JP3810338B2 - 透明ローヤルゼリー溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透明ローヤルゼリー溶液の製造方法及び可溶性ローヤルゼリー粉末に関し、より詳しくはローヤルゼリーに含まれる水不溶性蛋白質を酵素により分解、低分子化する透明ローヤルゼリー溶液の製造方法、透明ローヤルゼリー溶液及び可溶性ローヤルゼリー粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
ローヤルゼリーは若い働き蜂の頭部にある下咽頭腺及び大腮腺という分泌腺から分泌される乳白色を帯びたクリーム状の物質であり、特有の香りと収斂性の酸味を有している。ローヤルゼリーは蛋白質、脂質、炭水化物をはじめ、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、アセチルコリン、10−ヒドロキシデセン酸等の栄養成分をバランスよく含み、滋養、強壮、体質改善等広範な薬理作用を示すなど高度の機能性を有することから健康食品、医薬品、化粧品として利用されている。
【0003】
ローヤルゼリーには高濃度の蛋白質が含まれ、最近、ローヤルゼリー中の蛋白質のうち、抗菌作用を持つロイヤリシンや高分子のアピシンといった物質が単離され、栄養補給という観点のみならず、その機能性が注目されている。
生のローヤルゼリーは粘稠で特有の香りと収斂性があるため、そのままでは摂取し難いものである。そこで、ローヤルゼリーを清涼飲料に混ぜて飲み易くすることが行われている。しかし、飲料製品は、風味などと共に、透明性、色などの外観が重要な商品特性であるが、ローヤルゼリー中の蛋白質には水に不溶性のものも含まれ、飲料などに添加した場合は、白濁あるいは分離析出して、安定性、透明性を要求される飲料の原料として使用し難いものであった。
【0004】
この問題を解決するため、ローヤルゼリーをアルコール処理する方法が提案されているが(特開平1−215268号公報)、アルコール不溶性蛋白質が除去されるため、ローヤルゼリー中の有効成分を充分活用しているとは言えない。
【0005】
そこで、ローヤルゼリーをプロテアーゼ処理して不溶性成分を可溶化する方法が提案されている。
特開平4−200355号公報には、中性プロテアーゼで処理して不溶性物質を可溶化する方法が提案されている。
特許第2623044号には、ローヤルゼリーの水懸濁液に作用部位の異なる2種類以上のプロテアーゼを用いて酵素反応により不溶性物質を可溶化し、酵素を失活させた後沈殿物を除去する透明なローヤルゼリーの製造法が提案されており、特許第2958358号には、ローヤルゼリーにプロテアーゼとカルボキシペプチダーゼとを作用させた溶液に、疎水性樹脂を作用させる可溶性ローヤルゼリーの製造方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法は蛋白質を酵素分解して可溶化しているので蛋白質の機能を生かすことが可能となるというメリットはあるものの、ローヤルゼリー中の蛋白質は通常の蛋白質より分解されにくく、分解率を向上させる工夫が必要となる。
特開平4−200355号公報で提案の方法では、分解率向上のため、ローヤルゼリー溶液を1%水溶液という希薄溶液で可溶化処理を行っており、ローヤルゼリーとしての効果を発揮させるためには濃縮する必要があり、濃縮処理のコストが高くなる。また、ローヤルゼリーは本来、抗菌効果を有しているが、1%水溶液では抗菌効果が充分ではなく、カビの発生のおそれもあるため、製造、保管に注意を要するという問題もある。
また、中性プロテアーゼを用いているため、弱酸性〜中性で処理する必要があるが、中性付近で酵素処理したローヤルゼリー水溶液は褐変し易いという問題もある。
さらに、酵素反応後、加熱して酵素反応を停止させているが、中性プロテアーゼの場合は酵素残存性が高く、保管時に酵素反応が進んで味が変わるという問題があった。
【0007】
特許第2623044号や特許第2958358号で提案の方法は、複数の酵素を使用する必要があるが、酵素は酵素活性を示すpH範囲がそれぞれ異なるため、各酵素処理毎にローヤルゼリーの水懸濁液のpHをその都度調整しなければならず、操作が複雑になるだけでなく、pH調整時に添加するこれらの酸や塩基に起因する塩が含まれるという問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このような状況に鑑み、ローヤルゼリーの機能性を維持したままで透明なローヤルゼリーを製造する方法につき鋭意検討した結果、ローヤルゼリーの水懸濁液のpH近傍に至適pHを有する酸性プロテアーゼを用いれば、pH調整をしなくてもローヤルゼリーの蛋白質を酵素分解して可溶化できることを見出した。そして、この方法で得られる透明ローヤルゼリー溶液は従来の酵素法による透明ローヤルゼリー溶液に比べ、透明性に優れ、黄色度も少なく、加熱や室温放置による黄色度の増加や透明性の低下が少なく、すっきりした酸味があって、ローヤルゼリー特有の味が強すぎず、それでいてローヤルゼリー特有の味を残しており、本来のローヤルゼリーの有するpHに近く、飲料に添加しても影響が少なく、色、透明性、味の点からも飲料添加、特に酸性飲料への添加に適していることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ローヤルゼリーの水懸濁液に、至適pHが該水懸濁液のpHの近傍にある酸性プロテアーゼのみをローヤルゼリーに対して0.05〜0.2重量%添加し、50〜60℃の温度で10〜24時間保持することを特徴とする透明ローヤルゼリー溶液の製造方法にあり、前記製造方法で得られた透明ローヤルゼリー溶液を凍結乾燥または噴霧乾燥してなることを特徴とする可溶性ローヤルゼリー粉末にある。また、前記製造方法で得られる抗酸化作用を有するローヤルゼリー溶液にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、ローヤルゼリーは生のもの、冷凍したもの、凍結乾燥したもののいずれも用いることができる。
本発明の製造方法においては、ローヤルゼリーに水または温水を加えてローヤルゼリーの水懸濁液を調製する。
酵素処理に供するローヤルゼリーの懸濁液におけるローヤルゼリー濃度は、5〜20質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることがより好ましい。かかる濃度の水懸濁液のpHは一般に3〜4、特に3.8付近である。
本発明で用いられる酸性プロテアーゼとしては、通常の食品加工用に用いられる微生物や植物起源の酸性プロテアーゼであって、上記水懸濁液のpHの近傍に至適pHを持つ酸性プロテアーゼであることが必要である。このような酸性プロテアーゼとして、オリエンターゼ20A(商品名、阪急バイオインダストリー社製)、プロテアーゼM(商品名、天野エンザイム社製)等を例示できる。
酸性プロテアーゼはそのまま用いることができる。
酵素処理に用いる酸性プロテアーゼの量は、ローヤルゼリーに対して0.05〜0.2質量%用いるのが好ましい。
【0011】
本発明においては、酸性プロテアーゼを用いることにより、ローヤルゼリー水懸濁液のpHを何ら調整する必要なく、ローヤルゼリーを水に懸濁させたときの約3〜4のpHの状態で酵素処理を行うことができる。
本発明においては、pHをローヤルゼリー懸濁液の本来有するpHのままで酵素処理を行うため、pH調整に必要な酸や塩基を使用することなく、淡色で透明なローヤルゼリー溶液が得られる。
【0012】
本発明においては、酵素反応温度を50〜60℃、好ましくは50〜55℃とし、酵素反応時間を10〜24時間、好ましくは16〜24時間とする。
ローヤルゼリーの酵素反応による可溶化は、蛋白質のペプチド鎖切断による低分子化であり、反応を充分に行うと、アミノ酸にまで分解する。アミノ酸が多量に生成すると苦みなどアミノ酸特有の味が生ずるので、可溶化は蛋白質が水溶性になるが、アミノ酸が多量に発生しないようにする必要がある。
酵素反応は、酵素の安定性と酵素活性のかねあいから設定されるが、通常、40〜45℃で行われることが多い。しかし、この温度は他の細菌にとっても好ましい繁殖条件であり、往々にして雑菌が混入して繁殖する。
本発明においては、酵素反応温度を50〜60℃として雑菌の繁殖が生じにくい温度で行い、酵素反応時間を10〜24時間とする。このような条件で酵素反応を行うと、雑菌の繁殖もなく、酵素使用量をローヤルゼリーに対して0.05〜0.2質量%と、比較的少量に抑えることができ、蛋白質の分解を適切な範囲に抑えることができる。
【0013】
酵素反応は、16〜24時間行い、加熱により酵素を失活させて停止する。
加熱は、80〜85℃程度の温度で20〜30分程度加熱することが好ましく、85℃、30分の加熱がより好ましい。この条件で滅菌操作をかねることができる。
本発明において、酵素を失活させたローヤルゼリー懸濁液は、直ちに室温まで冷却した後、ろ過または遠心分離により不純物や不溶成分を除去して透明なローヤルゼリー溶液とする。
酵素反応を停止し、不純物や不溶成分を除去して得られたローヤルゼリー溶液に酵素活性が残存していると、保存時に分解が進行したり、飲料に添加したり、食品に混合したりして使用する場合、飲料や食品の味や品質に影響を与えるおそれがあるので、得られたローヤルゼリー溶液には酵素活性が残存していないことが好ましい。
ろ過にあたっては、セライト、活性炭等のろ過助剤を使用することもできるが、ろ過助剤を用いると、得られたローヤルゼリー溶液の10−ヒドロキシデセン酸含有量が低下する傾向にあるので、遠心分離か、ろ過助剤を使用しないろ過が好ましい。
【0014】
得られた透明なローヤルゼリー溶液は、そのまま飲料原料として用いてもよく、清涼飲料等への添加用のローヤルゼリー液として用いてもよい。
また、噴霧乾燥、凍結乾燥して生ローヤルゼリーと成分的にほとんど変わらない粉末とすることができる。噴霧乾燥にあたっては、デキストリンなどの賦形剤を加えてもよい。
この粉末は、得られたローヤルゼリー溶液を60℃以下で2〜3倍にまで減圧濃縮し、デキストリンなどの賦形剤を加えて噴霧乾燥することにより得られる。
【0015】
本発明の製造方法により得られた透明ローヤルゼリー溶液は、従来の酵素分解法で得られた透明ローヤルゼリー溶液に比べ同一濃度で比較すると黄色の度合いも薄い淡色で、透明性も優れる。また、味の点でも人工的な甘みがなく、すっきりした酸味を有しており、ローヤルゼリー特有の味が強すぎず、それでいてローヤルゼリー特有の味を残している。
また、加熱による安定性、冷蔵保存安定性ともに、従来法に比べ、本発明の方法により得られた液の黄色の増加度が最も小さく、透明性の変化も最も小さい。
【0016】
ローヤルゼリー溶液を添加した市販飲料の加熱滅菌による変化および安定性についても、本発明の製造方法で得られたローヤルゼリー溶液は、従来法による酵素分解法で得られた溶液に比べ、色調変化が少なく、透明度の低下度も小さい。
一般的には微生物の発生防止等の観点から酸性飲料が多いが、本発明の方法で得られたローヤルゼリー溶液は、酵素処理にあたってpH調整していないので、pH4付近と、本来のローヤルゼリーの有するpHに近く、飲料に添加しても影響が少なく、色、透明性、味の点からも飲料添加、特に酸性飲料への添加に適している。
【0017】
本発明の方法で得られたローヤルゼリー溶液から調製した粉末は蛋白質が分解されたため、アミノ態窒素が各段に多く、ミネラル類は生ローヤルゼリーと遜色なく、ビタミンB群をはじめとしたビタミン類も生ローヤルゼリーと同じように含有されており、10−ヒドロキシデセン酸もほぼ同等に含まれている。
また、ローヤルゼリーは抗酸化作用を示すことが知られているが、本発明の製造方法により得られるローヤルゼリー溶液、これを粉末化した可溶性ローヤルゼリー粉末も生ローヤルゼリーと同等の抗酸化作用を示す。
前記本発明の方法で得られたローヤルゼリー溶液から調製した粉末は、これを水や透明市販飲料に、例えば、0.5〜2質量%といった通常のローヤルゼリー飲料より高濃度になるように溶解しても、沈殿や白濁することがなく、透明度を高度に維持できるという特徴を有する。また、粉末で保存すると、溶液で保存した場合に比べて、褐変化がおさえられるなど、保存性に優れる。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下の実施例、比較例におけるローヤルゼリー溶液の特性評価方法は以下の通りである。
(吸光度) 分光光度計UV−150(商品名、島津サイエンス社製)を用いて溶液の400nmと600nmの吸光度を測定し、400nmにおける吸光度を黄色度の尺度とし、600nmにおける吸光度から透過率を求め、透明性の尺度とした。
(pH) pHメーターで測定。
(味) 10人の試験者により、ローヤルゼリー溶液及び前記ローヤルゼリー添加市販飲料の人工的甘味、ローヤルゼリー特有の味、すっきりした酸味につき官能検査を行った。
−:なし、 +:あり、 ++:強く感じる
【0019】
(酵素残存性試験)
ペプチド鎖の大きい蛋白質はトリクロロ酢酸により凝固するが、酵素分解でペプチド鎖が小さくなった蛋白質はトリクロロ酢酸に溶解する。
そこで、酵素失活処理後のローヤルゼリー溶液をカゼインを基質として酵素反応が可能な条件下に放置した後、これにトリクロロ酢酸を加えて反応を停止し、トリクロロ酢酸に可溶な画分に含まれる芳香族アミノ酸のもつ紫外部吸収を測定して、放置後の紫外部における吸光度が放置前に比べて有意に増加した場合は、放置により蛋白質が分解したこと、すなわち酵素活性が残存していることを示す。そこで、基質中に酵素失活処理後のローヤルゼリー溶液を加えて下記の方法で酵素残存性を調べた。
【0020】
試験方法:サンプル(ローヤルゼリー溶液)をそれぞれ0.1ml、0.3ml、0.5mlずつ基質(0.6%カゼイン)3.0mlに加え、サンプルが0.5mlに満たないものは不足分を精製水で補充し、30℃で24時間保持した。24時間後、これに0.44Mトリクロロ酢酸3.0mlを加えて30分室温で放置した後、遠心分離(3500rpm、10分)にかけ、分光光度計で上澄液の270nmまたは275nmの吸光度を測定した。
標準として、0.6%カゼイン3.0mlに各酵素(プロテアーゼ)を種々の濃度としたもの0.5mlを加えて上記試験と同様にして吸光度を測定した。
ブランクは、サンプル量の異なる各サンプルにあらかじめ0.44Mトリクロロ酢酸3.0mlを加え、30℃で24時間保持した後、遠心分離(3500rpm、10分)にかけ、上澄液の270nmまたは275nmにおける吸光度を測定してブランクとした。
酸性プロテアーゼ用基質:0.6%カゼイン(pH3.0)を基質として用いた。
中性プロテアーゼ用基質:0.6%カゼイン(pH7.0)を基質として用いた。
【0021】
(抗酸化作用試験)
リノレン酸などの不飽和脂肪酸を加熱すると酸化されて過酸化脂質が生成する。これに抗酸化物質を加えて加熱すると抗酸化作用により過酸化脂質の生成量が減少する。そこで、下記の試験方法で抗酸化作用を調べた。
試験方法:リノレン酸200μlにサンプル(生ローヤルゼリー換算5%のローヤルゼリー溶液)を50〜300μl添加し、70℃、1時間加熱して得られた過酸化脂質をイソプロピルアルコールで抽出し、チオバルビツール酸法により蛍光強度を測定して、生成した過酸化脂質量を定量した。サンプル無添加時の過酸化脂質生成量との差をサンプル無添加時の過酸化脂質生成量で除した価を阻害%とした。コントロールとして、ローヤルゼリー水懸濁液(ローヤルゼリー濃度5%)を用いて、同様にして抗酸化作用を調べた。
【0022】
(実施例1)
10gの生ローヤルゼリーを水に懸濁させて10%ローヤルゼリー懸濁液(pH:3.9)100mlを調製した。この懸濁液に酸性プロテアーゼとしてオリエンターゼ20A(商品名、阪急バイオインダストリー社製)0.01gを加え、55℃で16時間酵素処理を行った。16時間の酵素処理後、80℃で20分間維持して酵素失活処理を行った。得られた酵素反応処理液を水中に入れ、室温まで冷却して、淡黄色の透明ローヤルゼリー溶液を得た。
また、清澄な市販の清涼飲料(酸性飲料)に生ローヤルゼリー換算で2%になるようにローヤルゼリー溶液を添加した飲料を調製した。
【0023】
(比較例1)
10gの生ローヤルゼリーを水に懸濁させて10%ローヤルゼリー懸濁液100mlを調製し、20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを4に調製した。この溶液に酸性プロテアーゼとしてプロテアーゼM(天野エンザイム社製)を0.1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行った。酵素処理後、20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを5.5に調整し、80℃で10分加熱して酵素を失活させ、ろ過を行って異物や不溶性残査を除いて透明なローヤルゼリー溶液を得た。
また、このローヤルゼリー溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてローヤルゼリー溶液を添加した飲料を調製した。
【0024】
(比較例2)
10%ローヤルゼリー懸濁液100mlのpHを7に調整し、プロテアーゼMの代わりに中性プロテアーゼであるプロテアーゼA(天野エンザイム社製)を同量用いた以外は比較例1と同様にして透明なローヤルゼリー溶液およびローヤルゼリー添加飲料を得た。
【0025】
(比較例3)
酵素処理を50℃2時間とし、pHはそのまま(中性)で酵素失活処理を80℃20分とした以外は比較例2と同様にして透明なローヤルゼリー溶液およびローヤルゼリー添加飲料を得た。
【0026】
実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液の400nmと600nmの吸光度を測定した。また、ローヤルゼリー溶液のpHも測定した。それらの結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1で得られたローヤルゼリー溶液は黄色の度合いが一番低く、pHが最も酸性で、透明度も一番よい。
【0027】
【表1】
【0028】
また、加熱による安定性テストとして、実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液を沸騰水浴中に15分放置して、その前後でのローヤルゼリー溶液の400nmと600nmの吸光度を測定した。その結果を表2に示す。表2から明らかなように、いずれも加熱すると色が濃くなるが、実施例1で得られたローヤルゼリー溶液が加熱後の色の度合いが一番低く、加熱による色の変化も一番少ない。また、いずれも加熱すると透過率が多少低下するが、本発明の方法で得たローヤルゼリー溶液が最も加熱による変化も少なく、最も清澄であることがわかる。
【0029】
【表2】
【0030】
また、ローヤルゼリー溶液の冷蔵保存安定性テストとして、実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液(製造直後)を2週間4度付近で冷蔵保存し、その前後でのローヤルゼリー溶液の400nmと600nmにおける吸光度を測定し、冷蔵保存前後の液の曇りを目視観察した。その結果を表3、表4に示す。
いずれも冷蔵保存するとごくわずか溶液の黄色が増すが、実施例1で得られたローヤルゼリー溶液が最も黄色の増加が少なく、透明性も高い。比較例1は黄色の増加度が実施例1に次いで低いが、透明性が最も低い。また、目視でもわずかであるが曇りが見られる。比較例3、4は黄色が比較的濃く、冷蔵保存での黄色の増加が大きい。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液の酵素残存性試験を行った。
また、コントロールとして、酵素処理を行わないローヤルゼリー懸濁液を用いて同様の酵素残存性試験を行った。それらの結果を表5、表6に示す。
表5、表6におけるコントロールから明らかなように、ローヤルゼリーそのもの(コントロール)には酸性でも中性でも酵素活性はなかった。
表5に示すように酸性プロテアーゼを用いた実施例1、比較例1では酵素は残存していないが、表6の結果から明らかなように中性プロテアーゼを用いた比較例2、3ではローヤルゼリー溶液0.1mlの添加でも酵素残存の可能性が確認された。
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液の味の官能検査を行った。その評価結果を表7に示す。
表7から明らかなように、比較例1〜3のいずれも人工的な甘さを有しているのに対し、実施例1のローヤルゼリー溶液はすっきりした酸味があって、ローヤルゼリー特有の味が強すぎず、それでいてローヤルゼリー特有の味を残している。
一般に、飲料は微生物発生防止等の点から、酸性飲料が多いが、実施例1のローヤルゼリー溶液は、そのpHが4付近(表1参照)であることと相まって、酸性飲料に添加しても影響が少なく、色、透明性、味の点からも飲料への添加に適している。
【0037】
【表7】
【0038】
ローヤルゼリー中に特異的に含まれるといわれる10−ヒドロキシデセン酸(10−HDA)は、ローヤルゼリー含有の指標として知られていることから、実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液の10−HDA含有量を測定した。その結果(生ローヤルゼリー換算量)を、コントロールとして生ローヤルゼリー中の10−HDA含有量と共に、表8に示す。
表8から明らかなように10−HDA含有量はいずれの方法でも大きな差異は認められなかった。
【0039】
【表8】
【0040】
実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液につき、ミクロケルダール法による窒素量の測定から、蛋白質量を算出し、粗蛋白質量とした。また、前記各ローヤルゼリー溶液につき、色素との結合を利用したブラッドフォード法による蛋白質の定量分析を行った。その結果をコントロールとして生ローヤルゼリーの結果と共に表9に示す。なお、ブラッドフォード法では蛋白質の検出限界が分子量3000〜5000であるので、蛋白質の分子量がこれ以下になっているかどうかの目安となる。
表9から、いずれの方法でもほとんどの蛋白質がブラッドフォード法での蛋白質の検出限界以下の低分子に分解されており、蛋白質分解量という観点からは、実施例、比較例とも変わらないことがわかる。
【0041】
【表9】
【0042】
実施例1及び比較例1〜3で得られたローヤルゼリー溶液を添加した飲料を沸騰水浴中で10分間加熱滅菌後冷却し、室温に1週間放置し、色調及び透明性の変化を調べた。表10にその結果を、各飲料のpHと共に示す。
ローヤルゼリー添加飲料は、これらローヤルゼリー溶液の添加により若干黄色を呈し、ローヤルゼリー溶液単独の場合と同様、加熱により黄色は濃くなるが、実施例1のローヤルゼリー溶液を用いた飲料が最も黄色が薄く、加熱による黄色の増加も少なく、透明性も優れるものであった。
比較例1及び3のローヤルゼリー溶液を添加した飲料は加熱後、濁度が高く(透明性が低下し)、目視検査でもわずかに濁りが見られた。
【0043】
【表10】
【0044】
実施例1で得られたローヤルゼリー溶液を精製水で2倍に希釈して生ローヤルゼリー換算5%の水溶液を作成し、リノレン酸200μlにこの水溶液を50〜300μl添加して抗酸化作用試験を行った。また、比較のため、生ローヤルゼリーの5%水懸濁液を用いて同様の抗酸化作用試験を行った。それらの結果を表11に示す。表11から明らかなように、実施例1で得られたローヤルゼリー溶液は、生ローヤルゼリーの水懸濁液と同様に過酸化脂質の生成抑制効果があることがわかる。
【0045】
【表11】
【0046】
(実施例2)
実施例1で得られたローヤルゼリー溶液を60℃以下で、濃度が元のローヤルゼリー溶液の2〜3倍になるまで減圧濃縮した。得られた減圧濃縮液に、固形分濃度が20〜30質量%になるようにデキストリン(松谷化学工業社製)を加え、噴霧乾燥して、ローヤルゼリー粉末を得た。この粉末の成分を生ローヤルゼリーの成分分析結果と共に表12に示す。
表12において、各成分量は100gあたりの量を示す。
この粉末を純水に溶解して0.5%、1%および2%のローヤルゼリー溶液を得た。得られた溶液の黄色度と透明性を400nmと600nmの吸光度により測定した。
その結果を表13に示す。
なお、表13には、実施例1で得たローヤルゼリー溶液を添加した清涼飲料(生ローヤルゼリー換算2%)の吸光度を参考のため記載した。
【0047】
【表12】
【0048】
【表13】
【0049】
また、この粉末を室温で5ヶ月保存後に、上記と同様に純水に溶解して1%及び2%のローヤルゼリー溶液として、400nmと600nmの吸光度を測定した。それらの結果を粉末化直後のものの吸光度とともに表14に示す。
【0050】
【表14】
【0051】
表12から、本発明のローヤルゼリー粉末は生ローヤルゼリーに比較して、10−HDAの大きな減少もなく、ミネラル、ビタミン類の低下もないことがわかる。また、高分子蛋白質はほとんどなくなっているが、粗蛋白質量も小幅な減少にとどまっていることがわかる。表13の実施例1のデータとの比較から、粉末化処理によっても黄色度の増加、透明性の低下はほとんどないことがわかる。また、表14から、保存性に優れることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明の方法で得られたローヤルゼリー溶液は、生ローヤルゼリーと比較しても遜色ない成分を有し、黄色度も少なく、透明性に優れ、加熱や室温放置による黄色度の変化、透明性の低下も従来法による透明ローヤルゼリー溶液に比べてはるかに少ない。味もローヤルゼリー溶液はすっきりした酸味があって、ローヤルゼリー特有の味が強すぎず、それでいてローヤルゼリー特有の味を残しているという特徴を有する。
また、本発明の方法で得られたローヤルゼリー溶液は、酵素処理にあたってpH調整していないので、pH4付近と、本来のローヤルゼリーの有するpHに近く、飲料に添加しても影響が少なく、色、透明性、味の点からも飲料添加、特に酸性飲料への添加に適している。
本発明の製造方法により得られるローヤルゼリー溶液及びこれを粉末化した可溶性ローヤルゼリー粉末は、生ローヤルゼリーと同様の抗酸化作用を示す。
また、この透明ローヤルゼリー溶液を凍結乾燥または噴霧乾燥してなる粉末もこれを溶液にしたり、飲料に添加したときに、上記溶液と同様の優れた効果を有するものとなる。
Claims (4)
- ローヤルゼリーの水懸濁液に、至適pHが該水懸濁液のpHの近傍にある酸性プロテアーゼのみをローヤルゼリーに対して0.05〜0.2重量%添加し、50〜60℃の温度で10〜24時間保持することを特徴とする透明ローヤルゼリー溶液の製造方法。
- 請求項1に記載の方法で得られた透明ローヤルゼリー溶液を凍結乾燥または噴霧乾燥してなることを特徴とする可溶性ローヤルゼリー粉末。
- 請求項1に記載の方法で得られる抗酸化作用を有するローヤルゼリー溶液。
- 抗酸化作用を有する請求項2に記載の可溶性ローヤルゼリー粉末。
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