JP3805546B2 - 耐熱性ボンディングシートの製造方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、ベースフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層を有するボンディングシートの製造方法に関し、さらに詳しくは、耐熱性、接着性、寸法特性に優れる耐熱性ボンディングシートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでおり、電子機器に用いられる電子部品の小型化、軽量化の要請が高まっている。これに伴い、電子部品の素材についても、耐熱性、機械的強度、電気特性等の諸物性がさらに求められ、半導体素子パッケージ方法やそれらを実装する配線板にも、より高密度、高機能、かつ高性能なものが求められるようになってきた。フレキシブルプリント配線板(以下FPCと呼ぶ)に関しては、細線加工、多層形成等が行われるようになり、FPCに直接部品を搭載する部品実装用FPC、両面に回路を形成した両面FPC、複数のFPCを積層して層間を配線でつないだ多層FPCなどが出現してきた。
【0003】
一般にFPCは柔軟で薄いベースフィルム上に回路パターンを形成し、その表面カバー層を施した構成をしており、上述のようなFPCを得るためにはその材料として用いられる絶縁接着剤や絶縁有機フィルムの高性能化が必要となっている。具体的には、高い耐熱性、機械強度を有し、加工性、接着性、低吸湿性、電気特性、寸法安定性に優れることである。
【0004】
現在のところFPCの絶縁有機フィルムには、諸特性に優れるポリイミド樹脂かなるフィルムが広く用いられている。絶縁接着剤には、低温加工性や作業性に優れるエポキシ樹脂やアクリル樹脂が用いられている。しかし、これらの接着剤は、特に耐熱性において充分でないことが分かっている。詳しくは150℃以上の温度に長時間さらされると、これら接着剤の劣化が起こり、種々特性に影響を与える。更にこれらの接着剤を用いる場合、ベースフィルム上に接着剤を塗布、乾燥した後、導体層(一般に銅箔が用いられている)と張り合わされるが、充分な接着を実現するために長時間の熱処理を行わなければならない等の問題を抱えている。
【0005】
特にFPCの用途拡大に伴い、耐熱性に関する課題を解決することが急務となっている。この問題解決のために、接着剤層を有しない2層FPCや溶融流動性に優れるポリイミド樹脂を用いたFPC等が提案されている。上記の接着剤層を有しない2層FPCに関しては、絶縁フィルム上に直接導体層を形成する方法と導体層に直接絶縁層を形成する方法が一般的である。絶縁層に直接導体層を形成する方法では、蒸着法やスパッタリング法で導体の薄層を形成した後、メッキ法で導体の厚層を形成する方法が用いられているが、薄層形成時にピンホールが発生しやすくまた絶縁層と導体層の充分な接着力を得ることができない等の問題を抱えている。
【0006】
一方、導体層に直接絶縁層を形成する方法では、ポリイミド共重合体もしくはポリアミド酸共重合体の溶液を導体層に流延塗布、乾燥し絶縁層を形成する方法を用いているが、種々溶剤による導体層の腐食が起こりやすい。また両面版を作製する際には2枚の片面板を作製した後で、これら片面板を張りあわすという煩雑な工程が必要となる等の問題を抱えている。
【0007】
また、溶融流動性に優れるポリイミド樹脂を用いたFPCに関しては、特開平2−138789号、特開平5−179224号や特開平5−112768号で提案されている耐熱性樹脂からなるベースフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層を有するボンディングシートを用いるが、接着性、寸法安定性、半田耐熱等を実現することが困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとく耐熱性に優れるFPCにはどのような形態を取るにしろ問題点があるが、生産性や特性面を考慮した場合、耐熱性樹脂からなるベースフィルムに熱可塑性ポリイミドを積層したボンディングシートが最有利であると考えられる。そこで、このケースに関する上記の如き問題、すなわち接着性、寸法特性、半田耐熱性、さらには低吸水率、低誘電特性に優れるFPCに用いられる耐熱性ボンディングシートの製造方法を提供することを目的に鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る耐熱性ボンディングシート製造方法の要旨とするところは、耐熱性樹脂からなるベースフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層を有するボンディングシートの製造方法において、最終的な熱処理が300℃以上の温度および2〜5kgf/mの張力で行われ、銅箔との接着強度が0.5kgf/cm以上、300℃で5分間加熱した際の収縮率が0.2%以下であり、熱処理がフローティングで行われることを特徴とする耐熱性ボンディングシートの製造方法である。
【0011】
また、上記最終的な熱処理は、300〜350℃の温度で行われることが好ましい。
【0012】
さらに、熱可塑性ポリイミド層が一般式(1)化3
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、 m,nはポリマ−鎖中の各反復単位モル分率に等しく、mは約0.00〜約0.95の範囲であり、nは約1.00〜約0.05の範囲である。但しmとnとの合計は1.00に等しい。 A,Bは4価の有機基、X、Yは2価の有機基を示す。)で表される耐熱性ボンディングシートの製造方法である。
【0015】
さらに、一般式(1)中のA,Bが化4
【0016】
【化4】
【0017】
に示す4価の有機基の群から選択される少なくとも2種であることを特徴とする耐熱性ボンディングシートの製造方法である。
【0018】
さらには、前記一般式(1)中のX、Yが、化5
【0019】
【化5】
【0020】
に示す2価の有機基の群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする耐熱性ボンディングシートの製造方法である。
【0021】
さらに、耐熱性樹脂からなるベースフィルムが、非熱可塑性ポリイミドフィルムまたはガラス転移温度が350℃以上の熱可塑性ポリイミドフィルムであることを特徴とする耐熱性ボンディングシートの製造方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。最初に、本発明において熱可塑ポリイミド層として用いられるポリアミド酸共重合体溶液の調製方法について説明する。
【0023】
ポリアミド酸共重合体は、酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中で反応させることにより得られるが、本発明においては、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気中において、一般式(2)
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、Cは4価の有機基を示す。)で表される少なくとも一種の酸二無水物を有機溶媒中に溶解、又は拡散させる。この溶液に一般式(3)
【0026】
【化7】
【0027】
(式中、Xは2価の有機基を示す。)で表される少なくとも一種のジアミンを、固体の状態または有機溶媒溶液の状態で添加する。さらに、前記の一般式(2)で表される1種又は2種以上の酸二無水物の混合物を固体の状態または有機溶媒溶液の状態で添加し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を得る。また、この反応において、上記添加手順とは逆に、まずジアミンの溶液を調製し、この溶液中に固体状の酸二無水物または酸二無水物の有機溶媒溶液を添加してもよい。このときの反応温度は10℃〜0℃が好ましい。反応時間は30分間〜3時間である。かかる反応により熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液の接着剤が調製される。
【0028】
ポリアミド酸の合成反応に使用される有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,Nジメチルホルムアミド、N,Nジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,Nジメチルアセトアミド、N,Nジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒を挙げることができる。これらを1種類のみで用いることも、2種あるいは3種以上からなる混合溶媒も用いることもできる。また、これらの極性溶媒とポリアミド酸の非溶媒とからなる混合溶媒も用いることもできる。ポリアミド酸の非溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ等を挙げることができる。
【0029】
係るポリアミド酸共重合体及びポリイミド共重合体の分子量は特に規制されるものではないが、耐熱性接着剤としての強度を維持するためには、数平均分子量が5万以上、さらには8万以上、特には10万以上が好ましい。接着剤であるポリアミド酸共重合体(溶液)の分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定が可能である。
【0030】
次に、この前駆体であるポリアミド酸溶液からポリイミドを得るためには、熱的又は化学的に脱水閉環(イミド化)する方法を用いればよい。具体的には熱的に脱水閉環(イミド化)する方法では、上記ポリアミド酸の溶液を耐熱性樹脂からなるベースフィルム上に塗布して膜状とし、有機溶媒を蒸発させ乾燥することにより自己支持体の膜を得る。さらに有機溶媒の蒸発は150℃以下の温度で約5分間〜90分間行うのが好ましい。次に、これを加熱乾燥してイミド化する。イミド化させる際の加熱温度は150℃〜350℃の範囲が好ましい。特に最終の熱処理は300℃以上が好ましい。さらに好ましくは300〜350℃が好ましい。加熱時間は厚みや最高温度によって異なるが、一般には最高温度に達してから10秒〜10分の範囲が好ましい。さらにこの熱処理時には、熱処理の温度が熱可塑層のTgよりも高いため応力が残るため極力張力をかけずに行うことが好ましい。張力は5kgf/m以下が好ましい。さらにはフィルムの搬送性も考慮し2kgf/m〜5kgf/mが好ましい。また熱処理中にロール等にフィルムが接触しないいわゆるフローティング方法がより好ましい。熱処理温度が熱可塑層のTgよりも高いため、熱可塑層の粘着が発生し、張力バランスが崩れたり、熱可塑表面が悪影響を受けるからである。
【0031】
化学的に脱水閉環(イミド化)する方法では、上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒の第3級アミンとを加え、熱的に脱水する場合と同様の方法で処理すると、熱的に脱水する場合よりも短時間で所望のポリイミド膜が得られる。
【0032】
また、触媒として使用される第3級アミンとしては、ピリジン、αピコリン、βピコリン、γピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、イソキノリンなどが好ましい。
【0033】
次に、ボンディングシートの片側または両側に銅箔を重ねて熱圧着することにより、銅張積層板が得られる。
【0034】
なお、本発明でいうベースフィルムはFPC等のベースフィルムとして使用可能なものであればいかなるフィルムを用いてもよいが、特には耐熱性に優れた特性を有するポリイミドフィルムが好ましく用いられる。具体的には、ベースフィルムとして用いるポリイミドフィルムは、例えば、「アピカル(登録商標;鐘淵化学工業株式会社製)のような接着性を有しないポリイミドフィルムを用いることができるが、その他いかなる構造のポリイミドフィルムであってもよい。
【0035】
以上、本発明に係る耐熱性ボンディングシートの製造方法の実施の形態について説明したが、本発明はこれによって限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた様態で実施しうるものである。以上の実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものでもない。
【0036】
【実施例1】
系全体を氷水で冷やし、窒素置換をした2000mlの三口のセパラブルフラスコに33.2gの3,3'4,4'ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAという。)、287gのジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)を採り、スターラーを用いて撹拌することにより充分に溶解させた。続いて、43.1gの2,2'ビス〔4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPという。)を20gのDMFを用いて投入し反応させた。15分間の撹拌の後、76.0gの3,3',4,4'‐エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物(以下、TMEGという。)を150gのDMFを用いて投入した。15分間の撹拌の後、80.0 gのBAPPを150gのDMFを用いて投入し反応させた。30分間の撹拌の後、さらに4.1gのTMEGを47.2gのDMFに溶かした溶液をフラスコ内の溶液の粘度に注意しながら徐々に投入し、その後1時間撹拌しながら放置した。その後、106gのDMFを投入し撹拌することでポリアミド酸溶液を得た。
【0037】
次に、このポリアミド酸溶液をベースフィルム12.5NPI(鐘淵化学社製)の両面上に最終厚みが片面6.5μmになるように塗布し、100℃で6分間加熱した後、150℃、200℃、300℃で各6分間加熱し、ボンディングシートを得た。加熱時のテンションは5kgf/m、加熱中はロール等に接触しないようにした。得られたボンディングシートの接着層面(片面または両面)に18μm厚の圧延銅箔を重ね、その上に25μm厚ポリイミドフィルムをの離型フィルムとして配設して、ダブルベルトプレス機(DBP)にてラミネートした。ラミネート温度は280℃、圧力70kgf/cm、ラミネート時間約5分間加熱して銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について、JIS C6481に従い、ピール強度(kg/cm)、JIS6471に従い、半田耐熱性を測定した。またボンディングシートの300℃5分間加熱後の収縮率をJIS6471に従い測定した。その結果、ピール強度は1.5kgf/cmを示した。半田耐熱性は、常態調整後(20℃、60%RH、24時間調整後、300℃ 1分間浸せき)、吸湿後(40℃、90%RH、96時間調整後、280℃ 10秒間浸せき)とも膨れ、はがれはなく良好であった。またボンディングシートの加熱収縮率は0.2%であった。
【0038】
【実施例2】
最終的な熱処理を150℃、250℃、350℃で各6分にした以外は実施例1と同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は、1.2kgf/cm、半田耐熱は、常態、吸湿後とも良好であった。加熱収縮は0.2%であった。
【0039】
【実施例3】
最終的な熱処理を150℃、250℃、300℃で各3分にした以外は実施例1と同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は、0.8kgf/cm、半田耐熱は、常態、吸湿後とも良好であった。加熱収縮は0.2%であった。
【0040】
【実施例4】
最終的な熱処理を2kgf/mの張力で行った以外は実施例1と同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は、1.2kgf/cm、半田耐熱は、常態、吸湿後とも良好であった。加熱収縮は0.1%であった。
【0041】
【実施例5】
最終的な熱処理を2kgf/mの張力で行った以外は実施例2同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は、1.0kgf/cm、半田耐熱は、常態、吸湿後とも良好であった。加熱収縮は0.1%であった。
【0042】
【実施例6】
最終的な熱処理を2kgf/mの張力で行った以外は実施例3同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は、0.9kgf/cm、半田耐熱は、常態、吸湿後とも良好であった。加熱収縮は0.1%であった。
【0043】
【比較例1】
最終的な熱処理を150℃、250℃で各6分にした以外は実施例1と同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は、0.4kgf/cm、半田耐熱は、常態、吸湿後とも良好であった。加熱収縮は0.2%であった。
【0044】
【比較例2】
最終的な熱処理の張力を10kgf/mにした以外は実施例1と同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は1.5kgf/cm、半田耐熱は常態、吸湿とも良好、加熱収縮は0.5%であった。
【0045】
【比較例3】
最終的な熱処理時にボンディングシートが数本のロール上を通過するようにした以外は実施例1と同様にしてボンディングシートを作製した後、DBPを用いて銅張積層板を作製した。ピール強度は1.2kg/cm、半田耐熱は常態、吸湿ともふくれのあるものがあった。また加熱収縮率は0.5%であった。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るボンディングシートの製造方法により得られるボンディングシートは、特に耐熱性、銅箔とのピール強度、寸法特性に優れ、FPCやリジット‐フレックス基板材料、COL及びLOCパッケージ、MCM等の新規高密度実装材料用途に好適であり、その他用途は特に限定されない。
Claims (5)
- 耐熱性樹脂からなるベースフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層を有するボンディングシートの製造方法において、最終的な熱処理が300℃以上の温度および2〜5kgf/mの張力で行われ、銅箔との接着強度が0.5kgf/cm以上、300℃で5分間加熱した際の収縮率が0.2%以下であり、
最終的な熱処理がフローティングで行われることを特徴とする耐熱性ボンディングシートの製造方法。 - 最終的な熱処理が300〜350℃の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性ボンディングシートの製造方法。
- 前記耐熱性樹脂からなるベースフィルムが、非熱可塑性ポリイミドフィルムまたはガラス転移温度が350℃以上の熱可塑性ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性ボンディングシートの製造方法。
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