JP3815387B2 - 苗移植機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、甘しょ苗等の苗を圃場に植付ける苗移植機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平4−36107号公報、特開平4−36108号公報、特開平4−58809号に示されるように、機体を自走させる走行部と、苗を前後方向に向く姿勢で一つづつ収容する苗収容部を複数設けて該苗収容部を複数の前後方向の軸周りに一列で周回動させて苗を搬送する苗搬送部と、該苗搬送部によって搬送されてきた苗をとって圃場に植付ける苗植付け体とを備えた甘しょ苗移植機がある。このような苗移植機では、苗植付け体が苗搬送部の苗収容体から確実に苗をとって植付けるために、苗の基部側部分を左右一対の弾性部材で構成した挟持部材で弾性的に挟持する構成とした苗挟持部を苗収容部に設けていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように構成された従来の苗移植機では、苗挟持部を、具体的には、左右対称形状の板バネ或はゴムなどの一対の弾性部材で構成し左右の挟持部材を、互いに接する状態で、或は、苗の基部の茎径より若干狭い間隔をあけた状態で配置して設けていた。このため、苗挟持作業時に作業者は、苗挟持部に挟持させる個所の前後部分を左右の手で掴んで苗を苗挟持部に挟持させるという動作となり、従って、苗を一本一本、両手を使って苗挟持部に挟持させるため、迅速に苗挟持作業が行い難く、これが作業能率向上の妨げとなっていた。この挟持作業の簡易化については、苗の茎の太さが個々に異なる苗を簡易な手作業で取扱うことによる挟持力のばらつき幅をカバーして搬送中の苗が脱落しないように、挟持力を大きく確保する必要があるが、挟持力が強いと植付爪が苗を取り出すことができないという問題を生じる。
【0004】
本発明の目的は、片手でも容易に苗挟持作業が行えるようにするとともに、苗の茎の太さが個々に異なる苗についても、搬送過程において苗が脱落しないように確実に保持することができ、かつ、植付爪によって苗を確実に取り出しできる範囲内の力で苗を挟持することができる苗移植機を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、機体を自走させる走行部と、苗を前後方向に向く姿勢で一つつ収容する苗収容部を複数設けて該苗収容部を複数の前後方向の軸周りに一列で周回動させて苗を搬送する苗搬送部と、該苗搬送部によって搬送されてきた苗をとって圃場に植付ける苗植付け体とを備えた苗移植機において、前記苗収容部の一端に苗の茎部の基部側部分を挟持する挟持部材を左右に備える苗挟持部を設け、該苗挟持部が苗の茎部の基端部を苗収容部外側に突出させて苗の茎部を挟持し、該苗挟持部で挟持される苗の基端部を前記苗植付体つかんで下降し、さらに土中で苗の茎部を苗収容部から前後に離れる方向に移動して前後に倒れる状態に植付ける構成とし、前記苗挟持部の左右一方側或は両方側の挟持部材を対向する挟持部材に毛先が向う姿勢のブラシ体Bとして苗の茎をブラシ体Bの毛が上下に挟み込んだ状態で挟持する構成とするとともに、該苗挟持部の挟持個所の前後幅を苗の茎の径に比して幅広く設定し、該苗挟持部にあって葉がついている茎側部分の苗挟持深さが茎の基端部側部分の苗挟持深さよりも浅くなるよう苗挟持深さを規制する規制体を設けたことを特徴とする苗移植機とする。また、請求項2に係る発明は、更に、前記規制体を弾性部材による板体で構成したことを特徴とする苗移植機とする。
【0006】
【作用】
苗は、オペレータの装着作業により、その苗の茎部の基端部が苗収容部外側に突出した状態で苗の茎部の基部側部分が、左右一方側或は両方側の挟持部材を対向する挟持部材に毛先が向う姿勢のブラシ体Bとした苗挟持部によって挟持される。このとき、オペレータは、左右の挟持部材間に置いた苗の茎の基端部の上から指先を左右の挟持部材間に押し込むことが容易にでき、片手でも苗を苗挟持部に深く押し込むことができる。しかも、左右の挟持部材間に押し込まれた苗の茎はブラシ体Bの毛が上下に挟み込んだ状態で挟持されるので、周回搬送される途中で苗が苗挟持部から外れにくく、また、苗挟持部の挟持個所の前後幅が苗の茎の径に比して幅広く設定されているので、搬送途中で挟持された苗が挟持個所回りに回動して姿勢が乱れることも生じにくい。そして、規制体によって、苗挟持部にあって葉がついている茎側部分の苗挟持深さが茎の基端部側部分の苗挟持深さよりも浅くなるよう苗挟持深さが規制される。このような状態で苗挟持部で挟持される苗は、苗植付け体がその基端部をつかんで下降し苗収容部から前後に離れる方向に土中で移動して苗の茎部が土中で前後に倒れ状態で圃場に植付けられる。苗植付け体が苗を取出すとき、苗の茎の基端部側部分は、苗植付け体がその直ぐ近くの苗の基端部を掴んで下降していくので、容易に苗挟持部から外れる。苗の基端部から遠い側となる葉がついている茎側部分は、深く挟持されていると、容易に苗挟持部から外れにくくなるが、規制体によって苗挟持深さが浅くなるよう規制されているので容易に外れる。従って、苗が適確に取出されて、適正な状態で土中に植付けられるようになる。なお、規制体が弾性部材でできていることで、苗が苗挟持部に押し込まれるときに規制体が苗に損傷を与えることがない。
【0007】
【発明の効果】
本発明の苗移植機は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明の苗移植機は、前記苗挟持部の左右一方側或は両方側の挟持部材を対向する挟持部材に毛先が向う姿勢のブラシ体Bとして苗の茎をブラシ体Bの毛が上下に挟み込んだ状態で挟持する構成としたので、片手でも苗を苗挟持部に深く押し込むことができて、苗装着作業が迅速且つ容易に行える。しかも、左右の挟持部材間に押し込まれた苗の茎はブラシ体Bの毛が上下に挟み込んだ状態で挟持されるので、周回搬送される途中で苗が苗挟持部から外れにくく、また、苗挟持部の挟持個所の前後幅が苗の茎の径に比して幅広く設定されているので、搬送途中で挟持された苗が挟持個所回りに回動して姿勢が乱れることも生じにくい。そして、苗挟持部にあって葉がついている茎側部分の苗挟持深さが茎の基端部側部分の苗挟持深さよりも浅くなるよう苗挟持深さを規制する規制体を設けたので、苗が適確に取出されて、欠株を起こすことなく、適正な状態で土中に植付けられるようになる。
請求項2に係る発明の苗移植機は、更に、規制体を弾性部材による板体で構成したので、苗が苗挟持部に押し込まれるとき規制体が苗に損傷を与えることがなくなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
【0009】
この発明の一実施形態として、苗の一例である甘しょ苗Nを圃場に移植する苗移植機を以下に説明する。ここで説明する苗移植機の側面図を図1に、その平面図を図2に示す。尚、以下の図示例についての説明で「前」又は「後」というときは、操縦ハンドル2を配置した側を「後」とし、その前後反対側を「前」としていう。そして、「右」又は「左」というときは、機体の後部において機体前部に向って立つ作業者から見て右手側を「右」とし、左手側が「左」としていう。
【0010】
図1及び図2において、苗移植機は、機体を自走させる走行部1と操縦ハンドル2を備えた機体に、甘しょ苗Nを搬送する苗搬送部3と、該苗搬送部3によって搬送されてきた苗Nを圃場に植付ける苗植付け体4とを備えた苗移植機である。なお、本発明を実施するに、操縦ハンドル2が機体後部に設けられて機体操縦及び苗供給等の作業を行う作業者が機体の自走と共に地面を歩行するタイプの歩行型構成であっても、操縦者及び作業者が乗車するタイプの乗用型構成であっても良い。
【0011】
走行部1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪6,6と、該車輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。
上記エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース8の左右両側部に伝動ケース9,9を回動自在に取り付け、この伝動ケース9,9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース9,9内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端側側方に突出する車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。
【0012】
また、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆13の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド14で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0013】
昇降用油圧シリンダ12が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム11,11は後方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は、機体に対する畝上面高さを検出するセンサーSの検出結果に基づいて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう作動するよう構成しており、また、操縦ハンドル2近傍に配置した操作具の人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう作動する構成ともしている。
【0014】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、前記天秤杆13が、その左右中央部の昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端と連結する上下軸心周りに回動して左右の伝動ケース9,9を互い違いに上下動させ機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0015】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム16の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸17,17に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪7,7は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。
【0016】
前記操縦ハンドル2は、ミッションケース8に前端部を固定したハンドルフレーム2bの後端部に取り付けている。ハンドルフレーム2bは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、ハンドルフレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0017】
尚、上記走行部1は、四輪構成としたものであるが、左右一対の駆動輪のみの2輪構成でもよいし、前輪の替わりに畝上面を転動する鎮圧輪としてもよい。また、クローラー式の走行部としてもよい。
【0018】
次に、苗植付け体4及び苗搬送部3について説明する。苗搬送部と苗植付け体とを示す一部省略した側面図を図3に、苗搬送部と苗植付け体とを示す一部省略した平面図を図4に、それぞれ示す。以下において、前記同様の部材はその符号を付すことによりその説明を省略する。
【0019】
図3及び図4において、苗植付け体4は、その苗植付け作用部4aを昇降動させる駆動部と連結し、該苗植付け体4の苗植付け作用部4aが、苗搬送部3により搬送されてきた苗をとって苗を圃場に植付ける構成としたものである。
苗植付け体4を駆動する駆動部は、ミッションケース8内から苗植付け具駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース18に設けている。図例のように植付け伝動ケース18は、その前部がミッションケース8の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部18aと、この第一ケース部18aの上部左側部に固定され左側方に延びる第二ケース部18bと、その第二ケース部18bの左端部に固定され後斜め下方に延びる第三ケース部18cと、その第三ケース部18cの下端部外側部に固定され左側方に延びる第四ケース部18dと、その第四ケース部18dの左端部に固定され後方水平状に延びる第五ケース部18eを有するものとしている。これら第一ケース部18aから第五ケース部18e内に苗植付け体4を駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。なお、第一ケース部18a内に内装した伝動機構には、苗植付け体4をその昇降動最上位の位置で或はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、苗植付け体4及び苗搬送部3を作動停止させるクラッチ機構とを備える。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって苗植付け体4による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0020】
そして、苗植付け体4は、その駆動部としての駆動回転する駆動アーム19と連結して駆動される。駆動アーム19は、前記第五ケース部18cの後部右側部から突出し駆動回転する駆動軸20に固定されている。そして、駆動アーム19の先端部に苗植付け体4の支持リンク21の上端部を回転自在に連結し、その支持リンク21の下端部に揺動リンク22の前端部を回転自在に連結している。揺動リンク22の後端部は、第五ケース部18cに前部が固定された支持フレーム23の後端部とハンドルフレーム2bに固定した支持ブラケット24とで両端部を支持された支持軸25で回転自在に支持している。
【0021】
また、支持リンク21の側方に、板状に形成した苗植付け作用部4a,4aを下端部に備える左右一対の苗植付けアーム4b,4bを装着している。この左右の苗植付けアーム4b,4bの上部側は、互いに左右に交差し、その交差部で回動軸4cにより互いに回動自在に連結している。そして、左右の苗植付けアーム4b,4bの回動軸4cから上側部分と下側部分とを、支持リンク21の側方上部側部分に設けた支持ピンと、支持リンク21と揺動リンク22とが回動自在に連結する連結軸とに左右軸心方向に移動自在に連結している。更に、駆動アーム19の先端部側方に円盤状のカム体4dを駆動アーム19と一体動作するよう取り付け、該カム体4dの左右両側面外周側に凹凸を円形状に形成して構成したカム部を、左右の苗植付けアーム4b,4bの各上端部間に入り込むように設けている。また、左右の苗植付けアーム4b,4bの各上端部が互いに接近する方向に動作するよう付勢するスプリング等の弾性部材4eを左右の苗植付けアーム4b,4b間に設け、左右の苗植付けアーム4b,4bの上端部が常時カム体4dのカム部を左右両側から弾性的に挟み込むようになっている。
【0022】
従って、苗植付け体4は、駆動アーム19の駆動回転により、苗植付け作用部4a,4aの先端部(下端部)が設定した軌跡Tを描くように動作し、また、カム体4dにより、苗植付け作用部4a,4aが設定したタイミングで開閉する。具体的には、駆動アーム19が駆動回転すると、該駆動アーム19と、その先端部に連結する支持リンク21と、その下端部に回動自在に連結する揺動リンク22からなるリンク機構が動作して、支持リンク21の側方に支持された左右の苗植付けアーム4b,4bが動作し、その下端部に備えた左右の苗植付け作用部4a,4aの先端部(下端部)が、図中に示すような軌跡Tを描いて運動することになる。なお、図3に示す軌跡Tは、機体に対して苗植付け作用部4a,4aの先端部(下端部)が描く運動軌跡であり、軌跡T’は、設定した作業時走行速度で機体が前進走行したとき圃場に対して苗植付け作用部4a,4aの先端部が描く運動軌跡である。
【0023】
また、カム体4dのカム作用により左右の苗植付けアーム4b,4bの上端部が接近離間動作し、これにより、左右の苗植付けアーム4b,4bは回動軸4c回りに回動して、左右の苗植付けアーム4b,4bの各先端部に板状に形成した苗植付け作用部4a,4aが開閉動作する。この開閉動作のタイミングは、カム体4dのカム部の形状及び位相によって、苗植付け作用部4a,4aが苗搬送部3により搬送されてきた甘しょ苗Nの基部側部分kを挟んでとるときに、左右の苗植付け作用部4a,4aが互いに接近するように閉じ動作し、そして、左右の苗植付け作用部4a,4aは、その閉じ状態のままで圃場の土中に移動し、更に、苗植付け作用部4a,4aが土中設定個所まで移動すると、左右の苗植付け作用部4a,4aが互いに離間するよう開き動作するように設定している。
【0024】
なお、本件発明においては、苗植付け作用部4a,4aが左右に開閉動作して苗Nを挟持し圃場に植え付ける構成としたが、支持リンク21の下端に開閉動作しない板状の苗植付け作用部を一体的に設けて、その苗植付け作用部を甘しょ苗Nの基部側部分kの上から当てて圃場の土中に押し込んでいって植え付けて行く構成とすることもできる。
【0025】
苗搬送部3は、甘しょ苗Nを基部側部分kが前後方向に向く姿勢で一つづつ収容する苗収容部26を複数設けて該苗収容部を複数の前後方向の軸周りに一列で周回動させて苗を搬送する構成のものである。また、この実施例において、苗搬送部3は、苗収容部26を機体上部側で左右一方向に搬送する上部横搬送部3aと、該上部搬送部3aにより搬送されてきた苗収容部26を機体下方に搬送する下降搬送部3bと、該下降搬送部3bにより搬送されてきた苗収容部26を機体上方に搬送し前記上部横搬送部3aの搬送始端側に戻す上昇搬送部3cとを備えている。また、本実施例では、苗搬送部3が後輪6,6よりも後側に位置し、上部横搬送部3aが機体の左右側方に張り出すように設けているので、作業者が機体の進行と共に歩きながら苗Nを苗収容部26に供給する作業を行う作業位置WPは、上部横搬送部3aの張り出し側の機体側方位置であって上部横搬送部3a及び車輪6,7の後方位置となる。更に、本例では、上部横搬送部3aが機体の左右一側方(図例では左側方)に張り出し、ハンドル2をその左右反対側(図例では右側方)に偏らせて配置しているので、上記作業位置WPは、図2に示すように、上部横搬送部3aの後方近傍に位置するように構成でき、苗供給作業が容易に行えるものとなる。
【0026】
苗収容部26は、前後に長い樋状の形態で、上部横搬送部3aで苗Nを載せる受け面となる受け板部26aと、隣接する苗収容部26,26とを仕切る面となる側板部26b,26bとを備え、上部横搬送部3aで上方に開放部を有する形態となっている。また、前後にも開放された形状であるが、後部側には、苗収容部26に甘しょ苗Nの基部側部分kを挟持する挟持部材27a,27bを左右に備える苗挟持部27を設けている。
【0027】
そして、この苗収容部26・・・をチェン28,28に複数並べて取り付け、そのチェン28,28を、機体上部側の左右に各前後一対づつ設けたスプロケット29,29;30,30と、機体下部側の左右に各前後一対づつ設けたスプロケット31,31;32,32とに巻きかけている。機体上部側の左右のスプロケット29,29;30,30は、植付け伝動ケース18の第一ケース部18aの後部に固定された支持パイプ33に固着した支持部材34,35で支持した軸36,37に取り付けている。機体下部側の左右のスプロケット31,31;32,32は、植付け伝動ケース18の第五ケース部18cに前部を固定した支持フレーム23に固着した支持プレート38で支持した軸39,40に取り付けている。そして、上部右側のスプロケット29,29が駆動されて苗収容部26が設定移動方向Cに移動するよう苗搬送部3が駆動する構成となっている。そして、苗搬送部3の駆動部41は、苗植付け体4に連結して動作する部材22と一体に上下揺動する連動リンク42の先端部と連動ロッド43を介して連動連結している。また、苗植付け体4の苗植付け作用部4aが下降するときは苗収容部26が停止し苗植付け体4の苗植付け作用部4aが上昇するときは苗収容部26が移動するよう苗搬送部3が間欠駆動するように設けている。
【0028】
苗搬送部3の駆動部41の具体的な構造は、例えば、図5の苗搬送部の駆動部の背面図に示すようなものとしている。まず、支持パイプ33の後端部に固着したブラケット44に支持した軸45を上部右側のスプロケット29,29を一体回転するよう取り付けている軸36の後部と軸継手を介して連結し、この軸45に一体回転するよう取り付けた突起46a付きの従動ディスク46を取付ける。そして、この従動ディスク46の後側に駆動アーム47を軸45に回転自在に取付け、この駆動アーム47の先端部に前記連結ロッド43の上端部を回動自在に取付ける。また、駆動アーム47には、従動ディスク46の突起46aに係合する爪48を取り付けていて、この爪48は、駆動アーム47が苗搬送部3の設定移動方向Cに作動させるようにスプロケット29,29を駆動回転させる方向に回動するとき(図5では駆動アーム47が上動するとき)には、従動ディスク46の突起46aに係合固定されて従動ディスク46を一体回転させる。反対方向に回動するとき(図5では駆動アーム47が下動するとき)には、従動ディスク46の突起46aに係合しても逃げて従動ディスク46を一体回転させないというように、ラチット機構を構成している。そして、従動ディスク46を時計回り及び反時計回りの回り止めとして従動ディスク46の突起46aに係合する二つの爪49a,49bを設けている。なお、従動ディスク46を一体的に回転するように駆動アーム47が回動すると、前記ラチェット機構を構成する駆動アーム47の爪48が従動ディスク46の突起46aに係合するのに先行して、駆動アーム47と一体に設けた回り止め解除カム50が、従動ディスク46の一体回動を阻止するように回り止め作用をする爪49aの先端部を従動ディスク46の突起46aと係合しない位置に移動させるようになっている。そして、駆動アーム47がそのストローク上限位置まで回動して従動ディスク46が設定角度(図5では90度)回動されると、回り止め解除カム50が前記回り止め用の爪49aから外れて、該回り止め用の爪49aは再び、従動ディスク46の突起46aと係合して従動ディスク46の回転が固定される。
【0029】
以上のように、この発明の一実施態様である苗移植機は、機体を自走させる走行部1と、苗Nを前後方向に向く姿勢で一つづつ収容する苗収容部26を複数設けて該苗収容部26を複数の前後方向の軸36,37,39,40周りに一列で周回動させて苗Nを搬送する苗搬送部3と、該苗搬送部3によって搬送されてきた苗Nをとって圃場に植付ける苗植付け体4とを備えた苗移植機において、前記苗収容部26の一端に苗の茎部の基部側部分を挟持する挟持部材27a,27bを左右に備える苗挟持部27を設け、該苗挟持部27が苗の茎部の基端部を苗収容部外側に突出させて苗の茎部を挟持し、該苗挟持部27で挟持される苗の基端部を前記苗植付け体4をつかんで下降し苗収容部から前後に離れる方向に土中で移動して苗の茎部が土中で前後に倒れ状態に植付ける構成としたものである。よって、この苗移植機は、走行部1により機体は自走し、苗Nを搬送する苗搬送部3は複数の苗収容部26が複数の前後方向の軸36,37,39,40周りに一列で周回動し、この苗収容部26には、作業者が、苗Nを一つづつ前後方向に向く姿勢とし、そして、苗Nの基部側部分kを苗挟持部27の左右の挟持部材27a,27bの間に挿入し挟持させる。このようにして苗収容部26に収容されて苗Nは確実に搬送されるものとなり、更に、苗植付け体4が確実に苗Nの基部をとって圃場に植付けていくものとなる。
【0030】
更に、この苗移植機では、上記苗収容部26の苗挟持部27を、以下のように構成するものである。即ち、この苗移植機では、苗挟持部27の左右一方側或は両方側の挟持部材27(a,b)を対向する挟持部材に毛先が向う姿勢のブラシ体Bとして苗の茎をブラシ体Bの毛が上下に挟み込んだ状態で挟持する構成とするとともに、該苗挟持部の挟持個所の前後幅を苗の茎の径に比して幅広く設定している。この苗挟持部の構成例に係る斜視図を図6に示す。
図6において、苗収容部26の一端に苗挟持部27を突出し、この苗挟持部27に苗を左右から挟持するための左右の挟持部材27a,27bを対向構成し、この苗挟持部27と接してその奥の苗の本体部を受ける苗収容部26の受け板部26aに弾性材による座51を設ける。
【0031】
苗挟持部27は、一方の挟持部材27aを他方の挟持部材27bに毛先が向う姿勢のブラシ体Bで構成する。このブラシ体Bは、植物性繊維、獣毛、或は合成樹脂等の化学化合物又はゴムによる細い繊維状体などを用いた毛b1を、適宜材質の板状等のベース部材b2に植立させたものである。ブラシ体Bの毛b1は、ブラシ体Bの毛先部分に苗を押し込むときに適宜弾力的に屈曲し、且つ、このとき毛先に苗が接触しても苗に大きな損傷を与えないような弾力であり、また、苗の基部側部分がブラシ体Bの毛先部分を上下に分け入るようにして挟んだときに苗が容易に脱落しにくいような弾力を有するよう適宜選択する。
【0032】
他方の挟持部材27bは、ブラシ体Bによる一方の挟持部材27aの毛先と対向して当接または近接する位置に弾性部材によって構成する。この弾性部材は、苗挟持作業時において、苗収容部26が移動した時に作業者の指が触れても弾性変形可能な、例えば、ウレタンやスポンジなどの化学合成物等による軟らかい(天然ゴムよりも軟らかい)弾性部材が望ましい。
【0033】
そして、この苗移植機は、苗挟持部27にあって葉がついている茎側部分の苗挟持深さが茎の基端部側部分の苗挟持深さよりも浅くなるよう苗挟持深さを規制する規制体51を設けている。更には、その規制体51を弾性部材による板体で構成している。この規制体51の構成例として、図示するような座51でもって規制体を構成している。この座51は、図7の苗挟持部の移植時の側面視による作用説明図に示すように、挟持部材27bの弾性部材と同様のスポンジ等の軟質の弾性材により所定の厚さ寸法に形成する。その弾性の程度は、オペレータが苗挟持部27に苗Nを挟持させる際に、受け板部26aまで容易に押し込むことができ、その後、深く押し込まれた苗Nを押し戻して所定範囲の挟持深さを確保しうる程度であり、この挟持深さに合わせた厚さ寸法に形成する。その挟持深さの範囲は、苗収容部26の背面搬送によっても苗Nが脱落しない保持力を確保することができる程度に深い挟持位置で、かつ、移植動作する植付爪4aが苗Nの基部側部分kを掴んで苗Nを苗挟持部27から下方に引き出す際に、植付爪4aから最も離れた苗挟持部27の苗収容部26の側から苗Nが容易に離脱しうる程度に浅い挟持位置である。
【0034】
上記のように苗挟持部27を構成することにより、作業者が片手で苗Nを持って苗挟持部27に苗Nを挟持させる場合には、苗挟持部27に挟持させる基部側部分kの上に指を添え、その添えた指を左右の挟持部材27a,27bの間に入り込ませながら苗の基部側部分を左右の挟持部材27a,27b間に押し込んで挟持させることになるが、このとき、苗挟持部27の少なくとも左右一方側の挟持部材27aが他方の挟持部材27bに毛先が向う姿勢のブラシ体Bで構成されていることにより、指を左右の挟持部材27a,27b間に容易に入り込ませられ、しかも、この際に挟持部材27a,27bから受る指への負荷も軽いものとなる。更に、苗挟持部27に挟持される苗Nの基部側部分kは、ブラシ体Bの毛先部分を上下に分け入って挟まれるので、苗Nの基部側部分kは左右に挟まれるだけでなくブラシ体Bの毛先部分によって上下にも挟まれた状態になり、よって、苗挟持部27からの苗Nの脱落も生じにくい。従って、これにより、苗挟持部27への苗挟持作業が片手で軽く容易に且つ確実に行えて、作業能率の向上が図れる。
【0035】
なお、ブラシ体Bの毛b1の長さを、通常の指の左右幅よりも大きくなるように設定すると、指を左右の挟持部材27a,27b間に容易に入り込ませられて、苗挟持作業が片手で容易に行える。また、ブラシ体Bの毛先が他方側の挟持部材27bに接するように或は数mm程度の間隔で接近するように設けることで、左右の挟持部材27a,27b間に苗Nを容易に押し込められ、且つ、押し込んだあとの苗Nの脱落も生じにくい。
【0036】
また、苗挟持部27に苗Nを挟持させるとき苗収容部26が移動して指が苗収容部移動方向D下手側の挟持部材27bに当ることがあっても、指が当る苗収容部移動方向D下手側の挟持部材27bにおける移動方向D上手側部分が弾性部材で構成されて苗収容部移動方向D下手側に弾性変形するので、指に大きな負荷がかかりにくいものとなって、苗挟持部27への苗挟持作業が更に容易に且つ迅速に行えて、作業能率の更なる向上が図れる。
【0037】
オペレータによる苗の装着作業により、ブラシ体Bと弾性部材とによる苗挟持部によって苗が挟持された際は、苗Nの苗収容部26側は、苗挟持部27と接する軟質弾性材による枕状の座51によって支持されるので、苗は、苗挟持部27において傾斜姿勢をとり、その基部側部分kが深く、末部側の苗収容部26側が浅く挟持される。したがって、苗Nの基部側部分kの保持深さに対応する保持力により、装着位置から植付位置までの搬送によっても脱落することなく確実に挟持部に保持され、また、植付位置において植付爪4aが苗Nの基部側部分kを挟持部から引き出した際に苗Nの苗収容部26側も確実に引き出される。
【0038】
つぎに、苗挟持部のブラシ体Bの別の構成例について説明する。別構成のブラシ体Bによる苗挟持部の斜視図を図8に示す。
図8において、苗挟持部27のブラシ体Bは、上下を二分して硬軟の2種類の硬さのブラシ体H,Sにより、下部側を硬く、上部側を軟く構成する。このブラシ構成により、オペレータが苗Nを苗挟持部27に装着する際に、苗Nは、オペレータの手指の押し込み力によって苗挟持部27の上半分軟らかい部分Sを通過して下半分の硬い部分Hに容易に到達し、この硬い部分Hで強く挟持される。したがって、苗収容部26に対する苗の装着スピードが上がり、効率よく植え付けができる。
【0039】
つぎに、苗挟持部の挟持調節機構について説明する。挟持調節機構を備える苗挟持部の正面図を図9に、また、その分解斜視図を図10に示す。
図9および図10において、両挟持部材27a,27bは、苗挟持部27のベース板27cにボルト等のねじ部材27d、27dによって締結固定する。ベース板27cには長穴27e…を形成し、この長穴27e…にねじ部材27d、27dを通し、両苗挟持部材27a,27b間に必要に応じて間隙距離Gを変更可能に締結固定する。
【0040】
甘しょのつる苗は、地域差や品種差により種々の太さ(直径が3〜6mm)があるので、取扱う対象に応じて間隙距離Gを合わせることにより、苗を挟持させる際に要する押し込み力を緩和して苗を傷めることなくオペレータによる苗の供給作業を容易にするとともに、苗の搬送と移植の際の適切な挟持力を確保することができる。
【0041】
つぎに、苗挟持部の保持角度調節機構について説明する。保持角度調節機構を備えた苗挟持部の側面図を図11に、その苗挟持部による苗植え付け時の斜視図を図12にそれぞれ示す。
図11および図12において、苗収容部26の一端に苗挟持部61を回動可能に軸支するとともに、扇形の回動ガイド板62とねじ等による相互固定手段63を設ける。この相互固定手段63付きの回動ガイド板62によって回動角度位置を固定することにより、苗挟持部61に挟持した苗Nの保持角度を選ぶことができる。したがって、地域や品種によって異なる苗形状に適応することができる。
【0042】
また、苗挟持部27の苗Nの保持角度と対応して、植付爪4aにより植え付けされた苗Nの植え付け角度が決まるので、例えば、苗挟持部27を水平にして苗Nの基部側部分kを水平方向に挟持した場合は、図13の舟底植え(a)による湾曲状に、また、苗挟持部27を起こして苗Nの基部側部分kを傾斜させた場合は、図13の斜め植え(b)による直状に植え付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した苗移植機の側面図
【図2】 図1の苗移植機の平面図
【図3】 図1の苗移植機の苗搬送部と苗植付け体とを示す一部省略した側面図
【図4】 図3の苗搬送部と苗植付け体とを示す一部省略した平面図
【図5】 図3の苗搬送部の駆動部を示す背面図
【図6】 苗挟持部の一例を示す斜視図
【図7】 図6の苗挟持部の移植時の側面視による作用説明図
【図8】 苗挟持部のブラシ体Bを別の構成とした例の斜視図
【図9】 挟持調節機構を備える苗挟持部の正面図
【図10】 図9の苗挟持部の分解斜視図
【図11】 保持角度調節可能な苗挟持部の側面図
【図12】 図11の苗挟持部による移植態様を示す斜視図
【図13】 図11の苗挟持部による舟底植え(a)と斜め植え(b)の例
【符号の説明】
1 走行部
3 苗搬送部
4 苗植付け体
4a 植付爪
6,7 車輪
26 苗収容部
26a 受け板部
27 苗挟持部
27c ベース板
27a,27b 挟持部材
27d ねじ部材
27e 長穴
51 座(規制体)
61 苗挟持部
62 回動ガイド板
63 相互固定手段
B ブラシ体
D 苗収容部移動方向
G 間隙距離
H ブラシ体(硬)
S ブラシ体(軟)
k 基部側部分
N 苗

Claims (2)

  1. 機体を自走させる走行部と、苗を前後方向に向く姿勢で一つつ収容する苗収容部を複数設けて該苗収容部を複数の前後方向の軸周りに一列で周回動させて苗を搬送する苗搬送部と、該苗搬送部によって搬送されてきた苗をとって圃場に植付ける苗植付け体とを備えた苗移植機において、
    前記苗収容部の一端に苗の茎部の基部側部分を挟持する挟持部材を左右に備える苗挟持部を設け、
    該苗挟持部が苗の茎部の基端部を苗収容部外側に突出させて苗の茎部を挟持し、
    該苗挟持部で挟持される苗の基端部を前記苗植付体つかんで下降し、さらに土中で苗の茎部を苗収容部から前後に離れる方向に移動して前後に倒れる状態に植付ける構成とし、
    前記苗挟持部の左右一方側或は両方側の挟持部材を対向する挟持部材に毛先が向う姿勢のブラシ体Bとして苗の茎をブラシ体Bの毛が上下に挟み込んだ状態で挟持する構成とするとともに、該苗挟持部の挟持個所の前後幅を苗の茎の径に比して幅広く設定し、該苗挟持部にあって葉がついている茎側部分の苗挟持深さが茎の基端部側部分の苗挟持深さよりも浅くなるよう苗挟持深さを規制する規制体を設けたことを特徴とする苗移植機。
  2. 前記規制体を弾性部材による板体で構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
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