JP3806999B2 - グルタミン酸−n,n−二酢酸塩類の製造方法 - Google Patents

グルタミン酸−n,n−二酢酸塩類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グルタミン酸−N,N−二酢酸またはその塩(以下、併せてグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類という。)の製造方法に関する。グルタミン酸−N,N−二酢酸塩類は下記の一般式(1)に示す化合物でキレート剤として、洗剤組成物、洗剤ビルダー、重金属封鎖剤、過酸化水素安定剤、写真用薬剤など、工業用途及び家庭用用途が検討されている。
【0002】
【化1】
Figure 0003806999
(式中、X1 〜X4 は互いに無関係に水素原子またはアルカリ金属原子を示す。)
【0003】
これらの用途には、現在、一般的にEDTAが広く使用されているが、EDTAに生分解性がないことから、環境への問題等で代替品の研究が盛んに行われている。その中でグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類は生分解性に優れ、代替のキレート剤として期待される。
【0004】
【従来の技術】
グルタミン酸−N,N−二酢酸またはその塩(以下、併せてグルタミン酸類という。)を製造する方法は、従来から種々知られている。例えば、▲1▼アルカリ条件下で以下の一般式(2)のグルタミン酸類に二分子のクロル酢酸を付加してグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類を製造する方法(西独特許3739610号、特開昭63−267751)、▲2▼グルタミン酸のアルカリ金属塩にホルマリンと青酸を反応させ中間体としてグルタミン酸−N,N−ジアセトニトリルを経由してグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類を製造する方法(独開4211713A1)、▲3▼グルタミン酸の金属塩とアルカリ金属シアン化物とホルマリンをアルカリ条件下で反応させグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類を製造する方法(米国特許2500019)などがある。
【0005】
【化2】
Figure 0003806999
(式中、X1 〜X2 は互いに無関係に水素原子またはアルカリ金属原子を示す。)
【0006】
しかしながら、▲1▼のグルタミン酸塩類にクロル酢酸を用いる方法はグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類の製造のために相応しい原料を選んでいるとは言い難い。すなわち、クロル酢酸は、反応生成物中に用いたクロル酢酸と等モル量の塩化ナトリウムなどの副生が避けられず、かつ、反応器の材質もクロルイオンに対して耐食性のものを使用する必要があり、工業的な製造方法としては問題が多い。また、▲2▼のグルタミン酸−N,N−ジアセトニトリルの合成については、α位のニトリル基の効果により、生成が困難であり、目的物の収率の点で問題がある。更に、シアノメチル化工程、加水分解工程と多段階で行うため、製造工程は必然的に長く、煩雑となってしまう。
また、▲3▼のホルマリンとアルカリ金属シアン化物を反応させる方法は、一段階で目的物を製造できるが、通常アルカリ金属シアン化物はアクリロニトリルの製造プロセスで副生する青酸あるいはメタンからのアンドリューソー法による青酸を苛性アルカリに吸収させ製造できるが結局は目的物を製造する以外にこのアルカリ金属シアン化物を製造するプロセスを必要としトータルとしての製造工程は煩雑となってしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、目的とするグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類を一段階で安価に、高収率、高純度で製造する工業的製法の確立が必要とされる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、青酸を直接利用し、グルタミン酸類の溶液に苛性アルカリを添加するか、青酸とホルマリンの滴下と同時に苛性アルカリを滴下して目的物のグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類を一段階で収率良く製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、グルタミン酸またはその塩にアルカリ性条件下、青酸及びホルマリンを供給し反応させる際、アルカリ金属水酸化物をグルタミン酸塩に対して2.0〜3.0倍モル及び水を加えた後、先に青酸のみをグルタミン酸塩に対して0.01〜0.5倍モル供給し、その後青酸及びホルマリンをそれぞれ総量として、グルタミン酸塩に対して2.0〜3.0倍モル供給することを特徴とするグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類の製造方法、及びグルタミン酸またはその塩の溶液に青酸、ホルマリン及びアルカリ金属水酸化物を供給し反応させる際、グルタミン酸塩水溶液に、先にグルタミン酸塩に対し、アルカリ金属水酸化物0.02〜2.0倍モル及び青酸0.01〜0.5倍モルを供給し、その後アルカリ金属水酸化物、ホルマリン及び青酸をそれぞれ総量として、グルタミン酸塩に対して2.1〜3.0倍モル供給することを特徴とするグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類の製造方法に関する。以下、詳細に本発明を説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における原料であるグルタミン酸は工業的に入手できる純度70%以上、好ましくは、85%以上の固体が一般的に用いられるが、その製造途中で得られるアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩水溶液を直接用いることもできる。純度の低いグルタミン酸アルカリ金属塩の水溶液を用いる場合は、不純物としてのアンモニアはニトリロトリ酢酸の副生増加につながるので好ましくない。アンモニア濃度が3%以下であることが望ましい。使用にあったてはすべてのカルボキシル基がアルカリ金属塩となるように反応前に対応するアルカリ金属水酸化物で中和して用いる。また、これらのグルタミン酸はL体、D体あるいはラセミ体のDL体でも良いが目的物の生分解性の見地からL体が好ましい。
【0011】
本発明において用いられるホルマリンはガス状品、水溶液、あるいは固体品のパラホルムアルデヒドなど種々の形態のものが用いられるが、工業的には、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは35〜40重量%の水溶液を使用するのが良い。更に、本発明で用いられる青酸はガス状、液状、水溶液など種々の形態のものが用いられるが、通常、工業的にソハイオ法によるアクリロニトリルの製造に際し副生する青酸を蒸留精製したものを用いる。但し、同様に副生するアセトニトリル等の含有はグルタミン酸−N,N−二酢酸塩を製造する場合、特に問題とならないので多少含有していてもよい。
また、本発明で用いられる苛性アルカリは通常水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムが使われ、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。
【0012】
本発明の方法は、青酸を使用して目的物を製造することにあり、通常、苛性アルカリの添加方法の異なる2通りの方法で反応が可能である。
本発明の一つの方法は、通常、前記の一般式(2)のグルタミン酸類(好ましくはアルカリ金属塩で、特に好ましくはナトリウム塩が使用される。)とアルカリ金属水酸化物(好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。)と水を反応器に仕込み、青酸とホルマリンを同時に供給して反応させる形態で実施する。
また、第二の方法は前記の一般式(2)のグルタミン酸類(好ましくはアルカリ金属塩で、特に好ましくはナトリウム塩が使用される。)と水を反応器に仕込み、青酸とホルマリン並びにアルカリ金属水酸化物水溶液(好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。)を同時に供給して反応させる形態で実施する。
【0013】
以下に反応操作に従って説明する。まず、第一の方法の仕込み及び反応の条件については、グルタミン酸塩類(好ましくはナトリウム塩を用いる)、アルカリ金属水酸化物(好ましくは水酸化ナトリウムを用いる)をグルタミン酸塩に対して2.0〜3.0倍モル、好ましくは2.1〜2.8倍モル及び水を加えてグルタミン酸塩の濃度を1.5モル/kg以上、好ましくは1.6〜2.5モル/kgとする。このように仕込んだグルタミン酸塩をふくむアルカリ水溶液に攪拌下、ホルムアルデヒド及び青酸を供給して反応させる。この反応の際、減圧下、常圧〜−600mmHg、好ましくは−100〜−300mmHgとし、反応温度を85〜110℃、好ましくは95〜105℃で制御し、この2化合物を同時に供給するにあたり反応液の着色を防止するため青酸(通常液状品)をグルタミン酸塩に対して0.01〜0.5倍モル、好ましくは0.2〜0.3倍モル(反応に用いる青酸の1/10モル量程度)を先に供給しその量に達したときにホルマリンを同時に供給する。供給速度はホルマリン、青酸いずれも2.0×10-2(モル/min)/グルタミン酸塩(モル)以下、好ましくは4.0×10-3〜1.6×10-2(モル/min)/グルタミン酸塩(モル)とする。ホルマリン及び青酸の供給は未反応のまま系外への留去を防ぐため液中への供給が好ましい。
供給量は、グルタミン酸塩に対してモル比2.0〜3.0、好ましくは2.5〜2.8倍量のホルマリン及び青酸を用いる。この反応においては、副生するアンモニアが反応中液中に存在しているとニトリロトリ酢酸の副生が起こり目的化合物のグルタミン酸−N,N−二酢酸塩の収率がダウンするので水を留去しながらアンモニアを追い出すことが好ましい。留去する水はホルマリンの水か別途、ホルマリン及び青酸と同時に水を供給すれば良い。留去量は、水がグルタミン酸塩に対して0.5(g/min)/グルタミン酸塩(モル)以上、好ましくは0.6〜10(g/min)/グルタミン酸塩(モル)が留去されるおうに水の量を調製し、反応液レベルを仕込み液レベルのまま一定に保つ様、連続的に水を蒸留しながら反応させる。ホルマリン(ホルムアルデヒド)及び青酸の供給が終了後、30分〜2時間、好ましくは1時間熟成させ、反応を完遂させる。
【0014】
第二の方法の仕込み及び反応の条件はグルタミン酸塩類(通常ナトリウム塩を用いる)と水を加えてグルタミン酸塩の濃度を2モル/kg以上、好ましくは2.2〜2.5モル/kgとする。このように仕込んだグルタミン酸塩水溶液に攪拌下、アルカリ金属水酸化物水溶液(好ましくは水酸化ナトリウム)、ホルマリン(ホルムアルデヒド)及び青酸を供給して反応させる。この反応の際、減圧下、常圧〜−600mmHg、好ましくは−100〜−300mmHgとし、反応温度を85〜110℃、好ましくは95〜105℃で制御し、この3化合物を同時に供給するにあたり反応液の着色を防止するためアルカリ金属水酸化物水溶液をグルタミン酸塩に対して0.02〜2.0倍モル、好ましくは0.3〜0.4倍モルと青酸(通常液状品)をグルタミン酸塩に対して0.01〜0.5倍モル、好ましくは0.2〜0.3倍モル(反応に用いる青酸の1/10モル量程度)を先に供給しその量に達したときにホルマリンを同時に供給する。供給速度はアルカリ金属水酸化物、ホルマリン、青酸いずれも2.0×10-2(モル/min)/グルタミン酸塩(モル)以下、好ましくは4.0×10-3〜1.6×10-2(モル/min)/グルタミン酸塩(モル)とする。ホルマリン及び青酸の供給は未反応のまま系外への留去を防ぐため液中への供給が好ましい。供給量は、グルタミン酸塩に対してモル比2.1〜3.0、好ましくは2.5〜2.8倍量のアルカリ金属水酸化物、ホルマリン及び青酸を用いる。また、アルカリ金属水酸化物は更に0.1倍量、ホルマリン及び青酸より過剰のほうが更に好ましい。水の留去、アンモニアの追い出し、そのための水の供給については先の第一の方法に準ずる。
【0015】
上記のように従来の方法にくらべて一段階の反応で安価に目的のグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類を製造することができる。
【0016】
【実施例】
次に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものでない。
【0017】
実施例1
攪拌機、温度計、供給装置3系列、蒸留装置を付した反応器に、グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物109.0g(0.58モル)、水酸化ナトリウム90.0g(2.25モル、グルタミン酸モノナトリウムの中和分も含む)及び水150gを仕込み全溶解させる。これに反応に先立ち青酸4.6g(0.16モル)を供給した。この混合液を−100mmHg、沸点(105℃)まで昇温させる。蒸留装置から水の留出が始まったところで、激しく攪拌しながら、3系列の供給装置より、40重量%ホルムアルデヒド水溶液119.4g(1.59モル、グルタミン酸モノナトリウム塩に対して2.73倍モル)と青酸39.2g(1.45モル、グルタミン酸モノナトリウム塩に対して、仕込みに使用した分も含めて2.76倍モル)と水800gを同時に8時間で供給した。この間、圧力を−100〜−200mmHg、反応温度を105℃とし、反応液のレベルを仕込み液レベルのまま一定に保つよう連続的に蒸留し、生成するアンモニアを除去しながら反応させる。ホルムアルデヒド及び青酸、水の供給終了後、1時間、95℃で熟成させ、反応を完結させた。これによりグルタミン酸−N,N−二酢酸四ナトリウム塩を液中収率99%(対グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物)で得た。副生のグルタミン酸−N−モノ酢酸三ナトリウム塩は収率1%(対グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物)以下であった。
【0018】
実施例2
攪拌機、温度計、供給装置4系列、蒸留装置を付した反応器に、グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物109.0g(0.58モル)、水酸化ナトリウム32.0g(0.80モル、グルタミン酸モノナトリウムの中和分も含む)及び水100gを仕込み全溶解させる。これに反応に先立ち青酸4.6g(0.16モル)を供給した。この混合液を−100mmHg、沸点(105℃)まで昇温させる。蒸留装置から水の留出が始まったところで、激しく攪拌しながら、4系列の供給装置より、40重量%ホルムアルデヒド水溶液119.4g(1.59モル、グルタミン酸モノナトリウム塩に対して2.73倍モル)と青酸39.2g(1.45モル、グルタミン酸モノナトリウム塩に対して、仕込みに使用した分も含めて2.76倍モル)と30%水酸化ナトリウム水溶液193.3g(1.45モル)、水650gを同時に8時間で供給した。この間、圧力を−100〜−200mmHg、反応温度を105℃とし、反応液のレベルを仕込み液レベルのまま一定に保つよう連続的に蒸留し、生成するアンモニアを除去しながら反応させる。ホルムアルデヒド及び青酸、水の滴下終了後、1時間、95℃で熟成させ、反応を完結させた。これによりグルタミン酸−N,N−二酢酸四ナトリウム塩を液中収率99%(対グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物)で得た。副生のグルタミン酸−N−モノ酢酸三ナトリウム塩は収率1%(対グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物)以下であった。
【0019】
比較例1
攪拌機、温度計、供給装置2系列、蒸留装置を付した反応器に、グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物109.0g(0.58モル)、水酸化ナトリウム26.7g(0.64モル)、32重量%シアン化ナトリウム水溶液24.6g(0.16モル)及び水100gを仕込んだ。この混合液を−100mmHg、沸点(105℃)まで昇温させる。蒸留装置から水の留出が始まったところで、激しく攪拌しながら、2系列の供給装置より、40重量%ホルムアルデヒド水溶液119.4g(1.59モル、グルタミン酸モノナトリウム塩に対して2.73倍モル)に水238.8gを加えて希釈した水溶液と32重量%シアン化ナトリウム水溶液221.8g(1.45モル、グルタミン酸モノナトリウム塩に対して、仕込みに使用した分も含めて2.76倍モル)に水443.6gを加えて希釈した水溶液が同時に8時間で供給された。この間、圧力を−100〜−200mmHg、反応温度を105℃とし、反応液のレベルを仕込み液レベルのまま一定に保つよう連続的に蒸留し、生成するアンモニアを除去しながら反応させる。ホルムアルデヒド及びシアン化ナトリウムの滴下終了後、1時間、95℃で熟成させ、反応を完結させた。これによりグルタミン酸−N,N−二酢酸四ナトリウム塩を液中収率99%(対グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物)で得た。副生のグルタミン酸−N−モノ酢酸三ナトリウム塩は収率1%(対グルタミン酸モノナトリウム塩一水和物)以下であった。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、生分解性のキレート剤として有効なグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類がグルタミン酸またはその塩から一段階で高収率かつ高純度で製造できる方法である。この方法においては、青酸をアルカリ金属シアン化物に変換することなく、直接そのまま反応に供給することができ、、工業的に極めて有利な方法である。

Claims (2)

  1. グルタミン酸またはその塩にアルカリ性条件下、青酸及びホルマリンを供給し反応させる際、アルカリ金属水酸化物をグルタミン酸塩に対して2.0〜3.0倍モル及び水を加えた後、先に青酸のみをグルタミン酸塩に対して0.01〜0.5倍モル供給し、その後青酸及びホルマリンをそれぞれ総量として、グルタミン酸塩に対して2.0〜3.0倍モル供給することを特徴とするグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類の製造方法。
  2. グルタミン酸またはその塩の溶液に青酸、ホルマリン及びアルカリ金属水酸化物を供給し反応させる際、グルタミン酸塩水溶液に、先にグルタミン酸塩に対し、アルカリ金属水酸化物0.02〜2.0倍モル及び青酸0.01〜0.5倍モルを供給し、その後アルカリ金属水酸化物、ホルマリン及び青酸をそれぞれ総量として、グルタミン酸塩に対して2.1〜3.0倍モル供給することを特徴とするグルタミン酸−N,N−二酢酸塩類の製造方法。
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