JP3811313B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に係り、詳しくは、機関運転状態に応じてパイロット噴射を実行する内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンにおける燃焼過程は、予混合燃焼期間と、この予混合燃焼期間に続く拡散燃焼期間に大別できる。予混合燃焼期間では、燃焼室内に噴射された燃料が可燃混合気となって自己着火することにより、燃料の燃焼が急激に進行する。そして、拡散燃焼期間では、予混合燃焼期間で燃焼室内に生成された燃焼ガス中に燃料が噴射されることになるため、同燃料の燃焼が継続して行われるようになる。ところで、予混合燃焼期間では、上記のように燃焼が急激に進行するため、燃焼室内における燃焼圧の上昇率が大きくなり、また燃焼温度も極めて高くなる傾向がある。従って、この予混合燃焼期間が長くなると、即ち自己着火によって急激に燃焼する燃料の割合が増加すると、燃焼騒音の増大や、排気中における窒素酸化物(NOx )の増大を招くこととなる。
【0003】
こうした燃焼騒音やNOx の増大を防止するために、パイロット噴射を行うようにした燃料噴射装置が従来より提案されている。この燃料噴射装置では、燃焼室内に噴射すべき燃料のうち、一部の燃料が噴射(パイロット噴射)された後、その燃料噴射が一旦中断される。そして、パイロット噴射された燃料が着火状態となったときに、再度、残りの燃料が噴射(メイン噴射)される。こうしたパイロット噴射の実行により、予混合燃焼期間が短縮され、自己着火によって急激に燃焼する燃料の割合が減少するようになるため、燃焼圧の上昇が緩慢になり、燃焼室内における燃焼温度も低下する。従って、上記燃料噴射装置によれば、燃焼騒音の増大や排気中のNOx 増大を防止することができる。
【0004】
また、一般に、パイロット噴射は機関が低負荷低回転時にのみ行われる。高負荷時や高回転時にもパイロット噴射を実行するようにすると、排煙濃度が増加するとともに機関出力が低下する傾向があるからである。このため、従来の燃料噴射装置では、燃料の噴射形態をパイロット噴射とメイン噴射が実行されるモードと、メイン噴射のみが実行されるモードとに機関運転状態に応じて選択的に切り替えるようにしている。
【0005】
ところが、上記のように燃料噴射形態を切り替えるようにすると、仮に上記両モードにおいて燃焼室に噴射される燃料の総量が同じであっても、その切り替えに伴って燃焼室内における燃焼状態が大きく変化するため、機関トルクの急激な変化に起因した、いわゆるトルクショックを招くおそれがある。
【0006】
そこで、特開平5−1609号公報に記載された「ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置」では、燃料噴射形態を切り替える際に、パイロット噴射とメイン噴射との噴射間隔(パイロット噴射間隔)を徐々に変更するようにしている。即ち、この燃料噴射制御装置は、パイロット噴射間隔を徐変することにより、燃焼状態の変化を緩慢なものとしてトルクショックの発生を抑制しようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したようなパイロット噴射による作用は、パイロット噴射された燃料が自己着火した後にメイン噴射が実行されていることが前提となる。即ち、パイロット噴射間隔が短くなり、パイロット噴射による燃料が自己着火する前にメイン噴射が実行されるようになった場合、或いはその自己着火後、極短時間のうちにメイン噴射が実行されるようになった場合には、パイロット噴射による燃料はもはや火種として機能しなくなるため、パイロット噴射を実行しているのにも拘わらず、燃焼室内における燃焼状態の変化は、メイン噴射のみを実行したときと略同様のものとなる。
【0008】
従って、上記従来の燃料制御装置において、パイロット噴射間隔の徐変により機関トルクを確実に制御できるのは、そのパイロット噴射間隔が比較的長く設定されているときに限られ、パイロット噴射間隔が短く設定され、パイロット噴射された燃料が火種として機能していないときには、仮にパイロット噴射間隔を変化させたとしても、機関トルクの制御はできないこととなる。こうした理由から、従来の燃料制御装置によって抑制できるトルクショックには自ずと限界があり、燃料噴射形態の切替前後における機関トルクが大きく異なるような状況下で発生するトルクショックには対処しきれないものとなっていた。
【0009】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明では、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる前後に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値から切替後における切替後トルク値へと徐変させるトルク制御手段を有し、燃料噴射形態が切り替えられる前後にパイロット噴射実行の可否を判定する判定用パイロット噴射量を変化させ、同判定用パイロット噴射量がパイロット噴射を安定して実行することのできる最小量以上のときに同判定用パイロット噴射量による前記パイロット噴射の実行を許可するとともに、同判定用パイロット噴射量が前記最小量を跨いで変化したときに燃料噴射形態の切り替えを行うことにより前記機関トルクの変化を抑制するトルク変化抑制手段を備えるようにしている。
【0015】
また、請求項2に記載した発明では、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる前後に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値と切替後における切替後トルク値との間の過渡トルク値とすべく制御するトルク制御手段を有し、燃料噴射形態が切り替えられる前後にパイロット噴射実行の可否を判定する判定用パイロット噴射量を変化させ、同判定用パイロット噴射量がパイロット噴射を安定して実行することのできる最小量以上のときに同判定用パイロット噴射量による前記パイロット噴射の実行を許可するとともに、同判定用パイロット噴射量が前記最小量を跨いで変化したときに燃料噴射形態の切り替えを行うことにより前記機関トルクの変化を抑制するトルク変化抑制手段を備えるものとしている。
【0016】
上記メイン噴射に係る制御値、特にメイン噴射の噴射時期、噴射量、噴射圧といった制御値は、機関燃焼状態に対して直接影響を及ぼすものであるため、パイロット噴射間隔と比較して機関トルクとの相関性が高い。従って、上記請求項1又は2に記載した発明によれば、このメイン噴射に係る制御値を変更することにより、機関トルクを確実に制御することが可能になり、燃料噴射形態の切り替えに伴う急激な機関トルクの変化が抑制されるようになる。
【0017】
特に、請求項1に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値へと徐変させられるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化が緩慢なものとなる。
【0018】
また、請求項2に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値と切替後トルク値との間の過渡トルク値となるように制御されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化が緩慢なものとなる。
【0019】
請求項3に記載した発明では、請求項1に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク制御手段は、燃料噴射形態の切替直前の機関トルクと切替直後の機関トルクとを一致させるように、燃料噴射形態の切替直前の前記メイン噴射に係る制御値及びその切替直後の前記メイン噴射に係る制御値を設定することで燃料噴射形態を切り替える際の機関トルクの制御を行うこととしている。
【0020】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替前に過渡制御値にまで徐変されることにより、機関トルクが切替前トルク値から徐々に過渡トルク値にまで徐々に変化する。従って、燃料噴射形態の切替前にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。また、こうして機関トルクが変更されることにより、燃料噴射形態が切り替えられる直前の機関トルクと前記切替後トルク値との差が減少することとなる。このため、燃料噴射形態の切替時に、メイン噴射に係る制御値が過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値へと変更されても、そのときのトルク変化量は相対的に小さなものとなる。
【0021】
請求項4に記載した発明では、請求項2に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク制御手段は、燃料噴射形態切替後の噴射形態において機関トルクを過渡トルク値とするためのメイン噴射に係る制御値を過渡制御値として設定する制御値設定手段と、メイン噴射に係る制御値を、燃料噴射形態切替時に過渡制御値へと変更するとともに、燃料噴射形態切替後に過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変させる制御値変更手段とを備えるものとしている。
【0022】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替時に過渡制御値に変更されることにより、機関トルクは切替前トルク値から過渡トルク値にまで変化する。ここで、過渡トルク値は切替前トルク値と切替後トルク値との間のトルク値として設定されているため、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値にまで変化する場合と比較して、燃料噴射形態の切替時に発生する機関トルクの変化量は相対的に小さなものとなる。また、燃料噴射形態の切替後には、メイン噴射に係る制御値が過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変されることにより、機関トルクは過渡トルク値から徐々に切替後トルク値にまで変化する。従って、燃料噴射形態の切替後にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0023】
請求項5に記載した発明は、請求項2に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク制御手段は、燃料噴射形態切替前の噴射形態において機関トルクを切替前トルク値と切替後トルク値との間の第1の過渡トルク値とするためのメイン噴射に係る制御値を第1の過渡制御値として設定するとともに、燃料噴射形態切替後の噴射形態において機関トルクを切替前トルク値と切替後トルク値との間の第2の過渡トルク値とするためのメイン噴射に係る制御値を第2の過渡制御値として設定する制御値設定手段と、メイン噴射に係る制御値を、燃料噴射形態の切替判定後であって実際の切替前に第1の過渡制御値にまで徐変させるとともに、燃料噴射形態切替時に同第1の過渡制御値から第2の過渡制御値へと変更し、燃料噴射形態切替後には第2の過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変させる制御値変更手段とを備えるものとしている。
【0024】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替前に第1の過渡制御値にまで徐変されることにより、機関トルクは切替前トルク値から第1の過渡トルク値にまで徐々に変化する。従って、燃料噴射形態の切替前にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0025】
次に、燃料噴射形態の切替時に、メイン噴射に係る制御値が、第1の過渡制御値から第2の過渡制御値に変更されることにより、機関トルクは第1の過渡トルク値から第2の過渡トルク値へと変化する。ここで、これら各過渡トルク値はいずれも切替前トルク値と切替後トルク値との間のトルク値として設定されているため、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値にまで変化する場合と比較して、燃料噴射形態の切替時に発生する機関トルクの変化量は相対的に小さなものとなる。
【0026】
更に、燃料噴射形態の切替後には、メイン噴射に係る制御値が、第2の過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変されることにより、機関トルクは第2の過渡トルク値から切替後トルク値にまで徐々に変化する。従って、燃料噴射形態の切替後にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0027】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、制御値設定手段は、第1の過渡トルク値と第2の過渡トルク値とが等しくなるように第1の過渡制御値及び第2の過渡制御値を設定するものであるとしている。
【0028】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替時に第1の過渡制御値から第2の過渡制御値に変更されても、機関トルクは変化しないようになる。従って、上記構成によれば、請求項6に記載した発明の作用に加えて、特に、燃料噴射形態の切り替えと同時に発生する機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0029】
請求項7に記載した発明は、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる際に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値から切替後における切替後トルク値へと徐変させるトルク制御手段を有するトルク変化抑制手段を備え、トルク変化抑制手段は、メイン噴射に係る制御値として少なくともメイン噴射の噴射時期を変更するとともに、同噴射時期を進角側に変更するほどメイン噴射の噴射圧を低圧側に変更するものであるとしている。
また、請求項8に記載した発明は、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる際に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値と切替後における切替後トルク値との間の過渡トルク値とすべく制御するトルク制御手段を有するトルク変化抑制手段を備え、前記トルク変化抑制手段は、前記メイン噴射に係る制御値として少なくとも前記メイン噴射の噴射時期を変更するとともに、同噴射時期を進角側に変更するほど前記メイン噴射の噴射圧を低圧側に変更するものであるとしている。
【0030】
一般に、メイン噴射の噴射時期が進角側に変更されるほど、初期の燃焼が圧縮行程において行われるようになるため、燃焼過程において予混合燃焼の占める割合が増大し、急激な燃焼圧の上昇に起因して燃焼騒音が増大する傾向がある。逆に、メイン噴射の噴射時期が遅角側に変更される場合には、燃焼過程において予混合燃焼の占める割合が減少するため、燃焼騒音は低下するものの、燃焼速度が緩慢になり、燃料の不完全燃焼に起因した排煙濃度の増加を招く傾向がある。
【0031】
この点、請求項7又は8に記載の発明の構成によれば、メイン噴射の噴射時期が相対的に進角側に変更されるときには、噴射圧の低下により噴射燃料の微粒化が抑えられるため、急激な燃焼圧の上昇が抑制されるようになる。一方、メイン噴射の噴射時期が相対的に遅角側に変更されるときには、噴射圧の増大によって噴射燃料の微粒化が促進されるようになるため、燃料の不完全燃焼が抑制されるようになる。
【0032】
請求項9に記載した発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク変化抑制手段は、燃料噴射形態が切り替えられる際にメイン噴射とパイロット噴射との噴射間隔を徐変させる噴射間隔制御手段と、同噴射間隔が短くなるほどパイロット噴射の噴射量が減少するように同噴射量を制御するパイロット噴射量制御手段とを更に備えるものとしている。
【0033】
上記構成によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載した発明の作用に加えて、燃料噴射形態が切り替えられる際にメイン噴射とパイロット噴射との噴射間隔、即ちパイロット噴射間隔が徐変されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化が緩慢なものとなる。
【0034】
また、上記のようにパイロット噴射間隔が徐変されることにより、同噴射間隔が相対的に短く設定されるような場合には、パイロット噴射により上昇した燃焼圧が未だ低下しないうちに、メイン噴射が実行されてしまう可能性があるため、急激な燃焼圧の上昇に伴う燃焼騒音の増大を招いてしまうことが懸念される。
【0035】
この点、上記構成によれば、パイロット噴射間隔が相対的に短く設定されるような場合には、パイロット噴射の噴射量が減量されるため、パイロット噴射によって一時的に上昇した燃焼圧は、より早期に低下し始めるようになる。従って、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇が抑制される。
【0038】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
以下、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置をディーゼルエンジンに適用するようにした第1の実施形態について図1〜13を参照して説明する。
【0039】
図1は、本実施形態における燃料噴射制御装置を示す概略構成図である。ディーゼルエンジン1は、複数の気筒(本実施形態では4つの気筒)♯1〜♯4を有して構成されている。ディーゼルエンジン1には、これら各気筒#1〜#4の燃焼室に対応してインジェクタ2がそれぞれ配設されており、同インジェクタ2から各燃焼室内に燃料が噴射されるようになっている。インジェクタ2は、噴射制御用の電磁弁3を備えており、この電磁弁3の開閉動作に基づいてインジェクタ2による燃料噴射が制御される。このインジェクタ2による燃料の噴射形態は、パイロット噴射モード及びメイン噴射モードとの間で切り替えられるようになっている。
【0040】
インジェクタ2は、各気筒#1〜#4に共通のコモンレール4にそれぞれ接続されている。コモンレール4は、逆止弁7が設けられた供給配管5を介してサプライポンプ6の吐出ポート6aに接続されている。
【0041】
サプライポンプ6の吸入ポート6bは、フィルタ9を介して燃料タンク8に接続されている。また、サプライポンプ6のリターンポート6c及び電磁弁3のリターンポート3aはいずれも、リターン配管11によって燃料タンク8に接続されている。
【0042】
上記サプライポンプ6は、ディーゼルエンジン1のクランクシャフト(図示略)の回転に同期して往復動するプランジャ(図示略)を備えており、同プランジャによって加圧室(図示略)内の燃料を加圧し、その加圧された燃料を吐出ポート6aからコモンレール4に圧送する。このサプライポンプ6の燃料圧送量は、吐出ポート6aの近傍に設けられたプレッシャコントロールバルブ(以下、「PCV」と略記する)10の開閉動作に基づいて調節されるようになっている。
【0043】
また、ディーゼルエンジン1には、その運転に係る各種状態量を検出するために各種センサが設けられている。即ち、アクセルペダル15の近傍には、同ペダル15の踏込量(アクセル開度ACCP)を検出するためのアクセルセンサ20が設けられている。ディーゼルエンジン1のシリンダブロックには、その冷却水の温度(冷却水温THW)を検出するための水温センサ21が設けられている。また、コモンレール4には、その内部の燃料圧力(燃料圧PC)を検出するための燃料圧センサ22が設けられている。リターン配管11には、燃料の温度(燃料温THF)を検出するための燃料温センサ23が設けられている。ディーゼルエンジン1の吸気通路16には、同通路16内の吸入空気の圧力(吸気圧PM)を検出するための吸気圧センサ24が設けられている。
【0044】
また、前記クランクシャフトの近傍には、クランクセンサ25が設けられ、同クランクシャフトの回転に同期して回転するカムシャフト(図示略)の近傍には、カムセンサ26が設けられている。これらクランクセンサ25及びカムセンサ26は、クランクシャフトの時間当たりの回転数(機関回転数NE)と、同クランクシャフトの回転角度(クランク角CA)を検出するためのセンサである。
【0045】
これら各センサ20〜26の出力信号は、ディーゼルエンジン1の電子制御装置(以下、「ECU」と略記する)50に入力される。このECU50は、CPU、メモリ、入出力回路、及び駆動回路(いずれも図示略)等を備えて構成されている。ECU50は、上記各センサ20〜26の出力信号に基づいて、ディーゼルエンジン1の運転に係る各種状態量の読み込み及び算出等を実行するとともに、前記電磁弁3やPCV10を制御することにより、燃料噴射制御を実行する。
【0046】
即ち、ECU50は、アクセルセンサ20、水温センサ21、燃料圧センサ22、燃料温センサ23、及び吸気圧センサ24の各出力信号に基づいて、アクセル開度ACCP、冷却水温THW、燃料圧PC、燃料温THF、及び吸気圧PMをそれぞれ読み込む。更に、ECU50は、クランクセンサ25及びカムセンサ26の出力信号に基づいて、機関回転数NE及びクランク角CAを算出する。
【0047】
更に、ECU50は、上記各種状態量に基づいて、燃料の噴射形態、噴射量、噴射時期、及び噴射圧(コモンレール4の燃料圧力)に係る制御を実行する。以下、こうした燃料噴射制御の概略について説明する。
【0048】
[燃料噴射形態の設定]
燃料噴射形態の設定に際して、まず、ECU50は、アクセル開度ACCP及び機関回転数NEに基づいて基本噴射量QMAINBを算出する。この基本噴射量QMAINBは、ディーゼルエンジン1の運転状態を最も的確に反映するものであり、燃料噴射制御に係る各種制御値を算出する際に用いられる。
【0049】
ECU50のメモリには、この基本噴射量QMAINBと、機関回転数NE及びアクセル開度ACCPとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して基本噴射量QMAINBを算出する。
【0050】
次に、ECU50は、上記のように算出された基本噴射量QMAINBと機関回転数NEとに基づいて、定常時パイロット噴射量QPLT2を算出する。この定常時パイロット噴射量QPLT2は、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して、定常時、即ち、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられたときから十分に時間が経過した時点での機関運転状態に最も適した量となるように設定されている。
【0051】
ECU50のメモリには、図2に示すような、定常時パイロット噴射量QPLT2と、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、定常時パイロット噴射量QPLT2を算出する際に、この関数データを参照する。
【0052】
次に、ECU50は、機関運転状態に基づいて燃料噴射形態を設定する。即ち、ECU50は、上記定常時パイロット噴射量QPLT2及び機関回転数NEに関する以下の条件式(1),(2)がいずれも満たされている場合(定常時パイロット噴射量QPLT2及び機関回転数NEが図2に点を付した領域にある場合)には、燃料噴射形態をパイロット噴射モードに設定し、いずれか一方が満たされていない場合には、燃料噴射形態をメイン噴射モードに設定する。
【0053】
NElow ≦NE≦NEhigh ・・・(1)
QPLT2≧QPLT2low ・・・(2)
NElow ,NEhigh:定数
QPLT2low :定数
例えば、機関運転状態が低負荷低回転領域にある場合(機関回転数NE、基本噴射量QMAINBが、図2に示す所定値NE1,QMAINB1であるような場合)、燃料噴射形態としてパイロット噴射モードが選択される。従って、機関運転状態が低負荷低回転領域にある場合には、パイロット噴射が実行されるようになり、燃焼騒音の低減等が図られるようになる。
【0054】
これに対して、機関運転状態が高負荷高回転領域にある場合(機関回転数NE、基本噴射量QMAINBが、同図に示す所定値NE2,QMAINB2であるような場合)、燃料噴射形態としてメイン噴射モードが選択される。従って、機関運転状態が高負荷高回転領域にある場合には、パイロット噴射が停止されるようになり、排煙濃度の増加が抑えられ、所定の機関出力が確保されるようになる。
【0055】
[燃料噴射時期制御及び燃料噴射量制御]
次に、上記のように選択された燃料噴射形態に基づいて実行される燃料の噴射時期及び噴射量に係る制御について説明する。
【0056】
図3は、ECU50により制御される電磁弁3のオン/オフ状態の変化態様を示すタイミングチャートであり、(a)はパイロット噴射モード時、(b)はメイン噴射モード時における同変化態様をそれぞれ示している。
【0057】
[パイロット噴射モード]
燃料噴射形態としてパイロット噴射モードが選択されているときには、ECU50は、メイン噴射と同メイン噴射に先立つパイロット噴射の双方を実行する。
【0058】
即ち、同図(a)に示すように、ECU50は、現在のクランク角CAがパイロット噴射時期APLTとなったときに、電磁弁3に対してON信号(開弁信号)を出力する。従って、インジェクタ2は開弁状態となり、パイロット噴射が開始される。
【0059】
このパイロット噴射時期APLTは、燃料を噴射しようとする気筒#1〜#4の圧縮上死点(図中、「TDC」として示す)を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として定義されている。例えば、パイロット噴射時期APLTが「30°CA」(CA:Crank Angle )である場合には、クランク角CAが圧縮上死点前30°CAとなったときに、電磁弁3に対してON信号が出力されることになる。
【0060】
また、このパイロット噴射時期APLTは、次式(3)に基づいて算出される。
APLT=APLTM+AINT ・・・(3)
APLTM:メイン噴射時期
AINT :パイロット噴射間隔
上式(3)において、メイン噴射時期APLTMは、パイロット噴射モード時にメイン噴射が開始される時期であり、上記パイロット噴射時期APLTと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として定義されている。ECU50のメモリには、このメイン噴射時期APLTMと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照してメイン噴射時期APLTMを算出する。
【0061】
また、上式(3)において、パイロット噴射間隔AINTは、パイロット噴射の開始時期とメイン噴射の開始時期との間の時間間隔(クランク角間隔)である。
【0062】
上記のように、電磁弁3に対してON信号が出力され、インジェクタ2が開弁状態となったときから所定期間Tpが経過すると、ECU50は、電磁弁3に対してOFF信号(閉弁信号)を出力する。従って、インジェクタ2は閉弁状態となり、パイロット噴射が停止される。前記所定期間Tpは、最終パイロット噴射量QPLT1とコモンレール4の燃料圧PCとに基づいて決定されるものである。また、この最終パイロット噴射量QPLT1は、パイロット噴射の実行中に燃焼室内に噴射される燃料の量である。こうしてパイロット噴射が実行された後、インジェクタ2による燃料噴射は所定期間Toff (パイロット噴射間隔AINTに相当する)の間、一時的に停止される。
【0063】
次に、ECU50は、パイロット噴射が停止されたときから所定期間Toff が経過し、現在のクランク角CAがメイン噴射時期APLTMとなると、電磁弁3に対してON信号を出力する。従って、インジェクタ2は再び開弁状態となり、メイン噴射が開始される。
【0064】
そして、ECU50は、メイン噴射が開始されたときから所定期間Tmpが経過すると、電磁弁3に対して再びOFF信号を出力する。従って、インジェクタ2は閉弁状態となり、メイン噴射が停止される。前記所定期間Tmpは、最終メイン噴射量QMAINとコモンレール4の燃料圧PCとに基づいて決定されるものである。また、この最終メイン噴射量QMAINは、パイロット噴射モード時におけるメイン噴射の実行中に燃焼室内に噴射される燃料の量であり、ECU50は、この最終メイン噴射量QMAINを次式(4)に基づき算出する。
【0065】
QMAIN=QMAINB−QPLT1 ・・・(4)
[メイン噴射モード]
これに対して、燃料噴射形態としてメイン噴射モードが選択されているときには、ECU50は、メイン噴射のみを実行する。
【0066】
即ち、図3(b)に示すように、ECU50は、現在のクランク角CAがメイン噴射時期AMAINとなったときに、電磁弁3に対してON信号を出力する。従って、インジェクタ2は開弁状態となり、メイン噴射が開始される。
【0067】
ここで、メイン噴射時期AMAINは、パイロット噴射モード時におけるメイン噴射時期APLTMと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として定義されている。
【0068】
そして、ECU50は、メイン噴射が開始されたときから所定期間Tmmが経過すると、電磁弁3に対してOFF信号を出力する。従って、インジェクタ2は閉弁状態となり、メイン噴射が停止される。この所定期間Tmmは、上記パイロット噴射モード時における所定期間Tmpと同様、最終メイン噴射量QMAINとコモンレール4の燃料圧PCとに基づいて決定されるものである。因みに、この所定期間Tmmの値は、同じ総噴射量(パイロット噴射モードにおいてはパイロット噴射量とメイン噴射量との和)で同じ噴射圧(燃料圧)であれば、パイロット噴射モード時における上記所定期間Tmpと比較して長く設定される。メイン噴射モード時においては、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」となるため、上式(4)から明らかなように、最終メイン噴射量QMAINが基本噴射量QMAINBと等しく設定されるからである。
【0069】
[燃料噴射圧制御]
次に、燃料の噴射圧、即ち、コモンレール4の燃料圧力に係る制御について説明する。
【0070】
ECU50は、前述した基本噴射量QMAINBと機関回転数NEとに基づいて、基準目標燃料圧PCRBを算出する。
この基準目標燃料圧PCRBは、コモンレール4の燃料圧力に係る目標圧力であり、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して機関運転状態に最も適した圧力となるように設定されている。ECU50のメモリには、図4に示すような、基準目標燃料圧PCRBと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して基準目標燃料圧PCRBを算出する。同図に示すように、基準目標燃料圧PCRBは、基本噴射量QMAINB、機関回転数NEがそれぞれ大きいほど高く算出されるようになっている。高負荷或いは高回転時にあっては、燃料噴射圧を増大させることにより、噴射燃料の霧化を促進させる必要があるからである。
【0071】
ECU50は、こうして算出された基準目標燃料圧PCRBに対して補正を行うことにより最終目標燃料圧PCRを算出する。そして、ECU50は、燃料圧センサ22により検出されるコモンレール4の燃料圧PCがこの最終目標燃料圧PCRと一致するように、前記PCV10の開閉状態をフィードバック制御してサプライポンプ6からの燃料圧送量を調節する。
【0072】
次に、本実施形態の燃料噴射制御装置による、燃料の噴射形態、噴射時期、噴射量及び噴射圧の制御態様の一例について図5に示すタイミングチャート及び図6を併せ参照して説明する。
【0073】
図5(a)〜(d)は、本実施形態の燃料噴射制御装置による各種制御で用いられる制御フラグの変化態様をそれぞれ示している。
即ち、同図(a)は、パイロット噴射モードフラグXPLT1の変化態様を示している。このパイロット噴射モードフラグXPLT1は、機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードとする状態となっているか否かを判断するためのフラグであり、上記各条件式(1),(2)の双方が満たされているときに「1」に設定され、条件式(1),(2)のいずれか一方が満たされていないときに「0」に設定される。
【0074】
同図(b)は、パイロット噴射実行フラグXPLT2の変化態様を示している。このパイロット噴射実行フラグXPLT2は、パイロット噴射が実際に実行されているか否かを判断するためのフラグであり、判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A(>0)以上であるときには「1」に、同判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満であるときには「0」に設定される。尚、この所定量Aは、パイロット噴射を安定して実行することのできるパイロット噴射量の最小量として設定されている。
【0075】
例えば、機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードすべき状態となってパイロット噴射モードフラグXPLT1が「0」から「1」に変更された場合であっても、このパイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」である場合には、パイロット噴射は実行されない。逆に、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」から「0」に変更されても、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されている場合には、パイロット噴射が継続して実行されることになる。
【0076】
また、上記判定用パイロット噴射量QPLT3は、パイロット噴射を実行するか否かを判断するために、制御上、一時的に設定される制御値であるとともに、後述する最終パイロット噴射量QPLT1にも反映される。同図(e)は、この判定用パイロット噴射量QPLT3の変化態様を示している。
【0077】
図5(c),(d)は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2の変化態様をそれぞれ示している。
このメイン噴射制御許可フラグXJPLT1は、上記パイロット噴射モードフラグXPLT1が「0」から「1」に、或いは「1」から「0」に切り替わったときに「1」に設定され、前記判定用パイロット噴射量QPLT3が、定常時パイロット噴射量QPLT2と等しくなったとき、或いは「0」になったときに「0」に設定される。因みに、こうした各種制御用フラグの操作は、後述する「制御用フラグ操作ルーチン」によって行われる。
【0078】
また、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2は、上記「制御用フラグ操作ルーチン」において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定された後の最初の制御周期において「1」に設定され、上記メイン噴射制御許可フラグXJPLT1と同様、判定用パイロット噴射量QPLT3が、定常時パイロット噴射量QPLT2と等しくなったとき、或いは「0」になったときに「0」に設定される。
【0079】
本実施形態の燃料噴射制御装置においては、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を抑制するために、メイン噴射の噴射時期及び噴射圧を変更する制御(以下、「メイン噴射制御」という)や、パイロット噴射の噴射量及びパイロット噴射間隔を徐々に変更する制御(以下、「パイロット噴射制御」という)がそれぞれ実行される。上記メイン噴射制御許可フラグXJPLT1は、このメイン噴射制御の開始時期を判断するためのフラグであり、同フラグXJPLT1が「1」と「0」との間で変化したときに、上記メイン噴射制御が開始される。また、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2は、上記パイロット噴射制御の実行時期を判断するためのフラグであり、同フラグXJPLT2が「1」に設定されているときにパイロット噴射制御が開始される。
【0080】
また、図5(f)は、前述した最終パイロット噴射量QPLT1の変化態様を示している。この最終パイロット噴射量QPLT1は、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」であるときには常に「0」に設定されており、同フラグXPLT2が「1」に設定されたときに判定用パイロット噴射量QPLT3と等しくなるように設定される。
【0081】
同図(g)は、噴射時期補正量APL1の変化態様を示している。この噴射時期補正量APL1は、メイン噴射の噴射時期を進角側或いは遅角側の時期に補正するための補正量である。また、同図(h)は、前述したパイロット噴射間隔AINTの変化態様を、同図(i)は、燃料圧補正量PCRPLの変化態様をそれぞれ示している。この燃料圧補正量PCRPLは、前記基準目標燃料圧PCRB(図4参照)を低圧或いは高圧側の圧力に補正して最終目標燃料圧PCRを算出するための補正量である。
【0082】
以下、前述したメイン噴射制御及びパイロット噴射制御に基づく前記各制御値QPLT3,QPLT1,APL1,AINT,PCRPLの変化態様について説明する。
【0083】
機関回転数NE及び定常時パイロット噴射量QPLT2が変化することにより、タイミングt1において前記各条件式(1),(2)の双方が満たされるようになると、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定され、更に、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1も「1」に設定される。
【0084】
このようにメイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されると、タイミングt1以降、メイン噴射制御が実行される。即ち、噴射時期補正量APL1は所定量づつ徐々に増量され、この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、前述したメイン噴射時期AMAINは徐々に進角側の時期に変更されるようになる。尚、タイミングt1〜t4の期間では、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」に設定されているため、パイロット噴射は実行されない。
【0085】
また、タイミングt2において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されると、同タイミングt2以降、パイロット噴射制御が実行される。即ち、パイロット噴射間隔AINTが所定量づつ増大させられるとともに、判定用パイロット噴射量QPLT3も所定量づつ徐々に増量されるようになる。
【0086】
図6(a)は、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTM、及びメイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAIN(以下、両者を特に区別しない場合には、単に「メイン噴射時期」という)と、機関トルクとの関係を示すグラフである。
【0087】
上記のように、メイン噴射時期AMAINが徐々に進角側の時期に変更されることにより、機関トルクは、タイミングt1〜t4の期間に、同図(a)に点A1で示す状態から点B1で示す状態にまで徐々に増加するようになる。ここで、メイン噴射時期は、パイロット噴射間隔AINT等と比較して機関トルクとの相関性が高く、同トルクに与える影響が大きいため、これを変更することにより、機関トルクの大きさを確実に制御することが可能である。
【0088】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、上記各点A1,B1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、メイン噴射時期AMAINの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、メイン噴射モード時の機関トルクをパイロット噴射が実行されるときのトルク値にまで変更することができる。
【0089】
また、このようにメイン噴射時期AMAINが変更されると、基準メイン噴射時期AMAINB(図6(a)参照)より進角側の時期に燃料噴射が実行されるようになる。この基準メイン噴射時期AMAINBは、メイン噴射時期AMAINと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として設定されるものであり、機関トルク、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して機関運転状態に最も適した時期となるように設定されている。
【0090】
従って、こうして設定された基準メイン噴射時期AMAINBより進角側の時期に燃料噴射が実行されるようになると、燃焼過程において予混合燃焼の占める割合が増大し、急激な燃焼圧の上昇に起因して燃焼騒音が増大する傾向がある。
【0091】
本実施形態の燃料噴射制御装置では、こうした燃焼騒音の増大を抑制するために、メイン噴射時期AMAINが進角側の時期に変更されるタイミングt1〜t4の期間において、燃料圧補正量PCRPLが負の所定値Pに変更される。こうした燃料圧補正量PCRPLの変更により、最終目標燃料圧PCRが基準目標燃料圧PCRBよりも低い圧力(=PCRB+P<PCRB)に変更され、コモンレール4の燃料圧PCが低下するようになる。
【0092】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、インジェクタ2から噴射される燃料の噴射圧が低下し、噴射燃料の微粒化が抑えられるようになるため、急激な燃焼圧の上昇が抑制され、メイン噴射時期AMAINが進角側の時期に変更されることに起因した燃焼騒音の増大を抑制することができる。
【0093】
次に、タイミングt4において、判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量Aを上回ると、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定される。更に、最終パイロット噴射量QPLT1がこの判定用パイロット噴射量QPLT3と等しく設定されることにより、パイロット噴射が実行されるようになる。
【0094】
また、タイミングt2以降、所定量づつ増量されることにより第1の補正制限値APL1LMT1(>0)にまで達した噴射時期補正量APL1が、このタイミングt4において第2の補正制限値APL1LMT2(<0)へと変更される。尚、上記第1の補正制限値APL1LMT1及び第2の補正制限値APL1LMT2については後述する。
【0095】
そして、こうした噴射時期補正量APL1の変更に伴って、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTMは、基準メイン噴射時期APLTMB(図6(a)参照)よりも遅角側の時期に変更される。この基準メイン噴射時期APLTMBは、メイン噴射時期APLTMと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として設定されるものであり、機関トルク、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して機関運転状態に最も適した時期となるように設定されている。尚、図6(a)では、上記基準メイン噴射時期AMAINBと基準メイン噴射時期APLTMBとが一致している場合を例示している。
【0096】
更に、このタイミングt4以降、判定用パイロット噴射量QPLT3の増量に伴って最終パイロット噴射量QPLT1も徐々に増加する。そして、タイミングt6において、判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2に達すると、同タイミングt6以降、判定用パイロット噴射量QPLT3は定常時パイロット噴射量QPLT2と等しく設定されるため、最終パイロット噴射量QPLT1も、この定常時パイロット噴射量QPLT2と等しく設定されるようになる。
【0097】
また、タイミングt2以降、所定量づつ徐々に増加していたパイロット噴射間隔AINTは、タイミングt4以降の期間においても更に増加し続ける。そして、タイミングt6において、パイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTBと等しくなると、同タイミングt6以降、パイロット噴射間隔AINTは、この定常時パイロット噴射間隔AINTBと等しく設定されるようになる。この定常時パイロット噴射間隔AINTBは、定常時パイロット噴射量QPLT2と同様、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して、定常時、即ち、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられたときから十分に時間が経過した時点での機関運転状態に最も適した量となるように設定されている。
【0098】
上記のように、タイミングt4〜t6の期間において、メイン噴射時期APLTM、最終パイロット噴射量QPLT1、パイロット噴射間隔AINTがそれぞれ変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点B1で示す状態から点C1で示す状態にまで変化する。
【0099】
ここで、本実施形態の燃料噴射制御装置では、図6(a)の各点B1,C1で示す状態での各機関トルクTb,Tc、即ち、メイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAINを第1の補正制限値APL1LMT1分だけ変更したときのトルク値(以下、「第1の過渡トルク値」という)Tbと、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTMを第2の補正制限値APL1LMT2分だけ変更したときのトルク値(以下、「第2の過渡トルク値」)Tcとに関して以下の各条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされるように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2の大きさが予め設定されている。
【0100】
Ta≦Tb=Tc≦Td ・・・(5−a)
Td≦Tb=Tc≦Ta ・・・(5−b)
Ta:メイン噴射モード時基準トルク値
Td:パイロット噴射モード時基準トルク値
上式(5−a),(5−b)において、メイン噴射モード時基準トルク値Taは、メイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBとしたときのトルク値であり、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdは、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTMBとしたときのトルク値である。
【0101】
上記のように各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定するようにしているため、タイミングt4〜t6の期間において、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられても、その切り替えに伴う機関トルクの変化は殆ど発生しないようになる。
【0102】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードへと切り替えられる時点でのトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0103】
また、本実施形態の燃料噴射制御装置では、メイン噴射モードからパイロット噴射モードへと燃料噴射形態が切り替えられるとき(タイミングt4)に、パイロット噴射間隔AINTを定常時パイロット噴射間隔AINTBへと直ぐに変更するのではなく、定常時パイロット噴射間隔AINTBよりも短い間隔から同定常時パイロット噴射間隔AINTBにまで徐々に増加させるようにしている。
【0104】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化を緩慢なものとすることができ、トルクショックの発生を更に確実に抑制することができる。
【0105】
ところで、上記のようにパイロット噴射間隔AINTを定常時パイロット噴射間隔AINTBよりも一時的に短く設定するようにした場合(タイミングt4〜t6)、トルクショックを抑制するうえでは有効であるものの、パイロット噴射により上昇した燃焼圧が未だ低下しないうちに、メイン噴射が実行されてしまう可能性があるため、急激な燃焼圧の上昇に伴う燃焼騒音の増大を招いてしまうことが懸念される。
【0106】
この点、本実施形態の燃料噴射制御装置では、最終パイロット噴射量QPLT1を定常時パイロット噴射量QPLT2と等しくなるまで徐々に増量することにより、パイロット噴射間隔AINTが相対的に短い期間(タイミングt4〜t6)では、最終パイロット噴射量QPLT1を定常時パイロット噴射量QPLT2よりも少ない量に設定するようにしている。このため、パイロット噴射によって一時的に上昇した燃焼圧は、より早期に低下し始めるようになる。
【0107】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇を抑制して燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0108】
こうして燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられた後、タイミングt6において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1及びパイロット噴射制御許可フラグXJPLT2がいずれも「0」に設定される。そして、このタイミングt6以降の期間において、再びメイン噴射制御が実行される。即ち、噴射時期補正量APL1は、前記第2の補正制限値APL1LMT2から、タイミングt8で「0」に達するまで、所定量づつ増量される。そして、この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、メイン噴射時期APLTMが徐々に進角側の時期に変更されるようになる。
【0109】
上記のように、メイン噴射時期APLTMが変更されることにより、機関トルクは、タイミングt6〜t8の期間に、図6(a)に点C1で示す状態から点D1で示す状態にまで徐々に増加するようになる。
【0110】
ここで、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、図6(a)の各点C1,D1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、メイン噴射時期APLTMの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、パイロット噴射モード時の機関トルクを定常時におけるトルク値にまで増加させることができる。
【0111】
また、噴射時期補正量APL1が負の値となるタイミングt4〜t8の期間では、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMB(図6(a)参照)よりも遅角側の時期に設定されるため、燃焼速度が緩慢になり、燃料の不完全燃焼に起因した排煙濃度の増加を招く傾向がある。
【0112】
この点、本実施形態の燃料噴射制御装置では、タイミングt4において、燃料圧補正量PCRPLが前記所定値P(<0)から正の所定値Rに変更される。そして、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBより遅角側の時期に変更されるタイミングt4〜t8の期間において、燃料圧補正量PCRPLは、この所定値Rのまま保持される。こうした燃料圧補正量PCRPLの変更により、最終目標燃料圧PCRが基準目標燃料圧PCRBよりも高い圧力(=PCRB+R>PCRB)に変更され、コモンレール4の燃料圧PCが上昇するようになる。
【0113】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射圧が上昇して噴射燃料の微粒化が促進されるようになるため、燃料の不完全燃焼が抑制され、前述したような排煙濃度の増加を防止することができる。
【0114】
また、タイミングt8において、噴射時期補正量APL1が「0」と等しくなると、燃料圧補正量PCRPLは、所定値Rから「0」に変更される。そして、このタイミングt8からタイミングt9の期間では、噴射時期補正量APL1及び燃料圧補正量PCRPLが「0」のまま保持される。その結果、定常時のパイロット噴射が実行されるようになる。
【0115】
次に、機関回転数NE及び定常時パイロット噴射量QPLT2が変化することにより、タイミングt9において前記各条件式(1),(2)のいずれか一方が満たされないようになると、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「0」に設定され、更に、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定される。
【0116】
このようにメイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されると、タイミングt9以降、メイン噴射制御が実行される。即ち、噴射時期補正量APL1は所定量づつ徐々に減量され、この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、メイン噴射時期APLTMが徐々に遅角側の時期に変更されるようになる。因みに、タイミングt9〜t12の期間では、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」以上に設定されており、パイロット噴射は継続して実行されている。
【0117】
また、タイミングt10において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されると、同タイミングt10以降、パイロット噴射制御が実行される。即ち、パイロット噴射間隔AINTが所定量づつ減少させられるとともに、判定用パイロット噴射量QPLT3も所定量づつ徐々に減量されるようになる。従って、こうした判定用パイロット噴射量QPLT3の減量に伴って最終パイロット噴射量QPLT1が徐々に減量されるとともに、パイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTBから徐々に短くなるように変更される。
【0118】
上記のように、タイミングt9〜t12の期間において、メイン噴射時期APLTM、最終パイロット噴射量QPLT1、パイロット噴射間隔AINTがそれぞれ変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点D1で示す状態から点C1で示す状態にまで徐々に減少するようになる。このタイミングt9〜t12の期間においては、前述したタイミングt6〜t8の期間における場合と同様、同図(a)の各点C1,D1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、メイン噴射時期APLTMの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、パイロット噴射モード時の機関トルクを定常時におけるトルク値からパイロット噴射が停止されるときのトルク値にまで変更することができる。
【0119】
また、タイミングt9〜t12の期間では、燃料圧補正量PCRPLが「0」から正の所定値Q(>0)に設定される。従って、最終目標燃料圧PCRが基準目標燃料圧PCRBよりも高い圧力(=PCRB+Q>PCRB)に変更され、コモンレール4の燃料圧PCが上昇するようになる。その結果、前述したタイミングt4〜t8の期間における場合と同様、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBよりも遅角側の時期に設定されることに起因した排煙濃度の増加を防止することができる。
【0120】
更に、前述したように、タイミングt10からタイミングt12の期間では、最終パイロット噴射量QPLT1が徐々に減量されるとともに、パイロット噴射間隔AINTも定常時パイロット噴射間隔AINTBから徐々に短くなるように変更される。従って、前述したタイミングt4〜t6の期間における場合と同様、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化を緩慢なものとしてトルクショックの発生を更に確実に抑制することができるとともに、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになるため、燃焼圧の急激な上昇を抑制して燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0121】
次に、判定用パイロット噴射量QPLT3が減少し、タイミングt12において、前記所定量Aを下回るようになると、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されるとともに、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」に変更されてパイロット噴射の実行が停止される。
【0122】
更に、このタイミングt12において、噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2から第1の補正制限値APL1LMT1に変更される。この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、メイン噴射モード時におけるメイン噴射時期AMAINは、基準メイン噴射時期AMAINB(図6(a)参照)よりも進角側の時期に変更される。
【0123】
このように最終パイロット噴射量QPLT1及びメイン噴射時期AMAINが変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点C1で示す状態から点B1で示す状態にまで変化する。
【0124】
前述したように、本実施形態の燃料噴射制御装置では、第1の過渡トルク値Tb及び第2の過渡トルク値Tcを一致させるようにしているため、タイミングt12において、燃料噴射形態がパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられても、その切り替えに伴う機関トルクの変化は殆ど発生しない。従って、トルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0125】
また、判定用パイロット噴射量QPLT3が減量され、タイミングt14において「0」と等しくなると、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1及びパイロット噴射制御許可フラグXJPLT2がいずれも「0」に設定される。そして、このタイミングt14〜t16の期間において、噴射時期補正量APL1は、第1の補正制限値APL1LMT1から「0」と等しくなるまで所定量づつ減量される。こうした噴射時期補正量APL1の減量により、メイン噴射時期AMAINが徐々に遅角側の時期に変更されるようになる。
【0126】
このようにメイン噴射時期AMAINが変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点B1で示す状態から点A1で示す状態にまで徐々に減少する。このタイミングt14〜t16の期間では、前述したタイミングt1〜t4の期間における場合と同様、メイン噴射時期AMAINの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、メイン噴射モード時の機関トルクを定常時のトルク値にまで変更することができる。
【0127】
そして、タイミングt16以降、噴射時期補正量APL1が「0」に保持されるため、メイン噴射時期AMAINは基準メイン噴射時期AMAINBと等しく設定されるようになる。その結果、定常時のメイン噴射が実行されるようになる。
【0128】
また、タイミングt12〜t16の期間では、メイン噴射時期AMAINが基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側の時期に変更されるが、この期間では、燃料圧補正量PCRPLが所定値Qから負の所定値S(<0)に変更される。従って、タイミングt1〜t4の期間と同様、コモンレール4の燃料圧PCが低下して、噴射燃料の微粒化が抑えられるため、燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0129】
以下、上記の燃料噴射制御を実現するための制御手順の一例について図7〜13に示すフローチャート及び上記図5のタイミングチャートを併せ参照して詳細に説明する。尚、以下の説明中、上記タイミングチャートの対応するタイミングを括弧[ ]内に示している。
【0130】
図7及び図8は、「制御用フラグ操作ルーチン」の各処理を示すフローチャートである。このルーチンは、後述する各処理ルーチンにおいて用いられる各種制御用フラグXPLT1,XPLT2,XJPLT1,XJPLT2の操作を行うためのものであり、ECU50により所定クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0131】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ100において、ECU50は、現在の機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードとすべき状態であるか否かを判定する。この判定処理は、機関回転数NE及び定常時パイロット噴射量QPLT2の各値が、前述した各条件式(1),(2)の双方を満たすか否かに基づいて行われる。
【0132】
ステップ100において肯定判定された場合[タイミングt1〜t8]、ECU50は、ステップ102〜116までの各処理を順次実行する。この各ステップ102〜116の処理は、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられる際に実行される処理である。
【0133】
まず、ECU50は、ステップ102においてパイロット噴射モードフラグXPLT1を「1」に設定する。
次に、ECU50は、ステップ104においてパイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合[タイミングt5〜t8]、ECU50は、処理を図8に示すステップ116に移行する。一方、ステップ104において肯定判定された場合[タイミングt1〜t4]、ECU50は、処理をステップ106に移行する。
【0134】
ステップ106において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt1]、ECU50は、ステップ110において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1を「0」から「1」へ変更する。一方、ステップ106において否定判定された場合[タイミングt2〜t4]、ECU50は、ステップ108において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2を「1」に設定する。
【0135】
上記各ステップ108,110の処理を実行した後、ECU50は、図8に示すステップ112において、判定用パイロット噴射量QPLT3と前記所定量Aとを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満である旨判断された場合[タイミングt1〜t3]、ECU50は、処理をステップ116に移行する。一方、ステップ112において判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A以上である旨判断された場合[タイミングt4]、ECU50は、ステップ114においてパイロット噴射実行フラグXPLT2を「1」に設定した後、処理をステップ116に移行する。
【0136】
ステップ116において、ECU50は、判定用パイロット噴射量QPLT3と定常時パイロット噴射量QPLT2と比較する。そして、判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2以上である旨判断された場合[タイミングt6〜t8]、ECU50は、ステップ140においてメイン噴射制御許可フラグXJPLT1を「0」に設定した後、更にステップ142においてパイロット噴射制御許可フラグXJPLT2を「0」に設定する。
【0137】
ステップ142の処理を実行した後、若しくはステップ116において判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2未満である旨判断された場合[タイミングt1〜t5]、ECU50は本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0138】
これに対して、前述したステップ100において現在の機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードとすべき状態ではない旨判定された場合[タイミングt9〜t16]、ECU50は、ステップ122〜136の各処理を順次実行する。この各ステップ122〜136の処理は、燃料噴射形態がパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられる際に実行される処理である。
【0139】
即ち、ECU50は、ステップ122において、パイロット噴射モードフラグXPLT1を「0」に設定する。そして、ECU50は、ステップ124において、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt9〜t12]、ECU50は、処理をステップ126に移行する。一方、ステップ124において否定判定された場合[タイミングt13〜16]、ECU50は、処理を図8に示すステップ136に移行する。
【0140】
ステップ126において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt9]、ECU50は、ステップ130において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1を「0」から「1」へ変更する。一方、ステップ126において否定判定された場合[タイミングt10〜t12]、ECU50は、ステップ128において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2を「1」に設定する。
【0141】
上記各ステップ128,130の処理を実行した後、ECU50は、図8に示すステップ132において、判定用パイロット噴射量QPLT3と所定量Aとを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A以上である旨判断された場合[タイミングt9〜t11]、ECU50は、処理をステップ136に移行する。一方、ステップ132において判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満である旨判断された場合[タイミングt12〜16]、ECU50は、ステップ134においてパイロット噴射実行フラグXPLT2を「0」に設定した後、処理をステップ136に移行する。
【0142】
そして、ステップ136において、ECU50は、判定用パイロット噴射量QPLT3と「0」とを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」より大きい旨判断された場合[タイミングt9〜t13]、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。一方、ステップ136において判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」以下である旨判断された場合[タイミングt14〜t16]、ECU50は、前述した各ステップ140,142の処理を実行した後、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0143】
以上説明した本ルーチンの処理に基づいて、各種制御用フラグXPLT1,XPLT2,XJPLT1,XJPLT2が機関運転状態に即した値に設定される。
【0144】
次に、「噴射量算出ルーチン」の各処理について図9に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、パイロット噴射及びメイン噴射の燃料噴射量を算出するためのものであり、ECU50により上記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0145】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ200において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ202に移行する。ステップ202において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ204に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「0」であるか否かを判定する。
【0146】
ステップ204において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ206において、判定用パイロット噴射量QPLT3を所定量Bと等しく設定する[タイミングt1]。この所定量Bは、判定用パイロット噴射量QPLT3についての初期値である。尚、図5に示すタイミングチャートは、この所定量Bが「0」に設定されている場合の制御態様例を示している。
【0147】
これに対して、ステップ204において否定判定された場合、ECU50は、ステップ208において、現在の判定用パイロット噴射量QPLT3に対して所定量C(>0)を加算し、その加算後の値(=QPLT3+C)を、新たな判定用パイロット噴射量QPLT3として設定する。このステップ208の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt2〜t6の期間において、同判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は徐々に増加するようになる。
【0148】
上記ステップ206,208の処理を実行した後、ECU50は、ステップ210において、判定用パイロット噴射量QPLT3と定常時パイロット噴射量QPLT2とを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2以上である旨判断された場合、ECU50は、ステップ230において、判定用パイロット噴射量QPLT3を定常時パイロット噴射量QPLT2と等しく設定する。また、前述したステップ202において否定判定された場合も同様に、ECU50は、ステップ230の処理を実行する。
【0149】
上記各ステップ202,210,230の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt6〜t9の期間において、判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は、定常時パイロット噴射量QPLT2(同図(e)の一点鎖線)と等しく保持されるようになる。
【0150】
一方、前述したステップ200において否定判定された場合、ECU50は、ステップ220においてメイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ222において更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合[タイミングt9]、ECU50は前述したステップ230の処理を実行する。
【0151】
これに対して、ステップ222において肯定判定された場合、ECU50はステップ224において、現在の判定用パイロット噴射量QPLT3から所定量D(>0)を減算し、その減算後の値(=QPLT3−D)を新たな判定用パイロット噴射量QPLT3として設定する。このステップ224の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt10〜t13の期間において、判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は徐々に減少するようになる。
【0152】
そして、ECU50は、ステップ226において、判定用パイロット噴射量QPLT3と「0」とを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」未満である旨判断された場合、ECU50は、ステップ228において、判定用パイロット噴射量QPLT3を「0」に設定する。また、前述したステップ220において否定判定された場合[タイミングt14〜t16]も同様に、ECU50は、このステップ228の処理を実行する。
【0153】
上記各ステップ220,226,228の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt14〜t16の期間において、判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は「0」に保持されるようになる。
【0154】
上記ステップ228,230の処理を実行した後、ECU50は処理をステップ232に移行する。また、ステップ210において判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2未満である旨判断された場合、ステップ226において判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」以上である旨判断された場合も、ECU50は、処理をステップ232に移行する。
【0155】
ステップ232において、ECU50は、判定用パイロット噴射量QPLT3と前記所定量Aとを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量Aである旨判断された場合、ECU50は、ステップ234において、最終パイロット噴射量QPLT1を判定用パイロット噴射量QPLT3(≧A>0)と等しく設定する。このように最終パイロット噴射量QPLT1が設定されることにより、図5に示すタイミングt4〜t12の期間において、パイロット噴射が実行されるようになる。
【0156】
一方、上記ステップ232において判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満である旨判断された場合、ECU50は、ステップ236において、最終パイロット噴射量QPLT1を「0」に設定する。このように最終パイロット噴射量QPLT1が設定されることにより、図5に示すタイミングt1〜t4,t12〜t16の期間においては、パイロット噴射の実行が停止されるようになる。
【0157】
ECU50は、上記各ステップ234,236の処理を実行した後、ステップ238において、前述した式(4)に基づいて最終メイン噴射量QMAINを算出する。従って、ステップ234の処理を通じて最終メイン噴射量QMAINが算出された場合には、同最終メイン噴射量QMAINは、基本噴射量QMAINBから最終パイロット噴射量QPLT1を減算した値として算出される。一方、ステップ236の処理を通じて最終メイン噴射量QMAINが算出された場合には、同最終メイン噴射量QMAINは、基本噴射量QMAINBと等しい値として算出されることになる。そして、このステップ238の処理を実行した後、ECU50は本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0158】
以上説明したように、本ルーチンの各処理により、判定用パイロット噴射量QPLT3、最終メイン噴射量QMAIN、最終パイロット噴射量QPLT1がそれぞれ算出される。
【0159】
次に、「パイロット噴射間隔算出ルーチン」の各処理について図10に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、パイロット噴射間隔AINTを算出するためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0160】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ300において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ302に移行する。ステップ302において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ304に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「0」であるか否かを判定する。
【0161】
ステップ304において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ306において、パイロット噴射間隔AINTを所定量Eと等しく設定する[タイミングt1]。この所定量Eはパイロット噴射間隔AINTについての初期値である。尚、図5に示すタイミングチャートは、この所定量Eが「0」に設定されている場合の制御態様例を示している。
【0162】
これに対して、ステップ304において否定判定された場合、ECU50は、ステップ308において、現在のパイロット噴射間隔AINTに対して所定量F(>0)を加算し、その加算後の値(AINT+F)を新たなパイ
ロット噴射間隔AINTとして設定する。
【0163】
従って、このステップ308の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt2〜t6の期間において、パイロット噴射間隔AINT(同図(h)参照)は徐々に増加するようになる。
【0164】
上記ステップ306,308の処理を実行した後、ECU50は、ステップ310において、パイロット噴射間隔AINTと定常時パイロット噴射間隔AINTBとを比較する。ここでパイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTB以上である旨判断された場合、ECU50は、ステップ330において、パイロット噴射間隔AINTを定常時パイロット噴射間隔AINTBと等しく設定する。また、前述したステップ302において否定判定された場合も同様に、ECU50は、ステップ330の処理を実行する。
【0165】
上記各ステップ302,310,330の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt6〜t9の期間において、パイロット噴射間隔AINT(同図(h)参照)は、定常時パイロット噴射間隔AINTB(同図(h)の一点鎖線)と等しく保持されるようになる。
【0166】
これに対して、前述したステップ300において否定判定された場合、ECU50は、ステップ320において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ322において更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は前述したステップ330の処理を実行する。
【0167】
一方、ステップ322において肯定判定された場合、ECU50はステップ324において、現在のパイロット噴射間隔AINTから所定量G(>0)を減算し、その減算後の値(AINT−G)を新たなパイロット噴射間隔AINTとして設定する。
【0168】
従って、このステップ324の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt9〜t14の期間において、パイロット噴射間隔AINT(同図(h)参照)は徐々に減少するようになる。
【0169】
そして、ECU50は、ステップ326において、パイロット噴射間隔AINTと「0」とを比較する。ここでパイロット噴射間隔AINTが「0」未満である旨判断された場合、ECU50は、ステップ328において、パイロット噴射間隔AINTを「0」に設定する。また、前述したステップ320において否定判定された場合も同様に、ECU50は、ステップ328の処理を実行する。
【0170】
上記各ステップ320,326,328の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt14〜t16の期間において、パイロット噴射間隔AINTは「0」に保持されるようになる。
【0171】
上記ステップ328,330の処理を実行した後、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。また、ステップ310においてパイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTB未満である旨判断された場合、若しくはステップ326においてパイロット噴射間隔AINTが「0」以上である旨判断された場合も、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0172】
以上説明したように、本ルーチンの各処理により、パイロット噴射間隔AINTが算出される。
次に、「噴射時期算出ルーチン」の各処理について図11及び図12に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、パイロット噴射及びメイン噴射の噴射時期を算出するためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0173】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ400において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ402に移行する。ステップ402において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ404に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「0」であるか否かを判定する。
【0174】
ステップ404において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ406において、噴射時期補正量APL1を所定量Hと等しく設定する。一方、ステップ404において否定判定された場合、ECU50は、ステップ408において、現在の噴射時期補正量APL1に対して所定量Jを加算し、その加算後の値(APL1+J)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0175】
上記ステップ406,408の処理を実行した後、ECU50は、ステップ410において、噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|と、第1の補正制限値APL1LMT1の絶対値|APL1LMT1|とを比較する。
【0176】
ここで、第1の補正制限値APL1LMT1は、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、前述したように、条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされるように設定されている。ECU50のメモリには、この第1の補正制限値APL1LMT1と、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されている。また、ECU50のメモリには更に、前記各所定量H,Jと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されている。ECU50は、上記各ステップ406,408,410等の処理を実行する際に、上記各関数データを参照することにより、第1の補正制限値APL1LMT1及び各所定量H,Jをそれぞれ算出する。
【0177】
例えば、図6(a)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも小さい場合、上記第1の補正制限値APL1LMT1は、正の値(APL1LMT1>0)として算出される。また、このように第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには、上記所定量H,Jも同様に、正の値(H>0,J>0)として算出される。
【0178】
このように第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt1〜t4の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は第1の補正制限値APL1LMT1にまで徐々に増加するようになる。
【0179】
これに対して、例えば、図6(b)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも大きくなるような状況も、機関運転状態(機関回転数NE及び基本噴射量QMAINB)に応じて発生し得る。このような場合、第1の補正制限値APL1LMT1は、負の値(APL1LMT1<0)として算出される。また、このように第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには、上記所定量H,Jも同様に、負の値(H<0,J<0)として算出される。
【0180】
このように第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt1〜t4の期間において、噴射時期補正量APL1は、同図(g)に示す変化態様とは異なり、負の値として設定された第1の補正制限値APL1LMT1にまで徐々に減少するようになる。また、
以上のように、噴射時期補正量APL1が第1の補正制限値APL1LMT1にまで徐々に変更されるのに伴って、メイン噴射時期AMAINも徐々に変更される。即ち、第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出される場合には、メイン噴射時期AMAINは徐々に進角側の時期に変更され[タイミングt1〜t4]、第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出される場合には、逆にメイン噴射時期AMAINは徐々に遅角側の時期に変更されるようになる。また、上記各所定量H,Jは、メイン噴射時期AMAINの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|H|,|J|が十分に小さく設定されている。
【0181】
そして、上記ステップ410において噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|が第1の補正制限値APL1LMT1の絶対値|APL1LMT1|以上である旨判断された場合[タイミングt3]、ECU50は、ステップ412において、噴射時期補正量APL1を第1の補正制限値APL1LMT1と等しく設定した後、処理をステップ414に移行する。一方、ステップ410において、噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|が第1の補正制限値APL1LMT1の絶対値|APL1LMT1|未満である旨判断された場合も同様に、ECU50は処理をステップ414に移行する。
【0182】
ステップ414において、ECU50は、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ460に移行する。一方、ステップ414において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ416において、噴射時期補正量APL1を第2の補正制限値APL1LMT2と等しく設定する。
【0183】
上記ステップ414,416の各処理を実行することにより、図5に示すタイミングt4において、噴射時期補正量APL1は、第1の補正制限値APL1LMT1から第2の補正制限値APL1LMT2にまで変更され、タイミングt5においてもその第2の補正制限値APL1LMT2と等しく保持される。このステップ416の処理を実行した後、ECU50は、図12に示すステップ460に処理を移行する。
【0184】
一方、前述したステップ402において否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ440に移行する。ステップ440において、ECU50は、現在の噴射時期補正量APL1に対して所定量Mを加算し、その加算後の値(APL1+M)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0185】
この所定量Mは、前記所定量H,Jと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものである。ECU50のメモリには、この所定量Mと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して所定量Mを算出する。また、この所定量Mは、前記第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには、前記各所定量H,Jと同様、正の値(M>0)として算出され、第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには、同じく負の値(M<0)として算出される。
【0186】
例えば、この所定量Mが正の値に設定されている場合には、ステップ440の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt6〜t8の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に増加するようになり、同所定量Mが負の値に設定されている場合には、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に減少するようになる。
【0187】
そして、この噴射時期補正量APL1の変更に伴ってメイン噴射時期APLTMも徐々に基準メイン噴射時期APLTMBよりも進角側或いは遅角側の時期に変更されるが、上記所定量Mは、こうしたメイン噴射時期APLTMの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|M|が十分に小さく設定されている。
【0188】
次に、ECU50は、ステップ442において、噴射時期補正量APL1の符号が変化したか否か、即ち、前回の制御周期において「0」又は負の値であった噴射時期補正量APL1が今回の制御周期において正の値に変化したか否か、逆に、前回の制御周期において「0」又は正の値であった噴射時期補正量APL1が今回の制御周期において負の値に変化したか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ444において、噴射時期補正量APL1を「0」に設定する。ステップ444の処理を実行した後、又は、ステップ442において否定判定された場合、ECU50は処理をステップ460に移行する。
【0189】
上記各ステップ442,444の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt8以降、噴射時期補正量APL1は「0」に保持されるようになり、定常状態に対応したメイン噴射が実行されるようになる。
【0190】
これに対して、図11に示すステップ400において否定判定された場合、ECU50は、処理をステップ420に移行する。ステップ420において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ422に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。
【0191】
ステップ422において否定判定された場合、ECU50は、ステップ426において、噴射時期補正量APL1を所定量Lと等しく設定する。一方、ステップ422において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ424において現在の噴射時期補正量APL1から所定量Kを減算し、その減算した後の値(APL1ーK)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0192】
そして、上記ステップ424,426の処理を実行した後、ECU50は、ステップ428において、噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|と、第2の補正制限値APL1LMT2の絶対値|APL1LMT2|とを比較する。
【0193】
ここで、第2の補正制限値APL1LMT2は、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、前述したように、条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされるように設定されている。ECU50のメモリには、この第2の補正制限値APL1LMT2と、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されている。また、ECU50のメモリには更に、前記各所定量L,Kと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されている。ECU50は、上記各ステップ424,426,428の処理等を実行する際に、上記各関数データを参照することにより、第2の補正制限値APL1LMT2及び各所定量L,Kをそれぞれ算出する。
【0194】
例えば、図6(a)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも小さい場合、第2の補正制限値APL1LMT2は、負の値(APL1LMT2<0)として算出される。また、このように第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには、上記所定量L,Kは、正の値(L>0,K>0)として算出される。
【0195】
このように第2の補正制限値APL1LMT2が負の値、各所定量L,Kが正の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt9〜t12の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は「0」から第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に減少するようになる。
【0196】
これに対して、例えば、図6(b)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも大きい場合、第2の補正制限値APL1LMT2は正の値(APL1LMT2>0)として算出される。また、このように第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには、上記所定量L,Kは負の値(L<0,K<0)として算出される。
【0197】
このように第2の補正制限値APL1LMT2が正の値、各所定量L,Kが負の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt9〜t12の期間において、噴射時期補正量APL1は、同図(g)に示す変化態様とは異なり、「0」から第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に増加するようになる。
【0198】
以上のように、噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に変更されるのに伴って、メイン噴射時期APLTMも徐々に変更される。即ち、第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出される場合には、メイン噴射時期APLTMは徐々に遅角側の時期に変更され[タイミングt9〜t12]、第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出される場合には、逆にメイン噴射時期APLTMは徐々に進角側の時期に変更されるようになる。また、上記各所定量L,Kは、メイン噴射時期APLTMの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|L|,|K|が十分に小さく設定されている。
【0199】
また、上記第2の補正制限値APL1LMT2及び前述した第1の補正制限値APL1LMT1は、前記第1の過渡トルク値Tb及び第2の過渡トルク値Tcに関して上記条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされていれば、それぞれ任意に設定することができる。例えば、図6(a)に示すように、これら各過渡トルク値Tb,Tcがメイン噴射モード時基準トルク値Taとパイロット噴射モード時基準トルク値Tdとの略中間値となるように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定する他、上記各過渡トルク値Tb,Tcが、よりメイン噴射モード時基準トルク値Ta側の値となるように、或いは、よりパイロット噴射モード時基準トルク値Td側の値となるように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定することも可能である。
【0200】
しかしながら、これら各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2の絶対値をあまり大きく設定するようにすると、それぞれの噴射モード時において基準メイン噴射時期AMAINB,APLTMB、即ち機関運転状態に基づく噴射時期と大きく異なった時期にメイン噴射が実行されるようになるため、燃焼騒音や排煙濃度の増大を招くおそれがある。このため、本実施形態の燃料噴射制御装置では、こうした燃焼騒音や排煙濃度の増大が許容範囲内に抑えられように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定するようにしている。
【0201】
以上のように、噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に変更されるのに伴って、メイン噴射時期APLTMも徐々に変更される。即ち、第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出される場合には、メイン噴射時期AMAINは徐々に遅角側の時期に変更され、第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出される場合には、逆にメイン噴射時期AMAINは徐々に進角側の時期に変更されるようになる。
【0202】
前述したステップ428において噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|が第2の補正制限値APL1LMT2の絶対値|APL1LMT2|以下である旨判断された場合[タイミングt11]、ECU50は、ステップ430において、噴射時期補正量APL1を第2の補正制限値APL1LMT2と等しく設定した後、処理をステップ432に移行する。一方、ステップ428において噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2より大きい旨判断された場合も同様に、ECU50は、処理をステップ432に移行する。
【0203】
ステップ432において、ECU50は、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ460に移行する。一方、ステップ432において肯定判定された場合[タイミングt12]、ECU50は、ステップ434において、噴射時期補正量APL1を第1の補正制限値APL1LMT1と等しく設定した後、処理をステップ460に移行する。
【0204】
一方、前述したステップ420において否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ450に移行する。ステップ450において、ECU50は、現在の噴射時期補正量APL1から所定量Nを減算し、その減算した値(=APL1−N)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0205】
この所定量Nは、前記所定量L,Kと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものである。ECU50のメモリには、この所定量Nと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して所定量Nを算出する。また、この所定量Nは、前記第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには、前記所定量L,Kと同様、正の値として算出され、第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには、負の値として算出される。
【0206】
例えば、この所定量Nが正の値に設定されている場合には、ステップ450の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt14〜t16の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に減少するようになり、同所定量Nが負の値に設定されている場合には、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に増加するようになる。
【0207】
そして、この噴射時期補正量APL1の変更に伴ってメイン噴射時期AMAINも徐々に基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側或いは遅角側の時期に変更されるが、上記所定量Nは、こうしたメイン噴射時期AMAINの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|N|が十分に小さく設定されている。
【0208】
次に、ECU50は、ステップ452において、前述したステップ442と同様、噴射時期補正量APL1の符号が変化したか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt16]、ECU50は、ステップ454において、噴射時期補正量APL1を「0」に設定する。ステップ454の処理を実行した後、又は、ステップ452において否定判定された場合、ECU50は処理をステップ460に移行する。
【0209】
上記各ステップ452,454の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt16以降、噴射時期補正量APL1は「0」に保持されるようになり、定常状態に対応したメイン噴射が実行されるようになる。
【0210】
ステップ460において、ECU50は、前記パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ462において、次式(6)に基づいてメイン噴射時期APLTM(図3(a)参照)を算出する。
【0211】
APLTM=APLTMB+APL1 ・・・(6)
次に、ECU50は、ステップ466において、前述した式(3)に基づいて前述したパイロット噴射時期APLTを算出する。
【0212】
一方、ステップ460において、否定判定された場合、ECU50は、ステップ464において、次式(7)に基づいて前述したメイン噴射時期AMAIN(図3(b)参照)を算出する。
【0213】
AMAIN=AMAINB+APL1 ・・・(7)
ECU50のメモリには、基準メイン噴射時期AMAINB、基準メイン噴射時期APLTMBと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、上記各ステップ462,464の処理を実行する際に、上記各関数データをそれぞれ参照して基準メイン噴射時期AMAINB、基準メイン噴射時期APLTMBを算出する。
【0214】
ECU50は、ステップ464又はステップ466の処理を実行した後、本ルーチンの処理を一旦終了する。
以上説明したように、本ルーチンの各処理により、メイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAIN、パイロット噴射モード時のパイロット噴射時期APLT及びメイン噴射時期APLTMがそれぞれ算出される。
【0215】
次に、「目標燃料圧算出ルーチン」の各処理について図13に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、コモンレール4の燃料圧PCに係る目標燃料圧を算出するためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0216】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ500において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ502において更に、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ504において、燃料圧補正量PCRPLを所定値Pと等しく設定する。
【0217】
これに対して、ステップ502において否定判定された場合、ECU50は、ステップ506において噴射時期補正量APL1が「0」であるか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ507において、燃料圧補正量PCRPLを「0」に設定する。一方、ステップ506において否定判定された場合、ECU50は、ステップ508において、燃料圧補正量PCRPLを所定値Rと等しく設定する。
【0218】
ここで、上記所定値Pは、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには負の値(P<0)として、同第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには正の値(P>0)として算出されるようになっている。
【0219】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)が第1の補正制限値APL1LMT1に近づくように変更されることにより、メイン噴射時期AMAINが基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側の時期に変更されるタイミングt1〜t4の期間においては、この所定値Pは負の値として算出されることとなる。
【0220】
また、上記所定値Rは、上記所定値Pと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには負の値(R<0)として、同第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには正の値(R>0)として算出されるようになっている。
【0221】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)がタイミングt4において第2の補正制限値APL1LMT2へ変更されることにより、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBよりも遅角側の時期に変更されているタイミングt4〜t8の期間においては、この所定値Rは正の値として算出されることとなる。
【0222】
ECU50のメモリには、上記各所定値P,Rと機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、各ステップ504,508において、これら関数データをそれぞれ参照して所定値P,Rを算出する。
【0223】
前述したステップ500において否定判定された場合、ECU50は、ステップ510において、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ512において、燃料圧補正量PCRPLを所定値Qと等しく設定する。
【0224】
これに対して、ステップ510において否定判定された場合、ECU50は、ステップ514において噴射時期補正量APL1が「0」であるか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ515において、燃料圧補正量PCRPLを「0」に設定する。一方、ステップ514において否定判定された場合、ECU50は、ステップ516において燃料圧補正量PCRPLを所定値Sと等しく設定する。
【0225】
ここで、上記所定値Qは、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには正の値(Q>0)として、同第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには負の値(Q<0)として算出される。
【0226】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)が第2の補正制限値APL1LMT2へと近づくように変更されることにより、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBよりも遅角側の時期に変更されるタイミングt9〜t12の期間においては、この所定値Qは正の値として算出される。
【0227】
また、上記所定値Sは、上記所定値Qと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには負の値(S<0)として、同第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには正の値(S>0)として算出される。
【0228】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)がタイミングt12において第1の補正制限値APL1LMT1へ変更されることにより、メイン噴射時期AMAINが基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側の時期に変更されているタイミングt12〜t16の期間においては、この所定値Sは負の値として算出されることとなる。
【0229】
ECU50のメモリには、上記各所定値Q,Sと機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、各ステップ512,516において、これら関数データを参照して所定値Q,Sを算出する。尚、図5に示すタイミングチャートは、前記所定値Pと所定値Sとが等しく設定されるとともに、前記所定値Rと所定値Qとが等しく設定された場合の制御態様例を示している。
【0230】
上記各ステップ504,507,508,512,515,516の各処理を実行した後、ECU50はステップ520において、次式(8)に基づいて前述した最終目標燃料圧PCRを算出する。
【0231】
PCR=PCRB+PCRPL ・・・(8)
上記ステップ520の処理を実行した後、ECU50は本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0232】
本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、以上説明した制御手順に基づいて燃料の噴射時期、噴射量、噴射圧、パイロット噴射間隔を制御することにより、以下に示す効果を奏することができる。
【0233】
(1)本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切替前における定常状態でのトルク値(メイン噴射モード時基準トルク値Ta,パイロット噴射モード時基準トルク値Td)から過渡トルク値Tb,Tcを経て、燃料噴射形態の切替後における定常状態でのトルク値Ta,Tdにまで機関トルクを徐々に変更するようにし、こうした機関トルクの徐変制御をメイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更することにより行うようにしているため、例えばパイロット噴射間隔の変更に基づいて機関トルクを徐変制御するようにした構成とは異なり、機関トルクの変化速度を確実に制御して燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0234】
(2)特に、本実施形態の燃料噴射制御装置では、燃料噴射形態の切替直前及び切替直後における機関トルクの大きさ、即ち、過渡トルク値Tb,Tcが等しくなるように、燃料噴射形態切替前後のメイン噴射時期AMAIN,APLTMを制御するようにしているため、燃料噴射形態の切替時に発生するトルクショックをより確実に防止することができる。
【0235】
(3)また、本実施形態の燃料噴射制御装置では、上記のようにメイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更する際、同メイン噴射時期AMAIN,APLTMが進角側の時期に変更されるほど、コモンレール4の燃料圧PCを低圧側に制御するようにしているため、同メイン噴射時期AMAIN,APLTMの変更に起因した燃焼騒音の増大や排煙濃度の増加を防止することができる。
【0236】
(4)本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切り替えに伴って、パイロット噴射間隔AINTを徐変するようにしているため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化を緩慢なものとすることができ、トルクショックの発生を更に確実に抑制することができる。
【0237】
(5)更に、本実施形態の燃料噴射制御装置では、上記のようにパイロット噴射間隔AINTが徐変される際に、同パイロット噴射間隔AINTが短くなるほど最終パイロット噴射量QPLT1を少なくするようにしているため、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇を抑制して燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0238】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、上記第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0239】
上記第1の実施形態では、メイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更することにより、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を防止するようにしたが、本実施形態では、最終メイン噴射量QMAINを変更することによって、こうしたトルクショックの発生を防止するようにしている。
【0240】
本実施形態では、前述した「制御用フラグ操作ルーチン」、「噴射量算出ルーチン」、「パイロット噴射間隔算出ルーチン」の他、以下に説明する「メイン噴射量補正ルーチン」が実行される。
【0241】
尚、図9に示す「噴射量算出ルーチン」では、ステップ238において、最終メイン噴射量QMAINを算出するようにしていたが、本実施形態では、このステップ238の処理が省略されており、各ステップ234,236の処理が実行された後は処理が一旦終了されるようになっている。また、本実施形態においては、メイン噴射時期AMAIN,APLTMは、それぞれ基準メイン噴射時期AMAINB,APLTMBと常に等しく設定されるとともに、最終目標燃料圧PCRも基準目標燃料圧PCRBと常に等しく設定されているものとする。
【0242】
以下、「メイン噴射量補正ルーチン」の各処理について図14に示すフローチャート、図5及び図15を併せ参照して説明する。このルーチンは、最終メイン噴射量QMAINに対して補正を行うためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0243】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ600において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ602において更に、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、ステップ622において、最終メイン噴射量QMAINの補正量であるメイン噴射補正量QMAIN1を「0」に設定する[図5に示すタイミングt1〜t4]。一方、ステップ602において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ604において、メイン噴射補正量QMAIN1を補正制限値Xと等しく設定する[タイミングt4]。
【0244】
次に、ECU50は、ステップ606において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、処理をステップ608に移行する。ステップ608において、ECU50は、現在のメイン噴射補正量QMAIN1に所定量Yを加算し、その加算された値(=QMAIN1+Y)を新たなメイン噴射補正量QMAIN1として設定する[タイミングt6,t7]。
【0245】
続いて、ECU50は、ステップ610において、メイン噴射補正量QMAIN1の符号が変化したか否か、即ち、前回の制御周期において「0」又は負の値であったメイン噴射補正量QMAIN1が今回の制御周期において正の値に変化したか否か、逆に、前回の制御周期において「0」又は正の値であったメイン噴射補正量QMAIN1が今回の制御周期において負の値に変化したか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ612において、メイン噴射補正量QMAIN1を「0」に設定する[タイミングt8]。
【0246】
一方、ステップ606において肯定判定された場合、ステップ610において否定判定された場合、或いはステップ612の処理を実行した後はいずれも、ECU50は、処理をステップ630に移行する。
【0247】
また、前述したステップ600において否定判定された場合、ECU50は、ステップ620において、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ624において、現在のメイン噴射補正量QMAIN1から所定量Zを減算し、その減算した値(=QMAIN1−Z)を新たなメイン噴射補正量QMAIN1として設定する[タイミングt9,t10]。
【0248】
次に、ステップ626において、ECU50は、メイン噴射補正量QMAIN1の絶対値|QMAIN1|と補正制限値Xの絶対値|X|とを比較する。ここでメイン噴射補正量QMAIN1の絶対値|QMAIN1|が補正制限値Xの絶対値|X|より大きい旨判断された場合、ECU50は、ステップ628において、メイン噴射補正量QMAIN1を補正制限値Xと等しく設定した後[タイミングt11]、処理をステップ630に移行する。一方、ステップ626において、メイン噴射補正量QMAIN1の絶対値|QMAIN1|が補正制限値Xの絶対値|X|以下である旨判断された場合、ECU50は、ステップ630の処理を実行する。
【0249】
これに対して、前記ステップ620において否定判定された場合、ECU50は、処理をステップ622に移行する。そして、同ステップ622において、ECU50は、メイン噴射補正量QMAIN1を「0」に設定した後[タイミングt13〜t16]、ステップ630の処理を実行する。
【0250】
ステップ630において、ECU50は、次式(9)に基づいて最終メイン噴射量QMAINを算出する。
QMAIN=QMAINB+QMAIN1−QPLT1 ・・・(9)
このステップ630の処理を実行した後、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0251】
ここで、前述した補正制限値X及び所定量Y,Zは、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものである。ECU50のメモリには、上記補正制限値X、所定量Y,Zのそれぞれと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、補正制限値X、所定量Y,Zを算出する際に、これら関数データを参照する。
【0252】
また、上記補正制限値Xは、以下の各条件式(10−a),(10−b)の少なくとも一方が満たされるように設定されている。
Te=Tf≦Tg ・・・(10−a)
Tg≦Tf=Te ・・・(10−b)
Te:メイン噴射モード時基準トルク値
Tg:パイロット噴射モード時基準トルク値
Tf:過渡トルク値
ここで、上記メイン噴射モード時基準トルク値Teは、メイン噴射モード時の最終メイン噴射量QMAINを、基本噴射量QMAINBから最終パイロット噴射量QPLT1を減算した量(=QMAINB−QPLT1)としたときのトルク値であり、パイロット噴射モード時基準トルク値Tgは、パイロット噴射モード時の最終メイン噴射量QMAINを上記量(QMAINB−QPLT1)としたときのトルク値である。また、過渡トルク値Tfは、パイロット噴射モード時において、最終メイン噴射量QMAINを、上記量(QMAINB−QPLT1)から補正制限値X分だけ増量或いは減量したときのトルク値である。
【0253】
例えば、図15(a)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Teがパイロット噴射モード時基準トルク値Tgよりも小さい場合、上記補正制限値Xは、負の値(X<0)として算出される。また、このように補正制限値Xが負の値として算出される場合、上記各所定量Y,Zはいずれも正の値(Y>0,Z>0)として算出される。
【0254】
このように補正制限値Xが負の値として算出される場合には、図5に示すように、タイミングt4において、メイン噴射補正量QMAIN1(同図(j)参照)は「0」から補正制限値Xへと減少するようになる。その結果、タイミングt4においては、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられると同時に、最終メイン噴射量QMAINが補正制限値X分だけ減量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点E1で示す状態から点F1で示す状態にまで変化する。
【0255】
ここで、本実施形態の燃料噴射制御装置では、上記各点E1,F1で示す状態での機関トルク、即ち、メイン噴射モード時基準トルク値Teと過渡トルク値Tfとが一致するように、前記補正制限値Xを設定するようにしているため(上記式(10−a),(10−b)参照)、燃料噴射形態の切替時に機関トルクの変化は殆ど無い。従って、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0256】
また、タイミングt6〜t8の期間では、メイン噴射補正量QMAIN1(図5(j)参照)は補正制限値Xから「0」となるまで徐々に増加する。その結果、このタイミングt6〜t8の期間では、最終メイン噴射量QMAINが、補正制限値X分だけ減量された状態から定常時の量(=QMAINB−QPLT1)にまで徐々に増量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点F1で示す状態から点G1で示す状態にまで徐々に増加するようになる。
【0257】
ここで、最終メイン噴射量QMAINは、パイロット噴射間隔AINT等と比較して機関トルクとの相関性が高く、同トルクに与える影響が大きいため、これを変更することにより、機関トルクの大きさを確実に制御することが可能である。従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、上記各点F1,G1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、最終メイン噴射量QMAINの増加速度、即ち、前記所定量Yの大きさを適宜調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、機関トルクを前記過渡トルク値Tfからパイロット噴射モード時基準トルク値Tgにまで徐々に増加させることができる。
【0258】
更に、タイミングt9〜t12の期間では、メイン噴射補正量QMAIN1が「0」から補正制限値Xと等しくなるまで減少する。その結果、このタイミングt9〜t12の期間では、最終メイン噴射量QMAINが、定常時の量(=QMAINB−QPLT1)から補正制限値X分だけ減量された量にまで徐々に減量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点G1で示す状態から点F1で示す状態にまで徐々に減少するようになる。
【0259】
そして、このタイミングt9〜t12の期間においても、タイミングt6〜t8の期間における場合と同様、最終メイン噴射量QMAINの減少速度、即ち、前記所定量Zの大きさを適宜調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、機関トルクをパイロット噴射モード時基準トルク値Tgから過渡トルク値Tfにまで徐々に減少させることができる。
【0260】
また、タイミングt12において、メイン噴射補正量QMAIN1は補正制限値Xから「0」に増加されるようになる。その結果、このタイミングt12においては、燃料噴射形態がパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられると同時に、最終メイン噴射量QMAINが補正制限値X分だけ増量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点F1で示す状態から点E1で示す状態にまで変化するようになる。
【0261】
そして、このように、燃料噴射形態が切り替えられても、タイミングt4における場合と同様、その切替時に伴う機関トルクの変化は殆ど無いため、トルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0262】
これに対して、図15(b)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Teがパイロット噴射モード時基準トルク値Tgよりも大きくなるような状況も、機関運転状態(機関回転数NE及び基本噴射量QMAINB)に応じて発生し得る。このような場合、上記補正制限値Xは、正の値(X>0)として算出される。また、このように補正制限値Xが正の値として算出される場合、上記各所定量Y,Zはいずれも負の値(Y<0,Z<0)として算出される。
【0263】
そして、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、このように補正制限値Xが正の値として算出される場合も、前述した、補正制限値Xが負の値として算出される場合と同様、燃料噴射形態の切替時におけるトルクショックを防止することができるとともに、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、機関トルクを、過渡トルク値Tfからパイロット噴射モード時基準トルク値Tgにまで徐々に減少させ、或いは、パイロット噴射モード時基準トルク値Tgから過渡トルク値Tfにまで徐々に増加させることができる。
【0264】
以上説明した本実施形態によれば、前述した第1の実施形態における効果(4),(5)に加えて、更に以下に示す効果を奏することができる。
(6)本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切替前における定常状態でのトルク値(メイン噴射モード時基準トルク値Te,パイロット噴射モード時基準トルク値Tg)から過渡トルク値Tfを経て、燃料噴射形態の切替後における定常状態でのトルク値Te,Tgにまで機関トルクを徐々に変更するようにし、こうした機関トルクの徐変制御を最終メイン噴射量QMAINを変更することにより行うようにしているため、例えばパイロット噴射間隔の変更に基づいて機関トルクを徐変制御するようにした構成とは異なり、機関トルクの変化速度を確実に制御して燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0265】
(7)特に、本実施形態の燃料噴射制御装置では、燃料噴射形態の切替直前及び切替直後における機関トルクの大きさ、即ち、前記過渡トルク値Tfとメイン噴射モード時基準トルク値Teとが等しくなるように、燃料噴射形態の切替前後において最終メイン噴射量QMAINを制御するようにしているため、燃料噴射形態の切替時に発生するトルクショックをより確実に防止することができる。
【0266】
以上、本発明を具体化した各実施形態について説明したが、これら各実施形態は以下に示すようにその構成を変更して実施することもできる。
・上記第1の実施形態ではメイン噴射の噴射時期を変更することにより、また、第2の実施形態ではメイン噴射の噴射量を変更することにより、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を防止するようにしたが、メイン噴射の噴射圧を変更することによっても、上記トルクショックの発生を防止することができる。より具体的には、前述した最終目標燃料圧PCRの補正量である燃料圧補正量PCRPLを、例えば、図5(j)に示すメイン噴射補正量QMAIN1と同様の変化態様をもって変化させるようにする。
【0267】
即ち、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられる際に機関トルクが増加するような場合にあっては、まず、燃料噴射形態をメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えると同時に、燃料圧補正量PCRPLを「0」から所定量だけ減少させて最終目標燃料圧PCRを低下させる[図5に示すタイミングt4]。その結果、噴射圧が低下するため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑えることができる。次に、燃料噴射形態がパイロット噴射モードとなった後、燃料圧補正量PCRPLを徐々に「0」にまで増大させることにより、最終目標燃料圧PCRを増大させる[タイミングt6〜t8]。その結果、機関トルクは定常時のトルク値にまで徐々に増大するようになる。
【0268】
一方、燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられるときには、まず、燃料噴射形態を切り替える前に、燃料圧補正量PCRPLを「0」から徐々に減少させて最終目標燃料圧PCRを低下させる[タイミングt9〜t12]。次に、燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えると同時に、燃料圧補正量PCRPLを「0」にまで増加させて最終目標燃料圧PCRを増大させる[タイミングt12]。
【0269】
上記構成によっても、メイン噴射の噴射圧は、噴射時期や噴射量と同様、機関トルクとの相関性が高く、同トルクに与える影響が大きいため、これを変更することにより、機関トルクの変化速度を確実に制御して燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0270】
・上記第2の実施形態では、トルクショックを防止するために最終メイン噴射量QMAINを変更するようにしたが、この最終メイン噴射量QMAINに加えて、第1の実施形態と同様、メイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更するようにし、これら最終メイン噴射量QMAIN及びメイン噴射時期AMAIN,APLTMの双方を変更することによってトルクショックを防止するようにしてもよい。このように構成すれば、前述した各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2の絶対値|APL1LMT1|,|APL1LMT2|、及び補正制限値Xの絶対値|X|を小さく設定することができるようになるため、これら最終メイン噴射量QMAIN及びメイン噴射時期AMAIN,APLTMの変更に伴う燃焼騒音や排煙濃度の増大を極力抑えることができる。
【0271】
・第1の実施形態では、第1の過渡トルク値Tbと第2の過渡トルク値Tcとを一致させるようにしたが、燃料噴射形態の切替時に発生するトルクショックが体感できない程度にまで抑えられるように両トルク値Tb,Tcの絶対差|Tb−Tc|を小さく設定するのであれば、これら過渡トルク値Tb,Tcを異なる値に設定するようにしてもよい。また、第2の実施形態においても、過渡トルク値Tfとメイン噴射モード時基準トルク値Teとを一致させるようにしたが、これら両トルク値Tf,Teに関しても同様に、異なる値に設定するようにしてもよい。
【0272】
・第1の実施形態において、メイン噴射時期の制御態様は、例えば以下に示す各制御態様[a],[b]のように変更することもできる。
[a]燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替える際には、パイロット噴射モードにおいてメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTBに設定している状態(図16(a):点A2)から燃料噴射形態を切り替えると同時に、その切替前後における各トルク値Ta,Tc(図16(a)参照)が略一致するように、メイン噴射モードでのメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBよりも遅角側の時期に設定する(点A2→点C2)。次に、メイン噴射時期AMAINをその遅角側の時期から基準メイン噴射時期AMAINBにまで徐々に進角側の時期に変更する(点C2→点D2)。従って、機関トルクは、同図(a)に示すように、所定値Ta(=Tc)から所定値Tdにまで徐々に増加するようになる。
【0273】
一方、燃料噴射形態をメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替える際には、その切り替えを行う前に、まず、燃料噴射形態の切替前後におけるトルク値Ta,Tcが略一致するようになるまで、メイン噴射モードでのメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBから徐々に遅角側の時期に変更する(点D2→点C2)。次に、燃料噴射形態を切り替えると同時に、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTBに設定する(点C2→点A2)。従って、機関トルクは、同図(a)に示すように、所定値Tdから所定値Ta(=Tc)にまで徐々に減少するようになる。
【0274】
[b]燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替える際には、その切り替えを行う前に、まず、燃料噴射形態の切替前後におけるトルク値Tb,Td(図16(b)参照)が略一致するようになるまで、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTBから徐々に進角側の時期に変更する(点A3→点B3)。次に、燃料噴射形態を切り替えると同時に、メイン噴射モードでのメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBに設定する(点B3→点D3)。従って、機関トルクは、同図(b)に示すように、同図(a)に示すように、所定値Taから所定値Td(=Tb)にまで徐々に増大するようになる。
【0275】
一方、燃料噴射形態をメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替える際には、メイン噴射モードにおいてメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBに設定している状態(点D3)から燃料噴射形態を切り替えると同時に、その切替前後における各トルク値Tb,Tdが略一致するように、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTを基準メイン噴射時期APLTBよりも遅角側の時期に設定する(点D3→点B3)。次に、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTを基準メイン噴射時期APLTBにまで徐々に遅角側の時期に変更する(点B3→点A3)。従って、機関トルクは、同図(b)に示すように、所定値Td(=Tb)から所定値Taにまで徐々に減少するようになる。
【0276】
以上説明した各制御態様[a],[b]に基づいて、メイン噴射時期を制御するようにしても第1の実施形態と同等の作用効果を奏することができる。
・上記第1の実施形態では、噴射時期補正量APL1に関する前記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2、各所定量H,J,M,L,K,N、燃料圧補正量PCRPLに関する各所定値P,Q,R,Sをそれぞれ機関運転状態に基づいて算出するようにしたが、例えば、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化の傾向が機関運転状態に因らず略一定であるとみなせる場合には、これら各値を一定値として設定するようにしてもよい。また、第2の実施形態において、メイン噴射補正量QMAIN1に関する補正制限値X及び各所定量Y,Zについても同様に、これら各値を一定値として設定することもできる。
【0277】
・上記第1の実施形態では、燃料圧補正量PCRPLに関する各所定値P,Q,R,Sをそれぞれ機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出するようにしたが、例えば、これらパラメータNE,QMAINBに加え、上記水温センサ21により検出される冷却水温THWや燃料温センサ23により検出される燃料温THF等に基づいて上記各値を算出するようにしてもよい。このように冷却水温THWや燃料温THFに応じて上記各値を算出することにより、燃料の微粒化度をより適切に制御できるようになる。
【0278】
・上記各実施形態の燃料噴射制御装置では、サプライポンプ6からコモンレール4内に燃料を圧送し、同コモンレール4からインジェクタ2に対して燃料を供給する構成を採用するようにしたが、いわゆる分配型のサプライポンプを用いるようにし、同ポンプから各インジェクタ2に対して燃料を供給するようにした構成を採用することもできる。
【0279】
上記各実施形態から把握できる技術的思想についてその効果ともに以下に記載する。
(1) 請求項4に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制御値設定手段は、前記過渡トルク値が前記切替後トルク値と等しくなるように前記過渡制御値を設定するものであることを特徴とする。
【0280】
(2) 請求項4に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制御値設定手段は、前記過渡トルク値が前記切替前トルク値と等しくなるように前記過渡制御値を設定するものであることを特徴とする。
【0281】
上記(1)又は(2)の構成によれば、燃料噴射形態の切替時において機関トルクが変化しなくなるため、燃料噴射形態の切り替えと同時に発生する機関トルクの急激な変化が確実に抑制され、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0282】
【発明の効果】
請求項1乃至9に記載した発明では、メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制するようにしている。このメイン噴射に係る制御値は、機関燃焼状態に対して直接影響を及ぼすものであるため、パイロット噴射間隔と比較して機関トルクとの相関性が高い。従って、このメイン噴射に係る制御値を変更することにより、機関トルクを確実に制御することが可能になり、燃料噴射形態の切り替えに伴う急激な機関トルクの変化が抑制されるようになる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0284】
特に、請求項1に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値へと徐変させられるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化が緩慢なものとなる。その結果、機関トルクの変化をその徐変速度に応じて確実に制御しつつ、上記トルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0285】
請求項2、4乃至6に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値と切替後トルク値との間の過渡トルク値となるように制御されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化がより緩慢なものとなる。その結果、上記トルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0286】
また、請求項3又は4に記載した発明によれば、燃料噴射形態の切替前、或いは燃料噴射形態の切替後における機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、同機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。また、燃料噴射形態の切替時における機関トルクのトルク変化量が相対的に小さなものとなる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生をより確実に防止することができる。
【0287】
また、請求項5又は6に記載した発明によれば、燃料噴射形態の切替前及び切替後における機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、同機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。また、燃料噴射形態の切替時における機関トルクのトルク変化量が相対的に小さなものとなる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生をより確実に防止することができる。
【0288】
特に、請求項6に記載した発明では、燃料噴射形態の切替時において機関トルクが変化しなくなるため、燃料噴射形態の切り替えと同時に発生する機関トルクの急激な変化が確実に抑制され、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0289】
また、請求項7又は8に記載した発明では、急激な機関トルク変化の発生を抑制すべくメイン噴射の噴射時期が進角側に変更されるほど、同噴射時期がメイン噴射の噴射圧が低圧側に変更される。従って、メイン噴射の噴射時期が相対的に進角側に変更されるときには、噴射圧の低下により噴射燃料の微粒化が抑えられるため、急激な燃焼圧の上昇が抑制される。一方、メイン噴射の噴射時期が相対的に遅角側に変更されるときには、噴射圧の増大によって噴射燃料の微粒化が促進されるようになるため、燃料の不完全燃焼が抑制される。その結果、メイン噴射の噴射時期の変更に伴う燃焼騒音の増大や排煙濃度の増加を防止することができる。
【0290】
請求項9に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際にメイン噴射とパイロット噴射との噴射間隔、即ちパイロット噴射間隔が徐変されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化が緩慢なものとなる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生をより確実に防止することができる。更に、パイロット噴射間隔が相対的に短く設定されるような場合には、パイロット噴射の噴射量が減量されるため、パイロット噴射によって一時的に上昇した燃焼圧は、より早期に低下し始めるようになる。従って、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇が抑制される。その結果、パイロット噴射による燃焼圧上昇の緩和作用を有効に利用して、燃焼騒音の増大を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料噴射制御装置を示す概略構成図。
【図2】定常時パイロット噴射量と機関回転数及び基本噴射量との関係を示すグラフ。
【図3】電磁弁のオン/オフ状態の変化態様を示すタイミングチャート。
【図4】基準目標燃料圧と機関回転数及び基本噴射量との関係を示すグラフ。
【図5】燃料噴射制御装置による制御態様例を説明するためのタイミングチャート。
【図6】パイロット噴射モード時及びメイン噴射モード時のメイン噴射時期と機関トルクとの関係を示すグラフ。
【図7】制御用フラグの操作手順を示すフローチャート。
【図8】制御用フラグの操作手順を示すフローチャート。
【図9】メイン噴射及びパイロット噴射における噴射量の算出手順を示すフローチャート。
【図10】パイロット噴射間隔の算出手順を示すフローチャート。
【図11】メイン噴射及びパイロット噴射における噴射時期の算出手順を示すフローチャート。
【図12】メイン噴射及びパイロット噴射における噴射時期の算出手順を示すフローチャート。
【図13】目標燃料圧の算出手順を示すフローチャート。
【図14】メイン噴射量の補正手順を示すフローチャート。
【図15】パイロット噴射モード時及びメイン噴射モード時の最終メイン噴射量と機関トルクとの関係を示すグラフ。
【図16】パイロット噴射モード時及びメイン噴射モード時のメイン噴射時期と機関トルクとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…ディーゼルエンジン、2…インジェクタ、4…コモンレール、6…サプライポンプ、8…燃料タンク、15…アクセルペダル、20…アクセルセンサ、50…ECU。
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に係り、詳しくは、機関運転状態に応じてパイロット噴射を実行する内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンにおける燃焼過程は、予混合燃焼期間と、この予混合燃焼期間に続く拡散燃焼期間に大別できる。予混合燃焼期間では、燃焼室内に噴射された燃料が可燃混合気となって自己着火することにより、燃料の燃焼が急激に進行する。そして、拡散燃焼期間では、予混合燃焼期間で燃焼室内に生成された燃焼ガス中に燃料が噴射されることになるため、同燃料の燃焼が継続して行われるようになる。ところで、予混合燃焼期間では、上記のように燃焼が急激に進行するため、燃焼室内における燃焼圧の上昇率が大きくなり、また燃焼温度も極めて高くなる傾向がある。従って、この予混合燃焼期間が長くなると、即ち自己着火によって急激に燃焼する燃料の割合が増加すると、燃焼騒音の増大や、排気中における窒素酸化物(NOx )の増大を招くこととなる。
【0003】
こうした燃焼騒音やNOx の増大を防止するために、パイロット噴射を行うようにした燃料噴射装置が従来より提案されている。この燃料噴射装置では、燃焼室内に噴射すべき燃料のうち、一部の燃料が噴射(パイロット噴射)された後、その燃料噴射が一旦中断される。そして、パイロット噴射された燃料が着火状態となったときに、再度、残りの燃料が噴射(メイン噴射)される。こうしたパイロット噴射の実行により、予混合燃焼期間が短縮され、自己着火によって急激に燃焼する燃料の割合が減少するようになるため、燃焼圧の上昇が緩慢になり、燃焼室内における燃焼温度も低下する。従って、上記燃料噴射装置によれば、燃焼騒音の増大や排気中のNOx 増大を防止することができる。
【0004】
また、一般に、パイロット噴射は機関が低負荷低回転時にのみ行われる。高負荷時や高回転時にもパイロット噴射を実行するようにすると、排煙濃度が増加するとともに機関出力が低下する傾向があるからである。このため、従来の燃料噴射装置では、燃料の噴射形態をパイロット噴射とメイン噴射が実行されるモードと、メイン噴射のみが実行されるモードとに機関運転状態に応じて選択的に切り替えるようにしている。
【0005】
ところが、上記のように燃料噴射形態を切り替えるようにすると、仮に上記両モードにおいて燃焼室に噴射される燃料の総量が同じであっても、その切り替えに伴って燃焼室内における燃焼状態が大きく変化するため、機関トルクの急激な変化に起因した、いわゆるトルクショックを招くおそれがある。
【0006】
そこで、特開平5−1609号公報に記載された「ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置」では、燃料噴射形態を切り替える際に、パイロット噴射とメイン噴射との噴射間隔(パイロット噴射間隔)を徐々に変更するようにしている。即ち、この燃料噴射制御装置は、パイロット噴射間隔を徐変することにより、燃焼状態の変化を緩慢なものとしてトルクショックの発生を抑制しようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したようなパイロット噴射による作用は、パイロット噴射された燃料が自己着火した後にメイン噴射が実行されていることが前提となる。即ち、パイロット噴射間隔が短くなり、パイロット噴射による燃料が自己着火する前にメイン噴射が実行されるようになった場合、或いはその自己着火後、極短時間のうちにメイン噴射が実行されるようになった場合には、パイロット噴射による燃料はもはや火種として機能しなくなるため、パイロット噴射を実行しているのにも拘わらず、燃焼室内における燃焼状態の変化は、メイン噴射のみを実行したときと略同様のものとなる。
【0008】
従って、上記従来の燃料制御装置において、パイロット噴射間隔の徐変により機関トルクを確実に制御できるのは、そのパイロット噴射間隔が比較的長く設定されているときに限られ、パイロット噴射間隔が短く設定され、パイロット噴射された燃料が火種として機能していないときには、仮にパイロット噴射間隔を変化させたとしても、機関トルクの制御はできないこととなる。こうした理由から、従来の燃料制御装置によって抑制できるトルクショックには自ずと限界があり、燃料噴射形態の切替前後における機関トルクが大きく異なるような状況下で発生するトルクショックには対処しきれないものとなっていた。
【0009】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明では、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる前後に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値から切替後における切替後トルク値へと徐変させるトルク制御手段を有し、燃料噴射形態が切り替えられる前後にパイロット噴射実行の可否を判定する判定用パイロット噴射量を変化させ、同判定用パイロット噴射量がパイロット噴射を安定して実行することのできる最小量以上のときに同判定用パイロット噴射量による前記パイロット噴射の実行を許可するとともに、同判定用パイロット噴射量が前記最小量を跨いで変化したときに燃料噴射形態の切り替えを行うことにより前記機関トルクの変化を抑制するトルク変化抑制手段を備えるようにしている。
【0015】
また、請求項2に記載した発明では、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる前後に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値と切替後における切替後トルク値との間の過渡トルク値とすべく制御するトルク制御手段を有し、燃料噴射形態が切り替えられる前後にパイロット噴射実行の可否を判定する判定用パイロット噴射量を変化させ、同判定用パイロット噴射量がパイロット噴射を安定して実行することのできる最小量以上のときに同判定用パイロット噴射量による前記パイロット噴射の実行を許可するとともに、同判定用パイロット噴射量が前記最小量を跨いで変化したときに燃料噴射形態の切り替えを行うことにより前記機関トルクの変化を抑制するトルク変化抑制手段を備えるものとしている。
【0016】
上記メイン噴射に係る制御値、特にメイン噴射の噴射時期、噴射量、噴射圧といった制御値は、機関燃焼状態に対して直接影響を及ぼすものであるため、パイロット噴射間隔と比較して機関トルクとの相関性が高い。従って、上記請求項1又は2に記載した発明によれば、このメイン噴射に係る制御値を変更することにより、機関トルクを確実に制御することが可能になり、燃料噴射形態の切り替えに伴う急激な機関トルクの変化が抑制されるようになる。
【0017】
特に、請求項1に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値へと徐変させられるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化が緩慢なものとなる。
【0018】
また、請求項2に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値と切替後トルク値との間の過渡トルク値となるように制御されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化が緩慢なものとなる。
【0019】
請求項3に記載した発明では、請求項1に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク制御手段は、燃料噴射形態の切替直前の機関トルクと切替直後の機関トルクとを一致させるように、燃料噴射形態の切替直前の前記メイン噴射に係る制御値及びその切替直後の前記メイン噴射に係る制御値を設定することで燃料噴射形態を切り替える際の機関トルクの制御を行うこととしている。
【0020】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替前に過渡制御値にまで徐変されることにより、機関トルクが切替前トルク値から徐々に過渡トルク値にまで徐々に変化する。従って、燃料噴射形態の切替前にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。また、こうして機関トルクが変更されることにより、燃料噴射形態が切り替えられる直前の機関トルクと前記切替後トルク値との差が減少することとなる。このため、燃料噴射形態の切替時に、メイン噴射に係る制御値が過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値へと変更されても、そのときのトルク変化量は相対的に小さなものとなる。
【0021】
請求項4に記載した発明では、請求項2に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク制御手段は、燃料噴射形態切替後の噴射形態において機関トルクを過渡トルク値とするためのメイン噴射に係る制御値を過渡制御値として設定する制御値設定手段と、メイン噴射に係る制御値を、燃料噴射形態切替時に過渡制御値へと変更するとともに、燃料噴射形態切替後に過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変させる制御値変更手段とを備えるものとしている。
【0022】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替時に過渡制御値に変更されることにより、機関トルクは切替前トルク値から過渡トルク値にまで変化する。ここで、過渡トルク値は切替前トルク値と切替後トルク値との間のトルク値として設定されているため、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値にまで変化する場合と比較して、燃料噴射形態の切替時に発生する機関トルクの変化量は相対的に小さなものとなる。また、燃料噴射形態の切替後には、メイン噴射に係る制御値が過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変されることにより、機関トルクは過渡トルク値から徐々に切替後トルク値にまで変化する。従って、燃料噴射形態の切替後にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0023】
請求項5に記載した発明は、請求項2に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク制御手段は、燃料噴射形態切替前の噴射形態において機関トルクを切替前トルク値と切替後トルク値との間の第1の過渡トルク値とするためのメイン噴射に係る制御値を第1の過渡制御値として設定するとともに、燃料噴射形態切替後の噴射形態において機関トルクを切替前トルク値と切替後トルク値との間の第2の過渡トルク値とするためのメイン噴射に係る制御値を第2の過渡制御値として設定する制御値設定手段と、メイン噴射に係る制御値を、燃料噴射形態の切替判定後であって実際の切替前に第1の過渡制御値にまで徐変させるとともに、燃料噴射形態切替時に同第1の過渡制御値から第2の過渡制御値へと変更し、燃料噴射形態切替後には第2の過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変させる制御値変更手段とを備えるものとしている。
【0024】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替前に第1の過渡制御値にまで徐変されることにより、機関トルクは切替前トルク値から第1の過渡トルク値にまで徐々に変化する。従って、燃料噴射形態の切替前にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0025】
次に、燃料噴射形態の切替時に、メイン噴射に係る制御値が、第1の過渡制御値から第2の過渡制御値に変更されることにより、機関トルクは第1の過渡トルク値から第2の過渡トルク値へと変化する。ここで、これら各過渡トルク値はいずれも切替前トルク値と切替後トルク値との間のトルク値として設定されているため、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値にまで変化する場合と比較して、燃料噴射形態の切替時に発生する機関トルクの変化量は相対的に小さなものとなる。
【0026】
更に、燃料噴射形態の切替後には、メイン噴射に係る制御値が、第2の過渡制御値から機関トルクを切替後トルク値とするための制御値にまで徐変されることにより、機関トルクは第2の過渡トルク値から切替後トルク値にまで徐々に変化する。従って、燃料噴射形態の切替後にあっては、機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0027】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、制御値設定手段は、第1の過渡トルク値と第2の過渡トルク値とが等しくなるように第1の過渡制御値及び第2の過渡制御値を設定するものであるとしている。
【0028】
上記構成では、メイン噴射に係る制御値が、燃料噴射形態の切替時に第1の過渡制御値から第2の過渡制御値に変更されても、機関トルクは変化しないようになる。従って、上記構成によれば、請求項6に記載した発明の作用に加えて、特に、燃料噴射形態の切り替えと同時に発生する機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。
【0029】
請求項7に記載した発明は、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる際に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値から切替後における切替後トルク値へと徐変させるトルク制御手段を有するトルク変化抑制手段を備え、トルク変化抑制手段は、メイン噴射に係る制御値として少なくともメイン噴射の噴射時期を変更するとともに、同噴射時期を進角側に変更するほどメイン噴射の噴射圧を低圧側に変更するものであるとしている。
また、請求項8に記載した発明は、内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、燃料噴射形態が切り替えられる際に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値と切替後における切替後トルク値との間の過渡トルク値とすべく制御するトルク制御手段を有するトルク変化抑制手段を備え、前記トルク変化抑制手段は、前記メイン噴射に係る制御値として少なくとも前記メイン噴射の噴射時期を変更するとともに、同噴射時期を進角側に変更するほど前記メイン噴射の噴射圧を低圧側に変更するものであるとしている。
【0030】
一般に、メイン噴射の噴射時期が進角側に変更されるほど、初期の燃焼が圧縮行程において行われるようになるため、燃焼過程において予混合燃焼の占める割合が増大し、急激な燃焼圧の上昇に起因して燃焼騒音が増大する傾向がある。逆に、メイン噴射の噴射時期が遅角側に変更される場合には、燃焼過程において予混合燃焼の占める割合が減少するため、燃焼騒音は低下するものの、燃焼速度が緩慢になり、燃料の不完全燃焼に起因した排煙濃度の増加を招く傾向がある。
【0031】
この点、請求項7又は8に記載の発明の構成によれば、メイン噴射の噴射時期が相対的に進角側に変更されるときには、噴射圧の低下により噴射燃料の微粒化が抑えられるため、急激な燃焼圧の上昇が抑制されるようになる。一方、メイン噴射の噴射時期が相対的に遅角側に変更されるときには、噴射圧の増大によって噴射燃料の微粒化が促進されるようになるため、燃料の不完全燃焼が抑制されるようになる。
【0032】
請求項9に記載した発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、トルク変化抑制手段は、燃料噴射形態が切り替えられる際にメイン噴射とパイロット噴射との噴射間隔を徐変させる噴射間隔制御手段と、同噴射間隔が短くなるほどパイロット噴射の噴射量が減少するように同噴射量を制御するパイロット噴射量制御手段とを更に備えるものとしている。
【0033】
上記構成によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載した発明の作用に加えて、燃料噴射形態が切り替えられる際にメイン噴射とパイロット噴射との噴射間隔、即ちパイロット噴射間隔が徐変されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化が緩慢なものとなる。
【0034】
また、上記のようにパイロット噴射間隔が徐変されることにより、同噴射間隔が相対的に短く設定されるような場合には、パイロット噴射により上昇した燃焼圧が未だ低下しないうちに、メイン噴射が実行されてしまう可能性があるため、急激な燃焼圧の上昇に伴う燃焼騒音の増大を招いてしまうことが懸念される。
【0035】
この点、上記構成によれば、パイロット噴射間隔が相対的に短く設定されるような場合には、パイロット噴射の噴射量が減量されるため、パイロット噴射によって一時的に上昇した燃焼圧は、より早期に低下し始めるようになる。従って、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇が抑制される。
【0038】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
以下、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置をディーゼルエンジンに適用するようにした第1の実施形態について図1〜13を参照して説明する。
【0039】
図1は、本実施形態における燃料噴射制御装置を示す概略構成図である。ディーゼルエンジン1は、複数の気筒(本実施形態では4つの気筒)♯1〜♯4を有して構成されている。ディーゼルエンジン1には、これら各気筒#1〜#4の燃焼室に対応してインジェクタ2がそれぞれ配設されており、同インジェクタ2から各燃焼室内に燃料が噴射されるようになっている。インジェクタ2は、噴射制御用の電磁弁3を備えており、この電磁弁3の開閉動作に基づいてインジェクタ2による燃料噴射が制御される。このインジェクタ2による燃料の噴射形態は、パイロット噴射モード及びメイン噴射モードとの間で切り替えられるようになっている。
【0040】
インジェクタ2は、各気筒#1〜#4に共通のコモンレール4にそれぞれ接続されている。コモンレール4は、逆止弁7が設けられた供給配管5を介してサプライポンプ6の吐出ポート6aに接続されている。
【0041】
サプライポンプ6の吸入ポート6bは、フィルタ9を介して燃料タンク8に接続されている。また、サプライポンプ6のリターンポート6c及び電磁弁3のリターンポート3aはいずれも、リターン配管11によって燃料タンク8に接続されている。
【0042】
上記サプライポンプ6は、ディーゼルエンジン1のクランクシャフト(図示略)の回転に同期して往復動するプランジャ(図示略)を備えており、同プランジャによって加圧室(図示略)内の燃料を加圧し、その加圧された燃料を吐出ポート6aからコモンレール4に圧送する。このサプライポンプ6の燃料圧送量は、吐出ポート6aの近傍に設けられたプレッシャコントロールバルブ(以下、「PCV」と略記する)10の開閉動作に基づいて調節されるようになっている。
【0043】
また、ディーゼルエンジン1には、その運転に係る各種状態量を検出するために各種センサが設けられている。即ち、アクセルペダル15の近傍には、同ペダル15の踏込量(アクセル開度ACCP)を検出するためのアクセルセンサ20が設けられている。ディーゼルエンジン1のシリンダブロックには、その冷却水の温度(冷却水温THW)を検出するための水温センサ21が設けられている。また、コモンレール4には、その内部の燃料圧力(燃料圧PC)を検出するための燃料圧センサ22が設けられている。リターン配管11には、燃料の温度(燃料温THF)を検出するための燃料温センサ23が設けられている。ディーゼルエンジン1の吸気通路16には、同通路16内の吸入空気の圧力(吸気圧PM)を検出するための吸気圧センサ24が設けられている。
【0044】
また、前記クランクシャフトの近傍には、クランクセンサ25が設けられ、同クランクシャフトの回転に同期して回転するカムシャフト(図示略)の近傍には、カムセンサ26が設けられている。これらクランクセンサ25及びカムセンサ26は、クランクシャフトの時間当たりの回転数(機関回転数NE)と、同クランクシャフトの回転角度(クランク角CA)を検出するためのセンサである。
【0045】
これら各センサ20〜26の出力信号は、ディーゼルエンジン1の電子制御装置(以下、「ECU」と略記する)50に入力される。このECU50は、CPU、メモリ、入出力回路、及び駆動回路(いずれも図示略)等を備えて構成されている。ECU50は、上記各センサ20〜26の出力信号に基づいて、ディーゼルエンジン1の運転に係る各種状態量の読み込み及び算出等を実行するとともに、前記電磁弁3やPCV10を制御することにより、燃料噴射制御を実行する。
【0046】
即ち、ECU50は、アクセルセンサ20、水温センサ21、燃料圧センサ22、燃料温センサ23、及び吸気圧センサ24の各出力信号に基づいて、アクセル開度ACCP、冷却水温THW、燃料圧PC、燃料温THF、及び吸気圧PMをそれぞれ読み込む。更に、ECU50は、クランクセンサ25及びカムセンサ26の出力信号に基づいて、機関回転数NE及びクランク角CAを算出する。
【0047】
更に、ECU50は、上記各種状態量に基づいて、燃料の噴射形態、噴射量、噴射時期、及び噴射圧(コモンレール4の燃料圧力)に係る制御を実行する。以下、こうした燃料噴射制御の概略について説明する。
【0048】
[燃料噴射形態の設定]
燃料噴射形態の設定に際して、まず、ECU50は、アクセル開度ACCP及び機関回転数NEに基づいて基本噴射量QMAINBを算出する。この基本噴射量QMAINBは、ディーゼルエンジン1の運転状態を最も的確に反映するものであり、燃料噴射制御に係る各種制御値を算出する際に用いられる。
【0049】
ECU50のメモリには、この基本噴射量QMAINBと、機関回転数NE及びアクセル開度ACCPとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して基本噴射量QMAINBを算出する。
【0050】
次に、ECU50は、上記のように算出された基本噴射量QMAINBと機関回転数NEとに基づいて、定常時パイロット噴射量QPLT2を算出する。この定常時パイロット噴射量QPLT2は、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して、定常時、即ち、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられたときから十分に時間が経過した時点での機関運転状態に最も適した量となるように設定されている。
【0051】
ECU50のメモリには、図2に示すような、定常時パイロット噴射量QPLT2と、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、定常時パイロット噴射量QPLT2を算出する際に、この関数データを参照する。
【0052】
次に、ECU50は、機関運転状態に基づいて燃料噴射形態を設定する。即ち、ECU50は、上記定常時パイロット噴射量QPLT2及び機関回転数NEに関する以下の条件式(1),(2)がいずれも満たされている場合(定常時パイロット噴射量QPLT2及び機関回転数NEが図2に点を付した領域にある場合)には、燃料噴射形態をパイロット噴射モードに設定し、いずれか一方が満たされていない場合には、燃料噴射形態をメイン噴射モードに設定する。
【0053】
NElow ≦NE≦NEhigh ・・・(1)
QPLT2≧QPLT2low ・・・(2)
NElow ,NEhigh:定数
QPLT2low :定数
例えば、機関運転状態が低負荷低回転領域にある場合(機関回転数NE、基本噴射量QMAINBが、図2に示す所定値NE1,QMAINB1であるような場合)、燃料噴射形態としてパイロット噴射モードが選択される。従って、機関運転状態が低負荷低回転領域にある場合には、パイロット噴射が実行されるようになり、燃焼騒音の低減等が図られるようになる。
【0054】
これに対して、機関運転状態が高負荷高回転領域にある場合(機関回転数NE、基本噴射量QMAINBが、同図に示す所定値NE2,QMAINB2であるような場合)、燃料噴射形態としてメイン噴射モードが選択される。従って、機関運転状態が高負荷高回転領域にある場合には、パイロット噴射が停止されるようになり、排煙濃度の増加が抑えられ、所定の機関出力が確保されるようになる。
【0055】
[燃料噴射時期制御及び燃料噴射量制御]
次に、上記のように選択された燃料噴射形態に基づいて実行される燃料の噴射時期及び噴射量に係る制御について説明する。
【0056】
図3は、ECU50により制御される電磁弁3のオン/オフ状態の変化態様を示すタイミングチャートであり、(a)はパイロット噴射モード時、(b)はメイン噴射モード時における同変化態様をそれぞれ示している。
【0057】
[パイロット噴射モード]
燃料噴射形態としてパイロット噴射モードが選択されているときには、ECU50は、メイン噴射と同メイン噴射に先立つパイロット噴射の双方を実行する。
【0058】
即ち、同図(a)に示すように、ECU50は、現在のクランク角CAがパイロット噴射時期APLTとなったときに、電磁弁3に対してON信号(開弁信号)を出力する。従って、インジェクタ2は開弁状態となり、パイロット噴射が開始される。
【0059】
このパイロット噴射時期APLTは、燃料を噴射しようとする気筒#1〜#4の圧縮上死点(図中、「TDC」として示す)を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として定義されている。例えば、パイロット噴射時期APLTが「30°CA」(CA:Crank Angle )である場合には、クランク角CAが圧縮上死点前30°CAとなったときに、電磁弁3に対してON信号が出力されることになる。
【0060】
また、このパイロット噴射時期APLTは、次式(3)に基づいて算出される。
APLT=APLTM+AINT ・・・(3)
APLTM:メイン噴射時期
AINT :パイロット噴射間隔
上式(3)において、メイン噴射時期APLTMは、パイロット噴射モード時にメイン噴射が開始される時期であり、上記パイロット噴射時期APLTと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として定義されている。ECU50のメモリには、このメイン噴射時期APLTMと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照してメイン噴射時期APLTMを算出する。
【0061】
また、上式(3)において、パイロット噴射間隔AINTは、パイロット噴射の開始時期とメイン噴射の開始時期との間の時間間隔(クランク角間隔)である。
【0062】
上記のように、電磁弁3に対してON信号が出力され、インジェクタ2が開弁状態となったときから所定期間Tpが経過すると、ECU50は、電磁弁3に対してOFF信号(閉弁信号)を出力する。従って、インジェクタ2は閉弁状態となり、パイロット噴射が停止される。前記所定期間Tpは、最終パイロット噴射量QPLT1とコモンレール4の燃料圧PCとに基づいて決定されるものである。また、この最終パイロット噴射量QPLT1は、パイロット噴射の実行中に燃焼室内に噴射される燃料の量である。こうしてパイロット噴射が実行された後、インジェクタ2による燃料噴射は所定期間Toff (パイロット噴射間隔AINTに相当する)の間、一時的に停止される。
【0063】
次に、ECU50は、パイロット噴射が停止されたときから所定期間Toff が経過し、現在のクランク角CAがメイン噴射時期APLTMとなると、電磁弁3に対してON信号を出力する。従って、インジェクタ2は再び開弁状態となり、メイン噴射が開始される。
【0064】
そして、ECU50は、メイン噴射が開始されたときから所定期間Tmpが経過すると、電磁弁3に対して再びOFF信号を出力する。従って、インジェクタ2は閉弁状態となり、メイン噴射が停止される。前記所定期間Tmpは、最終メイン噴射量QMAINとコモンレール4の燃料圧PCとに基づいて決定されるものである。また、この最終メイン噴射量QMAINは、パイロット噴射モード時におけるメイン噴射の実行中に燃焼室内に噴射される燃料の量であり、ECU50は、この最終メイン噴射量QMAINを次式(4)に基づき算出する。
【0065】
QMAIN=QMAINB−QPLT1 ・・・(4)
[メイン噴射モード]
これに対して、燃料噴射形態としてメイン噴射モードが選択されているときには、ECU50は、メイン噴射のみを実行する。
【0066】
即ち、図3(b)に示すように、ECU50は、現在のクランク角CAがメイン噴射時期AMAINとなったときに、電磁弁3に対してON信号を出力する。従って、インジェクタ2は開弁状態となり、メイン噴射が開始される。
【0067】
ここで、メイン噴射時期AMAINは、パイロット噴射モード時におけるメイン噴射時期APLTMと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として定義されている。
【0068】
そして、ECU50は、メイン噴射が開始されたときから所定期間Tmmが経過すると、電磁弁3に対してOFF信号を出力する。従って、インジェクタ2は閉弁状態となり、メイン噴射が停止される。この所定期間Tmmは、上記パイロット噴射モード時における所定期間Tmpと同様、最終メイン噴射量QMAINとコモンレール4の燃料圧PCとに基づいて決定されるものである。因みに、この所定期間Tmmの値は、同じ総噴射量(パイロット噴射モードにおいてはパイロット噴射量とメイン噴射量との和)で同じ噴射圧(燃料圧)であれば、パイロット噴射モード時における上記所定期間Tmpと比較して長く設定される。メイン噴射モード時においては、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」となるため、上式(4)から明らかなように、最終メイン噴射量QMAINが基本噴射量QMAINBと等しく設定されるからである。
【0069】
[燃料噴射圧制御]
次に、燃料の噴射圧、即ち、コモンレール4の燃料圧力に係る制御について説明する。
【0070】
ECU50は、前述した基本噴射量QMAINBと機関回転数NEとに基づいて、基準目標燃料圧PCRBを算出する。
この基準目標燃料圧PCRBは、コモンレール4の燃料圧力に係る目標圧力であり、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して機関運転状態に最も適した圧力となるように設定されている。ECU50のメモリには、図4に示すような、基準目標燃料圧PCRBと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して基準目標燃料圧PCRBを算出する。同図に示すように、基準目標燃料圧PCRBは、基本噴射量QMAINB、機関回転数NEがそれぞれ大きいほど高く算出されるようになっている。高負荷或いは高回転時にあっては、燃料噴射圧を増大させることにより、噴射燃料の霧化を促進させる必要があるからである。
【0071】
ECU50は、こうして算出された基準目標燃料圧PCRBに対して補正を行うことにより最終目標燃料圧PCRを算出する。そして、ECU50は、燃料圧センサ22により検出されるコモンレール4の燃料圧PCがこの最終目標燃料圧PCRと一致するように、前記PCV10の開閉状態をフィードバック制御してサプライポンプ6からの燃料圧送量を調節する。
【0072】
次に、本実施形態の燃料噴射制御装置による、燃料の噴射形態、噴射時期、噴射量及び噴射圧の制御態様の一例について図5に示すタイミングチャート及び図6を併せ参照して説明する。
【0073】
図5(a)〜(d)は、本実施形態の燃料噴射制御装置による各種制御で用いられる制御フラグの変化態様をそれぞれ示している。
即ち、同図(a)は、パイロット噴射モードフラグXPLT1の変化態様を示している。このパイロット噴射モードフラグXPLT1は、機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードとする状態となっているか否かを判断するためのフラグであり、上記各条件式(1),(2)の双方が満たされているときに「1」に設定され、条件式(1),(2)のいずれか一方が満たされていないときに「0」に設定される。
【0074】
同図(b)は、パイロット噴射実行フラグXPLT2の変化態様を示している。このパイロット噴射実行フラグXPLT2は、パイロット噴射が実際に実行されているか否かを判断するためのフラグであり、判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A(>0)以上であるときには「1」に、同判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満であるときには「0」に設定される。尚、この所定量Aは、パイロット噴射を安定して実行することのできるパイロット噴射量の最小量として設定されている。
【0075】
例えば、機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードすべき状態となってパイロット噴射モードフラグXPLT1が「0」から「1」に変更された場合であっても、このパイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」である場合には、パイロット噴射は実行されない。逆に、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」から「0」に変更されても、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されている場合には、パイロット噴射が継続して実行されることになる。
【0076】
また、上記判定用パイロット噴射量QPLT3は、パイロット噴射を実行するか否かを判断するために、制御上、一時的に設定される制御値であるとともに、後述する最終パイロット噴射量QPLT1にも反映される。同図(e)は、この判定用パイロット噴射量QPLT3の変化態様を示している。
【0077】
図5(c),(d)は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2の変化態様をそれぞれ示している。
このメイン噴射制御許可フラグXJPLT1は、上記パイロット噴射モードフラグXPLT1が「0」から「1」に、或いは「1」から「0」に切り替わったときに「1」に設定され、前記判定用パイロット噴射量QPLT3が、定常時パイロット噴射量QPLT2と等しくなったとき、或いは「0」になったときに「0」に設定される。因みに、こうした各種制御用フラグの操作は、後述する「制御用フラグ操作ルーチン」によって行われる。
【0078】
また、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2は、上記「制御用フラグ操作ルーチン」において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定された後の最初の制御周期において「1」に設定され、上記メイン噴射制御許可フラグXJPLT1と同様、判定用パイロット噴射量QPLT3が、定常時パイロット噴射量QPLT2と等しくなったとき、或いは「0」になったときに「0」に設定される。
【0079】
本実施形態の燃料噴射制御装置においては、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を抑制するために、メイン噴射の噴射時期及び噴射圧を変更する制御(以下、「メイン噴射制御」という)や、パイロット噴射の噴射量及びパイロット噴射間隔を徐々に変更する制御(以下、「パイロット噴射制御」という)がそれぞれ実行される。上記メイン噴射制御許可フラグXJPLT1は、このメイン噴射制御の開始時期を判断するためのフラグであり、同フラグXJPLT1が「1」と「0」との間で変化したときに、上記メイン噴射制御が開始される。また、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2は、上記パイロット噴射制御の実行時期を判断するためのフラグであり、同フラグXJPLT2が「1」に設定されているときにパイロット噴射制御が開始される。
【0080】
また、図5(f)は、前述した最終パイロット噴射量QPLT1の変化態様を示している。この最終パイロット噴射量QPLT1は、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」であるときには常に「0」に設定されており、同フラグXPLT2が「1」に設定されたときに判定用パイロット噴射量QPLT3と等しくなるように設定される。
【0081】
同図(g)は、噴射時期補正量APL1の変化態様を示している。この噴射時期補正量APL1は、メイン噴射の噴射時期を進角側或いは遅角側の時期に補正するための補正量である。また、同図(h)は、前述したパイロット噴射間隔AINTの変化態様を、同図(i)は、燃料圧補正量PCRPLの変化態様をそれぞれ示している。この燃料圧補正量PCRPLは、前記基準目標燃料圧PCRB(図4参照)を低圧或いは高圧側の圧力に補正して最終目標燃料圧PCRを算出するための補正量である。
【0082】
以下、前述したメイン噴射制御及びパイロット噴射制御に基づく前記各制御値QPLT3,QPLT1,APL1,AINT,PCRPLの変化態様について説明する。
【0083】
機関回転数NE及び定常時パイロット噴射量QPLT2が変化することにより、タイミングt1において前記各条件式(1),(2)の双方が満たされるようになると、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定され、更に、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1も「1」に設定される。
【0084】
このようにメイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されると、タイミングt1以降、メイン噴射制御が実行される。即ち、噴射時期補正量APL1は所定量づつ徐々に増量され、この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、前述したメイン噴射時期AMAINは徐々に進角側の時期に変更されるようになる。尚、タイミングt1〜t4の期間では、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」に設定されているため、パイロット噴射は実行されない。
【0085】
また、タイミングt2において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されると、同タイミングt2以降、パイロット噴射制御が実行される。即ち、パイロット噴射間隔AINTが所定量づつ増大させられるとともに、判定用パイロット噴射量QPLT3も所定量づつ徐々に増量されるようになる。
【0086】
図6(a)は、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTM、及びメイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAIN(以下、両者を特に区別しない場合には、単に「メイン噴射時期」という)と、機関トルクとの関係を示すグラフである。
【0087】
上記のように、メイン噴射時期AMAINが徐々に進角側の時期に変更されることにより、機関トルクは、タイミングt1〜t4の期間に、同図(a)に点A1で示す状態から点B1で示す状態にまで徐々に増加するようになる。ここで、メイン噴射時期は、パイロット噴射間隔AINT等と比較して機関トルクとの相関性が高く、同トルクに与える影響が大きいため、これを変更することにより、機関トルクの大きさを確実に制御することが可能である。
【0088】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、上記各点A1,B1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、メイン噴射時期AMAINの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、メイン噴射モード時の機関トルクをパイロット噴射が実行されるときのトルク値にまで変更することができる。
【0089】
また、このようにメイン噴射時期AMAINが変更されると、基準メイン噴射時期AMAINB(図6(a)参照)より進角側の時期に燃料噴射が実行されるようになる。この基準メイン噴射時期AMAINBは、メイン噴射時期AMAINと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として設定されるものであり、機関トルク、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して機関運転状態に最も適した時期となるように設定されている。
【0090】
従って、こうして設定された基準メイン噴射時期AMAINBより進角側の時期に燃料噴射が実行されるようになると、燃焼過程において予混合燃焼の占める割合が増大し、急激な燃焼圧の上昇に起因して燃焼騒音が増大する傾向がある。
【0091】
本実施形態の燃料噴射制御装置では、こうした燃焼騒音の増大を抑制するために、メイン噴射時期AMAINが進角側の時期に変更されるタイミングt1〜t4の期間において、燃料圧補正量PCRPLが負の所定値Pに変更される。こうした燃料圧補正量PCRPLの変更により、最終目標燃料圧PCRが基準目標燃料圧PCRBよりも低い圧力(=PCRB+P<PCRB)に変更され、コモンレール4の燃料圧PCが低下するようになる。
【0092】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、インジェクタ2から噴射される燃料の噴射圧が低下し、噴射燃料の微粒化が抑えられるようになるため、急激な燃焼圧の上昇が抑制され、メイン噴射時期AMAINが進角側の時期に変更されることに起因した燃焼騒音の増大を抑制することができる。
【0093】
次に、タイミングt4において、判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量Aを上回ると、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定される。更に、最終パイロット噴射量QPLT1がこの判定用パイロット噴射量QPLT3と等しく設定されることにより、パイロット噴射が実行されるようになる。
【0094】
また、タイミングt2以降、所定量づつ増量されることにより第1の補正制限値APL1LMT1(>0)にまで達した噴射時期補正量APL1が、このタイミングt4において第2の補正制限値APL1LMT2(<0)へと変更される。尚、上記第1の補正制限値APL1LMT1及び第2の補正制限値APL1LMT2については後述する。
【0095】
そして、こうした噴射時期補正量APL1の変更に伴って、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTMは、基準メイン噴射時期APLTMB(図6(a)参照)よりも遅角側の時期に変更される。この基準メイン噴射時期APLTMBは、メイン噴射時期APLTMと同様、圧縮上死点を基準とし、その圧縮上死点前の相対角度として設定されるものであり、機関トルク、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して機関運転状態に最も適した時期となるように設定されている。尚、図6(a)では、上記基準メイン噴射時期AMAINBと基準メイン噴射時期APLTMBとが一致している場合を例示している。
【0096】
更に、このタイミングt4以降、判定用パイロット噴射量QPLT3の増量に伴って最終パイロット噴射量QPLT1も徐々に増加する。そして、タイミングt6において、判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2に達すると、同タイミングt6以降、判定用パイロット噴射量QPLT3は定常時パイロット噴射量QPLT2と等しく設定されるため、最終パイロット噴射量QPLT1も、この定常時パイロット噴射量QPLT2と等しく設定されるようになる。
【0097】
また、タイミングt2以降、所定量づつ徐々に増加していたパイロット噴射間隔AINTは、タイミングt4以降の期間においても更に増加し続ける。そして、タイミングt6において、パイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTBと等しくなると、同タイミングt6以降、パイロット噴射間隔AINTは、この定常時パイロット噴射間隔AINTBと等しく設定されるようになる。この定常時パイロット噴射間隔AINTBは、定常時パイロット噴射量QPLT2と同様、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して、定常時、即ち、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられたときから十分に時間が経過した時点での機関運転状態に最も適した量となるように設定されている。
【0098】
上記のように、タイミングt4〜t6の期間において、メイン噴射時期APLTM、最終パイロット噴射量QPLT1、パイロット噴射間隔AINTがそれぞれ変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点B1で示す状態から点C1で示す状態にまで変化する。
【0099】
ここで、本実施形態の燃料噴射制御装置では、図6(a)の各点B1,C1で示す状態での各機関トルクTb,Tc、即ち、メイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAINを第1の補正制限値APL1LMT1分だけ変更したときのトルク値(以下、「第1の過渡トルク値」という)Tbと、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTMを第2の補正制限値APL1LMT2分だけ変更したときのトルク値(以下、「第2の過渡トルク値」)Tcとに関して以下の各条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされるように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2の大きさが予め設定されている。
【0100】
Ta≦Tb=Tc≦Td ・・・(5−a)
Td≦Tb=Tc≦Ta ・・・(5−b)
Ta:メイン噴射モード時基準トルク値
Td:パイロット噴射モード時基準トルク値
上式(5−a),(5−b)において、メイン噴射モード時基準トルク値Taは、メイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBとしたときのトルク値であり、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdは、パイロット噴射モード時のメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTMBとしたときのトルク値である。
【0101】
上記のように各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定するようにしているため、タイミングt4〜t6の期間において、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられても、その切り替えに伴う機関トルクの変化は殆ど発生しないようになる。
【0102】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードへと切り替えられる時点でのトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0103】
また、本実施形態の燃料噴射制御装置では、メイン噴射モードからパイロット噴射モードへと燃料噴射形態が切り替えられるとき(タイミングt4)に、パイロット噴射間隔AINTを定常時パイロット噴射間隔AINTBへと直ぐに変更するのではなく、定常時パイロット噴射間隔AINTBよりも短い間隔から同定常時パイロット噴射間隔AINTBにまで徐々に増加させるようにしている。
【0104】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化を緩慢なものとすることができ、トルクショックの発生を更に確実に抑制することができる。
【0105】
ところで、上記のようにパイロット噴射間隔AINTを定常時パイロット噴射間隔AINTBよりも一時的に短く設定するようにした場合(タイミングt4〜t6)、トルクショックを抑制するうえでは有効であるものの、パイロット噴射により上昇した燃焼圧が未だ低下しないうちに、メイン噴射が実行されてしまう可能性があるため、急激な燃焼圧の上昇に伴う燃焼騒音の増大を招いてしまうことが懸念される。
【0106】
この点、本実施形態の燃料噴射制御装置では、最終パイロット噴射量QPLT1を定常時パイロット噴射量QPLT2と等しくなるまで徐々に増量することにより、パイロット噴射間隔AINTが相対的に短い期間(タイミングt4〜t6)では、最終パイロット噴射量QPLT1を定常時パイロット噴射量QPLT2よりも少ない量に設定するようにしている。このため、パイロット噴射によって一時的に上昇した燃焼圧は、より早期に低下し始めるようになる。
【0107】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇を抑制して燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0108】
こうして燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられた後、タイミングt6において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1及びパイロット噴射制御許可フラグXJPLT2がいずれも「0」に設定される。そして、このタイミングt6以降の期間において、再びメイン噴射制御が実行される。即ち、噴射時期補正量APL1は、前記第2の補正制限値APL1LMT2から、タイミングt8で「0」に達するまで、所定量づつ増量される。そして、この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、メイン噴射時期APLTMが徐々に進角側の時期に変更されるようになる。
【0109】
上記のように、メイン噴射時期APLTMが変更されることにより、機関トルクは、タイミングt6〜t8の期間に、図6(a)に点C1で示す状態から点D1で示す状態にまで徐々に増加するようになる。
【0110】
ここで、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、図6(a)の各点C1,D1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、メイン噴射時期APLTMの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、パイロット噴射モード時の機関トルクを定常時におけるトルク値にまで増加させることができる。
【0111】
また、噴射時期補正量APL1が負の値となるタイミングt4〜t8の期間では、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMB(図6(a)参照)よりも遅角側の時期に設定されるため、燃焼速度が緩慢になり、燃料の不完全燃焼に起因した排煙濃度の増加を招く傾向がある。
【0112】
この点、本実施形態の燃料噴射制御装置では、タイミングt4において、燃料圧補正量PCRPLが前記所定値P(<0)から正の所定値Rに変更される。そして、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBより遅角側の時期に変更されるタイミングt4〜t8の期間において、燃料圧補正量PCRPLは、この所定値Rのまま保持される。こうした燃料圧補正量PCRPLの変更により、最終目標燃料圧PCRが基準目標燃料圧PCRBよりも高い圧力(=PCRB+R>PCRB)に変更され、コモンレール4の燃料圧PCが上昇するようになる。
【0113】
従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射圧が上昇して噴射燃料の微粒化が促進されるようになるため、燃料の不完全燃焼が抑制され、前述したような排煙濃度の増加を防止することができる。
【0114】
また、タイミングt8において、噴射時期補正量APL1が「0」と等しくなると、燃料圧補正量PCRPLは、所定値Rから「0」に変更される。そして、このタイミングt8からタイミングt9の期間では、噴射時期補正量APL1及び燃料圧補正量PCRPLが「0」のまま保持される。その結果、定常時のパイロット噴射が実行されるようになる。
【0115】
次に、機関回転数NE及び定常時パイロット噴射量QPLT2が変化することにより、タイミングt9において前記各条件式(1),(2)のいずれか一方が満たされないようになると、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「0」に設定され、更に、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定される。
【0116】
このようにメイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されると、タイミングt9以降、メイン噴射制御が実行される。即ち、噴射時期補正量APL1は所定量づつ徐々に減量され、この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、メイン噴射時期APLTMが徐々に遅角側の時期に変更されるようになる。因みに、タイミングt9〜t12の期間では、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」以上に設定されており、パイロット噴射は継続して実行されている。
【0117】
また、タイミングt10において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されると、同タイミングt10以降、パイロット噴射制御が実行される。即ち、パイロット噴射間隔AINTが所定量づつ減少させられるとともに、判定用パイロット噴射量QPLT3も所定量づつ徐々に減量されるようになる。従って、こうした判定用パイロット噴射量QPLT3の減量に伴って最終パイロット噴射量QPLT1が徐々に減量されるとともに、パイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTBから徐々に短くなるように変更される。
【0118】
上記のように、タイミングt9〜t12の期間において、メイン噴射時期APLTM、最終パイロット噴射量QPLT1、パイロット噴射間隔AINTがそれぞれ変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点D1で示す状態から点C1で示す状態にまで徐々に減少するようになる。このタイミングt9〜t12の期間においては、前述したタイミングt6〜t8の期間における場合と同様、同図(a)の各点C1,D1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、メイン噴射時期APLTMの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、パイロット噴射モード時の機関トルクを定常時におけるトルク値からパイロット噴射が停止されるときのトルク値にまで変更することができる。
【0119】
また、タイミングt9〜t12の期間では、燃料圧補正量PCRPLが「0」から正の所定値Q(>0)に設定される。従って、最終目標燃料圧PCRが基準目標燃料圧PCRBよりも高い圧力(=PCRB+Q>PCRB)に変更され、コモンレール4の燃料圧PCが上昇するようになる。その結果、前述したタイミングt4〜t8の期間における場合と同様、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBよりも遅角側の時期に設定されることに起因した排煙濃度の増加を防止することができる。
【0120】
更に、前述したように、タイミングt10からタイミングt12の期間では、最終パイロット噴射量QPLT1が徐々に減量されるとともに、パイロット噴射間隔AINTも定常時パイロット噴射間隔AINTBから徐々に短くなるように変更される。従って、前述したタイミングt4〜t6の期間における場合と同様、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化を緩慢なものとしてトルクショックの発生を更に確実に抑制することができるとともに、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになるため、燃焼圧の急激な上昇を抑制して燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0121】
次に、判定用パイロット噴射量QPLT3が減少し、タイミングt12において、前記所定量Aを下回るようになると、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されるとともに、最終パイロット噴射量QPLT1が「0」に変更されてパイロット噴射の実行が停止される。
【0122】
更に、このタイミングt12において、噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2から第1の補正制限値APL1LMT1に変更される。この噴射時期補正量APL1の変更に伴って、メイン噴射モード時におけるメイン噴射時期AMAINは、基準メイン噴射時期AMAINB(図6(a)参照)よりも進角側の時期に変更される。
【0123】
このように最終パイロット噴射量QPLT1及びメイン噴射時期AMAINが変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点C1で示す状態から点B1で示す状態にまで変化する。
【0124】
前述したように、本実施形態の燃料噴射制御装置では、第1の過渡トルク値Tb及び第2の過渡トルク値Tcを一致させるようにしているため、タイミングt12において、燃料噴射形態がパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられても、その切り替えに伴う機関トルクの変化は殆ど発生しない。従って、トルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0125】
また、判定用パイロット噴射量QPLT3が減量され、タイミングt14において「0」と等しくなると、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1及びパイロット噴射制御許可フラグXJPLT2がいずれも「0」に設定される。そして、このタイミングt14〜t16の期間において、噴射時期補正量APL1は、第1の補正制限値APL1LMT1から「0」と等しくなるまで所定量づつ減量される。こうした噴射時期補正量APL1の減量により、メイン噴射時期AMAINが徐々に遅角側の時期に変更されるようになる。
【0126】
このようにメイン噴射時期AMAINが変更されることにより、機関トルクは、図6(a)に点B1で示す状態から点A1で示す状態にまで徐々に減少する。このタイミングt14〜t16の期間では、前述したタイミングt1〜t4の期間における場合と同様、メイン噴射時期AMAINの変更速度、即ち、噴射時期補正量APL1の増加速度を調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、メイン噴射モード時の機関トルクを定常時のトルク値にまで変更することができる。
【0127】
そして、タイミングt16以降、噴射時期補正量APL1が「0」に保持されるため、メイン噴射時期AMAINは基準メイン噴射時期AMAINBと等しく設定されるようになる。その結果、定常時のメイン噴射が実行されるようになる。
【0128】
また、タイミングt12〜t16の期間では、メイン噴射時期AMAINが基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側の時期に変更されるが、この期間では、燃料圧補正量PCRPLが所定値Qから負の所定値S(<0)に変更される。従って、タイミングt1〜t4の期間と同様、コモンレール4の燃料圧PCが低下して、噴射燃料の微粒化が抑えられるため、燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0129】
以下、上記の燃料噴射制御を実現するための制御手順の一例について図7〜13に示すフローチャート及び上記図5のタイミングチャートを併せ参照して詳細に説明する。尚、以下の説明中、上記タイミングチャートの対応するタイミングを括弧[ ]内に示している。
【0130】
図7及び図8は、「制御用フラグ操作ルーチン」の各処理を示すフローチャートである。このルーチンは、後述する各処理ルーチンにおいて用いられる各種制御用フラグXPLT1,XPLT2,XJPLT1,XJPLT2の操作を行うためのものであり、ECU50により所定クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0131】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ100において、ECU50は、現在の機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードとすべき状態であるか否かを判定する。この判定処理は、機関回転数NE及び定常時パイロット噴射量QPLT2の各値が、前述した各条件式(1),(2)の双方を満たすか否かに基づいて行われる。
【0132】
ステップ100において肯定判定された場合[タイミングt1〜t8]、ECU50は、ステップ102〜116までの各処理を順次実行する。この各ステップ102〜116の処理は、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられる際に実行される処理である。
【0133】
まず、ECU50は、ステップ102においてパイロット噴射モードフラグXPLT1を「1」に設定する。
次に、ECU50は、ステップ104においてパイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合[タイミングt5〜t8]、ECU50は、処理を図8に示すステップ116に移行する。一方、ステップ104において肯定判定された場合[タイミングt1〜t4]、ECU50は、処理をステップ106に移行する。
【0134】
ステップ106において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt1]、ECU50は、ステップ110において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1を「0」から「1」へ変更する。一方、ステップ106において否定判定された場合[タイミングt2〜t4]、ECU50は、ステップ108において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2を「1」に設定する。
【0135】
上記各ステップ108,110の処理を実行した後、ECU50は、図8に示すステップ112において、判定用パイロット噴射量QPLT3と前記所定量Aとを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満である旨判断された場合[タイミングt1〜t3]、ECU50は、処理をステップ116に移行する。一方、ステップ112において判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A以上である旨判断された場合[タイミングt4]、ECU50は、ステップ114においてパイロット噴射実行フラグXPLT2を「1」に設定した後、処理をステップ116に移行する。
【0136】
ステップ116において、ECU50は、判定用パイロット噴射量QPLT3と定常時パイロット噴射量QPLT2と比較する。そして、判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2以上である旨判断された場合[タイミングt6〜t8]、ECU50は、ステップ140においてメイン噴射制御許可フラグXJPLT1を「0」に設定した後、更にステップ142においてパイロット噴射制御許可フラグXJPLT2を「0」に設定する。
【0137】
ステップ142の処理を実行した後、若しくはステップ116において判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2未満である旨判断された場合[タイミングt1〜t5]、ECU50は本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0138】
これに対して、前述したステップ100において現在の機関運転状態が、燃料噴射形態をパイロット噴射モードとすべき状態ではない旨判定された場合[タイミングt9〜t16]、ECU50は、ステップ122〜136の各処理を順次実行する。この各ステップ122〜136の処理は、燃料噴射形態がパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられる際に実行される処理である。
【0139】
即ち、ECU50は、ステップ122において、パイロット噴射モードフラグXPLT1を「0」に設定する。そして、ECU50は、ステップ124において、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt9〜t12]、ECU50は、処理をステップ126に移行する。一方、ステップ124において否定判定された場合[タイミングt13〜16]、ECU50は、処理を図8に示すステップ136に移行する。
【0140】
ステップ126において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt9]、ECU50は、ステップ130において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1を「0」から「1」へ変更する。一方、ステップ126において否定判定された場合[タイミングt10〜t12]、ECU50は、ステップ128において、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2を「1」に設定する。
【0141】
上記各ステップ128,130の処理を実行した後、ECU50は、図8に示すステップ132において、判定用パイロット噴射量QPLT3と所定量Aとを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A以上である旨判断された場合[タイミングt9〜t11]、ECU50は、処理をステップ136に移行する。一方、ステップ132において判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満である旨判断された場合[タイミングt12〜16]、ECU50は、ステップ134においてパイロット噴射実行フラグXPLT2を「0」に設定した後、処理をステップ136に移行する。
【0142】
そして、ステップ136において、ECU50は、判定用パイロット噴射量QPLT3と「0」とを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」より大きい旨判断された場合[タイミングt9〜t13]、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。一方、ステップ136において判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」以下である旨判断された場合[タイミングt14〜t16]、ECU50は、前述した各ステップ140,142の処理を実行した後、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0143】
以上説明した本ルーチンの処理に基づいて、各種制御用フラグXPLT1,XPLT2,XJPLT1,XJPLT2が機関運転状態に即した値に設定される。
【0144】
次に、「噴射量算出ルーチン」の各処理について図9に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、パイロット噴射及びメイン噴射の燃料噴射量を算出するためのものであり、ECU50により上記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0145】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ200において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ202に移行する。ステップ202において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ204に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「0」であるか否かを判定する。
【0146】
ステップ204において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ206において、判定用パイロット噴射量QPLT3を所定量Bと等しく設定する[タイミングt1]。この所定量Bは、判定用パイロット噴射量QPLT3についての初期値である。尚、図5に示すタイミングチャートは、この所定量Bが「0」に設定されている場合の制御態様例を示している。
【0147】
これに対して、ステップ204において否定判定された場合、ECU50は、ステップ208において、現在の判定用パイロット噴射量QPLT3に対して所定量C(>0)を加算し、その加算後の値(=QPLT3+C)を、新たな判定用パイロット噴射量QPLT3として設定する。このステップ208の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt2〜t6の期間において、同判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は徐々に増加するようになる。
【0148】
上記ステップ206,208の処理を実行した後、ECU50は、ステップ210において、判定用パイロット噴射量QPLT3と定常時パイロット噴射量QPLT2とを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2以上である旨判断された場合、ECU50は、ステップ230において、判定用パイロット噴射量QPLT3を定常時パイロット噴射量QPLT2と等しく設定する。また、前述したステップ202において否定判定された場合も同様に、ECU50は、ステップ230の処理を実行する。
【0149】
上記各ステップ202,210,230の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt6〜t9の期間において、判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は、定常時パイロット噴射量QPLT2(同図(e)の一点鎖線)と等しく保持されるようになる。
【0150】
一方、前述したステップ200において否定判定された場合、ECU50は、ステップ220においてメイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ222において更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合[タイミングt9]、ECU50は前述したステップ230の処理を実行する。
【0151】
これに対して、ステップ222において肯定判定された場合、ECU50はステップ224において、現在の判定用パイロット噴射量QPLT3から所定量D(>0)を減算し、その減算後の値(=QPLT3−D)を新たな判定用パイロット噴射量QPLT3として設定する。このステップ224の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt10〜t13の期間において、判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は徐々に減少するようになる。
【0152】
そして、ECU50は、ステップ226において、判定用パイロット噴射量QPLT3と「0」とを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」未満である旨判断された場合、ECU50は、ステップ228において、判定用パイロット噴射量QPLT3を「0」に設定する。また、前述したステップ220において否定判定された場合[タイミングt14〜t16]も同様に、ECU50は、このステップ228の処理を実行する。
【0153】
上記各ステップ220,226,228の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt14〜t16の期間において、判定用パイロット噴射量QPLT3(同図(e)参照)は「0」に保持されるようになる。
【0154】
上記ステップ228,230の処理を実行した後、ECU50は処理をステップ232に移行する。また、ステップ210において判定用パイロット噴射量QPLT3が定常時パイロット噴射量QPLT2未満である旨判断された場合、ステップ226において判定用パイロット噴射量QPLT3が「0」以上である旨判断された場合も、ECU50は、処理をステップ232に移行する。
【0155】
ステップ232において、ECU50は、判定用パイロット噴射量QPLT3と前記所定量Aとを比較する。ここで判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量Aである旨判断された場合、ECU50は、ステップ234において、最終パイロット噴射量QPLT1を判定用パイロット噴射量QPLT3(≧A>0)と等しく設定する。このように最終パイロット噴射量QPLT1が設定されることにより、図5に示すタイミングt4〜t12の期間において、パイロット噴射が実行されるようになる。
【0156】
一方、上記ステップ232において判定用パイロット噴射量QPLT3が所定量A未満である旨判断された場合、ECU50は、ステップ236において、最終パイロット噴射量QPLT1を「0」に設定する。このように最終パイロット噴射量QPLT1が設定されることにより、図5に示すタイミングt1〜t4,t12〜t16の期間においては、パイロット噴射の実行が停止されるようになる。
【0157】
ECU50は、上記各ステップ234,236の処理を実行した後、ステップ238において、前述した式(4)に基づいて最終メイン噴射量QMAINを算出する。従って、ステップ234の処理を通じて最終メイン噴射量QMAINが算出された場合には、同最終メイン噴射量QMAINは、基本噴射量QMAINBから最終パイロット噴射量QPLT1を減算した値として算出される。一方、ステップ236の処理を通じて最終メイン噴射量QMAINが算出された場合には、同最終メイン噴射量QMAINは、基本噴射量QMAINBと等しい値として算出されることになる。そして、このステップ238の処理を実行した後、ECU50は本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0158】
以上説明したように、本ルーチンの各処理により、判定用パイロット噴射量QPLT3、最終メイン噴射量QMAIN、最終パイロット噴射量QPLT1がそれぞれ算出される。
【0159】
次に、「パイロット噴射間隔算出ルーチン」の各処理について図10に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、パイロット噴射間隔AINTを算出するためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0160】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ300において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ302に移行する。ステップ302において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ304に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「0」であるか否かを判定する。
【0161】
ステップ304において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ306において、パイロット噴射間隔AINTを所定量Eと等しく設定する[タイミングt1]。この所定量Eはパイロット噴射間隔AINTについての初期値である。尚、図5に示すタイミングチャートは、この所定量Eが「0」に設定されている場合の制御態様例を示している。
【0162】
これに対して、ステップ304において否定判定された場合、ECU50は、ステップ308において、現在のパイロット噴射間隔AINTに対して所定量F(>0)を加算し、その加算後の値(AINT+F)を新たなパイ
ロット噴射間隔AINTとして設定する。
【0163】
従って、このステップ308の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt2〜t6の期間において、パイロット噴射間隔AINT(同図(h)参照)は徐々に増加するようになる。
【0164】
上記ステップ306,308の処理を実行した後、ECU50は、ステップ310において、パイロット噴射間隔AINTと定常時パイロット噴射間隔AINTBとを比較する。ここでパイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTB以上である旨判断された場合、ECU50は、ステップ330において、パイロット噴射間隔AINTを定常時パイロット噴射間隔AINTBと等しく設定する。また、前述したステップ302において否定判定された場合も同様に、ECU50は、ステップ330の処理を実行する。
【0165】
上記各ステップ302,310,330の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt6〜t9の期間において、パイロット噴射間隔AINT(同図(h)参照)は、定常時パイロット噴射間隔AINTB(同図(h)の一点鎖線)と等しく保持されるようになる。
【0166】
これに対して、前述したステップ300において否定判定された場合、ECU50は、ステップ320において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ322において更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は前述したステップ330の処理を実行する。
【0167】
一方、ステップ322において肯定判定された場合、ECU50はステップ324において、現在のパイロット噴射間隔AINTから所定量G(>0)を減算し、その減算後の値(AINT−G)を新たなパイロット噴射間隔AINTとして設定する。
【0168】
従って、このステップ324の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt9〜t14の期間において、パイロット噴射間隔AINT(同図(h)参照)は徐々に減少するようになる。
【0169】
そして、ECU50は、ステップ326において、パイロット噴射間隔AINTと「0」とを比較する。ここでパイロット噴射間隔AINTが「0」未満である旨判断された場合、ECU50は、ステップ328において、パイロット噴射間隔AINTを「0」に設定する。また、前述したステップ320において否定判定された場合も同様に、ECU50は、ステップ328の処理を実行する。
【0170】
上記各ステップ320,326,328の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt14〜t16の期間において、パイロット噴射間隔AINTは「0」に保持されるようになる。
【0171】
上記ステップ328,330の処理を実行した後、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。また、ステップ310においてパイロット噴射間隔AINTが定常時パイロット噴射間隔AINTB未満である旨判断された場合、若しくはステップ326においてパイロット噴射間隔AINTが「0」以上である旨判断された場合も、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0172】
以上説明したように、本ルーチンの各処理により、パイロット噴射間隔AINTが算出される。
次に、「噴射時期算出ルーチン」の各処理について図11及び図12に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、パイロット噴射及びメイン噴射の噴射時期を算出するためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0173】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ400において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ402に移行する。ステップ402において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ404に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「0」であるか否かを判定する。
【0174】
ステップ404において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ406において、噴射時期補正量APL1を所定量Hと等しく設定する。一方、ステップ404において否定判定された場合、ECU50は、ステップ408において、現在の噴射時期補正量APL1に対して所定量Jを加算し、その加算後の値(APL1+J)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0175】
上記ステップ406,408の処理を実行した後、ECU50は、ステップ410において、噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|と、第1の補正制限値APL1LMT1の絶対値|APL1LMT1|とを比較する。
【0176】
ここで、第1の補正制限値APL1LMT1は、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、前述したように、条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされるように設定されている。ECU50のメモリには、この第1の補正制限値APL1LMT1と、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されている。また、ECU50のメモリには更に、前記各所定量H,Jと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されている。ECU50は、上記各ステップ406,408,410等の処理を実行する際に、上記各関数データを参照することにより、第1の補正制限値APL1LMT1及び各所定量H,Jをそれぞれ算出する。
【0177】
例えば、図6(a)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも小さい場合、上記第1の補正制限値APL1LMT1は、正の値(APL1LMT1>0)として算出される。また、このように第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには、上記所定量H,Jも同様に、正の値(H>0,J>0)として算出される。
【0178】
このように第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt1〜t4の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は第1の補正制限値APL1LMT1にまで徐々に増加するようになる。
【0179】
これに対して、例えば、図6(b)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも大きくなるような状況も、機関運転状態(機関回転数NE及び基本噴射量QMAINB)に応じて発生し得る。このような場合、第1の補正制限値APL1LMT1は、負の値(APL1LMT1<0)として算出される。また、このように第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには、上記所定量H,Jも同様に、負の値(H<0,J<0)として算出される。
【0180】
このように第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt1〜t4の期間において、噴射時期補正量APL1は、同図(g)に示す変化態様とは異なり、負の値として設定された第1の補正制限値APL1LMT1にまで徐々に減少するようになる。また、
以上のように、噴射時期補正量APL1が第1の補正制限値APL1LMT1にまで徐々に変更されるのに伴って、メイン噴射時期AMAINも徐々に変更される。即ち、第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出される場合には、メイン噴射時期AMAINは徐々に進角側の時期に変更され[タイミングt1〜t4]、第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出される場合には、逆にメイン噴射時期AMAINは徐々に遅角側の時期に変更されるようになる。また、上記各所定量H,Jは、メイン噴射時期AMAINの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|H|,|J|が十分に小さく設定されている。
【0181】
そして、上記ステップ410において噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|が第1の補正制限値APL1LMT1の絶対値|APL1LMT1|以上である旨判断された場合[タイミングt3]、ECU50は、ステップ412において、噴射時期補正量APL1を第1の補正制限値APL1LMT1と等しく設定した後、処理をステップ414に移行する。一方、ステップ410において、噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|が第1の補正制限値APL1LMT1の絶対値|APL1LMT1|未満である旨判断された場合も同様に、ECU50は処理をステップ414に移行する。
【0182】
ステップ414において、ECU50は、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ460に移行する。一方、ステップ414において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ416において、噴射時期補正量APL1を第2の補正制限値APL1LMT2と等しく設定する。
【0183】
上記ステップ414,416の各処理を実行することにより、図5に示すタイミングt4において、噴射時期補正量APL1は、第1の補正制限値APL1LMT1から第2の補正制限値APL1LMT2にまで変更され、タイミングt5においてもその第2の補正制限値APL1LMT2と等しく保持される。このステップ416の処理を実行した後、ECU50は、図12に示すステップ460に処理を移行する。
【0184】
一方、前述したステップ402において否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ440に移行する。ステップ440において、ECU50は、現在の噴射時期補正量APL1に対して所定量Mを加算し、その加算後の値(APL1+M)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0185】
この所定量Mは、前記所定量H,Jと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものである。ECU50のメモリには、この所定量Mと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して所定量Mを算出する。また、この所定量Mは、前記第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには、前記各所定量H,Jと同様、正の値(M>0)として算出され、第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには、同じく負の値(M<0)として算出される。
【0186】
例えば、この所定量Mが正の値に設定されている場合には、ステップ440の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt6〜t8の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に増加するようになり、同所定量Mが負の値に設定されている場合には、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に減少するようになる。
【0187】
そして、この噴射時期補正量APL1の変更に伴ってメイン噴射時期APLTMも徐々に基準メイン噴射時期APLTMBよりも進角側或いは遅角側の時期に変更されるが、上記所定量Mは、こうしたメイン噴射時期APLTMの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|M|が十分に小さく設定されている。
【0188】
次に、ECU50は、ステップ442において、噴射時期補正量APL1の符号が変化したか否か、即ち、前回の制御周期において「0」又は負の値であった噴射時期補正量APL1が今回の制御周期において正の値に変化したか否か、逆に、前回の制御周期において「0」又は正の値であった噴射時期補正量APL1が今回の制御周期において負の値に変化したか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ444において、噴射時期補正量APL1を「0」に設定する。ステップ444の処理を実行した後、又は、ステップ442において否定判定された場合、ECU50は処理をステップ460に移行する。
【0189】
上記各ステップ442,444の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt8以降、噴射時期補正量APL1は「0」に保持されるようになり、定常状態に対応したメイン噴射が実行されるようになる。
【0190】
これに対して、図11に示すステップ400において否定判定された場合、ECU50は、処理をステップ420に移行する。ステップ420において、ECU50は、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、処理をステップ422に移行して更に、パイロット噴射制御許可フラグXJPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。
【0191】
ステップ422において否定判定された場合、ECU50は、ステップ426において、噴射時期補正量APL1を所定量Lと等しく設定する。一方、ステップ422において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ424において現在の噴射時期補正量APL1から所定量Kを減算し、その減算した後の値(APL1ーK)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0192】
そして、上記ステップ424,426の処理を実行した後、ECU50は、ステップ428において、噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|と、第2の補正制限値APL1LMT2の絶対値|APL1LMT2|とを比較する。
【0193】
ここで、第2の補正制限値APL1LMT2は、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、前述したように、条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされるように設定されている。ECU50のメモリには、この第2の補正制限値APL1LMT2と、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されている。また、ECU50のメモリには更に、前記各所定量L,Kと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されている。ECU50は、上記各ステップ424,426,428の処理等を実行する際に、上記各関数データを参照することにより、第2の補正制限値APL1LMT2及び各所定量L,Kをそれぞれ算出する。
【0194】
例えば、図6(a)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも小さい場合、第2の補正制限値APL1LMT2は、負の値(APL1LMT2<0)として算出される。また、このように第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには、上記所定量L,Kは、正の値(L>0,K>0)として算出される。
【0195】
このように第2の補正制限値APL1LMT2が負の値、各所定量L,Kが正の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt9〜t12の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は「0」から第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に減少するようになる。
【0196】
これに対して、例えば、図6(b)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Taが、パイロット噴射モード時基準トルク値Tdよりも大きい場合、第2の補正制限値APL1LMT2は正の値(APL1LMT2>0)として算出される。また、このように第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには、上記所定量L,Kは負の値(L<0,K<0)として算出される。
【0197】
このように第2の補正制限値APL1LMT2が正の値、各所定量L,Kが負の値として算出される場合には、図5に示すタイミングt9〜t12の期間において、噴射時期補正量APL1は、同図(g)に示す変化態様とは異なり、「0」から第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に増加するようになる。
【0198】
以上のように、噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に変更されるのに伴って、メイン噴射時期APLTMも徐々に変更される。即ち、第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出される場合には、メイン噴射時期APLTMは徐々に遅角側の時期に変更され[タイミングt9〜t12]、第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出される場合には、逆にメイン噴射時期APLTMは徐々に進角側の時期に変更されるようになる。また、上記各所定量L,Kは、メイン噴射時期APLTMの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|L|,|K|が十分に小さく設定されている。
【0199】
また、上記第2の補正制限値APL1LMT2及び前述した第1の補正制限値APL1LMT1は、前記第1の過渡トルク値Tb及び第2の過渡トルク値Tcに関して上記条件式(5−a),(5−b)の少なくとも一方が満たされていれば、それぞれ任意に設定することができる。例えば、図6(a)に示すように、これら各過渡トルク値Tb,Tcがメイン噴射モード時基準トルク値Taとパイロット噴射モード時基準トルク値Tdとの略中間値となるように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定する他、上記各過渡トルク値Tb,Tcが、よりメイン噴射モード時基準トルク値Ta側の値となるように、或いは、よりパイロット噴射モード時基準トルク値Td側の値となるように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定することも可能である。
【0200】
しかしながら、これら各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2の絶対値をあまり大きく設定するようにすると、それぞれの噴射モード時において基準メイン噴射時期AMAINB,APLTMB、即ち機関運転状態に基づく噴射時期と大きく異なった時期にメイン噴射が実行されるようになるため、燃焼騒音や排煙濃度の増大を招くおそれがある。このため、本実施形態の燃料噴射制御装置では、こうした燃焼騒音や排煙濃度の増大が許容範囲内に抑えられように、上記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2を設定するようにしている。
【0201】
以上のように、噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2にまで徐々に変更されるのに伴って、メイン噴射時期APLTMも徐々に変更される。即ち、第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出される場合には、メイン噴射時期AMAINは徐々に遅角側の時期に変更され、第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出される場合には、逆にメイン噴射時期AMAINは徐々に進角側の時期に変更されるようになる。
【0202】
前述したステップ428において噴射時期補正量APL1の絶対値|APL1|が第2の補正制限値APL1LMT2の絶対値|APL1LMT2|以下である旨判断された場合[タイミングt11]、ECU50は、ステップ430において、噴射時期補正量APL1を第2の補正制限値APL1LMT2と等しく設定した後、処理をステップ432に移行する。一方、ステップ428において噴射時期補正量APL1が第2の補正制限値APL1LMT2より大きい旨判断された場合も同様に、ECU50は、処理をステップ432に移行する。
【0203】
ステップ432において、ECU50は、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ460に移行する。一方、ステップ432において肯定判定された場合[タイミングt12]、ECU50は、ステップ434において、噴射時期補正量APL1を第1の補正制限値APL1LMT1と等しく設定した後、処理をステップ460に移行する。
【0204】
一方、前述したステップ420において否定判定された場合、ECU50は、処理を図12に示すステップ450に移行する。ステップ450において、ECU50は、現在の噴射時期補正量APL1から所定量Nを減算し、その減算した値(=APL1−N)を新たな噴射時期補正量APL1として設定する。
【0205】
この所定量Nは、前記所定量L,Kと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものである。ECU50のメモリには、この所定量Nと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データが記憶されており、ECU50は、この関数データを参照して所定量Nを算出する。また、この所定量Nは、前記第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには、前記所定量L,Kと同様、正の値として算出され、第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには、負の値として算出される。
【0206】
例えば、この所定量Nが正の値に設定されている場合には、ステップ450の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すタイミングt14〜t16の期間において、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に減少するようになり、同所定量Nが負の値に設定されている場合には、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)は徐々に増加するようになる。
【0207】
そして、この噴射時期補正量APL1の変更に伴ってメイン噴射時期AMAINも徐々に基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側或いは遅角側の時期に変更されるが、上記所定量Nは、こうしたメイン噴射時期AMAINの変更に伴うトルクショックが発生しないように、その絶対値|N|が十分に小さく設定されている。
【0208】
次に、ECU50は、ステップ452において、前述したステップ442と同様、噴射時期補正量APL1の符号が変化したか否かを判定する。ここで肯定判定された場合[タイミングt16]、ECU50は、ステップ454において、噴射時期補正量APL1を「0」に設定する。ステップ454の処理を実行した後、又は、ステップ452において否定判定された場合、ECU50は処理をステップ460に移行する。
【0209】
上記各ステップ452,454の処理が実行されることにより、図5に示すタイミングt16以降、噴射時期補正量APL1は「0」に保持されるようになり、定常状態に対応したメイン噴射が実行されるようになる。
【0210】
ステップ460において、ECU50は、前記パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ462において、次式(6)に基づいてメイン噴射時期APLTM(図3(a)参照)を算出する。
【0211】
APLTM=APLTMB+APL1 ・・・(6)
次に、ECU50は、ステップ466において、前述した式(3)に基づいて前述したパイロット噴射時期APLTを算出する。
【0212】
一方、ステップ460において、否定判定された場合、ECU50は、ステップ464において、次式(7)に基づいて前述したメイン噴射時期AMAIN(図3(b)参照)を算出する。
【0213】
AMAIN=AMAINB+APL1 ・・・(7)
ECU50のメモリには、基準メイン噴射時期AMAINB、基準メイン噴射時期APLTMBと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、上記各ステップ462,464の処理を実行する際に、上記各関数データをそれぞれ参照して基準メイン噴射時期AMAINB、基準メイン噴射時期APLTMBを算出する。
【0214】
ECU50は、ステップ464又はステップ466の処理を実行した後、本ルーチンの処理を一旦終了する。
以上説明したように、本ルーチンの各処理により、メイン噴射モード時のメイン噴射時期AMAIN、パイロット噴射モード時のパイロット噴射時期APLT及びメイン噴射時期APLTMがそれぞれ算出される。
【0215】
次に、「目標燃料圧算出ルーチン」の各処理について図13に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、コモンレール4の燃料圧PCに係る目標燃料圧を算出するためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0216】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ500において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ502において更に、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「0」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ504において、燃料圧補正量PCRPLを所定値Pと等しく設定する。
【0217】
これに対して、ステップ502において否定判定された場合、ECU50は、ステップ506において噴射時期補正量APL1が「0」であるか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ507において、燃料圧補正量PCRPLを「0」に設定する。一方、ステップ506において否定判定された場合、ECU50は、ステップ508において、燃料圧補正量PCRPLを所定値Rと等しく設定する。
【0218】
ここで、上記所定値Pは、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには負の値(P<0)として、同第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには正の値(P>0)として算出されるようになっている。
【0219】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)が第1の補正制限値APL1LMT1に近づくように変更されることにより、メイン噴射時期AMAINが基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側の時期に変更されるタイミングt1〜t4の期間においては、この所定値Pは負の値として算出されることとなる。
【0220】
また、上記所定値Rは、上記所定値Pと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには負の値(R<0)として、同第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには正の値(R>0)として算出されるようになっている。
【0221】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)がタイミングt4において第2の補正制限値APL1LMT2へ変更されることにより、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBよりも遅角側の時期に変更されているタイミングt4〜t8の期間においては、この所定値Rは正の値として算出されることとなる。
【0222】
ECU50のメモリには、上記各所定値P,Rと機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、各ステップ504,508において、これら関数データをそれぞれ参照して所定値P,Rを算出する。
【0223】
前述したステップ500において否定判定された場合、ECU50は、ステップ510において、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ512において、燃料圧補正量PCRPLを所定値Qと等しく設定する。
【0224】
これに対して、ステップ510において否定判定された場合、ECU50は、ステップ514において噴射時期補正量APL1が「0」であるか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ515において、燃料圧補正量PCRPLを「0」に設定する。一方、ステップ514において否定判定された場合、ECU50は、ステップ516において燃料圧補正量PCRPLを所定値Sと等しく設定する。
【0225】
ここで、上記所定値Qは、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第2の補正制限値APL1LMT2が負の値として算出されるときには正の値(Q>0)として、同第2の補正制限値APL1LMT2が正の値として算出されるときには負の値(Q<0)として算出される。
【0226】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)が第2の補正制限値APL1LMT2へと近づくように変更されることにより、メイン噴射時期APLTMが基準メイン噴射時期APLTMBよりも遅角側の時期に変更されるタイミングt9〜t12の期間においては、この所定値Qは正の値として算出される。
【0227】
また、上記所定値Sは、上記所定値Qと同様、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものであり、上記第1の補正制限値APL1LMT1が正の値として算出されるときには負の値(S<0)として、同第1の補正制限値APL1LMT1が負の値として算出されるときには正の値(S>0)として算出される。
【0228】
従って、図5に示すように、噴射時期補正量APL1(同図(g)参照)がタイミングt12において第1の補正制限値APL1LMT1へ変更されることにより、メイン噴射時期AMAINが基準メイン噴射時期AMAINBよりも進角側の時期に変更されているタイミングt12〜t16の期間においては、この所定値Sは負の値として算出されることとなる。
【0229】
ECU50のメモリには、上記各所定値Q,Sと機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、各ステップ512,516において、これら関数データを参照して所定値Q,Sを算出する。尚、図5に示すタイミングチャートは、前記所定値Pと所定値Sとが等しく設定されるとともに、前記所定値Rと所定値Qとが等しく設定された場合の制御態様例を示している。
【0230】
上記各ステップ504,507,508,512,515,516の各処理を実行した後、ECU50はステップ520において、次式(8)に基づいて前述した最終目標燃料圧PCRを算出する。
【0231】
PCR=PCRB+PCRPL ・・・(8)
上記ステップ520の処理を実行した後、ECU50は本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0232】
本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、以上説明した制御手順に基づいて燃料の噴射時期、噴射量、噴射圧、パイロット噴射間隔を制御することにより、以下に示す効果を奏することができる。
【0233】
(1)本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切替前における定常状態でのトルク値(メイン噴射モード時基準トルク値Ta,パイロット噴射モード時基準トルク値Td)から過渡トルク値Tb,Tcを経て、燃料噴射形態の切替後における定常状態でのトルク値Ta,Tdにまで機関トルクを徐々に変更するようにし、こうした機関トルクの徐変制御をメイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更することにより行うようにしているため、例えばパイロット噴射間隔の変更に基づいて機関トルクを徐変制御するようにした構成とは異なり、機関トルクの変化速度を確実に制御して燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0234】
(2)特に、本実施形態の燃料噴射制御装置では、燃料噴射形態の切替直前及び切替直後における機関トルクの大きさ、即ち、過渡トルク値Tb,Tcが等しくなるように、燃料噴射形態切替前後のメイン噴射時期AMAIN,APLTMを制御するようにしているため、燃料噴射形態の切替時に発生するトルクショックをより確実に防止することができる。
【0235】
(3)また、本実施形態の燃料噴射制御装置では、上記のようにメイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更する際、同メイン噴射時期AMAIN,APLTMが進角側の時期に変更されるほど、コモンレール4の燃料圧PCを低圧側に制御するようにしているため、同メイン噴射時期AMAIN,APLTMの変更に起因した燃焼騒音の増大や排煙濃度の増加を防止することができる。
【0236】
(4)本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切り替えに伴って、パイロット噴射間隔AINTを徐変するようにしているため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化を緩慢なものとすることができ、トルクショックの発生を更に確実に抑制することができる。
【0237】
(5)更に、本実施形態の燃料噴射制御装置では、上記のようにパイロット噴射間隔AINTが徐変される際に、同パイロット噴射間隔AINTが短くなるほど最終パイロット噴射量QPLT1を少なくするようにしているため、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇を抑制して燃焼騒音の増大を防止することができる。
【0238】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。尚、上記第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0239】
上記第1の実施形態では、メイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更することにより、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を防止するようにしたが、本実施形態では、最終メイン噴射量QMAINを変更することによって、こうしたトルクショックの発生を防止するようにしている。
【0240】
本実施形態では、前述した「制御用フラグ操作ルーチン」、「噴射量算出ルーチン」、「パイロット噴射間隔算出ルーチン」の他、以下に説明する「メイン噴射量補正ルーチン」が実行される。
【0241】
尚、図9に示す「噴射量算出ルーチン」では、ステップ238において、最終メイン噴射量QMAINを算出するようにしていたが、本実施形態では、このステップ238の処理が省略されており、各ステップ234,236の処理が実行された後は処理が一旦終了されるようになっている。また、本実施形態においては、メイン噴射時期AMAIN,APLTMは、それぞれ基準メイン噴射時期AMAINB,APLTMBと常に等しく設定されるとともに、最終目標燃料圧PCRも基準目標燃料圧PCRBと常に等しく設定されているものとする。
【0242】
以下、「メイン噴射量補正ルーチン」の各処理について図14に示すフローチャート、図5及び図15を併せ参照して説明する。このルーチンは、最終メイン噴射量QMAINに対して補正を行うためのものであり、ECU50によって前記「制御用フラグ操作ルーチン」と同クランク角度毎(例えば180°CA毎)の割込処理として実行される。
【0243】
処理がこのルーチンに移行すると、まず、ステップ600において、ECU50は、パイロット噴射モードフラグXPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ602において更に、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、ステップ622において、最終メイン噴射量QMAINの補正量であるメイン噴射補正量QMAIN1を「0」に設定する[図5に示すタイミングt1〜t4]。一方、ステップ602において肯定判定された場合、ECU50は、ステップ604において、メイン噴射補正量QMAIN1を補正制限値Xと等しく設定する[タイミングt4]。
【0244】
次に、ECU50は、ステップ606において、メイン噴射制御許可フラグXJPLT1が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで否定判定された場合、ECU50は、処理をステップ608に移行する。ステップ608において、ECU50は、現在のメイン噴射補正量QMAIN1に所定量Yを加算し、その加算された値(=QMAIN1+Y)を新たなメイン噴射補正量QMAIN1として設定する[タイミングt6,t7]。
【0245】
続いて、ECU50は、ステップ610において、メイン噴射補正量QMAIN1の符号が変化したか否か、即ち、前回の制御周期において「0」又は負の値であったメイン噴射補正量QMAIN1が今回の制御周期において正の値に変化したか否か、逆に、前回の制御周期において「0」又は正の値であったメイン噴射補正量QMAIN1が今回の制御周期において負の値に変化したか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ612において、メイン噴射補正量QMAIN1を「0」に設定する[タイミングt8]。
【0246】
一方、ステップ606において肯定判定された場合、ステップ610において否定判定された場合、或いはステップ612の処理を実行した後はいずれも、ECU50は、処理をステップ630に移行する。
【0247】
また、前述したステップ600において否定判定された場合、ECU50は、ステップ620において、パイロット噴射実行フラグXPLT2が「1」に設定されているか否かを判定する。ここで肯定判定された場合、ECU50は、ステップ624において、現在のメイン噴射補正量QMAIN1から所定量Zを減算し、その減算した値(=QMAIN1−Z)を新たなメイン噴射補正量QMAIN1として設定する[タイミングt9,t10]。
【0248】
次に、ステップ626において、ECU50は、メイン噴射補正量QMAIN1の絶対値|QMAIN1|と補正制限値Xの絶対値|X|とを比較する。ここでメイン噴射補正量QMAIN1の絶対値|QMAIN1|が補正制限値Xの絶対値|X|より大きい旨判断された場合、ECU50は、ステップ628において、メイン噴射補正量QMAIN1を補正制限値Xと等しく設定した後[タイミングt11]、処理をステップ630に移行する。一方、ステップ626において、メイン噴射補正量QMAIN1の絶対値|QMAIN1|が補正制限値Xの絶対値|X|以下である旨判断された場合、ECU50は、ステップ630の処理を実行する。
【0249】
これに対して、前記ステップ620において否定判定された場合、ECU50は、処理をステップ622に移行する。そして、同ステップ622において、ECU50は、メイン噴射補正量QMAIN1を「0」に設定した後[タイミングt13〜t16]、ステップ630の処理を実行する。
【0250】
ステップ630において、ECU50は、次式(9)に基づいて最終メイン噴射量QMAINを算出する。
QMAIN=QMAINB+QMAIN1−QPLT1 ・・・(9)
このステップ630の処理を実行した後、ECU50は、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0251】
ここで、前述した補正制限値X及び所定量Y,Zは、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出されるものである。ECU50のメモリには、上記補正制限値X、所定量Y,Zのそれぞれと、機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBとの関係を定義する関数データがそれぞれ記憶されており、ECU50は、補正制限値X、所定量Y,Zを算出する際に、これら関数データを参照する。
【0252】
また、上記補正制限値Xは、以下の各条件式(10−a),(10−b)の少なくとも一方が満たされるように設定されている。
Te=Tf≦Tg ・・・(10−a)
Tg≦Tf=Te ・・・(10−b)
Te:メイン噴射モード時基準トルク値
Tg:パイロット噴射モード時基準トルク値
Tf:過渡トルク値
ここで、上記メイン噴射モード時基準トルク値Teは、メイン噴射モード時の最終メイン噴射量QMAINを、基本噴射量QMAINBから最終パイロット噴射量QPLT1を減算した量(=QMAINB−QPLT1)としたときのトルク値であり、パイロット噴射モード時基準トルク値Tgは、パイロット噴射モード時の最終メイン噴射量QMAINを上記量(QMAINB−QPLT1)としたときのトルク値である。また、過渡トルク値Tfは、パイロット噴射モード時において、最終メイン噴射量QMAINを、上記量(QMAINB−QPLT1)から補正制限値X分だけ増量或いは減量したときのトルク値である。
【0253】
例えば、図15(a)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Teがパイロット噴射モード時基準トルク値Tgよりも小さい場合、上記補正制限値Xは、負の値(X<0)として算出される。また、このように補正制限値Xが負の値として算出される場合、上記各所定量Y,Zはいずれも正の値(Y>0,Z>0)として算出される。
【0254】
このように補正制限値Xが負の値として算出される場合には、図5に示すように、タイミングt4において、メイン噴射補正量QMAIN1(同図(j)参照)は「0」から補正制限値Xへと減少するようになる。その結果、タイミングt4においては、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられると同時に、最終メイン噴射量QMAINが補正制限値X分だけ減量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点E1で示す状態から点F1で示す状態にまで変化する。
【0255】
ここで、本実施形態の燃料噴射制御装置では、上記各点E1,F1で示す状態での機関トルク、即ち、メイン噴射モード時基準トルク値Teと過渡トルク値Tfとが一致するように、前記補正制限値Xを設定するようにしているため(上記式(10−a),(10−b)参照)、燃料噴射形態の切替時に機関トルクの変化は殆ど無い。従って、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0256】
また、タイミングt6〜t8の期間では、メイン噴射補正量QMAIN1(図5(j)参照)は補正制限値Xから「0」となるまで徐々に増加する。その結果、このタイミングt6〜t8の期間では、最終メイン噴射量QMAINが、補正制限値X分だけ減量された状態から定常時の量(=QMAINB−QPLT1)にまで徐々に増量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点F1で示す状態から点G1で示す状態にまで徐々に増加するようになる。
【0257】
ここで、最終メイン噴射量QMAINは、パイロット噴射間隔AINT等と比較して機関トルクとの相関性が高く、同トルクに与える影響が大きいため、これを変更することにより、機関トルクの大きさを確実に制御することが可能である。従って、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、上記各点F1,G1で示す各状態での機関トルク差が大きい場合であっても、最終メイン噴射量QMAINの増加速度、即ち、前記所定量Yの大きさを適宜調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、機関トルクを前記過渡トルク値Tfからパイロット噴射モード時基準トルク値Tgにまで徐々に増加させることができる。
【0258】
更に、タイミングt9〜t12の期間では、メイン噴射補正量QMAIN1が「0」から補正制限値Xと等しくなるまで減少する。その結果、このタイミングt9〜t12の期間では、最終メイン噴射量QMAINが、定常時の量(=QMAINB−QPLT1)から補正制限値X分だけ減量された量にまで徐々に減量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点G1で示す状態から点F1で示す状態にまで徐々に減少するようになる。
【0259】
そして、このタイミングt9〜t12の期間においても、タイミングt6〜t8の期間における場合と同様、最終メイン噴射量QMAINの減少速度、即ち、前記所定量Zの大きさを適宜調節することにより、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、機関トルクをパイロット噴射モード時基準トルク値Tgから過渡トルク値Tfにまで徐々に減少させることができる。
【0260】
また、タイミングt12において、メイン噴射補正量QMAIN1は補正制限値Xから「0」に増加されるようになる。その結果、このタイミングt12においては、燃料噴射形態がパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられると同時に、最終メイン噴射量QMAINが補正制限値X分だけ増量されるようになる。従って、機関トルクは、図15(a)に点F1で示す状態から点E1で示す状態にまで変化するようになる。
【0261】
そして、このように、燃料噴射形態が切り替えられても、タイミングt4における場合と同様、その切替時に伴う機関トルクの変化は殆ど無いため、トルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0262】
これに対して、図15(b)に示すように、メイン噴射モード時基準トルク値Teがパイロット噴射モード時基準トルク値Tgよりも大きくなるような状況も、機関運転状態(機関回転数NE及び基本噴射量QMAINB)に応じて発生し得る。このような場合、上記補正制限値Xは、正の値(X>0)として算出される。また、このように補正制限値Xが正の値として算出される場合、上記各所定量Y,Zはいずれも負の値(Y<0,Z<0)として算出される。
【0263】
そして、本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、このように補正制限値Xが正の値として算出される場合も、前述した、補正制限値Xが負の値として算出される場合と同様、燃料噴射形態の切替時におけるトルクショックを防止することができるとともに、トルクショックが発生しないように機関トルクの変化速度を確実に制御したうえで、機関トルクを、過渡トルク値Tfからパイロット噴射モード時基準トルク値Tgにまで徐々に減少させ、或いは、パイロット噴射モード時基準トルク値Tgから過渡トルク値Tfにまで徐々に増加させることができる。
【0264】
以上説明した本実施形態によれば、前述した第1の実施形態における効果(4),(5)に加えて、更に以下に示す効果を奏することができる。
(6)本実施形態の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射形態の切替前における定常状態でのトルク値(メイン噴射モード時基準トルク値Te,パイロット噴射モード時基準トルク値Tg)から過渡トルク値Tfを経て、燃料噴射形態の切替後における定常状態でのトルク値Te,Tgにまで機関トルクを徐々に変更するようにし、こうした機関トルクの徐変制御を最終メイン噴射量QMAINを変更することにより行うようにしているため、例えばパイロット噴射間隔の変更に基づいて機関トルクを徐変制御するようにした構成とは異なり、機関トルクの変化速度を確実に制御して燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0265】
(7)特に、本実施形態の燃料噴射制御装置では、燃料噴射形態の切替直前及び切替直後における機関トルクの大きさ、即ち、前記過渡トルク値Tfとメイン噴射モード時基準トルク値Teとが等しくなるように、燃料噴射形態の切替前後において最終メイン噴射量QMAINを制御するようにしているため、燃料噴射形態の切替時に発生するトルクショックをより確実に防止することができる。
【0266】
以上、本発明を具体化した各実施形態について説明したが、これら各実施形態は以下に示すようにその構成を変更して実施することもできる。
・上記第1の実施形態ではメイン噴射の噴射時期を変更することにより、また、第2の実施形態ではメイン噴射の噴射量を変更することにより、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を防止するようにしたが、メイン噴射の噴射圧を変更することによっても、上記トルクショックの発生を防止することができる。より具体的には、前述した最終目標燃料圧PCRの補正量である燃料圧補正量PCRPLを、例えば、図5(j)に示すメイン噴射補正量QMAIN1と同様の変化態様をもって変化させるようにする。
【0267】
即ち、燃料噴射形態がメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えられる際に機関トルクが増加するような場合にあっては、まず、燃料噴射形態をメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替えると同時に、燃料圧補正量PCRPLを「0」から所定量だけ減少させて最終目標燃料圧PCRを低下させる[図5に示すタイミングt4]。その結果、噴射圧が低下するため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑えることができる。次に、燃料噴射形態がパイロット噴射モードとなった後、燃料圧補正量PCRPLを徐々に「0」にまで増大させることにより、最終目標燃料圧PCRを増大させる[タイミングt6〜t8]。その結果、機関トルクは定常時のトルク値にまで徐々に増大するようになる。
【0268】
一方、燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えられるときには、まず、燃料噴射形態を切り替える前に、燃料圧補正量PCRPLを「0」から徐々に減少させて最終目標燃料圧PCRを低下させる[タイミングt9〜t12]。次に、燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替えると同時に、燃料圧補正量PCRPLを「0」にまで増加させて最終目標燃料圧PCRを増大させる[タイミングt12]。
【0269】
上記構成によっても、メイン噴射の噴射圧は、噴射時期や噴射量と同様、機関トルクとの相関性が高く、同トルクに与える影響が大きいため、これを変更することにより、機関トルクの変化速度を確実に制御して燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0270】
・上記第2の実施形態では、トルクショックを防止するために最終メイン噴射量QMAINを変更するようにしたが、この最終メイン噴射量QMAINに加えて、第1の実施形態と同様、メイン噴射時期AMAIN,APLTMを変更するようにし、これら最終メイン噴射量QMAIN及びメイン噴射時期AMAIN,APLTMの双方を変更することによってトルクショックを防止するようにしてもよい。このように構成すれば、前述した各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2の絶対値|APL1LMT1|,|APL1LMT2|、及び補正制限値Xの絶対値|X|を小さく設定することができるようになるため、これら最終メイン噴射量QMAIN及びメイン噴射時期AMAIN,APLTMの変更に伴う燃焼騒音や排煙濃度の増大を極力抑えることができる。
【0271】
・第1の実施形態では、第1の過渡トルク値Tbと第2の過渡トルク値Tcとを一致させるようにしたが、燃料噴射形態の切替時に発生するトルクショックが体感できない程度にまで抑えられるように両トルク値Tb,Tcの絶対差|Tb−Tc|を小さく設定するのであれば、これら過渡トルク値Tb,Tcを異なる値に設定するようにしてもよい。また、第2の実施形態においても、過渡トルク値Tfとメイン噴射モード時基準トルク値Teとを一致させるようにしたが、これら両トルク値Tf,Teに関しても同様に、異なる値に設定するようにしてもよい。
【0272】
・第1の実施形態において、メイン噴射時期の制御態様は、例えば以下に示す各制御態様[a],[b]のように変更することもできる。
[a]燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替える際には、パイロット噴射モードにおいてメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTBに設定している状態(図16(a):点A2)から燃料噴射形態を切り替えると同時に、その切替前後における各トルク値Ta,Tc(図16(a)参照)が略一致するように、メイン噴射モードでのメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBよりも遅角側の時期に設定する(点A2→点C2)。次に、メイン噴射時期AMAINをその遅角側の時期から基準メイン噴射時期AMAINBにまで徐々に進角側の時期に変更する(点C2→点D2)。従って、機関トルクは、同図(a)に示すように、所定値Ta(=Tc)から所定値Tdにまで徐々に増加するようになる。
【0273】
一方、燃料噴射形態をメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替える際には、その切り替えを行う前に、まず、燃料噴射形態の切替前後におけるトルク値Ta,Tcが略一致するようになるまで、メイン噴射モードでのメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBから徐々に遅角側の時期に変更する(点D2→点C2)。次に、燃料噴射形態を切り替えると同時に、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTBに設定する(点C2→点A2)。従って、機関トルクは、同図(a)に示すように、所定値Tdから所定値Ta(=Tc)にまで徐々に減少するようになる。
【0274】
[b]燃料噴射形態をパイロット噴射モードからメイン噴射モードに切り替える際には、その切り替えを行う前に、まず、燃料噴射形態の切替前後におけるトルク値Tb,Td(図16(b)参照)が略一致するようになるまで、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTMを基準メイン噴射時期APLTBから徐々に進角側の時期に変更する(点A3→点B3)。次に、燃料噴射形態を切り替えると同時に、メイン噴射モードでのメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBに設定する(点B3→点D3)。従って、機関トルクは、同図(b)に示すように、同図(a)に示すように、所定値Taから所定値Td(=Tb)にまで徐々に増大するようになる。
【0275】
一方、燃料噴射形態をメイン噴射モードからパイロット噴射モードに切り替える際には、メイン噴射モードにおいてメイン噴射時期AMAINを基準メイン噴射時期AMAINBに設定している状態(点D3)から燃料噴射形態を切り替えると同時に、その切替前後における各トルク値Tb,Tdが略一致するように、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTを基準メイン噴射時期APLTBよりも遅角側の時期に設定する(点D3→点B3)。次に、パイロット噴射モードでのメイン噴射時期APLTを基準メイン噴射時期APLTBにまで徐々に遅角側の時期に変更する(点B3→点A3)。従って、機関トルクは、同図(b)に示すように、所定値Td(=Tb)から所定値Taにまで徐々に減少するようになる。
【0276】
以上説明した各制御態様[a],[b]に基づいて、メイン噴射時期を制御するようにしても第1の実施形態と同等の作用効果を奏することができる。
・上記第1の実施形態では、噴射時期補正量APL1に関する前記各補正制限値APL1LMT1,APL1LMT2、各所定量H,J,M,L,K,N、燃料圧補正量PCRPLに関する各所定値P,Q,R,Sをそれぞれ機関運転状態に基づいて算出するようにしたが、例えば、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化の傾向が機関運転状態に因らず略一定であるとみなせる場合には、これら各値を一定値として設定するようにしてもよい。また、第2の実施形態において、メイン噴射補正量QMAIN1に関する補正制限値X及び各所定量Y,Zについても同様に、これら各値を一定値として設定することもできる。
【0277】
・上記第1の実施形態では、燃料圧補正量PCRPLに関する各所定値P,Q,R,Sをそれぞれ機関回転数NE及び基本噴射量QMAINBに基づいて算出するようにしたが、例えば、これらパラメータNE,QMAINBに加え、上記水温センサ21により検出される冷却水温THWや燃料温センサ23により検出される燃料温THF等に基づいて上記各値を算出するようにしてもよい。このように冷却水温THWや燃料温THFに応じて上記各値を算出することにより、燃料の微粒化度をより適切に制御できるようになる。
【0278】
・上記各実施形態の燃料噴射制御装置では、サプライポンプ6からコモンレール4内に燃料を圧送し、同コモンレール4からインジェクタ2に対して燃料を供給する構成を採用するようにしたが、いわゆる分配型のサプライポンプを用いるようにし、同ポンプから各インジェクタ2に対して燃料を供給するようにした構成を採用することもできる。
【0279】
上記各実施形態から把握できる技術的思想についてその効果ともに以下に記載する。
(1) 請求項4に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制御値設定手段は、前記過渡トルク値が前記切替後トルク値と等しくなるように前記過渡制御値を設定するものであることを特徴とする。
【0280】
(2) 請求項4に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制御値設定手段は、前記過渡トルク値が前記切替前トルク値と等しくなるように前記過渡制御値を設定するものであることを特徴とする。
【0281】
上記(1)又は(2)の構成によれば、燃料噴射形態の切替時において機関トルクが変化しなくなるため、燃料噴射形態の切り替えと同時に発生する機関トルクの急激な変化が確実に抑制され、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0282】
【発明の効果】
請求項1乃至9に記載した発明では、メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制するようにしている。このメイン噴射に係る制御値は、機関燃焼状態に対して直接影響を及ぼすものであるため、パイロット噴射間隔と比較して機関トルクとの相関性が高い。従って、このメイン噴射に係る制御値を変更することにより、機関トルクを確実に制御することが可能になり、燃料噴射形態の切り替えに伴う急激な機関トルクの変化が抑制されるようになる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を確実に防止することができる。
【0284】
特に、請求項1に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値から切替後トルク値へと徐変させられるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化が緩慢なものとなる。その結果、機関トルクの変化をその徐変速度に応じて確実に制御しつつ、上記トルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0285】
請求項2、4乃至6に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際に、機関トルクが切替前トルク値と切替後トルク値との間の過渡トルク値となるように制御されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化がより緩慢なものとなる。その結果、上記トルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0286】
また、請求項3又は4に記載した発明によれば、燃料噴射形態の切替前、或いは燃料噴射形態の切替後における機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、同機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。また、燃料噴射形態の切替時における機関トルクのトルク変化量が相対的に小さなものとなる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生をより確実に防止することができる。
【0287】
また、請求項5又は6に記載した発明によれば、燃料噴射形態の切替前及び切替後における機関トルクの変化をメイン噴射に係る制御値の徐変速度に応じて制御することが可能になり、同機関トルクの急激な変化が確実に抑制されるようになる。また、燃料噴射形態の切替時における機関トルクのトルク変化量が相対的に小さなものとなる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生をより確実に防止することができる。
【0288】
特に、請求項6に記載した発明では、燃料噴射形態の切替時において機関トルクが変化しなくなるため、燃料噴射形態の切り替えと同時に発生する機関トルクの急激な変化が確実に抑制され、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生を更に確実に防止することができる。
【0289】
また、請求項7又は8に記載した発明では、急激な機関トルク変化の発生を抑制すべくメイン噴射の噴射時期が進角側に変更されるほど、同噴射時期がメイン噴射の噴射圧が低圧側に変更される。従って、メイン噴射の噴射時期が相対的に進角側に変更されるときには、噴射圧の低下により噴射燃料の微粒化が抑えられるため、急激な燃焼圧の上昇が抑制される。一方、メイン噴射の噴射時期が相対的に遅角側に変更されるときには、噴射圧の増大によって噴射燃料の微粒化が促進されるようになるため、燃料の不完全燃焼が抑制される。その結果、メイン噴射の噴射時期の変更に伴う燃焼騒音の増大や排煙濃度の増加を防止することができる。
【0290】
請求項9に記載した発明では、燃料噴射形態が切り替えられる際にメイン噴射とパイロット噴射との噴射間隔、即ちパイロット噴射間隔が徐変されるため、燃料噴射形態の切り替えに伴う機関燃焼状態の変化が緩慢なものとなる。その結果、燃料噴射形態の切り替えに伴うトルクショックの発生をより確実に防止することができる。更に、パイロット噴射間隔が相対的に短く設定されるような場合には、パイロット噴射の噴射量が減量されるため、パイロット噴射によって一時的に上昇した燃焼圧は、より早期に低下し始めるようになる。従って、パイロット噴射によって上昇した燃焼圧が十分に低下したときにメイン噴射が実行されるようになり、燃焼圧の急激な上昇が抑制される。その結果、パイロット噴射による燃焼圧上昇の緩和作用を有効に利用して、燃焼騒音の増大を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料噴射制御装置を示す概略構成図。
【図2】定常時パイロット噴射量と機関回転数及び基本噴射量との関係を示すグラフ。
【図3】電磁弁のオン/オフ状態の変化態様を示すタイミングチャート。
【図4】基準目標燃料圧と機関回転数及び基本噴射量との関係を示すグラフ。
【図5】燃料噴射制御装置による制御態様例を説明するためのタイミングチャート。
【図6】パイロット噴射モード時及びメイン噴射モード時のメイン噴射時期と機関トルクとの関係を示すグラフ。
【図7】制御用フラグの操作手順を示すフローチャート。
【図8】制御用フラグの操作手順を示すフローチャート。
【図9】メイン噴射及びパイロット噴射における噴射量の算出手順を示すフローチャート。
【図10】パイロット噴射間隔の算出手順を示すフローチャート。
【図11】メイン噴射及びパイロット噴射における噴射時期の算出手順を示すフローチャート。
【図12】メイン噴射及びパイロット噴射における噴射時期の算出手順を示すフローチャート。
【図13】目標燃料圧の算出手順を示すフローチャート。
【図14】メイン噴射量の補正手順を示すフローチャート。
【図15】パイロット噴射モード時及びメイン噴射モード時の最終メイン噴射量と機関トルクとの関係を示すグラフ。
【図16】パイロット噴射モード時及びメイン噴射モード時のメイン噴射時期と機関トルクとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…ディーゼルエンジン、2…インジェクタ、4…コモンレール、6…サプライポンプ、8…燃料タンク、15…アクセルペダル、20…アクセルセンサ、50…ECU。
Claims (9)
- 内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、
噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、
燃料噴射形態が切り替えられる前後に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値から切替後における切替後トルク値へと徐変させるトルク制御手段を有し、燃料噴射形態が切り替えられる前後にパイロット噴射実行の可否を判定する判定用パイロット噴射量を変化させ、同判定用パイロット噴射量がパイロット噴射を安定して実行することのできる最小量以上のときに同判定用パイロット噴射量による前記パイロット噴射の実行を許可するとともに、同判定用パイロット噴射量が前記最小量を跨いで変化したときに燃料噴射形態の切り替えを行うことにより前記機関トルクの変化を抑制するトルク変化抑制手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、
噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、
燃料噴射形態が切り替えられる前後に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値と切替後における切替後トルク値との間の過渡トルク値とすべく制御するトルク制御手段を有し、燃料噴射形態が切り替えられる前後にパイロット噴射実行の可否を判定 する判定用パイロット噴射量を変化させ、同判定用パイロット噴射量がパイロット噴射を安定して実行することのできる最小量以上のときに同判定用パイロット噴射量による前記パイロット噴射の実行を許可するとともに、同判定用パイロット噴射量が前記最小量を跨いで変化したときに燃料噴射形態の切り替えを行うことにより前記機関トルクの変化を抑制するトルク変化抑制手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記トルク制御手段は、燃料噴射形態の切替直前の機関トルクと切替直後の機関トルクとを一致させるように、燃料噴射形態の切替直前の前記メイン噴射に係る制御値及びその切替直後の前記メイン噴射に係る制御値を設定することで燃料噴射形態を切り替える際の機関トルクの制御を行う
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項2に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記トルク制御手段は、
燃料噴射形態切替後の噴射形態において前記機関トルクを前記過渡トルク値とするための前記メイン噴射に係る制御値を過渡制御値として設定する制御値設定手段と、
前記メイン噴射に係る制御値を、燃料噴射形態切替時に前記過渡制御値へと変更するとともに、燃料噴射形態切替後に前記過渡制御値から前記機関トルクを前記切替後トルク値とするための制御値にまで徐変させる制御値変更手段と
を備える
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項2に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記トルク制御手段は、
燃料噴射形態切替前の噴射形態において前記機関トルクを前記切替前トルク値と前記切替後トルク値との間の第1の過渡トルク値とするための前記メイン噴射に係る制御値を第1の過渡制御値として設定するとともに、燃料噴射形態切替後の噴射形態において前記機関トルクを前記切替前トルク値と前記切替後トルク値との間の第2の過渡トルク値とするための前記メイン噴射に係る制御値を第2の過渡制御値として設定する制御値設定手段と、
前記メイン噴射に係る制御値を、燃料噴射形態の切替判定後であって実際の切替前に前記第1の過渡制御値にまで徐変させるとともに、燃料噴射形態切替時に同第1の過渡制御値から前記第2の過渡制御値へと変更し、燃料噴射形態切替後には前記第2の過渡制御値から前記機関トルクを前記切替後トルク値とするための制御値にまで徐変させる制御値変更手段と
を備える
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項5に記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記制御値設定手段は、前記第1の過渡トルク値と前記第2の過渡トルク値とが等しくなるように前記第1の過渡制御値及び前記第2の過渡制御値を設定するものである
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、
噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、
燃料噴射形態が切り替えられる際に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値から切替後における切替後トルク値へと徐変させるトルク制御手段を有するトルク変化抑制手段を備え、
前記トルク変化抑制手段は、
前記メイン噴射に係る制御値として少なくとも前記メイン噴射の噴射時期を変更するとともに、同噴射時期を進角側に変更するほど前記メイン噴射の噴射圧を低圧側に変更するものである
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 内燃機関に対する燃料噴射形態を機関運転状態に基づいてメイン噴射のみが実行される噴射形態と同メイン噴射及びパイロット噴射の双方が実行される噴射形態との間で切り替えるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置において、
噴射時期、噴射量及び噴射圧の少なくとも一つについての前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記燃料噴射形態の切り替えに伴う機関トルクの変化を抑制する手段であって、
燃料噴射形態が切り替えられる際に前記メイン噴射に係る制御値の変更に基づいて前記機関トルクを燃料噴射形態の切替前における切替前トルク値と切替後における切替後トルク値との間の過渡トルク値とすべく制御するトルク制御手段を有するトルク変化抑制手段を備え、
前記トルク変化抑制手段は、
前記メイン噴射に係る制御値として少なくとも前記メイン噴射の噴射時期を変更するとともに、同噴射時期を進角側に変更するほど前記メイン噴射の噴射圧を低圧側に変更するものである
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1乃至6のいずれかに記載した内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記トルク変化抑制手段は、
燃料噴射形態が切り替えられる際に前記メイン噴射と前記パイロット噴射との噴射間隔を徐変させる噴射間隔制御手段と、
前記噴射間隔が短くなるほど前記パイロット噴射の噴射量が減少するように同噴射量を制御するパイロット噴射量制御手段と
を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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