる。そして、工程A9の粉砕工程において、焼成されることによって塊となったガラス・フリットをポット式ボール・ミル等を用いて粉砕し、最後に工程A10の分級工程において#330〜300程度の篩によって分級して 45(μm)程度以上の粗大粒子を除去することにより、反応硬化ガラス原料粉体が得られる。
【0023】
図3に戻って、工程1Bの顔料被覆工程においては、顔料粒子30すなわち四硼化珪素(例えば米国 CERAC社製B−1088等)を高純度シリカ・ガラス膜で被覆する。この顔料被覆工程は図5に詳しく示されるものである。先ず、工程B1の無機高分子希釈工程においては、例えば、プリセラミック・ポリマ(加熱処理によってセラミックスとなる無機高分子)であるペルヒドロポリシラザン(例えば東燃株式会社製)をキシレン等の溶剤を用いて 10(wt%) 程度の濃度に希釈する。ペルヒドロポリシラザンは、珪素、窒素、および水素から構成されるものであって、例えば図6に示されるような構造を有した分子量600 〜900 程度、密度1.3(g/cm3)程度の無色透明の液状物であり、不純物量が数(ppm) 以下と極めて高い純度を有している。
【0024】
工程B2の顔料粒子分散工程では、上記の希釈された無機高分子液内に顔料粒子である純度 98(%) 以上の四硼化珪素を無機高分子液に対して10〜 20(wt%) 程度となるように調合し、振動ミル等によって30分間程度攪拌して、顔料粒子30が分散させられた分散液を作製する。続く工程B3の噴霧乾燥工程においては、この分散液をスプレー・ドライヤ等で噴霧して熱風乾燥する。このとき、噴霧乾燥条件は例えば熱風入口温度が110(℃) 程度、出口温度が 70(℃) 程度である。これにより、顔料粒子30の表面に付着させられた無機高分子液が乾燥され且つ縮合させられて、その表面に無機高分子膜が形成される。そして、工程B4の熱処理工程においては、例えば大気中400(℃) 程度の条件で熱処理が施される。これにより、その無機高分子膜中の珪素が大気中の酸素と結合させられて二酸化珪素(シリカ)が生成されると共に、無機高分子膜中の窒素と水素が結合させられてアンモニア(NH3 )が生成されて消散させられる。このため、顔料粒子30の表面にその無機高分子膜から生成された極めて純度の高いシリカ・ガラス膜が例えば0.1 〜数 (μm)程度の膜厚に形成される。本実施例においては、工程B1乃至B3が無機高分子膜形成工程に、工程B4の熱処理工程が加熱生成工程にそれぞれ対応し、上記シリカ・ガラス膜が顔料被覆膜に相当する。
【0025】
図3に戻って、工程2の混合工程においては、上記のようにして作製した反応硬化ガラス原料粉体を例えば234(g)程度、シリカ・ガラス膜を施した顔料粒子30を例えば6.0(g)程度、エタノール等の有機溶剤を386(g)程度、および2%メチルセルロース水溶液(メチルセルロースは、例えば信越化学工業株式会社製 メトローズ65SH−4500等)等の有機結合剤を39.2(g) 程度を、アルミナ玉石と共にアルミナ製磁器ポット内に入れて密閉し、回転ポット台上で例えば5時間程度回転させて混合する。これにより、反応硬化ガラス原料粉体および顔料粒子30が分散させられたペースト(スラリ)が得られる。なお、エタノールは分散剤として、メチルセルロースは後の塗布工程において塗布膜の適度な厚みを得るための保形剤としてそれぞれ機能するものであるが、両者の添加量は混合時の粘度をも考慮して適宜決定される。続く工程3の塗布工程においては、ポットから排出したペースト(コーティング・スラリ)をスプレー・ガンに充填し、前記図1に示される窯炉10の炉壁12および天井14の内面に吹き付け塗布する。このとき、吐出圧力は例えば3(kgf/cm2)程度以下に設定される。また、塗布の間はヒータ20が全て取り外されると共に、ペーストが断熱材12、14に過剰にしみ込むことを抑制する目的で、塗布面に予め有機溶剤が十分にしみ込まされる。そして、室温に保ったまま例えば24時間程度放置して有機溶剤を除去した後、工程4の焼付工程において、例えば加熱室18内に例えば20(l/min) 程度の流量で30分間程度窒素(N2)ガスを流して炉内雰囲気を窒素ガスに置換した後、更に窒素ガスを流しつつ 1375(℃) ×1.5 時間程度の条件で熱処理を施すことにより、塗布膜から前記ガラス膜24が生成される。なお、窒素ガスの導入は、予め窯炉10に窒素ガス導入穴が設けられている場合にはそれを利用し、または、側壁12或いは天井14等の一乃至数箇所に窒素ガス導入穴を穿設して行う。また、焼付工程における昇温速度は、例えば200(℃/hr) 程度である。したがって、ガラス膜24を構成するガラス組織28中には、顔料粒子30がシリカ・ガラス膜で覆われた状態で含まれており、このシリカ・ガラス膜が前記シリカ・ガラス層32を構成している。本実施例においては、混合工程がペースト作製工程に、焼付工程が加熱処理工程にそれぞれ対応する。
【0026】
この場合において、本実施例では、顔料粒子30は表面にシリカ・ガラス膜(すなわちシリカ・ガラス層32)が設けられた状態で反応硬化ガラス原料粉体等と混合され、断熱材12、14上で焼き付けられることから、その焼き付け中において反応硬化ガラス原料粉体から生成されるガラス組織28と反応することがシリカ・ガラス膜によって抑制される。そのため、ガラス組織28の組成が変化させられることが抑制されると共に、顔料粒子30がガラス組織28中に溶け込んで輻射率に寄与し得る量が減じられることが好適に抑制されて、高い耐熱性および高い輻射性を共に備えたガラス膜24が得られる。
【0027】
ここで、図7は、上記のようにしてガラス膜24が設けられた本実施例の断熱材12、14の輻射率の温度依存性を評価した結果を、ガラス膜24を設けていない断熱材12、14の評価結果(比較例)と共に示すものである。なお、輻射率は室温から800(℃) までの範囲においてはよく知られたFT−IRによる発光スペクトル測定で求め、 1200(℃) においては射出式輻射率測定装置によって熱電対指示温度と放射温度計指示温度との比等に基づいて求めた黒体放射に対する放射発散度の相対値である。
【0028】
図から明らかなように、本実施例のガラス膜24を設けた断熱材12、14によれば、室温(25℃程度)において0.95程度と極めて高い輻射率を示し、しかも、 1200(℃) 程度の高温下においても0.90以上と輻射率が高く保たれる。これに対して、比較例においては、室温においては同程度の輻射率が得られるものの、400(℃) 程度から低下が著しく、 1200(℃) では0.6 程度まで低下する。すなわち、本実施例によれば、焼付直後において従来と同等以上の高い輻射率が得られるだけでなく、その後高温に曝される使用中においても、従来よりも 30(%) 程度高い輻射率に維持される。なお、上記図7の比較例は、ガラス膜24が設けられていないことから断熱材12、14そのものの輻射率を表している。
【0029】
また、図示はしないが、図1の窯炉10の場合と同様なガラス膜24をガラス溶解炉の内壁に施したところ、例えばNa2O-CaO-SiO2 系のガラス粉末の溶融に必要な電力(電気量)がガラス膜24を設けない場合に比較して 14(%) 程度削減できることが確かめられた。すなわち、本実施例によれば、窯炉10の内壁面の輻射率が高められることから、加熱室18から窯炉10の外部へ放出されようとする熱がガラス膜24に吸収され且つ加熱室18内に効率良く輻射されることから、炉外への放出熱量が少なくなって熱効率が高められ、必要な電力が少なくなるのである。
【0030】
要するに、本実施例においては、窯炉10は、断熱材12、14の表面のうちの加熱室18に面する内面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子30がガラス組織28中に分散させられたガラス膜24を含んで構成され、更に、そのガラス膜24は、顔料粒子30とガラス組織28との界面においてその顔料粒子30を覆って備えられてその界面におけるそのガラス組織28内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さのシリカ・ガラス層32を有して構成される。そのため、加熱室18を構成する断熱材12、14の内面には顔料粒子30がガラス組織28中に分散させられたガラス膜24が設けられることから、その顔料粒子30の輻射率に従って定められるガラス膜24の輻射率に応じてその断熱材12、14の輻射能が向上させられる。この場合において、顔料粒子30とガラス組織28との界面には、そのガラス組織28よりも二酸化珪素含有率が高いことから顔料粒子30との反応性が相対的に低くされたシリカ・ガラス層32が備えられるため、断熱材12、14の表面にガラス膜24を設けるための焼成中および窯炉10の使用中における顔料粒子30とガラス組織28との界面反応やその顔料粒子30の酸化等が、その界面に設けられたシリカ・ガラス層32によって好適に抑制される。したがって、顔料粒子30の本来の輻射率がそのままガラス組織28中において生かされると共に、高温で使用される場合にも界面反応や酸化に起因する顔料粒子30の輻射率の低下が抑制されるため、ガラス膜24延いては断熱材12、14に高い輻射率が付与され且つ維持される。これにより、輻射による熱効率向上効果の大きい高温域で高い輻射率を維持したまま窯炉10を使用し得るため、一層高い熱効率が得られ、延いては、窯炉10外の温度上昇が抑制される。
【0031】
また、本実施例においては、シリカ・ガラス層32は、二酸化珪素を 99(wt%) 以上含むものである。そのため、二酸化珪素の含有率が十分に高いことから、顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が一層抑制される。
【0032】
また、本実施例によれば、顔料粒子30として用いられる四硼化珪素は、極めて高い輻射率を有することから、ガラス膜24の輻射率を高めるために好適に用いられるが、その反面、非酸化物であることも相俟ってガラス組織28との高い反応性を有するものである。したがって、シリカ・ガラス層32を設けた効果が一層顕著に得られる。
【0033】
また、本実施例においては、前記シリカ・ガラス層32は、0.1 乃至数 (μm)程度の厚さに設けられる。そのため、ガラス膜24の使用温度や熱膨張率等の熱的特性に大きく影響しない範囲でシリカ・ガラス層32の厚さが十分に厚くされていることから、顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が一層確実に抑制される。
【0034】
また、本実施例においては、ガラス組織28は、二酸化珪素を主成分とし且つ硼酸を含むボロシリケート・ガラスである。このようにすれば、ボロシリケート・ガラスはガラスの中でも高い耐熱性および耐熱衝撃性を有することから、一層高い耐熱性、耐熱衝撃性、および高い輻射性を要求される窯炉10の被膜として好適なガラス膜24が得られると共に、そのガラス膜24が剥離し難いことから、加熱室18内の雰囲気が比較的清浄に保たれる。
【0035】
また、本実施例においては、ガラス膜24を形成するに際しては、ガラス膜24中でのガラス組織28と顔料粒子30との界面におけるそのガラス組織28内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さのシリカ・ガラス層32をその顔料粒子30の表面に設ける工程1Bの顔料被覆工程が工程2の混合工程に先立って実施される。そのため、混合工程においては、高い含有率で二酸化珪素を含むことからガラス組織28との反応性が低いシリカ・ガラス層32が設けられた顔料粒子30とガラス粉末とを含むペーストが作製されるため、工程4の焼付工程において加熱処理される際にそのガラス組織28と顔料粒子30との界面反応がそのシリカ・ガラス層32によって抑制される。また、ガラス膜24が製造された後の窯炉10の使用時においても、その界面反応が同様にシリカ・ガラス層32によって抑制される。
【0036】
また、本実施例においては、前記顔料被覆工程は、珪素を含む無機高分子から成る無機高分子膜を前記顔料粒子30表面に形成する工程B1乃至B3の無機高分子膜形成工程と、前記無機高分子膜が形成された前記顔料粒子30を酸化雰囲気において所定温度で加熱処理することにより、その無機高分子膜から前記所定の含有率で二酸化珪素を含む前記シリカ・ガラス層32を生成する工程B4の熱処理工程とを、含むものである。このようにすれば、高分子膜形成工程において、珪素を含む無機高分子膜が顔料粒子30表面に形成され、熱処理工程において酸化雰囲気で加熱処理することにより無機高分子膜から前記シリカ・ガラス層32が生成される。そのため、シリカ・ガラス層32は、無機高分子の形態で顔料粒子30表面に膜形成されることから、薄く一様な厚さの膜を好適に形成し得るが、その無機高分子は珪素を含むものであることから、酸化雰囲気で加熱処理することによって無機高分子中の珪素が酸化されて、所定の含有率で二酸化珪素を含むシリカ・ガラス層32が生成される。したがって、所定の厚さを有し且つ所定の含有率で二酸化珪素を含むシリカ・ガラス層32を好適に形成できる。
【0037】
また、本実施例においては、前記無機高分子膜形成工程は、前記無機高分子を含む液中に前記顔料粒子30が分散させられた分散液を噴霧乾燥することにより前記無機高分子膜を形成する工程B3の粉霧乾燥工程を含むものである。このようにすれば、無機高分子および顔料粒子30が含まれる分散液を噴霧乾燥することによって、その顔料粒子30の表面に無機高分子膜が形成される。そのため、顔料粒子30の表面を覆う無機高分子を含む液が噴霧乾燥によって速やかに乾燥されることによって無機高分子膜が形成されることから、一層薄く且つ一様な厚さの無機高分子膜を得ることができる。
【0038】
また、本実施例においては、前記無機高分子は、水素(H )、窒素(N )、珪素(Si)から成るペルヒドロポリシラザンである。このようにすれば、酸化雰囲気で焼成されることによって珪素と酸素が結合させられて二酸化珪素が生成され、顔料粒子30の表面に無機高分子膜が形成される一方、水素と窒素が結合させられてアンモニア(NH3 )が生成されて速やかに消散させられる。したがって、形成された無機高分子膜、延いてはそれから生成されるシリカ・ガラス層32が極めて高い含有率で二酸化珪素を含むものとなるため、一層顔料粒子30とガラス組織28との界面反応が抑制される。
【0039】
また、本実施例においては、前記工程4の焼付工程は、非酸化性雰囲気下で加熱するものである。このようにすれば、焼成雰囲気中に酸素が存在しないことからガラス膜24の焼付け時における顔料粒子30の酸化が一層抑制される。
【0040】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施される。
【0041】
例えば、実施例においては、窯炉10の加熱室18を構成する耐火物として厚さが数(cm)程度の無機繊維質断熱材12、14が用いられていたが、耐火物の種類や厚さは窯炉10の用途や使用温度等に応じて適宜定められる。
【0042】
また、実施例においては、ガラス組織28を構成するガラスフリットに高シリカ・ガラスフリットに酸化硼素が添加されたものが用いられていたが、当初から酸化硼素を含むガラスフリットが用いられてもよく、酸化硼素を含まないガラスフリットがそのまま用いられてもよい。用いられるガラスの組成は、窯炉10の用途やその内面に要求される耐熱性、輻射率などによって適宜変更される。
【0043】
また、実施例においては、顔料粒子30として平均粒径が 10(μm)程度の四硼化珪素が用いられていたが、顔料粒子30の種類は窯炉10の用途や要求される輻射率、顔料粒子30自身の耐熱性などを考慮して、六硼化珪素(SiB6)等の他の珪素硼化物、アルミナ(Al3O3 )、二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3 )、酸化鉄(Fe2O3 )、ムライト(3Al2O3・2SiO2 )、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2 )、粘土、チタン酸アルミニウム(AlTiO3)、窒化珪素(Si3N4 )、炭化珪素(SiC )、大理石、石灰石、雲母、ガラス、白色陶器、レンガ(赤)、石綿等の比較的高い全輻射率を有する種々の材料から1乃至数種類が適宜選択して用いられる。また、顔料粒子30の平均粒径は、良好な分散性が得られる範囲で適宜設定され、例えば四硼化珪素の場合には1 〜10 (μm)程度のものが好適に用いられる。なお、顔料粒子は、必ずしも略球形のものが用いられなくともよく、例えば、ペレット状や短繊維状のもの等でもよく、形状に拘わらず同様な効果を得ることができる。
【0044】
また、実施例においては、顔料粒子(四硼化珪素粉末)26の表面にシリカ・ガラス層32を形成するための無機高分子としてペルヒドロポリシラザンが用いられていたが、工程B4の熱処理工程に示されるような加熱等によってシリカ・ガラス層32を形成し得る珪素を含むものであれば他の無機高分子が用いられても差し支えない。
【0045】
また、実施例においては、ガラスフリットに添加される酸化硼素の量は8.5(wt%) 程度とされていたが、その添加量はガラス組織28の耐熱性や強度等およびガラスフリットの組成等を考慮して適宜設定されるものであり、例えば酸化硼素を含まないガラスフリットに対しては8 〜 13(wt%) 程度の範囲で適宜変更される。
【0046】
また、実施例においては、焼付工程が窒素雰囲気下、徐速加熱によって行われていたが、雰囲気は適宜変更され、酸化雰囲気であっても差し支えない。本発明によれば、顔料粒子がシリカ・ガラスによって覆われていることから、その酸化やガラス組織28との反応が生じ難いためである。また、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気に代えてアルゴン等の不活性ガス雰囲気であってもよく、真空下で焼付が施されてもよい。
【0047】
また、反応硬化ガラス原料粉体と顔料粒子30との混合割合等のガラス膜24の組成ひいては物性を定める種々の数値は窯炉10の使用目的等に応じて適宜設定されるものである。
【0048】
また、実施例においては、ガラス膜24が0.3 〜1(mm) 程度の膜厚で設けられていたが、厚さは使用条件等に応じて適宜変更される。但し、厚くし過ぎるとガラス膜24が焼付け時における膨張に起因して破損し易いため、1(mm) 以下とされることが望ましい。
【0049】
また、実施例においては、ガラス膜24が炉壁12および天井14上の略全面に設けられていたが、その一部だけに設けられていても本発明の効果を得ることができる。但し、熱効率の大きな向上効果を得るためには、その塗布面積が可及的に大きいことが望まれるため、略全面に設けることが望ましい。また、焼成物の処理上の問題が生じない場合には、炉床16の底面26の略全面或いはその一部にガラス膜24を設けてもよい。
【0050】
その他、一々例示はしないが本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の窯炉の構造を模式的に示す図である。
【図2】図1の窯炉の炉壁の断面を模式的に示す図である。
【図3】図1の窯炉の炉壁へのガラス膜の形成方法を説明する工程図である。
【図4】図3の工程図におけるRCG製造工程を説明する工程図である。
【図5】図3の工程図における顔料被覆工程を説明する工程図である。
【図6】無機高分子の構造を説明する図である。
【図7】図1の窯炉の炉壁の輻射率の温度依存性を従来の炉壁と比較して示す図である。
【符号の説明】
10:窯炉
{12:炉壁、14:天井}(耐火物)
18:加熱室
22:内面
24:ガラス膜
28:ガラス組織
30:顔料粒子
32:シリカ・ガラス層(顔料被覆層)
Claims (8)
- 耐火物によって外部空間から遮蔽された加熱室を備えた窯炉であって、
前記耐火物の表面のうちの前記加熱室に面する内面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含み、該ガラス膜は、該顔料粒子と該ガラス組織との界面において該顔料粒子を覆って備えられて該界面における該ガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素(SiO2)を含む所定厚さの顔料被覆層を有することを特徴とする窯炉。 - 前記顔料被覆層は二酸化珪素を 85(wt%) 以上含むものである請求項1の窯炉。
- 前記顔料粒子は珪素硼化物である請求項1または2の窯炉。
- 前記ガラス組織はボロシリケート・ガラスから成るものである請求項1乃至3の何れかの窯炉。
- 窯炉において外部空間から遮蔽された加熱室を構成するために用いられる耐火物であって、
前記加熱室の内面を構成するための一面に設けられて所定の輻射率を有する顔料粒子がガラス組織中に分散させられたガラス膜を含み、該ガラス膜は、該顔料粒子と該ガラス組織との界面において該顔料粒子を覆って備えられて該界面における該ガラス組織内の値よりも高い含有率で二酸化珪素を含む所定厚さの顔料被覆層を有することを特徴とする耐火物。 - 前記顔料被覆層は二酸化珪素を 85(wt%) 以上含むものである請求項5の耐火物。
- 前記顔料粒子は珪素硼化物である請求項5または6の耐火物。
- 前記ガラス組織はボロシリケート・ガラスから成るものである請求項5乃至7の何れかの耐火物。
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