JP3811662B2 - 溶接方法及びその方法により溶接される部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の部品を溶接するための溶接方法及びその溶接方法を実行するべく加工された部品に係る。特に、本発明は、溶接作業完了後の後加工を必要とすることなしに完成品の形状を適切に得るための改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば特開2001−224202号公報に開示されているようなトラクタの耕耘装置にあっては、各種部品がボルト止めにより一体化された構成となっている。例えば、トラクタのPTO軸からの入力を受けるギアを内装した鋳造製のギヤケースと、このギアから動力を受ける伝動軸を内装したビームとがボルト止めされている。また、このビームとチェーンケースもボルト止めされている。これらボルト止め箇所の接続作業としては、各部品のボルト止め箇所にボルト孔を形成しておき、これら部品のボルト孔に亘ってボルトを挿通した後、ボルト締めして一体化させている。
【0003】
このため、組立工数を削減するには限界があり作業の煩雑化を招いていた。また、ボルト孔を形成するためのフランジ部を設けておくなどの必要があり、各部品の形状の複雑化を招き、完成品の重量の増大を招くばかりでなく、外観を悪化させる一要因となっていた。また、特に上述したビームやチェーンケースにあっては、それ自体が複数の板金パネル材を溶接して成る部品であるため、それらのボルト止めされる箇所を平坦面とするなどの機械加工が必要となり、その加工が煩雑であるばかりでなく、加工設備も大掛かりなものとなってしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の不具合を解消するために、これまでボルト止めにより接続していた箇所を溶接によって接合することが考えられる。これにより、組立工数を削減でき、各部品の形状を簡素化でき、更には、完成品の重量の軽減や良好な外観の確保を実現することができる。
【0005】
しかしながら、このように溶接によって複数の部品を互いに接合する場合、その熱による溶接歪みが発生し、完成品の形状を適切に得ることができなくなってしまう可能性が高い。このため、溶接作業の完了後には上記溶接歪みを解消するための後加工を行う必要が生じ、新たな加工作業が必要となって作業の煩雑化を招いてしまうことになる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶接作業の完了後の後加工を必要とすることなしに所定形状の完成品を得ることができる溶接方法及びその方法により溶接される部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、溶接作業時に発生する溶接歪みを予め考慮して、溶接前における部品の形状を完成品の形状とは異なるものに設定しておき、溶接完了後にはその部品が所望の形状となるようにしている。
【0010】
−解決手段−
具体的には、複数部品それぞれの所定の溶接箇所同士を互いに溶接するための溶接方法を前提とする。この溶接方法に対し、互いに溶接される複数部品のうちの一部は略円筒形状の第1部品である一方、他は第1部品の外周縁が溶接される開口を有する第2部品である。そして、上記第1部品の外周縁を第2部品の開口縁に溶接する際における第2部品の溶接面側から反溶接面側に向かって内径寸法が徐々に大きくなる形状に第1部品を予め形成しておくことで、溶接作業時に上記第1部品に生じる溶接歪みに起因する変形の方向に対して逆向き方向に予め歪みを付与しておき、溶接完了後に第1部品が所定形状となるようにしている。これにより、溶接時の熱の影響により第1部品は上記溶接面側では内径寸法が大きく、逆に反溶接面側では内径寸法が小さくなっていく。このため、溶接作業完了時には第1部品の内径寸法が全体に亘って略均一になる。従って、溶接後の後加工を必要とすることなしに、この第1部品内への他部品の挿入が可能になる。例えば、上記第1部品をベアリング支持用のファイナルケースとした場合には、溶接作業完了時にファイナルケースの内径寸法が均一になり、ベアリングの挿入を容易に行うことができる。
このように、本解決手段では、複数部品を接合する手法としてボルト締結方式を溶接方式に変更した場合であっても、溶接後の後加工が必要なくなり、作業性の向上を図ることができる。また、複数部品の接合手法として溶接の利用範囲が拡大できるため、完成品重量の軽減、組立工数の削減、製品形状の簡素化を図ることもできる。
【0011】
また、他の手法として、互いに溶接される複数部品のうちの一部は略筒状の複数の筒状部品である一方、他は上記各筒状部品の外周縁がそれぞれ溶接される複数の開口を有するプレート部品である。そして、プレート部品における開口同士の間の領域がそれ以外の領域よりも膨出する方向にプレート部品を予め湾曲させておくことで、溶接作業時にこのプレート部品に生じる溶接歪みに起因する変形の方向に対して逆向き方向に予め歪みを付与しておく。更に、上記筒状部品の外縁をプレート部品の開口縁に溶接する際における溶接開始位置を、上記プレート部品における開口同士の間の領域に臨む箇所に設定することにより、溶接完了後に上記プレート部品が所定形状となるようにしている。これにより、溶接開始初期時の熱の影響によりプレート部品は開口同士の間の領域がそれ以外の領域よりも凹陥する方向に変形する。このため、溶接作業完了時にはプレート部品は所定の平坦形状となる。従って、溶接後の後加工を必要とすることなしに、このプレート部品の形状を所望のものにできる。また、各筒状部品の軸心同士の平行度と、これら軸心とプレート部品長手方向との直角度とが、後加工なしに良好に得られる。特に、各筒状部品を上記ファイナルケースとした場合には、それに支持される各ベアリングの軸心同士の平行度と、これら軸心とプレート部品長手方向との直角度とを、後加工なしに良好に得ることができる。
本解決手段によっても、複数部品を接合する手法としてボルト締結方式を溶接方式に変更した場合であっても、溶接後の後加工が必要なくなり、作業性の向上を図ることができる。また、複数部品の接合手法として溶接の利用範囲が拡大できるため、完成品重量の軽減、組立工数の削減、製品形状の簡素化を図ることもできる。
【0013】
また、上記各溶接方法により溶接される部品であって、溶接作業時に生じる溶接歪みに起因する変形方向に対して逆向き方向に予め歪みが付与されている部品も本発明の技術的思想の範疇である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態ではトラクタの耕耘装置の製造に本発明を適用した場合について説明する。
【0015】
−トラクタ及びその耕耘装置の概略構成−
本実施形態に係る溶接方法の説明の前に、トラクタ及びその耕耘装置の概略構成について説明する。
【0016】
図1はトラクタの側面図、図2はその平面図である。これら図に示すように、作業車両の後方にはインプルメントとしてのロータリ耕耘機100が接続されており、作業車両のエンジン105の出力の一部により、ロータリ耕耘機100が駆動されるようになっている。この作業車両は、前輪101及び後輪102を懸架する車両本体を備え、この車両本体の前部にボンネット106を配設し、このボンネット106の内部にはエンジン105が配置されている。ボンネット106の後方にはステアリングハンドル10が設けられ、上記ステアリングハンドル10の後方にはシート98が配設されている。また、シート98の側部には主変速レバーが突設されている。ステアリングハンドル10及びシート98は、キャビン97によって覆われている。
【0017】
エンジン105の後方にはミッションケース109が配設され、エンジン105からの動力を後輪102に伝達して駆動している。但し、操作によっては、前輪101にも同時に駆動力を伝達する四輪駆動とすることも可能である。
【0018】
また、エンジン105の駆動力はミッションケース109の後端から突出したPTO軸15に伝達されてこのPTO軸15を駆動し、作業車両の後端に接続した作業機(ロータリ耕耘機100)を駆動するように構成されている。
【0019】
ロータリ耕耘機100にはPTO軸15より駆動力が伝達され、このロータリ耕耘機100が駆動される。また、ロータリ耕耘機100は作業車両に接続装置20を介して接続され、作業車両に備えられた昇降装置によりロータリ耕耘機100の上下位置および左右の傾斜角度を調整可能に構成されている。
【0020】
次に、ロータリ耕耘機100の構成について説明する。図3はロータリ耕耘機100の平面図である。図4は図3におけるIV-IV線に沿った断面図である。これらの図に示すように、ロータリ耕耘機100のロータリ入力ギアケース5の内部には、左右中央部にPTO入力部が形成されていて、トラクタのPTO軸15にユニバーサルジョイントを介して連結される入力軸43がロータリ入力ギアケース5から前方に突出されている。ロータリ入力ギアケース5は左右に一対のロアリンクブラケット5b,5bを固設し、このロアリンクブラケット5b,5bから左右外方へメインビーム5a,5aが延設されている。図中左方向に延びるメインビーム5aの外端部には下方延出状に本発明でいう第2部品及びプレート部品としてのチェーンケース4を設けるとともに、図中右方向に延びるメインビーム5aの外端部にはサイドサポータ4aを設けている。また、チェーンケース4とサイドサポータ4aとの間に耕耘軸3及び爪軸6を横設し、耕耘爪駆動部を形成している。
【0021】
チェーンケース4を取り付けた側のメインビーム5a内には、チェーンケース4内のチェーン伝動装置(スプロケット46,46及びチェーン47により構成される)に動力を伝達するための伝動軸44が内設され、トラクタのPTO軸15の動力を入力軸43にて取り入れ、この伝動軸44及びチェーン伝動装置を介して、耕耘軸3を回転駆動するものとなっている。また、上記ロアリンクブラケット5b,5bの前端部には、ロータリ耕耘機100をトラクタの左右ロアリンクに連結するための左右一対のロアリンクヒッチピン5c,5cが突設されている。
【0022】
また、ロータリ入力ギアケース5の左右中央の上方はアッパアーム7を立設し、このアッパアーム7の前上部には、トラクタのトップリンクに連結するためのトップリンク取付部7cを形成している。そして、トラクタの接続装置20のトップリンクのヒッチをトップリンク取付部7cに係止するとともに、接続装置20のロアリンクのヒッチをロアリンクブラケット5c,5cに係止するものとしている。
【0023】
また、耕耘軸3に連結される爪軸6に突設される図示しない耕耘爪を覆うようにロータリカバー1を配設し、チェーンケース4とその反対側のサイドサポータ4aにおける耕耘軸3の軸受け部分に、ロータリカバー1を耕耘爪の駆動部に対して前後回動自在に枢支している。ロータリカバー1の後端にはリヤカバーヒンジ11を固設し、このリヤカバーヒンジ11によりリヤカバー2の前端を枢支するとともに、リヤカバー2の上端部に形成されるボス部2aへ、ロータリカバー1下端部に形成される連結ピン1aを回動自在に挿入して、両者を連結している。さらに、ロータリカバー1の前方にはフロントカバー12が設けられており、このフロントカバー12はチェーンケース4とサイドサポータ4aとにブラケット51,51を介して取り付けられている。
【0024】
リヤカバー2には、左右一対のハンガーステー31,31が固設されており、ロータリカバー1には左右一対のロアアーム18,18が固設されている。このロアアーム18とハンガーステー31との間にはハンガーロッド20が介装されており、ロアアーム18の先端部に横設されるホルダー軸19にハンガーロッド20が摺動自在に貫通するとともに、ハンガーステー31にハンガーロッド20の下端部が回動自在に支持されている。そして、リヤカバー2が回動すると、ハンガーロッド20の上部がホルダー軸19内を上下摺動する。
【0025】
上記ハンガーロッド20はリヤカバー2が回動すると上記ホルダー軸19内を摺動するが、このハンガーロッド20にはスプリングを巻装して、リヤカバー2が後上方へ回動した際に、スプリングによりリヤカバー2を下方側へ付勢可能に構成しており、リヤカバー2により圃場を加圧可能としている。
【0026】
また、アッパーアーム7の基端寄り部分にリテーナブラケット7aを左右方向に横設し、左右一側を外側に突出させており、このリテーナブラケット7aによりロータリカバー操作スクリュー9を回動自在に支持している。
【0027】
上記ロータリカバー操作スクリュー9はネジ杆(回動スクリュー)であって、先端に付設した操作ハンドル9cの回動操作によって伸縮するように構成している。ロータリカバー操作スクリュー9の基端は、ロータリカバー1上に設けたブラケット10に枢結され、ロータリカバー操作スクリュー9の伸縮量に応じてロータリカバー1が前後回動する構成としている。そして、耕深設定時には、このロータリカバー操作スクリュー9の伸縮操作にてロータリカバー1を前後回動し、その後部に配設したリヤカバー2の後端を圃場面に接する高さに合わせるのである。
【0028】
尚、本形態におけるロータリ入力ギアケース5は、入力軸支持ケース43Aとの接触面を大きく確保するための改良がなされている。つまり、このロータリ入力ギアケース5は、板厚寸法が約4.5mmであり、図4における断面に直交する断面では略直角に屈曲されていてこの屈曲部分の曲率半径は1mm程度に設定されている。つまり、屈曲部分の曲率半径は板厚寸法の約1/4程度に設定されている。これにより、入力軸支持ケース43Aとの接触面のうち平坦面である領域を比較的大きく確保することができ、入力軸支持ケース43Aとの接合強度を十分に得ることができるようになっている。尚、ロータリ入力ギアケース5の板厚寸法及び屈曲部分の曲率半径はこれに限らない。
【0029】
次に、チェーンケース4の上端部に支持される伝動軸44の軸受部分の構造について説明する。図4に示すように、チェーンケース4の上端部内側には本発明でいう第1部品としてのファイナルケース21Aが固設されており、このファイナルケース21Aによって伝動軸44がベアリング55を介して回転自在に支持されている。つまり、チェーンケース4の上端部に形成された開口41(図5参照)に対してファイナルケース21Aが溶接されており、このファイナルケース21Aの内部にベアリング55が装着され、このベアリング55によって伝動軸44の一端が支持されている。また、ファイナルケース21Aとメインビーム5aとの接続構造としては、メインビーム5aの先端に円盤状のフランジ部材51が溶接され、このフランジ部材51に形成されているボルト孔とファイナルケース21Aに形成されているボルト孔とに亘ってボルトBが挿入されてこれらが一体的に締結されている。
【0030】
次に、チェーンケース4及びサイドサポータ4aの下端部に支持される耕耘軸3の軸受部分の構造について説明する。図4に示すように、チェーンケース4の下端部内側にはファイナルケース21Bが固設されており、このファイナルケース21Bによって耕耘軸3がベアリング56を介して回転自在に支持されている。つまり、上記チェーンケース4の上端部の構成と同様に、チェーンケース4の下端部に形成された開口42(図5参照)に対してファイナルケース21Bが溶接されており、このファイナルケース21Bの内部にベアリング56が装着され、このベアリング56によって耕耘軸3の一端が支持されている。また、ファイナルケース21Bの内側端部には、耕耘軸3の軸受部に草等の異物が絡みつくのを防止するためのダストカバー22が外嵌されている。
【0031】
耕耘軸3の内側端部には外周方向に延設されるフランジ部3aが形成されており、このフランジ部3aと、爪軸6の外側端部に形成されるフランジ部6bとが接続されている。これにより、耕耘軸3と爪軸6とが一体的に回転可能とされている。爪軸6には図示しない複数の耕耘爪が放射状に取り付けられている。
【0032】
また、図示しないがサイドサポータ4a側の耕耘軸3の軸受部においても、同様に構成されている。即ち、サイドサポータ4aの下端部内側において耕耘軸3がベアリングを介して回転自在に支持されている。
【0033】
−溶接作業の説明−
次に、上述の如く構成されているロータリ耕耘機100の製作時における各部の溶接作業について説明する。以下の説明では、チェーンケース4に対する各ファイナルケース21A,21Bの溶接作業、サイドサポータ4aの作製作業について順に説明する。
【0034】
(ファイナルケース21A,21Bの溶接作業)
チェーンケース4に対する各ファイナルケース21A,21Bの溶接作業は、2枚の板金パネル材4A,4Bを溶接によりシェル構造とすることによりチェーンケース4を作製した後に行う。このチェーンケース4における上記各ファイナルケース21A,21Bの接合部分には、これらファイナルケース21A,21Bの外径寸法に略一致した内径寸法を有する開口41,42が2箇所に形成されている。
【0035】
そして、このチェーンケース4の特徴として、上記開口41,42同士の間の領域がそれ以外の領域よりも膨出する方向に僅かに湾曲して形成されている(本発明でいう逆向き方向の歪みを与えている)。つまり、開口41,42が形成されている側の面が凸状となるように全体が僅かに湾曲して形成されている。具体的には、図5(aはチェーンケース4の正面図、bはaのV−V線に沿った断面図)に示すように、チェーンケース4は、それぞれプレス加工されたアウタパネル4A及びインナパネル4Bの外縁フランジ部同士が溶接されて構成されており、その全体が図5(b)に仮想線の矢印で示す方向に僅かに湾曲して形成されている。このチェーンケース4の湾曲形状は、アウタパネル4A及びインナパネル4Bのプレス加工時にそれぞれが同一の曲率をもって湾曲成形されることによって得られる。
【0036】
一方、本形態においてチェーンケース4の各開口41,42に溶接されるファイナルケース21A,21Bは、チェーンケース4の溶接面側(図5(b)の上側)から反溶接面側(図5(b)の下側)に向かって内径寸法が徐々に大きくなる形状に予め形成されている。以下、各ファイナルケース21A,21Bの内径寸法について具体的に説明する。
【0037】
先ず、チェーンケース4の上端部内側に溶接されるファイナルケース21Aの内径寸法について説明する。図6は、このファイナルケース21Aの断面図である。この図では下側がチェーンケース4の内部に臨む側であり、上側がチェーンケース4の外部に臨む側(ロータリ入力ギアケース5側)である。このファイナルケース21Aにおけるベアリング55の挿入空間を構成する内面のうち、チェーンケース4の内部に臨む側の端縁の寸法A1は直径が88mmでその公差を+0.090〜+0.060に設定している。これに対し、チェーンケース4の外部に臨む側の端縁の寸法A2は直径が88mmでその公差を+0.060〜+0.030に設定している。つまり、チェーンケース4の内部に臨む側の端縁の寸法A1の方が外部に臨む側の端縁の寸法A2よりも大きくなるように各公差が設定されている。このため、このベアリング55の挿入空間を構成する内面には、チェーンケース4の溶接面側から反溶接面側に向かって(図6の上側から下側に向かって)内径寸法が徐々に大きくなるテーパ面形状に予め形成されている(本発明でいう逆向き方向の歪みを与えている)。
【0038】
次に、チェーンケース4の下端部内側に溶接されるファイナルケース21Bの内径寸法について説明する。図7は、このファイナルケース21Bの断面図である。この図においても下側がチェーンケース4の内部に臨む側であり、上側がチェーンケース4の外部に臨む側である。このファイナルケース21Bにおけるベアリング56の挿入空間を構成する内面のうち、チェーンケース4の内部に臨む側の端縁の寸法B1は直径が80mmでその公差を+0.10〜+0.07に設定している。これに対し、チェーンケース4の外部に臨む側の端縁の寸法B2は直径が80mmでその公差を+0.05〜+0.02に設定している。つまり、チェーンケース4の内部に臨む側の端縁の寸法B1の方が外部に臨む側の端縁の寸法B2よりも大きくなるように各公差が設定されている。このため、このベアリング56の挿入空間を構成する内面には、チェーンケース4の溶接面側から反溶接面側に向かって(図7の上側から下側に向かって)内径寸法が徐々に大きくなるテーパ面形状に予め形成されている。尚、各ファイナルケース21A,21Bの寸法はこれに限るものではない。
【0039】
以上のようにして、湾曲形成されたチェーンケース4の各開口41,42に対して、内面がテーパ面形状とされたファイナルケース21A,21Bがそれぞれ溶接される。この際、ファイナルケース21A,21Bの溶接開始箇所は、相手側のファイナルケース21B,21Aに近い位置(図5における点S1,S2)に設定され、この位置から図中時計回り方向または反時計回り方向に溶接が行われていく。尚、本形態にあっては、チェーンケース4の各開口41,42の縁部と、この縁部に対面するファイナルケース21A,21Bのフランジ部分との間に僅かな隙間(例えば0.3〜0.5mm)を存した状態で溶接が行われる。
【0040】
このような溶接作業を実行した場合、先ず、ファイナルケース21A,21Bの溶接開始箇所が、相手側のファイナルケース21B,21Aに近い位置S1,S2に設定されているため、熱の影響によりチェーンケース4に発生する溶接歪みは、開口41,42が形成されている側の面を凹状とする方向へ生じる(図5(b)に実線で示す矢印参照)。上述した如く、本形態では、チェーンケース4は、予め開口41,42が形成されている側の面が凸状となるように全体が僅かに湾曲して形成されているため、上記溶接歪みによってチェーンケース4は平坦形状となる方向へ変形する。
【0041】
一方、ファイナルケース21A,21Bそれぞれに発生する溶接歪みとしては、ファイナルケース21A,21Bを溶接箇所側(開口41,42との接触箇所側)へ引き込む方向への力が作用することになる。つまり、図6及び図7に示すように、この溶接箇所Oを中心として、矢印の如くファイナルケース21A,21Bにおけるチェーンケース4内部に位置する部分では内周側に、ファイナルケース21A,21Bにおけるチェーンケース4外部(ロータリ入力ギアケース5側)に位置する部分では外周側にそれぞれ回動する方向への変形が生じ、ファイナルケース21A,21Bの内径を溶接面側から反溶接面側に向かって徐々に小さくする方向へ溶接歪みが生じる。上述した如く、本形態では、各ファイナルケース21A,21Bにおけるベアリング挿入空間を構成する内面を、チェーンケース4の溶接面側から反溶接面側に向かって内径寸法が徐々に大きくなるテーパ面形状に予め形成している。このため、溶接作業が進むに従って、各ファイナルケース21A,21Bにおけるベアリング挿入空間を構成する内面の内径寸法が全体に亘って均一になる方向に変形することになる。
【0042】
このように、溶接歪みによって、チェーンケース4は平坦形状となる方向へ変形し、且つ各ファイナルケース21A,21Bは、そのベアリング挿入空間を構成する内面の内径寸法が全体に亘って均一になる方向に変形する。このため、溶接作業の完了時には、後加工を必要とすることなしに、チェーンケース4の形状を所望のものにでき、また、各ファイナルケース21A,21Bの軸心同士の平行度と、これら軸心とチェーンケース4長手方向との直角度とが、後加工なしに良好に得られる。このため、各ファイナルケース21A,21B内にベアリング55,56を装着した場合には各ベアリング55,56の軸心同士の平行度と、これら軸心とチェーンケース4との直角度とを、後加工なしに良好に得ることができる。
【0043】
(サイドサポータ4aの溶接作業)
次に、サイドサポータ4aの溶接作業について説明する。図8に示すように、サイドサポータ4aは、それぞれプレス加工されたアウタパネル45A及びインナパネル45Bの外縁フランジ部同士が溶接されて構成されている。
【0044】
詳しくは、インナパネル45Bはアウタパネル45Aよりも長さ寸法の短い板材で形成されている。そして、これらインナパネル45B及びアウタパネル45Aの上端縁部分である円弧部分が互いに溶接されると共に、各パネル45A,45Bの長手方向の2箇所及び幅方向の2箇所の合計4箇所I,II,III,IVにおいて互いに溶接されてシェル構造に構成されている。
【0045】
そして、本サイドサポータ4aは、上記4箇所の溶接箇所I,II,III,IVのうち各パネル45A,45Bの長手方向の2箇所の略中間位置(図8における位置α)において溶接面側から反溶接面側に向かって(図8(b)の上側から下側に向かって)予め屈曲(図8(b)に仮想線で示す矢印参照)されている。この屈曲角度としては例えば1.5°程度に設定されている。この屈曲角度は溶接位置やその他の溶接条件によって適切に設定される。
【0046】
このサイドサポータ4aの溶接作業にあっては、先ず、各パネル45A,45Bの上端縁部分である円弧部分が溶接された後、各パネル45A,45Bの側縁部の4箇所I,II,III,IVの溶接が行われる。先ず、円弧部分の溶接作業では、図中矢印▲1▼、▲2▼に示すように、各パネル45A,45Bの円弧部分の中心から外側に向かう方向に溶接が行われる。
【0047】
その後、上記4箇所の溶接が行われるが、この4箇所に対する溶接順序は、図中矢印▲3▼〜▲6▼に示すように、奇数番目に溶接を行う箇所とその直後に溶接を行う箇所とが、各パネル45A,45Bの長手方向及び幅方向で互いに対向しないように実行される。つまり、図中右下の溶接箇所Iを溶接した後、図中左上の溶接箇所IIを溶接する。その後、図中右上の溶接箇所IIIを溶接した後、図中左下の溶接箇所IVを溶接する。また、これら各溶接箇所I,II,III,IVにおける溶接方向は同一方向である。
【0048】
以上のような溶接動作を行うことにより、各パネルにねじれを生じさせることなく、溶接作業完了時に各パネル45A,45Bは所定の平坦形状となり、溶接後の後加工を必要とすることなしに、所望の形状のサイドサポータ4aを得ることができる。
【0049】
−その他の実施形態−
上述した実施形態ではトラクタの耕耘装置の製造に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、種々の溶接箇所に対して適用可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、チェーンケース4に対する各ファイナルケース21A,21Bの溶接箇所、サイドサポータ4aを構成するパネル45A,45B同士の溶接箇所について説明した。本ロータリ耕耘機100にあっては、図4に示すように、ロータリ入力ギアケース5と鋳造品である入力軸支持ケース43Aも溶接により接合されている。また、上述した如くメインビーム5aとフランジ部材51も溶接により接合されている。これらの溶接部分においても、溶接作業時に発生する溶接歪みを予め考慮して、溶接前における各部品の形状を完成品の形状とは異なるものに設定しておくことが好ましい。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、略円筒形状の第1部品の外周縁を第2部品の開口に溶接する際に、第2部品の溶接面側から反溶接面側に向かって内径寸法が徐々に大きくなる形状に第1部品を予め形成しているため、溶接作業完了時には第1部品の内径寸法を全体に亘って略均一にすることができる。このため、例えば、上記第1部品をベアリング支持用のファイナルケースとした場合には、ベアリングの挿入を容易に行うことが可能になり、作業性の向上を図ることができる。このように、本発明では、複数部品を接合する手法としてボルト締結方式を溶接方式に変更した場合であっても、溶接後の後加工が必要なくなり、作業性の向上を図ることができる。つまり、完成品重量の軽減、組立工数の削減、製品形状の簡素化を図ることが可能な溶接方式の接合手法を、溶接歪みの影響に起因する後加工を必要することなしに実用化することができる。
【0053】
また、筒状部品が溶接される複数の開口を備えたプレート部品に対し、その開口同士の間の領域をそれ以外の領域よりも膨出する方向に予め湾曲させておき、溶接開始位置を、プレート部品における開口同士の間の領域に臨む箇所に設定した場合には、溶接開始初期時の熱の影響によりプレート部品は開口同士の間の領域がそれ以外の領域よりも凹陥する方向に変形し、プレート部品を所定の平坦形状とすることができる。このため、各筒状部品の軸心同士の平行度と、これら軸心とプレート部品長手方向との直角度とを、後加工なしに良好に得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るトラクタの側面図である。
【図2】実施形態に係るトラクタの平面図である。
【図3】ロータリ耕耘機の平面図である。
【図4】図3におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】(a)はチェーンケースの正面図、(b)は(a)のV−V線に沿った断面図である。
【図6】一方のファイナルケースの断面図である。
【図7】他方のファイナルケースの断面図である。
【図8】(a)はサイドサポータの正面図、(b)は(a)のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【符号の説明】
4 チェーンケース(第2部品、プレート部品)
21A,21B ファイナルケース(第1部品、円筒部品)
45A アウタパネル
45B インナパネル
Claims (3)
- 複数部品それぞれの所定の溶接箇所同士を互いに溶接するための溶接方法であって、
互いに溶接される複数部品のうちの一部は略円筒形状の第1部品である一方、他は第1部品の外周縁が溶接される開口を有する第2部品であり、
上記第1部品の外周縁を第2部品の開口縁に溶接する際における第2部品の溶接面側から反溶接面側に向かって内径寸法が徐々に大きくなる形状に第1部品を予め形成しておくことで、溶接作業時に上記第1部品に生じる溶接歪みに起因する変形の方向に対して逆向き方向に予め歪みを付与しておき、溶接完了後に第1部品が所定形状となるようにしていることを特徴とする溶接方法。 - 複数部品それぞれの所定の溶接箇所同士を互いに溶接するための溶接方法であって、
互いに溶接される複数部品のうちの一部は略筒状の複数の筒状部品である一方、他は上記各筒状部品の外周縁がそれぞれ溶接される複数の開口を有するプレート部品であり、
上記プレート部品における開口同士の間の領域がそれ以外の領域よりも膨出する方向にプレート部品を予め湾曲させておくことで、溶接作業時にこのプレート部品に生じる溶接歪みに起因する変形の方向に対して逆向き方向に予め歪みを付与しておき、
上記筒状部品の外縁をプレート部品の開口縁に溶接する際における溶接開始位置を、上記プレート部品における開口同士の間の領域に臨む箇所に設定することにより、溶接完了後に上記プレート部品が所定形状となるようにしていることを特徴とする溶接方法。 - 上記請求項1または2記載の溶接方法により溶接される部品であって、溶接作業時に生じる溶接歪みに起因する変形方向に対して逆向き方向に予め歪みが付与されていることを特徴とする部品。
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