JP3809582B2 - 希釈冷凍機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、液体ヘリウム(3He,4He)を用いて10−2Kレベルの超低温を連続的に得るための希釈冷凍機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
極低温技術に携わる者には良く知られているように、3He液相と4He液相の混合液は、0.8K(800mK)以下の極低温において、相対的に3Heが少ない3He希薄相と、相対的に3Heを多く含む3He濃厚相とに分離する。ここで、3He希薄相と3He濃厚相のそれぞれにおける3Heの含有率は、温度によって決定されるが、0.1K以下の温度では、3Heを6.4%含み残部が4Heからなる3He希薄相と、100%の3Heからなる3He濃厚相とに分離された状態となる。またここで、3He液相よりも4He液相の方が密度が大きいため、上述のように3He−4He混合液が3He希薄相と3He濃厚相とに2相分離した状態では、密度の大きい3He希薄相が下側に、密度の小さい3He濃厚相が上側に位置することになる。したがって例えば0.1K程度以下の極低温の室内(従来の一般的な希釈冷凍機における混合室内)では、6.4%3He−残部4Heの3He希薄相が下部に、100%3Heからなる3He濃厚相が上部に位置するように2相分離した平衡状態となる。そしてこのような平衡状態にある混合室内において、なんらかの手段により3He希薄相から3He分子を抜き去って、3He希薄相における3He濃度を低下させれば、両相は平衡状態に戻ろうとするため、3He濃厚相中の3Heが3He希薄相中へ溶け込む(3Heが4Heに希釈される)ことになる。
【0003】
ここで、同一温度での各相中の3He分子のエントロピーを比較すれば、濃厚相中の3He分子のエントロピーは希薄相中の3He分子のエントロピーより小さいため、断熱状態であれば前述のように2相分離した混合室内において3Heが濃厚相中から希薄相中へ希釈されることにより吸熱が生じることになる。このような吸熱を利用した冷凍機が希釈冷凍機と称されるものであり、10−2Kレベルの超低温を得ることが可能となる。
【0004】
希釈冷凍機の原理的な構成については、非特許文献1、非特許文献2などにおいて説明されているが、その原理的な構成を図3に示す。
【0005】
図3において、ロータリーポンプ等からなる真空ポンプ1は3Heガスを圧送して強制循環させるためのものであり、この真空ポンプ1の出口側から後述する混合室9までの経路を往路11Aとしかつ混合室9から真空ポンプ1の入口側に至る経路を復路11Bとして、これらの往路11A、復路11Bにより、一部に4Heを含んで3Heを循環させるためのHe循環経路が形成されている。
【0006】
前記真空ポンプ1から往路11A側に送り出された300K程度の温度の3Heガスは、液体4Heを排気減圧して1.3K程度に保った1Kポット2に熱的に接触する凝縮器(コンデンサ)3において液化され、さらに分留器5内の熱交換器6に送られる。この分留器5は、後述するように3Heと4Heとの飽和蒸気圧の差を利用して、復路11B側において4He−3Heの混合液中から3Heを選択的に排出させるためのものであるが、往路11A側において凝縮器3から送られて来た3Heは、この分留器5に熱接触する熱交換器6において熱交換されて、0.7K程度まで冷却される。さらにその往路11A側の3Heは、熱交換器8の往路側流路8Aにおいて、その熱交換器8の復路側流路8Bと熱交換されて0.1K程度まで冷却され、混合室9に導入される。混合室9では、前述のような100%3Heからなる3He濃厚相Pと、3Heが4Heに溶け込んだ4He−6.4%3Heからなる3He希薄相Qとに2相分離しており、両相の密度差により下層が3He希薄相(4He−6.4%3He)Q、上層が3He濃厚相(100%3He相)Pとなる。そして3He濃厚相Pに導入された3Heが3He希薄相Qに溶け込む際に、既に述べたように熱吸収が生じ、10−2Kのオーダーの超低温に冷却される。すなわちこの混合室9が冷凍機としてのコールドヘッドとなり、この部分に近接して冷却対象物(試料)を保持しておけば、その試料を10−2Kのオーダーに冷却することができる。
【0007】
混合室9の3He希薄相における3He濃度は6.4%を保ち、一方復路11Bにおける分留器5内の4He−3He混合液中からは4Heと3Heとの飽和蒸気圧の差によって3Heのみがガス化して排出されて行くから、分留器5内の3He濃度は0.7Kで1%程度となり、そのため混合室9の3He希薄相Qと分留器5内の4He−3He混合液との間で3Heの濃度差が生じるから、両者間の濃度勾配によって混合室9内の3He希薄相Q中から3Heが復路11B側(分留器5側)へ引込まれ、それに伴なって混合室9内の3He希薄相Qで3He濃度の低下傾向が生じるため、その3He希薄相Qの3He濃度が6.4%を保つように(すなわちその温度における3He濃厚相Pと3He希薄相Qとの平衡状態を保つように)、100%3Heの3He濃厚相Pから3He希薄相Qへの3Heの溶け込みが連続的に生じることになる。そして混合室9から3Heが分留器5へ引込まれる間においてその3Heは熱交換器8を通過し、前述の往路11A側の3Heを冷却する。
【0008】
分留器5においては、既に述べたように飽和蒸気圧の差によって4He−3He混合液中から3Heのみが蒸発し、前述の真空ポンプ1によって引出される。真空ポンプ1に吸引された3Heは、再び凝縮器3へ送られて同様な過程を繰返す。
【0009】
以上のようにして、希釈冷凍機では、10−2Kオーダーの超低温を得ることができ、特に外部からの熱侵入が全くない理想状態において0.1Kの温度の100%3He液体が混合室9に導入された場合を想定すれば、その場合は計算上は0.036Kまで冷却することが可能となる。
【0010】
【非特許文献1】
“3He−4He希釈冷凍機の原理と設計上の問題点I”、「日本物理学会誌」、第37巻第5号(1982)、p409−418
“3He−4He希釈冷凍機の原理と設計上の問題点II”、「日本物理学会誌」、第37巻第7号(1982)、p595−600
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで希釈冷凍機においては、前述のように理想状態では0.036K程度の超低温が得られる筈であるが、従来の一般的な希釈冷凍機では、実際には0.06K程度の温度までしか得られていないのが実情である。これは、前述のような原理的構成で説明した理想状態での運転状況と、実際の運動状況とが若干異なることに由来する。
【0012】
すなわち図3において、外部からの熱侵入が全くない理想状態では、分留器5内の4He−3He混合液体の液面からは3Heガスのみが蒸発し、その3Heガスのみ(すなわち100%3Heのガス)が真空ポンプ1により引出されて、その100%3Heガスが往路11A側の凝縮器3において凝縮されて100%3He液相となり、その100%3He液相が、熱交換器6、熱交換器8を経て混合室9に送り込まれる筈である。
【0013】
しかしながら良く知られているように、4Heは2K程度以下の温度では超流動ヘリウム(HeII)の状態となっており、したがって0.7K程度の温度の分留器5内における4He液相は超流動性を有しているため、分留器5内の4He−3He混合液体中の4He液相は、実際にはその超流動性により液面から分留器5の内壁を伝わって薄膜状に上昇し、さらには真空ポンプ1に至る管路等の壁面に沿って薄膜状に上昇して、真空ポンプ1近くの2K程度の温度の部位(超流動性から常流動性に転移する温度の部位)まで至ってしまい、その部位付近で4He液相が気化して4Heガスとなり、その4Heガスが、本来導くべき3Heガス中に混入して真空ポンプ1に至ってしまう。その結果、4Heガスが混入した3Heガス、すなわち4He−3He混合ガスが真空ポンプ1により往路11A側へ送り出されて、凝縮器3により混合状態のまま液化され、さらに分留器5内の熱交換器6、熱交換器8を経て混合室9に導入されてしまう。
【0014】
このように4He−3He混合液体が混合室9内に導入された場合には、その混合液体は混合室9の上層すなわち100%3Heの3He濃厚相P中に導かれて、その3He濃厚相P中で3He相(3He濃厚相)と6.4%3He−4He相(3He希薄相)とに相分離し、その後に3He希薄相Q中へ溶け込むことになるが、混合室9に導入された混合液体が3He濃厚相P中で相分離する際には発熱が生じてしまう。もちろん3He濃厚相P中から3He希釈相Q中に3Heが溶け込む(希釈される)際には、既に述べた通り吸熱が生じて、冷却効果を得ることができるのであるが、上述の相分離の際の発熱により冷却効果が減じられて、理想状態で計算上考えられる温度までは達し得なかったのである。
【0015】
本発明者等の実験によれば、真空ポンプ1によって往路11A側へ送り出される3Heガスには、40%程度の4Heガスが混入するのが通常であり、このような40%4He−60%3Heの混合液体が0.1Kの温度で混合室9に導かれた場合、前述のような相分離時の発熱によって、0.06K程度までしか冷却させ得ないことが判明している。
【0016】
このような問題を解決するための一手法としては、分留器から真空ポンプに至る経路の壁面を物理的(構造的)に途切れさせて、分留器から超流動状態で薄膜状に上昇した4Heが2K程度の温度の部位まで至らないような構造としたり、また分留器から超流動状態で薄膜状に上昇した4Heをヒーター等により積極的に気化させるとともに、その気化された4Heガスが真空ポンプに至らないような構造とする等の方策が採られているが、このような方策を採るためには、分留器等の構造が極めて複雑とならざるを得ず、またヒータやヒータ用電源などを必要としたりして、高コスト化を招かざるを得なかったのが実情である。またこれらの方策を適用した場合でも、4Heガスの混入を確実に阻止することは困難であり、そのため理想状態で得られる筈の極低温には未だ達し得なかったのが実情である。
【0017】
そこで本発明者等は、特に複雑な構造やヒータ等を用いることなく、冷凍機の冷却ヘッドとなるべき混合室に、4Heが混入されていない100%3He液体もしくはそれに近い液体が導入されるようにし、これにより理想状態に近い超低温まで冷却し得るようにした希釈冷凍機を、既に特願2003−52292において提案している。
【0018】
上記の特願2003−52292の提案の希釈冷凍機では、基本的には混合室の直近の上流側において、混合室へ送り込まれるべきHe液体中から4Heを分離除去することとしている。そしてそのために、混合室の直近の上流側に混合室と同様な構成の分離室を介挿しておき、4He−3He混合液体中から4Heを抜き出して、これを混合室を通さずに復路側へ直接バイパスし、残る3Heのみを混合室へ送り込むようにしている。
【0019】
図4に、上記の特願2003−52292において提案している希釈冷凍機の原理的な構成の一例を示す。なお図4において、図3に示す従来の一般的な希釈冷凍機と同様な部分については同一の符号を付す。
【0020】
図4において、往路11Aにおける熱交換器8(往路側熱交換器流路8A)と混合室9との間には分離室13が介挿されている。この分離室13には、熱交換器8の往路側流路8Aにおいてその熱交換器8の復路側流路8Bと熱交換されて0.8Kより充分に低い温度(通常は0.1K程度)まで冷却された液体Heが導入される。この際の液体Heは、理想状態では100%3He液相となっている筈であるが、実際上は前述のように3Heに例えば40%程度の4Heが混入された4He−3He混合液体となっているのが通常である。
【0021】
ここで分離室13内は、0.8Kよりも充分に低温であって、通常は0.1K程度以下であるため、図3を参照して混合室9に関して説明したと同様に、100%3Heからなる3He濃厚相P’と、6.4%3He−残部4Heの3He希薄相Q’とに2相分離した状態となっており、かつ密度の小さい3He濃厚相P’が上層に、密度の大きい3He希薄相Q’が下層に位置する。そしてこのような分離室13内に4He−3He混合液を導入すれば、その4He−3He混合液は3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離して、それぞれ分離室13内に既に存在している各相P’、Q’に合体する。
【0022】
さらに分離室13の下部(下層の3He希薄相Q’に相当する部位、例えば底部)はバイパス路15によって復路11Bにおける混合室9と熱交換器8との間の中間部分に連結されており、このバイパス路15には、3He液相の流通に対して抵抗を与えかつ超流動状態の4He(すなわちHeII)の流通を実質的に阻止しない選択抵抗手段17が介挿されていて、これらのバイパス路15、選択抵抗手段17を介して、分離室13内の3He希薄相Q’中から4Heのみが抜き出される。
【0023】
ここで、分離室13内の温度は0.8K以下、通常は0.1K程度であるが、4He液相は2K以下で超流動状態(HeII相)となるから、分離室13から出た4He(液相)も超流動状態となっている。このような超流動4He液相は、その粘性が3He液相と比較して格段に小さいため、極く小さな隙間でも容易に入り込んで流通することができる。したがって極く小さな隙間の如く、流体の流れに対して大きなインピーダンスを与えるような選択抵抗手段17をバイパス路15に設けておけば、超流動4He液相は、その粘性が著しく小さいため、選択抵抗手段17内の極く小さい隙間を通過して流通することができる一方、超流動性を持たない常流動性の3He液相は、粘性が相対的に格段に大きいため、その粘性が隙間を通過する際の抵抗となり、その結果3He液相が流通することが実質的に阻止される。
【0024】
選択抵抗手段17の具体例としては、例えばキャピラリーチューブと称される極細管内に極細線(鋼線等)を挿入してなるもの(この場合は極細管の内面と極細線の外面との間の隙間を超流動4He液体が流通する)や、粒径数μmのエメリー粉、アルミナ粉、銅粉等の粉末を密に充填した粉末充填層、あるいは網状の複数の部材を重ねたもの、その他連続気泡体や、連続孔を有する焼結体等を用いることができる。
【0025】
一方分離室13の上部(上層の3He濃厚相P’に相当する部分)は、3He導出路19によって前述の混合室9の上部に連絡されている。この3He導出路19は、前述の往路11Aの一部(最下流部分)を構成している。
【0026】
上述のように、分離室13の下部は、3He液相に対し抵抗を与えかつ超流動4Heを実施的に阻止しない選択抵抗手段17を介挿したバイパス路15を経て混合室9の下流側の復路11Bに導かれており、この復路11Bでは、真空ポンプ1により分留器5と分離室13との間に圧力差が生じているから、選択抵抗手段17を通過した超流動4He液相がバイパス路15から復路11B中に引出され、復路11B中の3He液相の流れに4He液相が合流することになる。このようにして、分離室13の下層、すなわち6.4%3He−4Heの3He希薄相Q’からは4Heが選択抵抗手段17を介挿したバイパス路15によって直接的に(すなわち混合室9を通らずに)復路11Bの側へ導かれる。その一方、分離室13の上部は3He導出路19(往路11A)により混合室9の上部に接続されているから、分離室13内の上層、すなわち100%3Heの3He濃厚相P’から混合室9の上部に100%3Heが導かれることになる。言い換えれば、分離室13に導入された4He−3He混合液(例えば40%4He−60%3He混合液体)のうち4Heは、分離室13内において3He希薄相Q’に分離され、さらにその4Heは、3He希薄相Q’から選択抵抗手段17を介挿したバイパス路15を経て直接復路11Bに引出されることになり、一方分離室13に導入された4He−3He混合液のうちの3Heは、分離室13の3He濃厚相P’中に分離され、さらにその3He濃厚相P’から混合室9に導かれることになる。したがって混合室9には、4Heを含まない実質的に100%3Heからなる3He液相が導入されることになる。
【0027】
このようにして混合室9には、実質的に100%3Heの液相が導入され、この3He液相は既に図3を参照して説明したと同様に、混合室9内において3He濃厚相P中から3He希薄相Qに希釈される際に、吸熱を生じさせて、冷凍機としての冷却作用をもたらすことになる。ここで、混合室9に導入される液体が4He−3He混合液体である場合には、既に説明したように、混合室9内の3He濃厚相Pにおいて混合液体が相分離する際に発熱が生じ、この発熱により冷却能が減じられてしまうことになるが、図4の希釈冷凍機の場合には、前述のように混合室9に導入される液体が実質的に4Heを含まない状態、すなわち実質的に3He液相のみの理想状態もしくはそれに近い状態となっているため、相分離に伴なう発熱が実質的に生じず、そのため理想状態に近い超低温(例えば0.036Kに近い超低温)を得ることが可能となるのである。
【0028】
混合室9の3He希薄相Qからは、既に図3について説明したように、3He液相が復路11Bの側に導出され、さらにその復路11Bの中途においては、前述のように分離室13から選択抵抗手段17を介挿したバイパス路15を経て4He液相が合流し、熱交換器8を通って分留器5に導入される。この分留器5においては、4He−3He混合液体中から4Heと3Heとの飽和蒸気圧の差によって3Heがガス化して蒸発し、真空ポンプ1に導かれる。またその分留器5においては、4He−3He混合液の液面から超流動性を有する4He液相が、その超流動性により壁面伝いに薄膜として上昇し、さらに真空ポンプ1に至る管路(復路11B)等の壁面伝いに超流動性を失う位置(約2Kの部位)まで4He液相の薄膜が上昇し、その付近で4He液相が気化して4Heガスとなる。したがって既に述べたように、真空ポンプ1の入口側には3Heガスに4Heガスが混入したガスが導かれ、その混合ガスが真空ポンプ1により往路11A側へ圧送されることになる。そしてその混合ガスが凝縮器3において液化され、熱交換器8を経てさらに冷却されて分離室13に導かれることは既に述べた通りである。
【0029】
以上のように、図4に原理的な構成を示した特願2003−52292の発明の希釈冷凍機においては、特に複雑な構造やヒータ等を用いることなく、理想状態に近い超低温(0.1Kの液体Heが混合室に導入された場合には0.036Kに近い超低温)を得ることが可能となるのである。
【0030】
しかしながら、本発明者等が図4に示す希釈冷凍機を実用化するための実験、研究を重ねたところ、未だ次のような問題があることが判明した。
【0031】
すなわち、図4に示される希釈冷凍機において、分離室13を設けない場合(すなわち図3に示される希釈冷凍機の場合)と同等の流量で4Heを含まない100%3Heのみからなる液体を分離室13から混合室9へ導入するためには、分離室13に流入する4He−3He混合液体中の4Heと同量の4He液相を、分離室13からバイパス路15および選択手段17を経て復路11Bの側に抜き出さなければならない。そのためには、バイパス路15における選択抵抗手段17のインピーダンスが適切な値となっていなければならない。
【0032】
ここで、選択抵抗手段17のインピーダンスが緩すぎる場合は、分離室13に流入する4He−3Heの混合液体の4He量を越える多量のHe液体が分離室13からバイパス路15を通って直接復路11B側へ流れてしまう。この場合、分離器13からバイパス路15へ流出するHe液体には4Heのみならず3Heも含まれることになるから、分離室13から混合室9に導かれる3Heの量が少なくなり、そのため混合室9における希釈冷却作用が小さくなって、充分な超低温が得られなくなってしまう。
【0033】
一方、選択抵抗手段17のインピーダンスがきつすぎる場合には、分離室13に流入する4He−3He混合液体中の4Heの量よりも分離室13からバイパス路15の側へ流出する4He液体の量が少なくなり、その結果分離室13から混合室9に導かれる液体中にも4Heが含まれるようになってしまう。すなわち混合室9には3Heに4Heが混入した混合液体が流入することになり、そのため既に述べた図3の場合と同様に混合室9において充分な冷却効果が得られなくなってしまい、充分な超低温が得られなくなるのである。
【0034】
このように、バイパス路15における選択抵抗手段17は、適切なインピーダンスを有していることが必要であって、インピーダンスが緩すぎても、またきつすぎても充分な超低温を得ることができなくなってしまう。
【0035】
しかるに、上述のような適正なインピーダンス値を計算等により予測することは極めて困難である。そこで現状では、装置の試作段階あるいは実機の実用運転前の段階において、種々のインピーダンスを選択抵抗手段17に設定して、試験運転を何回も行ない、その結果から最適なインピーダンスを決定するという試行錯誤を重ねざるを得ないのが実情である。しかしながらこのような現状では、適切なインピーダンスを定めるまでの試験運転に多大な時間と手間を要さざるを得ないという問題がある。またこのような試行錯誤によってインピーダンスを設定したとしても、そのインピーダンスが真に最適か否かは不明であり、したがって真に理想的な運転状況となっているとは限らないのが実情である。
【0036】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、前述の特願2003−52292の提案による希釈冷凍機の問題を解決し、インピーダンス設定のための試行錯誤を不要とし、これにより試作段階や実機の実用運転前の段階での試験運転に要する手間と時間を大幅に削減し、しかも前記提案の希釈冷凍機と遜色のない超低温が得られる希釈冷凍機を提供することを目的とするものである。
【0037】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するため、本願発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、前述の特願2003−52292の提案の希釈冷凍機におけるバイパス路(選択抵抗手段を含む)を取り去って、分離室に流入する4He−3He混合液体と同量の液体を分離室から混合室へ導いた場合にも、混合室内における相分離による発熱を防止して、希釈冷却能を充分に発揮し得ることを見出した。
【0038】
すなわち、4He−3He混合液体を、分離室において一旦3He希薄相と4He濃厚相とに分離し、その分離された3He希薄相と4He濃厚相を、分離状態を保ったまま混合室に導入すれば、混合室内での相分離の発生を防止して、相分離時の発熱による冷却能の低下を防止し得ることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
【0039】
具体的には、請求項1の発明は、Heガスを循環圧送するための真空ポンプの出口側から、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容しかつ冷却ヘッドとなるべき混合室の入口までの経路を往路とし、前記混合室の出口から真空ポンプの入口側に至る経路を復路とし、これらの往路、復路によってHeを循環させるためのHe循環経路を形成しておき、前記往路中に凝縮器を配設しておき、真空ポンプにより送り出されたHeガスをその凝縮器において凝縮させ、得られたHe液相を、復路側との熱交換により0.8K以下に冷却して、その0.8K以下に冷却されたHe液相を、前記混合室の3He濃厚相中に導き、混合室内での3He濃厚相中から3He希薄相への3Heの希釈により熱吸収を生ぜしめ、一方復路中には分留器を配設しておき、その分留器内における3Heの蒸気圧と4Heの蒸気圧の差を利用して、3Heを気化させて真空ポンプの入口側へ導くと同時に、その気化による分留器内のHe液相中におけるHe濃度の低下を利用して、混合室内の3He希薄相から3He液相を復路側へ導き出すようにした希釈冷凍機において、前記往路における混合室の直近の上流側に、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容する分離室を介挿しておき、往路中の凝縮器により凝縮されかつ0.8K以下に冷却されたHe液相を分離室内に導き、そのHe液相を3He濃厚相と3He希薄相とに分離させて、それぞれ分離室内の3He濃厚相、3He希薄相に合体させるようにし、さらにその分離室内の3He希薄相中および3He濃厚相を、分離状態を保ったまま混合室内に導入し、これによって混合室内に導入されたHe液相が新たに相分離を生じさせないようにしたことを特徴とするものである。
【0040】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明の希釈冷凍機の原理的な構成の一例を示す。なお図1において、図4に示した特願2003−52292の提案の希釈冷凍機の要素と同一の要素については図4と同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0041】
図1において、往路11Aにおける熱交換器8(往路側熱交換器8A)と混合室9との間に分離室13が介挿されている点は、図4の希釈冷凍機と同様である。但し、図4の希釈冷凍機の場合のようなバイパス路(15)および選択抵抗手段(17)は設けられていない。そしてこの分離室13は、その液体排出口としては、上下方向の中間部分(上面および底面を除いた部分)に形成された排出口13Aのみを有している。この排出口13Aは、導出路19によって混合室9の上部に連絡されている。なおこの導出路19は、前述の往路11Aの一部(最下流部分)を構成している。
【0042】
ここで分離室13内は、既に図4あるいは図3について述べたと同様に、0.8Kよりも充分に低温であって、通常は0.1K程度であり、この状態では混合室13内の液体Heは、100%3Heからなる3He濃厚相P’と、6.4%3He−残部4Heの3He希薄相Q’とに2相分離している。なおこの2相分離状態では、密度の小さい3He濃厚相P’が上層に、密度の大きい3He希薄相Q’が下層となる。一方、このような0.8K以下、通常は0.1K程度の温度の分離室13内に4He−3He混合液が熱交換器8を経て導入されれば、その4He−3He混合液が、100%3Heの3He濃厚相と6.4%3He−残部4Heの3He希薄相とに2相分離する。そして導入された混合液体から相分離された3He濃厚相は、それ以前から分離室13内に存在している3He濃厚相(上層)P’に溶け込んで一体化し、また導入された混合液体から相分離された3He希薄相は、同じくそれ以前から分離室13内に存在している3He希薄相(下層)Q’に溶け込んで一体化する。
【0043】
そして分離室13内の相分離された3He濃厚相および3He希薄相は、その分離室13の上下方向中間位置に形成された排出口13Aから、導出路19を経て混合室9に導入される。ここで導出路19も、0.8Kより充分に低い温度、通常は0.1K程度の低温となっているから、分離室13から排出された3He濃厚相および3He希薄相は、導出路19内においても相分離された状態を保ち、その2相分離液体が混合室9の上部へ導入されることになる。
【0044】
混合室9に導入された2相分離液体中の3He濃厚相は、それ以前から混合室9内に存在している3He濃厚相(上層)Pに溶け込んでそのまま一体化し、一方、導入された2相分離液体中の3He希薄相はそれ以前から混合室9内に存在している3He希薄相(下層)Qにそのまま溶け込んで一体化する。
【0045】
一方混合室9の下部からは、既に図3について説明したと同様に、3He希薄相Q中から3He液相が復路11Bの側に導出され、この3He液相は、熱交換器8の復路側流路8Bを通って分留器5に至る。すなわち、分留器5内では、3Heと4Heの飽和蒸気圧の差により4He−3He混合液体中から3Heが選択的に蒸発するから、これによる分留器5内の4He−3He混合液体中の3He濃度の低下(通常は0.7K程度で3He濃度1%程度となる)によって、混合室9内の3He希薄相Q中の3He濃度(6.4%)と分留器5内の4He−3He混合液体中の3He濃度(約1%)との間に3Heの濃度差が生じ、その濃度差が駆動力となって混合室9内の3He希薄相Pから3Heのみが選択的に復路11Bの側に引出されるのである。
【0046】
このようにして混合室9内の3He希薄相Qから3Heが引出されて、その3He希薄相Q中の3He濃度が6.4%よりも低下する傾向が生じれば、それに伴なって、3He希薄相Qの3He濃度を6.4%に保つように3He濃厚相Pから3Heが3He希薄相Q中に溶け込み(希釈し)、この時既に述べたように吸熱が生じて希釈冷凍作用をもたらす。
【0047】
ここで、混合室9内に導入されるHe液体は、前述のように既に分離室13内において100%3Heの3He濃厚相と6.4%3He−残部4Heの3He希薄相とに分離されているから、混合室9内では改めて相分離が生じることはなく、そのため相分離に伴なう発熱は混合室9内では生じないことになり、したがって相分離に伴なう発熱が、希釈冷凍作用による冷却能を低下させることがなく、そのため理想状態に近い超低温(例えば0.036Kに近い超低温)を得ることが可能となるのである。
【0048】
なお混合室9の3He希薄相Qからは、既に説明したように3He液相が復路11Bの側に導出され、熱交換器8を通って分留器5に導入される。また真空ポンプ1により分留器5と混合室9との間には圧力差が生じているから、混合室9内の3He希薄相Q中の4Heも混合室9から復路11Bを通って分留器5に導かれる。そして分留器5においては、4He−3He混合液体中から4Heと3Heとの飽和蒸気圧の差によって3Heがガス化して蒸発し、真空ポンプ1に導かれる。
【0049】
ここで分留器5においては、4He−3He混合液の液面から、超流動性を有する4He液相がその超流動性により壁面伝いに薄膜として上昇し、さらに真空ポンプ1に至る管路(復路11B)等の壁面伝いに超流動性を失う位置(約2Kの部位)まで4He液相の薄膜が上昇し、その付近で4He液相が気化して4Heガスとなる。したがって既に[発明が解決しようとする課題]の項で述べたように、真空ポンプ1の入口側には3Heガスに4Heガスが混入したガスが導かれ、その混合ガスが真空ポンプ1により往路11A側へ圧送されることになる。そしてその混合ガスが凝縮器3において液化され、熱交換器8を経てさらに冷却されて分離室13に導かれることは既に述べた通りである。
【0050】
以上のように、図1に原理的な構成を示したこの発明の方法によれば、理想状態に近い超低温(0.1Kの液体Heが混合室に導入された場合には0.036Kに近い超低温)を得ることができるのである。
【0051】
なお、図4に示される提案の希釈冷凍機の場合には混合室9に3Heのみが流入するが、図1に示すこの発明の希釈冷凍機の場合は、既に述べたように分離室13で分離された3He希薄相(4Heと3Heの両者を含むもの)も混合室9に流入する。このとき、3He希薄相は混合室9内に既に存在している3He希薄相Pと合体するだけであって、改めて相分離は生じないから、相分離に起因する発熱は生じないが、混合室に流入した3He希薄相自体は当初0.1K程度の温度から温度が0.036K近くまで下がるために熱を奪われる必要がある。ここで4Heはエントロピーが極めて小さく、そのため混合室9内に流入した3He希薄相中の4Heは温度にほとんど影響を与えないが、3Heは4Heと比較して格段にエントロピーが大きいため、混合室9内に流入した3He希薄相中の3Heは、上述のように0.1K程度から0.036K近くまで温度低下するためにある程度は熱量を消費することになる。すなわち、混合室9内に3He希薄相が流入すれば、その希薄相中の3Heが混合室9における余分な熱負荷となり、そのため図4に示したような100%3Heのみが混合室に流入する場合と比較すれば、冷却能は若干下がることになる。しかしながら、温度の担体である3He希薄相中の3Heは、全3He量のわずか数%に過ぎない。すなわち、3He希薄相中の3He量が6.4%であってまた分離室13に導入される4He−3He混合液体中の3He量が40%であると仮定すれば、計算上は希薄相中の3He量は全3He量の約4.6%に過ぎない。このように、全3He量に占める希薄相中の3He量はわずか数%程度に過ぎないから、図4の場合との温度低下量の差は、わずか0.001〜0.002K程度となる。したがって図4の希釈冷凍機で0.036Kが得られるとすれば、図1の場合、それよりわずかに0.001〜0.002K程度高い温度、すなわち0.037〜0.038K程度までは冷却することが可能となるのである。
【0052】
また分離室13からは、前述のように分離室13内で2相分離された3He希薄相および3He濃厚相を排出口13Aから同時に流出させるが、排出口13の位置は、分離室13の上面と底面との間の中間位置であれば良く、特にその位置を厳密に規制する必要は特にない。すなわち、3He希薄相と3He濃厚相とを同時に流出させるためには、本来排出口13Aが分離室13内の3He希薄相P’と3He濃厚相Q’との境界面に位置している必要があるが、運転開始時点では上記境界面の位置が排出口13Aの位置から上方もしくは下方にずれていたとしても、運転を開始すれば境界面はすみやかに排出口13Aの位置で安定して平衡状態を保つようになる。例えば初期状態(運転開始時)では排出口13Aが両相の境界面より下方に位置していた場合、最初は3He希薄相のみが排出口13Aから流出することになるが、それに伴なって分離室13に流入する混合液体中の4Heの量も多くなり、その結果境界面が下降して境界面が排出口13Aの位置に達すれば、3He希薄相と3He濃厚相とが同時に排出される状態となり、その状態で系全体がバランスされて平衡状態となり、排出口13Aの位置で境界面が維持されることになる。また逆に初期状態で排出口13Aが境界面より上方に位置していた場合、最初は3He濃厚相のみが排出口13Aから流出することになるが、それに伴なって分離室13に流入する混合液体中の3Heの割合も高くなり、そのため境界面が上昇し、境界面が排出口13Aの位置に達すれば、3He希薄相と3He濃厚相とが同時に排出される状態となり、その状態で系全体がバランスされて平衡状態となって、排出口13Aの位置で境界面が維持されるようになる。
【0053】
【実施例】
この発明の希釈冷凍機の具体例を、図2に基いて説明する。
【0054】
図2において、真空断熱層20を有する有底円筒状の外側容器22内には、冷媒としての液体ヘリウム(通常は液体4He)24が収容されており、この外側容器22の上端を密閉する蓋体26には減圧口28が設けられており、この減圧口28は配管30および開閉弁32を介して減圧ポンプ34に導かれている。
【0055】
一方、外側容器22内の液体ヘリウム冷媒24中には、上方から前記蓋体26を貫通して有底円筒状の内側容器36が挿入・浸漬されている。この内側容器36の下部の周壁部には真空断熱層38が形成されている。そして真空断熱層38の上端には排気管40が接続されて、開閉弁41を介して外部の排気ポンプ43に接続されている。一方内側容器36の上端近くには、Heガス排出口42が形成され、このHeガス排出口42はHe循環用の真空ポンプ1の入口側に接続されている。
【0056】
一方、前記内側容器36内の下部には、3He液相と4He液相との混合液体ヘリウム46が収容されており、この液体ヘリウム46中には、上方から支柱兼真空排気管48によって吊下された状態で、円筒状のプランジャ50が浸漬されている。なおこのプランジャ50は、後に改めて説明するように、周囲(その外周面と内側容器36の内周面との間)に液体ヘリウム46が流通可能な空隙47が存在するように配設されている。一方前記支柱兼真空排気管48の中間位置(プランジャ50よりも上方でかつ液体ヘリウム46の液面46Aよりも上方の位置)には、その支柱兼真空排気管48が上下に貫通するように銅等の良熱伝導材料からなる熱伝導ブロック52が固定されている。この熱伝導ブロック52は、図示しない銅等の良熱伝導材料製のバネなどにより内側容器36の内面に熱的に接触している。
【0057】
またこの熱伝導ブロック52からは、下面を開放した傘状もしくは円筒状のHeガス収集部材56が吊下されている。このHeガス収集部材56は、その下端部が液体ヘリウム46の液面46Aより下方に浸漬されて、液面46A上に空間56Aが形成されている。そして前記熱伝導ブロック52を上下に貫通しかつHeガス収集部材56の内側空間56A内に続くガス通路58によって、熱伝導ブロック52の上側の空間と液体ヘリウム46の液面46A上のHeガス収集部材56の内側空間56Aとが連通されている。ここで、プランジャ50の上面からHeガス収集部材56までの間が前述の分留器5に相当する。
【0058】
前記プランジャ50には、その上下方向の中間位置の内部に中空な空室50Aが形成されており、また下端には下方に開放された空室50Bが形成されている。ここで、プランジャ50の中間位置の空室50Aは、前述の分離室13に相当し、また下端の下方に開放された空室50Bは、前述の混合室9に相当する。なおプランジャ50における空室50A(分離室13)より上方の部分、および空室50B(混合室9)との間の部分は、真空断熱構造とされている。
【0059】
一方前記内側容器36内には、その上端の蓋体60を貫通して上方からHeガス供給管62が挿入されている。このHeガス供給管62は、内側容器36の外部において前述のHe循環用の真空ポンプ1の出口側に、Heガス入口バルブ64を介して接続されている。またそのHeガス供給管62は、内側容器36内を下方へ導かれて、前述の熱伝導ブロック52に一体に組込まれた銅粉焼結体などからなる凝縮器3の上面入口側に接続されている。
【0060】
ここで熱伝導ブロック52は、前述のように内側容器36に熱的に接触され、かつその内側容器36の外側には冷媒としての液体ヘリウム24が存在しているから、この液体ヘリウムが凝縮器3を冷却するための1Kポット2(図1、図3参照)として機能することになる。
【0061】
さらに凝縮器3の下方の出口側は配管66を介して例えばスパイラル管状の分留器熱交換器6に接続されている。この分留器熱交換器6は、プランジャ50の上面側において(すなわち前記分留器5内において)液体ヘリウム46に浸漬されている。また分留器熱交換器6の下方出口側は、プランジャ50の上部外周面と内側容器36の内周面との間の空隙47に配設された例えばスパイラル管状の熱交換器往路側流路8Aに接続され、されにこの熱交換器往路側流路8Aの下端は、前述の分離室13を構成するプランジャ50内の空室50AにおいてHe液相を吐出する吐出口70に導かれている。またこの分離室13の側面の上下方向中間位置には、その分離室13内で分離された3He希薄相および3He濃厚相を同時に排出するための排出口13Aが吐出口70から離れた位置で開口しており、この排出口13Aはプランジャ50の外周面と内側容器36の内周面との間の空隙に介在する熱交換器流路74を備えた導出路19を介してプランジャ50の下端の空室50B(すなわち混合室9)の上部に導かれている。
【0062】
以上のような図2に示される希釈冷凍機において、外側容器22と内側容器36との間の空間には前述のように液体ヘリウム(通常の4He)24が注入され、かつ減圧ポンプ34によって減圧口28からその空間が排気減圧されて、1K近くの低温に保持される。したがってこの液体ヘリウム24を注入した空間の部分が図3における1Kポット2に相当し、熱伝導ブロック52を1.3K程度まで冷却するのに寄与する。一方内側容器36内には、3He液相と4He液相とからなる液体ヘリウム46が、その液面46AがHeガス収集部材の上下方向中間位置(したがって分留器5の中間位置)に位置するように収容されている。ここで、分離室13(プランジャ50の中間位置の空室50A)および混合室9(プランジャ50の下端の空室50B)も液体ヘリウム46で満たされるが、それぞれ100%3Heの3He濃厚相(上層)P’,Pと4He−6.4%3Heからなる3He希薄相(下層)Q’,Qに分離されている。
【0063】
このような状態で3Heに4Heが混入した混合Heガスが真空ポンプ1によってバルブ64およびHeガス供給管62を経て凝縮器3に導かれ、熱伝導ブロック52によって1.3K程度に冷却されて液化する。液化された混合Heは、分留器熱交換器6および熱交換器往路側流路8Aを経てさらに冷却され、吐出口70から分離室13(空室50A)内に吐出される。なお熱交換器往路側流路8Aに対応する熱交換器8の復路側流路8B(図1参照)は、空隙47によって構成されている。
【0064】
前記分離室13においては、既に図1に関して述べたように、吐出された混合液体ヘリウムが100%Heの3He濃厚相と6.4%3He−残部4Heの3He希薄相とに分離され、それぞれが上層の3He濃厚相P’、下層の3He希薄相Q’中に合体される。そしてこの分離室13の排出口13Aから、3He濃厚相と3He希薄相とがその分離状態を保ったまま導出路19および熱交換器74を経て混合室9に導かれて、その混合室9内に吐出される。
【0065】
そして上述のようにして混合室9内に吐出された3He濃厚相および3He希薄相は、それぞれ混合室9内に既に存在している濃厚相(上層)Pおよび希薄相(下層)Qに合体する。そしてまた濃厚相の3Heの一部が下側の希薄相Qに溶け込む。このとき、既に述べたように熱吸収が生じて、0.037K〜0.038K程度の超低温が得られる。ここで、混合室9内に導かれる液体ヘリウムは、既に述べたように予め分離室13において3He濃厚相と3He希薄相とに分離されているから、混合室13内で4Heが分離することによる発熱が実質的に生じず、その結果前述のように0.037〜0.038K程度の超低温を得ることが可能となるのである。
【0066】
一方、混合室9はプランジャ50の外周面側の空隙47により分留器5と連通しているから、混合室9内の3He希薄相Q中の3Heは分留器5に至るが、この分留器5は1K以下の低温となっているため、3Heと4Heとの大幅な飽和蒸気圧の差によって主に3Heが蒸発し、この気相の3Heは熱伝導ブロック52のガス通路58を通って内側容器36の上方の空間からHeガス排出口42を経て真空ポンプ1により排気される。これに伴ない、分留器5内の液体ヘリウム中の3He濃度は1%程度まで低下するから、分留器5内の液体中における3He濃度(約1%)と混合室9の3He希薄相Q中の3He濃度(約6.4%)との間に3Heの濃度差が生じ、その濃度勾配によって混合室9の3He希薄相Qから3He分子が空隙47を通って分留器5に引込まれ、またそれにより混合室9の3He希薄相Q中の3He濃度が低くなるに伴なって、混合室9内において3He濃厚相Pから3Heが連続的に3He希薄相Q中へ溶け込み(希釈される)、これにより熱吸収が連続的に持続されることになる。
【0067】
また真空ポンプ1によって分留器5と混合室9との間には圧力差が生じているから、混合室9内の3He希薄相Qからは4He分子も空隙47を通って分留器5に引込まれる。
【0068】
そして分留器5内における液体ヘリウム46の液面46Aやその周囲の部分の液面からは、Heガス収集部材56の内面や外面伝い、あるいは内側容器36の内面伝いに、超流動4Heがその超流動性により薄膜として上昇し、その薄膜として上昇した超流動4Heは、内側容器36の上方の空間やさらには真空ポンプ1に至る管路における2K程度の温度の部位まで上昇して常流動性に戻るとともにその付近の蒸気圧に応じて気化し、その結果、真空ポンプ1の入口側には3Heガスに4Heガスが混入した混合Heガスが引込まれることになる。
【0069】
その後の循環過程は既に述べた通りであり、混合Heガスが再び凝縮器3で凝縮されて液化し、さらに冷却されて分離室13に至り、分離室13で100%3Heの3He濃厚相と6.4%3He−残部4Heの3He希薄相とに分離し、それらの両相が分離状態のまま混合室9に導入される。
【0070】
以上のように、分留器で選択的に気化された3Heに対して4Heが混入して、その混合Heが真空ポンプにより圧送されて循環されてしまうこと自体は許容しながらも、往路の混合Heを、混合室9の直前の分離室において3He濃厚相と3He希薄相とに分離させ、その分離状態を保ったまま混合室に3He濃厚相と3He希薄相を導入することによって、混合室において理想状態に近い0.037〜0.038K程度の超低温を得ることが可能となるのである。またここで、上述のように分留器で選択的に蒸発した3Heガスに対して4Heが混入してしまうこと自体は許容しているため、分留器から真空ポンプに至る経路において4He混入防止のための複雑な構造を適用する必要はない。さらに、図4に示す希釈冷凍機の場合のようなバイパス路、選択抵抗手段がなく、そのためこれらのインピーダンスを適正値に設定する必要もないことになる。
【0071】
【発明の効果】
前述の説明で明らかなように、この発明の希釈冷凍機によれば、冷却ヘッドとしての機能を果たすべき混合室に導入される液体ヘリウムが、予め3He濃厚相と3He希薄相とに相分離されているため、混合室内で混合液体が相分離することによる発熱が生じることがなく、そのため希釈冷凍機能を充分に発揮して、理想状態に近い超低温を得ることが可能となる。また、分留器から真空ポンプに至る経路において3Heガスに4Heガスが混入すること自体は許容しているため、そのような4Heガスの混入を阻止するための複雑な構造やヒータ等を用いる必要がなく、そのため低コストでかつ耐久性も高い。さらにこの発明の希釈冷凍機においては、先行して出願した特願2003−52292の提案の希釈冷凍機の場合のような分離室から復路へのバイパス路(選択抵抗手段を介挿したもの)が省かれているため、選択抵抗手段のインピーダンスを適正値に設定するために何回も試験運転を重ねる必要がなく、そのため試験運転に要する手間や時間を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の希釈冷凍機の原理的な構成の一例を示す略解図である。
【図2】この発明の希釈冷凍機の一実施例を示す略解的な縦断正面図である。
【図3】従来の一般的な希釈冷凍機の原理的な構成を示す略解図である。
【図4】先行して出願した特願2003−52292の提案による希釈冷凍機の原理的な構成を示す略解図である。
【符号の説明】
1 真空ポンプ
5 分留器
8 熱交換器
9 混合室
11A 往路
11B 復路
13 分離室
P、P’ 3He濃厚相
Q、Q’ 3He希薄相

Claims (1)

  1. Heガスを循環圧送するための真空ポンプの出口側から、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容しかつ冷却ヘッドとなるべき混合室の入口までの経路を往路とし、前記混合室の出口から真空ポンプの入口側に至る経路を復路とし、これらの往路、復路によってHeを循環させるためのHe循環経路を形成しておき、
    前記往路中に凝縮器を配設しておき、真空ポンプにより送り出されたHeガスをその凝縮器において凝縮させ、得られたHe液相を、復路側との熱交換により0.8K以下に冷却して、その0.8K以下に冷却されたHe液相を、前記混合室の3He濃厚相中に導き、混合室内での3He濃厚相中から3He希薄相への3Heの希釈により熱吸収を生ぜしめ、
    一方復路中には分留器を配設しておき、その分留器内における3Heの蒸気圧と4Heの蒸気圧の差を利用して、3Heを気化させて真空ポンプの入口側へ導くと同時に、その気化による分留器内のHe液相中におけるHe濃度の低下を利用して、混合室内の3He希薄相から3He液相を復路側へ導き出すようにした希釈冷凍機において、
    前記往路における混合室の直近の上流側に、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容する分離室を介挿しておき、往路中の凝縮器により凝縮されかつ0.8K以下に冷却されたHe液相を分離室内に導き、そのHe液相を3He濃厚相と3He希薄相とに分離させて、それぞれ分離室内の3He濃厚相、3He希薄相に合体させるようにし、さらにその分離室内の3He希薄相中および3He濃厚相を、分離状態を保ったまま混合室内に導入し、これによって混合室内に導入されたHe液相が新たに相分離を生じさせないようにしたことを特徴とする、希釈冷凍機。
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