JP3814418B2 - 蓄冷材、蓄冷器及びこれらを適用した蓄冷型冷凍機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スターリング、ヴィルミエ、ソルベイ、ギホード・マクマホン、パルス管等の蓄冷器を主要素として構成する熱サイクルにおいて、蓄冷材及び蓄冷器、並びにこれらを用いた冷凍機、及び、パルス管と蓄冷器とを一体化したパルス管冷凍機に関するものである。尚、本発明に係る蓄冷材及び蓄冷器をスターリングエンジン等の動力を発生させる熱帰還に適用した場合には、蓄熱材及び蓄熱器となるが、ここではこれら熱機関に適用する蓄熱材、蓄熱器も総称して蓄冷材及び蓄冷器と称することとする。
【0002】
【従来の技術】
絶対温度で273K以下の温度を生成する冷凍機の蓄冷材は、冷凍機性能を決定する重要な一因となる。
【0003】
従来、このような蓄冷材として、比熱の大きな銅、ブロンズ、ステンレス等の金網(100〜500メッシュ)を蓄冷材として使用し、これらを円形状に打ち抜き、パイプ内に数百枚詰め込んで積層したもの(以下、メッシュタイプの蓄冷材という。)、又は、無数の小さな(φ0.4mm以下)鉛球や低温で磁気比熱の大きなEr3Ni等の小球体や砕片を詰め込んで充填したもの(以下、小球タイプの蓄冷材という。)がよく知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の蓄冷材は、上記説明したように、数百枚の円形状のメッシュを積層したメッシュタイプや、無数の小さな球体を充填した小球タイプである。
【0005】
しかしながら、メッシュタイプは、メッシュを積層するに際し1枚1枚メッシュを積み重ねて積層していくものであり、手作業でも治具を使用しても非常に時間がかかり、生産性が極めて悪いという問題がある。また、何百枚ものメッシュがランダムに積層されるため、メッシュの微小で四角形形状の隙間からなる流体流路を塞ぐ確立が高い。このため、流体抵抗は非常に大きく、これによる流体の摩擦損失が極めて大きくなるという問題もある。さらに、メッシュタイプは金網を円形にするために機械的に打ち抜かれるが、このとき金網の円周端で短くなった細線が欠落する。そのため、この金網を数百枚積層して蓄冷器を造った場合、作動流体は、欠落して流路抵抗が少なくなった金網の円周端部に多く流れてしまう。このように、流体が蓄冷器内の何れの切断面でも同速度で流れず、金網の円周端である円筒の内壁付近に多く流れ、中心部の流れが少なくなると、金網の全熱容量を有効に使えず、冷凍効率の向上に対して障害となってしまう。さらに、円周端で欠落する細線の量は、蓄冷材1枚1枚で同一とは言えないので、これらを大量生産すると、各蓄冷材の性能に個体差が生じてしまうという問題もある。さらに、蓄冷器内でその円周端部を高速度で流体が通過するので、ハーモニカのリードのような状態となって音を発生し、これが流体中を伝播して冷凍機のコールドヘッド部で機械振動を発生させ、被冷却体に悪影響を及ぼすという問題もある。
【0006】
また、小球タイプのものは、ディスプレーサや膨張ピストンの往復動作等で発生する機械振動や、流体の急激な速度変化による衝撃波等で球体が破砕され粉体化して、蓄冷器性能に劣化を引き起こすばかりか、粉体化したものが他の要素部に進入したり、流体の主流路部を閉塞させたりして、システム故障を引き起こすという問題がある。
【0007】
故に、本発明は、上記問題点を解消すべくなされたものであり、生産性が極めて良好であり、かつ蓄冷器としての性能、信頼性を維持できる蓄冷材及び蓄冷器とすることを技術的課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するためになされた請求項1の発明は、
略平行に配列された複数の第1細線と、前記第1細線が配列された平面内で前記第1細線に対して略垂直に配列されるとともに相隣接する前記第1細線間で交差する複数の第2細線と、前記第2細線が交差する交差部で該第2細線のそれぞれを互いに非接触状態で固定する第3細線によりマット状に形成された蓄冷材とすることである。
【0009】
上記請求項1の発明によれば、蓄冷材は、第1細線、第2細線、及び第3細線を具備する。第1細線は、略平行に複数配列されている。第2細線は、第1細線が配列した平面内において該第1細線に対して略垂直に複数配列している。ここで、第2細線は、相隣接する第1細線間でそれぞれ交差している。また、第3細線は、第2細線が交差する交差部で、交差する第2細線のそれぞれを、互いに接触しないように固定している。そして、これら第1細線、第2細線群、及び第3細線でマット状に蓄冷材を形成するものである。
【0010】
請求項1の発明は、上記構成に示したように、第1細線、第2細線、及び第3細線によりマット状に形成された蓄冷材であるので、このようなマット状蓄冷材を充填して蓄冷器とするに際し、蓄冷材を巻き上げてロール状とし、ロール状となった蓄冷材を蓄冷器内に挿入すればよい。又は、該蓄冷材を芯材等に巻き上げてロール状とし、芯材と一体的にロール状となった蓄冷材を蓄冷器内に挿入すればよい。本発明における蓄冷材はこのような構成のため、蓄冷器の生産性が極めて向上するものである。
【0011】
ここで、マット状とは、平面状のシートのごとき形状をいい、丸めてロール状にしたり、芯材等に巻きつかせることが可能なものをいう。
【0012】
また、第2細線は第3細線により固定されているので、第2細線がばらばらとなることはない。従って、第2細線が解けてこれが冷凍機の要素部に入り込み、システム故障を引き起こすことはなく、冷凍機としての信頼性を向上させることができるものである。
【0013】
また、第1細線は略平行に複数配列され、第2細線は第1細線が配列された平面内において第1細線に対して略垂直に複数配列されてなるので、作動流体の流路が均一に確保され、蓄冷器性能が向上するものである。さらに、第2細線は、第3細線により固定されているので、隣り合う第2細線間で接触することはない。さらに、交差部を形成する2本の第2細線同志においても、第3細線により両者が接触しないように固定されているので、この両者が接触することはない。つまり、全ての第2細線は、他の第2細線と接触しない構造である。このため第2細線のそれぞれが、独自の温度維持を行うので、他の細線の温度の影響を受けず、蓄冷器性能を向上させることができるものである。
【0014】
また、上記技術的課題を解決するにあたり、請求項2において講じた発明のように、請求項1において、前記第3細線は、化学繊維、絹糸、綿糸、接着剤のうちの一種又は複数で構成されることを特徴とする蓄冷材とすることが好ましい。第3細線を上記材質で構成することにより、一般的に市販された材料で安価に第3細線を購入することができるものである。
【0015】
また、請求項3の発明のように、請求項1又は2において、前記第2細線は、銅、鉛、銅合金、ステンレス、ニッケル合金のうちの一種又は複数で構成されることを特徴とする蓄冷材とすることが好ましい。上記材質は、比較的高温領域での比熱が大きいものである。従って、蓄冷材の材質にこれらを使用することにより、高温領域での蓄冷効率の向上が期待できるものである。
【0016】
また、請求項4の発明のように、請求項1又は2において、前記第2細線は、鉛、鉛合金、ネオジム、磁気比熱の大きな材料を微粉体化して芯材に結合させて構成されることを特徴とする蓄冷材とすることもできる。蓄冷材を上記構成及び材質とすることにより、比較的低温領域での比熱が大きくなる。従って、蓄冷材の材質及び構成を上記の如くすることにより、低温領域での蓄冷効率の向上が期待できるものである。
【0017】
微粉体の芯材への結合方法としては、接着、接合、コーティング等の手段があるが、これに限定されるものではない。
【0018】
また、請求項5の発明は、請求項1又は2において、前記第2細線は、使用温度領域でそれぞれ容積比熱の大きな材質の異なる細線で形成されることを特徴とする蓄冷材とすることである。このように構成すると、各温度領域、例えば蓄冷器内の高温領域では、この温度領域で比熱の高い材質、例えば請求項3の発明で示した銅、鉛、銅合金、ステンレス、ニッケル合金等で第2細線を構成し、蓄冷器内の低温領域では、この温度領域で比熱の高い材質、例えば請求項4の発明で示した鉛、鉛合金、ネオジム、磁気比熱の大きな材料を微粉体化して芯材と結合させて第2細線を構成することができる。このため蓄冷器内のいずれの温度領域においても比熱が大きい材質で蓄冷器を構成でき、蓄冷効率がより一層向上するものである。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記第1細線は前記第2細線と比較して熱伝導度が極度に低い材質で形成されていることを特徴とする蓄冷材とすることである。このように蓄冷材を形成することにより、この蓄冷材を蓄冷器に挿入するときに第1細線を蓄冷器の周方向に配列、つまり、第1細線が蓄冷器の軸方向(高温端部から低温端部へ向かう方向)に延びることとなる。この場合に、第1細線は熱伝導が悪いため、蓄冷器お高温端において得た熱を蓄冷器の低温端まで伝達することが極力抑制されるものである。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項において、前記第1細線は、複数本の極細線を束ねて形成されていることを特徴とする蓄冷材とすることである。ウィスカー等の極細線を束ねて第1細線を構成することにより、第1細線の直径や弾性を調整することができるようになり、それぞれの仕様に合わせた蓄冷材を製造することができるものである。
【0021】
次に、上記技術的課題を解決するために、請求項8において講じた発明は、
低温端及び高温端を備えた蓄冷器において、
請求項1〜7に記載の蓄冷材を前記第1細線が軸方向に配列されるように巻き上げてロール状とし、該ロール状とされた蓄冷材の軸方向の一端部を前記蓄冷器の低温端に、軸方向の他端部を前記蓄冷器の高温端に配置されるように挿入してなる蓄冷器とすることである。
【0022】
上記請求項8の発明によれば、請求項1〜7の発明において示した蓄冷材を第2細線が軸方向に配列するように巻き上げてロール状とし、このロール状とされた蓄冷材を挿入した蓄冷器としたので、蓄冷器を作製するときの作業性が飛躍的に良好となり、生産性を向上させることができるものである。また、このような蓄冷器とすることにより、蓄冷器の高温端から低温端への熱の伝達が極力抑制されるため、より蓄冷効率を向上させることができるものである。
【0023】
この場合、より好ましくは、請求項9の発明のように、請求項8において、前記蓄冷器は芯材を備え、前記心材の周りに前記前記蓄冷材が巻き付けられてロール状とされていることを特徴とする蓄冷器とすることである。このように構成することにより、蓄冷器を作製するときの作業は、該蓄冷材を芯材等に巻き付けてロール状とし、芯材と一体的にロール状となった蓄冷材を蓄冷器内に挿入すればよい。本発明における蓄冷材はこのような構成のため、蓄冷器の生産性を極めて向上させることができるものである。
【0024】
さらにより好ましくは、請求項10の発明のように、請求項9において、前記芯材は周方向に複数個に分割されていることを特徴とする蓄冷器とすることである。これにより、1つの蓄冷器を作製するときに複数枚の蓄冷材を使用することができ、1枚当りの蓄冷材を小さくすることができるので、蓄冷器を作製するときの作業効率がより向上するものである。
【0025】
また、上記技術的課題を解決するために、請求項11において講じた発明は、請求項8〜10に記載の蓄冷器を備えた蓄冷型冷凍機とすることである。本発明における蓄冷器を蓄冷型冷凍機に適用することにより、蓄冷型冷凍機を作製するときの作業性が極めて向上するとともに、蓄冷型冷凍機の冷凍性能をも向上させることができるものである。
【0026】
また、請求項12の発明は、請求項11において、前記蓄冷型冷凍機は、前記蓄冷器とパルス管とを一体化したパルス管冷凍機であることを特徴とする蓄冷型冷凍機としたことである。これにより、蓄冷器とパルス管とを一体化したパルス管冷凍機において、冷凍機を作製するときの作業効率が格段に向上するものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態により具体的に説明する。
【0028】
本例の蓄冷材の形状のイメージを図1に、構造寸法図を図2に示して説明する。
【0029】
第1細線1a、1b・・・1n(以下、総称する場合は第1細線1とする。)は、熱伝導度が極度に低い、Si、C、OTi、Zi等を原料とするチラノ繊維や、セラミックス繊維等の単線、あるいは、直径(d1)や弾性を調節するため、それらやウィスカーを複数本を束ねて一本にした単線(布ではヨコ糸に相当)であり、これらの第1細線1が、本マット状蓄冷材が圧縮されて巻かれても潰れることなく作動気体の流体経路を確保する。尚、図3に、ウィスカーを複数本束ねて形成した第1細線1の断面図を示す。図3は、ウィスカー1aa、1bb、1cc、1nn・・・をエポキシ樹脂やガラスAAで固めて一本の第1細線1にしたものである。
【0030】
2a、2b、・・・2nは蓄冷材となる非常に長い第2細線(以下、総称する場合は第2細線2とする。)である。材料には使用温度領域で容積比熱が大きく蓄冷材とすることができる銅、鉛、銅合金であるブロンズ、鉛合金や、ステンレス等のニッケル合金、あるいは、銅、その他の材料を心材にして鉛、鉛合金等をメッキして造られ、冷凍温度が約20K以下では、比熱の大きなネオジム、DyNi2、Er3Ni、Er6Ni2Sn、ErNi0.9Co0.1等(これらの比熱特性については図4参照)を微粉体化して接着又は接合、あるいはコーティング等を行った線材で形成される。
【0031】
第2細線2の直径(d2=d3)は数μm〜0.2mmφであり、この第2細線2は布で言えばタテ糸に相当する。
【0032】
尚、第2細線2の直径は約60Kまではd2=d3であるが、それ以下になると、第2細線に前述した蓄冷材料を微粉体化して接着又は接合、あるいはコーティング等を行った線材が使われるので直径が多少異なってくる。
【0033】
また、図4では図示していないが、常温から30Kまでの間は、ブロンズやステンレスの容積当りの比熱が大きい。30K以下からは、Pb、DrNi2、ErNi等が低温になるに従い比熱が大きくなる。これらの材料が、各使用温度領域で適宜選択され使用される。
【0034】
第3細線である3a、3b、・・・3n(以下、総称する場合は第3細線3とする。)は数μm〜0.06mmφの径のケプラー繊維、絹糸、チラノ繊維等の細線、あるいは接着、接合材であり、例えば第2細線2a、2bが、第1細線間L1の中間で交差する位置で、それぞれが金属接触しないよう一本ごとに2nまで連結して結ばれている。これにより、第3細線3の直径を0.01mmφとすると、図2(d)のC部詳細図にその詳細を示すが、第2細線間2aと2bのそれぞれの距離3ccは、0.02mm〜0.04mmの間隔を保って結ばれる。
【0035】
本発明のマット状に形成された蓄冷材の構造において、この第3細線3の使い方に大きな特長があって、一般の布の平織りとは本質的に異なるところである。
【0036】
この第3細線3は無数の第2細線2の交差部において、第2細線2のそれぞれが金属接触しないよう部分的に交差点で被覆されるのと、第2細線間をそれぞれを連続して結ぶ(図2(c)のB−B断面図参照)ことにより、本蓄冷材を任意の横幅や長さに切断しても分解しない。
【0037】
それと例えば、図2(c)のB−B断面図において、第2細線2aを常温とし、第2細線2nを77.3Kとすると、第2細線2が金属でありながら、2aから2nまでの第2細線のそれぞれが、メッシュタイプのように積層されたメッシュの金属線同士が直接接触することがない。そして極低熱伝導の材料である第3細線3で間接的にある距離(3cc)を維持して接続されるため、2a、2b、、、2nまでの細線の温度が、常温から低温度まで、それぞれの温度を持つ温度勾配の維持を容易にする。それ故、常温から低温度への金属による固体熱伝導損失は殆どゼロである。
【0038】
なお、図2(b)のA−A断面図の2a、2b、2cの如く、それぞれが接触することなく第1細線1cに対して交互にずれるような位置に固定できるなら、Bの位置ばかりではなく、第1細線1と第2細線2とを第3細線3で結んでもよい。
【0039】
また、Bの位置や2a、2b、2cのそれらが、より接触しないような結び方があるなら、それらを複合させて結ぶようにしてもよい。
【0040】
図5は蓄冷材の軸方向からみた一部を拡大した典型的立体図(図5(a))及び切断面図(図5(b))を示す。蓄冷器の芯材5(極低熱伝導度で適度の硬度を持つ例えば、4mmφのテフロン、セラミックス等)に形成されたスリット6に本発明のマット状の蓄冷材の一端を固定し、ロール状に巻き上げて蓄冷器を構成する方法である。これを所定の直径まで巻き上げてパイプに挿入すれば、本発明の蓄冷器が製造できる。L3は蓄冷材の長さで、布では横幅に相当する。
【0041】
図6(a)、(b)に、蓄冷器に巻き付けた蓄冷材の軸方向からみた一部を拡大した典型的な切断面図を示す。
【0042】
本例における蓄冷材が多重に、あるいは、多重渦巻き状に巻き上げられると、第1細線1及び第2細線2により流体の流路系のマトリックスが形成され、流体の流路形状は4a、7aとなる。流体(主にヘリウム、水素、窒素等)は、無数の図中の4a、7aを流れて第2細線2a、2b、、、2nまでと熱交換して、熱の授受を行う。
【0043】
図7(a)はパルス管冷凍機の流体流路系を示す図、図7(b)はパルス管冷凍機のクライオスタット部を示す図である。図7において、圧縮機8より約20気圧のへリウムは、精製器9から回転弁10が開くと、蓄冷器11、被冷却体を冷却するコールドヘッド12、パルス管13を通過し、バッフアータンク14に入る。
【0044】
回転弁10の高圧系が閉じ、低圧系16へと弁が開くと、先の流路系の流れとは逆の、バッフアータンク14のヘリウムは低圧となってパルス管13を通過し、コールドヘッド12で被冷却体を冷却し、本発明の蓄冷器11、回転弁10より16の低圧系から圧縮機8に戻って1サイクルが終わる。尚符号15は流量調整用のキャピラリーやニードル弁である。
【0045】
、図8、図9は、パルス管と本発明の蓄冷材とを一体化する方法の軸方向からみた切断図や立体図である。図8、図9において、13aは中が空洞のパルス管、22a、22b、22c、22dは第1、第2、第3細線で構成された本発明のシート型の4枚の蓄冷材である。21a、21b、21c、21dはテフロンやセラミックス等のパイプを縦方向の4つに分断した蓄冷材の固定板で、その長さは本発明のシート型蓄冷材の横巾にほぼ等しい。
【0046】
前述の図5では蓄冷材の固定にスリット6を用いたが、ここではパルス管13aに4枚の蓄冷材を固定するのに、固定板21a、21b、21c、21dで押さえ、第3細線とほぼ同材質の針穴に付けられた細線で蓄冷材を縫い込み固定版の外側を巻いて止める。そして図9(a)、(b)の如く多重渦巻き状に巻き込む。それを蓄冷器外壁17(図7(b)参照)の中に挿入すれば、パルス管13aと蓄冷器が一体化され、図7(b) のごとくなる。
【0047】
図7(b)において、蓄冷器外壁17の外は断熱のため真空空間であり、12aはコールドヘッドで、 流体抵抗を少なくして被冷却体への熱伝達効果を高めるため、無数の流体流路をもちコーン形状18をしている。19、20はフランジ、f、gは図7(a)の流路系のf、gの位置に対応している。
【0048】
図7(b)では、パルス管13aをクライオスタットの軸中心にして、その外周に蓄冷器で囲むような構造としたため、流体の漏洩の可能性のある接合・接続カ所が減って、コンパクトになると共に、信頼性が大きく向上した。
【0049】
すなわち図7(a)のそれぞれ独立した蓄冷器11、パルス管13では接続カ所が多くあったが、それらの外表面の常温に対する面積も減り、輻射熱による損失も減少した。
【0050】
次に、メッシュタイプと本発明の蓄冷材による蓄冷器との熱伝導損失を比較する。
【0051】
メッシュタイプの蓄冷器では、常温(300K)から77.3K(液体窒素の1気圧の沸点温度)までを直径30mmφのブロンズ200メッシュを600枚を積層して、長さを60mmとする。この場合、常温から77.3Kまでのメッシュの金属接触による固体の熱伝導損失は、3W以上になる。
本例では、それぞれの第1細線(布の横巾、L3)をチラノ繊維、十数本をガラスで固めて0.05mmφ、長さをL3を60mmとし、第2細線をブロンズの細線0.05mmφを857本使用し、第3細線をケプラー繊維0.01mmφ、図5の蓄冷器心材5(直径約4mm)に、図5のようにロール状に巻き上げて構成した。この場合、常温から77.3Kまでの熱伝導損失は、0.1W以下で、測定不可能であった。
【0052】
これらを実際のパルス管冷凍機(図7(a))に双方を使用した場合の温度勾配が図10である。図10において、縦軸(T)を温度、横軸(Lg)を蓄冷器の長さとして、蓄冷器の任意の位置における温度を測定してプロットした。
【0053】
メッシュタイプの温度勾配(点線)は直線的である。また、300Kからの流体の温度勾配の入りは直線8、出(戻り)が直線9のラインである。
【0054】
8aの温度は、55Kである。9aは戻りの最低温度で49.8Kである。
【0055】
温度効率は(300−55)/(300−49.8)×100=97.9%になる。
【0056】
一方、本発明の温度勾配は直線的にはならず、入りが曲線10で、10aは49K、出は曲線11であり、11aは46.2Kとなる。
【0057】
温度効率は(300−49)/(300−46.2)×100=98.9%である。従って、メッシュタイプとの効率の差は98.9−97.9=1.0%である。
【0058】
蓄冷器13における単純な熱交換量は300Kから49Kまでをヘリウム流量2g/s、比熱を5.3j/g・Kとすると、(300−49)×2×5.3=2660Wとなる。従って、1%の損失でも約27Wになるから、高効率の小型冷凍機の開発においては、極めて大きな冷凍損失となる。
【0059】
とくにメッシュタイプで得られる最低温度が49.8Kに対して、本発明ではより低い温度がえられる。約3.6Kも低い46.2Kとなった。
パルス管冷凍機において、冷凍温度を一定として、例えば77Kとすると、メッシュタイプでは41Wに対して、本発明では約62Wが得られた。
【0060】
図11(a)、(b)は、図6と同じく蓄冷材を巻いた蓄冷器の軸方向からみた一部を拡大した典型的な切断面図で、第1細線の間の距離L1を第1細線の直径d1の約3.2倍にして製造した場合である。 この時の第2細線の直径はd1の約55%である。
【0061】
L1を距離を短くしていくと、第1細線に対する第2細線の曲率半径が小さくなって、第2細線の使用量が増える(布の縦糸の長さに相当)。これは蓄冷器としての単位容積あたりの熱容量を増やし、効率も高くできることに通じる。ただし、図11(a)の流体流路7aは、図11(b)になったときの7aよりも大きくなる。尚、図6(a)、(b)の7aの流路面積の比較では、図11の場合ほど大きくならない。これはL1の長さが第2の細線の直径d1に対して約8倍であるからである。この時のd2の直径はd1の約80%である。
【0062】
流体の水力直径を計算するときには、これらの流路面積からの平均値をとる。
【0063】
L1の距離は第1細線の直径の3倍から10倍の範囲。第2細線の直径d2は第1の細線の直径d1の+100%、−65%の範囲内が適当である。
【0064】
なお、本発明の蓄冷材の熱容量と流体抵抗の調整は、使用する第2細線の材質の選定と、第1細線の直径d1、第2細線の直径d2、d3、第1細線間の距離L1、無数の第2細線間の距離を第3細線の直径と結び方によって調整できることは明らかである。
【0065】
【発明の効果】
本発明の特長を整理する。
(1)シート状の蓄冷材は多重に強く巻かれても、第1細線が潰れることがないため、流体流路が確保され、流体抵抗は極めて少ない。
【0066】
(2)常温から低温への縦方向の熱伝導損失は、第2細線それぞれが、第3細線によって非接触にして連結されるため、極度に少ない。
【0067】
(3)第2細線それぞれを、第3細線が非接触にするため、広い温度領域を温度に応じて第2細線の材質を選んで蓄冷材を製造できる。これにより、広い温度領域を一つで維持する高効率の蓄冷器が製造できる。
【0068】
(4)蓄冷材の熱容量と流体抵抗の調整、並びに最適な使用温度の選定は、使用する第2細線の材質の選定とその直径、第1細線の直径、第1細線間の距離、無数の第2細線間の距離を第3の細線の直径と結び方によって調整できる。
【0069】
(5)無数の第2細線は、横方向に第3細線でそれぞれ一本ずつが、連続的に結ばれるため、縦、横の任意な位置で切断しても、バラバラに分解することはない。
【0070】
(6)蓄冷器の製造において、蓄冷器心材を軸中心にして本発明の蓄冷材を、1重、または多重の渦巻き状にしてパイプに挿入すれば、蓄冷器が短時間で製造できる。その製造時間はメッシュタイプの何十分の1以下であり、製造価格は非常に安い。
【0071】
(7)多重に巻かれた蓄冷材は流体流路が塞がれることなく形成されるため、ほぼ均一な性能の蓄冷器の量産が可能になる。
【0072】
(8)パルス管冷凍機においては、パルス管に本発明のシ−ト状の蓄冷材を多重渦巻き状に巻き付けてパイプに挿入すれば、コンパクトで単純化された構造のクライオスタット部(例えば出願人の発明である特開平10−73332号公報に示されたもの)が安価で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における、蓄冷材のイメージ図である。
【図2】本発明の実施の形態における、蓄冷材の寸法を示す構造図であり、図2(a)は蓄冷材の平面図及び正面図を並べて示したもの、図2(b)は図2(a)の平面図におけるA−A断面図、図2(c)は図2(a)の平面図におけるB−B断面図、図2(d)は図2(c)におけるc部詳細図である。
【図3】本発明の実施の形態における、第1細線の一例を示す断面図である。
【図4】蓄冷材に使用可能な各種材質の比熱特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態における、芯材に蓄冷材を巻き付けた状態を示す図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における、蓄冷材をロール状としたときの拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態における、蓄冷材を使用するパルス管冷凍機を示す図であり、図7(a)はパルス管冷凍機の流体経路系を示す回路図、図7(b)はパルス管冷凍機のクライオスタット部の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態における、蓄冷材を芯材に巻きつかせる際の状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態における、蓄冷材を芯材に巻きつかせる際の状態及び巻き付かせた後の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における蓄冷材と従来技術における蓄冷材との、軸方向長さに対する温度変化の比較を示したグラフである。
【図11】本発明の実施の形態における、蓄冷材をロール状としたときの拡大図である。
【符号の説明】
1、1a、1b、1c、、、1n・・・第1細線
2、2a、2b、2c、、、2n・・・第2細線
3、3a、3b、3c、、、3n・・・第3細線
5・・・芯材
11・・・蓄冷器
13・・・パルス管
Claims (12)
- 略平行に配列された複数の第1細線と、前記第1細線が配列された平面内で前記第1細線に対して略垂直に配列されるとともに相隣接する前記第1細線間で交差する複数の第2細線と、前記第2細線が交差する交差部で該第2細線のそれぞれを互いに非接触状態で固定する第3細線によりマット状に形成された蓄冷材。
- 請求項1において、
前記第3細線は、化学繊維、絹糸、綿糸、接着剤のうちの一種又は複数で構成されることを特徴とする蓄冷材。 - 請求項1又は2において、
前記第2細線は、銅、鉛、銅合金、ステンレス、ニッケル合金のうちの一種又は複数で構成されることを特徴とする蓄冷材。 - 請求項1又は2において、
前記第2細線は、鉛、鉛合金、ネオジム、磁気比熱の大きな材料を微粉体化して芯材に結合させて構成されることを特徴とする蓄冷材。 - 請求項1又は2において、
前記第2細線は、使用温度領域でそれぞれ容積比熱の大きな材質の異なる細線で形成されることを特徴とする蓄冷材。 - 請求項1〜5のいずれか1項において、
前記第1細線は前記第2細線と比較して熱伝導度が極度に低い材質で形成されていることを特徴とする蓄冷材。 - 請求項1〜6のいずれか1項において、
前記第1細線は、複数本の極細線を束ねて形成されていることを特徴とする蓄冷材。 - 低温端及び高温端を備えた蓄冷器において、
請求項1〜7に記載の蓄冷材を前記第1細線が軸方向に配列されるように巻き上げてロール状とし、該ロール状とされた蓄冷材の軸方向の一端部を前記蓄冷器の低温端に、軸方向の他端部を前記蓄冷器の高温端に配置されるように挿入してなる蓄冷器。 - 請求項8において、
前記蓄冷器は芯材を備え、前記芯材の周りに前記蓄冷材が巻き付けられてロール状とされていることを特徴とする蓄冷器。 - 請求項9において、
前記芯材は周方向に複数個に分割されていることを特徴とする蓄冷器。 - 請求項8〜10に記載の蓄冷器を備えた蓄冷型冷凍機。
- 請求項11において、
前記蓄冷型冷凍機は、前記蓄冷器と同一軸中心をもつパルス管とを一体化したパルス管冷凍機であることを特徴とする蓄冷型冷凍機。
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-
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- 1998-06-19 JP JP17314498A patent/JP3814418B2/ja not_active Expired - Lifetime
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