JP3802772B2 - 直交周波数分割多重変調回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直交周波数分割多重変調回路に係り、特に、地上波デジタル放送やMMAC(マルチメディア モバイル アクセス コミニュケーション)の高速無線LAN(ローカル エリア ネットワーク)等のデジタル無線方式に用いられ、変調信号を補間して出力するときにその補間次数を比較的大きくした場合であっても、高調波の発生が抑圧され、補間器の回路規模が大きくならない直交周波数分割多重変調回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、放送の分野においては、これまでの地上波アナログ放送に代わって、良好な放送品質を有し、多くの放送チャネルの送信を可能にした地上波デジタル放送が脚光を浴びるようになってきた。そして、既に欧米各国においては本放送が開始されているが、日本においても間もなく実用化が見込まれている。
【0003】
欧州や日本における地上波デジタル放送においては、放送信号に直交周波数分割多重(OFDM)変調方式が採用されており、地上波デジタル放送を送信する地上波デジタル放送送信機においては、直交周波数分割多重変調信号を形成する直交周波数分割多重変調回路が用いられている。
【0004】
従来、地上波デジタル放送送信機に用いられている直交周波数分割多重変調回路には、デジタル変調信号を複数のサブキャリアにマッピングして、複数(N)点の逆フーリエ変換を行う逆フーリエ変換(IFFT)回路と、逆フーリエ変換回路の出力信号をサンプリング周波数の整数倍のサンプリング周波数で補間する補間回路部とを備えている。
【0005】
ここで、図17は、かかる既知の直交周波数分割多重変調回路の構成の一例を示すブロック図であって、4倍のサンプリング周波数で補間する補間回路部を備えているものである。
【0006】
また、図18は、図17に図示された直交周波数分割多重変調回路の各部に得られる信号波形(周波数スペクトラム)図である。
【0007】
図17に示されるように、この直交周波数分割多重変調回路は、デジタル変調器51と、シリアル−パラレル変換器(S/P)52と、逆フーリエ変換器(IFFT)53と、パラレル−シリアル変換器(P/S)54と、有限インパルス応答(FIR)低域通過型フィルタ(LPF)からなる同相信号補間器55Iと、有限インパルス応答(FIR)低域通過型フィルタ(LPF)からなる直交信号補間器55Qと、同相信号乗算器56Iと、直交信号乗算器56Qと、局部発振器57と、90°移相器58と、加算器59と、デジタル−アナログ変換器(D/A)60とからなり、同相信号補間器55I、直交信号補間器55Q、同相信号乗算器56I、直交信号乗算器56Q、局部発振器57、90°移相器58からなる部分が補間回路部を構成している。また、同相信号乗算器56I、同相信号乗算器56I、局部発振器57、90°移相器58、加算器59からなる回路部分は、直交変調回路を構成している。
【0008】
そして、デジタル変調器51は、入力がデジタルデータ入力端子61に接続され、出力がシリアル−パラレル変換器52の入力に接続される。逆フーリエ変換器53は、入力がシリアル−パラレル変換器52の出力に接続され、出力がパラレル−シリアル変換器54の入力に接続される。同相信号補間器55Iは、入力がパラレル−シリアル変換器54の同相出力に接続され、出力が同相信号乗算器56Iの第1入力に接続される。直交信号補間器55Qは、入力がパラレル−シリアル変換器54の直交出力に接続され、出力が直交信号乗算器56Qの第1入力に接続される。同相信号乗算器56Iは、第2入力が局部発振器57の出力に接続され、出力が加算器59の第1入力に接続される。直交信号補間器55Qは、第2入力が90°移相器58を通して局部発振器57の出力に接続され、出力が加算器59の第2入力に接続される。デジタル−アナログ変換器60は、入力が加算器59の出力に接続され、出力がアナログ信号出力端子62に接続される。
【0009】
前記構成による直交周波数分割多重変調回路の動作を、図17に図示の信号波形図を併用して説明する。
【0010】
図17に図示されていないデータ発生源からデジタルデータが出力されると、このデジタルデータは、デジタルデータ入力端子61を通してデジタル変調器51に供給され、デジタル変調器51においてサンプリング周波数fs’による四相位相シフトキーイング(QPSK)等のデジタル変調を行い、デジタル変調器51から入力デジタルデータと同相の同相デジタル変調信号(I)及び入力デジタルデータと90°の位相差を持つ直交デジタル変調信号(Q)が出力される。次に、同相デジタル変調信号及び直交デジタル変調信号は、それぞれ、シリアル−パラレル変換器52においてシリアル−パラレル変換され、同相パラレル信号及び直交パラレル信号として逆フーリエ変換器53に供給される。逆フーリエ変換器53は、供給された同相パラレル信号及び直交パラレル信号をそれぞれ複数個のサブキャリアにマッピングするとともに、ヌル(0)となる複数のキャリアを加えて複数(N)点の逆フーリエ変換を行い、各N個の同相逆フーリエ変換信号及び直交逆フーリエ変換信号を出力する。次いで、各N個の同相逆フーリエ変換信号及び直交逆フーリエ変換信号は、それぞれ、パラレル−シリアル変換器54においてパラレル−シリアル変換され、図18の第1段目に示すような信号スペクトルを有する同相シリアル信号(I)及び直交シリアル信号(Q)としてサンプリング周波数fsで同相信号補間器55I及び直交信号補間器55Qに供給される。
【0011】
この場合、同相信号補間器55I及び直交信号補間器55Qは、それぞれ、有限インパルス応答デジタルフィルタからなるもので、サンプリング周波数fsに補間次数n(整数で、本例においては4)を乗算したサンプリング周波数4fsによる補間を行い、図18の第2段目に示されるような周波数スペクトラムを持つ補間信号が形成される。その後、これらの補間信号は、図18の第2段目に示されるような有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタの低域通過特性によって、信号帯域の中間にある3つの周波数スペクトラムを持つ信号が除去され、両端にある2つの周波数スペクトラムを持つ信号だけが抽出され、それぞれ、同相信号乗算器56I及び直交信号乗算器56Qに供給される。
【0012】
同相信号乗算器56Iは、同相信号補間器55Iの出力信号とともに、局部発振器57からサンプリング周波数fsの局部発振信号が供給されてそれらの信号が乗算され、また、直交信号乗算器56Qは、直交信号乗算器56Qの出力信号とともに、局部発振器57のサンプリング周波数fsの局部発振信号を90°移相器58により90°移相させた局部発振信号が供給されてそれらの信号が乗算され、それぞれ、図18の第4段目に示されるような周波数スペクトラムを持つ信号が得られる。これらの信号は、加算器59で加算された後、デジタル−アナログ変換器60に供給されてデジタル−アナログ変換され、アナログ信号としてアナログ信号出力端子62に供給される。
【0013】
ここで、図19は、同相信号補間器55I及び直交信号補間器55Qに用いられる有限インパルス応答(FIR)デジタルフィルタの基本回路例を示す回路図である。
【0014】
図19に示されるように、この有限インパルス応答(FIR)デジタル低域通過型フィルタ55I(55Q)は、入力端子Sinと、出力端子Soutと、8個の遅延部631 乃至638 と、9個の乗算部641 乃至649 と、9個の乗算係数発生部651 乃至659 と、加算部66とを備え、それらは図18に図示されるように相互接続されている。
【0015】
なお、図19に図示の有限インパルス応答(FIR)デジタル低域通過型フィルタは、タップ(信号段)段数が9タップのものとして示されているが、図18の第2段目に示されるような低域通過特性、例えば、振幅が0dBになる通過帯域が0乃至0.09fsの範囲内にあり、振幅が−60dB以下になる阻止帯域が0.16乃至0.5fsの範囲内にあり、通過帯域と阻止帯域の間の振幅立ち下がり領域が0.09乃至0.16fsの範囲内にあるような特性を得るためには、実際のタップの段数として50タップ以上が必要になる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
前記既知の直交周波数分割多重変調回路は、同相信号補間器55I及び直交信号補間器55Qに用いられる有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタの補間次数nを、4のような大きい次数にした場合、広い帯域にわたり高調波が発生するので、これを抑圧する必要がある。また、その補間次数の大きさに応じて有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタの遮断特性を急峻なものにする必要がある。そして、このように帯域幅が広く、かつ、遮断特性が急峻な有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタは、そのタップ数が前述のように50タップ以上になり、直交周波数分割多重変調回路のロジック回路部の回路規模が大きくなって、直交周波数分割多重変調回路における消費電力が増大してしまうことになる。
【0017】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、その目的は、補間手段として縦続接続した補間次数2の補間器を用いるとともに、その補間器に無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタを含めることにより、高調波の発生を抑圧し、ロジック回路部の回路規模の増大を防ぐようにした直交周波数分割多重変調回路を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明による直交周波数分割多重変調回路は、デジタル変調信号をサンプリング周波数の1/2の周波数を中心とした複数個のサブキャリアにマッピングして逆フーリエ変換を行い、複数個の逆フーリエ変換信号を出力する逆フーリエ変換手段と、複数個の逆フーリエ変換信号を、同相信号及び直交信号を個別に補間する前段補間手段と、同相信号または直交信号の一方を補間する終段補間手段とを有する補間手段とを備え、前段補間手段は、補間次数2で補間する初段補間器だけ、または、初段補間器と、初段補間器に縦続接続され、各段毎に、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに続く補間次数2で補間する次段補間器とからなる組み合わせ段を1段以上有しており、終段補間手段は、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに従続接続された補間次数2で補間する次続補間器とを有する第1の手段を具備する。
【0019】
前記第1の手段によれば、補間手段は、同相信号及び直交信号を補間次数2で補間する初段補間器を含むか、初段補間器及び補間次数2で補間する1段以上の次段補間器を含む前段補間手段と、同相信号または直交信号の一方を補間次数2で補間する次続補間器を含んだ終段補間手段とによって形成し、それぞれの補間器により時間的に離散したサンプル信号の間で波形が滑らかに変化するように補間されるので、それぞれの補間器において変調信号の中心周波数の3倍の周波数を中心とする信号帯域に高調波が生じることがなく、有効に高調波の発生を抑圧することができ、しかも、終段補間手段において同相信号または直交信号の一方だけの補間を行っているので、次続補間器の構成ひいては直交周波数分割多重変調回路の構成が大幅に簡素化される。
【0020】
また、前記目的を達成するために、本発明による直交周波数分割多重変調回路は、デジタル変調信号をサンプリング周波数の1/2の周波数を中心とした複数個のサブキャリアにマッピングして逆フーリエ変換を行い、複数個の逆フーリエ変換信号を出力する逆フーリエ変換手段と、複数個の逆フーリエ変換信号を、同相信号及び直交信号を個別に補間する前段補間手段と、同相信号または直交信号の一方を補間する終段補間手段とを有する補間手段とを備え、前段補間手段は、補間次数2で補間する初段補間器だけ、または、初段補間器と、初段補間器に縦続接続され、各段毎に、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに続く補間次数2で補間する次段補間器とからなる組み合わせ段を1段以上有しており、終段補間手段は、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに従続接続された補間次数2で補間する次続補間器とを有するもので、各補間器は、同相信号または直交信号の一方を90°移相する無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタと、同相信号または直交信号の他方を無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ遅延するデジタル遅延回路とを有する第2の手段を具備する。
【0021】
前記第2の手段によれば、前記第1の手段によって得られる機能に加えて、補間次数2で補間する補間器に、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタとその無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ信号遅延させるデジタル遅延回路とを用いているので、この無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタのタップ段数を、既知の補間器で用いている有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタのタップ段数よりも大幅に少なくすることが可能になり、ロジック回路部の回路規模を増大させることなく、直交周波数分割多重変調回路の消費電力の増大を回避することができる。
【0024】
さらに、前記目的を達成するために、本発明による直交周波数分割多重変調回路は、デジタル変調信号をサンプリング周波数の1/2の周波数を中心とした複数個のサブキャリアにマッピングして逆フーリエ変換を行い、複数個の逆フーリエ変換信号を出力する逆フーリエ変換手段と、複数個の逆フーリエ変換信号の同相信号または直交信号の一方を補間次数2で補間する1つの補間器を有する補間手段とを備えており、補間器は、同相信号または直交信号の一方を90°移相する無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタと、同相信号または直交信号の他方を無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ遅延するデジタル遅延回路とを有する第3の手段を具備する。
【0025】
前記第3の手段によれば、単一の補間器に無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタとその無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ遅延するデジタル遅延回路とを用いているので、この無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタのタップ段数を、既知の補間器に用いている有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタのタップ段数よりも大幅に少なくすることが可能になり、直交周波数分割多重変調回路の構成を簡素化できるとともに、ロジック回路部の回路規模を増大させることなく、直交周波数分割多重変調回路の消費電力の増大を回避できる。
【0026】
この場合、前記第2及び第3の手段における無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタは、信号処理部が出力側から偶数段目の信号処理部だけを備えており、動作周波数の1/2の周波数で動作させるようにすることが好ましい。
【0027】
このような構成にすれば、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタのタップ段数を、前記第2及び第3の手段に用いている信号処理部のタップ段数に比べ、有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタのタップ段数をさらに少なくすることができ、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの構成がより簡素化されるとともに、ロジック回路部の回路規模が増大することなく、直交周波数分割多重変調回路の消費電力の増大を確実に回避できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明による直交周波数分割多重変調回路の第1の実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図であり、補間次数2の補間器を2つ縦続接続したことにより、補間次数4の信号補間を行った例を示すものである。
【0030】
図1に示されるように、第1の実施の形態の直交周波数分割多重変調回路は、デジタル変調器1と、シリアル−パラレル変換器(S/P)2と、逆フーリエ変換器(IFFT)3と、パラレル−シリアル変換器(P/S)4と、初段補間器5と、次続補間器6と、複素乗算器(クロスプロダクト演算器)7と、局部発振器8と、90°移相器9と、デジタル−アナログ変換器(D/A)10と、デジタルデータ入力端子11と、アナログ信号出力端子12とを備えている。
【0031】
この場合、初段補間器5は、90°移相器を構成する第1無限インパルス応答(IIR)デジタル全域通過型フィルタ(図示記号90°)51 と、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 の信号遅延と同じ信号遅延を与える第1デジタル遅延器(図示記号DL)52 と、90°移相器を構成する第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ(図示記号90°)53 と、第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ53 の信号遅延と同じ信号遅延を与える第2デジタル遅延器(図示記号DL)54 と、180°移相器(図示記号180°)55 と、第1の1回路2接点スイッチ56 と第2の1回路2接点スイッチ57 とからなる。次続補間器6は、90°移相器を構成する第1無限インパルス応答(IIR)デジタル全域通過型フィルタ(図示記号90°)61 と、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ61 の信号遅延と同じ信号遅延を与える第1デジタル遅延器(DL)62 と、180°移相器(図示記号180°)63 と、1回路2接点スイッチ64 とからなる。
【0032】
デジタル変調器1は、入力がデジタルデータ入力端子11に接続され、出力がシリアル−パラレル変換器2の入力に接続される。逆フーリエ変換器3は、入力がシリアル−パラレル変換器2の出力に接続され、出力がパラレル−シリアル変換器4の入力に接続される。初段補間器5において、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 は、入力がパラレル−シリアル変換器4のI出力に接続され、出力がスイッチ56 の一方の固定接点に接続される。第1デジタル遅延器52 は、入力がパラレル−シリアル変換器4のQ出力に接続され、出力がスイッチ56 の他方の固定接点に接続される。第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ53 は、入力がパラレル−シリアル変換器4のQ出力に接続され、出力が180°移相器55 の入力に接続される。180°移相器55 は、出力がスイッチ57 の一方の固定接点に接続される。第2デジタル遅延器54 は、入力がパラレル−シリアル変換器4のI出力に接続され、出力がスイッチ57 の他方の固定接点に接続される。
【0033】
次続補間器6において、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ61 は、入力が複素乗算器7の第1出力に接続され、出力が180°移相器63 の入力に接続される。180°移相器63 は、出力がスイッチ64 の一方の固定接点に接続される。第1デジタル遅延器62 は、入力が複素乗算器7の第2出力に接続され、出力がスイッチ64 の他方の固定接点に接続される。複素乗算器7は、第1入力がスイッチ56 の可動接点に接続され、第2入力がスイッチ57 の可動接点に接続され、第3入力が局部発振器8の出力に接続され、第4入力が90°移相器9の出力に接続される。90°移相器9は、入力が局部発振器8の出力に接続される。デジタル−アナログ変換器10は、入力がスイッチ64 の可動接点に接続され、出力がアナログ信号出力端子12に接続される。
【0034】
次いで、図3は、図1に図示された直交周波数分割多重変調回路の各部に得られる信号波形(周波数スペクトラム)図である。
【0035】
前記構成を有する第1の実施の形態の直交周波数分割多重変調回路の動作を、図3に図示の信号波形図を併用して説明する。
【0036】
いま、データ発生源(図示なし)から出力されたデジタルデータがデジタルデータ入力端子11に印加されると、そのデジタルデータがデジタル変調器1に供給される。デジタル変調器1は、供給されたデジタルデータをサンプリング周波数fs’によって四相位相シフトキーイング(QPSK)等のデジタル変調を行い、そのI出力から入力デジタルデータと同相の同相デジタル変調信号(I)を出力し、そのQ出力から入力デジタルデータと90°の位相差を持つ直交デジタル変調信号(Q)を出力する。次に、同相デジタル変調信号及び直交デジタル変調信号は、それぞれ、シリアル−パラレル変換器2においてシリアル−パラレル変換され、同相パラレル信号及び直交パラレル信号として逆フーリエ変換器3に供給される。逆フーリエ変換器3は、供給された同相パラレル信号及び直交パラレル信号をそれぞれ複数個のサブキャリアにマッピングするとともに、ヌル(0)となる複数個のサブキャリアも加えて、複数(N)点の逆フーリエ変換を行い、それぞれN個の同相逆フーリエ変換信号及び直交逆フーリエ変換信号を出力する。次いで、N個の同相逆フーリエ変換信号及び直交逆フーリエ変換信号は、パラレル−シリアル変換器4においてそれぞれパラレル−シリアル変換され、中心周波数がサンプリング周波数fsの1/2である図3の第1段目に示すような信号スペクトルを有する同相シリアル信号及び直交シリアル信号(変調信号)が出力される。これらの同相シリアル信号及び直交シリアル信号は初段補間器5に供給される。
【0037】
初段補間器5は、サンプリング周波数fsの同相シリアル信号及び直交シリアル信号(変調信号)が入力され、同相シリアル信号及び直交シリアル信号に対して信号補間を行い、サンプリング周波数fsの2倍の周波数2fsの同相シリアル補間信号及び直交シリアル補間信号を出力する。このとき、信号変化が滑らかになるような信号補間が行われるので、図3の第2段目に示す周波数スペクトラムFの波形のように、サンプリング周波数fsの2倍の周波数2fsで出力しても、周波数1.5fsを中心とする周波数帯域内に高調波が発生しない。
【0038】
次いで、同相シリアル補間信号及び直交シリアル補間信号は、複素乗算器7において、周波数fs/2の局部発振器8からの局部発振信号、及び、その局部発振信号を90°移相した直交局部発振信号と複素乗算される。その複素乗算の結果、図3の第3段目に示す周波数スペクトラムJの波形のように、同相シリアル補間信号及び直交シリアル補間信号は、OFDM変調信号の中心周波数がfs/2だけ高域側にシフトされてfsになり、2fsのサンプリング周波数で出力される。
【0039】
続く、次続補間器6は、複素乗算器7から出力される同相シリアル補間信号または直交シリアル補間信号のいずれか一方に対して補間次数2で信号補間を行う。ここで、同相シリアル補間信号または直交シリアル補間信号のいずれか一方だけの信号補間を行っている理由は、同相シリアル補間信号または直交シリアル補間信号のいずれも直流成分を含んでいないからである。この信号補間により、次続補間器6からサンプリング周波数4fsの同相シリアル補間信号または直交シリアル補間信号が出力される。このときに、次続補間器6は、初段補間器5と同様の信号補間を行っているので、図3の第4段目に示す周波数スペクトラムKの波形のように、fsの4倍のサンプリング周波数4fsで出力しても、周波数3fsを中心とする周波数帯域内に高調波が発生しない。
【0040】
この後、補間次数4で信号補間が行われた同相シリアル補間信号または直交シリアル補間信号は、デジタル−アナログ変換器10に供給され、そこでアナログ信号に変換される。その結果、アナログ信号出力端子12からOFDM変調された信号成分を持ち、かつ、次数4で信号補間されたシリアル補間信号が出力される。
【0041】
次に、初段補間器5において、90°移相器を構成する第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 と、第1デジタル遅延器52 と、第1の1回路2接点スイッチ56 とによって直交シリアル信号に対する補間信号、すなわち直交シリアル補間信号を得る動作経緯について説明する。
【0042】
よく知られているように、直交変調信号は同相変調信号に対して90°の位相遅れを持った信号であるので、同相変調信号の位相を90°だけ遅らせれば、その信号は直交変調信号と同じ位相状態になる。そこで、この第1の実施の形態においては、同相シリアル信号を第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 を通すことにより90°だけ位相を遅らせ、同時に、直交シリアル信号を第1デジタル遅延器52 で第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 で生じる群遅延時間分だけ遅延させることにより、同相シリアル信号を直交シリアル信号と同じ位相状態にしている。このとき、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 を後述するような構成にすれば、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 から出力されるシリアル信号は、第1デジタル遅延器52 から出力されるシリアル信号の時間補間を行った信号になり、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 の出力信号及び第1デジタル遅延器52 の出力信号がサンプリング周波数fsの信号になる。これらの信号を第1の1回路2接点スイッチ56 に供給し、その可動接点をサンプリング周波数fsの2倍の周波数2fsで切換えると、第1の1回路2接点スイッチ56 から次数2で補間された直交シリアル補間信号が出力される。
【0043】
次いで、初段補間器5において、90°移相器を構成する第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ53 と、第2デジタル遅延器54 と、180°移相器55 と、第2の1回路2接点スイッチ57 とにより、同相シリアル信号に対する補間信号、すなわち同相シリアル補間信号を得る動作経緯について説明する。
【0044】
よく知られているように、同相変調信号は直交変調信号に対して90°の位相進みを持った信号であるとともに、直交変調信号に対して270°の位相遅れを持った信号でもあるので、同相変調信号の位相を270°だけ遅らせれば、同相変調信号は直交変調信号と同じ位相状態になる。そこで、この第1の実施の形態においては、直交シリアル信号を第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ53 を通すことにより90°だけ位相を遅らせ、さらに、180°移相器55 を通すことにより180°だけ位相を遅らせて全体で270°の位相を遅らせている。なお、位相を180°遅らせることは、信号の極性(符号)を反転させることと等価であるので、180°移相器55 は、デジタル信号の極性(符号)を反転させるインバータによって構成することが可能である。
【0045】
一方、同相シリアル信号については、第2デジタル遅延器54 を通して第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ53 で生じる群遅延時間分だけ遅延させ、同相シリアル信号を直交シリアル信号と同じ位相状態にしている。このときも、第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ53 を後述するような構成にすれば、第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ53 から出力されるシリアル信号は、第2デジタル遅延器54 から出力されるシリアル信号の時間補間を行った信号になる。これらの信号を第2の1回路2接点スイッチ57 に供給し、その可動接点をサンプリング周波数fsの2倍の周波数2fsで切換えると、第2の1回路2接点スイッチ57 から次数2で補間された同相シリアル補間信号が出力される。
【0046】
このようにして、初段補間器5からは、補間次数2で補間された同相シリアル補間信号及び直交シリアル補間信号が出力される。
【0047】
この後、次続補間器6の動作は、そのサンプリング周波数が初段補間器5のサンプリング周波数の2倍になっている点が異なっているだけで、その他の動作は初段補間器5の動作と同じである。このため、次段補間器6の動作については、これ以上の説明を省略する。
【0048】
続く、図4は、図1に図示された無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの具体的構成の一例を示す回路図であり、図5は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの位相の変化状態を説明するための説明図である。図6は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタにおいてその周波数通過帯域内に発生する位相勾配数を変化させたときの位相の変化状態を示す特性図であり、図7は、図6に図示の特性を持つ無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタにおける周波数通過帯域内の位相差の変化状態を示す特性図である。図8は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタにおいて、位相勾配数をパラメータとしたときの群遅延の変化状態を示す特性図であり、図9は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタにおいて、発生する位相勾配数と信号処理段におけるタップ段数とを決めたとき、乗算係数発生部に設定される係数値の一例を示す一覧表である。図10は、位相勾配数に1を加えた数を係数の数とした場合に、乗算係数発生部に設定される係数値を示す一覧表である。図11は、位相勾配mに対してm+1係数の数を有する場合、図4に図示の無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタから奇数番目のタップ段を省略した無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの具体的構成の一例を間引き部ともに示した回路図である。
【0049】
図4乃至図11を用い、本発明の90°移相器に用いられる無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタについて説明する。
【0050】
図4に示されるように、この無限インパルス応答デジタルフィルタ14は、入力端子Sinと、出力端子Soutと、出力端子Sout側から入力端子Sin側に順番に接続された8つのタップ段141 乃至148 と、共通加算器149 とを備えている。この場合、各タップ段141 乃至148 は、それぞれ、第1遅延部1411乃至1481と、第2遅延部1412乃至1482と、加算部1413乃至1483と、乗算部1414乃至1484と、乗算係数発生部1415乃至1485とからなっており、各タップ段141 乃至148 において、それぞれの第1遅延部1411乃至1481、第2遅延部1412乃至1482、加算部1413乃至1483、乗算部1414乃至1484、乗算係数発生部1415乃至1485は、図4に図示されるように相互接続されている。
【0051】
次に、図5は、この無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の出力位相の変化状態を示すもので、デジタル信号遅延器の出力位相の変化状態とともに示すものである。
【0052】
図5において、縦軸は位相、横軸は周波数であり、実線は無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相の変化状態であり、一点鎖線はデジタル信号遅延器の位相の変化状態である。
【0053】
図5に示されるように、サンプリング周波数fsの1/4の周波数fs/4を中心とする信号帯域(点線で示す範囲)内において、デジタル信号遅延器の位相の変化状態は、信号帯域の下限周波数値から上限周波数値に向かうに従って位相値が直線的に変化し、位相値が−2πにまで達すると位相値が0に跳躍し、上限周波数値に向うに従って再び位相値が直線的に変化する。これに対し、無限インパルス応答デジタルフィルタ14の位相の変化状態も、信号帯域の下限周波数値から上限周波数値に向かうに従って位相値がデジタル信号遅延回路と同じ位相勾配で直線的に変化し、位相値が−2πにまで達すると位相値0に跳躍し、上限周波数値に向かうに従って再び位相値が直線的に変化するもので、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相値とデジタル信号遅延器の位相値との間の位相差は、信号帯域内で常時−(π/2)、すなわち−90°を保っている。
【0054】
この場合、位相勾配は、周波数変化に対する位相変化の割合を表すもので、周波数が0からfsまでの間に−2π毎の位相変化が何回発生するかによって定義される。例えば、周波数が0からfsまでの間の累積位相が−6πであれば、位相勾配は3になる。
【0055】
なお、位相勾配は、その定義から群遅延時間にもなるもので、サンプリング時間を単位とした遅延時間を示している。例えば、位相勾配が3であれば、群遅延は3クロックとなる。
【0056】
次いで、図6は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14において、周波数帯域内に発生する位相勾配数を変化させた場合の位相の変化状態を示す。
【0057】
図6において、縦軸は度(deg)で表した位相、横軸はラジアン(rad)で表した周波数(2πラジアンがサンプリング周波数に対応する)であり、実線は無限インパルス応答デジタルフィルタ14の位相勾配数を5にした場合の位相の変化状態、点線は無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相勾配数を7にした場合の位相の変化状態である。
【0058】
図6に示されるように、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14を構成する各第1遅延部1411乃至1481及び第2遅延部1412乃至1482のそれぞれの遅延定数z-1、各乗算係数発生部1415乃至1485のそれぞれの係数C1 乃至C8 を適宜選択することにより、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相の変化状態は、デジタル信号の周波数帯域(0.1π乃至0.9πラジアン)内で略直線状態になり、全周波数帯域(0乃至2πラジアン)で位相勾配数が5または7となるような変化状態になる。
【0059】
続いて、図7は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の信号帯域内における無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相とデジタル信号遅延器の位相との差を表す位相差の変化状態を示す特性図である。
【0060】
図7において、縦軸は度(deg)で表した位相差、横軸はラジアン(rad)で表した周波数であり、曲線Aは無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相勾配数を5にしたときの位相差の変化状態、曲線Bは無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相勾配数を7にしたときの位相差の変化状態である。
【0061】
図7に図示の曲線A及び曲線Bに示されるように、デジタル信号の周波数帯域(0.1π乃至0.9πラジアン)内において、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14は、5つまたは7つの位相差変化部分を有するものの、それらの位相差は−90°の近傍の範囲内に収まっている。
【0062】
続く、図8は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14において、位相勾配数をパラメータとしたときの群遅延の変化状態を示す特性図である。
【0063】
図8において、縦軸はサンプル数(sample)を基準として表した群遅延、横軸はラジアン(rad)で表した周波数であり、6本の曲線A3乃至A8は無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の位相勾配数をそれぞれ3乃至8にしたときの群遅延の変化状態である。
【0064】
図8に図示の曲線A3乃至A8に示されるように、デジタル信号の周波数帯域(0.1π乃至0.9πラジアン)内において、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14の群遅延の変化状態は、位相勾配数が3から8に増えるに従って変化状態が順次小さくなるものの、全体的にその変化状態は限られた範囲内に収まっている。
【0065】
このような特性を持つ無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14として、その位相勾配数が例えば3以上になるように、第1遅延部1411乃至1481及び第2遅延部1412乃至1482のそれぞれの遅延定数z-1、各乗算係数発生部1415乃至1485のそれぞれの係数C1 乃至C8 を適宜選択すれば、デジタル信号の周波数帯域内において無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14から出力される直交(Q)信号とデジタル信号遅延器から出力される同相(I)信号との位相差をほぼ90°にすることができ、直交(Q)信号と同相(I)信号の群遅延が殆んど同じになる。
【0066】
次に、図9は、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ14において、発生する位相勾配数とタップ段数とを決めたとき、乗算係数発生部に設定される係数値の一例を示す一覧表である。
【0067】
図9において、最も左側の欄が位相勾配数(表では位相勾配と表記している)、次の欄がタップ段数(表では係数の数と表記している)、その次の欄が乗算係数発生部に設定される係数値(表では図2の乗算係数発生部に図示された係数C1 、C2 、… …、C8 と表記しており、図4に図示されていない9番目及び10番目のタップ段の各乗算係数発生部の係数をC9 、C10と表記している)である。
【0068】
図9に示されるように、最上段の構成例では、位相勾配が4、係数の数が5のとき、係数C1 が2.5×10-7に、係数C2 が−0.4×10-1に、係数C3 が−9.1×10-7に、係数C4 が−9.3×10-2に、係数C5 が−3.2×10-6にそれぞれ設定される。同じように、第2段以降の構成例においても、位相勾配、係数の数に応じて、係数の数に合致した数の各係数C1 乃至C10がそれぞれ図示の値に設定される。
【0069】
ところで、図9に示される各係数C1 乃至C10の係数値を見ると、位相勾配が4で係数の数が5のとき、位相勾配が6で係数の数が7のとき、位相勾配が8で係数の数が9のときのそれぞれにおいて、奇数番目の係数C1 、C3 、C5 、C7 、C9 の係数値は、指数を含む数値が10-6、10-7、10-8、10-9になっていて、有効桁を5桁としたとき、これらの数値を含む各係数値は実質的に0になる。
【0070】
次いで、図10は、図9に示された位相勾配数に1を加えた数を係数の数とした場合に、乗算係数発生部に設定される係数値を示す一覧表である。
【0071】
図10において、最も左側の欄が位相勾配、次の欄が係数の数、その次の欄が係数C1 、C2 、… …、C9 であって、位相勾配と係数の数との間に、位相勾配がmであるとき、係数の数がm+1となる組み合わせの各係数C1 、C2 、……、C9 の係数値を示したものである。
【0072】
図10に示されるように、位相勾配がmで、係数の数がそれより1つ多いm+1となる組み合わせ、位相勾配が2乃至8で、それに対応した係数の数が3乃至9のものにおいては、奇数番目の係数C1 、C3 、C5 、C7 、C9 のいずれの係数値も、指数を含む数値が10-5、10-6、10-7、10-8、10-9であって、これらの数値を含む各係数値は実質的に0になる。
【0073】
位相勾配と係数の数がこのような関係にあり、それにより乗算係数発生部の係数が0になれば、その乗算係数発生部から出力される係数0を乗算する乗算器の乗算出力データが0になるとともに、乗算器に入力される加算器の出力データも不要になり、係数が0になる乗算係数発生部を有するタップ段、すなわち図4に点線によって指示される奇数番目のタップ段141 、143 、145 、147 等においては、それぞれ、加算部1413、1433、1453、1473等、乗算部1414、1434、1454、1474等、乗算係数発生部1415、1435、1455、1475等を設ける必要がなく、これらを省略することが可能になる。
【0074】
ここで、図11は、位相勾配がmで、係数の数がm+1とした場合に、図4に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14における奇数番目のタップ段141 、143 、145 、147 の加算部1413、1433、1453、1473、乗算部1414、1434、1454、1474及び乗算係数発生部1415、1435、1455、1475を省略した無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’と、その共通加算部149 と出力端子Soutとの間に挿入した間引き部15とを用いて構成した無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタの構成の一例を示す回路図である。
【0075】
図11に示される間引き部15は、次数2で間引きを行うもので、無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’から供給されたデータを1つ置きに間引き、出力端子Soutに1/2のデータレートの出力データを供給するものである。このとき、乗算係数発生部1425、1445、1465、1485の各係数値C2 、C4 、C6 、C8 は、それぞれ、C2 =−4.8×10-1、C4 =−1.0×10-1、C6 =−3.6×10-2、C8 =−1.3×10-2に設定されている。この場合に、無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’のサンプリング周波数をfiとすれば、周波数帯域が0.05乃至0.45fiであって、周波数帯域内の位相リップルが±1.5°以内に収まる周波数特性を持っている。
【0076】
図11に示される間引き部15を備えた無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’は、間引き部15の入力端における位相特性や群遅延特性が図5乃至図8に図示された特性と同じである。すなわち、無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’は、そのサンプリング周波数(データレート)fiの1/4である周波数fi/4を中心とした通過帯域において所定の位相・群遅延特性を有している。データが間引き部15を通過することにより、出力端子Soutのサンプリング周波数(データレート)foは無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’のサンプリング周波数(データレート)fiの1/2であるfi/2(=fo)となるので、前記の各特性はデータレートが変換され、fo/2を中心とした通過帯域における特性になるが、fiを基準に考えた場合、fi/4を中心とした特性になっている。
【0077】
このように、図11に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタは、図1に図示された各無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ51 、53 、61 に用いて好適なものである。
【0078】
ところで、図1に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ51 、53 は、そのサンプリング周波数(データレート)がfsであるので、図11に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’において、間引き部15のサンプリング周波数(データレート)f0 はfsとなり、間引き部15を除いてはその2倍の2fsのサンプリング周波数(データレート)(fi=2fs)で動作させる。また、図1に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 は、そのサンプリング周波数(データレート)が2fsであるので、図11に図示の無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタにおいて、間引き部15のサンプリング周波数(データレート)f0 は2fsとなり、間引き部15を除いてはその2倍の4fsのサンプリング周波数(データレート)(fi=2fs)で動作させる。
【0079】
次いで、図12は、図11に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’とともに、無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”の他の構成例を示す回路図であり、図1に図示された各無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ51 、53 、61 に用いて好適なものである。
【0080】
図12に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”は、図11に図示の無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’に用いられていた間引き部15を省略するとともに、図4に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14の奇数番目のタップ段141 、143 、145 、147 の全てを省略しているものである。そして、この無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”のサンプリング周波数(データレート)を図11に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタの出力端子Soutにおけるサンプリング周波数(データレート)と同じ周波数、すなわち図10に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタのサンプリング周波数(データレート)の1/2の周波数で動作させるようにしている。
【0081】
図12に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”を、図1に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ51 、53 に用いた場合、その出力サンプリング周波数(データレート)はfsになるので、無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”のサンプリング周波数(データレート)fiもfs(fi=fs)で動作させる。また、図11に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”を、図1に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 に用いた場合、その出力サンプリング周波数(データレート)は2fsになるので、無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”のサンプリング周波数(データレート)fiも2fs(fi=2fs)で動作させる。
【0082】
ここで、図4に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14と、図11に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’とを比較すると、明らかに前者に比べて後者は、回路素子が削減されており、しかも、無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14’のサンプリング周波数が無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14の1/2になるので、より低電力消費を達成できる。また、図12に図示された無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ14”も、同様である。
【0083】
このように、第1の実施の形態の直交周波数分割多重変調回路によれば、補間器として、第1及び第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 、53 を有する初段補間器5と、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ61 を有する次続補間器6とを用いて補間次数4の信号補間を行うことができ、これらの無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 、53 、61 のタップ段数は4タップ段程度のもので足りるので、全体的にロジック回路部の回路規模を、既知のロジック回路部の回路規模に比べて大幅に小型化することができ、直交周波数分割多重変調回路の消費電力を既知のものに比べて大きく低減することができる。
【0084】
ところで、第1の実施の形態においては、初段補間器5及び第2段目補間器9に用いられる第1及び第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 、53 、61 として、タップ(信号段)段数が4タップ段のものを用いた例を挙げて説明したが、本発明に用いられる第1及び第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 、53 、61 はタップ段数は4タップのものに限られるものでなく、第1及び第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 、53 、61 において必要とする位相特性に応じて適宜タップ段数を変更することができる。
【0085】
例えば、第1及び第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 、53 、61 として、その周波数帯域が0.05乃至0.45fsで、周波数帯域内の位相リップルが±0.5°以内の周波数選択特性を有するものが必要になったとすれば、タップ段数を5つにし、乗算係数発生部の各係数C2 、C4 、C6 、C8 、C10を、例えば、C2 =−4.9×10-1、C4 =−1.1×10-1、C6 =−4.0×10-2、C8 =−1.7×10-2、C10=−6.1×10-3に設定する。
【0086】
これに対して、第1及び第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ51 、53 、61 として、その周波数帯域がやや狭い0.1乃至0.4fsにし、その周波数帯域内の位相リップルが±1.5°以内の周波数選択特性を有するもので足りるときには、タップ段数を3つにし、乗算係数発生部の各係数C2 、C4 、C6 を、例えば、C2 =−4.6×10-1、C4 =−7.1×10-2、C6 =−1.3×10-2に設定すればよい。
【0087】
次に、図2は、本発明による直交周波数分割多重変調回路の第2の実施の形態を示すもので、その要部構成を示すブロック図であり、補間次数2の補間器を2つ用いたことにより、補間次数4の周波数補間を行っている他の例を示すものである。なお、図2において、図1に示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付けている。
【0088】
図2に示すように、第2の実施の形態は、第1の実施の形態に比べて、次続補間器6の構成が若干異なっている。すなわち、第2の実施の形態の次続補間器6は、第1の実施の形態の次続補間器6における180°移相器63 がなく、複素乗算器7の第1出力(同相出力)側に90°移相器を構成する第1無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 が接続され、第2出力(直交出力)側に第1デジタル遅延器62 が接続された構成になっているもので、第1の実施の形態の次続補間器6における複素乗算器7の第1出力及び第2出力へのデジタル遅延器62 及び第1無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 の接続状態と逆の接続状態になっている。
【0089】
また、第2の実施の形態は、第1の実施の形態に比べて、次続補間器6の構成の相違により、それらの動作が異なっている。すなわち、第2の実施の形態の次続補間器6は、スイッチ64 の可動接点を切替えることにより、直交信号を90°移相した同相信号によって補間した補間信号をスイッチ64 から出力する動作を行っているものであるのに対し、第1の実施の形態の次続補間器6は、次続補間器6において、スイッチ64 の可動接点を切替えることにより、同相信号を270°移相した直交信号によって補間した補間信号をスイッチ64 から出力する動作を行っているものである点に違いがある。しかし、次続補間器6の動作以外には、第2の実施の形態の動作と第1の実施の形態の動作との間に違いはない。
【0090】
そして、次続補間器6における動作の違いにより、次続補間器6から出力される補間信号が、第2の実施の形態が直交信号を同相信号によって補間した補間信号であり、第1の実施の形態が同相信号を直交信号によって補間した補間信号である点に違いがあるが、これらの補間信号はいずれも中間周波帯の信号である点で同じであるので、第2の実施の形態により得られる作用効果は、180°移相器63 がない点で若干構成が簡単になることを除けば、第1の実施の形態により得られる作用効果と同じである。
【0091】
次いで、図13は、本発明による直交周波数分割多重変調回路の第3の実施の形態を示すもので、その要部構成を示すブロック図であり、補間次数2の補間器を3つ用いたことにより、補間次数8の周波数補間を行っている例を示すものである。
【0092】
図13に示されるように、第3の実施の形態においては、初段補間器5と複素乗算器7との間に、次段補間器16と、複素乗算器(クロスプロダクト演算器)17と、局部発振器18と、90°移相器19からなる組み合わせ段を備えているものである。この場合、次段補間器16は、90°移相器を構成する第1無限インパルス応答(IIR)デジタル全域通過型フィルタ(図示記号90°)161 と、第1無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ161 の信号遅延と同じ信号遅延を与える第1デジタル遅延器(図示記号DL)162 と、90°移相器を構成する第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ(図示記号90°)163 と、第2無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタ163 の信号遅延と同じ信号遅延を与える第2デジタル遅延器(図示記号DL)164 と、180°移相器(図示記号180°)165 と、第1の1回路2接点スイッチ166 と、第2の1回路2接点スイッチ167 とからなっている。この場合、次段補間器16の構成は、図1に図示された初段補間器5の構成と同じであり、また、複素乗算器17と局部発振器18と90°移相器19とからなる部分の構成は、図1に図示された複素乗算器7と局部発振器8と90°移相器9とからなる部分の構成と同じである。
【0093】
この第3の実施の形態においては、複素乗算器17と局部発振器18と90°移相器19とからなる構成部分を設けたことにより、初段補間器5から出力される同相シリアル補間信号及び直交シリアル補間信号の中心周波数が1/2fsだけシフトされ、また、次段補間器16を設けたことにより、次段補間器16によって初段補間器5から出力される同相シリアル補間信号及び直交シリアル補間信号に対して次数2による信号補間が行われるもので、その結果、次続補間器6から次数8によって補間した補間信号が出力されるものである。
【0094】
そして、第3の実施の形態における、初段補間器5の動作、複素乗算器7や次続補間器6の動作は、それぞれ、第1の実施の形態における初段補間器5の動作、複素乗算器7や次続補間器6の動作と同じであり、また、第3の実施の形態における、複素乗算器17や次段補間器16の動作は、複素乗算器7や次続補間器6の動作に準じるものである。このため、第3の実施の形態による動作や作用は、第1の実施の形態による動作や作用殆ど同じであるので、第3の実施の形態の動作及び作用については、これ以上の説明を省略する。
【0095】
続く、図14は、本発明による直交周波数分割多重変調回路の第4の実施の形態を示すもので、その要部構成を示すブロック図であり、補間次数2の補間器を3つ用いたことにより、補間次数8の周波数補間を行っている他の例を示すものである。なお、図14において、図13に示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付けている。
【0096】
図14に示すように、第4の実施の形態は、第3の実施の形態に比べて、次続補間器6の構成が若干異なっているもので、この構成の違いは、第2の実施の形態と第1の実施の形態との構成の違いと同じところである。すなわち、第4の実施の形態の次続補間器6は、第3の実施の形態の次続補間器6における180°移相器63 がなく、複素乗算器7の第1出力(同相出力)側に90°移相器を構成する第1無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 が接続され、第2出力(直交出力)側に第1デジタル遅延器62 が接続された構成になっているもので、第3の実施の形態の次続補間器6における複素乗算器7の第1出力及び第2出力へのデジタル遅延器62 及び第1無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 の接続状態と逆の接続状態になっている。
【0097】
また、第4の実施の形態は、第3の実施の形態に比べて、次続補間器6の構成の相違により、それらの動作が異なっている。すなわち、第4の実施の形態の次続補間器6は、スイッチ64 の可動接点を切替えることにより、直交信号を90°移相した同相信号によって補間した補間信号をスイッチ64 から出力する動作を行っているのに対し、第3の実施の形態の次続補間器6は、次続補間器6において、スイッチ64 の可動接点を切替えることにより、同相信号を270°移相した直交信号によって補間した補間信号をスイッチ64 から出力する動作を行っている点に違いがある。しかし、次続補間器6の動作以外には、第4の実施の形態の動作と第3の実施の形態の動作との間に違いはない。
【0098】
そして、次続補間器6における動作の違いにより、次続補間器6から出力される補間信号が、第4の実施の形態が直交信号を同相信号によって補間した補間信号であり、第3の実施の形態が同相信号を直交信号によって補間した補間信号である点に違いがあるが、これらの補間信号はいずれも中間周波帯の信号である点で同じであるので、第4の実施の形態により得られる作用効果は、180°移相器63 がない点で若干構成が簡単になることを除けば、第3の実施の形態により得られる作用効果と同じである。
【0099】
続いて、図15は、本発明による直交周波数分割多重変調回路の第5の実施の形態を示すもので、その要部構成を示すブロック図であり、補間次数2の補間器を1つ用いたことにより、補間次数2の周波数補間を行っている例を示すものである。
【0100】
図15において、図1に示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付けている。
【0101】
この第5の実施の形態と第1の実施の形態との構成の違いは、第5の実施の形態が、次続補間器6に対応する1つの補間器6’だけの終段補間手段を用いているのに対し、第1の実施の形態が、初段補間器5からなる前段補間手段と、複素乗算器7及び次続補間器6等からなる終段補間手段とを用いている点にあるもので、その他の構成に変わりがない。このため、第5の実施の形態の構成については、これ以上の説明を省略する。
【0102】
また、第5の実施の形態における補間器6’の動作及び作用は、第1の実施の形態における次続補間器6の動作及び作用と同じであり、その他の構成の動作及び作用も対応する構成の動作及び作用と同じである。このため、第5の実施の形態の動作及び作用についても、これ以上の説明を省略する。
【0103】
さらに、図16は、本発明による直交周波数分割多重変調回路の第6の実施の形態を示すもので、その要部構成を示すブロック図であり、補間次数2の補間器を1つ用いたことにより、補間次数2の周波数補間を行っている他の例を示すものである。なお、図16において、図1に示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付けている。
【0104】
図16に示すように、第6の実施の形態は、第5の実施の形態に比べて、補間器6’の構成が若干異なっているもので、この構成の違いは、第2の実施の形態と第1の実施の形態との構成の違い及び第4の実施の形態と第3の実施の形態との構成の違いと同じところである。すなわち、第6の実施の形態の補間器6’は、第5の実施の形態の補間器6’における180°移相器63 がなく、複素乗算器7の第1出力(同相出力)側に90°移相器を構成する第1無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 が接続され、第2出力(直交出力)側に第1デジタル遅延器62 が接続された構成になっているもので、第5の実施の形態の補間器6’における複素乗算器7の第1出力及び第2出力へのデジタル遅延器62 及び第1無限インパルス応答デジタル全帯域通過フィルタ61 の接続状態と逆の接続状態になっている。
【0105】
また、第6の実施の形態は、第5の実施の形態に比べて、補間器6’の構成の相違により、それらの動作が異なっている。すなわち、第6の実施の形態の補間器6’は、スイッチ64 の可動接点を切替えることにより、直交信号を90°移相した同相信号によって補間した補間信号をスイッチ64 から出力する動作を行っているのに対し、第5の実施の形態の補間器6’は、補間器6’において、スイッチ64 の可動接点を切替えることにより、同相信号を270°移相した直交信号によって補間した補間信号をスイッチ64 から出力する動作を行っている点に違いがある。しかし、補間器6’の動作以外には、第6の実施の形態の動作と第5の実施の形態の動作との間に違いはない。
【0106】
そして、補間器6’における動作の違いにより、補間器6’から出力される補間信号が、第6の実施の形態が直交信号を同相信号によって補間した補間信号であり、第5の実施の形態が同相信号を直交信号によって補間した補間信号である点に違いがあるが、これらの補間信号はいずれも中間周波帯の信号である点で同じであるので、第6の実施の形態により得られる作用効果は、180°移相器63 がない点で若干構成が簡単になることを除けば、第5の実施の形態により得られる作用効果と同じである。
【0107】
ところで、前記第1乃至第6の実施の形態においては、補間次数4の信号補間、補間次数8の信号補間、補間次数2の信号補間をそれぞれ行った例を挙げて説明しているものであるが、本発明による信号補間の補間次数は、4、8、2の場合に限られるものでなく、2の指数乗2N (2、4、8、16、… …等)の補間次数の信号補間を行うような使用状態であればよく、その補間次数に応じて従属接続される補間器6や複素乗算器7等の段数を選択すればよいものである。
【0108】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、補間手段は、同相信号及び直交信号を補間次数2で補間する初段補間器を含むか、初段補間器及び補間次数2で補間する1段以上の次段補間器を含む前段補間手段と、同相信号または直交信号の一方を補間次数2で補間する次続補間器を含んだ終段補間手段とによって形成し、それぞれの補間器により時間的に離散したサンプル信号の間で波形が滑らかに変化するように補間されるので、それぞれの補間器において変調信号の中心周波数の3倍の周波数を中心とする信号帯域に高調波が生じることがなく、有効に高調波の発生を抑圧することができ、しかも、終段補間手段において同相信号または直交信号の一方だけの補間を行っているので、次続補間器の構成ひいては直交周波数分割多重変調回路の構成が大幅に簡素化されるという効果がある。
【0109】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明によって得られる効果に加えて、補間次数2で補間する補間器に、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタとその無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ信号遅延させるデジタル遅延回路とを用いているので、この無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタのタップ段数を、既知の補間器で用いている有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタのタップ段数よりも大幅に少なくすることが可能になり、ロジック回路部の回路規模を増大させることなく、直交周波数分割多重変調回路の消費電力の増大を回避することができるという効果がある。
【0111】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、単一の補間器に無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタとその無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ遅延するデジタル遅延回路とを用いているので、この無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタのタップ段数を、既知の補間器に用いている有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタのタップ段数よりも大幅に少なくすることができ、直交周波数分割多重変調回路の構成を簡素化できるとともに、ロジック回路部の回路規模を増大させることなく、直交周波数分割多重変調回路の消費電力の増大を回避できるという効果がある。
【0112】
この他に、請求項7及び請求項8に記載の発明によれば、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタのタップ段数を、請求項2に記載の発明及び請求項6に記載の発明に用いている信号処理部のタップ段数に比べて、有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタのタップ段数をさらに少なくすることが可能になり、無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの構成がより簡素化されるとともに、ロジック回路部の回路規模が増大することなく、直交周波数分割多重変調回路の消費電力の増大を確実に回避できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による直交周波数分割多重変調回路の第1の実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による直交周波数分割多重変調回路の第2の実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図3】図1に図示された直交周波数分割多重変調回路の各部に得られる信号波形図である。
【図4】無限インパルス応答デジタルフィルタの具体的構成の一例を示す回路図である。
【図5】無限インパルス応答デジタルフィルタの位相の変化状態を説明するための説明図である。
【図6】無限インパルス応答デジタルフィルタにおいてその周波数通過帯域内に発生する位相勾配数を変化させたときの位相の変化状態示す特性図である。
【図7】図5に図示された無限インパルス応答デジタルフィルタにおける周波数通過帯域内の位相差の変化状態を示す特性図である。
【図8】無限インパルス応答デジタルフィルタにおいて、位相勾配数をパラメータとしたときの群遅延の変化状態を示す特性図である。
【図9】無限インパルス応答デジタルフィルタにおいて、発生する位相勾配数と信号処理段におけるタップ段数とを決めたとき、乗算係数発生部に設定される係数値の一例を示す一覧表である。
【図10】図9に図示された位相勾配数に1を加えた数を係数の数とした場合に、乗算係数発生部に設定される係数値の一例を示す一覧表である。
【図11】図10に示されるような係数値を設定した場合の同相信号補間器や直交信号補間器に用いられる無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの構成の一例を示す回路図である。
【図12】図10に示されるような係数値を設定した場合の同相信号補間器や直交信号補間器に用いられる無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの構成の他の例を示す回路図である。
【図13】本発明による直交周波数分割多重変調回路の第3の実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図14】本発明による直交周波数分割多重変調回路の第4の実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図15】本発明による直交周波数分割多重変調回路の第5の実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図16】本発明による直交周波数分割多重変調回路の第6の実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図17】既知の直交周波数分割多重変調回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図18】図7に図示された直交周波数分割多重変調回路の各部に得られる信号波形図である。
【図19】同相信号補間器及び直交信号補間器に用いられる有限インパルス応答デジタル低域通過型フィルタの基本回路例を示す回路図である。
【符号の説明】
1 デジタル変調器
2 シリアル−パラレル変換器(S/P)
3 逆フーリエ変換器(IFFT)
4 パラレル−シリアル変換器(P/S)
5 初段補間器
51 、53 、61 、161 、163 無限インパルス応答(IIR)デジタル全域通過型フィルタ(90°)
52 、54 、62 、162 、164 デジタル遅延器(DL)
55 、63 、165 180°移相器(180°)
56 、57 、64 、166 、167 1回路2接点スイッチ
7、17 複素乗算器(クロスプロダクト演算器)
8、18 局部発振器
9、19 90°移相器
10 デジタル−アナログ変換器(D/A)
11 デジタルデータ入力端子
12 アナログ信号出力端子
14、14’、14” 無限インパルス応答(IIR)デジタル全域通過型フィルタ
15 間引き部
16 次段補間器
Claims (8)
- デジタル変調信号をサンプリング周波数の1/2の周波数を中心とした複数個のサブキャリアにマッピングして逆フーリエ変換を行い、複数個の逆フーリエ変換信号を出力する逆フーリエ変換手段と、前記複数個の逆フーリエ変換信号を、同相信号及び直交信号を個別に補間する前段補間手段と、前記同相信号または直交信号の一方を補間する終段補間手段とを有する補間手段とを備え、前記前段補間手段は、補間次数2で補間する初段補間器だけ、または、前記初段補間器と、前記初段補間器に縦続接続され、各段毎に、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに続く補間次数2で補間する次段補間器とからなる組み合わせ段を1段以上有しており、前記終段補間手段は、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに縦続接続された補間次数2で補間する次続補間器とを有していることを特徴とする直交周波数分割多重変調回路。
- デジタル変調信号をサンプリング周波数の1/2の周波数を中心とした複数個のサブキャリアにマッピングして逆フーリエ変換を行い、複数個の逆フーリエ変換信号を出力する逆フーリエ変換手段と、前記複数個の逆フーリエ変換信号を、同相信号及び直交信号別に順次補間する前段補間手段と、前記同相信号または直交信号の一方を補間する終段補間手段とを有する補間手段とを備え、前記前段補間手段は、補間次数2で補間する初段補間器だけ、または、前記初段補間器と、前記初段補間器に縦続接続され、各段毎に、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに続く補間次数2で補間する次段補間器とからなる組み合わせ段を1段以上有しており、前記終段補間手段は、周波数スペクトラムを高域側にシフトする複素乗算器とそれに縦続接続された補間次数2で補間する次段補間器とを有するもので、前記各補間器は、同相信号または直交信号の一方を90°移相する無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタと、前記同相信号または直交信号の他方を前記無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ遅延するデジタル遅延回路とを有していることを特徴とする直交周波数分割多重変調回路。
- 前記補間手段は、補間次数4で補間する場合、前記初段補間器のみを有する前記前段補間手段と前記終段補間手段とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の直交周波数分割多重変調回路。
- 前記補間手段は、補間次数8で補間する場合、前記初段補間器及び前記1段の組み合わせ段を有する前記前段補間手段と前記終段補間手段とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の直交周波数分割多重変調回路。
- 前記補間手段は、補間次数16で補間する場合、前記初段補間器及び前記2段の次段補間器を有する前記前段補間手段と前記終段補間手段となることを特徴とする請求項1または2に記載の直交周波数分割多重変調回路。
- デジタル変調信号をサンプリング周波数の1/2の周波数を中心とした複数個のサブキャリアにマッピングして逆フーリエ変換を行い、複数個の逆フーリエ変換信号を出力する逆フーリエ変換手段と、前記複数個の逆フーリエ変換信号の同相信号または直交信号の一方を補間次数2で補間する1つの補間器を有する補間手段とを備えており、前記補間器は、同相信号または直交信号の一方を90°移相する無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタと、前記同相信号または直交信号の他方を前記無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号遅延分だけ遅延するデジタル遅延回路とを有していることを特徴とする直交周波数分割多重変調回路。
- 前記無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタは、縦続接続された3以上の任意の整数n段の信号処理部からなり、前記信号処理部のそれぞれが第1遅延部、第2遅延部、加算部、乗算部、乗算係数発生部を有し、前記信号処理部の動作周波数が前記無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタの信号出力周波数の2倍であり、前記信号処理部の動作周波数の1/4の周波数を中心とする信号帯域内に生じる位相勾配数がn−1になるように前記各部の定数を設定することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の直交周波数分割多重変調回路。
- 前記無限インパルス応答デジタル全域通過型フィルタは、出力側から 偶数段目の信号処理部だけを備え、前記動作周波数の1/2の周波数で動作させることを特徴とする請求項7に記載の直交周波数分割多重変調回路。
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