JP3812731B2 - 工作機械のスピンドルヘッド落下防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、モータの駆動力を巻掛伝動装置を介して送りねじ機構に伝達し、送りねじ機構によってスピンドルヘッドをコラムに昇降可能に案内支持した工作機械のスピンドルヘッド落下防止装置に関し、特にバランスシリンダによりスピンドルヘッドの重量バランスをとるバランサーを備えた工作機械のスピンドルヘッド落下防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
工作機械のスピンドルヘッドには、送りねじ機構のナットが設けられており、モータにより送りねじ機構の送りねじ軸を回転し、送りねじ軸に螺合されたナットの移動に伴ってスピンドルヘッドがコラムに対して昇降可能に案内支持されている。送りねじ機構は、一般に摩擦が小さく効率の高いボールネジが用いられており、その送りねじ軸にモータの駆動力を伝達する動力伝達手段として、モータ側に設けられた駆動プーリと送りねじ軸側に設けられた従動プーリ間にタイミングベルト(巻掛部材)を巻き掛けた巻掛伝動装置を用いたものがある。そして、これら送りねじ機構や動力伝達手段やモータに加わる負荷を小さくするため、スピンドルヘッドには、そのスピンドルヘッドの重量を軽減するために、圧流体の給排によってスピンドルヘッドを上方へ付勢する力を付与するバランスシリンダを備えたバランサーが設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のものでは、モータや送りねじ機構への負荷を低減するためにバランサーによりスピンドルヘッドの重量の一部を支えているが、スピンドルヘッドの全重量はこのバランサーとモータに接続された送りねじ機構で支持しているので、タイミングベルトが切断すると、モータと送りねじ機構との連繋がなくなり、送りねじ軸はフリー回転可能となり、バランサーではスピンドルヘッドの重量の一部を支えているにすぎないから、ねじのリードが大きく摩擦が極めて小さい送りねじ軸は、バランサーで支えられた分だけ軽減されたスピンドルヘッドの重量によりフリー回転し、その結果、スピンドルヘッドが落下する問題があった。このスピンドルヘッドの落下により、スピンドルと治具とが干渉し、スピンドル及び治具が破損する恐れがあった。
本願の課題は、巻掛伝動装置の巻掛部材の切断時に、スピンドルヘッドの落下を防止する工作機械のスピンドルヘッド落下防止装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題解決のため本願発明では、モータに設けられた駆動プーリと送りねじ機構の送りねじ軸に設けられた従動プーリ間に巻掛部材を巻き掛けて巻掛伝動装置を構成し、モータにより巻掛伝動装置を介して送りねじ機構によりスピンドルヘッドをコラムに対して昇降可能に案内支持した工作機械において、巻掛部材の切断を検知する切断検知手段を備えると共に、スピンドルヘッドを上方へ付勢するバランスシリンダと、圧流体を供給する圧流体供給源と、バランスシリンダの給排ポートと圧流体供給源とを接続する給排回路とから成るバランサーを備え、給排回路にバランスシリンダの給排ポートを開閉可能なバルブを介在させ、前記切断検知手段が巻掛部材の切断を検知すると前記バルブを遮断状態とする制御手段を備え、バランスシリンダの給排ポートを閉じることでスピンドルヘッドの落下を防止することを特徴とする(請求項1)。
【0005】
また、スピンドルヘッドの落下を防止するように構成したことにより、落下によるスピンドルと治具との干渉が防止され、スピンドル及び治具の破損の恐れが無くなる。また、工作機械に設けられたバランサーを利用して、スピンドルヘッドの落下を防止するので、専用の落下防止手段を設ける必要が無く好ましい。また、バルブを給排回路に介在さて、巻掛部材切断時にバランスシリンダからの圧流体の排出を防止し、バランスシリンダのシリンダロッドの移動を阻止するようにしたので、構造が簡単で安価であり、設置スペースが小さくて好適である。
【0006】
また、本願発明は、バランスシリンダの給排ポートと圧流体供給源としての工場エア源とを給排回路によって接続し、その給排回路にバランスシリンダの給排ポートを開閉可能なバルブとしてのソレノイドバルブを介在させ、切断検知手段が巻掛部材の切断を検知するとソレノイドバルブを連通状態から遮断状態に切換えるようにしたことを特徴とする(請求項2)。
【0007】
【発明の実施の形態】
本願発明の実施の形態について図1に基づいて説明する。1は工作機械のベッド上に移動可能に設けられたコラムであり、コラム1にはスピンドルヘッド2が図示しないリニアガイドを介して昇降(Y軸移動)可能に案内支持されている。コラム1には送りねじ機構であるボールネジ3の送りネジ軸4が垂設されている。その送りネジ軸4は、軸受5によりコラム1に回転可能に支持されると共に、巻掛伝動装置6を介してコラム1に設けたサーボモータ7に連結されている。巻掛伝動装置6は、モータ7の主軸に設けられた駆動プーリ8と、送りネジ軸4の一端に設けられた従動プーリ9間に巻掛部材としてのタイミングベルト10を巻き掛けて構成されている。また、ボールネジ3の送りネジ軸4に螺合するナット11は、スピンドルヘッド2に結合されており、モータ7により巻掛伝動装置6を介して送りネジ軸4が回転されることでスピンドルヘッド2を昇降するようになっている。
【0008】
また、工作機械には、スピンドルヘッド2をその重量に略相当する力(スピンドルヘッドの重量よりは小さい力)で上方へ付勢してスピンドルヘッド2の重量を軽減し、ボールネジ3やモータ7に加わる負荷を軽減するためのバランサー12が装備されている。バランサー12は、スピンドルヘッド2を上方へ付勢するバランスシリンダ13と、バランスシリンダ13を制御する圧空制御装置14とから構成されている。バランスシリンダ13は、コラム1に立設されている。そのバランスシリンダ13のシリンダロッド15の先端には、支持チェーン16の一端が連結され、その支持チェーン16の他端にはスピンドルヘッド2が連結されており、バランスシリンダ13は、支持チェーン16を介してスピンドルヘッド2を上方へ付勢している。
【0009】
空圧制御装置14は、圧流体供給源17と給排回路18とから構成されている。給排回路18は、給気回路19及び排気回路20とを備えている。給気回路19は、圧流体供給源17としての工場エア源とバランスシリンダ13の給排ポートとを接続しており、フィルタ21と減圧弁22と逆止弁23とソレノイドバルブ24を介して、バランスシリンダ13の先端側のシリンダ室25に工場エア源17からの圧縮空気を供給するようになっている。減圧弁22ではバランスシリンダ13への圧縮空気の給気圧が設定される。ソレノイドバルブ24は、バランスシリンダ13の給排ポートを開閉可能となっている。また、排気回路20は、ソレノイドバルブ24と逆止弁23間から分岐されて工場エア源17に接続され、バランスシリンダ13のシリンダ室25からの排気をソレノイドバルブ24と逆止弁26を介して工場エア源17に戻すように構成されている。
【0010】
前記巻掛伝動装置6のタイミングベルト10の近傍には、タイミングベルト10の切断を検知する切断検知手段27が設けられている。切断検知手段27は、近接スイッチであり、工作機械の制御手段28に接続されている。その制御手段28と前記ソレノイドバルブ24とで、バランスシリンダ13のシリンダロッド15の移動を阻止する移動阻止手段29を構成しており、制御手段28は、通常状態ではソレノイドを励磁してソレノイドバルブ24を連通状態とし、切断検知手段27がタイミングベルト10の切断を検知するとソレノイドバルブ24のソレノイドを消磁し、ソレノイドバルブ24を連通状態から遮断状態に切換え、バランスシリンダ13からの排気を不能としてシリンダロッド15の移動を阻止する。
【0011】
上記バランサー12と移動阻止手段29は、スピンドルヘッド落下防止装置を構成している。タイミングベルト10が切断していない通常状態においては、制御手段28はソレノイドバルブ24のソレノイドを励磁状態としている。このとき、バランサー12は、スピンドルヘッド2の上昇時には、バランスシリンダ13のシリンダ室25の圧力が減圧弁22の設定圧よりも低くなるため、圧縮空気が工場エア源17から給気回路19を介してバランスシリンダ13に流れ、一方、スピンドルヘッド2の下降時には、バランスシリンダ13のシリンダ室25の圧力が減圧弁22の設定圧よりも高くなるため、バランスシリンダ13からの排気が排気回路20を介して工場エア源17に流れ、スピンドルヘッド2の重量バランスを保持している。
【0012】
切断検知手段27によってタイミングベルト10の切断が検知されると、制御手段28により、ソレノイドバルブ24のソレノイドが消磁されてソレノイドバルブ24は遮断状態となり、バランスシリンダ13の給排ポートが閉鎖される。このタイミングベルト10の切断時には、スピンドルヘッド2が自由落下しようとするが、バランスシリンダ13の給排ポートが閉鎖されているためにバランスシリンダ13のシリンダ室25から排気が不能となる。これによって、シリンダロッド15の上方への移動が阻止されることとなって、スピンドルヘッド2の落下が妨げられる。よって、スピンドルヘッド2の落下によるスピンドルと治具との干渉が防止され、スピンドル及び治具の破損が防止される。
【0013】
尚、前記実施の形態のものでは、スピンドルヘッド2とバランスシリンダ13のシリンダロッド15とを支持チェーン16を介して連結し、先端側(上側)のシリンダ室25に給排回路18を接続して、シリンダロッド15を引き込むようにしてスピンドルヘッド2を上方へ付勢するようにしたが、図2に示すように、バランスシリンダ13のシリンダロッド15を下方から支持するようにスピンドルヘッド2に結合し、バランスシリンダ13の後端側(下側)のシリンダ室30に給排回路18を接続し、シリンダロッド15を突出するようにしてスピンドルヘッド2を上方へ付勢するようにしても良い。
【0014】
【発明の効果】
以上のように本願発明によれば、巻掛部材の切断を検知する切断検知手段を備えると共に、スピンドルヘッドを上方へ付勢するバランスシリンダと、圧流体を供給する圧流体供給源と、バランスシリンダの給排ポートと圧流体供給源とを接続する給排回路とから成るバランサーを備え、給排回路にバランスシリンダの給排ポートを開閉可能なバルブを介在させ、前記切断検知手段が巻掛部材の切断を検知すると前記バルブを遮断状態とする制御手段を備え、切断検知手段が巻掛部材の切断を検知するとバランスシリンダの給排ポートを遮断するようにしたので、スピンドルヘッドの落下が防止されて、スピンドルと治具とが干渉せず、スピンドル及び治具の破損を防止できる。また、バランサーを利用して、スピンドルヘッドの落下を防止するので、専用の落下防止手段を設ける必要が無い。更に、圧流体供給源とバランサーのバランスシリンダ間を接続する給排回路に介在したバランスシリンダの給排ポートを開閉可能なバルブと、バルブを制御する制御手段とを備え、バランスシリンダのシリンダロッドの移動を阻止することでスピンドルヘッドの落下を防止するように構成したので、構造が簡単で安価であり、広い設置スペースを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るスピンドルヘッド落下防止装置の構成説明図である。
【図2】他の実施の形態である。
【符号の説明】
1 コラム
2 スピンドルヘッド
3 送りねじ機構
4 送りねじ軸
6 巻掛伝動装置
7 モータ
8 駆動プーリ
9 従動プーリ
10 巻掛部材
12 バランサー
13 バランスシリンダ
15 シリンダロッド
17 圧流体供給源
18 給排回路
24 バルブ
27 切断検知手段
28 制御手段
29 移動阻止手段
Claims (2)
- モータに設けられた駆動プーリと送りねじ機構の送りねじ軸に設けられた従動プーリ間に巻掛部材を巻き掛けて巻掛伝動装置を構成し、モータにより巻掛伝動装置を介して送りねじ機構によりスピンドルヘッドをコラムに対して昇降可能に案内支持した工作機械において、巻掛部材の切断を検知する切断検知手段を備えると共に、スピンドルヘッドを上方へ付勢するバランスシリンダと、圧流体を供給する圧流体供給源と、バランスシリンダの給排ポートと圧流体供給源とを接続する給排回路とから成るバランサーを備え、給排回路にバランスシリンダの給排ポートを開閉可能なバルブを介在させ、前記切断検知手段が巻掛部材の切断を検知すると前記バルブを遮断状態とする制御手段を備え、バランスシリンダの給排ポートを閉じることでスピンドルヘッドの落下を防止することを特徴とする工作機械のスピンドルヘッド落下防止装置。
- バランスシリンダの給排ポートと圧流体供給源としての工場エア源とを給排回路によって接続し、その給排回路にバランスシリンダの給排ポートを開閉可能なバルブとしてのソレノイドバルブを介在させ、切断検知手段が巻掛部材の切断を検知するとソレノイドバルブを連通状態から遮断状態に切換えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の工作機械のスピンドルヘッド落下防止装置。
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