JP3808591B2 - 樹脂保有中空糸膜シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体の分離・精製などに用いられる中空糸膜モジュールを製造するのに使用する樹脂保有中空糸膜シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
中空糸膜モジュールは、無菌水、飲料水、高純度水の製造や、空気の浄化、さらには半導体分野などに用いられる溶剤の洗浄精製などに使用されている。中空糸膜モジュールは、複数本の中空糸膜の束がポッティング樹脂によって筺体に固定され一体化されたもので、モジュールの形態としては、円筒状、円柱状などの他にシート状などのタイプがある。
【0003】
中空糸膜モジュールは、均一な分離性能、濾過性能の他に機械的特性および耐溶剤性等が求められ、これらを最適にするための開発が続けられている。しかしながら、中空糸膜束をポッティング樹脂によって筺体に固定して一体化するポッティング時に生ずる種々の問題が、中空糸膜モジュールの性能を制限する要因の一つとなっている。
【0004】
従来、このポッティング方法としては、重力ポッティング法、遠心ポッティング法が代表的なものである。重力ポッティング法は、筺体内に中空糸膜を収納し、その底部にポッティング樹脂を充填し、中空糸膜束の端部内へポッティング樹脂を重力により浸透、充填させ、そして固定化させる方法である。また、遠心ポッティング法は、中空糸膜束をハウジングに挿入し、アセンブリーをその中間部を中心として回転させて遠心力を生じさせ、これによってポッティング樹脂を中空糸膜束の両端へ充填し、固定化させる方法である。しかし、これらの方法では、例えば労力を要する手動操作がある、均一で高品質のモジュールが得にくい、ポッティング樹脂は、特に充填過程で中空糸膜の乾燥した部分に沿って吸い上げられる傾向がある等種々の問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの問題点を解決する方法として、ポッティング樹脂をシート状中空糸膜上に連続的に供給する方法が特開平7−771号公報に提案されている。しかし、この方法では、使用するポッティング樹脂材料の融点が、中空糸膜の融点より少なくとも約10℃低いことが必要であり、またメルトフローレートが低い樹脂は中空糸膜を押しつぶすことがあり使用することができなかった。
【0006】
このため、中空糸膜の融点以上の温度で取り扱う場合は、ポッティング樹脂量を調整する工程が必要となった。この方法によれば、溶融したポッティング部を一度冷却して硬化させ、再加熱して円筒に巻き取れば円筒モジュールの製作は可能である。しかし、シート状で冷却すると中空糸膜シート両端の帯状樹脂部が肥大化(エッジ・ビード化)し、均一な厚さのものが製造できなかった。このような厚み精度が悪い帯状樹脂部をもった樹脂保有中空糸膜シートを用いて積層モジュールを製作すると、積層モジュールは層間に隙間が発生し、リーク等により良好な分離特性が発揮できなかった。
【0007】
したがって、樹脂保有中空糸膜シートを使用して矩形の積層モジュールを制作するときは、層間に充填部材を必要とした。しかし、充填剤を注入した後所定の厚さまで締め付ける手間がかかるとともに、モジュールが大型化した場合、充填剤を充填したモジュールの寸法重量が大きくメンテナンス時の取り扱い性が悪くなる等の問題があった。充填剤を使用しない方法としてシート状中空糸膜の層間にパッキンを挿入させる方法があるが、パッキン用の削りしろが必要となり、樹脂保有中空糸膜シートの帯状樹脂部の厚さが薄い場合には使用できない。また、円筒形のモジュールを製作するときは、樹脂保有中空糸膜シートの帯状樹脂部を再加熱溶融しながら巻くかあるいは層間に充填剤を挿入する等の手間がかかった。
【0008】
本発明者らは、これら課題を解決するために鋭意検討した結果、ポッティング樹脂としてメルトフローレートが1.5g/10min以上のものを使用すれば、ポッティング樹脂の融点と中空糸膜の融点に制約されることなく製造条件が選べるので、接着固定部のポッテイング樹脂と中空糸膜を必ず密着した状態にすることができ、さらに積層モジュール製作に用いても層間に隙間が発生することのない厚さ精度が良好な帯状樹脂をもった樹脂保有中空糸膜シートが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の樹脂保有中空糸膜シートの製造方法は、加熱された一対の走行ベルト上に熱可塑性樹脂を帯状に溶融押し出しする工程と、一対の走行ベルト上の帯状熱可塑性樹脂を対向させ、その間にシート状に形成された中空糸膜を供給し、帯状熱可塑性樹脂の融点以上の温度下に、シート状中空糸膜を挟み込んで帯状熱可塑性樹脂を貼り合わせる工程と、ベルト間に挟まれた状態で、帯状熱可塑性樹脂をその融点未満の温度へ冷却する工程と、ベルトから得られた樹脂保有中空糸膜シートを取り出す工程とを有することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に従い説明する。
【0012】
図1は、シート状に収束された中空糸膜を模式的に示した図である。
【0013】
シート状中空糸膜1は、中空糸膜2および中空糸膜をシート状に収束保持する保持材3とからなり、各中空糸膜はほぼ平行に配列された状態でシート状に並び拡げられ収束されている。保持材は、必ずしも樹脂保有中空糸膜シートを製造した後までは必要とされない。
【0014】
中空糸膜2としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等一般的なものを用いることが可能であり、熱可塑性樹脂からなるものに限定されず、分離物質あるいは相接触物質により適切な材質が選択される。また、中空糸膜2の形状は、その口径、空孔率、膜厚、外径等に特に制限はなく適宜選択される。
【0015】
保持材3による中空糸膜のシート状への保持方法には、例えばポリエステル繊維等を経糸に用いた中空糸膜の編織物の形成等の各種のシート状収束方法があり、種々の方法が使用可能である。
【0016】
図2は、シート状中空糸膜の一端に帯状熱可塑性樹脂(以下、「帯状樹脂」と略称する)4が配設された樹脂保有中空糸膜シートを表わしている。帯状樹脂4は、中空糸膜よりなるシート状物の少なくとも一辺に配設されるが、シート状物に対して複数条存在しても構わず、またその配設位置はシート状物の端部(辺部分)だけに限定されるものではない。本発明の製造方法による樹脂保有中空糸膜シートでは、帯状樹脂の厚み精度が±0.3mm以下である。ここで帯状樹脂の厚み精度とは、帯状樹脂の幅方向の中央部に関して、その長手方向に一定間隔で厚みを測定した場合の平均厚みに対する測定精度をいう。帯状樹脂の厚み精度が±0.3mm以下のものであれば、積層モジュールの製作に用いても、モジュールが完成した時に積層層間に隙間が発生することは殆どない。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、ポリ酢酸ビニル等各種のものが使用できるが、特に耐溶剤性が要求される場合は、ポリオレフィンを用いることが価格的にも安価にモジュール製造が可能となり好ましい。また、メルトフローレートが1.5g/10min以上の樹脂が好ましい。このような流動性の良好なものであれば面加圧・加熱できるため中空糸膜を押しつぶすことなく帯状樹脂中に中空糸膜を埋設することが可能であり、埋設後ベルトに挟まれた状態で帯状樹脂が冷却されることでシート両端部が肥大することなく帯状樹脂の厚み精度が±0.3mm未満の樹脂保有中空糸膜シートが確実に得られる。なお、メルトフローレートとは、JIS K7210に規定される方法により測定される値である。
【0018】
中空糸膜の少なくとも一端は、開口状態を保って帯状熱可塑性樹脂の側面に現われる。
【0019】
図3は、図2におけるA−A矢視を模式的に示したものであり、厚みがtの帯状熱可塑性樹脂中に、中空糸膜は埋設固定されている。
【0020】
図4は、加熱された一対の走行ベルトの上に溶融樹脂を帯状に押し出し、その走行ベルト間にシート状に形成された中空糸膜を連続的に供給して挟み込み、冷却後にベルトから樹脂保有中空糸膜シートを取り出す本発明の樹脂保有中空糸膜シートの製造方法に用いる装置を示す図である。
【0021】
シート状中空糸膜1の巻物からシート状中空糸膜が連続的に巻き出される。一方、ヒーター7,7’により予め加熱されたベルト11,11’上に吐出ダイ5,5’から溶融樹脂が帯状に吐出される。帯状溶融樹脂6,6’は、ベルト11,11’を介してロール9,9’により加熱される。中心軸が平行で所定の間隙を有する一対のロール10,10’の間隙の中央に巻き出されたシート状中空糸膜1が帯状溶融樹脂6,6’を介して一対のベルト11,11’間に挟み込まれるように送り込まれる。
【0022】
ベルト11,11’は、ロール8,8’、ロール9,9’、ロール10,10’およびニップロール13,13’を周回する連続したものである。ベルトの材質としては、例えばスチールやテフロン等が挙げられ、スチールベルトを使用する場合はテフロンコーティングを施したステンレスベルトが好ましい。ベルト11,11’上に帯状溶融樹脂6,6’が接触したときに急激に冷却されないようにベルトの表面温度は吐出ダイ5,5’より吐出された帯状樹脂6 6’が溶融状態を保つ程度、すなわち帯状樹脂の融点以上の温度に加熱しておく。ベルト11,11’を予備加熱するヒーター7,7’には、例えば赤外線ヒーター、温風ヒータが利用できる。
【0023】
吐出ダイ5,5’は、帯状樹脂の厚さによって吐出量を変える必要があるので吐出量の調整が可能なものが好ましく、また、使用する熱可塑性樹脂の種類によって吐出温度を変える必要があるため、温度制御可能なものであることが好ましい。
【0024】
ロール8,8’は、ベルトのテンション調整、および蛇行調整を行うためのものである。また、ロール9,9’は、帯状溶融樹脂6,6’を希望の温度にするためのものである。表面温度は、制御可能な構造であることが好ましく、その制御方法は、例えばヒーター、温度制御エアーあるいは熱媒等公知の手段の使用が可能であり、これらを組み合わせて使用することにより正確な温度制御を行うことは更に好ましい。
【0025】
ロール10,10’は、樹脂保有中空糸膜シートの帯状樹脂の厚さを決定するものである。すなわち、ロール10,10’の間隙を狭ばめれば、帯状樹脂の薄いものが製造され、また間隙を広げれば帯状樹脂の厚いものが製造される。なお、帯状樹脂6,6’の温度を変化させないためにロール10,10’の表面温度は、制御可能な構造であることが好ましい。その制御方法は、ロール9,9’について説明した方法を採用することが好ましい。
【0026】
シート状中空糸膜1が帯状溶融樹脂6,6’を介して一対のベルト11,11’間に挟み込まれた状態で送り込まれた後、帯状溶融樹脂6,6’でサンドイッチされたシート状中空糸膜1は、ベルト11,11’間に挟まれたままの状態で、冷却装置12,12’で帯状樹脂6,6’の融点より低い温度まで強制冷却される。帯状樹脂がシート状中空糸膜をベルト間で挟んだ後、冷却されその流動性を失うまでの間、図示されるようにベルトは垂直下方へ向けて一定間隔で移動させることが厚み精度の高い帯状樹脂を形成する上で好ましい。冷却装置12,12’による冷却方法は、例えば冷却エアー、冷却プレート、冷却ブロック、冷却ロール等が利用でき特に限定されるものではない。
【0027】
冷却された樹脂保有中空糸膜シート14は、ニップロール13,13’により引き出される。このようにして得られた樹脂保有中空糸膜シートは、帯状樹脂の一辺を切断して中空糸膜の端部を開口端として露出させて完成される。
【0028】
以上のような方法により、ポッティング樹脂材料のメルトフローレートが1.5g/cm2 以上であればポッティング樹脂の融点と中空糸膜の融点に制約されることなく、帯状樹脂の厚さ精度が±0.3mm以下である樹脂保有中空糸膜シートを得ることができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【0030】
実施例1
外径415.8μm、内径279.8μmのポリエチレン中空糸膜(EHF410A、商品名、三菱レイヨン(株)製、融点136℃)を中空糸膜間距離(断面の中心間距離)0.7mmで編んだ簾状中空糸膜シートに対して、熱可塑性樹脂としてポリエチレン(HJ340、商品名、三菱化学(株)製、融点131℃、メルトフローレート1.5g/10min)を用い、図4に示したような製造装置により樹脂保有中空糸膜シートを製造した。
【0031】
図4の製造装置において、クリアランスロール間隔を1.20mmに設定し、含水フェルトを使用した冷却ブロック(12,12’)を2対冷却用に設置し、ヒーター(7,7’)には赤外線ヒーターを用いた。25℃の室温下に、吐出ダイス(5,5’)を180℃、加熱駆動ロール(9,9’)を180℃、加熱クリアランスロール(10,10’)を155℃に温度設定し、ベルト(11,11’)には厚さ0.1mmのエンドレスSUSベルトを使用して220mm/minで移動させ、その上に熱可塑性樹脂を5.1cc/minで帯状に吐出した。エンドレスベルトから取り出したときの帯状樹脂の表面温度は、67℃であった。
【0032】
このようにして得られた樹脂保有中空糸膜シートについて、帯状樹脂の側面部を切断して、中空糸膜の開口部を露出させた。この切断面で中空糸膜の埋設状態を観察するとともに、帯状樹脂の中央部についてその長手方向に2mmおきに厚みを測定した。また、この樹脂保有中空糸膜シートを用いてこのシートを5層積層した図5に示したような矩形中空糸膜モジュール並びにシートを渦巻き状に巻いた図6に示したような直径50mmの円筒型中空糸膜モジュールを作成した。これら中空糸膜モジュールについてリークの有無について検査した。これらの結果を表1に示した。
【0033】
実施例2
熱可塑性樹脂として他のポリエチレン(ミラソンFL60、商品名、三井石油化学(株)製、融点102℃、メルトフローレート70g/10min)を使用し、吐出ダイスを165℃、加熱駆動ロールを165℃、加熱クリアランスロールを140℃に温度設定したことを除き、実施例1と全く同様にして樹脂保有中空糸膜シートを製造し、またこれを用いて中空糸膜モジュールを作製した。その結果についても表1に示した。なお、エンドレスベルトから取り出したときの帯状樹脂の表面温度は、63℃であった。
【0034】
比較例1および2
冷却ブロック(12,12’)を設置せずに帯状樹脂を自然冷却させたことを除き、それぞれ実施例1および2と全く同様にして樹脂保有中空糸膜シートを製造し、またこれを用いて中空糸膜モジュールを作製した。その結果についても表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
本発明の製造方法による樹脂保有中空糸膜シートを用いると、充填部材を用いずにこれをそのまま積層し、あるいは巻物状に巻き上げて中空糸膜モジュールを作製しても、シートの層間に隙間が生じないのでリークも発生せず、良好な分離特性が発揮できる中空糸膜モジュールが製造できる。
【0037】
また、本発明の製造方法によれば、帯状樹脂の厚み精度の良好な樹脂保有中空糸膜シートが簡略な方法で連続的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シート状に収束された中空糸膜を示す模式図である。
【図2】 樹脂保有中空糸膜シートを示す模式図である。
【図3】図2におけるA−A矢視を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の樹脂保有中空糸膜シートの製造方法に用いる装置を示す図である。
【図5】樹脂保有中空糸膜シートを用いて作製した矩形中空糸膜モジュールを示す模式図である。
【図6】樹脂保有中空糸膜シートを用いて作製した円筒形中空糸膜モジュールを示す模式図である。
【符号の説明】
1 シート状中空糸膜
2 中空糸膜
3 保持材
4 帯状熱可塑性樹脂
5 吐出ダイ
6,6’ 帯状溶融樹脂
7,7’ ヒーター
8,8’ ロール
9,9’ ロール
10,10’ ロール
11,11’ ベルト
12,12’ 冷却装置(冷却ブロック)
13,13’ ニップロール
14 樹脂保有中空糸膜シート
15 パッキン
16 ハウジング
17 芯材
Claims (1)
- 加熱された一対の走行ベルト上に熱可塑性樹脂を帯状に溶融押し出しする工程と、一対の走行ベルト上の帯状熱可塑性樹脂を対向させ、その間にシート状に収束された中空糸膜を供給し、帯状熱可塑性樹脂の融点以上の温度下に、シート状中空糸膜を挟み込んで帯状熱可塑性樹脂を貼り合わせる工程と、ベルト間に挟まれた状態で、帯状熱可塑性樹脂をその融点未満の温度へ冷却する工程と、ベルトから得られた樹脂保有中空糸膜シートを取り出す工程とを有することを特徴とする樹脂保有中空糸膜シートの製造方法。
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JP16111597A JP3808591B2 (ja) | 1997-06-18 | 1997-06-18 | 樹脂保有中空糸膜シートの製造方法 |
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