JP3807698B2 - 溝加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧シリンダやオイルダンパなどの油圧機器を構成するシリンダ体の内周面にバイパス路や圧抜き溝などとされる直線状の溝を形成する際に利用する溝加工装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧シリンダやオイルダンパなどの油圧機器にあっては、その構成部品たるシリンダ体の内周面にバイパス路や圧抜き溝などとされる直線状の溝を形成することがある。
【0003】
そして、この直線状の溝の形成手段としては、放電や電解による電気的な加工の他に、バイトを利用した切削加工があり、さらには、バルジや加工ローラを利用した変形加工があるが、この変形加工による場合には、切削加工および電気的な加工に比較して、加工時間が短くて済む点で有利となる。
【0004】
また、変形加工による場合でも、バルジを利用した場合と加工ローラを利用した場合とを比較すると、加工時間に関してはバルジを利用した場合の方が有利であるのに対して、溝の加工長さに制約を受けない点で加工ローラを利用した場合の方が有利となることが周知されている。
【0005】
さらに、加工ローラを利用して直線状の溝を形成する従来の溝加工装置としては、特公平2−7728号公報に開示のものの他に、たとえば、図8および図9に示すような構造のものがある。
【0006】
これについて少し説明すると、この溝加工装置は、長尺で横置きにされたシリンダ体Cの軸線方向に沿うようにこのシリンダ体C内の下半側に挿入載置されるガイド部材1と、このガイド部材1上をシリンダ体Cの軸線方向に転動しながらこのシリンダ体Cの上半側の内周面にこのシリンダ体Cの軸線方向に沿う溝C1(図8参照)を形成する加工ローラ2とを有してなる。
【0007】
そして、加工ローラ2は、いわゆる算盤玉状に形成されていて(図9参照)、回転軸3を中心にして回転するときに、すなわち、転動するときに、その周回する尖端2aでこれに相応する断面形状の溝C1を形成するように設定されてなるとしている。
【0008】
なお、加工ローラ2を軸支する回転軸3は、シリンダ体Cの外部に基端操作部(図示せず)が突出する操作ロッド4のいわゆる二股状に形成された先端部4aに連結されている。
【0009】
一方、ガイド部材1は、その上面の中央にこのガイド部材1の軸線方向に、すなわち、シリンダ体Cの軸線方向に沿うように形成された細幅の倣い溝1aを有しており、この倣い溝1a内に加工ローラ2の尖端2aを臨在させていわゆる倣い案内するように設定されている。
【0010】
ちなみに、図示するところでは、ガイド部材1の上面の中央にこのガイド部材1の軸線方向に沿うように広幅の断面凹状に形成された凹溝1bを有しており、この凹溝1bの下底部に倣い溝1aを形成すると共に、この凹溝1b内に操作ロッド4の先端部4aの下端を臨在させて左右動に対する規制溝としている。
【0011】
なお、操作ロッド4は、図示するところでは、いわゆる押し勝手になるように設定されているが、これに代えて、図8中に仮想線図で示すように、いわゆる引き勝手になるように設定されることもある。
【0012】
それゆえ、この図示した溝加工装置にあっては、加工ローラ2の尖端2aをガイド部材1に形成の倣い溝1aに臨在させながらシリンダ体Cの内周面に圧接させることで、加工ローラ2によってシリンダ体Cの内周面を外周側に膨出変形させることが可能になる。
【0013】
そして、この状態のまま、操作ロッド4を介して加工ローラ2を転動させることで、加工ローラ2が倣い溝1aに沿って転動することになり、シリンダ体Cの軸線方向の内周面に加工ローラ2の尖端2aの形状に相応した断面形状の所望の深さの溝C1を形成し得ることになる。
【0014】
また、このときに、加工ローラ2の転動ストロークの設定如何で所望の長さの溝C1を形成し得ることになり、また、加工ローラ2の径およびガイド部材1に形成の倣い溝1aの高さ位置や幅などを任意に設定することで、シリンダ体Cの内周面に倣い溝1aに応じた任意の深さの、また、連続する状態だけでなく間欠する状態の溝C1を形成することも可能になる。
【0015】
なお、操作ロッド4を介して加工ローラ2を転動させる、すなわち、加工ローラ2を移動側にするのに代えて、ガイド部材1側、すなわち、シリンダ体C側を移動側にしても同じ作用効果が得られる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した特公平2−7728号公報に開示の構造のものを含めて、図示した溝加工装置にあっては、以下のような不都合があることが指摘される。
【0017】
すなわち、この従来例としての溝加工装置では、加工ローラ2の転動時に、この加工ローラ2の周回する尖端2aがシリンダ体Cの内周面に圧接されるのはもちろんであるが、このときには、同時にガイド部材1の倣い溝1aにも圧接される状況になる。
【0018】
したがって、加工ローラ2の回転方向が、たとえば、図8中に矢印で示す方向とされるとき、この回転方向がシリンダ体Cに対していわゆる順方向となるに対して、ガイド部材1との間ではいわゆる逆方向となる。
【0019】
それゆえ、このときには、加工ローラ2の尖端2aが倣い溝1aの上縁を擦るような状況で転動することになり、その結果、加工ローラ2の尖端2aあるいは倣い溝1aのいずれかが、または、両方が摩耗することになり、爾後の再利用によるシリンダ体Cの内周面への設定通りの溝C1の形成を困難にする。
【0020】
そして、加工ローラ2の回転方向がいわゆる逆方向となる現象は、シリンダ体Cとの間でも出現される可能性があり、これが出現される場合には、加工ローラ2の尖端2aがシリンダ体Cの内周面を擦るようにして転動することになり、いわゆるカジリ動作で溝C1が形成されることになって、溝C1の形成の際に押し切り状態となってバリを発生させる不具合を招くことになる。
【0021】
また、加工ローラ2がシリンダ体Cおよびガイド部材1のいずれに対しても転動されなくなるような場合には、加工ローラ2の尖端2aが部分的に摩耗し、したがって、加工ローラ2の転動を一層期待できなくして、シリンダ体Cの内周面に設定通りの溝C1を形成し得なくすることにもなる。
【0022】
この発明は、上記した事情に鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、加工ローラの円滑な転動状態を恒久的に実現し得て、シリンダ体の内周面に設定通りの溝を形成加工するのに最適となる溝加工装置を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、この発明の構成を、基本的には、シリンダ体内に挿入載置されてシリンダ体の軸線方向に沿う平坦なガイド面を有するガイド部材と、このガイド部材のガイド面に載置されて外力作用でシリンダ体の軸線方向に移動可能とされるスライド部材と、このスライド部材に回転軸を介して連繋されて少なくともシリンダ体の径方向への相対変位を可能に支持される加工ローラと、この加工ローラを軸支する回転軸に先端部が連結されて基端操作部がシリンダ体の外部に延在される操作ロッドとを有してなるとする。
【0024】
このとき、通常は、シリンダ体は、横置きされてなり、したがって、ガイド部材は、シリンダ体内の下半側に挿入載置されることになり、このガイド部材の平坦なガイド面上に加工ローラを連繋させたスライド部材が摺動可能に載置される態様になる。
【0025】
そして、上記の構成において、より具体的には、スライド部材と加工ローラとの連繋状態は、加工ローラを回転可能に軸支する回転軸の両端をそれぞれ挿通させる適宜の長さと形状の一対の倣いガイド孔がスライド部材に形成されてなるとすると共に、この一対の倣いガイド孔の一端がガイド部材からシリンダ体の径方向に離れるように位置決められるのに対して他端がシリンダ体の径方向にガイド部材に近付くように穿孔されてなるとする。
【0026】
このとき、倣いガイド孔の一端と他端との間に適宜の長さの傾斜部が形成されてなるとするのが好ましい。
【0027】
そしてまた、上記の構成において、好ましくは、ガイド部材がガイド面の中央にシリンダ体の軸線方向に沿う平行な左右動規制溝を有してなると共にこの左右動規制溝内にスライド部材の下端に突設した突起部を摺動可能に嵌合させてなるとする。
【0028】
このとき、ガイド部材のガイド面あるいはこれに摺接するスライド部材の下面のいずれか一方にテフロンなどからなる滑り材が配在されてなるとしたり、ガイド部材のガイド面とスライド部材の下面との間に鋼球やニードルなどからなるベアリング部材が配在されてなるとしても良い。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明するが、図1および図2に示すように、この発明の一実施の形態による溝加工装置は、外観的には、前記の従来例としての溝加工装置と同様に、ガイド部材1と、加工ローラ2と、操作ロッド4とを有してなるが、実質的には、さらに、スライド部材5を有してなる点で差異がある。
【0030】
そして、このスライド部材5がガイド部材1の平坦なガイド面1c上に載置されて外力作用でシリンダ体Cの軸線方向に移動可能とされると共に、このスライド部材5に加工ローラ2が回転軸3を介して少なくともシリンダ体Cの径方向への相対変位を可能にするように連繋されてなるとしている点でさらなる差異がある。
【0031】
すなわち、まず、ガイド部材1は、横(縦でも可)置きされたシリンダ体C内に配在されて平坦なガイド面1cがシリンダ体Cの軸線方向に沿うように延在されてなるとするもので、図示する実施の形態では、たとえば、シリンダCの図1中で右側となる開口端(図示せず)側からシリンダ体C内に挿入載置される。
【0032】
このとき、ガイド部材1は、その下面たる湾曲面(符示せず)の曲率がシリンダ体Cの内周面の曲率に一致するように設定されてなる(図2参照)ことはもちろんであって、これによる湾曲面におけるいわゆる全面接触によってシリンダ体C内での回動が阻止されるとしている。
【0033】
ちなみに、このガイド部材1にあっては、図示しないが、シリンダ体C内に挿入載置される先端側に対する基端側がシリンダ体Cの外部に延在されていることもちろんであって、その場合に、シリンダ体Cが適宜の手段で他部に固定されるのと同様に、この基端側が適宜の駆動手段で他部に固定されていて、これによってシリンダ体C内での摺動移動を可能にする一方で回動が確実に阻止されるとしても良い。
【0034】
つぎに、スライド部材5は、上記したように、ガイド部材1のガイド面1cに載置されて外力作用でシリンダ体Cの軸線方向に摺動摺動可能とされているが、この場合に、ガイド部材1に対していわゆる偏芯することなく移動可能とされるように設定されている。
【0035】
すなわち、図示する実施の形態にあっては、ガイド部材1のガイド面1cの中央にシリンダ体Cの軸線方向に沿う左右動規制溝1bが形成されてなる一方で、この左右動規制溝1b内にスライド部材5の下端に突設した一対の突起部5aを摺動可能に嵌合させてなるとしており、これによって、ガイド部材1の平坦なガイド面1cでのスライド部材5の左右動や偏芯移動を阻止するとしている。
【0036】
なお、上記の突起部5aは、図示する実施の形態では、臍状に形成されて適宜の距離を有して一対に設けられてなるとしているが、これに代えて、図1中に仮想線図で示すように、一対の突起部5aが連続された状態となるリブ状に設定されてなるとしても良く、この場合には、その形成が容易となる一対の突起部5aに比較して、耐久性が保障される点で有利となる。
【0037】
一方、このスライド部材5にあっては、ガイド部材1の平坦なガイド面1cにおける摺動性が保障されるのが好ましく、図示しないが、たとえば、ガイド部材1のガイド面1cあるいはこれに摺接するスライド部材5の下面(符示せず)のいずれか一方にテフロンなどからなる滑り材が配在されてなるとしたり、ガイド部材1のガイド面1cとスライド部材5の下面との間に鋼球やニードルなどからなるベアリング部材が配在されてなるとするのが良い。
【0038】
そして、このスライド部材5は、前記したように、後述する加工ローラ2を回転軸3を介して少なくともシリンダ体Cの径方向への相対変位を可能にするように連繋させてなるとするが、そのために、同一形状に設定された適宜の長さと形状の一対の倣いガイド孔10を有している。
【0039】
少し説明すると、このスライド部材5は、図示する実施の形態では、図2に示すように、一対の立ち上り部5bを有して上端が開口する角U字状の断面形状を有するように形成されてなり、各立ち上り部5bに上記の倣いガイド孔10を有してなるとしている。
【0040】
そして、この倣いガイド孔10は、加工ローラ2を軸支する回転軸3の両端をそれぞれ摺動移動可能に挿通させるように形成されてなるのはもちろんのこと、この一対の倣いガイド孔10の図1中で左端となる一端が下方のガイド部材1からシリンダ体Cの径方向に離れる突出位置に位置決められるのに対して図1中で右端となる他端がシリンダ体Cの径方向にガイド部材1に近付く後退位置に位置決められてなるとしている。
【0041】
そしてまた、この倣いガイド孔10は、図示する実施の形態では、一端の突出位置と他端の後退位置との間に適宜の長さの傾斜部10aを有してなるとしている。
【0042】
それゆえ、この倣いガイド孔10にあっては、図1に示すように、回転軸3を操作ロッド4により倣いガイド孔10の一端に位置決め保持するときに、加工ローラ2を最上昇位置たる最突出位置に位置決め保持させることになる。
【0043】
そして、この倣いガイド孔10にあっては、図3に示すように、回転軸3を操作ロッド4により倣いガイド孔10の傾斜部10aに位置決め保持するときに、加工ローラ2を中間の任意の高さ状態に変化させることになり、また、図4に示すように、回転軸3を操作ロッド4により倣いガイド孔10の他端に位置決め保持するときには、加工ローラ2を最下降位置たる収納位置に位置決め保持させることになる。
【0044】
なお、上記のスライド部材5には、基端(図示せず)がシリンダ体Cの外部に突出する操作部5cの先端が一体に連設されていて(図1参照)、この操作部5cを介しての押し引きの外力作用でスライド部材5と加工ローラ2および操作ロッド4がガイド部材1上で一体的に摺動するように設定されている。
【0045】
上記のスライド部材5、すなわち、倣いガイド孔10に回転軸3を介して連繋される加工ローラ2は、前記した従来例としての加工ローラ2(図9参照)と同様に、いわゆる算盤玉状に形成されていて(図2参照)、回転軸3を中心にして回転するときに、すなわち、転動するときに、その周回する尖端2aでシリンダ体Cの内周面にこれに相応する断面形状の直線状の溝C1を形成し得るように設定されている。
【0046】
なお、加工ローラ2は、これが最上昇された状態に維持されるときに、その尖端2aがシリンダ体Cの内周面を外径側に所定の寸法で膨出させることになるように設定されているのはこともちろんである。
【0047】
また、加工ローラ2を軸支する回転軸3は、シリンダ体Cの外部に基端操作部(図示せず)が突出する操作ロッド4のいわゆる二股状に形成された先端部4aに連結されている。
【0048】
そして、この操作ロッド4における先端部4aは、前記したスライド部材5における一対の立ち上り部5bの間に挟持された状態のまま倣いガイド孔10に沿って移動可能に組み合わされている。
【0049】
なお、回転軸3に連繋の操作ロッド4およびスライド部材5に連設の操作部5cは、図示するところでは、それぞれがいわゆる引き勝手になるように設定されているが、これに代えて、図示するところと逆に配在されていわゆる押し勝手になるように設定されるとしても良いことはもちろんである。
【0050】
それゆえ、以上のように形成されたこの実施の形態による溝加工装置にあっては、加工ローラ2が所定の寸法を有するように設定されることを条件とするのはもちろんであるが、図1に示すように、最上昇位置に保持された加工ローラ2によってシリンダ体Cの内周面が外径側に最大限に膨出されることになり、したがって、この状態から加工ローラ2がスライド部材5のガイド部材1上での移動に伴って転動されることで、シリンダ体Cの内周面に所定の最大深さを有する直線状の溝C1を形成することになる。
【0051】
そして、回転軸3を介してであるが、操作ロッド4への外力作用で加工ローラ2を倣いガイド孔10の傾斜部10aに沿って徐々に下降させるとき、シリンダ体Cの内周面の外径側への膨出程度を徐々に低減させ得ることになり、溝C1の深さをその最大深さから徐々に浅くし得ることになる(図3参照)。
【0052】
さらに、操作ロッド4への外力作用で加工ローラ2を倣いガイド孔10に沿って最下降位置に保持させるようにするときには、シリンダ体Cの内周面から加工ローラ2の尖端2aを離脱させ得ることになり、シリンダ体Cの内周面への溝C1の形成を停止し得ることになる(図4参照)。
【0053】
したがって、たとえば、図1に示すように、加工ローラ2が最上昇した状態にあるときに、スライド部材5を図1中で右側に移動させるとき、その移動量に一致する長さの最大深さの直線状の溝C1を形成し得ることになる。
【0054】
そして、加工ローラ2を倣いガイド孔10の傾斜部10aに沿って徐々に下降操作させると共に、併せてスライド部材5をも図1中で右側に移動させるようにするときには、スライド部材5を移動させずして加工ローラ2を倣いガイド孔10の傾斜部10aに沿って下降させるのみの場合に比較して、溝C1の深さの可変部分のストロークを長くしてよりなだらかな傾斜状態で直線状の溝C1をその最大深さから徐々に浅くし得ることになる。
【0055】
そしてさらに、加工ローラ2の転動とスライド部材5の移動とを適宜に組み合わせることで、深さや長さが区々となる種々の態様の溝C1をシリンダ体Cの内周面に形成し得ることにもなる。
【0056】
たとえば、図1に示す状態から加工ローラ2を停止状態にしたままスライド部材5をガイド部材1上で図中左側に移動させると、すなわち、スライド部材5を加工ローラ2に対していわゆる相対移動させるようにすると、加工ローラ2がその場で倣いガイド10に沿って下降することになり、その結果、図示しないが、一定の深さの溝C1が所望の長さに形成されることになる。
【0057】
以上のように、この発明による溝加工装置にあっては、前記した従来例の溝加工装置とは異なって、加工ローラ2がガイド部材1上を直接転動するようには構成していないから、加工ローラ2の転動に伴うガイド部材1との間での干渉が危惧されなくなり、加工ローラ2の円滑な転動が保障されるのはもちろんのこと、たとえば、加工ローラ2のいたずらな摩耗を回避できて耐久性を向上できることになる。
【0058】
このとき、加工ローラ2は、これに操作ロッド4が連繋されてなることから、この操作ロッド4を押し勝手あるいは引き勝手のいずれか一方の操作で自由に所定の突出位置に保持することが可能になる。
【0059】
また、この溝加工装置にあっては、加工ローラ2は、スライド部材5に保持されると共に、このスライド部材5がガイド部材1の平坦なガイド面1c上を摺動移動可能に構成しているから、構成が簡単になり、図示しないが、たとえば、加工ローラ2を保持する摺動部材が補助ローラたる転動ローラを介してガイド部材の倣いガイド面となるカム面に対して移動可能に設定して加工ローラ2の転動を保障する場合に比較して、転動ローラを不要にして部材点数の削減が可能になるのはもちろんのこと、シリンダ体Cの内径の実際を勘案すると、小形にしてその具現化が容易に可能になる点でも有利となる。
【0060】
このとき、スライド部材5は、操作部5cが連設されてなるとするから、この操作部5cを押し勝手あるいは引き勝手のいずれか一方の操作を加えて溝C1の長さに関する自由な外力作用を実行できることになる。
【0061】
また、スライド部材5は、ガイド部材1に対して偏芯することなく摺動移動するように設定されているから、操作部5cへの所定の外力作用で所定通りにガイド部材1上を移動させることが可能になる。
【0062】
そして、この溝加工装置にあっては、加工ローラ2の転動時にこれをシリンダ体Cの径方向に変位させて深さの異なる溝C1を形成する場合には、前記した従来例のように加工ローラ2を直接ガイド部材1上で転動させる場合はもちろんのこと、上記したように転動ローラを介してガイド部材のカム面に対して移動可能に設定する場合でも、ガイド部材1が直接倣い型として設定されることになるから、所望の溝C1を形成加工する際には、その溝形状に則した倣い型となるガイド部材が必要になり、多種多様のガイド部材を準備しなければならなくなる。
【0063】
これに対して、この発明では、加工ローラ2が回転軸3を介してであるが、スライド部材5に形成された倣いガイド孔10に沿って任意移動操作可能に設定されていると共に、このスライド部材5がガイド部材1の平坦なガイド面1cに対して摺動移動可能とされているだけであるから、加工ローラ2の突出操作およびスライド部材5の移動操作を適宜に選択して組み合わせることで、種々の態様の溝C1を言わば自由に形成することが可能になり、しかもガイド部材1は一つで済むことになる。
【0064】
すなわち、単に、加工ローラ2を倣いガイド孔10に沿って移動保持させて、あるいは移動させながらスライド部材5を移動させることにより、加工ローラ2の倣いガイド孔10における位置に基づく深さの溝C1をスライド部材5がストロークした長さに形成加工できる。
【0065】
そして、加工ローラ2を倣いガイド孔10に沿って移動させながらスライド部材5をも移動させるようにすることで、深さを自在に変更しながらこの可変部分の深さも所望の長さの溝C1に形成加工できる。
【0066】
以上からすれば、加工ローラ2は、回転軸3を介してスライド部材5に形成した倣いガイド孔10に連繋されて少なくともシリンダ体Cの径方向への変位を操作可能にするように設定されていれば足りることになる。
【0067】
したがって、倣いガイド孔10については、これが、たとえば、図5に示すように、図中で上下方向に延在されるように形成され、しかも、加工ローラ2を最上昇位置たる突出位置に維持し得る一端と加工ローラ2を最下降位置たる後退位置に維持し得る他端を有するように設定されていて、前記した傾斜部10aを有しないように設定されてなるとしても良いことになる。
【0068】
ただ、このように倣いガイド孔10をいわゆる突出位置と後退位置の二位置を有するのみに設定する場合には、中間の深さの溝C1を形成することがかなり困難になる。
【0069】
そこで、倣いガイド孔10については、基本的には、図1に示すように、突出位置たる一端と後退位置たる他端との間に適宜の長さの傾斜部10aを有するように設定されるのが好ましく、また、最大深さの溝C1を一定寸法に設けることが自明である場合には、図6に示すように、一端たる突出位置の保持部として平坦部10bを延設させるようにするのが好ましいことになる。
【0070】
そして、スライド部材5に連設される操作部5cが、たとえば、前述したように引き勝手に設定されるのに代えて、押し勝手に設定される場合には、図7に示すように、倣いガイド孔10の形状態様が前記したところと反対になるように設定し、加工位置の保持力が少なくなるようにしても良い。
【0071】
なお、前記したところは、操作ロッド4を介して加工ローラ2を操作して突出位置を位置決め、また、操作部5cを介してスライド部材5を移動させる、すなわち、加工ローラ2またはスライド部材5を移動側に設定しているが、これに代えて、ガイド部材1側たるシリンダ体C側を移動側にしても同じ作用効果が得られるのはもちろんのことである。
【0072】
【発明の効果】
以上のように、この発明にあっては、加工ローラがガイド部材上を直接転動しないから、加工ローラの転動に伴うガイド部材との間の干渉がなく、それゆえ、加工ローラの円滑な転動が保障されるのはもちろんのこと、たとえば、加工ローラのいたずらな摩耗を回避できて耐久性を向上できる。
【0073】
また、この発明にあっては、加工ローラがスライド部材にシリンダ体の径方向に相対変位操作自在に保持されると共に、このスライド部材がガイド部材の平坦なガイド面上を摺動するから、加工ローラの円滑な転動を保障するための構成が簡単になり、たとえば、加工ローラを保持する摺動部材を補助ローラたる転動ローラを介してガイド部材の倣いガイド面たるカム面に対して移動可能に設定する場合に比較して、部材点数の削減が可能になるのはもちろんのこと、シリンダ体の内径の実際を勘案しても、小形にしてその具現化が容易に可能になる。
【0074】
そして、加工ローラの転動時にこれをシリンダ体の径方向に相対変位させて深さの異なる溝を形成加工する場合に、たとえば、加工ローラを直接ガイド部材上で転動させる場合はもちろんのこと、転動ローラを介してガイド部材のカム面に対して移動可能に設定する場合でも、ガイド部材が直接倣い型として設定される関係上、所望の溝を種々形成する際には、その種々の加工形状に則した倣い型となるガイド部材が種々に必要になり、多種多様の倣い型としてのガイド部材を準備しなければならなくなるが、この発明にあっては、加工ローラが回転軸を介してであるが、スライド部材に形成された倣いガイド孔に沿って移動操作可能に設定されていると共に、このスライド部材がガイド部材の平坦なガイド面に対して相対移動可能とされているから、加工ローラの突出操作およびスライド部材の移動操作を適宜に選択して組み合わせることで種々の態様の溝を形成加工し得ることになる。
【0075】
すなわち、加工ローラを倣いガイド孔に沿って移動させる場合には、その倣いガイド孔に則した溝を形成加工でき、加工ローラの移動を停止させながらスライド部材を移動させる場合には、加工ローラの倣いガイド孔における位置に基づく深さの溝をスライド部材がストロークした長さに形成加工でき、加工ローラを倣いガイド孔に沿って移動させながらスライド部材をも移動させる場合には、深さを自在に変更しながらこの可変部分の長さを所望の長さとする溝を言わば自由に形成できる。
【0076】
その結果、この発明によれば、加工ローラの円滑な転動状態を恒久的に実現し得ると共に、シリンダ体の内周面に設定通りの直線状の溝を形成するに最適となり、さらには、その具現化にあって、従来から提案のものに比較して、小形にして、しかも部品の共通化と部品点数の削減が可能になり、コストを低くしてその汎用性の向上を期待するのに最適となるなど、幾多の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態による溝加工装置の利用状態を示す部分縦断面図である。
【図2】図1中のY−Y線で示す縦断面図である。
【図3】スライド部材に対して加工ローラが中間位置に下降した状態を図1と同様に示す図である。
【図4】スライド部材に対して加工ローラが最下降した状態を図1と同様に示す図である。
【図5】他の実施の形態による倣いガイド孔を回転軸および加工ローラと共に示す図である。
【図6】さらに他の実施の形態による倣いガイド孔を図5と同様に示す図である。
【図7】この発明の他の実施の形態による溝加工装置の利用状態を図1と同様に示す図である。
【図8】従来例としての溝加工装置の利用状態を図1と同様に示す図である。
【図9】図8中のY−Y線で示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ガイド部材
1b 左右動規制溝
1c ガイド面
2 加工ローラ
2a 尖端
3 回転軸
4 操作ロッド
4a 先端部
5 スライド部材
5a 突起部
5b 立ち上り部
5c 操作部
10 倣いガイド孔
10a 傾斜部
10b 平坦部
C シリンダ体
C1 溝
Claims (3)
- シリンダ体内に挿入載置されてシリンダ体の軸線方向に沿う平坦なガイド面を有するガイド部材と、このガイド部材のガイド面に載置されて外力作用でシリンダ体の軸線方向に移動可能とされるスライド部材と、このスライド部材に回転軸を介して連繋されて少なくともシリンダ体の径方向への相対変位を可能に支持される加工ローラと、この加工ローラを軸支する回転軸に先端部が連結されて基端操作部がシリンダ体の外部に延在される操作ロッドとを有してなることを特徴とする溝加工装置
- スライド部材に加工ローラを軸支する回転軸の両端をそれぞれ挿通させる適宜の長さの一対の倣いガイド孔が形成されてなると共に、この一対の倣いガイド孔の一端がガイド部材から離れるように位置決められるのに対して他端がガイド部材に近付くように位置決められてなる請求項1の溝加工装置
- ガイド部材がガイド面の中央にシリンダ体の軸線方向に沿う左右動規制溝を有してなると共にこの左右動規制溝内にスライド部材の下端に突設した突起部を摺動可能に嵌合させてなる請求項1の溝加工装置
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JP29780197A JP3807698B2 (ja) | 1997-10-15 | 1997-10-15 | 溝加工装置 |
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JP29780197A JP3807698B2 (ja) | 1997-10-15 | 1997-10-15 | 溝加工装置 |
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JPH11123467A JPH11123467A (ja) | 1999-05-11 |
JP3807698B2 true JP3807698B2 (ja) | 2006-08-09 |
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Family Applications (1)
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JP29780197A Expired - Fee Related JP3807698B2 (ja) | 1997-10-15 | 1997-10-15 | 溝加工装置 |
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JP (1) | JP3807698B2 (ja) |
-
1997
- 1997-10-15 JP JP29780197A patent/JP3807698B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11123467A (ja) | 1999-05-11 |
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