JP3814950B2 - スタック型半導体レーザ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザに係り、特に、大出力のレーザ光を得るに適したスタック型半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体レーザを用いて自動車間の距離を計測し、車間距離を一定に保ったり、前方の自動車に接近し過ぎた場合に、警報を発するようにしたレーザレーダシステムが提案されている。
このシステムでは、100m先の物体を検知することが不可欠である。このような仕様を満足させるために、半導体レーザでは、パルス駆動で40乃至80Wの光出力が要求されている。
【0003】
現在、一般に市販されている1チップの半導体レーザ素子では、実用上最大でも10乃至20W程度の出力しか得られないため、この半導体レーザ素子を縦方向にいくつも積み重ね、ろう材金属で接合してスタック化することで、光出力を増加させるようにしている。
図7は上記スタック型半導体レーザの従来例を示す(特開平5−41561号公報参照)。この半導体レーザは、P型或いはN型の基板1上中央に、半導体レーザ素子2、3及び4をろう材金属を介しスタック状に積層することで構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような半導体レーザにおいては、半導体レーザ素子3が半導体レーザ素子2の基板とは別の基板上に発光層を形成して構成されており、また、半導体レーザ素子4が半導体レーザ素子2及び3の各基板とは別の基板上に発光層を形成して構成されている。
【0005】
このことは、両半導体レーザ素子2及び3は、基板と発光層とを同じ順序で上方へ単に2段積み重ねたにすぎないことを意味する。
このため、両半導体レーザ素子2、3の各発光層の間の間隔D1は、図7及び図8で示すごとく基板の厚さだけ離れてしまい、通常、約100μmである。
このような半導体レーザの両半導体レーザ素子3、4でもって、図8にて示すごとく、実際の光学系を用いレンズ5の前方にレーザ光を照射した場合、両ビームパターン6、7が得られる。これら各ビームパターン6、7は、各半導体レーザ素子3、4からのレーザ光により形成される。
【0006】
即ち、半導体レーザ素子3のレーザ光が、光路P1に沿いレンズ5を通り図8にて示す位置にビームパターン6を形成する。一方、半導体レーザ素子4のレーザ光が、光路P2に沿いレンズ5を通り図8にて示す位置にビームパターン7を形成する。
ここで、スタック型半導体レーザが測距用レーザレーダシステムに使用される場合、両半導体レーザ素子3、4とレンズ5との間の距離L1は、レンズ5と両ビームパターン6、7との間の距離L2に比べて非常に短い。例えば、自動車用とした場合、距離L1は約20mmであり、距離L2としては最大で100mが要求される。
【0007】
しかして、間隔D1は、レンズ5の前方100mの距離の位置では、両ビームパターンの各中心の間隔D2として現れる。ここで、単純な光学系の場合、D2は、次の数1の式により与えられる。
【0008】
【数1】
D2=D1×L2/L1
この式に、L1=20mm、L2=100m、D1=100μmを代入すると、D2は50cmとなる。
このことは、二つのレーザ光の重なりが50cmだけずれることになり、図9にて示すように、レンズ5の前方におけるレーザ光の強度が不均一になる領域が非常に広くなることを意味する。このため、測距精度が低下するという不具合がある。
【0009】
これに対し、本発明者等は、複数の半導体レーザ素子の積層構造に工夫を加えることにより、各半導体レーザ素子のレーザ光によるビームパターン間の重なりをできる限り大きくすることにつき種々検討を加えてみた。
これによれば、例えば、二つの半導体レーザ素子の積層構造において、両半導体レーザ素子の各発光層の間隔は、両半導体レーザ素子における基板と発光層の積層順序を互いに逆にすれば、上述のように基板と発光層の積層順序を同一にする場合に比べて狭くなることが分かった。
【0010】
また、両半導体レーザ素子の各基板を同一導電型基板、例えば、N型基板とすれば、互いに異なる基板とする場合に比べ、両半導体レーザ素子の電気的接続構成の自由度をあげ得ることが分かった。
そこで、本発明は、以上のようなことに着目して、複数の半導体レーザ素子の積層構造に工夫を加えることにより、各半導体レーザ素子のレーザ光によるビームパターン間の重なりをできる限り大きくし、かつ、電気的接続構成の自由度の高いスタック型半導体レーザを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1、2に記載の発明によれば、第1半導体レーザ素子が、台座上に接合された下側電極と、この下側電極上に順次積層状に位置する導電型基板、発光層及び上側電極とを備える。また、第2半導体レーザ素子が、上記上側電極上に順次積層状に位置する下側電極、発光層、導電型基板及び上側電極を備える。そして、第2半導体レーザ素子の下側電極が絶縁層を介し第1半導体レーザ素子の上側電極上に接合されている。
【0012】
また、両導電型基板が同一の導電型基板であり、第1及び第2の半導体レーザ素子が電気的に直列接続されている。また、第1及び第2の半導体レーザ素子は、100μm以上の幅の電流注入領域をそれぞれ有する。
以上により、両半導体レーザ素子が、その各発光層にて近接するように、接合されることとなる。このため、実際の光学系において両半導体レーザ素子の各レーザ光を前方に向け照射した場合、両レーザ光による各照射光パターンの間の重なりが大きくなる。
【0013】
従って、当該各照射光パターンにおけるレーザ光の強度の不均一な領域が減少する。その結果、かかるスタック型半導体レーザを自動車の測距用レーザレーダシステムの適用した場合、その測距精度が大幅に向上する。
この場合、本発明によれば、半導体レーザは、同一の導電型基板からなる半導体レーザ素子のみの積層でもって構成されているから、半導体レーザの製造が、P型基板を有する半導体レーザ素子と、N型基板を有する半導体レーザ素子の双方を利用する場合に比べ、容易となる。
【0014】
また、両半導体レーザ素子が上述のように電気的に直列接続されているから、各半導体レーザ素子には、外部から流入する電流がほぼそのまま流れる。このため、各半導体レーザ素子の出力容量、ひいては半導体レーザの出力容量を大幅に向上できる。
また、上述のごとく、第1及び第2の半導体レーザ素子の各電流注入領域の幅は、100μm以上と非常に広い。このため、これら両半導体レーザ素子の各々のレーザ出力がより一層増大し得る。
【0015】
また、請求項に記載の発明によれば、ろう材金属層(60A)が前記絶縁層上に設けられており、前記第2半導体レーザ素子の下側電極が前記ろう材金属層よりも狭い表面積を有するように形成されて当該ろう材金属層上に接合されており、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の電気的直列接続が、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の各上側電極のボンディング接続でもって達成されており、前記各上側電極のボンディング接続が、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の電流分布が偏らないように、複数箇所にて行われている。また、請求項2に記載の発明によれば、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の電気的直列接続が、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の各上側電極のボンディング接続でもって達成され、前記各上側電極のボンディング接続が、複数箇所にて行われている。よって、半導体レーザ素子の光出力をより一層効率よく均一な出力とすることができる。
【0019】
また、請求項に記載の発明のように、各導電型基板が共にN型基板であれば、P型基板を採用する場合に比べ、半導体レーザの製造が容易となる
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。
図1は、自動車車間距離測距用レーザレーダシステムに採用するに適した本発明に係る大出力のスタック型半導体レーザを示している。
この半導体レーザは、台座10を備えており、この台座10の上面11には、金メッキが施されている。なお、台座10は、銅製であって、電流経路の他、ヒートシンクとしての役割をも果たす。
【0021】
また、半導体レーザは、量子井戸構造の両半導体レーザ素子20、30を備えており、これら両半導体レーザ素子20、30は、台座10の表面11上に、順次、積層して接合されている。
半導体レーザ素子20は、GaAsからなるN型基板21を備えており、このN型基板21の上面には、AlGaAsからなるN型クラッド層22、GaAsとAlGaAsとの超格子からなる発光層23、AlGaAsからなるP型クラッド層24が、分子線エピタキシャル法(MBE)、有機金属気相エピタキシャル成長法(MOCVD)、或いは液相エピタキシャル法(LPE)等の各種のエピタキシャル方法により、順次、成膜されている。
【0022】
なお、場合によっては、N型基板21の上面に、GaAsからなるN型バッファ層(図示しない)や、P型クラッド層24の上面にGaAsからなるP型バッファ層(図示しない)が成膜されてもよい。
また、N型クラッド層22、発光層23及びP型クラッド層24の組成比やキャリア濃度、並びに発光層23上記N型バッファ層及びP型バッファ層のキャリア濃度は、従来技術の範囲で設定される。
【0023】
また、P型クラッド層24の上面には、SiO2 からなる絶縁層25が所定の形状にパターニング形成されている。また、半導体レーザ素子20の上部電極となるP型電極26は、Cr/Auからなる薄膜を絶縁層25を介しP型クラッド層24の上面に真空蒸着法により形成するとともに当該薄膜に約360℃にて熱処理を施しオーミックコンタクトをとって形成されている。
【0024】
一方、半導体レーザ素子20の下部電極となるN型電極27は、AuGe/Ni/Auからなる薄膜を真空蒸着法でN型基板21の下面に形成するとともに当該薄膜に熱処理を施し、オーミックコンタクトをとって形成されている。
このN型電極27の下面には、台座10の表面11と接合するためのはんだ層40が真空蒸着方法により形成されている。このはんだ層40は、SuとAuとの各薄膜により構成されており、Suの膜厚及びAuの膜厚は、それぞれ、800nm及び200nmである。
【0025】
以上のように構成した半導体レーザ素子20においては、P型電極26の上面から発光層23までの間隔はたかだか5μm程度である。
半導体レーザ素子20のP型電極26の上面には、絶縁層50が、酸化シリコンや窒化シリコンを用いて、パターニングにより、100μm以上の幅の電流注入領域を確保できる形状に形成されており、この絶縁層50は両半導体レーザ素子20、30の間を電気的に絶縁する役割を果たす。
【0026】
ここで、半導体レーザ素子20の電流注入領域の幅を上述のごとく100μm以上と非常に広くしたのは、半導体レーザ素子20のレーザ出力をより一層増大させるためである。
また、この絶縁層50の図1にて図示右側部からは、P型電極26の右側部が露呈し半導体レーザ素子30と電気的接続のためのボンディングパッドとしての役割を果たす。
【0027】
はんだ層60は、半導体レーザ素子30と接合するためのもので、絶縁層50の上面に厚さ1.6μmにて真空蒸着方法により形成されている。
半導体レーザ素子30は、GaAsからなるN型基板31を備えており、このN型基板31の下面には、AlGaAsからなるN型クラッド層32、GaAsとAlGaAsとの超格子からなる発光層33、AlGaAsからなるP型クラッド層34が、半導体レーザ素子20のN型クラッド層22、発光層23、P型クラッド層24の形成方法と同様の方法により、順次、成膜されている。
【0028】
また、N型クラッド層34の下面には、SiO2 からなる絶縁層35が100μm以上の幅の電流注入領域を確保できる形状にパターニング形成されている。半導体レーザ素子30の下部電極となるP型電極36は、Cr/Auからなる薄膜を絶縁層35を介しP型クラッド層34の下面に真空蒸着法により形成するとともに当該薄膜に上述と同様に熱処理を施し、オーミックコンタクトをとって形成されている。
【0029】
ここで、半導体レーザ素子30の電流注入領域の幅を上述のごとく100μm以上と非常に広くしたのは、半導体レーザ素子20と同様に半導体レーザ素子30のレーザ出力をより一層増大させるためである。
このP型電極36は、その下面にて、はんだ層60の上面に接合されている。
一方、半導体レーザ素子30の上部電極となるN型電極38は、N型電極27の形成方法と同様の方法で、AuGe/Ni/Auからなる薄膜をN型基板31の上面に形成し、当該薄膜に熱処理を施してオーミックコンタクトをとって形成されている。また、N型電極38の上面には、ボンディング電極39がAuの薄膜を真空蒸着法により形成されている。
【0030】
以上のように構成した半導体レーザ素子30においては、P型電極36の下面から発光層33までの間隔は、たかだか略5μm程度である。
但し、半導体レーザ素子30の表面積は、図1から容易に理解されるごとく、はんだ層60の表面積よりも狭くなっており、P型電極電極36から図1にて図示左方へ露呈するはんだ層60の左側部分は、外部回路との電気的接続のためのボンディングパッドとしての役割を果たす。
【0031】
次に上述のように構成した半導体レーザにおいて、両半導体レーザ素子20、30を台座10上に積層する方法について説明する。
半導体レーザ素子20をはんだ層40を介し台座10の表面11上に載置し、ダイボンド装置により上方から半導体レーザ素子20に荷重を加えながら、約370℃の温度条件にてはんだ層40を台座10の表面11に溶接することにより、半導体レーザ素子20を台座10に接合する。
【0032】
ついで、半導体レーザ素子30をそのP型電極36にて、半導体レーザ素子20のP型電極26上に絶縁層40を介し形成したはんだ層60上に、図1にて示す位置にて載置する。そして、半導体レーザ素子20の台座10に対する接合方法と同様の方法により、はんだ層60を絶縁層50を介しP型電極26にロー付けすることにより、半導体レーザ素子30を半導体レーザ素子20にスタック状に接合する。
【0033】
これにより、両半導体レーザ素子20、30の各発光層の間隔が約10μm(図3にて符号D3参照)に短縮される。但し、両半導体レーザ素子20、30の接合は、両者のレーザ光出射面が同一方向になるように行う。
次に、ボンディング電極39の上面中央とP型電極26の右側部の中央とを金のワイヤ70でもってワイヤボンディング装置によりボンディング接続する。また、P型電極26の左側部上には、外部回路に接続するための金のワイヤ80を上述と同様にボンディング接続する。
【0034】
しかして、両半導体レーザ素子20、30が絶縁層50により絶縁されているため、半導体レーザを発光させるときこの半導体レーザのワイヤ80に流入する電流は、はんだ層60、半導体レーザ素子30、ワイヤ70及び半導体レーザ素子20を通り台座10に流れ込むという経路をとる。
このことは、両半導体レーザ素子20、30は、電気的に直列接続されていることを意味する。
【0035】
このように接続したスタック型半導体レーザに実際の光学系に適用した場合の作用効果を、図2及び図3を使用し、図8及び図9と比較しながら説明する。
本発明に係るスタック型半導体レーザの両半導体レーザ素子20、30により、図2にて示すごとく、実際の光学系を用いてレンズ5の前方にレーザ光を照射した場合、両ビームパターン20a、30aが得られる。
【0036】
これら各ビームパターン20a、30aは、各半導体レーザ素子20、30からのレーザ光により形成されるものである。即ち、半導体レーザ素子20のレーザ光が、光路P3に沿いレンズ5を通り図2にて示す位置にビームパターン20aを形成する。一方、半導体レーザ素子30のレーザ光が、光路P4に沿いレンズ5を通り図2にて示す位置にビームパターン30aを形成する。
【0037】
ここで、本発明に係るスタック型半導体レーザでは、上述したごとく、両半導体レーザ素子20、30が、各発光層の間隔をD3=10μmとするように、近接して接合されている。このため、レンズ5の前方の両ビームパターン20a、30aの各中心間隔D4は、図8にて示す場合に比べて非常に狭くなる。
例えば、図8にて示す従来の場合と同様に、L1=20mm、L2=100mとし、これらをD3=10μmとともに数1の式に代入すると、レンズ5の前方100mの距離の位置では、図2では、両ビームパターン20a、30aの中心間隔D4は、5cmとなり、従来のスタック型半導体レーザの場合と比べて1/10に改善される。
【0038】
これにより、両ビームパターン20a、30aのずれが、図8の両ビームパターン6、7のずれに比べて大幅に減少する。換言すれば、両ビームパターン20a、30aの重なりが、図8の両ビームパターン6、7の重なりに比べて大幅に増大する。その結果、レンズ5の前方におけるレーザ光の強度の不均一領域が、従来(図9参照)に比べて、図3にて示すごとく、大幅に減少し、出射レーザ光の強度が均一となり、レーザレーダシステムの測距精度が著しく向上する。
【0039】
また、本第1実施形態における半導体レーザは、上述のごとく、N型基板を有する半導体レーザ素子のみの積層でもって構成されているから、半導体レーザの製造が、P型基板を有する半導体レーザ素子を利用する場合に比べ、容易となる。
また、本第1実施形態における半導体レーザでは、両半導体レーザ素子20、30が上述のように電気的に直列接続されているから、各半導体レーザ素子20、30には、ワイヤ80から流入する電流がほぼそのまま流れる。このため、各半導体レーザ素子20、30の出力容量、ひいては、半導体レーザの出力容量を大幅に向上できる。
【0040】
図4及び図5は、上記第1実施形態の変形例を示している。
この変形例においては、絶縁層50A及びはんだ層60Aが、図4にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた絶縁層50及びはんだ層60に代えて、両半導体レーザ素子20、30の間に形成接合されている。
ここで、半導体レーザ素子20は、P型電極26の図4及び図5にて図示左側部において、絶縁層50A及びはんだ層60Aの各左側部よりも左方に露呈している。一方、半導体レーザ素子20は、P型電極26の図示右側部において、絶縁層50A及びはんだ層60Aの各右側部よりも右方に露呈している。
【0041】
これにより、P型電極26の左右両側部は、半導体レーザ素子30と電気的に接続するためのボンディングパッドとしての役割を果たす。
また、はんだ層60Aは、絶縁層50Aと共に、その左右両側部にて、半導体レーザ素子30のP型電極36の左右両側部から左右方向へ露呈している。これにより、はんだ層60Aの左右両側部は、外部回路との電気的接続のためのボンディングパッドとしての役割を果たす。
【0042】
しかして、この変形例では、上記第1実施形態にて述べたワイヤ70に代えて、金のワイヤ70aが、図5にて示すごとく、ボンディング電極39の右側部上方とP型電極26の右側部上方との間にボンディング接続されているとともに、金のワイヤ70bが、ボンディング電極39の左側部下方とP型電極26の左側部下方との間にボンディング接続されている。
【0043】
また、この変形例では、上記第1実施形態にて述べたワイヤ80に代えて、両金のワイヤ80a、80bが採用されており、両ワイヤ80a、80bは、それぞれ、はんだ層60Aの左右両側部中央にボンディング接続されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
この変形例によれば、半導体レーザを発光させるときこの半導体レーザに流れる電流は、ワイヤ80a、はんだ層60Aの右側部、半導体レーザ素子30の右側部、ワイヤ70a及び半導体レーザ素子20の右側部を通り台座10に流れ込むと共に、ワイヤ80b、はんだ層60Aの左側部、半導体レーザ素子30の左側部、ワイヤ70b及び半導体レーザ素子20の左側部を通り台座10に流れ込むという両経路をとる。このことは、当該両経路でもって、両半導体レーザ素子20、30は、それぞれ、電気的に直列接続されていることを意味する。
【0044】
このため、両半導体レーザ素子20、30を流れる電流は、両半導体レーザ素子20、30の内部を左右対称的に流れる。従って、両ワイヤ80a、80bからの電流は両半導体レーザ素子20、30の内部を均一に流れることとなる。
よって、半導体レーザ素子の光出力をその出射面からより一層効率よく均一な出力とすることができる。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
【0045】
また、半導体レーザ30から半導体レーザ20へのワイヤ70a、70bは、半導体レーザ20における電流分布を均一にすべく、図5にて示すように平面的に見て、互いに異なる位置でボンディング電極39とP型電極26とに接続されている。
他の例として、ワイヤ70a、70bをボンディング電極39の左右において、ボンディング電極39の中央と、P型電極26の左右における中央とに接続し、ワイヤ80a、80bをはんだ層60Aの左右両側部のそれぞれ上方、下方(図5中、図示B1、B2の位置)としてもよい。
【0046】
或いは、ワイヤ70a、70bは、図5にて示す位置とし、ワイヤ80a、80bを図中のB1、B2の位置にワイヤボンディング接続するようにしてもよい。
さらに、ボンディング電極39とP型電極36とを接続するワイヤ70をさらに2本増大して、レーザの出射方向(図5中の図示矢印方向)に対して対称となるようにワイヤ70を配置するようにしてもよい。これらワイヤボンディング接続の位置や数は、電流分布を考慮して適宜設定すればよい。
【0047】
図6は、本発明の第2実施形態を示している。
この第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた絶縁層50が廃止されており、両電極26、36が、はんだ層60を介し直接接合されている。また、上記第1実施形態にて述べたワイヤ70に代えて、金のワイヤ70cが採用されており、このワイヤ70cは、ボンディング電極39と台座10の上面11との間にボンディング接続されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0048】
このように構成した本第2実施形態によれば、ワイヤ80に流入する電流は、はんだ層60を通り両半導体レーザ素子20、30内に分流し、半導体レーザ素子20から台座10に直接流入するとともに、半導体レーザ素子30及びワイヤ70cを通り台座10に流入するという両経路をとる。
このことは、両半導体レーザ素子20、30が電気的に並列接続されていることを意味する。
【0049】
これにより、各半導体レーザ素子20、30に流れる各電流が、ワイヤ80に流入する電流の約半分となる。その結果、両半導体レーザ素子20、30の各出力容量は減少するものの、これら両半導体レーザ素子20、30の寿命を大幅に向上できる。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
また、上記各実施形態にて述べたように、N型基板、つまり同一の導電型基板のみの利用によって、両半導体レーザ素子20、30を直列接続或いは並列接続した半導体レーザを構成できる。従って、本発明によれば、電気的接続構成の自由度の高いスタック型半導体レーザを提供できる。
【0050】
なお、上記第2実施形態において、半導体レーザの出力容量を第1実施形態と同様にするには、ワイヤ80に流入する電流を2倍にすればよい。
また、本発明の実施にあたり、上記第2実施形態にて述べた両半導体レーザ素子20、30を上下反対に積層して実施してもよい。
また、本発明の実施にあたり、両半導体レーザ素子20、30の基板を共にN型基板とした例について説明したが、これに限らず、両半導体レーザ素子20、30の基板は共に同一の導電型基板であればよく、P型基板のみにより両半導体レーザ素子20、30の基板を構成してもよい。
【0051】
また、本発明の実施にあたっては、超格子を有する量子井戸構造の半導体レーザ素子を有するスタック型半導体レーザに限ることなく、例えば、PN接合構造やダブルヘテロ接合構造の半導体レーザ素子等の各種の半導体レーザ素子を有するスタック型半導体レーザに本発明を適用して実施してもよい。また、半導体レーザ素子に使用する基板も、GaAs基板に限ることなく、例えば、InP基板を、半導体レーザ素子に使用する基板として採用して実施してもよい。
【0052】
また、本発明の実施にあたり、上記各実施形態にて述べたワイヤによるボンディング接続に代えて、薄膜等による接続で代用してもよい。
また、本発明の実施にあたっては、はんだ層37に限ることなく、これに代えて、ろう材金属層を採用して実施してもよい。
また、本発明の実施にあたり、両半導体レーザ素子20、30の製造は、エピタキシャル成長方法に限ることなく、積層できる方法であればよい。
【0053】
また、本発明の実施にあたり、ボンディング電極39は廃止して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスタック型半導体レーザの第1実施形態を示す要部断面図である。
【図2】図1の半導体レーザを実際の光学系に適用した場合の効果を説明するための模式図である。
【図3】図1の半導体レーザを実際の光学系に適用した場合のレンズの前方におけるレーザ光の強度分布を表すグラフである。
【図4】上記第1実施形態の変形例を示す要部断面図である。
【図5】上記変形例の平面図である。
【図6】本発明に係るスタック型半導体レーザの第2実施形態を示す要部断面図である。
【図7】従来のスタック型半導体レーザの正面図である。
【図8】図7の半導体レーザを実際の光学系に適用した場合の不具合を指摘するための模式図である。
【図9】従来のスタック型半導体レーザを実際の光学系に適用した場合のレンズ前方のレーザ光の強度分布を表すグラフである。
【符号の説明】
10…台座、20、30…半導体レーザ素子、21、31…N型基板、
23、33…発光層、26、38…P型電極、27、36…N型電極、
40、60、60A…はんだ層、50、50A…絶縁層。

Claims (5)

  1. 台座(10)と、
    この台座上に設けられた第1半導体レーザ素子であって100μm以上の幅の電流注入領域を有する第1半導体レーザ素子(20)と、
    この第1半導体レーザ素子と同一の光出射方向を有する第2半導体レーザ素子であって100μm以上の幅の電流注入領域を有する第2半導体レーザ素子(30)とを備えたスタック型半導体レーザであって、
    前記第1半導体レーザ素子が、前記台座上に接合された下側電極(27)と、この下側電極上に順次積層状に位置する導電型基板(21)、発光層(23)及び上側電極(26)とを備え、
    前記第2半導体レーザ素子が、前記上側電極上に順次積層状に位置する下側電極(36)、発光層(33)、導電型基板(31)及び上側電極(38)を備え、前記第2半導体レーザ素子の下側電極が絶縁層(50、50A)を介し前記第1半導体レーザ素子の上側電極上に接合されており、
    前記両導電型基板が同一の導電型基板であり、
    前記第1及び第2の半導体レーザ素子が電気的に直列接続されており、
    ろう材金属層(60A)が前記絶縁層上に設けられており、
    前記第2半導体レーザ素子の下側電極が前記ろう材金属層よりも狭い表面積を有するように形成されて当該ろう材金属層上に接合されており、
    前記第1及び第2の半導体レーザ素子の電気的直列接続が、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の各上側電極のボンディング接続でもって達成されており、
    前記各上側電極のボンディング接続が、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の電流分布が偏らないように、複数箇所にて行われていることを特徴とするスタック型半導体レーザ。
  2. 台座(10)と、
    この台座上に設けられた第1半導体レーザ素子であって100μm以上の幅の電流注入領域を有する第1半導体レーザ素子(20)と、
    この第1半導体レーザ素子と同一の光出射方向を有する第2半導体レーザ素子であって100μm以上の幅の電流注入領域を有する第2半導体レーザ素子(30)とを備えたスタック型半導体レーザであって、
    前記第1半導体レーザ素子が、前記台座上に接合された下側電極(27)と、この下側電極上に順次積層状に位置する導電型基板(21)、発光層(23)及び上側電極(26)とを備え、
    前記第2半導体レーザ素子が、前記上側電極上に順次積層状に位置する下側電極(36)、発光層(33)、導電型基板(31)及び上側電極(38)を備え、前記第2半導体レーザ素子の下側電極が絶縁層(50、50A)を介し前記第1半導体レーザ素子の上側電極上に接合されており、
    前記両導電型基板が同一の導電型基板であり、
    前記第1及び第2の半導体レーザ素子が電気的に直列接続されており、
    前記第1及び第2の半導体レーザ素子の電気的直列接続が、前記第1及び第2の半導体レーザ素子の各上側電極のボンディング接続でもって達成され、前記各上側電極のボンディング接続が、複数箇所にて行われていることを特徴とすスタック型半導体レーザ。
  3. 前記各導電型基板が共にN型基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタック型半導体レーザ。
  4. 前記第1及び第2の半導体レーザ素子の各電流注入領域の幅がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のスタック型半導体レーザ。
  5. 前記第1及び第2の半導体レーザ素子の各電流注入領域の幅が共に同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のスタック型半導体レーザ。
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