JP7265117B2 - 冷却方法及び冷却装置 - Google Patents

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Description

本発明は、冷却方法及び冷却装置に関する。
高温材料を冷却する際、高温材料は、高温にある状態から膜沸騰領域-遷移沸騰領域-核沸騰領域を経て冷却されていく。ここで、約200℃以上の温度に対応する膜沸騰領域では、冷却性能が特に悪くなるため、冷却を促進させるための対策が重要となってくる。
かかる対策の一つとして、冷却工程で用いられる冷媒に対して超音波を付加することで、材料表面に形成した蒸気膜を破壊(微細化)して表面から剥離させて、冷却を促進する技術がある。
例えば、以下の特許文献1には、熱鋼材の幅方向に延びるスリット状の流水口を有するノズルに、流水口から流出する水に超音波振動を与えることができるように複数の超音波振動子を流水口に対向させて取り付け、かつ、熱鋼材の形状に応じて複数の超音波振動子の出力制御を行う制御器を備える冷却水供給装置が提案されている。
また、以下の特許文献2には、液体冷媒を用いて高温金属を冷却する際に、冷媒を介して高温金属表面に超音波を照射し、高温金属に発生する蒸気膜を破壊しつつ冷却する高温金属の冷却方法が提案されている。
また、以下の特許文献3には、歯車を、切削加工又は冷鍛・熱鍛後に熱処理する際に、水、可溶性物質を溶解した水溶液、油から選ばれる溶媒中で焼き入れするとくに、20kHz以上200kHz以下の周波数で1W/L以上200W/L以下の出力の超音波を付与し、歯車歯間の凹部に発生した気泡を離脱させ、歯車歯間の気泡の滞留率を低下させて熱伝達係数の不均一を緩和する歯車の均質冷却法が提案されている。
特開昭62-55923号公報 特開平2-101111号公報 特許第4142841号
しかしながら、上記特許文献1~特許文献3に提案されているように、冷媒に対して超音波を印加しただけでは、冷却対象とする材料全体を均一に冷却促進することは未だ不十分であり、また、更に大きな冷却対象や形状がより複雑な冷却対象に対しては、超音波が当たらない部分等が発生してしまい、冷却速度のムラが発生してしまう。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、冷却対象の全体をより均一に冷却しつつ、冷却を更に促進することが可能な、冷却方法及び冷却装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、冷却対象物の表面を冷却する冷却液の収容された処理槽を用いて、前記冷却対象物を冷却する冷却方法であって、前記処理槽に保持された前記冷却液中に、平均気泡径が100μm以下であるファインバブルを供給するとともに、当該冷却液中の溶存気体量を、飽和溶存気体量に対して60%以下となるように制御し、前記処理槽に保持された前記冷却液に対して超音波を印加し、超音波の印加された前記冷却液に対して、前記冷却対象物を浸漬させる冷却方法が提供される。
前記冷却方法では、前記冷却液に対して、前記超音波を間欠的に印加することが好ましい。
前記ファインバブルとして、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルと、を、第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量が1000~500000個/mLとなるように供給し、前記第1のファインバブルの気泡濃度FBと、前記第2のファインバブルの気泡濃度FBと、の濃度比FB/FBが、0.02≦FB/FB≦0.13の関係を満足することが好ましい。
前記冷却対象物が前記冷却液と接触することで生じる、前記冷却液中における前記冷却対象物の沸騰状態が、膜沸騰状態又は核沸騰状態の何れかであるかに応じて、前記超音波の印加条件、又は、前記ファインバブルの供給条件の少なくとも何れか一方を変化させてもよい。
前記冷却対象物が膜沸騰状態にある際には、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルの濃度と、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルの濃度と、の濃度比FB/FBが、0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように、前記ファインバブルを供給し、前記冷却対象物が核沸騰状態にある際には、前記濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように、前記ファインバブルを供給してもよい。
前記溶存気体量が飽和溶存気体量に対して50%以下となるように制御されることが好ましい。
前記超音波の周波数は、20kHz~1MHzの周波数帯域から選択されることが好ましい。
前記処理槽の前記冷却液側の壁面には、前記超音波を反射させる反射板が設けられることが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、冷却対象物の表面を冷却する冷却液を収容し、前記冷却対象物が浸漬される処理槽と、前記処理槽に保持された前記冷却液中に、平均気泡径が100μm以下であるファインバブルを供給するファインバブル供給機構と、前記処理槽に保持された前記冷却液中の溶存気体量を、飽和溶存気体量に対して60%以下となるように制御する溶存気体制御機構と、前記処理槽に保持された前記冷却液に対して超音波を印加する超音波印加機構と、前記冷却液中の前記ファインバブルの平均気泡径、及び、前記溶存気体量を測定する測定機構と、を備え、前記ファインバブル供給機構は、前記測定機構による測定結果、前記冷却対象物の前記処理槽への供給形態、及び、前記冷却対象物が前記冷却液と接触することで生じる、前記冷却液中における前記冷却対象物の沸騰状態に応じて、前記ファインバブルの供給条件を制御する冷却装置が提供される。
前記超音波印加機構は、前記冷却液に対して、前記超音波を間欠的に印加することが好ましい。
前記ファインバブル供給機構は、前記ファインバブルとして、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルと、を、第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量が1000~500000個/mLとなるように供給し、前記第1のファインバブルの気泡濃度FBと、前記第2のファインバブルの気泡濃度FBと、の濃度比FB/FBが、0.02≦FB/FB≦0.13の関係を満足するように、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを供給することが好ましい。
前記冷却対象物は、前記処理槽に対して連続的に送入されており、前記ファインバブル供給機構は、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように、前記冷却対象物の送入方向に対して上流側から供給するとともに、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように、前記冷却対象物の送入方向に対して下流側から供給してもよい。
前記冷却対象物は、前記処理槽に対してバッチ方式で浸漬され、前記ファインバブル供給機構は、前記冷却対象物が膜沸騰状態にある際には、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように供給し、前記冷却対象物が核沸騰状態にある際には、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように供給してもよい。
前記超音波印加機構は、前記冷却対象物の前記冷却液中における沸騰状態が膜沸騰状態又は核沸騰状態の何れかであるかに応じて、前記超音波の印加条件を変化させてもよい。
前記溶存気体制御機構は、前記溶存気体量が飽和溶存気体量に対して50%以下となるように制御することが好ましい。
前記超音波印加機構は、前記超音波の周波数を、20kHz~1MHzの周波数帯域から選択することが好ましい。
前記処理槽の前記冷却液側の壁面には、前記超音波を反射させる反射板が設けられることが好ましい。
以上説明したように本発明によれば、冷却対象の全体をより均一に冷却しつつ、冷却を更に促進することが可能となる。
高温の冷却対象物の沸騰状態について説明するための説明図である。 高温の冷却対象物の沸騰状態について説明するための説明図である。 高温の冷却対象物の沸騰状態について説明するための説明図である。 本発明の実施形態に係る冷却方法について説明するための説明図である。 同実施形態に係る冷却方法について説明するための説明図である。 同実施形態に係る冷却方法について説明するための説明図である。 同実施形態に係る冷却方法について説明するための説明図である。 同実施形態に係る冷却方法における超音波の印加条件について説明するための説明図である。 同実施形態に係る冷却方法における超音波の印加条件について説明するための説明図である。 同実施形態に係る冷却装置について説明するための説明図である。 同実施形態に係る冷却装置の一具体例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る冷却装置の一具体例を模式的に示した説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(高温の冷却対象物の冷却処理について)
以下では、まず、本発明の実施形態に係る冷却方法及び冷却装置について説明するに先立ち、図1~図3を参照しながら、高温の冷却対象物の冷却処理について、簡単に説明する。図1~図3は、高温の冷却対象物の沸騰状態について説明するための説明図である。
高温の冷却対象物(以下、「高温材料」ともいう。)を水や油等の冷媒(冷却液)を用いて冷却する場合、冷媒が高温の冷却対象物に接することで生じる沸騰状態は、冷却対象物の温度に応じて変化する。図1は、過熱度と熱流束との関係を示したグラフ図である。図1において、横軸は、過熱度ΔTsatであり、伝熱面の温度と液体の飽和温度(沸点)との差として定義される値である。また、図1において、縦軸は、熱流束qである。
図1において、過熱度が10~10K程度の範囲であり、かつ、熱流束が10~10W/m程度の範囲(すなわち、図1における点B~点Dの範囲)では、冷却対象物が冷媒と接触した場合、核沸騰と呼ばれる沸騰状態が生じる。核沸騰状態では、冷却対象物の表面で冷媒が直接蒸気となり、冷却対象物の表面に気泡が発生する。また、図1において、過熱度が10K以上の範囲であり、かつ、熱流束が10W/m以上の範囲(すなわち、図1における点E~点F以降の範囲)では、冷却対象物が冷媒と接触した場合、膜沸騰と呼ばれる沸騰状態が生じる。膜沸騰状態では、冷却対象物の表面で発生した蒸気が連続的な薄膜(すなわち、蒸気膜)を形成する。また、図1において、点D~点Eの範囲は、遷移沸騰状態と呼ばれ、膜沸騰状態と核沸騰状態とが混在している状態である。
上記のような膜沸騰状態は、冷却対象物の温度が概ね300℃~800℃程度である場合に生じるものであり、上記のような核沸騰状態は、冷却対象物の温度が概ね100~200℃程度である場合に生じるものである。また、遷移沸騰状態は、冷却対象物の温度が概ね200℃~300℃である場合に対応していると考えることができる。従って、800℃以上の温度を有する冷却対象物(例えば、加熱された各種鋼材等)を冷媒により冷却すると、図2に模式的に示したように、まず、膜沸騰状態が生じ、その後、冷却対象物の温度の低下に伴い、遷移沸騰状態を経て、核沸騰状態へと移行していく。
ここで、膜沸騰状態で生じる蒸気膜は、高温状態にある冷却対象物が直接冷媒と接触することを妨げる。そのため、細かな気泡が発生する核沸騰状態と比べて、膜沸騰状態では熱伝達率が低下し、結果的に冷却効果が低下してしまう。また、遷移沸騰状態は、膜沸騰状態と核沸騰状態とが混在している状態であるため、核沸騰状態と比べて冷却効果は低下するものの、膜沸騰状態ほどの冷却効果の低下は無いと考えられる。そのため、図3に模式的に示したように、膜沸騰状態で生じる蒸気膜を破壊することで微細化するとともに、分断された蒸気膜や気泡を冷却対象物の表面から速やかに剥離させることで、冷却効果を促進させることが重要となる。
図3に示したような蒸気膜の破壊や気泡等の剥離を実現するために、上記特許文献1~特許文献3に開示されている技術では、冷媒に対して超音波を印加することが提案されている。しかしながら、かかる超音波を利用した技術について、本発明者らが鋭意検討を行った結果、冷媒に対して超音波を印加するだけでは冷却対象物全体を均一に冷却促進することは未だ不十分であり、更に大きな冷却対象物や形状がより複雑な冷却対象物については、超音波が当たらない部分等が発生してしまい、冷却速度のムラが発生してしまうことが明らかとなった。
そこで、本発明者らは、冷却対象の全体をより均一に冷却しつつ冷却を更に促進することが可能な技術について更なる検討を行った結果、冷媒中の溶存気体量を制御するとともに、冷媒中に所定のファインバブルを含有させた上で、かかる冷媒に対して超音波を印加することで、冷却対象の全体をより均一に冷却しつつ冷却を更に促進することが可能となることに想到した。
以下で詳述する本発明の実施形態に係る冷却方法及び冷却装置は、上記のような知見に基づき完成されたものである。
(実施形態)
<冷却方法について>
以下では、まず、図4~図9を参照しながら、上記知見に基づき完成された、本発明の実施形態に係る冷却方法について、詳細に説明する。図4~図7は、本実施形態に係る冷却方法について説明するための説明図である。図8及び図9は、本実施形態に係る冷却方法における超音波の印加条件について説明するための説明図である。
本実施形態に係る冷却方法では、冷媒を用いて冷却対象物を冷却する際に、超音波のキャビテーションによる物理的な衝撃力を利用して、冷却対象物のより一層の冷却促進を図る。この際、超音波のみを冷媒に印加した場合には、かかる物理的な衝撃力が十分ではないため、以下で詳述するようなファインバブルを冷媒中に含有させる。冷媒中の溶存気体制御によって超音波の伝播効率を高め、かつ、ファインバブルによって印加された超音波の少なくとも一部が散乱されることで、印加された超音波は3次元的に伝播するようになる。また、ファインバブルを含有させることで、キャビテーションの発生頻度が増加し、衝撃力と冷媒の攪拌とを効率良く発生させることで、より一層の冷却促進効果を得ることができる。
ここで、ファインバブルとは、平均気泡径が100μm以下である微細気泡である。かかるファインバブルのうち、平均気泡径がμmサイズのファインバブルを、マイクロバブルと称することがあり、平均気泡径がnmサイズのファインバブルを、ウルトラファインバブル又はナノバブルと称することがある。
また、冷却処理に用いられる冷媒(冷却液)は、特に限定されるものではなく、一般的な冷却処理に用いられる、各種の冷媒を用いることが可能である。このような冷媒として、例えば、水や、各種の化合物等が含有された水溶液や、各種の油等を挙げることができる。
また、以下の説明では、先だって説明したような遷移沸騰状態は、核沸騰状態と併せて考慮することとし、冷却対象物を冷却する際の沸騰状態として、膜沸騰状態及び核沸騰状態の2つの状態を考慮する。
[ファインバブルを含有させることの意義]
例えば図4に模式的に示したように、膜沸騰状態で生じる蒸気膜を超音波のみを利用して破壊することを考える。
この際、超音波は冷媒中を直進することしか出来ないため、図4左図に示したように超音波のみを印加する場合には、蒸気膜が存在する部分に向かって直進した超音波のみが、蒸気膜の破壊に寄与することとなる。一方、冷媒中にファインバブルを含有させた上で超音波を印加した場合には、超音波は、上記のようにファインバブルによって少なくとも一部が散乱され、冷媒中に3次元的に伝播することとなる。その結果、図4右図に示したように、超音波は蒸気膜に対して様々な方向から伝播してくることとなり、蒸気膜の破壊に寄与する超音波は、より多くなると言える。また、ファインバブルの含有により、キャビテーションの発生頻度も高まる。従って、印加する超音波のエネルギー密度を同一とした場合に、蒸気膜に対して印加される超音波の強度は、超音波のみを印加した場合に比べて、超音波とファインバブルとを併用した場合の方が極めて大きくなる。
また、超音波のみを印加した場合には、超音波は冷媒中を直進することしか出来ないため、図5左図に模式的に示したように、蒸気膜が存在する部分に向かって直進した超音波のみが、蒸気膜を破壊することができる。一方で、超音波とファインバブルとを併用した場合には、超音波は冷媒中を3次元的に伝播していくため、図5右図に模式的に示したように、蒸気膜に対して超音波が多方向から照射されることとなり、キャビテーションの発生頻度の増加も相まって、蒸気膜の破壊がより促進される。
このような超音波の直進性という特徴は、図6に模式的に示したように、分断された蒸気膜や気泡の剥離にも影響を与える。すなわち、超音波のみを印加した場合には、超音波は冷媒中を直進することしか出来ないため、図6左図に示したように、超音波は、気泡等の高温材料の表面からの剥離に、あまり寄与しない。一方で、超音波とファインバブルとを併用した場合には、超音波は冷媒中を3次元的に伝播していくため、図6右図に示したように、超音波は気泡等の下部に回り込むことが可能となる。加えて、キャビテーションの発生頻度も高まる結果、気泡等の高温材料の表面からの剥離を促進することが可能となる。
[超音波の周波数]
ここで、本実施形態に係る冷却方法において、冷媒に印加される超音波の周波数は、例えば、20kHz~1MHzの範囲内であることが好ましい。超音波の周波数が20kHz~1MHzの範囲内となることで、超音波による冷却促進効果の低下を、より確実に抑制することが可能となる。超音波の周波数が20kHz未満である場合には、冷却対象物の表面から発生するサイズの大きな気泡により超音波伝播が阻害され、超音波による冷却促進効果が低下する場合がある。また、超音波の周波数が1MHz超である場合には、超音波の直進性が強くなりすぎて、超音波を3次元的に伝播させるのが困難となる場合がある。冷媒に印加される超音波の周波数は、好ましくは25kHz~500kHzであり、更に好ましくは、25kHz~120kHzである。
また、印加する超音波の周波数は、冷却対象物に応じて上記範囲内で適切な値を選定することが好ましく、冷却対象物の種類によっては、2種類以上の周波数の超音波を印加することが好ましい。
[溶存気体量]
また、本実施形態に係る冷却方法において、冷媒中には、均一な超音波伝搬と高い冷却促進効果とを両立するために、気体が飽和溶存気体量に対して50%以下となるように溶存していることが好ましい。ここで、溶存気体量を、所定の濃度単位(例えば、ppm等)を用いて具体的に表記することも可能であるが、溶存気体量は冷媒の温度に応じて変化するため、以下では、溶存気体量を、冷媒の温度に応じて定まる飽和溶存気体量を基準とする相対的な値で表記する。なお、着目する冷媒の温度が定まれば、飽和溶存気体量を具体的な値として表記することが可能であるため、かかる冷媒温度における溶存気体量を、所定の濃度単位を用いた値に変換することも可能である。
溶存気体量が飽和溶存気体量に対して50%超となる場合には、溶存した気体により超音波の伝搬が阻害され、冷媒全体への均一な超音波伝搬が阻害されるため、好ましくない。一方、溶存気体量の下限値は特に規定するものではないが、溶存気体量が飽和溶存気体量に対して1%未満となる場合には、超音波によるキャビテーション発生が起こらず、超音波による冷却促進効果が発揮できなくなる可能性がある。そのため、溶存気体量は、飽和溶存気体量に対して1%以上であることが好ましい。冷媒中の溶存気体量は、飽和溶存気体量に対して、より好ましくは、5%以上40%以下である。
上記のように、冷媒の温度が変化すれば、冷媒の飽和溶存気体量は変化する。また、冷媒の温度変化に起因する、冷媒を構成する液体の分子運動量(例えば、水分子運動量)の違いが、伝搬性に影響する。具体的には、温度が低ければ、冷媒を構成する液体の分子運動量は少なく、超音波を伝搬しやすくなり、冷媒の飽和溶存気体量も高くなる。従って、上記範囲内となるような所望の溶存気体量を実現可能なように、冷媒の温度を適宜制御することが好ましい。冷媒の温度は、例えば、5℃~80℃程度であることが好ましい。
ここで、冷媒中の溶存気体は、主に、酸素、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等であり、冷媒の温度や成分に影響を受けるものの、酸素と窒素がその大半を占めている。従って、上記のような溶存気体量を代表するものとして、溶存酸素量又は溶存窒素量の少なくとも何れかを用いることも可能である。
なお、溶存気体量を上記の範囲に制御する方法については、特に限定されるものではなく、真空脱気、化学薬品による脱気等、公知の方法を適宜選択することが可能である。また、冷媒中の溶存気体量は、隔膜電極法及び光学式溶存酸素計といった、公知の機器によって測定することが可能である。
[ファインバブルの平均気泡径及び濃度]
続いて、図7を参照しながら、冷媒中に含有させるファインバブルの平均気泡径について、詳細に説明する。
図7に示したように、膜沸騰状態では、冷却対象物の表面に生じる蒸気膜を、より確実に破壊・微細化することが重要となる。そのためには、衝撃力が相対的に大きくなる、気泡径の大きなファインバブルを利用することが好ましい。一方で、核沸騰状態では、蒸気膜や気泡と冷却対象物表面との界面に、ファインバブルを回り込ませ、気泡等の剥離を促進することが重要となる。そのためには、気泡径の小さなファインバブルを利用することが好ましい。
このような観点から、本実施形態に係る冷却方法では、ファインバブルとして、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルと、を、第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量が1000~500000個/mLとなるように冷媒中に供給することが好ましい。平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルが、蒸気膜の破壊・微細化に効果的なファインバブルに対応し、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルが、気泡等の剥離に効果的なファインバブルに対応する。
第1のファインバブルの平均気泡径が10μm未満である場合には、蒸気膜を破壊・微細化するための十分な衝撃力を実現することができない可能性がある。一方、第1のファインバブルの平均気泡径が100μm超である場合には、ファインバブルの浮上速度が増加することで冷媒中でのファインバブルの寿命が短くなり、現実的な冷却促進効果が得られなくなる可能性がある。また、気泡径が大きすぎる場合、超音波の伝播がファインバブルによって阻害され、超音波の持つ冷却促進効果が低下してしまう場合がある。第1のファインバブルの平均気泡径は、より好ましくは、10μm~50μmである。
第2のファインバブルの平均気泡径が0.1μm未満である場合には、気泡等を冷却対象物表面から剥離させるだけの衝撃力を実現することができない可能性がある。一方、第2のファインバブルの平均気泡径が5μm超である場合には、ファインバブルが、気泡等と冷却対象物との界面に回り込んだり、冷却対象物の複雑な形状の内部に回り込んだりすることが困難となり、気泡等の剥離効果を十分に実現することができない可能性がある。第2のファインバブルの平均気泡径は、より好ましくは、0.5μm~2μmである。
第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量が1000個/mL未満である場合には、十分な冷却促進効果を実現することができない可能性がある。一方、第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量が500000個/mL超である場合には、ファインバブル発生装置が大型になったり、ファインバブル発生装置の台数を増やすことになったりして、ファインバブルの供給が現実的ではない場合がある。第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量は、より好ましくは、5000個/mL~50000個/mLである。
また、第1のファインバブルの気泡濃度FBと、第2のファインバブルの気泡濃度FBと、の濃度比FB/FBは、0.02≦FB/FB≦0.13の関係を満足することが好ましい。上記濃度比FB/FBを0.02~0.13の範囲内とすることで、膜沸騰状態から核沸騰状態までの全ての温度領域で、十分な冷却促進効果を得ることができる。
上記濃度比FB/FBが0.02未満である場合には、膜沸騰状態における蒸気膜の破壊が十分に生じず、また、核沸騰状態における十分な冷却促進効果を実現することができない可能性がある。また、濃度比FB/FBが0.13超である場合には、蒸気膜の剥離が十分に生じず、膜沸騰状態及び核沸騰状態での十分な冷却促進効果を実現することができない可能性がある。
ここで、ファインバブルの平均気泡径や濃度(密度)は、液中パーティクルカウンターや気泡径分布計測装置等といった、公知の機器により測定することが可能である。
[超音波の印加条件]
続いて、本発明者らは、超音波の印加条件についても検討を行った。その結果、本実施形態に係る冷却方法では、冷媒に対して超音波を連続的に印加してもよいが、冷媒に対して超音波を間欠的に印加(パルス印加)することで、より効果的に冷却対象物の冷却を促進することが可能となることを見出した。
ここで、超音波を間欠的に印加する場合の印加条件としては、図8に(A)~(E)として示したように、以下の5つの条件を考慮することができる。
(A):印加時間[単位:秒]
(B):印加間隔[単位:秒]
(C):出力差[単位:%]
(D):印加積算[単位:W・秒]
(E):印加回数[単位:回/分]
ここで、より効率的に冷却対象物の冷却を促進するためには、沸騰状態に依らず、(A)の印加時間を2秒以上とし、(B)の印加間隔を0.1秒以上3秒以下とし、(C)~(E)の条件については、出来る限り大きな値に設定することが好ましい。印加時間が2秒未満である場合、及び、印加間隔が0.1秒未満である場合には、超音波を連続的に印加している場合とほぼ変わらず、超音波を間欠的に印加することによる、より一層の冷却促進効果を得ることができない。また、印加間隔が3秒超である場合にも、超音波を間欠的に印加することによる、より一層の冷却促進効果を得ることができない。印加時間は、より好ましくは5秒以上であり、印加間隔は、より好ましくは、0.2秒以上2秒以下である。
また、上記条件(C)~(E)については、沸騰状態に応じて制御することが好ましい。例えば、蒸気膜の破壊が重要となる膜沸騰状態では、図9左図に模式的に示したように、(C)出力差と(E)照射回数と、を出来るだけ大きくすることで、蒸気膜に対して、十分な大きさの衝撃力をより多く与えることが好ましい。また、分断された蒸気膜や気泡の剥離が重要となる核沸騰状態では、図9右側に模式的に示したように、(D)印加積算を出来るだけ大きくすることで、気泡等と冷却対象物との界面などにより多くのファインバブルを回り込ませることが好ましい。なお、上記条件(C)~(E)の具体的な値については、特に限定されるものではなく、冷却対象物の大きさや冷媒の量等に応じて、適宜決定すればよい。
[沸騰状態に応じた超音波の印加条件やファインバブルの供給条件の制御]
また、本実施形態に係る冷却方法では、冷却対象物の冷媒中における沸騰状態が膜沸騰状態又は核沸騰状態の何れかであるかに応じて、超音波の印加条件、又は、ファインバブルの供給条件の少なくとも何れか一方を変化させてもよい。これにより、それぞれの沸騰状態により適した状態のファインバブルや超音波を利用して、より効率的に冷却対象物の冷却促進を図ることが可能となる。
より詳細には、冷却対象物が膜沸騰状態にある際(例えば、冷却対象物の温度が300℃~800℃程度の範囲内にある場合)には、濃度比FB/FBが0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように(より好ましくは、FB/FB≒0.1となるように)、第1及び第2のファインバブルを供給し、冷却対象物が核沸騰状態にある際(例えば、冷却対象物の温度が100℃~300℃程度の範囲内にある場合)には、濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように(より好ましくは、FB/FB≒0.05となるように)、第1及び第2のファインバブルを供給してもよい。
先だって説明したように、膜沸騰状態では、蒸気膜の破壊と気泡等の剥離という2つの目的を考慮した場合、蒸気膜の破壊を主に促進させた方が好ましいため、平均気泡径がより大きな第1のファインバブルが多く存在していることが好ましい。逆に、核沸騰状態では、気泡等の剥離を主に促進させた方が好ましいため、平均気泡径がより小さな第2のファインバブルが多く存在していることが好ましい。このような観点から、冷却対象物の冷媒中における沸騰状態に応じて、供給する第1及び第2のファインバブルの含有割合を制御することで、より効果的に冷却対象物を冷却することが可能となる。
また、蒸気膜の破壊・微細化が困難と推定されるが、気泡等の剥離は容易であろうと推定される冷却対象物に対しては、冷却対象物が膜沸騰状態にある際には、超音波を間欠的に印加する一方で、冷却対象物が核沸騰状態にある際には、超音波を連続的に印加するようにしてもよい。逆に、蒸気膜の破壊・微細化は容易と推定されるが、気泡等の剥離は困難であろうと推定される冷却対象物に対しては、冷却対象物が膜沸騰状態にある際には、超音波を連続的に印加する一方で、冷却対象物が核沸騰状態にある際には、超音波を間欠的に印加するようにしてもよい。
また、上記の組み合わせ以外にも、冷却対象物の沸騰状態に応じて、超音波の印加条件やファインバブルの供給条件の少なくとも何れか一方を、適宜変化させることが可能である。
以上、図4~図9を参照しながら、本発明の実施形態に係る冷却方法について、詳細に説明した。
<冷却装置について>
続いて、図10~図12を参照しながら、以上説明したような本実施形態に係る冷却方法を実現可能な冷却装置について、詳細に説明する。図10は、本実施形態に係る冷却装置について説明するための説明図であり、図11及び図12は、本実施形態に係る冷却装置の一具体例を模式的に示した説明図である。
[冷却装置の全体構成]
以下では、まず、図10を参照しながら、以上説明したような本実施形態に係る冷却方法が実現可能な冷却装置の全体構成について、詳細に説明する。
本実施形態に係る冷却装置1は、冷却装置1が保持している冷媒(冷却液)を用いて、冷却対象物を冷却する装置である。この冷却装置1は、図10に模式的に示したように、処理槽10と、超音波反射板20と、超音波印加機構30と、ファインバブル供給機構40と、溶存気体制御機構50と、測定機構60と、を主に備える。
処理槽10には、冷却液として機能する各種の冷媒が保持されており、処理対象とする冷却対象物が冷媒中に浸漬される。この処理槽10の材質は特に限定されるものではなく、鉄、鋼、ステンレス鋼板等といった各種の金属材料で形成された処理槽であってもよいし、繊維強化プラスチック(FRP)やポリプロピレン(PP)等といった各種のプラスチック樹脂で形成された処理槽であってもよいし、各種のレンガで形成された処理槽であってもよい。すなわち、本実施形態に係る冷却装置1を構成する処理槽10として、既設の処理槽を利用することができる。
また、処理槽10の大きさについても、着目する冷却対象物の大きさに応じて適宜設定すればよく、各種形状の大型処理槽であっても、本実施形態に係る冷却装置1の処理槽10として利用可能である。
かかる処理槽10の冷媒側の壁面(すなわち、側壁や底面)には、冷却装置1に印加される超音波を反射させて処理槽10の外部へと透過しないようにするための超音波反射板20が設けられていることが好ましい。上述のように、本実施形態に係る処理槽10の材質は、特に限定するものではないが、例えば樹脂製の処理槽10のように、処理槽10の材質によっては印加される超音波を吸収してしまう場合がある。しかしながら、超音波を反射可能な材質で形成された超音波反射板20を処理槽10の壁面に設けることで、超音波が処理槽10の壁面に吸収されることを防止でき、超音波の印加効率を向上させることができる。このような超音波反射板20の材質については、超音波を反射させることが可能な材質であれば特に限定されるものではなく、公知の材質を適宜用いればよい。
超音波印加機構30は、処理槽10に保持されている冷媒や冷却対象物に対して、先だって説明したような周波数の超音波を印加する機構である。超音波印加機構30は、特に限定されるものではなく、未図示の超音波発振器に接続された超音波振動子など、公知のものを利用することが可能である。かかる超音波印加機構30は、例えば冷却装置1を含む冷却ラインを制御する制御コンピュータ等の情報処理装置(図示せず。)によって、超音波の周波数や印加条件等といった各種条件が制御されている。
この超音波印加機構30は、図10に模式的に示したように、処理槽10の側壁又は底面の少なくとも何れかの位置における超音波反射板20上に、適宜設置することが可能である。また、超音波印加機構30の設置数については特に限定されるものではなく、処理槽10の大きさに応じて適宜決定すればよい。
ファインバブル供給機構40は、先だって説明したような平均気泡径を有するファインバブルを、処理槽10に保持された冷媒中に供給する機構である。かかるファインバブルは、超音波をより散乱させるとともに、キャビテーションの発生頻度を増加させるものである。冷媒中にファインバブルを供給することで、印加された超音波の少なくとも一部を散乱させて、冷却対象物の表面に均一に超音波が当たるようにすることが可能となる。
なお、ファインバブル発生の基本機構には、気泡のせん断、気泡の微細孔通過、気体の加圧溶解、超音波、電気分解、化学反応等といった様々な機構が存在し、適宜選択することが可能である。本実施形態に係るファインバブル供給機構40では、ファインバブルの平均気泡径と濃度とを容易に制御することが可能な、ファインバブル発生方式を利用することが好ましい。このファインバブル発生方式は、例えば、せん断方式でファインバブルを発生させた後に、洗浄液を所定サイズの微細孔を有するフィルターに通すことで、ファインバブルの気泡径等を制御する方式である。
以上説明したようなファインバブル供給機構40は、処理槽10の内壁の何れかに設けられていてもよいし、冷媒を処理槽10内に供給するパイプ等のライン(図示せず。)の何れかに設けられていてもよい。
なお、かかるファインバブル供給機構40は、例えば冷却装置1を含む冷却ラインを制御する制御コンピュータ等の情報処理装置(図示せず。)によって、発生させるファインバブルの平均気泡径や濃度や濃度比等といった各種条件が制御されている。これにより、ファインバブル供給機構40は、後述する測定機構60による測定結果、後述するような冷却対象物の処理槽10への供給形態、及び、冷却対象物の冷媒中における沸騰状態に応じて、ファインバブルの供給条件を変更することが可能となる。
溶存気体制御機構50は、処理槽に保持された冷媒中の溶存気体量を、先だって説明したような範囲に制御する機構である。かかる溶存気体制御機構50の具体的な機構については、特に限定されるものではなく、真空脱気、化学薬品による脱気等を利用した装置等、公知の装置を適宜利用することが可能である。
測定機構60は、冷媒中のファインバブルの平均気泡径、及び、溶存気体量を測定する機構であり、ファインバブルの平均気泡径や濃度(密度)を測定可能な液中パーティクルカウンター又は気泡径分布計測装置等といった測定機器や、冷媒中の溶存気体量を測定可能な隔膜電極法を利用した測定機器又は光学式溶存酸素計といった、公知の測定機器から構成されている。かかる測定機構60によって測定された各種の測定結果は、例えば冷却装置1を含む冷却ラインを制御する制御コンピュータ等の情報処理装置(図示せず。)等へと出力され、超音波印加機構30、ファインバブル供給機構40、及び、溶存気体制御機構50等の制御に用いられる。
以上、図10を参照しながら、本実施形態に係る冷却装置1の全体構成について、詳細に説明した。
[冷却装置の具体例-連続ラインにおける冷却装置]
続いて、図11を参照しながら、本実施形態に係る冷却装置1の具体例を、簡単に説明する。図11は、本実施形態に係る冷却装置1を、冷却対象物が連続的に搬送されている連続ラインに対して適用する場合について、図示したものである。
例えば、各種の鋼材から製造される線材コイルを冷却する冷却ラインのように、冷却対象物Sが連続的に処理槽10中へと浸漬される連続ラインでは、本実施形態に係る冷却装置1として、図11に示したような構成を採ることが可能である。なお、図11は、図10に示したような全体構成を有する冷却装置1を簡略化して図示している。
図11に模式的に示したような連続冷却ラインでは、処理槽10内に保持された冷媒中に、線材コイル等の冷却対象物Sが連続的に送入される。従って、処理槽10の内部において、搬送方向(冷却対象物の送入方向でもある。)の上流側に向かうにつれて、冷却対象物Sの温度は高くなり、搬送方向の下流側に向かうにつれて、冷却対象物Sの温度は低くなる。換言すれば、かかる連続冷却ラインに設けられた冷却装置1では、搬送方向の上流側ほど、冷却対象物Sは膜沸騰状態にあり、搬送方向の下流側ほど、冷却対象物Sは核沸騰状態にあるといえる。
そこで、かかる連続冷却ラインにおける冷却装置1において、ファインバブル供給機構40は、第1のファインバブル及び第2のファインバブルを、濃度比FB/FBが0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように、冷却対象物Sの搬送方向に対して上流側から供給するとともに、第1のファインバブル及び第2のファインバブルを、濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように、冷却対象物Sの搬送方向に対して下流側から供給することが好ましい。これにより、膜沸騰状態にある搬送方向の上流側には、膜沸騰状態に適したファインバブルが供給され、核沸騰状態にある搬送方向の下流側には、核沸騰状態に適したファインバブルが供給されることとなる。その結果、冷媒中に連続的に送入される冷却対象物Sの冷却を、より効率良く促進することが可能となる。
[冷却装置の具体例-バッチ冷却ラインにおける冷却装置]
続いて、図12を参照しながら、本実施形態に係る冷却装置1の具体例を、簡単に説明する。図12は、本実施形態に係る冷却装置1を、冷却対象物がバッチ方式で処理される冷却ラインに対して適用する場合について、図示したものである。
例えば、様々な鋼種からなるスラブといった、比較的大きな冷却対象物をバッチ方式で冷却する冷却ラインのように、冷却対象物Sがバッチ方式で処理槽10中へと浸漬される場合には、本実施形態に係る冷却装置1として、図12に示したような構成を採ることが可能である。なお、図12においても、図10に示したような全体構成を有する冷却装置1を簡略化して図示している。
図12に模式的に示したようなバッチ冷却ラインでは、処理槽10内に保持された冷媒中にスラブ等の冷却対象物Sがバッチ方式で浸漬され、冷媒中に所定時間保持される。従って、浸漬経過時間が短いほど、冷却対象物Sの温度は高くなり、浸漬経過時間が長いほど、冷却対象物Sの温度は低くなる。換言すれば、かかるバッチ冷却ラインに設けられた冷却装置1では、浸漬経過時間が短いほど、冷却対象物Sは膜沸騰状態にあり、浸漬経過時間が長いほど、冷却対象物Sは核沸騰状態にあるといえる。
そこで、かかるバッチ冷却ラインにおける冷却装置1において、ファインバブル供給機構40は、冷却対象物Sが膜沸騰状態にある際には、第1のファインバブル及び第2のファインバブルを、濃度比FB/FBが0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように供給し、冷却対象物Sが核沸騰状態にある際には、第1のファインバブル及び第2のファインバブルを、濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように供給することが好ましい。これにより、浸漬直後から所定の経過時間までの膜沸騰状態にある冷却対象物Sには、膜沸騰状態に適したファインバブルが供給され、浸漬直後から所定の時間が経過し、核沸騰状態にある冷却対象物Sには、核沸騰状態に適したファインバブルが供給されることとなる。その結果、冷媒中にバッチ方式で浸漬される冷却対象物Sの冷却を、より効率良く促進することが可能となる。
以上、図10~図12を参照しながら、本実施形態に係る冷却装置1について、詳細に説明した。
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明の実施形態に係る冷却方法及び冷却装置について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明に係る冷却方法及び冷却装置の一例であって、本発明に係る冷却方法及び冷却装置が、以下に示す例に限定されるものではない。
(実験例1)
冷却試験には、厚さ20mmの構造用鋼を用い、鋼材断面方向の中央部近傍(中心部)及び表面近傍にシース熱電対を設置し、加熱及び冷却中の鋼板温度を測定した。冷却試験は、鋼板を800℃程度まで加熱後、冷却液(工業用水)が満たされた冷却槽に鋼板を浸漬し、各条件における800~100℃までの平均冷却速度にて冷却促進効果を評価した。
超音波印加機構30として機能する超音波発振器は、出力が1200Wであり、超音波振動子は、冷却槽側面に設置した。また、超音波の周波数は、28kHz、40kHz、100kHzの3種類を使用し、連続的に超音波を印加する条件と間欠的に超音波を印加する条件の2つの条件で試験を行った。なお、間欠的に超音波を印加する条件では、印加時間を9秒とし、印加間隔を1秒とした。また、出力差、印加積算、印加回数は、それぞれ、90%、58320W・秒、6回/分とした。
冷却液中の溶存気体量を、飽和溶存気体量に対して20%又は40%に制御したものと、制御していないもの(飽和溶存気体量に対して100%)と、にファインバブルを添加し、冷却槽に供給した上で、超音波を印加してから試験を行った。なお、冷却液の液温は、15℃程度となるように調整した。
溶存気体制御機構50として、三浦工業製膜式脱気装置PDO4000Pを用いた。また、溶存気体量の測定は、YSI製の蛍光式溶存酸素計ProODOを用い、温度自動補正された空気飽和に対する溶存酸素量(%)を測定し、溶存気体量に比例する値として用いた。ファインバブル供給機構40として、OHR流体研究所製2FKV-27M/MX-F13を用いた。また、ファインバブルの気泡径(平均気泡径)及び濃度は、細孔電気抵抗法(ベックマン・コールター製Multisizer4)及びブラウン運動解析法(Malvern製ナノ粒子解析装置NanoSight)を用いて測定した。
冷却試験の結果を、以下の表1に示す。冷却速度の評価は、比較例1の測定結果、すなわち、溶存気体量を制御しておらず、かつ、ファインバブルを添加していない冷却液を用いた場合の冷却速度を1としたときの相対値で示している。
Figure 0007265117000001
まず、比較例を見ると、溶存気体量を制御していない、比較例1、3~4、10~15、19~24では、冷却速度比はそれほど大きくならないことがわかる。また、溶存気体量を20%に制御した場合でも、超音波印加とファインバブル添加をしていない場合では、やはり冷却速度は増加していない。これら条件で超音波の間欠印加を行っても、冷却速度は増加せず、むしろ低下する傾向を示した。
一方、溶存気体量を制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却液に対して超音波を印加することで冷却を実施した、実施例1~27では、比較例1の冷却速度に比べて40~93%も冷却速度が増加する結果となった。更に、超音波印加を間欠印加にすることで更なる冷却速度の増加が観察された。
(実験例2)
冷却試験には、厚さ40mmのSM490(構造用鋼材)を用い、鋼材断面方向の中央部近傍(中心部)及び表面近傍にシース熱電対を設置し、加熱及び冷却中の鋼板温度を測定した。冷却試験は、鋼板を800℃程度まで加熱後、冷却液(工業用水)が満たされた冷却槽に鋼板を浸漬し、膜沸騰領域と考えられる800~300℃の範囲と遷移沸騰及び核沸騰領域と考えられる300~100℃の範囲での平均冷却速度にて、冷却促進効果を評価した。
超音波印加機構30として機能する超音波発振器は、出力が1200Wであり、超音波振動子は、冷却槽側面に設置した。また、超音波の周波数は、35kHz、430kHzの2種類を使用し、連続的に超音波を印加する条件と間欠的に超音波を印加する条件の2つの条件で試験を行った。なお、間欠的に超音波を印加する条件では、印加時間及び印加間隔は、表2に示した条件とした。また、出力差、印加積算、印加回数は、それぞれ、90%、43200~64158W・秒、5~29回/分とした。なお、冷却液の液温は、15℃程度となるように調整した。
溶存気体量を、飽和溶存気体量に対して35%に制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却水を、冷却槽に供給した上で、超音波を印加してから試験を行った。なお、試験中の液中ファインバブル濃度を測定し、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルの気泡径濃度FBと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルの気泡径濃度FBの濃度比FB/FBが所定の値になるように、ファインバブル供給機構40を調整し、冷却試験を行った。
溶存気体制御機構50として、三浦工業製膜式脱気装置PDO4000Pを用いた。溶存気体量の測定は、YSI製の蛍光式溶存酸素計ProODOを用い、温度自動補正された空気飽和に対する溶存酸素量(%)を測定し、溶存気体量に比例する値として用いた。ファインバブル供給機構40として、OHR流体研究所製2FKV-27M/MX-F13を用いた。また、ファインバブルの気泡径(平均気泡径)及び濃度は、細孔電気抵抗法(ベックマン・コールター製Multisizer4)及びブラウン運動解析法(Malvern製ナノ粒子解析装置NanoSight)を用いて測定した。
冷却試験の結果を、以下の表2に示す。冷却速度の評価は、比較例1の測定結果、すなわち、溶存気体量を制御しておらず、かつ、ファインバブルを添加していない冷却液を用いた場合の800~300℃及び300~100℃の範囲での平均冷却速度を1としたときの相対値で示している。
Figure 0007265117000002
まず、比較例に着目する。溶存気体量を制御していない比較例1~3では、超音波を印加した場合でも冷却速度比はそれほど大きくならないことがわかる。更に、これら条件で超音波の間欠印加を行っても、冷却速度は増加せず、むしろ低下する傾向を示した。
一方、溶存気体量を制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却液に対して超音波を印加することで冷却を実施した、実施例1~27では、比較例1の冷却速度に比べて大きく冷却速度が増加する結果となり、超音波印加を間欠印加にすることで更なる冷却速度の増加が観察された。更に、ファインバブルの気泡濃度比FB/FBが、0.02≦FB/FB≦0.13の範囲にある場合、更に冷却速度の向上が確認された。
(実験例3)
冷却試験には、φ40mmの鋼線材を用い、線材の中央部近傍(中心部)及び表面近傍にシース熱電対を設置し、加熱及び冷却中の温度を測定した。冷却試験は、鋼線材を800℃程度まで加熱後、冷却液(工業用水)が満たされた冷却槽に線材を浸漬し、膜沸騰領域と考えられる800~300℃の範囲と遷移沸騰及び核沸騰領域と考えられる300~100℃の範囲での平均冷却速度にて、冷却促進効果を評価した。
超音波印加機構30として機能する超音波発振器は、出力が1200Wであり、超音波振動子は、冷却槽側面に設置した。また、超音波の周波数は、25kHz、38kHz、1MkHzの3種類を使用し、連続的に超音波を印加する条件で試験を行った。なお、以下の実施例19~22では、2種類の周波数を組み合わせて使用した。また、冷却液の液温は、20℃程度となるように調整した。
溶存気体量を飽和溶存気体量に対して1%に制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却水を、冷却槽に供給した上で、超音波を印加してから試験を行った。なお、試験中の液中ファインバブル濃度を測定し、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルの気泡径濃度FBと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルの気泡径濃度FBの濃度比FB/FBが所定の値になるように、ファインバブル供給機構40を調整し、冷却試験を行った。
溶存気体制御機構50として、三浦工業製膜式脱気装置PDO4000Pを用いた。溶存気体量の測定は、YSI製の蛍光式溶存酸素計ProODOを用い、温度自動補正された空気飽和に対する溶存酸素量(%)を測定し、溶存気体量に比例する値として用いた。ファインバブル供給機構40として、OHR流体研究所製2FKV-27M/MX-F13を用いた。また、ファインバブルの気泡径(平均気泡径)及び濃度は、細孔電気抵抗法(ベックマン・コールター製Multisizer4)及びブラウン運動解析法(Malvern製ナノ粒子解析装置NanoSight)を用いて測定した。
冷却試験の結果を、以下の表3に示す。冷却速度の評価は、比較例1の測定結果、すなわち、溶存気体量を制御しておらず、かつ、ファインバブルを添加していない冷却液を用いた場合の800~300℃及び300~100℃の範囲での平均冷却速度を1としたときの相対値で示している。また、実施例6、実施例10、実施例14、実施例18、実施例22では、冷却の前半と後半とで濃度比FB/FBを変化させて、試験を行った。
Figure 0007265117000003
まず、比較例に着目する。溶存気体量を制御していない比較例1~4では、超音波を照射した場合でも冷却速度比はそれほど大きくならないことがわかる。更に、これら条件で超音波の間欠印加を行っても、冷却速度は増加せず、むしろ低下する傾向を示した。なお、比較例1~4では、溶存気体量が100%を超えた値となっているが、冷却液が過度に攪拌されたか又は冷却液が乱流状態で供給された場合には溶存気体量が100%を超えることが生じうることから、このような冷却液の供給状態が実現されたものと考えられる。
一方、溶存気体量を制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却液に対して超音波を印加することで冷却を実施した実施例1~22では、比較例1の冷却速度に比べて大きく冷却速度が増加した。ファインバブルの気泡濃度比が、0.02≦FB/FB≦0.13の範囲にある場合、より冷却速度が増加する結果となった。更に、ファインバブルの気泡濃度比が0.08≦FB/FB≦0.11の範囲にある場合、800~300℃での冷却促進効果が大きくなり、ファインバブルの気泡濃度比が0.03≦FB/FB≦0.07の範囲にある場合、300~100℃での冷却促進効果が大きくなった。冷却試験中に濃度比FB/FBを変化させた、実施例6、実施例10、実施例14、実施例18、実施例22では、800~100℃の全領域において高い冷却促進効果を示した。
(実験例4)
冷却試験は、線径3.5mmの複数本の炭素鋼線材(長さ2000mm)を、過熱炉出口の温度を約830℃とし、線速度3m/minで、冷却液(焼き入れ油)が満たされた冷却槽を通過させるやり方で実施した。本試験では、試験後の線材における焼き入れ不良の発生率で、各条件における冷却効果を評価した。
超音波印加機構30として機能する超音波発振器は、出力が1200Wであり、超音波振動子は、冷却槽側面に設置した。また、超音波の周波数は、35kHzを使用し、連続的に超音波を印加する条件と間欠的に超音波を印加する条件の2つの条件で、試験を行った。なお、間欠的に超音波を印加する条件では、印加時間を5秒とし、印加間隔を1秒とした。また、出力差、印加積算、印加回数は、それぞれ、100%、60000W・秒、10回/分とした。なお、冷却液の液温は、20℃程度となるように調整した。
溶存気体量を飽和溶存気体量に対して20%、60%に制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却水を、冷却槽に供給した上で、超音波を印加してから試験を行った。なお、試験中の液中ファインバブル濃度を測定し、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルの気泡径濃度FBと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルの気泡径濃度FBの濃度比FB/FBが所定の値になるように、ファインバブル供給機構40を調整し、冷却試験を行った。
溶存気体制御機構50として、三浦工業製膜式脱気装置PDO4000Pを用いた。溶存気体量の測定は、YSI製の蛍光式溶存酸素計ProODOを用い、温度自動補正された空気飽和に対する溶存酸素量(%)を測定し、溶存気体量に比例する値として用いた。ファインバブル供給機構40として、OHR流体研究所製2FKV-27M/MX-F13を用いた。また、ファインバブルの気泡径(平均気泡径)及び濃度は、細孔電気抵抗法(ベックマン・コールター製Multisizer4)及びブラウン運動解析法(Malvern製ナノ粒子解析装置NanoSight)を用いて測定した。
以下に示す実施例2、実施例4、実施例6、実施例8では、冷却槽上流側から濃度比FB/FB=0.09のファインバブルを供給し、かつ、下流側から濃度比FB/FB=0.06のファインバブルを供給して、試験を行った。
冷却試験の結果を、以下の表4に示す。なお、焼き入れ不良発生率は、以下のようにして算出した。すなわち、各冷却条件で焼き入れた材料の強度を、JIS Z2241に則して測定するとともに、各冷却条件で焼き入れた材料の靱性を、JIS Z2241に則して測定し、得られた強度及び靱性が目標値に対して誤差±5%以内となったものを合格とし、誤差が5%超となったものを不良と判断した。
Figure 0007265117000004
まず、比較例に着目する。溶存気体量を制御していない比較例1~3では、超音波を印加した場合でも、焼き入れ不良率はそれほど低下しない。また、比較例4~に示すように、溶存気体量を制御しても、ファインバブルを添加しない場合には、やはり焼き入れ不良率は低下しない。更に、これら条件で超音波の間欠印加を行っても、焼き入れ不良は増加する傾向を示した。なお、比較例1~3では、溶存気体量が100%を超えた値となっているが、かかる例においても、冷却液の過度の攪拌又は冷却液の乱流状態での供給が生じたものと考えられる。
一方、所定の溶存気体量を制御し、かつ、所定の気泡割合のファインバブルを添加した冷却液に超音波を印加することで冷却を実施した実施例1~8では、比較例1に比べて大きく焼き入れ不良率が低下した。更に、溶存気体量を20%に制御し、上流側から濃度比FB/FB=0.09のファインバブルを供給し、かつ、下流側から濃度比FB/FB=0.06のファインバブルを供給した実施例2、実施例4では、焼き入れ不良のない均一な鋼線材を得ることができ、この条件における高い冷却促進効果が示された。
(実験例5)
冷却試験には、厚さ60mmのSi含有鋼板(ハイテン材)を用い、鋼材断面方向の中央部近傍(中心部)及び表面近傍にシース熱電対を設置し、加熱及び冷却中の鋼板温度を測定した。冷却試験は、鋼板を800℃程度まで加熱後、冷却液(工業用水)が満たされた冷却槽に鋼板を浸漬し、膜沸騰領域と考えられる800~300℃の範囲と遷移沸騰及び核沸騰領域と考えられる300~100℃の範囲での平均冷却速度にて、冷却促進効果を評価した。
超音波印加機構30として機能する超音波発振器は、出力が1200Wであり、超音波振動子は、冷却槽側面に6台設置した。また、超音波の周波数は、26kHzを使用し、連続的に超音波を印加する条件と間欠的に超音波を印加する条件の2つの条件で試験を行った。なお、間欠印加では、超音波印加時間[単位:秒]、超音波印加間隔[単位:秒]、超音波印加時と停止時の出力差[単位:%]、超音波印加積算[単位:W・秒]、及び、超音波印加回数[単位:回/分]をそれぞれ変化させ、冷却速度を比較した。なお、冷却液の液温は、15℃程度となるように調整した。
溶存気体量を飽和溶存気体量に対して1%に制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却水を、冷却槽に供給した上で、超音波を印加してから試験を行った。なお、試験中の液中ファインバブル濃度を測定し、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルの気泡径濃度FBと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルの気泡径濃度FBの濃度比FB/FB=0.1になるように、ファインバブル供給機構40を調整し、冷却試験を行った。
溶存気体制御機構50として、三浦工業製膜式脱気装置PDO4000Pを用いた。溶存気体量の測定は、YSI製の蛍光式溶存酸素計ProODOを用い、温度自動補正された空気飽和に対する溶存酸素量(%)を測定し、溶存気体量に比例する値として用いた。ファインバブル供給機構40として、OHR流体研究所製2FKV-27M/MX-F13を用いた。また、ファインバブルの気泡径(平均気泡径)及び濃度は、細孔電気抵抗法(ベックマン・コールター製Multisizer4)及びブラウン運動解析法(Malvern製ナノ粒子解析装置NanoSight)を用いて測定した。
冷却試験の結果を、以下の表5に示す。冷却速度の評価は、比較例1の測定結果、すなわち、溶存気体量を制御しておらず、かつ、ファインバブルを添加していない冷却液を用いた場合の800~300℃及び300~100℃の範囲での平均冷却速度を1としたときの相対値で示している。
Figure 0007265117000005
まず、比較例に着目する。溶存気体量を制御していない比較例1~4では、超音波を印加した場合でも、冷却速度比はそれほど大きくならないことがわかる。更に、これら条件で超音波の間欠印加を行っても、冷却速度は増加せず、むしろ低下する傾向を示した。
一方、溶存気体量を制御し、かつ、ファインバブルを添加した冷却液に超音波を印加することで冷却を実施した、実施例1~25では、比較例1の冷却速度に比べて大きく冷却速度が増加する結果となった。更に、超音波印加を間欠印加にすることで、更に冷却速度の増加が観察された。結果を詳しく見ると、印加時間が2秒未満、又は、印加間隔3秒超の場合、連続印加と同じ、又は、連続印加以下になってしまうが、印加時間が2秒以上で、かつ、印加間隔が0.1秒以上3秒以下の場合、連続印加と比較して冷却速度の向上が見られることがわかる。更に、印加回数が多い場合、800~300℃での冷却速度向上効果が確認された。これは、印加回数を増加させることで、膜沸騰状態における蒸気膜の破壊を促進しているためだと考えられる。印加積算時間を増加させると、300~100℃での冷却速度向上効果が見られた。これは、印加積算時間の増加に伴い、核沸騰状態における蒸気膜の剥離が促進されたためだと考えられる
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 冷却装置
10 処理槽
20 超音波反射板
30 超音波印加機構
40 ファインバブル供給機構
50 溶存気体制御機構
60 測定機構


Claims (17)

  1. 冷却対象物の表面を冷却する冷却液の収容された処理槽を用いて、前記冷却対象物を冷却する冷却方法であって、
    前記処理槽に保持された前記冷却液中に、平均気泡径が100μm以下であるファインバブルを供給するとともに、当該冷却液中の溶存気体量を、飽和溶存気体量に対して60%以下となるように制御し、
    前記処理槽に保持された前記冷却液に対して超音波を印加し、
    超音波の印加された前記冷却液に対して、前記冷却対象物を浸漬させる、冷却方法。
  2. 前記冷却液に対して、前記超音波を間欠的に印加する、請求項1に記載の冷却方法。
  3. 前記ファインバブルとして、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルと、を、第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量が1000~500000個/mLとなるように供給し、
    前記第1のファインバブルの気泡濃度FBと、前記第2のファインバブルの気泡濃度FBと、の濃度比FB/FBが、0.02≦FB/FB≦0.13の関係を満足する、請求項1又は2に記載の冷却方法。
  4. 前記冷却対象物が前記冷却液と接触することで生じる前記冷却液中における前記冷却対象物の沸騰状態が、膜沸騰状態又は核沸騰状態の何れかであるかに応じて、前記超音波の印加条件、又は、前記ファインバブルの供給条件の少なくとも何れか一方を変化させる、請求項1~3の何れか1項に記載の冷却方法。
  5. 前記冷却対象物が膜沸騰状態にある際には、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルの濃度と、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルの濃度と、の濃度比FB/FBが、0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように、前記ファインバブルを供給し、
    前記冷却対象物が核沸騰状態にある際には、前記濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように、前記ファインバブルを供給する、請求項4に記載の冷却方法。
  6. 前記溶存気体量が飽和溶存気体量に対して50%以下となるように制御される、請求項1~5の何れか1項に記載の冷却方法。
  7. 前記超音波の周波数は、20kHz~1MHzの周波数帯域から選択される、請求項1~6の何れか1項に記載の冷却方法。
  8. 前記処理槽の前記冷却液側の壁面には、前記超音波を反射させる反射板が設けられる、請求項1~7の何れか1項に記載の冷却方法。
  9. 冷却対象物の表面を冷却する冷却液を収容し、前記冷却対象物が浸漬される処理槽と、
    前記処理槽に保持された前記冷却液中に、平均気泡径が100μm以下であるファインバブルを供給するファインバブル供給機構と、
    前記処理槽に保持された前記冷却液中の溶存気体量を、飽和溶存気体量に対して60%以下となるように制御する溶存気体制御機構と、
    前記処理槽に保持された前記冷却液に対して超音波を印加する超音波印加機構と、
    前記冷却液中の前記ファインバブルの平均気泡径、及び、前記溶存気体量を測定する測定機構と、
    を備え、
    前記ファインバブル供給機構は、前記測定機構による測定結果、前記冷却対象物の前記処理槽への供給形態、及び、前記冷却対象物が前記冷却液と接触することで生じる、前記冷却液中における前記冷却対象物の沸騰状態に応じて、前記ファインバブルの供給条件を制御する、冷却装置。
  10. 前記超音波印加機構は、前記冷却液に対して、前記超音波を間欠的に印加する、請求項9に記載の冷却装置。
  11. 前記ファインバブル供給機構は、
    前記ファインバブルとして、平均気泡径が10μm~100μmである第1のファインバブルと、平均気泡径が0.1μm~5μmである第2のファインバブルと、を、第1のファインバブル及び第2のファインバブルの気泡総量が1000~500000個/mLとなるように供給し、
    前記第1のファインバブルの気泡濃度FBと、前記第2のファインバブルの気泡濃度FBと、の濃度比FB/FBが、0.02≦FB/FB≦0.13の関係を満足するように、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを供給する、請求項9又は10に記載の冷却装置。
  12. 前記冷却対象物は、前記処理槽に対して連続的に送入されており、
    前記ファインバブル供給機構は、
    前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように、前記冷却対象物の送入方向に対して上流側から供給するとともに、
    前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように、前記冷却対象物の送入方向に対して下流側から供給する、請求項11に記載の冷却装置。
  13. 前記冷却対象物は、前記処理槽に対してバッチ方式で浸漬され、
    前記ファインバブル供給機構は、
    前記冷却対象物が膜沸騰状態にある際には、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.08≦FB/FB≦0.11の関係を満たすように供給し、
    前記冷却対象物が核沸騰状態にある際には、前記第1のファインバブル及び前記第2のファインバブルを、前記濃度比FB/FBが0.03≦FB/FB≦0.07の関係を満たすように供給する、請求項11に記載の冷却装置。
  14. 前記超音波印加機構は、前記冷却対象物の前記冷却液中における沸騰状態が膜沸騰状態又は核沸騰状態の何れかであるかに応じて、前記超音波の印加条件を変化させる、請求項9~13の何れか1項に記載の冷却装置。
  15. 前記溶存気体制御機構は、前記溶存気体量が飽和溶存気体量に対して50%以下となるように制御する、請求項9~14の何れか1項に記載の冷却装置。
  16. 前記超音波印加機構は、前記超音波の周波数を、20kHz~1MHzの周波数帯域から選択する、請求項9~15の何れか1項に記載の冷却装置。
  17. 前記処理槽の前記冷却液側の壁面には、前記超音波を反射させる反射板が設けられる、請求項9~16の何れか1項に記載の冷却装置。
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