JP3807022B2 - モータ制御装置およびモータ制御方法 - Google Patents

モータ制御装置およびモータ制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車等の駆動モータに好適なモータ制御の技術分野に属し、より詳しくは、三相交流モータをはじめとする多相交流モータを駆動するインバータを制御する制御技術の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の技術は多用途であり、電気自動車の駆動モータの制御用に限定されるものではないが、説明の便宜上で電気自動車を例にとって背景を説明する。
電気自動車の駆動用モータの場合、同モータの負荷は走行条件によって大幅に変化する。それゆえ、駆動用モータが過負荷状態になり、インバータのスイッチング素子の熱的限界等によって定められている設定電流値(電流の安全上限)を越えてインバータの出力電流が流れ、インバータが過電流状態になる場合もあり得る。このように過電流状態になった場合には、従来技術ではインバータに過電流防止装置が組み込まれており、過電流防止装置によって直ちにスイッチングをオフにされる。その結果、インバータのスイッチング素子の出力電流はゼロになり、もってスイッチング素子の過電流ないし過熱による破壊が防止されている。
【0003】
具体的な従来技術としては、例えば特公平07−055055号公報に公告されているモータ駆動用インバータの過電流保護技術がある。
この従来技術では、三相交流モータを駆動しているインバータの出力電流が過電流状態になった場合、同インバータの制御系はフィードバックをして、直ちにスイッチングをオフにしインバータの出力電流をゼロにする。すると、インバータが過電流状態から脱出し、再びスイッチングを開始して出力電流が立ち上がる。その結果、また過電流に陥って出力電流がゼロになって、出力電流が断続的に出力される状態が繰り返されるという現象がおこる。この現象のことを、制御工学では非線形システムがリミットサイクルに陥っていると表現するが、出力電流が断続的に出力されモータの出力も安定しないので、好ましいことではない。
【0004】
上記従来技術ではその対策として、電流制限値を設定している。すなわち、インバータの出力電流がこの電流制限値を越えると、その越えている偏差分がその極性と共に検出され、この偏差分およびその極性とに応じて、インバータへの出力電圧指令値が補正されている。この補正によりフィードバックループが形成されて出力電流が制限され、その結果、出力電流を断続させることなく連続した出力電流の制御が行われている。
【0005】
すなわち、トルク指令値に応じた電流指令値と実電流値との電流偏差に基づいてインバータの出力電圧が制御されており、電流指令値と実電流とが一致するようにインバータの出力電流がフィードバック制御されている。その結果、従来技術によっても、比較的高精度なモータ制御が実現されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前述の従来技術では、インバータの過電流防止制御による出力電流の制限が作動した場合に、フィードバック制御とは別にインバータの出力電圧が制御される。それゆえ、インバータの出力電流すなわちモータの実電流値と電流指令値との間に、偏差が増大する傾向にある。その結果、さらにフィードバック制御が強く作用するので、フィードバック制御による出力電流制限と本来のインバータの電流制限とが互いに干渉を起こしてしまい、リミットサイクルに陥って制御不能になることがあるという問題点を内包していた。
【0007】
そこで本発明は、インバータに組み込まれた過電流防止装置等の保護機能が作動する場合にも、あるいはフィードバック制御とは別にインバータの出力電圧が制限される場合にも、本来のフィードバック制御との間で干渉が起きないようにすることを課題とする。すなわち本発明は、フィードバック制御ループと他の制御ループとの干渉によるリミットサイクルに陥ることが防止されており、より安定にインバータの出力電流を制御することができるモータ制御装置およびモータ制御方法を提供することを、解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明した。
(第1手段)
本発明の第1手段は、請求項1記載のモータ制御装置である。
本手段では、インバータで出力電流(モータ駆動電流)に過電流が検出されると、電流検出手段からの電流信号を電流制御マイクロコンピュータにフィードバックするフィードバック信号ラインのフィードバックゲインが、低減されるかゼロに設定される。すなわち、過電流が検出された場合には、過電流制限手段の作用とフィードバック信号ラインの作用とが互いに干渉しないように、フィードバック信号ラインの作用が低減ないし停止される。その結果、インバータの過電流制限手段とフィードバック信号ラインのフィードバック制御とが干渉して、リミットサイクルに陥ることが防止される。
【0009】
したがって本手段によれば、過電流制限手段とフィードバック制御との干渉が防止されるので制御不能に陥ることがなくなり、過電流が検出された場合にも適正なインバータの出力制御を続けることができるという効果がある。
(第2手段)
本発明の第2手段は、請求項2記載のモータ制御方法である。
【0010】
本手段では、インバータの出力電流に過電流信号が発生した場合に、駆動電流フィードバックステップと過電流制限ステップとの間での干渉を防止するデカップリング制御ステップが作用する。すなわち、駆動電流フィードバックステップでのフィードバックゲインが、駆動電流フィードバックステップと過電流制限ステップとの間での干渉が起こらないように、調整される。
【0011】
したがって本手段によれば、駆動電流フィードバックステップと過電流制限ステップとの間での干渉が防止されるので、干渉によってインバータ/モータ系が制御不能に陥ることが防止される。その結果、過電流時にも適正なモータ制御を続けることが可能になるという効果がある。
(第3手段)
本発明の第3手段は、請求項3記載のモータ制御方法である。
【0012】
本手段では、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生した場合にフィードバックゲインはゼロに調整され、フィードバックステップで作用するフィードバック信号ラインの接続が断たれる。それゆえ、駆動電流フィードバックステップと過電流制限ステップとの間での干渉は完全に防止される。
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、干渉により制御不能に陥ることは完全に防止されており、モータの制御安定性やモータ制御の信頼性が高いという効果がある。
【0013】
(第4手段)
本発明の第4手段は、請求項4記載のモータ制御方法である。
本手段では、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が所定時間発生し続けた場合にフィードバックゲインはゼロに調整される。すなわち、本手段では、フィードバックゲインがゼロに設定されるには、所定時間の過電流の検出が必要であり、所定時間に満たない瞬時の過電流信号は無視される。これは、実際のインバータを含むモータ制御装置においては、各所においてなにがしかのノイズが発生しており、このノイズによって誤って過電流信号が発生してしまうことによるデカップリング制御ステップの作動を防止する目的である。すなわち、本手段では、ノイズ等による短時間の過電流信号によって生じるデカップリング制御ステップの誤作動が防止されている。
【0014】
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、ノイズ等によるデカップリング制御ステップの誤作動が防止されているので、同誤動作によるモータの制御精度の低下が防止されるという効果がある。
(第5手段)
本発明の第5手段は、請求項5記載のモータ制御方法である。
【0015】
本手段では、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生した場合にフィードバックゲインは漸減されるので、短時間の過電流信号によってはあまりモータの制御精度は低下しない。それゆえ、ノイズ等によるデカップリング制御ステップの誤作動が起きても、短時間であればあまりフィードバックゲインは低減せず、誤動作の影響はほとんど無くなる。また、過電流信号が無くなった段階でフィードバックゲインの漸減が停止するので、必要以上にフィードバックゲインが低減されることは防止されており、モータの制御精度の低下も必要以上には起こらないでモータ制御は安定する。
【0016】
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、ノイズ等によるデカップリング制御ステップの誤作動の影響を抑制できるとともに、過電流時にも比較的高出力でモータを安定に制御し続けることができるという効果がある。
(第6手段)
本発明の第6手段は、請求項6記載のモータ制御方法である。
【0017】
本手段では、デカップリング制御ステップにおいて、過電流が発生した場合に電流指令(目標電流)は漸減される。すなわち本手段では、上記第2手段の効果によって過電流時にもモータ制御を続けることが可能であるばかりではなく、ここでさらに電流指令(目標電流)を漸減することにより、モータは過電流から脱出することが可能になる。また、過電流信号がなくなった段階で電流指令値を通常のレベルにまで徐々に回復させるので、必要以上に電流指令値が低下することは防止されており、その結果、モータの出力低下が必要以上に起こることもなく過電流状態を解消することができる。
【0018】
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、モータを比較的高出力の状態に保ったままで過電流状態を解消できると共に、過電流状態ないしその付近の状態領域でも、モータを安定に制御し続けることができるという効果がある。
(第7手段)
本発明の第7手段は、請求項7記載のモータ制御方法である。
【0019】
本手段では、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生してからフィードバックゲインがゼロに調整されるまでの間は、駆動電流フィードバックステップでの電流偏差が、強制的に抑制された所定値に設定される。すなわち、フィードバックゲインがゼロに設定されるまでの時間には、電流偏差が強制的に所定値に設定されて抑制されているので、フィードバック信号ラインの影響がなくなり、実質的にフィードバック信号ラインの接続が断たれている。それゆえ、駆動電流フィードバックステップと過電流ステップとの間での干渉は完全に防止される。また、通常のフィードバック制御からオープンループ制御へ移行するまでの切替えの間に、一段階中間的な制御段階が挿入されるので、よりスムーズに制御の切替えが実行される。
【0020】
したがって本手段によれば、前述の第3手段と同様に干渉によって制御不能に陥ることが完全に防止されているばかりではなく、フィードバック制御からオープンループ制御への切替えがよりスムーズに行われるという効果がある。
【0021】
【発明の実施の形態および実施例】
本発明のモータ制御装置およびモータ制御方法の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得らえるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。[実施例1]
(実施例1の構成)
本発明の実施例1としてのモータ制御装置は、電気自動車駆動用の三相交流誘導モータ1のモータ制御装置であり、図1に示すように、大きく分けて電気自動車用制御装置9およびインバータ3とから構成されている。電気自動車用制御装置9の周辺には、電流検出手段(磁気平衡式電流検知器または磁束測定式電流検知器)4,5,6、モータ回転情報検出手段(レゾルバおよびR/Dコンバータ)7、およびアクセル開度検出手段(ポテンショメータ)8が配設されており、各信号ライン103,104,100,101,102で電気自動車用制御装置9に接続されている。インバータ3には、主電池2が接続されていると共に、電流検出手段4,5,6からの電流検出信号が信号ライン105等を通じて供給される。
【0022】
ここで、電流検出手段4,5,6のうち、電流検出手段4はモータ1のU相電流を検知して信号ライン103に電圧で出力する。同様に、電流検出手段5はW相電流を検知して信号ライン104に出力し、電流検出手段6はV相電流を検知して信号ライン105に出力する。また、モータ回転情報検出手段7は、モータ1の回転数およびロータ回転位置を検出し、モータ1の単位回転角の回転毎に発生するパルス状の回転数信号を信号ライン100に、またシリアル形式のロータ位置信号を信号ライン101に、それぞれ出力する。アクセル開度検出手段8は、運転席のアクセルペダル(図略)の踏み込み量に対応したアクセル開度信号を、信号ライン102に出力する。
【0023】
電気自動車用制御装置9には、モータ回転情報検出手段7の出力であるモータ回転数信号およびロータ位置信号と、アクセル開度検出手段8の出力であるアクセル開度信号と、電流検出手段4,5により検出されたU相およびW相の電流信号とが入力される。電気自動車用制御装置9は、同入力に基づき、駆動信号VU* ,VV* ,VW* を、それぞれの駆動信号ライン106,107,108を介してインバータ3に出力する。電気自動車用制御装置9の内部構成は、機能を大きく分けて走行制御マイクロコンピュータ91と電流制御マイクロコンピュータ92とからなり、それぞれシングルチップマイクロコンピュータ上に構成されている。
【0024】
走行制御マイクロコンピュータ91は、機能別に大別して、トルク信号演算手段10と電流指令演算手段11とからなり、モータ回転数信号およびアクセル開度信号に基づいて演算し、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を出力する。すなわち、トルク信号演算手段10は、モータ回転数信号およびアクセル開度信号に基づいて、トルク指令値を演算し出力する機能を有する。電流指令演算手段11は、同トルク指令値に基づいて、公知のベクトル演算によりモータ1に通電すべき電流指令ベクトルを算出し、そのうちd軸電流指令値およびq軸電流指令値を出力する。出力されたd軸電流指令値およびq軸電流指令値は、二本の信号ライン110を介して電流制御マイクロコンピュータ92に入力される。
【0025】
電流制御マイクロコンピュータ92は、dq座標変換手段13、電圧指令演算手段14、二相三相変換手段15およびPWM変調手段16から構成されている。電流制御マイクロコンピュータ92は、d軸電流指令値およびq軸電流指令値とロータ位置信号とU相およびW相の電流信号に基づき、モータ1に印加するU・V・Wの各相の電圧を指定する三つの駆動信号をPWM変調して出力する。出力された各相の駆動信号は、駆動信号ライン106,107,108を介してインバータ3に入力される。
【0026】
すなわち、dq座標変換手段13は、信号ライン103,104から入力されるU相電流信号およびW相電流信号基づいて公知のdq座標変換を行い、d軸電流の実測値およびq軸電流の実測値として出力する。出力されたd軸電流の実測値およびq軸電流の実測値は、それぞれ信号ライン111,112を介して、電圧指令演算手段14に入力される。電圧指令演算手段14は、電流指令演算手段11の出力であるd軸電流指令値およびq軸電流指令値と、dq座標変換手段13の出力であるd軸電流の実測値およびq軸電流の実測値とを比較して、各軸の電流偏差量に応じた演算を行う。電圧指令演算手段14の演算の結果、モータ1に印加すべき電圧指令値であるd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値が算出され、二相三相変換手段15に入力される。二相三相変換手段15は、入力されたd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値に基づき、公知の二相三相変換を行ってモータ1に印加するU・V・Wの各相の電圧指令値をPWM変調手段16に出力する。PWM変調手段16は、入力された各相の電圧指令値をPWM変調し、インバータ3への駆動信号VU* ,VV* ,VW* として、駆動信号ライン106,107,108にそれぞれ出力する。
【0027】
インバータ3は、スイッチング素子六個を内蔵している主回路17と、駆動回路18と、過電流検出手段19とから構成されている。主回路17は、六個のスイッチング素子を有し、同スイッチング素子のオン・オフによって主電池2からの直流電流を三相交流電流に変換する。駆動回路18は、電気自動車用制御装置9を主回路17の高電位から絶縁すると共に、駆動信号ライン106,107,108を介して電気自動車用制御装置9から入力されるU・V・Wの各相の駆動信号VU* ,VV* ,VW* に基づいて、主回路17の各スイッチング素子のオン・オフを行う。
【0028】
また、インバータ3は主回路17の自己保護機能を独自に備えており、過電流検出手段19から過電流信号ライン109aを介して過電流信号が駆動回路18に入力されると、瞬時に主回路17のスイッチングを停止して主回路17に流れる電流を遮断する。すなわち、電流検出手段4,5,6と、過電流検出手段19および駆動回路18とで、インバータ3の過電流制限手段が構成されている。過電流信号は、電流信号ライン103,104,105から過電流検出手段19に入力されるモータ1の各相の電流の実測値(すなわち主回路17に流れる電流)が、主回路17の所定の許容値を越える場合に出力される。過電流信号は、過電流検出手段19によって発生して過電流信号ライン109へ出力され、信号ライン109aを介して駆動回路18に、信号ライン109bを介して電流指令演算手段11および電圧指令演算手段14に入力される。なお、電流検出手段4,5,6は図面作成の便宜上、インバータ3の外に描かれているが、実際にはインバータ3の出力端に近い部分に内蔵されて、インバータ3とワンセットになっていても良い。
【0029】
したがって本実施例のモータ制御装置は、電流検出手段4,5,6と過電流検出手段19と駆動回路18とを含む過電流制限手段による小さなフィードバックループと、電流信号ライン103,104を含む大きなフィードバックループとを有している。
(実施例1の作用効果)
本実施例のモータ制御装置の作用、すなわち、本実施例のモータ制御方法について、図2および図3を参照して説明する。
【0030】
図2に示すように、インバータ3は、三相誘導モータ1を駆動すると共に、同モータ1への電力線に装着されている電流検出手段4,5,6により、同モータ1への過電流を検出して出力電流を制限する過電流制限手段を有している。この過電流制限手段は、前述のように、電流検出手段4,5,6と過電流検出手段19と駆動回路18とから構成されており、小さなフィードバックループを形成している。電流制御マイクロコンピュータ92(13,14,15が相当、図1参照)は、インバータ3に駆動信号を供給してこのインバータ3の出力電圧および出力電流を制御している。
【0031】
すなわち、本実施例のモータ制御装置は、前述の小さなフィードバックループ103,104,105と、dq座標変換手段13を含む前述の大きなフィードバックループ111,112を有している。ここで、大きなフィードバックループとは、電流検出手段4,5,6からの駆動電流信号を電流制御マイクロコンピュータ92の電圧指令演算手段14にフィードバックするフィードバック信号ライン111,112のことである。過電流検出手段19で過電流が検出された場合には、図3に示すように、フィードバック信号ライン111,112の接続は切り離され、フィードバックゲインはゼロになる。
【0032】
すなわち本実施例のモータ制御方法は、モータ駆動ステップ、過電流制限ステップ、駆動電流フィードバックステップ、およびデカップリング制御ステップから構成されている。
モータ駆動ステップは、駆動回路18により生成された駆動信号により、スイッチング素子六個を持つ主回路17が制御されてモータ駆動電圧を発生させ、三相交流モータ1にモータ駆動電流を供給するステップである。過電流検出ステップは、電流検出手段4,5,6によりモータ1のモータ駆動電流を計測して駆動電流信号を発生させ、このモータ駆動電流信号が所定の過電流閾値を越えた場合に、過電流検出手段19で過電流信号を発生させるステップである。過電流制限ステップは、過電流信号を駆動回路18に入力して主回路17の出力を制限するステップであり、小さなフィードバックループに相当する。駆動電流フィードバックステップは、モータ駆動電流信号を電圧指令演算手段14にフィードバックして駆動回路18への入力を調整するステップであり、大きなフィードバックループに相当する。デカップリング制御ステップは、モータ駆動電流に過電流信号が発生した場合に、駆動電流フィードバックステップでのフィードバックゲインを調整して、駆動電流フィードバックステップと過電流制限ステップとの間での干渉を防止するステップである。
【0033】
本実施例のモータ制御方法の特徴は、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生した場合に大きなフィードバックループのフィードバックゲインはゼロに調整されることである。すなわち、過電流信号が発生した場合には、dq座標変換手段13(図2参照)を含む大きなフィードバックループの接続が断たれてしまう(図3参照)。その結果、電流検出手段4,5,6および過電流検出手段19を含むインバータ3内部での小さなフィードバックループのみで、インバータ3の出力が制御される。
【0034】
したがって本実施例によれば、大きなフィードバックループが無くなるので、これと小さなフィードバックループとの間での制御の干渉は起こらない。それゆえ、インバータ3の出力は小さなフィードバックループによってのみ制御され、その出力は安定に制御されるという効果がある。
(実施例1の制御ロジック)
前述の本実施例の具体的な作用を示す制御ロジックを、以下、図4および図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0035】
先ず、電気自動車のイグニッション・キーが投入されると、電気自動車用制御装置9(図1参照)が始動して、走行制御マイクロコンピュータ91および電流制御マイクロコンピュータ92で演算が始まる。すなわち、電流制御マイクロコンピュータ92の作用を示す図4のフローチャートがスタートし、ステップ100で、入出力ポートの初期化およびメモリに割り付けられている変数の初期化が行われる。
【0036】
次に、ステップ200では、走行制御マイクロコンピュータ91が出力したd軸電流指令値Idtrqおよびq軸電流指令値Iqtrqが、信号ライン110を介して電流制御マイクロコンピュータ92のメモリにそれぞれ格納される。次のステップ250では、電流検出手段4,5が信号ライン103,104に出力しているU相電流の実測値IUおよびW相電流の実測値IWを、電流制御マイクロコンピュータ92が取り込み、メモリの別の領域にそれぞれ格納する。次のステップ300では、インバータ3の過電流検出手段19から過電流信号ライン109に出力している過電流信号の有無が電流制御マイクロコンピュータ92に取り込まれ、メモリに論理値で格納される。
【0037】
次のステップ400では、前述のステップ250でメモリに格納されているU相電流の実測値IUおよびW相電流の実測値IWに基づき、dq座標変換手段13で公知のdq座標変換が行われて、d軸電流の実測値Idおよびq軸電流の実測値Iqが算出される。次のステップ500では、ステップ200でメモリに格納されている値が、それぞれd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*として読み出される。
【0038】
次のステップ600では、上記ステップ500で読み出されているd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*等に基づいて、電圧指令演算手段14によりd軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*が算出される。電圧指令演算手段14での演算は、次の数1にしたがって実行される。
【0039】
【数1】
Figure 0003807022
【0040】
すなわち、上記ステップ600では、図5に詳細に示すアルゴリズムで前述の演算が行われる。先ずステップ610では、d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqが、次の数式により計算される。
ΔId = Id* − Id
ΔIq = Iq* − Iq
次のステップ620では、前述のステップ300でメモリに論理値で格納されている過電流信号の有無から、インバータ3の主回路17の電流保護状態が判断される。すなわち、過電流信号が認められた場合にはステップ670に進み、過電流信号が認められなかった場合にはステップ650に進む。
【0041】
ステップ650(過電流が無い場合)では、前述のd軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqと、予め電流制御マイクロコンピュータ92のメモリに記憶されていたd軸比例係数KPdおよびq軸比例係数KPqとd軸積分係数KIdおよびq軸積分係数KIqとに基づいて演算が行われる。同演算では、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqが次の数2に従ってそれぞれ求められ、これに基づいて電流のフィードバック制御が行われる。
【0042】
【数2】
Figure 0003807022
【0043】
一方、ステップ670(過電流がある場合)では、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqは、それぞれゼロリセットされるので、電流のフィードバック制御は行われない。
ステップ650またはステップ670の終了後、図5のフローチャートはさらにステップ680に進む。ステップ680では、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*と、予め電流制御マイクロコンピュータ92のメモリに記憶されていたd軸非干渉係数KRおよびq軸非干渉係数KωLRとに基づき、演算が行われる。同演算では、次の数式に従ってd軸非干渉項FFdおよびq軸非干渉項FFqが算出される。
【0044】
FFd = KR×Id*
FFq = KωLR×Iq*
次のステップ690では、d軸非干渉項FFdおよびq軸非干渉項FFqと、前述のd軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqとに基づき、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*が次の数式に従って算出される。
【0045】
Vd* = FFd + FBd
Vq* = FFq + FBq
したがって、前述のステップ670に進んだ場合(過電流がある場合)には、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqがそれぞれゼロにリセットされ、電流のフィードバック制御は停止される。つまり、上記数式において、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqはゼロであって大きなフィードバックループ(図2参照)は無くなる。そして、再び図3に示すように、フィードフォウォード成分であるd軸非干渉項FFdおよびq軸非干渉項FFqの成分のみにより、オープンループ制御が行われることになる。
【0046】
以上でステップ600の演算は終了し、再び図4のフローチャートに示すように、ステップ700の演算に進む。
次のステップ700では、前述のステップ600で求められているd軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*に基づき、公知の二相三相変換の演算を行い、U相・V相・W相の各相の電圧指令値VU* ,VV* ,VW* が求められる。次にステップ800では、この各相の電圧指令値VU* ,VV* ,VW* は、PWM変調手段16によりPWM変調され、インバータ3の駆動信号VU* ,VV* ,VW* が生成される。次のステップ900では、生成された駆動信号VU* ,VV* ,VW* が、電流制御マイクロコンピュータ92から駆動信号ライン106,107,108に出力され、インバータ3へ入力される。
【0047】
次のステップ1000では、電流制御マイクロコンピュータ92の制御周期を管理するために、予めメモリに記憶されている所定の設定時間(制御周期)tmainとマイコン92の内部タイマの経過時間との比較が行われる。内部タイマの経過時間が上記設定時間tmainに達したと判断されないうちは、ステップ1000が繰り返されて待機状態が保たれる。そして、内部タイマの経過時間が上記設定時間tmainに達したと判断された場合、制御ロジックは次のステップ1100に進む。
【0048】
ステップ1100では、走行制御マイクロコンピュータ91からの図示しない起動信号が取り込まれ、(イグニッションキーが抜かれて)同起動信号がオフになっていればプログラムを終了し、電流制御を停止してモータ1の駆動を止める。逆に、上記起動信号がオフになっていない限り、制御ロジックは前述のステップ200に戻って以上の制御動作を繰り返す。
【0049】
なお、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqはステップ670でゼロに設定された後、過電流が検出されなくなると、次回の制御サイクルのステップ650で元の所定の値にリセットされる。
以上の制御動作により、再び図2に示すように、信号ライン109から過電流信号が入力された場合には、インバータ3の主回路17のスイッチングは即座に停止される。すると、主回路17に流れる通常のフィードバック電流は遮断されるが、その場合でも、再び図3に示すように、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*のみによるオープンループ電流制御に切り替わる。その結果、電流偏差の急増によって、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqの成分が飽和して制御不能に陥ることが、防止されている。
【0050】
[実施例2]
(制御方法の概要)
実施例2としてのモータ制御方法は、実施例1とほぼ同様のモータ制御装置を用いて行われ、モータ制御方法も一部を除いて実施例1のそれと同様である。モータ制御方法のうち、実施例1と同様の部分の説明は省略し、実施例1と異なる部分についてのみ以下に説明する。
【0051】
本実施例のモータ制御方法の特徴は、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が所定時間発生し続けた場合にのみ、大きいフィードバックループのフィードバックゲインがゼロに調整されることである。
すなわち本実施例では、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が所定時間発生し続けた場合にフィードバックゲインはゼロに調整される。つまり、フィードバックゲインがゼロに設定されるには、所定時間の連続した過電流の検出が必要であり、所定時間に満たない瞬時の過電流信号は無視される。これは、実際のインバータを含むモータ制御装置においては、各所においてなにがしかのノイズが発生しており、このノイズによって誤って過電流信号が発生してしまうことによるデカップリング制御ステップの作動を防止する目的で行われる。
【0052】
したがって本実施例のモータ制御方法によれば、モータ制御装置の各所で発生するノイズによるデカップリング制御ステップの誤動作が防止されているので、ノイズによる誤動作が少なく、モータ1の不要な出力低下が防止されるという効果がある。
(実施例2の制御ロジック)
本実施例の具体的な作用を示す制御ロジックを、以下、図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0053】
本実施例の制御ロジックが実施例1の制御ロジックと異なるのは、ステップ600のみである。すなわち図6に示すように、制御ロジックのフローチャートには、ステップ631,632,660が追加されている。
ステップ610は前述の実施例1のそれと同一であり、次のステップ620では、過電流の有無が判定される。そして制御ロジックは、過電流が検出された場合にはステップ631に進み、過電流が検出されなかった場合にはステップ632へと進む。ステップ632では、電流制御マイクロコンピュータ92(図1参照)のメモリに割り付けられている過電流検出カウンタCovc はゼロリセットされ、制御ロジックは次のステップ650に進む。逆に過電流が検出されて、制御ロジックがステップ631へ進んだ場合には、ステップ631で過電流検出カウンタCovc は1だけインクリメントされる。過電流検出カウンタCovc は、過電流の継続回数すなわち継続時間をカウントしてメモリに記憶しておくためのものである。ステップ631またはステップ632を実行後、制御ロジックは次のステップ650に進むが、同ステップは前述の実施例1のステップ650と同一である。
【0054】
次のステップ660では、電流制御マイクロコンピュータ92のメモリに予め設定されて記憶されていた所定時間tovc0と前述の過電流検出カウンタCovc とが比較され、過電流の検出時間が所定時間を越えたか否かが判定される。過電流の検出時間が所定時間を越えている場合には、次のステップ670が実行されてd軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqがゼロに設定される。逆に過電流の検出時間が所定時間を越えていない場合には、次のステップ670は実行されず、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqはその値を保ったままで、その次のステップ680に制御ロジックは進む。ステップ680と次のステップ690は、実施例1のそれと同一である。
【0055】
なお、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqは、ステップ670でゼロに設定された後、過電流が検出されなくなると、実施例1と同様にステップ650で再び適正な値が演算されて設定される。
以上の本実施例の制御ロジックによれば、所定時間tovc0を越えないごく短時間に過電流が検出されただけでは大きなフィードバックループは遮断されない。それゆえ、ノイズ(普通ごく短時間にのみ影響する)による制御ロジックの誤動作は防止され、実施例1よりさらに安定にモータ1の出力制御をすることが可能になるという効果がある。
【0056】
[実施例3]
(制御方法の概要)
実施例3としてのモータ制御方法は、実施例1とほぼ同様のモータ制御装置を用いて行われ、モータ制御方法も一部を除いて実施例1のそれと同様である。そこで実施例2と同様に、モータ制御方法のうち、実施例1と同様の部分の説明は省略し、実施例1と異なる部分についてのみ以下に説明する。
【0057】
本実施例のモータ制御方法の特徴は、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生した場合には電流指令が漸減し、しかる後、過電流信号がなくなった場合には電流指令が正常値に回復するまで漸増することである。
すなわち本実施例では、過電流信号が発生した場合に、デカップリング制御ステップの実施例2の効果によって過電流時にもモータ制御を続けることが可能である。そればかりではなく、ここでさらに電流指令が漸減されるので、モータは過電流状態から脱却することができる。また、過電流信号が無くなった段階で電流指令値を通常のレベルにまで徐々に回復させるので、必要以上に電流指令値が低減されることは防止されており、モータの出力を必要以上に低下させることもなく、過電流状態を解消することができる。
【0058】
したがって本実施例のモータ制御方法によれば、モータを比較的高出力で運転したまま過電流状態を解消できるばかりではなく、過電流状態付近の領域でもモータを安定に制御し続けることができるという効果がある。
(実施例3の制御ロジック)
本実施例の具体的な作用を示す制御ロジックを、以下、図7のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0059】
本実施例の制御ロジックが実施例1の制御ロジックと異なるのは、ステップ500のみである。すなわち図7に示すように、制御ロジックのフローチャートには、図4のフローチャートのステップ500に代えて、ステップ510〜590が追加されている。すなわち、図4のフローチャートでステップ500に達すると、図7のフローチャートに従って、ステップ500でのd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*の演算が行われる。
【0060】
先ずステップ510では、過電流信号の有無が判定され、過電流信号があると判定された場合にはステップ520に制御ロジックは進み、過電流信号がないと判定された場合にはステップ530に進む。
ステップ520では、初期設定されているあるいは前回の制御ロジックで演算されているd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*の減算が行われる。すなわち、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*から、予めメモリに記憶されている所定のd軸電流低下量Iddownおよびq軸電流低下量Iqdownがそれぞれ減算されて、新たなd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*が設定されてメモリが更新される。そして次のステップ540では、前述のように減算されて制限されているd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を復帰させるための制御タイマの時間tdelay がゼロリセットされる。しかる後、制御ロジックは図4のステップ600に進む。なお、制御タイマの時間tdelay の初期値はゼロである。
【0061】
一方、ステップ510で過電流信号が検出されず、制御ロジックがステップ530に進んだ場合には、ステップ530で、前述の制御タイマの時間tdelay と予め設定されてメモリに記憶されている所定の設定時間tupokとの比較がなされる。制御タイマの時間tdelay が設定時間tupokを越えている場合には、次のステップ550およびステップ560が実行される。すなわち、ステップ550では、制御タイマの時間tdelay のインクリメントが行われ、制御タイマの時間tdelay が毎回所定量だけ増加する。次のステップ560では、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*がそのまま保存される(つまり何も行われない)。したがって、設定時間tupokの間だけ、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*は、制限されているといないとに係わらず、そのままの値を維持している。しかる後、制御ロジックは図4のステップ600に進む。
【0062】
逆に、前述のステップ530で制御タイマの時間tdelay が設定時間tupokを越えていない場合には、次の判定ステップ570に進む。
ステップ570では、前回の(初回は初期設定の)d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*と、前述のステップ200でメモリに格納されているd軸電流指令値Idtrq およびq軸電流指令値Iqtrq との比較が行われる。すなわち、前回のd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*のうちいずれかが小さい場合には、その電流指令値について次のステップ580が実行される。ステップ580では、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*が、メモリに格納されていた所定の増加量であるd軸電流復帰量Idupおよびq軸電流復帰量Iqupだけそれぞれ増加する。しかる後、制御ロジックは、図4のステップ600に進む。
【0063】
逆に、前述のステップ570で、前回のd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*のうちいずれかが大きい場合には、その電流指令値の電流制限の復帰が完了したものと判定され、その電流指令値について次のステップ590が実行される。ステップ590では、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*は、それぞれd軸電流指令値Idtrq およびq軸電流指令値Iqtrq の値に設定される。しかる後、制御ロジックは、図4のステップ600に進む。
【0064】
以上の制御ロジックにより、インバータ3の駆動回路18(図1〜3参照)が信号ライン109から入力される過電流信号によって過電流を検知し、前述の電流指令値を漸減させるので、電流偏差の急増は抑制される。その結果、本実施例によれば、実施例1よりもさらに安定して、インバータ3のモータ1への出力制御を実施することができるという効果がある。
【0065】
[実施例4]
(制御方法の概要)
実施例4としてのモータ制御方法は、実施例1とほぼ同様のモータ制御装置を用いて行われ、モータ制御方法も一部を除いて実施例1のそれと同様である。そこで実施例2と同様に、モータ制御方法のうち、実施例1と同様の部分の説明は省略し、実施例1と異なる部分についてのみ以下に説明する。
【0066】
本実施例のモータ制御方法の特徴は、実施例2のデカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生してから所定時間中は、電流偏差を強制的に所定値に設定しておくことである。
すなわち本実施例では、実施例2のデカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生した場合、フィードバックゲインがゼロに設定されるまでの所定時間中は電流偏差が強制的に(抑制された)所定値に設定される。それゆえ、フィードバック信号ラインの影響を受けることがなくなり、実質的にフィードバック信号ラインの接続が断たれることになる。その結果、駆動電流フィードバックステップと過電流ステップとの間での干渉が完全に防止される。そればかりではなく、フィードバック制御からオープンループへの切替えの間に一段階の中間的な制御が挿入されるので、制御の切替えがスムーズに行われるようになる。また逆に、インバータの過電流制限が解除されて通常の状態のスイッチングに復帰する際に、電流の激変がなくなって電流の変化率が低減されるので、モータのトルク変動も軽減される。
【0067】
したがって本実施例のモータ制御方法によれば、フィードバック制御からオープンループ制御への切替えを、スムーズに行うことができるという効果がある。また、インバータの過電流制限が解除され、通常のスイッチングに復帰する際のインバータの電流変化およびモータのトルク変動を低減することができるという効果もある。
【0068】
(実施例4の制御ロジック)
本発明の実施例4としてのモータ制御方法の具体的な作用を示す制御ロジックを、以下、図8のフローチャートを参照して詳細に説明する。
本実施例の制御ロジックが実施例2(図6参照)と異なるのは、ステップ600の詳細フローチャートにおいて、ステップ631の直後にステップ640が加わっている点と、ステップ660がステップ661に変わっている点との二点である。その他の点は実施例2と異ならないので、本実施例のステップ600の作用を上記の二点に的を絞って、図8のフローチャートで説明する。
【0069】
実施例2と同様にステップ620で過電流信号の有無が判定され、過電流が検出されている場合には、制御ロジックは次のステップ631に進み、ステップ631で過電流検出カウンタCovc が一つだけインクリメントされる。なお、過電流検出カウンタCovc は、実施例2と同様に過電流の継続時間を示している。
次のステップ640では、ステップ610ですでに求められているd軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqが、電流制御マイクロコンピュータ92のメモリに予め記憶されていた所定値ΔIdset およびΔIqset に、それぞれ強制的に設定される。次のステップ650では、実施例2と同様に、d軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqが算出される。
【0070】
次にステップ661では、前述の過電流検出カウンタCovc と予め設定されメモリに記憶されていた所定の設定時間tovc1とが比較される。過電流検出カウンタCovc が設定時間tovc1を越えていない場合は、制御ロジックは何も処置せずにステップ680へジャンプする。逆に、過電流検出カウンタCovc が設定時間tupokを越えている場合には、ノイズ等によるごく短時間の過電流ではないと判定され、次のステップ670でd軸比例積分項FBdおよびq軸比例積分項FBqはそれぞれゼロリセットされる。この後は、実施例2のステップ600と同様である。
【0071】
(実施例4の効果)
本実施例では、実施例2と同様にモータの出力が安定に制御されている。本実施例ではさらに、信号ライン109から入力される過電流信号により、インバータ3の駆動回路18(図1〜3参照)が、即座に主回路17のスイッチングを停止しすぐまた復帰するという電流の瞬断が発生した場合の対策がなされている。すなわち、電流の瞬断が発生した場合にも、瞬断中のd軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqを所定値に強制的に設定してしまうことにより、スイッチングの瞬断および復帰の際の電流変化が軽減されている。したがって本実施例によれば、実施例2よりもさらに、モータ1のトルク変動が軽減されているという効果がある。
【0072】
[実施例5]
(制御方法の概要)
実施例5としてのモータ制御方法は、実施例1とほぼ同様のモータ制御装置を用いて行われ、モータ制御方法も一部を除いて実施例1のそれと同様である。そこで実施例4と同様に、モータ制御方法のうち、実施例1と同様の部分の説明は省略し、実施例1と異なる部分についてのみ以下に説明する。
【0073】
本実施例のモータ制御方法の特徴は、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生した場合にはフィードバックゲインが漸減し、過電流信号が無い場合にはフィードバックゲインが漸増することである。
すなわち本実施例では、デカップリング制御ステップにおいて、過電流信号が発生した場合にフィードバックゲインは漸減されるので、短時間の過電流信号によってはあまりモータの制御精度は低下しない。それゆえ、ノイズ等によるデカップリング制御ステップの誤作動が起きても、短時間であればあまりフィードバックゲインは低減せず、誤動作の影響はほとんど無くなる。また、過電流信号が無くなった段階でフィードバックゲインの漸減が停止し逆に漸増するので、必要以上にフィードバックゲインが低減されることは防止されており、モータ1の制御精度の低下も必要以上には起こらないでモータ制御は安定する。
【0074】
したがって本実施例のモータ制御方法によれば、ノイズ等によるデカップリング制御ステップの誤作動の影響を抑制できるとともに、過電流時にも比較的高精度でモータ1を安定に制御し続けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1としてのモータ制御装置の全体構成を示すブロック線図
【図2】 実施例1のモータ制御装置の通常時の作用を示すブロック線図
【図3】 実施例1のモータ制御装置の過電流時の作用を示すブロック線図
【図4】 実施例1としてのモータ制御方法の作用を示すフローチャート
【図5】 実施例1のステップ600の作用を示すフローチャート
【図6】 実施例2のステップ600の作用を示すフローチャート
【図7】 実施例3のステップ500の作用を示すフローチャート
【図8】 実施例4のステップ600の作用を示すフローチャート
【符号の説明】
1:三相交流モータ(誘導電動機) 2:主電池(二次電池)
3:インバータ
17:主回路 18:駆動回路 19:過電流検出手段
(4,5,6,18,19で過電流制限手段を構成)
4,5,6:電流検出手段(磁気平衡式または磁束測定式の電流検出器)
7:モータ回転検出手段(レゾルバおよびR/Dコンバータ回路)
8:アクセル開度検出手段(ポテンショメータ)
9:電気自動車用制御装置
91:走行制御マイクロコンピュータ(SMPU)
10:トルク指令演算手段 11:電流指令演算手段
92:電流制御マイクロコンピュータ(SMPU)
13:dq座標変換手段 14:電圧指令演算手段
15:二相三相変換手段 16:PWM変調手段
100:回転数信号ライン 101:ロータ位置信号ライン
102:アクセル開度信号ライン
103,104,105:U相・W相・V相電流信号ライン
(103,104:フィードバック信号ライン)
106,107,108:駆動信号ライン
109,109a,109b:過電流信号ライン
110:d軸・q軸電流指令値信号ライン
111,112:d軸・q軸電流実測値の信号ライン

Claims (2)

  1. 多相交流モータへの電力線に装着されている電流検出手段により、この多相交流モータへの過電流を検出して出力電流を制限する過電流制限手段を有し、この多相交流モータを駆動するインバータと、
    前記インバータに駆動信号を供給してこのインバータの出力電圧およびまたは出力電流を制御する電流制御マイクロコンピュータと、
    前記電流検出手段からのモータ駆動電流信号を前記電流制御マイクロコンピュータにフィードバックするフィードバック信号ラインと、
    を有するモータ制御装置において、
    前記過電流が検出された場合には、前記インバータの前記過電流制限手段の作用と前記フィードバック信号ラインの作用とが互いに干渉しないように、このフィードバック信号ラインのフィードバックゲインを低減ないしゼロに設定する制御と、このフィードバック信号ラインの接続を切断する制御とのうち、いずれかの制御が行なわれることを特徴とする、
    モータ制御装置。
  2. 駆動回路により生成されたキャリヤ信号により、スイッチング素子六個を持つ主回路が制御されて駆動電圧を発生させ、三相交流モータにモータ駆動電流を供給するモータ駆動ステップと、
    前記モータ駆動電流を計測して電流信号を発生させ、この電流信号が所定の過電流閾値を越えた場合に、過電流信号を発生させる過電流検出ステップと、
    前記過電流信号を前記駆動回路に入力して前記主回路の出力を制限する過電流制限ステップと、
    前記電流信号をフィードバックして前記駆動回路への入力を調整する駆動電流フィードバックステップと、
    を有するモータ制御方法において、
    前記過電流信号が発生した場合に、前記駆動電流フィードバックステップと前記過電流制限ステップとの間での干渉を防止するために、この過電流信号が所定時間発生し続けた場合にはこの駆動電流フィードバックステップのフィードバックゲインをゼロに調整し、この過電流信号が発生してからこのフィードバックゲインがゼロに調整されるまでの間はこの駆動電流フィードバックステップでの電流偏差を強制的に所定値に設定しておくデカップリング制御ステップを有することを特徴とする、
    モータ制御方法。
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