JP3802574B2 - 光半導体モジュール - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は光通信に用いられる光半導体モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1には、従来の光半導体モジュールが示されている。図1において、円筒形状のパッケージ5の基端側には光半導体素子を収容する収容空間10が形成されており、空間10に連通させてパッケージ5の中央部にはレンズ3が収容固定されており、、パッケージ5の先端側には、空間10に連通させて光ファイバ収容部15が形成されている。光ファイバ収容部15には、レンズ3の焦点合わせの空間11を介して光ファイバフェルール4が装着され、固定されており、光ファイバフェルール4には光ファイバ6が収容一体化されている。
【0003】
前記、光半導体素子収容空間10の基端側には、サブマウント2が嵌め込み装着されている。サブマウント2は、円盤状の板部12と、板部12から水平に突き出す素子取り付け部13からなり、その素子取り付け部13の先端上側には光半導体素子である半導体レーザ1のチップが搭載され、金−スズ、スズ−鉛等の半田材で実装されている。
【0004】
半導体レーザ1とレンズ3と光ファイバフェルール4の光軸は、いずれも同軸方向(図のZ方向)となるように組立られており、その光軸のずれが1μm以下となるように光軸精度が定められている。
【0005】
サブマウント2とパケージ5は鉄系のステンレス、コバール、42アロイ等の金属材料で形成され、接続部8をYAG溶接することにより接続されている。これらの鉄系の金属材料は、YAGレーザのエネルギを吸収し易く、機械加工が容易であり、しかも、熱膨張係数が小さいことにより、YAG溶接に際しての、熱による半導体レーザ1とレンズ3との光軸のずれが生じないので、YAG光の出力が安定するため、YAG溶接に適しており、サブマウント2とパッケージ5をこれらの鉄系の金属材料で形成することにより、サブマウント2とパッケージ5を精度よく、YAG溶接することができる。鉄系の材料以外でも、YAGレーザのエネルギを吸収し易く、熱膨張係数が小さい材料もあるが、機械加工の容易さやコスト面から鉄系の材料が好ましい。
【0006】
以上のように構成されている光半導体モジュールにおいて、半導体レーザ1から出力された光は、空間10を通ってレンズに入射し、レンズ3により集光される。レンズ3で集光された光は空間11を通る間に、焦点を合わされ、光ファイバフェルール4の光ファイバ6の端部14に収束される。収束された光は、光ファイバ6に入射し、光ファイバ6の中を伝播していく。このようにして、半導体レーザ1からの光が信号として光ファイバ6に伝達され、光通信が行われる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、半導体レーザ1の駆動時には、半導体レーザ1が発熱し、その温度が高くなるために半導体レーザ1の熱劣化が起こるという問題があった。半導体レーザ1の熱劣化を防ぐためには、半導体レーザ1の温度を下げる必要があり、そのためには、半導体レーザ1の駆動時に発生する熱を半導体レーザ1が搭載されているサブマウント2や、サブマウント2がYAG溶接されているパッケージ5を通じて、なるべく速く外部に放出させる必要がある。しかし、前記鉄系のステンレス等の金属材料は熱伝導率が低いために、これらの金属材料を用いて形成したサブマウント2やパッケージ5は熱の伝導が遅く、半導体レーザ1の熱を速く外部に放出させることが難しく、半導体レーザ1の駆動時の発熱による劣化を抑えることができなかった。
【0008】
また、半導体レーザ1の熱を速く外部に放出させるために、熱伝導率が高い銅や銅タングステンを用いてサブマウント2やパッケージ5を形成すると、これらの銅材料はYAG溶接のエネルギを受けて変質し易い性質があり、その結果、YAG溶接が困難となり、たとえ溶接エネルギを小さくするために、YAGの電源の発生パルスを短く1msec 以下として、YAG溶接を行うことができたとしても、YAG光の反射が大きく、溶接エネルギの供給量が安定しないため、YAG溶接の信頼性を高めることができなかった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものあり、その目的は、組立の信頼性がよく、光半導体素子の発熱による劣化が少い光半導体モジュールを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。すなわち、本発明は、パッケージ内に半導体素子が配置され、この半導体素子からの出射光が光ファイバに光結合され前記光ファイバを通して出力される光半導体モジュールにおいて、前記パッケージ内にはサブマウントに搭載された光半導体素子が配置され、サブマウントは溶接によってパッケージに固定されており、前記パッケージおよびサブマウントはタングステンに鉄とニッケルとモリブデンの少くとも1つを含んだ合金材料を用いて形成されていることを特徴として構成されている。また、前記パッケージおよびサブマウントに用いる合金材料のタングステンに対する鉄、ニッケル、モリブデンの少くとも1つの含有量は略1〜10%であることも、本発明の特徴的な構成とされている。
【0011】
【作用】
上記構成の本発明において、パッケージおよびサブマウントはタングステンに鉄とニッケルとモリブデンの少くとも1つを含んだ合金材料を用いて形成されており、これらの材料は熱膨張率が低いため、溶接時の熱変形が極めて小さく、サブマウントはパッケージに精度よく溶接される。また、光半導体素子が駆動時に発熱しても、熱は熱伝導率が高い、前記合金材料により形成されたサブマウントやパッケージを速く伝わり、光半導体モジユールの外部に放出されるため、光半導体素子の熱による劣化を抑制することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。なお、本実施例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略する。
【0013】
本実施例の光半導体モジュールの機械的構成は、図1に示す従来例とほぼ同様である。本実施例が従来例と違うところは、サブマウント2とパッケージ5を形成している金属材料をタングステンにニッケルとモリブデンを添加した合金材料によって構成したことである。なお、本実施例では、サブマウント2とパッケージ5は、ともにタングステンをベースとしてニッケル4%とモリブデン4%を添加した合金材料により形成されている。このタングステンにニッケルとモリブデンを各4%含んだ合金材料は、銅の約4倍の高い熱伝導率をもち、鉄の約3分の1の低い熱膨張率をもつ。
【0014】
タングステンにニッケルとモリブデンを添加した合金材料は、焼結して得られ、焼結して得られた金属粉体を射出成形することにより、サブマウント2とパッケージ5が形成されている。
【0015】
サブマウント2とパッケージ5は、接続部8を仕上記号の▽が3つ以上の平滑度に精密仕上(鏡面仕上)されていて、サブマウント2とパッケージ5は接続部8において、溶接面と同一の平面で120 °等角度で3分岐してYAG溶接され、その溶接は数msec 以下の電源発生パルス(電圧パルス)で行われている。
【0016】
半導体レーザ1は、1.48μmの発振波長をもち、その光出力が20から50mWである。なお、本実施例では光通信用の光ファイバ6としてシングルモードファイバを使用している。
【0017】
本実施例は以上のように構成されており、その動作も従来例と同様であるが、本実施例では、サブマウント2とパッケージ5がニッケルとモリブデンを各4%含んだタングステン合金材料で形成されており、この材料は銅の約4倍の高い熱伝導率をもつために、半導体レーザ1の駆動時に熱が発生しても、その熱がサブマウント2とパッケージ5を速く伝わり、半導体モジュールの外部に放出され、半導体レーザ1の発熱による劣化は起こりにくくなる。
【0018】
しかも、この合金材料の熱膨張率は、鉄の約3分の1と低いため、サブマウント2とパッケージ5をYAG溶接する際、熱変形により、半導体レーザ1とレンズ3の光軸がずれないので、YAG溶接時の信頼性も高く、YAG溶接によるサブマウント2とパッケージ5の組立後も半導体レーザ1の発熱等によるサブマウント2やパッケージ5の熱膨張が起こりにくいために、半導体レーザ1とレンズ3と光ファイバフェルール4の光軸のずれが生じにくい。
【0019】
また、光半導体モジュールが設置されている環境に温度変化が生じても、サブマウント2やパッケージ5の熱膨張や熱収縮が起こりにくいために、半導体レーザ1とレンズ3と光ファイバフェルール4の光軸のずれも同様に生じにくい。
【0020】
以上のように、上記実施例の光半導体モジュールはサブマウント2とパッケージ5のYAG溶接による組立精度や信頼性が高く、YAG溶接後もサブマウント2やパッケージ5が半導体レーザ1の発熱等により熱変形することは殆どないため、半導体レーザ1とレンズ3と光ファイバフェルール4の光軸のずれが生じにくい。また、半導体レーザ1の駆動時に発生する熱が速く外部に放出されるために、半導体レーザ1の熱による劣化も抑制され、光通信の信頼性を高めることができる。
【0021】
また、サブマウント2とパッケージ5はタングステンをベースとしてモリブデンやニッケルを含む合金材料を、切削等により機械加工することによっても得られるが、本実施例のように金属粉体を射出成形してサブマウント2とパッケージ5を形成することで、機械加工する場合よりも、容易にその各部品を作製することができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば、上記実施例ではサブマウント2とパッケージ5を形成する材料をタングステンにニッケルとモリブデンを各4%含んだ合金材料としたが、ニッケルとモリブデンとを含む材料とは限らず、ニッケル、モリブデン、鉄のうち少くとも1つを含む合金材料であればよい。また、それらの含有量も4%とは限らず、他の含有量でも構わない。
【0023】
タングステンに対するニッケルやモリブデンや鉄の含有量によるタングステン合金材料の熱膨張率や熱伝導率等の諸関係を調べるために、まず、各含有量のタングステン合金材料を用いて試験片を作製した。その試験片を用いて、タングステンに対するニッケルやモリブデンや鉄の含有量と熱膨張率や熱伝導率等の関係を調べたところ、ニッケルとモリブデンと鉄のいずれも1%未満の場合、あるいは、ニッケルとモリブデンと鉄のいずれかが10%を越える場合には、ニッケルやモリブデンや鉄の添加により、タングステン合金の熱膨張率を低下させる効果や、熱伝導率を上昇させる効果はあまりみられなかった。
【0024】
これに対し、ニッケルやモリブデンや鉄の含有量を1〜10%にした場合には、前記熱膨張率や熱伝導率等に関し、良好な特性結果が得られた。従って、タングステンに対するニッケル、モリブデン、鉄の含有量は略1〜10%であることが望ましい。
【0025】
図2は、サブマウント2とパッケージ5はモリブデンを4%含んだタングステン合金材料である、三菱マテリアル株式会社製アンビロイAN1150(アンビロイAN1150は商品名)で形成した光半導体モジュールを−40〜85℃で温度サイクル試験した時の光半導体モジュールの出力の減少傾向を求めた試験結果を示している。また、比較例として、サブマウント2とパッケージ5を銅を10%含んだタングステン合金で形成した場合、ステンレスのSUS316 (商品名)、銅、コバールを用いて形成した場合の各光半導体モジュールを−40〜85℃の温度サイクル試験した結果を示している。
【0026】
図2に示されるように、サブマウント2とパッケージ5をいずれの材料で形成した場合も、温度サイクル数が増えると光半導体モジュールの出力が減少していくが、モリブデンを4%含んだタングステン合金材料を用いてサブマウント2とパッケージ5を形成したaの直線は、その他の材料を用いた場合に比べて、光半導体モジュールの出力の減少率が低く、比較的安定した良好なヒートサイクル試験結果が得られている。
【0027】
上記実施例では、タングステンをベースとしてニッケルとモリブデンを含む合金材料を用いて、サブマウント2とパッケージ5を形成し、光通信の信頼性が高い光半導体モジュールを得ることができたが、タングステンにモリブデンだけを含む合金材料も、熱膨張率が低く、熱伝導率が高いために同様の効果を奏し、図2に示すように、その材料を用いてサブマウント2とパッケージ5を形成した光半導体モジュールは、その出力が安定し、光通信の信頼性が高められることが立証された。
【0028】
同様にして、タングステンにニッケル、モリブデン、鉄の少くとも1つを含む合金材料を用いて、サブマウント2やパッケージ5を形成した場合には、合金材料が低い熱膨張率と高い熱伝導率を有するために、光半導体モジュールは光通信の信頼性が高いものとなる。
【0029】
なお、上記実施例ではサブマウント2とパッケージ5を同じ合金材料を用いて形成していたが、サブマウント2を形成する合金材料とパッケージ5を形成する合金材料、およびその合金含有割合は各々違っていてもよい。
【0030】
また、上記実施例では、ニッケルとモリブデンを含んだタングステン合金は、焼結して得られたが、焼結以外の作製方法でもよく、また、サブマウント2とパッケージ5の形成方法も特に射出成形に限定されるものではない。ただし、サブマウント2とパッケージ5の形成方法として、金属粉体を射出成形する方法を用いた場合には、サブマウント2やパッケージ5の形状が複雑な場合でも、量産性があり、サブマウント2やパッケージ5を量産する場合には経済的に有効である。
【0031】
さらに、本発明の光半導体モジュールは、光半導体素子として半導体レーザ1を用いた場合について説明を行ってきたが、光半導体素子としては半導体レーザ1とは限らず、フォトダイオード、発光ダイオード等の他の光半導体素子を用いることもできる。
【0032】
また、本発明の光半導体モジュールは、光半導体素子である半導体レーザ1をサブマウント2に半田材を用いて実装させたものについて説明したが、光半導体素子は半田材により実装されていなくてもよく、光半導体素子の光軸がずれないような状態で搭載されていればよい。
【0033】
さらに、これまで光半導体モジュールのパッケージ5の形状は円筒形状のものについて説明を行ってきたが、その形状は特に限定されるものではなく、円筒形状ではない、別の形状のものでもよい。特に、箱型パッケージ、いわゆるDIP( Dual Inline Package ) やバタフライパッケージを用いた場合は、熱拡散、および信頼性が高くなる。
【0034】
さらに、本発明の光半導体モジュールは、サブマウント2とパッケージ5をYAG溶接により接続する場合について説明を行ってきたが、溶接による接続であればYAG溶接とは限らず、他の種類の溶接を行う場合にも本発明を適用することができ、同様の効果を奏することができる。ただし、YAG溶接の場合、サブマウント2とパッケージ5の接続は、他の溶接による接続に比べて精度が高いためにYAG溶接による接続が好ましい。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、光半導体モジュールを構成するパッケージおよびサブマウントは、タングステンにニッケルとモリブデンと鉄の少くとも1つを含んだ合金材料を用いて形成されていて、これらの合金材料は熱膨張率が低いため、溶接時にサブマウントやパッケージが膨張変形することが殆どなく、パッケージとサブマウントの溶接の信頼性を高めることができる。さらに、溶接による接続を行った後もサブマウントやパッケージが光半導体素子の発熱等により、熱変形することは殆どなく、パッケージ内にある光半導体素子の光軸のずれは生じにくくなる。
【0036】
また、これらの合金材料は熱伝導率が高いため、サブマウントに搭載された光半導体素子が発熱しても、その熱はサブマウントとサブマウントに接続されているパッケージを伝わり、速く外部に放出され、光半導体素子の熱による劣化が抑制されるため、高精度で信頼性の高い光半導体モジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光半導体モジュールの断面構成図である。
【図2】上記光半導体モジュールのサブマウント2とパッケージ5を様々な材料により形成した場合の光半導体モジュールの出力の減少傾向を示すグラフである。
【符号の説明】
1 半導体レーザ
2 サブマウント
3 レンズ
5 パッケージ
6 光ファイバ

Claims (2)

  1. パッケージ内に半導体素子が配置され、この半導体素子からの出射光が光ファイバに光結合され前記光ファイバを通して出力される光半導体モジュールにおいて、前記パッケージ内にはサブマウントに搭載された光半導体素子が配置され、サブマウントは溶接によってパッケージに固定されており、前記パッケージおよびサブマウントはタングステンに鉄とニッケルとモリブデンの少くとも1つを含んだ合金材料を用いて形成されていることを特徴とする光半導体モジュール。
  2. タングステンに対する鉄、ニッケル、モリブデンの少くとも1つの含有量は略1〜10%である請求項1記載の光半導体モジュール。
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