JP3809459B1 - 熱処理炉 - Google Patents

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Abstract

【課題】ソルトバスやメタルバス等を使用したマルクエンチを実施することなく、油焼き入れ処理における熱処理対象物Wの焼き割れを回避し、焼き曲がりを低減する。
【解決手段】炉で加熱した熱処理対象物Wを投入すべき焼入油槽22から上方に距離を隔てて配置された噴射部23と、油槽22の油面と噴射部23との間隙にガスを充填するガス導入系5とを設け、油槽22の油面に対して油を噴射し油槽22中にバブルを発生させながら熱処理対象物Wを油焼き入れするものとした。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱処理対象物を焼き入れ処理等するための熱処理炉に関する。
例えば金型等の熱処理対象物を熱処理する装置として、真空熱処理炉(下記特許文献を参照)が公知である。この種の真空熱処理炉では、炉内を真空引きした状態で熱処理対象物を所定時間加熱した後、低温の不活性ガスを導入してガス冷却したり、その熱処理対象物を油槽に投入して浴冷却したりすることが通例となっている。
特許3516906号公報
加熱した熱処理対象物を焼き入れする際、熱処理対象物の全体を均一に冷却できないと焼き割れや焼き曲がりが生じて熱処理対象物を損うおそれがある。とりわけ、大形の熱処理対象物を油焼き入れする場合には、油に浸漬した熱処理対象物の表面部が急冷される一方で内部の温度降下がそれに追随せず、内外の焼き入れの差(オーステナイト組織からマルテンサイト組織への変態の時間差)、つまりは寸法変化(マルテンサイト変態に伴う膨張)の時間差が大きくなって焼き割れ等するリスクが高まる。
熱処理対象物の焼き割れ、焼き曲がりを回避するための手法としては、マルクエンチを挙げることができる。マルクエンチ処理では、加熱した熱処理対象物をマルテンサイト生成温度域ないしそれよりやや高い温度に保ったソルトバス、メタルバス(鉛バス)または発火点の充分に高い高粘度油バスに投入して、全体が一様にその温度に低下するまで維持する。しかしながら、マルクエンチに使用するソルトバス、メタルバス等は人体への有害性が著しく、作業者の健康被害並びに周辺環境への悪影響を如何に阻止するかという重大問題に直面する。加えて、マルクエンチ処理した熱処理対象物に付着するソルト、メタル等の洗浄除去に特別な洗浄剤を必要とし、洗浄に伴う二次公害も発生する。
以上に鑑みてなされた本願発明は、ソルトバスやメタルバス等を使用したマルクエンチを実施することなく、熱処理対象物の焼き割れを回避し、焼き曲がりを低減することを所期の目的としている。
上述の課題を解決するべく、本発明では、熱処理対象物を加熱し、しかる後に浴槽に蓄えた冷却剤に浸漬して浴冷却する熱処理炉であって、前記浴槽に蓄えている冷却剤の表面から距離を隔てて配置され、浴槽内に向けて冷却剤を噴射する噴射部と、前記冷却剤の表面と前記噴射部との間隙にガスを充填するガス導入系とを備え、前記浴槽に蓄えている冷却剤に対して前記噴射部より冷却剤を噴射し浴槽中にバブルを発生させながら熱処理対象物を浴冷却する熱処理炉を構成した。
つまり、浴槽中にバブルを混入させることを通じて、熱処理対象物に与える浴冷却効果を抑制するようにしたのである。このようなものであれば、熱処理対象物の表面部のみが早く冷えすぎてしまうことを予防できる。従って、熱処理対象物の内外の焼きの入り具合の差を小さくでき、焼き割れを回避し、焼き曲がりを低減することが可能となる。その上、浴冷却に使用するべき冷却剤は通常の焼き入れ油等でよく、遥かに有害性が高く洗浄も煩雑なソルトバス、メタルバス等を使用せずに済む。
浴槽を全体的にバブリングするには、前記噴射部より冷却剤を噴射するための噴射口を平面的に散開した複数箇所に設けておく。なお、一般に、熱処理対象物の冷却負荷(または、熱容量)は中央部が比較的大きく、周辺部が比較的小さくなる。よって、前記噴射口を周辺側よりも中央側に密に設け、熱処理対象物の中央部により多くの冷却剤の流れを当てて冷却する。
前記噴射部は、熱処理対象物を浴槽に投入しまたは浴槽から取り出すときの移送の妨げとなり得るので、熱処理対象物の移送経路に干渉しない位置に退避させられるような可動のものとする。
さらに、前記浴槽の底部に配置され、浴槽内で冷却剤を上向きに吹出させる吹出部を備えるものとすれば、冷却剤を適切に攪拌しつつ、上下両方から熱処理対象物に冷却剤の流れを当てることができ、熱処理対象物全体を均一に冷却するために有効である。吹出部から冷却剤を吹出させる工程では、浴槽は必ずしもバブリングされない。
前記吹出部より冷却剤を吹出させるための吹出口もまた、平面的に散開した複数箇所に設けておく。前記吹出口は、周辺側よりも中央側に密に設けることが好ましい。
前記噴射部より冷却剤を噴射する際に冷却剤を吸込む第一の吸込口を前記浴槽の下方部位に設け、かつ、前記吹出部より冷却剤を吹出させる際に冷却剤を吸込む第二の吸込口を前記浴槽の上方部位に設けていれば、噴射部より冷却剤を噴射する工程では浴槽内に上から下に向かう冷却剤の流れを生成でき、吹出部より冷却剤を吹出させる工程では浴槽内に下から上に向かう冷却剤の流れを生成できる。そして、前者の工程と後者の工程とを交互に切り換えながら熱処理対象物を浴冷却することにより、焼き割れを生じさせずに熱処理対象物を好適に冷却でき、所望の冶金的効果が得られる。即ち、両工程をそれぞれ実施する時間の割合を変更して、熱処理対象物に与える浴冷却効果の度合いを制御可能である。前者の工程を実施する時間を長く(短く)するほど、熱処理対象物に与える浴冷却効果が小さく(大きく)なる。
本発明によれば、ソルトバスやメタルバス等を使用したマルクエンチを実施せずとも、熱処理対象物の焼き割れを回避し、焼き曲がりを低減することが可能となる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。但し、説明の便宜上、熱処理対象物Wを搬出入するための搬出入口212を設けている側を前方と定義している。
本実施形態の熱処理炉は、熱処理対象物Wを真空中ないし大気圧以下の減圧雰囲気中で加熱して、しかる後にガス冷却空間20に移送してガス冷却し、または浴槽たる冷却油槽(油冷却槽)22に移送して油冷却する熱処理炉である。並びに、熱処理対象物Wの種類や熱処理目的によっては、ガス冷後に油冷することもできる。この熱処理炉は、図1に示すように、熱処理対象物Wを加熱する加熱室1と、加熱室1で加熱した熱処理対象物Wを冷却する冷却室2とを有する二室型のもので、加熱室1側に断熱本体12及びヒータ14、真空排気系4等を備え、冷却室2側にガス導入系5、攪拌機3、油槽22等を備えている。
具体的には、加熱室1の外殻となる炉胴11内に略箱体状をなす断熱本体12を配し、その内周にヒータ14を設置して、熱処理対象物Wを加熱する加熱空間15を構築している。断熱本体12の冷却室2側には、開閉動作可能な断熱蓋13を設けてある。断熱本体12及び断熱蓋13は、例えばグラファイトフェルト等を素材として作製する。真空排気系4は、例えば拡散ポンプ、メカニカルブースタポンプ、油回転真空ポンプ等を直列に連接してなり、バルブを介して断接切換可能に炉胴11に接続している。
炉胴11は、冷却室2の外殻となるハウジング21に連通している。炉胴11とハウジング21との境界は、断熱蓋13と一体的に動作する仕切扉211によって隔てられる。ハウジング21は、原則として0.2MPa以上の内圧に耐え得るものとする(第一種圧力容器または高圧容器として認定されるものであればさらによい)。ハウジング21は上下方向に拡張しており、上部領域にガスを導入するガス導入系5、導入されたガスを攪拌し循環させる攪拌機3、ガスを導くダクト201、202、ガスを冷やして昇温を防ぐ熱交換器等を設けて、ガス冷却空間20を構築している。ガス導入系5は、高純度の不活性ガス(例えばN2等)をガスボンベまたはガスタンクから送り込むものであり、バルブを介して断接切換可能にハウジング21に接続している。攪拌機3は、ガスを吸込み吐出するターボファン31と、ターボファン31を回転駆動する原動機(モータまたはエンジン)32とを要素とし、ハウジング21の上端に設置してある。原動機32はハウジング21外にあり、その駆動軸をハウジング21内に貫入してファン31に接続している。原動機32の駆動軸がハウジング21を貫通する部位には、回転真空シールを施す。また、ガス冷却空間20より下方、加熱室1内の加熱空間15と略同じ高さ位置に、熱処理対象物Wを搬出入する搬出入口212を設けている。この搬出入口212は、開閉する扉213によって密閉される。
加えて、ハウジング21の下部領域に、冷却剤たる冷却油(例えば第四類第三石油類に属する焼き入れ油)を蓄えるべき油槽22を配している。油槽22を、図2ないし図4に示す。油槽22は、加熱後熱処理対象物Wを直ちに油冷する場合のみならず、熱処理対象物Wをガス冷後に油冷する必要がある場合や、ガス冷した熱処理対象物Wを搬出可能となる温度まで冷ます時間を短縮したい場合にも使用できる。油槽22の四周は冷却水ジャケット(油温を所要の設定温度に維持する。ハウジング21壁内に内蔵されることがある)で囲繞しており、その底部にはヒータ221を設置してある。図中符号222で示すものは、冷却油を油槽22に注入しまたは油槽22から抜き取るための流通口である。
複数基の熱処理炉を建造して運用するのであれば、それら熱処理炉で冷却油を共用して全体で貯留する冷却油の総量を抑制することが好ましい。複数基の熱処理炉で冷却油を共用するためには、各熱処理炉における油槽22同士を連絡管を以て連結し、双方の油槽22間で冷却油を受け渡しできるようにする。このときの連絡管は、上記の流通口222に接続する。真空排気系4及び/またはガス導入系5を作動し、各々の熱処理炉の冷却室2の内圧に差を生じさせれば、連絡管を介して一の油槽22から他の油槽22に速やかに冷却油を流送することができる。
本熱処理炉による焼き入れ処理のプロセスの概要を述べると、熱処理対象物Wを搬出入口212から加熱室1の加熱空間15に搬入した後、真空排気系4を稼働して炉内を減圧し、断熱本体12の断熱蓋13及び仕切扉211を閉止して、ヒータ14で熱処理対象物Wを加熱する。加熱が完了したならば、断熱蓋13及び仕切扉211を開放し、熱処理対象物Wを取り出して冷却室2において冷却するが、その際にガス冷または油冷を選択できる。
熱処理対象物Wをガス冷却する場合、加熱が完了した時点で原動機32を起動してファン31を回転させる。炉内が真空または減圧状態にあることから、ファン31は極短時間に所要の回転数に達する。熱処理対象物Wを加熱室1から取り出した後、断熱蓋13及び仕切扉211を閉止し、リフト214を駆動して熱処理対象物Wをガス冷却空間20まで持ち上げると同時に、ガス導入系5を介して冷却室2に低温かつ所定圧の冷却ガスを導入充填し、これを攪拌、循環させて熱処理対象物Wを冷却する。冷却ガスの圧力は、原則として0.2MPa未満とする(但し、冷却室2が高圧容器として認定されているならば、0.2MPa以上の高圧とすることを妨げない)。熱処理対象物Wを油浴冷却する場合には、ヒータ221を起動して当初油温を約60℃程度に温めておき、しかる後リフト214により熱処理対象物Wを下降させて油槽22に投入、冷却油に浸漬する。冷却が完了した暁には、冷却室2の内圧を大気圧に調節し、リフト214を駆動して熱処理対象物Wを搬出入口212付近まで移送する。
しかして、本実施形態では、油槽22に蓄えている冷却油中にバブルを発生させるバブリング手段を備えており、バブルを発生させることを通じて冷却油が熱処理対象物Wに与える浴冷却効果を抑制できるようにしている。
詳述すると、油槽22内に向けて冷却油を噴射して油槽22に蓄えた冷却油の表面(油面S)を叩く噴射部23を、油槽22の上方に配設している。噴射部23は、ポンプ271から圧送される冷却油を供給管232を介して内部に流入させ油槽22内に向けて噴出させるものである。図示例では、左右一対の噴射部23を、油槽22に覆い被さるように設けている。これら噴射部23は、油冷却すべき熱処理対象物Wを移送する際にその妨げとなり得る。故に、噴射部23を可動に構成している。本実施形態では、両側の噴射部23をそれぞれ幅方向に水平移動可能に支持させており、熱処理対象物Wの移送時には両噴射部23を互いに離反するように外側方へ変位させて移送経路を開通し(図3中一点鎖線で示す)、移送後には両噴射部23を互いに相寄るように内側方に変位させて元位置に戻す。噴射部23の変位は、アクチュエータ233によって惹起する。
冷却油の噴射口となるノズル231は、噴射部23の下面側、平面的に散開した複数箇所に設けてある。図5に示すように、両噴射部23におけるノズル231は、平面視(下面視)周辺側よりも中央側に密になっている。ノズル231は、各噴射部23の内側縁に沿って列をなすものを除き、略鉛直下向きに突出する。他方、各噴射部23の内側縁に沿って列をなすノズル231は、油槽22の幅方向の中心軸に交差するように傾いている。これらノズル231の配置により、油槽22に蓄えている冷却油に対して噴射される冷却油の量は中央部が最も多く、周辺(前後左右)に向かうにつれて徐々に少なくなるが、その変化は緩やかな勾配となるように、換言すれば階段状とならないようにしている。また、熱処理対象物Wの形状や質量等、即ち冷却負荷に応じて、ノズル231の一部を閉塞したり、ノズル231の配置やノズル径を置換したりすることを妨げない。
油槽22をバブリングするためには、油面Sから噴射部23(の噴射口231)までの距離を約50mm〜100mm程度に設定する(但し、油面Sと噴射部23との間隙が微少、あるいは油面Sに噴射部23が漬かっているとしてもバブリングは可能)。油面Sの高さは、流通口222を介して冷却油を流出入させることで容易に調整可能である。並びに、ガス導入系5を作動し、冷却室2内に大気圧よりも高圧の不活性ガスを導入する。通常は、0.2MPa未満(冷却室2が高圧容器として認定されているならば、0.2MPa以上の高圧とすることを妨げない)の高純度不活性ガスを導入する。すると、油面Sと噴射部23との間隙が不活性ガスで充たされる。この状態で噴射部23より冷却油を噴射すると、噴射された冷却油が油槽22に蓄えている冷却油の油面Sを叩き、油槽22中にガスを巻き込んでマイクロオイルバブル(ガスバブル)を発生させる。冷却油の噴射圧力は、約0.1MPa(1kg/cm2)〜0.15MPa(1.5kg/cm2)程度とする。総じて言えば、噴射部23及びガス導入系5を要素としてバブリング手段を構成している。
油槽22中に発生するバブルの量は、油槽22に蓄えている冷却油の油温、油面Sと噴射部23との間隙の大きさ、冷却室2内に充填する不活性ガスの圧力、噴射部23より噴射する冷却油の噴射圧力(または、噴射量)等に応じて変化する。本熱処理炉では、上記の油温、間隙の大きさ、不活性ガスの圧力及び冷却油の噴射圧力を各々操作可能であり、それらのうち一部または全部を操作すれば油槽22中に発生するバブルの量を制御できる。油槽22中のバブル量を制御することは、熱処理対象物Wに与える浴冷却効果の度合いを制御することにつながる。
噴射部23より冷却油を噴射する工程では、油槽22内の冷却油を吸込み、ポンプ271を経て噴射部23に還流する。そのための吸込口は、油槽22の下方部位に配する。冷却油を循環させるための油圧回路の概要を、図6に示す。図示例では、油槽22の底部に固設した中空の枡体24を上方より閉塞する上面板241に複数個の貫通孔242を穿つとともに、枡体24内に冷却油を吸込む吸込管25を突入させている。ポンプ271を駆動すると、噴射部23より冷却油が油槽22内に向けて噴射され、同時に油槽22内の冷却油が(貫通孔242から枡体24内に流入し)吸込管25に吸込まれる。この吸込管の終端251が、本熱処理炉における第一の吸込口に該当する。結果的に、噴射部23より冷却油を噴射する工程では、上から下へ向かう油の流れが油槽22内に作り出される。噴射部23のもたらす効用は、一つは油槽22中にバブルを混入して浴冷却効果を抑制することであるが、もう一つは冷却油を攪拌して油温を均一化することにある。
ところで、上から下への一方向的な油の流れだけでは、熱処理対象物Wの全体を均一に冷却するために充分であるとは言い難い。一方向的な油の流れで熱処理対象物Wを冷却する状況下では、熱処理対象物Wの温度降下に局地差が生じ得る。熱処理対象物Wの近傍を流れる冷却油の温度は熱処理対象物Wの熱量を奪って漸次上昇することから、最初に冷却油が接触する熱処理対象物Wの上部側と昇温した冷却油が接触する下部側とでは浴冷却効果に差が生じ、熱処理対象物Wの冷却が非均一になる可能性がある。従って、上から下への流れだけでなく、下から上への流れをも作り出すことで熱処理対象物Wに与える浴冷却効果を均一化し、熱処理対象物Wの温度降下に局地差が生じる問題を実効的に解決することが望ましい。
以上の理由により、油槽22の底部に、冷却油を上方に吹出させる吹出部を配設する。本実施形態では、ポンプ281から圧送される冷却油を供給管26を介して既述の枡体24内に流入させ、上面板241に穿った貫通孔242より吹出させるものとしている。このように、上面板241の貫通孔242は、冷却油を吹出させるための吹出口としても機能する。図7に示すように、貫通孔242は、平面的に散開した複数箇所に穿設してあって、平面視周辺側よりも中央側に密になっている。これら貫通孔242の配置により、吹出部より吹出す冷却油の量は中央部が最も多く、周辺(前後左右)に向かうにつれて徐々に少なくなるが、その変化は緩やかな勾配となる。また、熱処理対象物Wの形状や質量等に応じて、貫通孔242の一部を閉塞したり、貫通孔242の配置や孔径を置換したりすることを妨げない。
吹出部より冷却油を吹出させる工程でも、油槽22内の冷却油を吸込み、ポンプ281を経て吹出部に還流する。そのための吸込口は、油槽22の上方部位に配する。図示例では、油槽22内の両側に上下方向に延伸する略角筒状の油道29を固設し、その上端部に油道29内外を連通する開口291を設けるとともに、油道29の下端部にポンプ281に至る吸込管292を接続している。ポンプ281を駆動すると、油槽22内にて吹出部より冷却油が上方に吹出し、同時に油槽22内の冷却油が開口291を介して油道29ひいては吸込管292に吸込まれる。この油道29の開口291が、本熱処理炉における第二の吸込口に該当する。結果的に、吹出部より冷却油を吹出させる工程では、下から上へ向かう油の流れが油槽22内に作り出されるとともに冷却油が攪拌される。
熱処理対象物Wの油浴冷却に際しては、冷却油を噴射部23より噴射しつつ第一の吸込口より吸込む工程と、冷却油を吹出部より吹出させつつ第二の吸込口に吸込む工程とを交互に切り換えながら熱処理対象物Wを浴冷却する。前者の工程では油槽22中にバブルが発生するが、後者の工程では油槽22中に必ずしもバブルが発生しない。両工程を実施する時間の長さ、タイミング、反復回数等は特に限定されないが、浴冷却効果を抑制して焼き割れや焼き曲がりを予防するという趣旨に鑑みて噴射工程の期間を比較的長くする。なお、両工程をそれぞれ実施する時間の割合を変更することによっても、熱処理対象物Wに与える浴冷却効果の度合いを制御できる。即ち、前者の工程を実施する時間を長く(短く)するほど、熱処理対象物Wに与える浴冷却効果が小さく(大きく)なる。第一の工程と第二の工程との切り換えは、例えばプログラマブルコントローラ等を用いて、バルブ272、273、274、275とバルブ282、283、284、285とを交互に開閉しつつ、ポンプ271またはポンプ281を運転して行う。
加えて、熱処理対象物Wの油浴冷却時に、リフト214を駆動して熱処理対象物Wを油槽22内で振動させてもよい。例えば、一分間に数回の周期でリフト214を約100mm〜150mmの振幅範囲で上下動させる。大形のまたは厚手の熱処理対象物Wを浴冷却する場合には、この振動によって冷却油との表面熱伝達率を高め冷却時間の短縮を図ることができる。小形の熱処理対象物Wを多量に混載して一括に処理する場合にも、内部までの冷却を促進することができる。
因みに、本熱処理炉は、油槽22に冷却油を蓄えていない状態(冷却油を流通口222を介して外部に排出しまたは他の熱処理炉の油槽22に流送した状態)でも運用可能である。即ち、冷却油を抜き取った油槽22内に熱処理対象物Wを配置し、噴射部23及び/または吹出部より熱処理対象物Wに向けて冷却油を噴射ないし噴霧して熱処理対象物Wを油冷することが可能である。その際、噴射部23のノズル231及び/または吹出部の貫通口242に適宜キャップ等を装着して、冷却油の噴出位置、噴出方向や噴出態様(噴流、噴霧等)を変更することもできる。さらに、油槽22に蓄えている冷却油の油面Sの高さを下げて熱処理対象物Wの一部を油浴中から露出させ、その露出部位に向けて冷却油を噴射ないし噴霧することも考えられる。
以降、本実施形態の熱処理炉を使用して熱処理対象物Wを熱処理した例を述べる。対象の熱処理対象物Wは、鋼種が熱間工具鋼(SKD−61)、外寸が700mm×500mm(平均厚さ200mm)、重量が約600kgの大形の金型とし、この熱処理対象物Wに対して無酸化焼き入れ処理を実行した。熱処理パターンは、図8に示しているように、総計10時間をかけて熱処理対象物Wを加熱した後、10分間のガス冷却、60分間の油浴冷却を経て放冷するものとした。使用ガスは高純度N2ガス、冷却過程における冷却室2内のガス圧力は0.2MPa以下、使用冷却油は第四類第三石油類の光輝熱処理油である。熱処理の結果、焼き割れは発生しなかった。また、焼き入れ・焼き戻し後の硬さは、Rc42.5〜44.5となった。
本実施形態によれば、油槽22に蓄えている冷却油の油面Sから距離を隔てて配置され油槽22内に向けて冷却油を噴射する噴射部23と、前記油面Sと前記噴射部23との間隙にガスを充填するガス導入系5とを備え、前記油槽22に蓄えている冷却油に対して前記噴射部23より冷却油を噴射し油槽22中にバブルを発生させながら熱処理対象物Wを浴冷却する熱処理炉を構成したため、冷却油が熱処理対象物Wに与える浴冷却効果を抑制して熱処理対象物Wの表面部のみが早く冷えすぎてしまうことを予防できる。従って、熱処理対象物Wの内外の焼きの入り具合の差を小さくでき、焼き割れを回避し、焼き曲がりを低減することが可能となる。その上、浴冷却に使用するべき冷却油は通常の焼き入れ油等でよく、ソルトバス、メタルバス等を使用せずに済む。
前記噴射部23より冷却油を噴射するための噴射口231を平面的に散開した複数箇所に設けているため、油槽22を全体的にバブリングできる。また、前記噴射口231を周辺側よりも中央側に密に設けており、熱処理対象物Wの中央部により多くの冷却油の流れを当てて冷却できる。
前記噴射部23を熱処理対象物Wの移送経路に干渉しない位置に退避させられるように可動のものとしており、熱処理対象物Wを油槽22に投入しまたは油槽22から取り出すときの移送の妨げとならない。
さらに、前記油槽22の底部に配置され、油槽22内で冷却油を上向きに吹出させる吹出部を備えているため、冷却油を適切に攪拌しつつ、上下両方から熱処理対象物Wに冷却油の流れを当てることができ、熱処理対象物W全体を均一に冷却するために有効である。
前記吹出部より冷却油を吹出させるための吹出口242を平面的に散開した複数箇所に設け、また、前記吹出口242を周辺側よりも中央側に密に設けており、熱処理対象物Wの中央部により多くの冷却油の流れを当てて冷却できる。
前記噴射部23より冷却油を噴射する際に冷却油を吸込む第一の吸込口251を前記油槽22の下方部位に設け、かつ、前記吹出部より冷却油を吹出させる際に冷却油を吸込む第二の吸込口291を前記油槽22の上方部位に設けているため、噴射部23より冷却油を噴射する工程では油槽22内に上から下に向かう冷却油の流れを生成でき、吹出部より冷却油を吹出させる工程では油槽22内に下から上に向かう冷却油の流れを生成できる。そして、前者の工程と後者の工程とを交互に切り換えながら熱処理対象物Wを浴冷却することにより、焼き割れを生じさせずに熱処理対象物Wを好適に冷却でき、所望の冶金的効果が得られる。即ち、両工程をそれぞれ実施する時間の割合を変更して、熱処理対象物Wに与える浴冷却効果の度合いを制御可能である。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。特に、浴槽中にバブルを発生させるバブリング手段の態様は、上記実施形態の如きものには限られない。例えば、冷却剤を蓄えている浴槽中に直接に不活性ガスを混入するための管路を設け、または、吹出部より吹出させる冷却剤に不活性ガスを混入するための管路を設けて、バブリング手段を構成することができる。
また、ガス冷却空間を省いた、油冷処理専用炉とすることも許容される。
さらに、熱処理対象物の浴冷却に使用する冷却剤は、油には限られない。
その他各部の具体的構成は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明の一実施形態の熱処理炉の概要を示す側断面図。 浴槽及び噴射部、吹出部を示す要部斜視図。 浴槽及び噴射部、吹出部を示す要部正断面図。 浴槽及び噴射部、吹出部を示す要部側断面図。 噴射部に設けられる噴射口を示す要部下面図。 冷却油を循環させる油圧回路の概要を示す図。 吹出部に設けられる吹出口を示す要部下面図。 同実施形態の熱処理炉を使用して熱処理対象物を焼き入れした一例を示すグラフ。
符号の説明
22…浴槽(油槽)
23…噴射部
231…噴射口(ノズル)
242…吹出口(貫通孔)
251…第一の吸込口
291…第二の吸込口
S…油面

Claims (9)

  1. 熱処理対象物を加熱し、しかる後に浴槽に蓄えた冷却剤に浸漬して浴冷却する熱処理炉であって、
    前記浴槽に蓄えている冷却剤の表面から距離を隔てて配置され、浴槽内に向けて冷却剤を噴射する噴射部と、
    前記冷却剤の表面と前記噴射部との間隙にガスを充填するガス導入系とを備え、
    前記浴槽に蓄えている冷却剤に対して前記噴射部より冷却剤を噴射し浴槽中にバブルを発生させながら熱処理対象物を浴冷却することを特徴とする熱処理炉。
  2. 前記噴射部より冷却剤を噴射するための噴射口を平面的に散開した複数箇所に設けている請求項1記載の熱処理炉。
  3. 前記噴射口を、周辺側よりも中央側に密に設けている請求項2記載の熱処理炉。
  4. 前記噴射部を、熱処理対象物の移送経路に干渉しない位置に退避させられるように可動に構成した請求項1、2または3記載の熱処理炉。
  5. 前記浴槽の底部に配置され、浴槽内で冷却剤を上向きに吹出させる吹出部をさらに備える請求項1、2、3または4記載の熱処理炉。
  6. 前記吹出部より冷却剤を吹出させるための吹出口を平面的に散開した複数箇所に設けている請求項5記載の熱処理炉。
  7. 前記吹出口を、周辺側よりも中央側に密に設けている請求項6記載の熱処理炉。
  8. 前記噴射部より冷却剤を噴射する際に冷却剤を吸込む第一の吸込口を前記浴槽の下方部位に設け、
    かつ、前記吹出部より冷却剤を吹出させる際に冷却剤を吸込む第二の吸込口を前記浴槽の上方部位に設けている請求項5、6または7記載の熱処理炉。
  9. 冷却剤を前記噴射部より噴射する工程と、冷却剤を前記吹出部より吹出させる工程とを交互に切り換えながら熱処理対象物を浴冷却する請求項5、6、7または8記載の熱処理炉。
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