JP3814925B2 - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受 Download PDF

Info

Publication number
JP3814925B2
JP3814925B2 JP08529897A JP8529897A JP3814925B2 JP 3814925 B2 JP3814925 B2 JP 3814925B2 JP 08529897 A JP08529897 A JP 08529897A JP 8529897 A JP8529897 A JP 8529897A JP 3814925 B2 JP3814925 B2 JP 3814925B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rolling
inner ring
outer ring
grease
ring raceway
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP08529897A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09329136A (ja
Inventor
裕之 伊藤
安伸 藤田
心 新関
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP08529897A priority Critical patent/JP3814925B2/ja
Publication of JPH09329136A publication Critical patent/JPH09329136A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3814925B2 publication Critical patent/JP3814925B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Rolling Contact Bearings (AREA)
  • Motor Or Generator Frames (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係る転がり軸受は、電動機を構成するハウジングの内側にロータ軸を回転自在に支承する為の電動機用転がり軸受として、或はHDDやFDD等の磁気記録装置を構成する磁気ヘッドを支持したスイングアームの基端部を揺動自在に支持する為の揺動支持用転がり軸受として利用する。
【0002】
【従来の技術】
各種電動機械装置の駆動源として使用される電動機は、例えば図1に示す様に構成している。ケーシング1の内側中心部にはロータ軸2を、互いに間隔をあけて同心に配置した1対の転がり軸受3a、3aにより、回転自在に支持している。このロータ軸2の中間部でこれら両転がり軸受3a、3aの間に位置する部分にはロータ4を固定し、上記ケーシング1の内周面でこのロータ4の外周面と対向する部分にはステータ5を固定している。電動機の使用時にはこのステータ5に通電し、上記ロータ4を介して上記ロータ軸2を回転させる。
【0003】
又、図2は、特開昭61−151881号公報に記載された、磁気記録装置を構成する磁気ヘッドを支持したスイングアームの基端部を揺動自在に支持する為の、揺動支持部の構造を示している。この揺動支持部は、密封ケース6内に固定した支持ブロック7に揺動軸8の基端部を、互いに間隔をあけて同心に配置した1対の転がり軸受3b、3bにより、揺動変位自在に支持している。それぞれの先端部に磁気ヘッド9、9を支持したスイングアーム10、10の基端部は、上記揺動軸8に結合固定している。この様な揺動支持部を設けた磁気記録装置の使用時には、上記揺動軸8が、上記磁気ヘッド9がHD、FD等の磁気記録板18、18をトレースするのに伴って揺動変位する。
【0004】
上述の様な電動機或はスイングアームの揺動支持用、更には図示しないが、ステッピングモータ或は各種機械装置のクランク軸の、揺動支持或は回転支持用に組み込まれた上記各転がり軸受3a(3b)は、図3に詳示する様に構成している。即ち、この転がり軸受3a(3b)は、内周面に外輪軌道11を有する外輪12と、外周面に内輪軌道13を有する内輪14と、上記外輪軌道11と内輪軌道13との間に転動自在に設けられた複数の転動体15とを備える。これら外輪12と内輪14と複数の転動体15とは何れも、高炭素クロム軸受鋼等の鋼材により造られている。又、この複数の転動体15は保持器16によって、円周方向に亙り互いに間隔をあけた状態で、転動自在に保持している。更に、上記外輪12の両端部内周面には、シール又はシールドである密封板17、17の外周縁を係止して、上記複数の転動体15を設置した空間部分の両端開口を塞いでいる。そして、これら両密封板17、17により、上記空間部分に封入したグリースが外部に漏洩する事を防止している。
【0005】
この様な転がり軸受3a(3b)のうち、図1に示した様な電動機用モータに組み込む転がり軸受3aの場合には、上記複数の転動体15の転動面と上記外輪軌道11及び内輪軌道13との間にグリースが進入できる微小隙間が形成される様に、各部の寸法を規制している。即ち、上記転がり軸受3aの内部に、所謂正の隙間を設けている。従って上記外輪12と内輪14と複数の転動体15とは、上記外輪12及び内輪14の軸方向(図3の左右方向)及び直径方向(図3の上下方向)に亙り、僅かとは言え相対変位自在である。これに対して、図2に示した様なスイングアーム10、10の基端部を揺動自在に支持する為の転がり軸受3bの場合には、複数の転動体15の転動面と上記外輪軌道11及び内輪軌道13とを弾性的に当接させる、所謂予圧を付与している。即ち、上記転がり軸受3bの内部に、所謂負の隙間を設けている。但し、この様な負の隙間を設けた場合でも、複数の転動体15の転動面と上記外輪軌道11及び内輪軌道13との間にはグリースが進入して、これら転動面と上記外輪軌道11及び内輪軌道13とが直接接触(金属接触)する事を防止する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
電動機に組み込む転がり軸受3a、3aの場合には、外輪12と内輪14と複数の転動体15とが僅かとは言え相対変位自在である為、電動機若しくは電動機を組み込んだ機械装置の運搬時に上下振動や横ゆれが加わると、外輪軌道11、内輪軌道13、転動体15の転動面には、衝撃的な荷重が繰り返し加えられる。又、この衝撃的な荷重が加わる瞬間には、上記外輪軌道11及び内輪軌道13と転動体15の転動面との当接部に、微小な滑りが発生する。しかも、この微小な滑りが発生する瞬間には、上記当接部に存在するグリースが衝撃荷重により押し退けられ、鋼同士が当接する、所謂金属接触の状態となる。この為、上記微小な滑りにより上記外輪軌道11、内輪軌道13、転動体15の転動面に局所的な損傷が起こり、この損傷に基づいて、所謂フレッチング摩耗が発生する。この様なフレッチング摩耗は、電動機の作動時に異音や振動を発生させたり、或は転がり軸受3a、3aの寿命を短縮させたりする原因となる為、好ましくない。
【0007】
特に電動機用転がり軸受3aの場合には、外輪12がケーシング1に内嵌固定され、内輪14がロータ軸2に外嵌固定されており、運搬時にこれら外輪12及び内輪14に加わる慣性質量が大きい。この為、繰り返し加わる衝撃荷重が大きくなり、上記フレッチング摩耗が発生し易い。特に、ビルディング用の空気調和装置用ファンモータの様に大型の電動機で、上記フレッチング摩耗の発生が顕著になる。
【0008】
上記フレッチング摩耗を抑える為には、転がり軸受3aに封入するグリースとして、より堅調なものを使用する事が効果がある。堅調なグリースを使用すれば、上記外輪軌道11及び内輪軌道13と転動体15の転動面との間に形成される油膜の機械的強度が増大し、フレッチング摩耗に結び付く、金属面同士の微小な滑り(金属接触)の発生を抑える事ができる。ところが、堅調なグリースを使用すると、グリースの流動性が低下して、電動機の運転時に於ける潤滑性が悪化したり、或は転がり軸受3aの回転トルクが上昇し、しかもこの回転トルクの変動が大きくなる為、好ましくない。
【0009】
この様な事情に鑑みて従来は、電動機或は電動機を組み込んだ機械装置の梱包を強化して耐振性を持たせ、上記転がり軸受3aに加わる衝撃荷重の緩和を図っているが、フレッチング摩耗を完全に抑える事は難しく、しかもコスト増大を招く為、必ずしも有効な対策とは言えない。
【0010】
一方、スイングアーム10、10の基端部を揺動自在に支持する為の転がり軸受3bの場合には、磁気ヘッド9、9により磁気記録板18、18をトレースする際に、内輪14と外輪12とのうちの一方の軌道輪が他方の軌道輪に対して(図2に示した構造の場合には内輪14が外輪12に対して)、微小角度の揺動を頻繁に繰り返す。この様な微小角度の揺動変位が繰り返し行なわれる結果、転動体15の転動面と外輪軌道11及び内輪軌道13との接触位置が局部的になる。しかも、揺動方向が逆転する際に、上記転動面と外輪軌道11及び内輪軌道13との相対速度が零になる。この様に、転動面と外輪軌道11及び内輪軌道13との接触位置が局部的になったり、或は相対速度が零になると、これら転動面と外輪軌道11及び内輪軌道13との接触部に潤滑の為の油膜が形成されにくくなる。そして油膜が形成されないと、上記接触部で金属接触が発生し、摩耗(フレッチング摩耗)が発生し、軸受性能が低下し、軸受寿命が低下する。
本発明はこの様な事情に鑑みて発明したものであって、優れた軸受特性を有し、しかも運搬時に繰り返し加わる衝撃荷重に拘らず、優れた耐フレッチング性を発揮する電動機用の転がり軸受、或は耐フレッチング性を発揮する揺動支持用の転がり軸受等を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の転がり軸受は、前述した従来の転がり軸受と同様に、内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、上記外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体とを備える。
特に、本発明の転がり軸受に於いては、上記外輪及び内輪が鋼製であり、上記複数の転動体がセラミック製である。そして、これら複数の転動体の表面気孔率が0.20〜14.0%である。
尚、上記外輪及び内輪を構成する鋼の材質は、特に限定しないが、軸受鋼、高炭素鋼、ステンレス鋼、浸炭鋼等が使用可能である。外輪を構成する鋼材と内輪を構成する鋼材とは、同じ種類のものでも、異なる種類のものでも良い。又、転動体を構成するセラミックの材質も特に限定しないが、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア等が使用可能である。
【0012】
又、上記外輪の内周面と上記内輪の外周面との間で、両端部を密封板により塞がれ、内部に上記複数の転動体を設置した空間内には潤滑剤を充填するが、この潤滑剤としては、ウレア樹脂から成る増ちょう剤を5重量%以上20重量%未満含有するグリースを使用する。又、このグリースを構成する為の基油としては、合成炭化水素油、エステル油、鉱油、エーテル油のうちの何れかを使用する。又、上記グリース中には、酸化防止剤、錆止め剤、摩耗防止剤、極圧剤等の添加剤を、転がり軸受の機能を低下させない範囲で含有させても良い。
【0013】
【作用】
上述の様に構成される本発明の転がり軸受の場合には、前述した従来の転がり軸受の場合とは異なり、外輪軌道及び内輪軌道と複数の転動体の転動面との当接部の接触状態が、鋼同士の接触ではなく、鋼とセラミックとの接触となる。鋼とセラミックとが接触した場合、鋼同士が接触した場合に比べて摩擦摩耗特性が良好になる。
【0014】
尚、鋼製の外輪及び内輪の外輪軌道及び内輪軌道と、セラミック製の転動体の転動面との当接部に於ける摩擦摩耗特性は、これら鋼及びセラミックの組み合わせが何れの場合でも、鋼同士が当接する場合の摩擦特性に比べて向上する(摩擦力が小さくなる)。その中でも特に、軸受鋼と窒化珪素、ステンレス鋼と窒化珪素、軸受鋼とジルコニアとの各組み合わせが、優れた摩擦摩耗特性(低摩擦特性)を得られ、前述したフレッチング摩耗に結び付く様な損傷を発生しにくくなる事から、好ましく利用できる。
【0015】
又、セラミック製である上記複数の転動体の表面気孔率を、0.20〜14.0%の範囲内に規制する事により、上記当接部に作用する摩擦力をより一層低減して、上記フレッチング摩耗等に結び付く様な損傷の発生をより一層低減できる。即ち、上記表面気孔率を上記範囲内に規制すれば、上記損傷の原因となる衝撃荷重の作用時に、上記転動体の表面の気孔に保持されているグリースが上記当接部に染み出し、この当接部の摩擦を低くする。この為、上記フレッチング摩耗等に結び付く様な損傷の発生をより一層低減できる。上記表面気孔率が0.20%未満の場合には、気孔部分の油溜の効果を期待できず、摩耗を生じ易くなる。又、上記表面気孔率が14.0%を越える場合、転動面の表面粗さが悪くなり、やはり摩耗を生じ易くなる。
【0016】
又、増ちょう剤としてウレア樹脂を5重量%以上20重量%未満含有するグリースは、流動性、剪断安定性、潤滑性が、リチウム石鹸、ナトリウム石鹸等を増ちょう剤として使用したグリースに比べ優れている。従って、この様なグリースを、上記複数の転動体を設置した空間内に充填する潤滑剤として使用すれば、優れた摩擦摩耗特性を得られる。ウレア樹脂の増ちょう剤の割合が5重量%未満の場合、得られるグリースが軟らか過ぎ(粘度が低過ぎ)て、このグリースが上記空間から外部に漏れ出し、この空間内に存在するグリースが不足し易くなる為、上記フレッチング摩耗が生じ易くなる。又、ウレア樹脂の増ちょう剤が20重量%以上になると、得られるグリースが硬く(粘度が高く)なり、流動性が悪くなる為、やはり上記フレッチング摩耗を十分に低減できなくなる。
【0017】
【実施例】
次に、本発明の効果を確認する為、本発明者が行なった実験に就いて説明する。第一の実験では、前述の図1に示した様な電動機に組み込む転がり軸受3a、3aに、この電動機の搬送時に繰り返し加わる衝撃荷重によりフレッチング摩耗が発生する程度を測定する為のフレッチング試験と、使用状態での転がり軸受の耐久性を測定する為の耐久試験と、使用状態で転がり軸受に作用する回転トルクを測定する為のトルク試験と、転がり軸受に封入したグリースのノイズを測定するグリースノイズ試験との、4種類の試験を行なった。以下、各試験の実施方法及びその結果に就いて説明する。尚、各試験に共通の条件、並びに後述する表1、2に記載した用語の具体的内容は、次の通りである。
軸受鋼 : SUJ2(JIS G 4805)
ステンレス鋼 : SUS440C(JIS G 4303)
グリースの種類 : 協同油脂株式会社製の「マルテンプSRL」
グリースの封入量 : 35%(軸受空間に対する容積比)
【0018】
フレッチング試験
フレッチング試験は、図4に示す様な試験装置を使用して行なった。被試験物品である転がり軸受3a、3aは、スピンドル19の外周面とハウジング20の内周面との間に設置した状態でばね21により予圧を付与し、更に重り22により、上記スピンドル19に下方に向いた荷重を付与した。このスピンドル19を加振器23上に載置して所定の条件で振動を付与した後、上記転がり軸受3a、3aを分解して、外輪軌道11及び内輪軌道13(図3参照)に発生したフレッチング摩耗を顕微鏡で観察した。試験条件は次の通りである。
Figure 0003814925
このフレッチング試験の結果を、耐久試験、トルク試験、グリースノイズ試験の結果と共に、表1、2に記載した。尚、このフレッチング試験の結果に就いては、フレッチング摩耗及び転動体の走行跡が何れもなかったものを◎印で、転動体の走行跡があってもフレッチング摩耗が殆どなかったものを○印で、フレッチング摩耗が少しあったものを△印で、フレッチング摩耗が大きかったものを×印で、それぞれ表す。◎印及び○印が合格である。
【0019】
耐久試験
この耐久試験は、一般的な軸受耐久回転試験機を用いて行ない、2000時間を経過するか、或は焼き付きが発生した時点で試験を終了した。試験条件は次の通りである。
Figure 0003814925
この耐久試験の結果を、フレッチング試験、トルク試験及びグリースノイズ試験の結果と共に、表1、2に記載した。尚、この耐久試験の結果に就いては、軸受寿命時間(焼き付きが発生するまでの時間)が2000時間以上のものを○印で、1500〜2000時間のものを△印で、1500時間未満のものを×印で、それぞれ表す。○印が合格である。
【0020】
トルク試験
このトルク試験は、一般的な軸受トルク測定試験機を用いて行ない、転がり軸受3aの動トルクを測定した。試験条件は次の通りである。
Figure 0003814925
このトルク試験の結果を、フレッチング試験、耐久試験及びグリースノイズ試験の結果と共に、表1、2に記載した。尚、このトルク試験の結果に就いては、動トルクが50gf・cm 以下のものを◎印で、50〜70gf・cm のものを○印で、70〜100gf・cm のものを△印で、100gf・cm 以上のものを×印で、それぞれ表す。◎印及び○印が合格である。
【0021】
グリースノイズ試験
このグリースノイズ試験は、転がり軸受3aに封入したグリースの音響評価を、グリースノイズテスターでグリースノイズを測定する事により行なった。使用した転がり軸受3aは、耐久試験の場合と同様に6200VVである。
このグリースノイズ試験の結果を、フレッチング試験、耐久試験及びトルク試験の結果と共に、表1、2に記載した。尚、グリースノイズ試験の結果に就いては、不規則音が殆どなく、音響特性が優秀であるものを○印で、不規則音が少し存在し、音響特性がやや悪いものを△印で、不規則音が非常に多く、音響特性が悪いものを×印で、それぞれ表す。○印が合格である。
【0022】
【表1】
Figure 0003814925
【0023】
【表2】
Figure 0003814925
【0024】
これら表1、2中、◇印は、左欄の対応する位置に記載した材料を使用した事を表している。これら表1、2の記載から明らかな通り、本発明の転がり軸受は、耐久性、低トルク性、グリースノイズ性の面で優れた軸受特性を有し、しかも運搬時に繰り返し加わる衝撃荷重に拘らず、優れた耐フレッチング性を発揮する。
【0025】
次に、セラミック製の転動体15の表面気孔率が耐フレッチング性に及ぼす影響を知る為に行なった実験に就いて説明する。実験は、上記表面気孔率が異なる複数の試料に就いて、前述したフレッチング試験と同じ条件で行なった。但し、加振継続時間を、5、10、15時間の3種類に就いて行ない、それぞれに就いて、上記フレッチング試験の場合と同様の評価を行なった。その結果を、次の表3、4に記載した。尚、表面気孔率は、転動体15表面を光学顕微鏡で撮影し、その撮影データを画像処理した後、次式により求めた。
(視野中の気孔の総面積)/(視野の総面積)×100
【0026】
【表3】
Figure 0003814925
【0027】
【表4】
Figure 0003814925
【0028】
これら表3、4に示したフレッチング耐久試験の結果から、セラミック製である複数の転動体15の表面気孔率を0.20〜14.0%の範囲に規制すれば、これら複数の転動体15の転動面と外輪軌道11及び内輪軌道13との当接部に作用する摩擦力をより一層低減して、フレッチング摩耗に結び付く様な損傷の発生をより長時間に亙って低減できる事が分る。これに対して、例えば比較例4、6、8は、上記表面気孔率が小さい(0.1%)為、初期(実験開始後5時間又は10時間の間)は良好な耐フレッチング性を示したが、加振継続時間が長時間に及ぶと、フレッチング摩耗の発生が見られた。この理由は、これら比較例4、6、8は、上記表面気孔率が小さく、転動体15表面に存在する気孔のグリース保持量が少ない為と考えられる。反対に、比較例5、7、9は、上記表面気孔率が大きく(>14.0%)、加振継続時間が5時間又は10時間までであれば良好な耐フレッチング性を示したが、加振継続時間が長時間に及ぶと、フレッチング摩耗の発生が観察された。この理由は、表面気孔率が過大である為、表面粗さが悪化して気孔のエッヂ部分が局部的に高面圧となり、当該部分でグリース切れを起こす為と考えられる。
【0029】
次に、前述の図2に示した様な、磁気記録装置の揺動支持部を構成する転がり軸受3b、3bに、本発明を適用した場合に得られる効果を確認する為に行なった、第二の実験に就いて説明する。この第二の実験では、図2に示す様な磁気記録装置に組み込む転がり軸受3b、3bに、この磁気記録装置の使用時に伴ってフレッチング摩耗が発生する程度を測定する為のフレッチング耐久試験を、図5に示す様な試験装置を使用して行なった。
【0030】
この試験装置は、上記転がり軸受3b、3bの外輪12、12を内嵌支持する回転筒24と、これら各転がり軸受3b、3bの内輪14、14を外嵌支持する固定軸25とを備える。そして、これら回転筒24の内周面と上記固定軸25の外周面との間に、複数個の転がり軸受3b、3bを装着している。これら各転がり軸受3b、3bには、軸方向に隣り合う外輪12、12同士の間又は内輪14、14同士の間に設けたスリーブ26a、26bとばね21とにより、予圧を付与している。そして、上記回転筒24はACサーボモータ等の駆動モータ27により、所定の微小角度(揺動角度)で繰り返し揺動変位自在としている。従って、試験時に上記各転がり軸受3b、3bの外輪12、12は、微小な揺動角度で繰り返し揺動変位する。尚、上記ばね21により上記各転がり軸受3b、3bに付与するアキシャル荷重は10kgf とし、上記各外輪12、12の揺動角度は8度とし、揺動の繰り返し回数は200万回とした。尚、使用した転がり軸受3b、3bは、呼び番号が695のもの(内径=5mm、外径=13mm、幅=4mm)である。
【0031】
上述の様な条件で試験を行なった後、上記各転がり軸受3b、3bを分解し、これら各転がり軸受3b、3bの内輪14、14の外周面に設けた内輪軌道13、13の摩耗状態及び摩耗深さを観察した。そして、走行跡の摩耗深さが0.2μm未満の場合を合格とし、同じく摩耗深さが0.2μm以上の場合を不合格とした。試験は、転動体15、15の材質、同じく転動面の表面気孔率、並びに上記複数の転動体を設置した空間内に充填する潤滑剤の材質、同じくこの潤滑剤を構成する増ちょう剤の割合を種々変える事により行なった。その結果を、図6〜7に示す。
【0032】
先ず、図6は、上記転動体の材質及び転動面の表面気孔率が、内輪軌道13のフレッチング摩耗に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示している。図6の横軸は上記表面気孔率を、縦軸は上記内輪軌道13に生じたフレッチング摩耗の深さを、それぞれ示している。尚、フレッチング摩耗の深さは、形状測定機により測定した。又、○印は転動体15、15が窒化珪素である場合の結果を、△印は同じくアルミナである場合の結果を、□印は同じくジルコニアである場合の結果を、それぞれ表している。何れの場合も内輪14の材質は、軸受鋼{SUJ−2に所定の熱処理(焼き入れ・焼き戻し)を施したもの}とした。更に、潤滑剤としては、増ちょう剤であるウレア樹脂の含有率を10重量%としたウレア樹脂−エステル油系のグリースで、エステル油の粘度が100mm2/s であるものを使用した。
【0033】
この様な条件で行なった試験の結果を表す図6から明らかな通り、転動体15、15の転動面の表面気孔率を0.2〜14.0%の範囲に規制すれば、内輪軌道13のフレッチング摩耗の深さを0.2μm以下とする合格判定基準を満たす事ができる。又、やはりこの図6から明らかな通り、上記表面気孔率を0.25〜13%の範囲に規制すれば、フレッチング摩耗の深さを0.1μm以下に抑える事ができて、より優れた耐久性を有する転がり軸受3b、3bを得られる。
【0034】
即ち、図6から明らかな通り、上記表面気孔率が0.20%の部分と14.0%の部分とに、(内輪走行跡の)フレッチング摩耗に対する臨界点が存在する。そして、上記表面気孔率が0.20%未満の場合には、前述した様に、軌道面(本第二の実験の場合には内輪軌道13)と転動体15の転動面との接触部に存在して油溜として機能する気孔の、接触部分(所謂接触楕円)に対する割合が不足し、フレッチング摩耗が増大する。反対に、上記表面気孔率が14.0%を越えると、やはり前述した様に、転動体15の表面粗さが悪化して、同様にフレッチング摩耗が増大し、摩耗が著しくなっている事が分る。そして、上記表面気孔率を0.25〜13%にすると、フレッチング摩耗をより少なくできる。
【0035】
尚、上記表面気孔率を本発明の限定範囲(0.20〜14.0%)とした場合には、転動体15の材質を窒化珪素或はジルコニアにすると、この転動体15の材質をアルミナとした場合に比べて優れた耐フレッチング性を得られる。但し、フレッチング摩耗の程度に関しては、この様な転動体15の材質の相違よりも、表面気孔率の相違の方が影響は大きい。従って、本発明は、転動体15を構成するセラミックの材料を限定するものではない。
【0036】
次に、図7は、複数の転動体15を設置した空間内に充填する潤滑剤の材質、同じくこの潤滑剤を構成する増ちょう剤の割合を種々変える事により、潤滑剤の材質及び増ちょう剤の割合がフレッチング摩耗に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示している。試験条件並びに判定条件は、上述の図6にその結果を示した試験の場合と同じである。但し、転動体15を構成するセラミックを、表面気孔率が2%である窒化珪素(Si3N4 )とした。この図7の横軸は、増ちょう剤であるウレア樹脂又はリチウム石鹸の含有量を、縦軸は、内輪軌道13に生じたフレッチング摩耗の深さを、それぞれ表している。又、△印は、リチウム石鹸により構成する増ちょう剤と粘度が100mm2/s である鉱油とを混合したグリースを使用した場合の、○印はウレア樹脂により成る増ちょう剤とエステル油を混合したグリースを使用した場合の、それぞれ試験結果を表している。
【0037】
この図7から明らかな通り、本発明によれば、何れのグリースを使用した場合でも優れた耐摩耗性を得られるが、特に増ちょう剤としてウレア樹脂を5重量%以上20重量%未満含有するグリースを使用した場合に、優れた耐摩耗性を得られる事が分かる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の転がり軸受は、以上に述べた通り構成され作用するので、耐久性、低トルク性、グリースノイズ性の面で優れた軸受特性を有し、しかも運搬時に繰り返し加わる衝撃荷重に拘らず、優れた耐フレッチング性を発揮する。この為、電動機及びこの電動機を組み込んだ各種機械装置の音響特性、振動特性並びに耐久性を向上させる事ができる。又、磁気記録装置等、微小変位する揺動支持部に組み込んだ場合に、優れた耐フレッチング性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となる転がり軸受を組み込んだ電動機の半部切断側面図。
【図2】同じく磁気記録装置の断面図。
【図3】本発明の対象となる転がり軸受の1例を示す部分断面図。
【図4】電動機用として使用する転がり軸受のフレッチング試験に使用した試験装置を示す略縦断正面図。
【図5】磁気記録装置用として使用する転がり軸受のフレッチング試験に使用した試験装置を示す略縦断正面図。
【図6】転動体の材質及び転動面の表面気孔率が、内輪軌道のフレッチング摩耗に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示す線図。
【図7】複数の転動体を設置した空間内に充填する潤滑剤の材質及び増ちょう剤の割合がフレッチング摩耗に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示す線図。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 ロータ軸
3a、3b 転がり軸受
4 ロータ
5 ステータ
6 密封ケース
7 支持ブロック
8 揺動軸
9 磁気ヘッド
10 スイングアーム
11 外輪軌道
12 外輪
13 内輪軌道
14 内輪
15 転動体
16 保持器
17 密封板
18 磁気記録板
19 スピンドル
20 ハウジング
21 ばね
22 重り
23 加振器
24 回転筒
25 固定軸
26a、26b スリーブ
27 駆動モータ

Claims (4)

  1. 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、上記外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体とを備え、ケーシングの内側に軸を回転自在に支承する転がり軸受に於いて、上記外輪及び内輪が鋼製であり、上記複数の転動体がセラミック製であり、これら複数の転動体の表面気孔率が0.20〜14.0%であり、上記外輪の両端部内周面にそれぞれの外周縁を係止した密封板によりその両端開口を塞がれた、上記各転動体を設置した空間部分にグリースを封入しており、このグリースが、基油として合成炭化水素油、エステル油、鉱油、エーテル油のうちの何れかを使用し、増ちょう剤としてウレア樹脂を5重量%以上20重量%未満含有するものである事を特徴とする転がり軸受。
  2. 内部に正の隙間を設け、電動機を構成するロータ軸をハウジングの内側に回転自在に支承する為に使用される、請求項1に記載した転がり軸受。
  3. 各転動体に予圧を付与し、磁気ヘッドを支持したスイングアームの基端部を揺動自在に支持する為に使用される、請求項1に記載した転がり軸受。
  4. 各転動体を構成するセラミックが、窒化珪素又はジルコニアである、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した転がり軸受。
JP08529897A 1996-04-12 1997-04-03 転がり軸受 Expired - Fee Related JP3814925B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP08529897A JP3814925B2 (ja) 1996-04-12 1997-04-03 転がり軸受

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8-90839 1996-04-12
JP9083996 1996-04-12
JP08529897A JP3814925B2 (ja) 1996-04-12 1997-04-03 転がり軸受

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09329136A JPH09329136A (ja) 1997-12-22
JP3814925B2 true JP3814925B2 (ja) 2006-08-30

Family

ID=26426318

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP08529897A Expired - Fee Related JP3814925B2 (ja) 1996-04-12 1997-04-03 転がり軸受

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3814925B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000184652A (ja) * 1998-12-10 2000-06-30 Minebea Co Ltd スピンドルモータ
JP2002247798A (ja) * 2001-02-20 2002-08-30 Sanyo Denki Co Ltd ファンモータ

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09329136A (ja) 1997-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6802648B2 (en) Polymeric bearing with elastomer
US7466050B2 (en) Brushless motor and method of manufacturing the same
KR100549102B1 (ko) 정보기기의스핀들모터및그회전축지지장치
Wittek et al. Capacitance of bearings for electric motors at variable mechanical loads
JP2018087638A (ja) 工作機械主軸用転がり軸受
JPH02271106A (ja) すべり軸受装置
JP2006316850A (ja) 正逆微動回転用転がり軸受
JP3814925B2 (ja) 転がり軸受
JP2006329233A (ja) 転がり軸受及び工作機械用主軸装置
WO1996019678A1 (fr) Bille pour roulements a billes
JP2000169872A (ja) 高速転がり軸受用グリ―スおよびスピンドル用転がり軸受
JPH0921424A (ja) 電動機用軸受
JP2002250353A (ja) 転がり軸受
JP2000205267A (ja) 情報事務機器用転がり軸受
Rahman et al. Effect of lubricating oils on cage failure of ball bearings
JP2000120700A (ja) 電気掃除機のモータ用玉軸受
JP2006292029A (ja) 転がり軸受のフレッチング摩耗の損傷度の評価方法とアンデロン値の推測方法と転がり軸受及びグリースの耐フレッチング性の推測方法
JP4347010B2 (ja) 流体軸受装置
JPH09177799A (ja) 転がり軸受
JP4599738B2 (ja) モータ及びこれを備えたディスク装置
JP2007002174A (ja) 潤滑剤および転がり軸受
JPH07333200A (ja) 軸受の電食評価試験装置
JP2005195180A (ja) 動圧型焼結含油軸受ユニット
JP2012072890A (ja) 転がり軸受の設計方法及び転がり軸受
JP2004144118A (ja) 転動装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20051110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051129

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060125

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060516

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060529

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100616

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100616

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110616

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees