JP3813257B2 - プレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、プレス機械におけるスライド調節ネジの給油方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プレス機械におけるスライド調節ネジへの給油手段としては、手指しによる給油と自動給油による2つの給油手段が採用されている。
【0003】
手指しによる給油手段としては、図10を参照するに、プレス機械101は、フレーム103にブッシュ105を介してクランクシャフト107が回転自在に支承されている。このクランクシャフト107にコネクティングロッドメタル109を介してコネクティングロッド111が係合し、コネクティングロッド111は上下移動自在となり、このコネクティングロッド111にスライド調節ネジ113が螺合している。そして、スライド調節ネジ113に形成した球面部115に球面軸受117,119を介してスライド121が設けられている。
【0004】
前記スライド調節ネジ113への給油手段としては、コネクティングロッド111にオイルカップ123を設けて図10の図中に2点鎖線で囲んだ×部へ潤滑油を供給している。
【0005】
自動給油による給油手段としては、図11および図12を参照するに、図11には給油系統を示していてオイルタンク125を上にオイルポンプ127が設けられ、このオイルポンプ127の吐出側管路129に分配器131が設けられれ、分配器131より各給油部へ潤滑油が供給される。より詳細には、給油部としては、前記クランクシャフト107のブッシュ105、各ギブ133、前記コネクティングロッドメタル109等へ給油されると共に、スライド調節ネジ113に給油される。
【0006】
前記スライド調節ネジ113への給油は、図12に示されているごとく、前述した手指しによる給油手段に設けたオイルカップ123の位置に管接手135を接続し、この管接手135にフレキシブルホース137が連結されて自動給油が行なわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のプレス機械におけるスライド調節ネジ113への手指しによる給油手段では、スライド調節ネジ113への給油を怠るとスライド調節ネジ113が焼付き、スライド調節ができなくなるため、プレス機械101として重要な給油箇所の一つである。しかし、定期的に給油しなければならず面倒であり、機種が大きくなるとオイルカップ123の位置が高くなり、給油に時間がかかると共に危険を伴なうという問題があった。
【0008】
また、自動給油による給油手段では、給油箇所が1ケ所増加するたびコストアップとなり、揺動連動をするコネクティングロッド111への配管のためフレキシブルホース137の耐久性に問題がある。更に、プレス機械101の正面にフレキシブルホース137が見えるため見苦しいという問題があった。
【0009】
この発明の目的は、コネクティングロッドメタルへの給油を利用してスライド調節ネジの潤滑を行ない、作業性の向上とコストの低減を図ったプレス機械におけるスライド調節ネジの給油方法およびその装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、フレームに回転自在に支承されているクランクシャフトと、コネクティングロッドメタルを介して前記クランクシャフトに装着され、前記クランクから下側に延伸し、前記クランクシャフトの回転によって上下方向に移動し、下部に下方向に開口した雌ねじ部を備えたコネクティングロッドと、上側に雄ねじ部を備え、この雄ねじ部が前記コネクティングロッドの雌ねじ部に螺合しているスライド調整ネジと、前記コネクティングロッドの雌ねじ部の底部と前記スライド調整ネジの雄ねじ部の先端部との間に形成さている油室と、前記コネクティングロッドメタルへ供給された潤滑油のうちの余った潤滑油を溜めるために、前記コネクティングロッドメタルが設けられている前記コネクティングロッドの部位に設けられた油溜り部と、前記油溜まり部と前記油室とを互いにつなぐために、前記コネクティングロッドの内部に設けられた流入穴と、前記油室と前記コネクティングロッドの外部とを互いにつなぐために、前記油室の下部近傍で前記コネクティングロッドの内部に設けられた排出穴とを有するプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、プレス機械におけるクランクシャフトに係合したコネクティングロッドメタルを備えたコネクティングロッドを上下移動自在に設け、前記コネクティングロッドメタルへ給油した潤滑油を溜める油溜り部と、この油溜り部に連通した流入穴と、この流入穴に連通した油室を前記コネクティングロッドの内部に設け、前記コネクティングロッドに螺合したスライド調節ネジを潤滑した油を排出する排出穴を前記油室の下部近傍のコネクティングロッド内部に設けてなるプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置である。
【0012】
したがって、請求項1,2によるプレス機械におけるスライド調節ネジの給油方法およびその装置とすることにより、スライド調節ネジへの給油配管をすることなく、コネクティングロッドメタルへの給油を利用してスライド調節ネジへの潤滑が可能となる。而して、作業性の向上とコストの低減を図ることができる。
【0013】
更に、請求項3によるこの発明のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置は、請求項2のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置において、前記油溜り部は、コネクティングロッドに堰を設けると共にコネクティングロッドメタルの下側外周面に油通路を設けて構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
したがって、コネクティングロッドメタルへ給油された潤滑油は堰により溜められ、充分な給油量が保持されるものである。
【0015】
なお、更に、請求項4によるこの発明のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置は、請求項2のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置において、前記油溜り部は、コネクティングロッドとクランクシャフトとの間にオイルシールを装着すると共にコネクティングロッドメタルの下側外周面に油通路を設けて構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
したがって、コネクティングロッドメタルへ給油された潤滑油は外部へあふれて流出することがないので充分な供給量が確保できるものである。
【0017】
なお更に、請求項5によるこの発明のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置は、請求項2のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置において、前記油溜り部は、コネクティングロッドメタルの内周面側にリング状の溝を形成し、前記溝と前記流入穴とを連通して構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項6によるこの発明のプレス回におけるスライド調節ネジの給油装置は、請求項2のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置において、前記油溜り部は、コネクティングロッドメタルの下部に段付穴あるいは貫通穴を形成し、前記段付穴あるいは貫通穴と前記流入穴とを連通して構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
したがって、上述した請求項5,6とすることにより、充分な油溜り部を形成することにより潤滑油の量を保持することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態の例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
まず、理解を容易とするためプレス機械の全体的構成について概略的に説明する。
【0022】
図9を参照するに、プレス機械1のフレーム3の上部には、スライドガイド5A,5Bに沿って上下動するスライド7が設けられている。このスライド7とクランクシャフト9との間にはコネクティングロッド11が連結され、前記クランクシャフト9の一端は歯車構成13を介して図示省略の駆動装置に連動連結されている。
【0023】
前記スライド7の下面には上型(図示せず)を備えた上部サブプレート15が着脱自在に密着され、また、前記フレーム3の下部にはベッド17が一体的に取付けられており、このベッド17上には、下型(図示せず)を備えた下部サブプレート19を着脱可能に装着するボルスタ21が載置されている。
【0024】
上記構成により、駆動装置を駆動せしめ歯車機構13をクランクシャフト9を回転せしめる。
クランクシャフト9が回転することにより、クランクシャフト9に係合したコネクティングロッド11が上下方向に移動され、コネクティングロッド11に連結されたスライド7が上下動して、このスライド7に装着した上部サブプレート15に備えた上型と、下部サブプレート19に備えた下型との協働によりワークに所望の加工が施される。
【0025】
次に、この発明の実施の形態の例としての主要部であるスライド調節ネジの給油手段について詳細説明する。
【0026】
図1,図2および図3を参照するに、プレス機械1を構成するフレーム3にブッシュ23を介してクランクシャフト9が回転自在に支承されていて、このクランクシャフト9にコネクティングロッド11とコネクティングロッドキャップ11Aとが一体的となり、コネクティングロッドメタル25を介して装着されている。
【0027】
前記コネクティングロッドメタル25へ給油する手段としては、図3に示されているごとく、図示を省略したが潤滑油給油装置よりフレキシブルホース27を介して供給路29を通ってコネクティングロッドメタル25とクランクシャフト9との摺接面へ潤滑油は供給される。
【0028】
前記コネクティングロッド11の下部にはネジ部31が形成され、このネジ部31にスライド調節ネジ33に形成したネジ部35が螺合されている。そして、前記コネクティングロッド11に形成したネジ部31の上方には油室37が形成されていて、この油室37へ潤滑油が流入する流入穴39と、油室37内の潤滑油を排出するため、油室37の下部近傍に排出穴41が設けられている。なお、前記流入穴39は前記コネクティングロッドメタル25の下側外周面に設けた油通路43と連通している。なお更に、コネクティングロッドメタル25の両側には油溜り部45を形成するため堰47がコネクティングロッド11とコネクティングロッドキャップ11Aに設けられている。前記スライド調節ネジ33の下部は図示を省略したがスライド7に連結されている。
【0029】
上記構成により、スライド調節ネジ33に形成したネジ部35へ潤滑油を供給する潤滑油経路として、図2の図中に矢印で示されているごとく、コネクティングロッドメタル25へ給油された潤滑油は、コネクティングロッドメタル25の内周面を潤滑し、余った潤滑油は両側より堰47にて形成された油溜り部45に溜められる。
【0030】
油溜り部45に溜った潤滑油は油通路43を通り流入穴39よ油室37内へ流入し、油室37内へ流入した潤滑油はスライド調節ネジ33に形成したネジ部35を潤滑し、一定量給油され余った潤滑油は排出穴41より機外へ排出される。
【0031】
したがって、スライド調節ネジ33への供給配管をすることなく、コネクティングロッドメタル25への給油を利用してスライド調節ネジ33の潤滑が可能となり、作業性の向上とコストの低減を図ることができる。
【0032】
図4には、前記油溜り部45を構成する機構の他の実施の形態の例を示している。すなわち、油溜り部45は、コネクティングロッド11およびコネクティングロッドキャップ11Aと、クランクシャフト9との間にオイルシール49を装着して構成したものである。
【0033】
したがって、コネクティングロッドメタル25へ給油された潤滑油はオイルシール49により外部へあふれ流出することがないので、充分な供給量が確保できるものである。
【0034】
また、図5には前記油溜り部45を構成する他の実施の形態の例を示している。すなわち、油溜り部45は、コネクティングロッドメタル25の内周面側にリング状の溝51を形成し、前記油通路43は設けないで、溝51と前記流入穴39とを連通して構成した。
【0035】
したがって、リング状の溝51を設けたことにより、充分な油溜り部45ができて潤滑油の量を保持することがきる。
【0036】
更に、図6に前記は油溜り部45を構成する他の実施の形態の例を示している。すなわち、油溜り部45は、コネクティングロッドメタル25の下部に段付穴53を形成し、前記油通路43を設けないで、段付穴53と前記流入穴39とを連通して構成した。
【0037】
なお更に、図7には前記油溜り部45を構成する他の実施の形態の例を示している。すなわち、油溜り部45は、コネクティングロッドメタル25の下部に貫通穴55を形成し、前記油通路43を設けないで、貫通穴55と前記流入穴39とを連通して構成した。
【0038】
なお更に、図8には前記油溜り部45を構成するロッドメタル25の下部に大径の貫通穴57を形成し、前記油通路43を設けないで、貫通穴57と前記流入穴39とを連通して構成した。
【0039】
したがって、図6,図7,図8に示された、段付穴53,貫通穴55,大径の貫通穴57を形成し油溜り部45としたことにより、充分な潤滑油の量を保持することができる。
【0040】
なお、この発明は前述た発明の実施の形態の例に限定されることなく、適宜な変更を行なうことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【0041】
【発明の効果】
以上のごとき実施の形態の説明より理解されるように、請求項1,2によるこの発明によれば、スライド調節ネジへの給油配管をすることなく、コネクティングロッドメタルへの給油を利用して油溜め部へ潤滑油を溜め、この潤滑油をスライド調節ネジへ供給する。而して、作業性の向上とコストの低減を図ることができる。
【0042】
また、請求項3によるこの発明によれば、油溜り部は、コネクティングロッドに設けた堰にて潤滑油は溜められるので、充分な供給量が保持することができる。
【0043】
更に、請求項4によるこの発明によれば、コネクティングロッドメタルへ給油された潤滑油はオイルシールにより外部へあふれて流出することがないので、充分な供給量が確保できる。
【0044】
なお更に、請求項5,6によるこの発明によれば、油溜り部としてコネクティングロッドメタルの下部に段付穴あるいは貫通穴を形成したので、充分な潤滑油の量を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の主要部を示し、図9におけるI−I線に沿った拡大断面図である。
【図2】図1における潤滑油の流れを示す作用説明図である。
【図3】コネクティングロッドメタルへの給油手段を示す説明図である。
【図4】油溜り部の他の実施の形態の例を示す断面説明図である。
【図5】油溜り部の他の実施の形態の例を示す断面説明図である。
【図6】油溜り部の他の実施の形態の例を示す断面説明図である。
【図7】油溜り部の他の実施の形態の例を示す断面説明図である。
【図8】油溜り部の他の実施の形態の例を示す断面説明図である。
【図9】この発明を実施する一実施の形態の例であるプレス機械の正面図である。
【図10】従来例を示し、スライド調節ネジへの給油手段として、手指しによる給油手段を示した断面説明図である。
【図11】従来例を示し、スライド調節ネジへの給油手段として、自動給油により潤滑油系統の説明図である。
【図12】従来例を示し、スライド調節ネジへの給油手段として、自動給油手段を示した正面説明図である。
【符号の説明】
1 プレス機械
9 クランクシャフト
11 コネクティングロッド
25 コネクティングロッドメタル
33 スライド調節ネジ
35 ネジ部
37 油室
39 流入穴
41 排出穴
43 油通路
45 油溜り部
47,47A 堰
49 オイルシール
51 溝
53 段付穴
55,57 貫通穴

Claims (6)

  1. フレームに回転自在に支承されているクランクシャフトと;
    コネクティングロッドメタルを介して前記クランクシャフトに装着され、前記クランクから下側に延伸し、前記クランクシャフトの回転によって上下方向に移動し、下部に下方向に開口した雌ねじ部を備えたコネクティングロッドと;
    上側に雄ねじ部を備え、この雄ねじ部が前記コネクティングロッドの雌ねじ部に螺合しているスライド調整ネジと;
    前記コネクティングロッドの雌ねじ部の底部と前記スライド調整ネジの雄ねじ部の先端部との間に形成さている油室と;
    前記コネクティングロッドメタルへ供給された潤滑油のうちの余った潤滑油を溜めるために、前記コネクティングロッドメタルが設けられている前記コネクティングロッドの部位に設けられた油溜り部と;
    前記油溜まり部と前記油室とを互いにつなぐために、前記コネクティングロッドの内部に設けられた流入穴と;
    前記油室と前記コネクティングロッドの外部とを互いにつなぐために、前記油室の下部近傍で前記コネクティングロッドの内部に設けられた排出穴と;
    を有することを特徴とするプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置。
  2. プレス機械におけるクランクシャフトに係合したコネクティングロッドメタルを備えたコネクティングロッドを上下移動自在に設け、前記コネクティングロッドメタルへ給油した潤滑油を溜める油溜り部と、この油溜り部に連通した流入穴と、この流入穴に連通した油室を前記コネクティングロッドの内部に設け、前記コネクティングロッドに螺合したスライド調節ネジを潤滑した油を排出する排出穴を前記油室の下部近傍のコネクティングロッド内部に設けてなることを特徴とするプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置。
  3. 前記油溜り部は、コネクティングロッドに堰を設けると共にコネクティングロッドメタルの下側外周面に油通路を設けて構成されていることを特徴とする請求項2記載のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置。
  4. 前記油溜り部は、コネクティングロッドとクランクシャフトとの間にオイルシールを装着すると共にコネクティングロッドメタルの下側外周面に油通路を設けて構成されていることを特徴とする請求項2記載のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置。
  5. 前記油溜め部は、コネクティングロッドメタルの内周面側にリング状の溝を形成し、前記溝と前記流入穴とを連通して構成されていることを特徴とする請求項2記載のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置。
  6. 前記油溜り部は、コネクティングロッドメタルの下部に段付穴あるいは貫通穴を形成し、前記段付穴あるいは貫通穴と前記流入穴とを連通して構成されていることを特徴とする請求項2記載のプレス機械におけるスライド調節ネジの給油装置。
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