JP3807175B2 - 高層ダブルチューブ架構の制振装置 - Google Patents

高層ダブルチューブ架構の制振装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、外周チューブ架構と、内周チューブ架構との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の振動制御を行う制振装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来一般のダンパーは、架構全体が剪断変形することを前提として減衰性能を発揮するものであり、高層建物の場合に卓越する曲げ変形に対しては制振効果を発揮できない。
【0003】
そこで従来、曲げ剪断変形する高層建物の振動制御は、建物の頂部にマスダンパーを設置する方法が一般的に実施されてきた。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
マスダンパーによる振動制御の方法は、高層建物の曲げと剪断を同時に制御可能である。しかし、建物の耐震安全性を改善するためには非現実的な大きさのマス重量となるため、専ら強風時の振動制御による居住性の改善に使用されてきたのが実情である。即ち、耐震安全性の改善を目的として高層建物の曲げ剪断振動の制御が可能な制振装置は未だ実現していないというのが現状である。
【0005】
本発明の目的は、外周チューブ架構と、内周チューブ架構との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の曲げ剪断振動の制御を、従来一般のダンパーを使用して行う制振装置を提供することである。
【0006】
本発明の次の目的は、図8のように曲げ剪断変形が卓越する高層ダブルチューブ架構の変形は、建物頂部へ行くにしたがい蓄積して平面位置における両端の上下変形として大きく現れる現象を利用するため、前記上下の変形をダンパー用の軸変形ないし水平変形に変換して振動制御を行う構成の制振装置を提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、図8のように曲げ剪断変形が卓越する高層ダブルチューブ架構の曲げ変形は、同建物の中層階よりも下方部において発生する場合があるので、そのような部位にも、前記上下変形をダンパー用の軸変形ないし水平変形に変換して振動制御を行う制振装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る高層ダブルチューブ架構の制振装置は、外周チューブ架構1と内周チューブ架構2との組み合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
高層ダブルチューブ架構の曲げ剪断変形が顕著に現れる頂部間を結合するハットトラス3をアトリウム屋根トラス架構として設けると共に、前記ハットトラス3において高層ダブルチューブ架構の両側に発生する上下変形を軸変形に変換するように前記ハットトラス3の下弦材3bの両端とピン5で結合した斜材3aに、その軸変形を利用して減衰動作する履歴ダンパー又は粘性体ダンパー4が設置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明に係る高層ダブルチューブ架構の制振装置は、外周チューブ架構1と内周チューブ架構2との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
高層ダブルチューブ架構の頂部間を結合するハットトラス3に高層ダブルチューブ架構の両側に発生する上下変形を水平な平行運動に変換する平行リンク機構6を形成する上下の水平リンク8、9が、内周チューブ架構2の柱の延長材7とピン10で連結されて平行四辺形を形成するように併設され、前記上下の水平リンク8、9間に両者の相対的な平行運動を利用して減衰動作する粘性体壁ダンパー11が設置され、又は前記平行リンク機構6の対角線方向に2本のオイルダンパー12、12がピン10で連結して設置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明に係る高層ダブルチューブ架構の制振装置は、外周チューブ架構1と内周チューブ架構2との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
高層ダブルチューブ架構において曲げ剪断変形が卓越して現れる中層階の位置に、空所(ボイド)を利用して、両側の内周チューブ架構2、2間を繋ぐ上下の水平リンク13、13が平行四辺形リンク機構を形成するように両端をピン10で連結して設置され、該上下の平行リンク13、13の間に、上下の平行リンク13、13の相対的な平行運動を利用して減衰動作する粘性体壁ダンパー11が設置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明に係る高層ダブルチューブ架構の制振装置は、外周チューブ架構1と内周チューブ架構2との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
高層ダブルチューブ架構において曲げ剪断変形が卓越して現れる中層階の位置に、空所(ボイド)を利用して、両側の内周チューブ架構2、2間を平行四辺形リンク機構の各頂点位置を対角線方向に繋ぐ2本のオイルダンパー12、12が両端をピン10で連結して設置され、両側の内周チューブ架構2、2間に曲げ剪断変形により発生する相対的な平行運動を利用してオイルダンパー12、12が減衰動作する構成であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載した発明に係る高層ダブルチューブ架構の制振装置は、図1または図8を参照できるように、外周チューブ架構1と、内周チューブ架構2との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の振動制御を、従来一般のダンパーを使用して行う制振装置として好適に実施される。
【0014】
具体的には、高層ダブルチューブ架構の曲げ変形が顕著に現れる高さ位置に、内周チューブ架構2に囲まれた空所(ボイド)を利用して制振装置が設置される。前記空所(ボイド)は通常建物のコア部として利用されるところでもある。制振装置は、高層ダブルチューブ架構の曲げ変形と直角な面(図8の紙面と平行な面)の両側に発生する上下変形δを許容し(または前提として)、その上下変形をダンパー作用のための変形に変換して減衰する構成であることを特徴とする。
【0015】
図1は、具体的に請求項記載の発明の実施形態を示している。
【0016】
この制振装置は、高層ダブルチューブ架構の曲げ剪断変形は、架構内では柱の軸変形として現れ、その変形は架構の頂部へ行くにしたがい蓄積して、平面位置における両端の上下変形が大きく現れる現象に着目して、高層ダブルチューブ架構の頂部間を結合するハットトラス3を、例えばアトリウム屋根トラス架構として設けている。そして、前記ハットトラス3において高層ダブルチューブ架構の頂部に発生する上下変形(図8のδを参照)を許容し、その上下変形をトラス材3a(斜材)の軸変形に変換する構成とし、その軸変形を利用して減衰するダンパー4が設置されていることを特徴とする。
【0017】
高層ダブルチューブ架構の頂部に発生する上下変形をトラス材3aの軸変形に変換する手段として、図1に示したハットトラス3は、その下弦材3bの両端を前記斜材3aの下端と共に、両側の外周チューブ架構1、1の外周近傍位置にピン5で接合されている。
【0018】
ダンパー4には、斜材3aの軸変形を利用して減衰する構成の履歴ダンパーまたは粘性体ダンパーを使用する。
【0019】
したがって、地震時の水平力により高層ダブルチューブ架構の頂部に図3及び図4に象徴的に示したような曲げ剪断変形に伴う上下変形を生ずると、斜材3aに卓越した軸変形が発生し、それによってダンパー4が減衰動作をして振動制御と耐震安全性を改善する目的が達成されるのである。
【0020】
図2と図3は、請求項記載の発明の実施形態を示している。
【0021】
この制振装置は、高層ダブルチューブ架構の頂部間を結合するハットトラス3を設ける。前記ハットトラス3には、高層ダブルチューブ架構の頂部に発生する上下変形を水平な平行運動に変換する平行リンク機構6がボイド部分に併設されている。即ち、内周チューブ架構2、2の柱の延長部材7、7と上下の水平リンク8、9とがピンヒンジ10で連結され、平行四辺形を形成している。前記上下の平行運動する水平リンク8と9の間に、両者の相対的な平行運動を利用して減衰するダンパーとして、図示例の場合は粘性体壁ダンパー11が設置されている。粘性体壁ダンパー11における外側の壁型容器11aは下側の水平リンク9に固定され、内側の抵抗板11bの上端は上側の水平リンク8に接合されている。
【0022】
したがって、地震時の水平力により高層ダブルチューブ架構の頂部に曲げ剪断変形に伴う上下変形が発生すると、図3に例示したように、ハットトラス3のボイド部に併設した平行リンク機構6において、上下の水平リンク8、9の間に、変換された水平変形を生ずる。よって、上下の水平リンク8、9間の相対的な水平変形によって粘性体壁ダンパー11が作動して減衰機能が発揮される。
【0023】
図4は、異なる実施形態を示す。この実施形態も、高層ダブルチューブ架構の頂部間を結合するハットトラス3を設けると共に、前記ハットトラス3において高層ダブルチューブ架構の頂部に発生する上下変形を水平な平行運動に変換する平行リンク機構6がボイド部分に併設されている。平行リンク機構6の対角線方向に2本のダンパー12、12をブレースのように配置し、それぞれの両端をピン10を共通に使用して連結した構成とされている。ダンパー12には、軸変形を利用して減衰する、例えばオイルダンパーが好適に使用される。
【0024】
本実施形態の場合は、水平力による平行リンク機構の変形動作に伴う対角線方向の伸縮変形を利用してダンパー12の減衰作用が奏されるのである。
【0025】
図5は、請求項記載の発明の実施形態を示している。
【0026】
この制振装置は、曲げ剪断変形が卓越する高層ダブルチューブ架構の曲げ変形は、同架構の頂部のみならず中層階よりも下方部に発生する場合のあることを考慮して、中層階より下方の変形が卓越して現れる部分に設置したことを特徴とする。
【0027】
即ち、高層ダブルチューブ架構において曲げ剪断変形が卓越して現れる中層階の位置に、空所(ボルド)を利用して、両側の内周チューブ架構2、2の間を、平行四辺形リンク機構を形成するように繋ぐ上下の水平リンク13、13が設置されている。前記上下の平行リンク13、13の間に、上下の平行リンク13、13の相対的な平行運動を利用して減衰動作するダンパー11を設置した構成である。したがって、図2、図3の実施例と共通する構成でもある。
【0028】
本実施例の場合、ダンパー11には、粘性体壁ダンパーを好適に使用できる。よって、奏する作用効果も、上記図2の実施例と類似する。
【0029】
次に、図6は、請求項記載の発明の実施形態を示す。
【0030】
本実施形態も、高層ダブルチューブ架構の中層階よりも下方部において曲げ剪断変形が卓越して発生する場合のあることを考慮した構成であり、図4の実施形態と類似する構成である。
【0031】
即ち、高層ダブルチューブ架構において曲げ剪断変形が卓越して現れる中層階の位置に、空所(ボイド)を利用して、両側の内周チューブ架構2、2の間を平行四辺形リンク機構の各頂点相当位置を対角線方向に繋ぐ2本のダンパー12、12をその両端をピン10により連結して設置して減衰する構成である。ダンパー12には、やはり軸変形を利用して減衰動作するオイルダンパーを好適に使用できるのである。
【0032】
最後に図7は、高層ダブルチューブ架構の地震応答解析をした結果を示す。図中の特性(a)は制振装置なしの場合で、特性(b)は図1の実施形態の制振装置に係るもの、特性(c)は図2に示す実施形態の地震応答解析の結果を示している。従来の応答特性(a)に比べて、本発明の応答特性(b)、(c)は地震応答を20から30%低減できることが理解される。
【0033】
【本発明が奏する効果】
請求項1〜4に記載した発明に係る高層ダブルチューブ架構の制振装置は、高層ダブルチューブ架構の曲げ剪断変形の振動制御と耐震安全性の改善を、既存する従来一般のダンパーを使用して行うことを可能ならしめる。
【0034】
とりわけ請求項1ないし記載の発明は、高層ダブルチューブ架構の曲げ剪断変形が、建物頂部へ行くにしたがい蓄積して平面位置における両端の上下変形として大きく現れる現象を利用して、それをダンパー動作用の軸変形ないし水平変形に変換して振動制御と耐震安全性を改善する制振装置を提供する。
【0035】
請求項3、4記載の発明は、曲げ剪断変形が卓越する高層ダブルチューブ架構の曲げ変形が、同建物の中層階よりも下方部に発生する場合のあることを考慮して、そのような部位の上下変形を、やはりダンパー動作用の軸変形ないし水平変形に変換して振動制御と耐震安全性を改善する制振装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示した主要部の立面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示した主要部の立面図である。
【図3】図2の制振装置の稼働状況を説明した立面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を示した主要部の立面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態を示した主要部の立面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態を示した主要部の立面図である。
【図7】本発明の制振装置を備えた架構と備えない架構の地震応答解析の結果を示す特性図である。
【図8】高層ダブルチューブ架構の剪断曲げ変形の説明図である。
【符号の説明】
1 外周チューブ架構
2 内周チューブ架構
δ 上下の変位
3 ハットトラス
3a トラス材(斜材)
4 ダンパー
8、9 水平リンク
11 ダンパー
13 水平リンク

Claims (4)

  1. 外周チューブ架構と、内周チューブ架構との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
    高層ダブルチューブ架構の曲げ剪断変形が顕著に現れる頂部間を結合するハットトラスをアトリウム屋根トラス架構として設けると共に、前記ハットトラスにおいて高層ダブルチューブ架構の両側に発生する上下変形を軸変形に変換するように前記ハットトラスの下弦材の両端とピンで結合した斜材に、その軸変形を利用して減衰動作する履歴ダンパー又は粘性体ダンパーが設置されていることを特徴とする、高層ダブルチューブ架構の制振装置。
  2. 外周チューブ架構と、内周チューブ架構との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
    高層ダブルチューブ架構の頂部間を結合するハットトラスに高層ダブルチューブ架構の両側に発生する上下変形を水平な平行運動に変換する平行リンク機構を形成する上下の水平リンクが、内周チューブ架構の柱の延長材とピン連結して平行四辺形を形成するように併設され、前記上下の水平リンク間に両者の相対的な平行運動を利用して減衰動作する粘性体壁ダンパーが設置され、又は前記平行リンク機構の対角線方向に2本のオイルダンパーがピン連結により設置されていることを特徴とする、高層ダブルチューブ架構の制振装置。
  3. 外周チューブ架構と、内周チューブ架構との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
    高層ダブルチューブ架構において曲げ剪断変形が卓越して現れる中層階の位置に、空所(ボイド)を利用して、両側の内周チューブ架構間を繋ぐ上下の水平リンクが平行四辺形リンク機構を形成するように両端をピン連結して設置され、該上下の平行リンク間に、上下の平行リンクの相対的な平行運動を利用して減衰動作する粘性体壁ダンパーが設置されていることを特徴とする、高層ダブルチューブ架構の制振装置。
  4. 外周チューブ架構と、内周チューブ架構との組合わせから成る高層ダブルチューブ架構の制振装置であって、
    高層ダブルチューブ架構において曲げ剪断変形が卓越して現れる中層階の位置に、空所(ボイド)を利用して、両側の内周チューブ架構間を平行四辺形リンク機構の各頂点位置を対角線方向に繋ぐオイルダンパーが両端をピン連結して設置され、両側の内周チューブ架構間に曲げ剪断変形により発生する相対的な平行運動を利用してオイルダンパーが減衰動作する構成であることを特徴とする、高層ダブルチューブ架構の制振装置。
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