JP3802261B2 - 液体分離装置および液体分離方法 - Google Patents

液体分離装置および液体分離方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、逆浸透膜を用いてかん水脱塩、純水生成、飲料水生成等を行う液体分離装置および液体分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、逆浸透膜モジュールを用いて河川水、井戸水、湖沼水、水道水、工業用水等のかん水を脱塩して純水や飲料水を得る液体分離が行われている。
【0003】
図4は複数段の逆浸透膜モジュールを用いた従来の液体分離装置の一例を示す模式図である。
【0004】
図4において、原水は前処理装置10に供給される。前処理装置10では、原水に凝集沈殿(浮上)砂濾過や凝集濾過、活性炭濾過、膜分離等の前処理を行う。前処理装置10で前処理された水は、高圧ポンプ2により1段目の逆浸透膜モジュール3aの供給水入口に供給される。あるいは、前処理装置10で前処理された水は、一旦透過水タンク7Aに貯留された後、高圧ポンプ2により1段目の逆浸透膜モジュール3aの供給水入口に供給される場合もある。
【0005】
第1段目の逆浸透膜モジュール3aの濃縮水出口から排出される濃縮水は、第2段目の逆浸透膜モジュール3bの濃縮水入口(供給水入口)に供給される。第2段目の逆浸透膜モジュール3bの濃縮水出口から排出される濃縮水は、第3段目の逆浸透膜モジュール3cの濃縮水入口(供給水入口)に供給される。
【0006】
第3段目の逆浸透膜モジュール3cの濃縮水出口から排出される濃縮水は、濃縮水配管31を通して系外に排出される。また、第1段目、第2段目および第3段目の逆浸透膜モジュール3a,3b,3cの透過水出口から流出する透過水は、それぞれ透過水配管30a,30b,30cを通してタンク7Bに供給されて貯留される。タンク7Bに貯留された透過水は、必要に応じて使用される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような複数段の逆浸透膜モジュールを用いたかん水脱塩においては、他のかん水脱塩処理技術であるイオン交換法と比べ、塩分以外の有機物や微粒子も同時に除去することができ、さらに、再生用の薬品が不要である等の利点がある。
【0008】
しかしながら、逆浸透膜モジュールを用いたかん水脱塩処理では、回収率(透過水量と供給水量との比率)を高くすると、濃縮水中の硬度成分やシリカが濃縮されてスケール成分として逆浸透膜の膜面に析出し、逆浸透膜の性能が急激に低下する。そのため、回収率をイオン交換法に比べてかなり低く抑える必要がある。その結果、逆浸透膜モジュールを用いたかん水脱塩処理においては、回収率が、イオン交換法の90%に比べて最高でも80%と小さくなる。
【0009】
回収率が小さくなると、廃棄する濃縮水量が多くなるため、必要な透過水量に対する供給水量の割合が大きくなる。その結果、透過水量に占める原水費用の割合が大きくなるとともに、前処理設備が大きくなり、設備コストおよび運転コストがイオン交換法に比べて高くなってしまう。
【0010】
そこで、逆浸透膜モジュールの前処理の段階で硬度成分やシリカを低減することにより、もしくはスケールの生成を防止する薬品の注入を行うことにより、回収率を上げた場合のスケールの発生を防止する方法が提案されている。
【0011】
図5は回収率を上げた場合のスケールの発生を防止する従来の液体分離装置の一例を示す模式図である。
【0012】
図5において、前処理装置10で前処理された水は、スケール成分を除去もしくは防止するためのスケール防止処理装置8に供給される。スケール防止処理装置8では、供給水に例えばスケール防止剤もしくは酸を注入することにより、シリカや硬度成分の析出を減少させる。スケール防止処理装置8により処理された水は、高圧ポンプ2により第1段目の逆浸透膜モジュール3aの供給水入口に供給される。以後の処理は、図4の液体分離装置における処理と同様である。
【0013】
スケールのうち炭酸カルシウムや硫酸カルシウム等の硬度成分は、pH調整や分散剤の注入により容易に抑制することができる。しかし、かん水中にシリカが10〜50mg/L(リットル)程度含有している場合、例えば回収率を90%に上げた場合、濃縮水中のシリカは100〜500mg/Lとなる。なお、シリカの溶解度は、25℃で100mg/Lである。この場合、分散剤の注入によっても、逆浸透膜モジュールの膜面に析出するシリカスケールを抑制することは容易ではない。
【0014】
また、シリカスケールの発生は、原水の状態の変化(原水の温度変化や原水中の鉄、マンガン、アルミニウム等のコロイド粒子や懸濁物質の量の変化)の影響を受けやすいため、安定したスケール抑制のためには分散剤を多量に注入する必要がある。
【0015】
なお、逆浸透膜モジュールの膜面に鉄、マンガン、アルミニウム等のコロイド粒子や懸濁物質、さらには炭酸カルシウム等の他のスケールが付着している場合に、それらの付着がない場合に比べて、それらが起点(核)となってシリカスケールが発生しやすくなり、スケール防止剤を注入した場合でも、シリカスケールの発生を安定して抑制できないことが見い出されている。
【0016】
そこで、コロイド粒子や懸濁物質等の汚染物質を精密濾過膜や限外濾過膜で除去してから原水を逆浸透膜に供給する方法(特開平3−66035号公報)が提案されている。
【0017】
しかしながら、この方法によっても、汚染物質が安定して除去されず、一部が精密濾過膜や限外濾過膜を通過して逆浸透膜モジュールに供給され、逆浸透膜の膜面に付着する。精密濾過膜や限外濾過膜を通過する汚染物質は、その量が微量であっても経時的に蓄積し、それらが起点(核)となってシリカスケールが発生してしまう。
【0018】
また、原水のpHを6以下にして運転し、数カ月に1回pH9以上で逆浸透膜を洗浄する方法(特開平9−1141号公報)等が提案されている。しかしながら、この方法でも、シリカの析出防止効果が不安定であり、実際にはシリカスケールが発生してしまい、高回収率で運転できない場合も生じる。
【0019】
シリカスケールは一度析出すると、その除去は極めて困難である。特開平1−42726号公報には、フッ化水素酸アンモニウムを用いた洗浄によりシリカスケールを溶解できることが示されている。しかし、フッ化水素酸アンモニウムの溶液は非常に毒性が強いため、実際の使用は困難である。このように、化学洗浄によるシリカスケールの除去はほとんど不可能に近い。したがって、シリカスケールの発生を防止するためには、供給水中のシリカを予め除去しておく必要がある。
【0020】
シリカ除去処理技術として、石灰軟化法およびイオン交換法がある。しかし、石灰軟化法によるシリカ除去率は個々の水質によって異なるため、原水のシリカ濃度を必要な濃度まで下げることができない場合が生じる。さらに、水酸化マグネシウムの沈殿を起こす点までpHを上げた後、逆浸透膜モジュールの入口で再びpHを下げる必要がある。一方、イオン交換法は、再生周期およびコスト面から低濃度シリカの除去処理向けであり、数十mg/Lのシリカ除去処理には向かない。
【0021】
このように、逆浸透膜モジュールを用いた液体分離装置は、多くの利点を有しているにもかかわらず、シリカスケールの安定した抑制方法がないために、回収率を80%程度にまでしか上げられなかった。逆浸透膜モジュールを用いた流体分離装置は、処理コスト等の理由により回収率が85%以上、好ましくは90%以上得られないと実用的ではない。
【0022】
それゆえ、逆浸透膜モジュールを用いた、経済性を有し実用的な液体分離装置の実現が望まれていた。
【0023】
本発明の目的は、シリカスケールによる膜性能の低下を防止しつつ高い回収率を実現することができる液体分離装置を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明に係る液体分離装置は、一段または複数段の逆浸透膜モジュールにより液体の分離を行う液体分離装置において、逆浸透膜モジュールの上流側に、液体中のシリカを吸収してシリカ塊を生成する吸着剤と吸着剤により生成されたシリカ塊を捕捉する濾過材とを備えた凝集型濾過装置を設け、吸着剤はマグネシウム、カリウム、ホウ酸アルミニウム、ガラスウールおよびセルローズの少なくとも1つを主成分とする顆粒状または粉末状の物質であるものである。
【0025】
本発明に係る液体分離装置において、凝集型濾過装置に供給された液体に含まれるシリカは、吸着剤により凝集されてシリカ塊となり、シリカ塊は濾過材により捕捉される。それにより、凝集型濾過装置から排出される処理液のシリカ濃度が低くなる。したがって、逆浸透膜モジュールにおいて凝集型濾過装置から供給された処理液が高回収率で分離されても、逆浸透膜モジュールの膜面でのシリカスケールの析出が抑制される。これにより、逆浸透膜モジュールの膜性能が低下せず、高い回収率を確保することができる。
【0026】
濾過材は、精密濾過膜、限外濾過膜またはフィルターであってもよい。この場合、フィルターは、分離膜以外の糸巻き、濾布または金網等を用いたフィルターをいう。この場合、吸着剤により凝集されたシリカ塊は、精密濾過膜、限外濾過膜またはフィルターにより捕捉される。これにより、凝集型濾過装置から排出される処理液のシリカ濃度が低くなる。
【0027】
凝集型濾過装置と逆浸透膜モジュールとの間に逆浸透膜モジュールの濃縮液中のスケール成分の析出防止処理を行う処理手段を設けることが好ましい。この場合、凝集型濾過装置において除去されずに排出されたスケール成分に、処理手段により析出防止処理が施される。これにより、逆浸透膜モジュールにおいて処理液の分離が高回収率で行われても、スケール成分の析出が防止される。
【0028】
スケール成分の析出防止処理は、カルシウムスケールの析出を防止または低減するカルシウムスケール防止剤の注入を含んでもよい。この場合、凝集型濾過装置においてシリカスケールの析出が抑制されているので、シリカスケールの析出の抑制に加えて逆浸透膜モジュールにおけるカルシウムスケールの析出が防止または低減される。
【0029】
スケール成分の析出防止処理は、シリカスケールの析出を防止または低減するシリカスケール防止剤の注入を含んでもよい。この場合、凝集型濾過装置においてシリカスケールの析出が抑制されているので、逆浸透膜モジュールにおけるシリカスケールの析出がより効果的に防止または低減される。
【0030】
凝集型濾過装置の上流側に、前処理用装置を設けることが好ましい。この場合、シリカスケール発生の起点(核)となる鉄、マンガン、アルミニウム等のコロイド粒子や懸濁物質が前処理用濾過膜装置により確実に除去される。それにより、逆浸透膜モジュールの膜面に付着するシリカスケール発生の起点(核)となる汚染物質の量が少ないかほとんどなくなり、凝集型濾過装置においてスケール発生の抑制効果が発現しやすく、しかもその効果が安定する。その結果、長期にわたって逆浸透膜モジュールの逆浸透膜の膜面を清浄に保つことができ、スケール成分の析出がほとんど発生することなく、高回収率で安定して運転することが可能となる。
【0031】
前処理用濾過膜装置は、限外濾過膜装置であってもよい。この場合、限外濾過膜装置により、シリカスケールの起点(核)となる汚染物質が除去される。
【0032】
前処理用濾過膜装置は、精密濾過膜装置であってもよい。この場合、精密濾過膜装置によりシリカスケールの起点(核)となる汚染物質が除去される。
【0033】
凝集型濾過膜装置の上流側に、脱炭酸装置を設けてもよい。これにより、シリカスケールの起点となる炭酸カルシウムのスケールを防止できる。この場合、脱炭酸装置は、前処理用濾過膜装置の上流側または前処理用濾過膜装置と凝集型濾過装置との間に設けられる。
【0034】
逆浸透膜モジュールは、pH6.5の食塩濃度0.05%の水溶液を原水として温度25℃および操作圧力7.5kgf/cm2 での食塩阻止率が95%以上および透過水量が0.7m3 /m2 ・日以上となる性能を有することが好ましい。それにより、シリカスケールが発生することなく高回収率で安定して運転することが可能となる。
【0035】
逆浸透膜モジュールへの供給水量aと、逆浸透膜モジュールからの透過水量bとの比率が、b/a>0.8とする。これにより、回収率が80%よりも高くなり、経済的でかつ実用的な液体の分離が実現される。
【0036】
本発明に係る液体分離方法は、一段または複数段の逆浸透膜モジュールにより液体中の分離を行う液体分離方法において、前記逆浸透膜モジュールの上流側で吸着剤によりシリカを凝集してシリカ塊を生成し、生成された濾過材で捕捉し、前記吸着剤として、マグネシウム、カリウム、ホウ酸アルミニウム、ガラスウールおよびセルローズの少なくとも1つを主成分とする顆粒状または粉末状の物質を用いるものである。
【0037】
本発明に係る液体分離方法において、吸着剤に供給された液体に含まれるシリカは、吸着剤により凝集されてシリカ塊となり、シリカ塊は濾過材により捕捉される。それにより、濾過材から排出される処理液のシリカ濃度が低くなる。したがって、逆浸透膜モジュールにおいて、濾過材から供給された処理液が高回収率で分離されても、逆浸透膜モジュールの膜面でのシリカスケールの析出が抑制される。これにより、逆浸透膜モジュールの膜性能が低下せず高い回収率を確保することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る液体分離装置の第1の例を示す模式図である。
【0039】
図1において、原水は吸着剤11および濾過材12を有する凝集型濾過装置13に供給される。吸着剤11は、原水中に含まれる0.1〜1μmの微粒子や油を300μm程度に凝集する作用を有する。吸着剤11としては、例えば、マグネシウム、カリウム、ホウ酸アルミニウム、ガラスウール、セルローズの少なくともいずれか1つを主成分とする顆粒状もしくは粉末状の物質等を用いる。また、濾過材12は、吸着剤11により凝集されたシリカ塊を捕捉する。濾過材12としては、例えば、精密濾過膜、限外濾過膜等の分離膜、または分離膜以外の糸巻き、濾布、金網等のフィルターを用いる。原水は、凝集型濾過装置13の吸着剤11側の原水入口から供給され、濾過材12側の処理水出口より排出される。
【0040】
凝集型濾過装置13により処理された原水は、スケール成分を除去または防止するためのスケール防止処理装置8に供給される。スケール防止処理装置8では、供給水に例えばスケール防止剤、酸等の薬品を注入することにより、カルシウム、シリカや硬度成分の析出を減少させる。この薬品は、例えば塩酸、硫酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、FMC社製の商品名Flocon100、アルゴサイエンティフィック(ARGO SCIENTIFIC)製の商品名HYPERSPERSE−SI300等である。
【0041】
スケール防止処理装置8により処理された水は、高圧ポンプ2により1段目の逆浸透膜モジュール3aの供給水入口に供給される。あるいは、スケール防止処理装置8により処理された水は、一旦透過水タンク7Aに貯留された後、高圧ポンプ2により1段目の逆浸透膜モジュール3aの供給水入口に供給される場合もある。
【0042】
第1段目の逆浸透膜モジュール3aの濃縮水出口から排出される濃縮水は、第2段目の逆浸透膜モジュール3bの濃縮水入口(供給水入口)に供給される。第2段目の逆浸透膜モジュール3bの濃縮水出口から排出される濃縮水は、第3段目の逆浸透膜モジュール3cの濃縮水入口(供給水入口)に供給される。
【0043】
第3段目の逆浸透膜モジュール3cの濃縮水出口から排出される濃縮水は、濃縮水配管31を通して系外に排出される。また、第1段目、第2段目および第3段目の逆浸透膜モジュール3a,3b,3cの透過水出口から流出する透過水は、それぞれ透過水配管30a,30b,30cを通してタンク7Bに供給されて貯留される。タンク7Bに貯留された透過水は、必要に応じて使用される。
【0044】
このようにして、逆浸透膜モジュール3a,3b,3cにおける回収率が85%以上、好ましくは90%以上になるまで原水が濃縮されつつ透過水がタンク7Bに貯留され、濃縮水は系外に排出される。
【0045】
第1段目、第2段目および第3段目の逆浸透膜モジュール3a,3b,3cとしては、pH6.5の食塩濃度0.05%の水溶液を原水として温度25℃および操作圧力7.5kgf/cm2 の条件で食塩阻止率が99.5%以上および透過水量が0.80m3 /m2 ・日以上となる性能を有する逆浸透膜モジュールを用いる。
【0046】
この液体分離装置の凝集型濾過装置13において、原水中のシリカが凝集されてシリカ塊となって捕捉されるため、濃縮水におけるシリカ濃度が高くならない。これにより、逆浸透膜モジュール3a,3b,3cの膜面でのシリカスケールの析出が抑制されるので、逆浸透膜浸透膜モジュール3a,3b,3cの膜性能が低下しない。それにより、逆浸透膜モジュールを用いた、経済性を有し実用的な液体分離が実現される。
【0047】
図2は本発明に係る液体分離装置の第2の例を示す模式図である。
図2において、原水は限外濾過膜装置または精密濾過膜装置からなる前処理用濾過膜装置14に供給される。前処理用濾過膜装置14では、シリカスケールの発生の起点(核)となる汚染物質(鉄、マンガン、アルミニウム等のコロイド粒子や懸濁物質等)が除去される。前処理用濾過膜装置14で前処理された原水は、凝集型濾過装置13に供給される。以後の処理は、図1の液体分離装置における処理と同様である。
【0048】
この液体分離装置においては、原水中のシリカスケールの発生の起点となる汚染物質が前処理用濾過膜装置14で除去されるので、回収率が95%程度まで高くなり濃縮水のシリカ濃度が高くなった場合でも、スケール防止処理装置8におけるスケール防止剤の効果が安定して発現される。それにより、回収率の高いかん水の脱塩が実現される。
【0049】
図3は本発明に係る液体分離装置の第3の例を示す模式図である。
図3において、原水は脱炭酸装置15に供給される。脱炭酸装置15で処理された原水は、前処理用濾過膜装置14に供給される。以後の処理は、図2の液体分離装置における処理と同様である。
【0050】
本例の液体分離装置では、脱炭酸装置15を用いているので、原水中のシリカスケールの発生の起点となる炭酸カルシウムスケールが発生しないので、回収率が95%程度まで高くなり濃縮水のシリカ濃度が高くなった場合でも、スケール防止処理装置8におけるスケール防止の効果が安定して発現される。それにより、回収率の高いかん水の脱塩が実現される。
【0051】
また、本例では、脱炭酸装置15を前処理用濾過膜装置14の上流側に設けたが、脱炭酸装置15は前処理用濾過膜装置14の下流側に設けることも可能である。
【0052】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
図1に示した液体分離装置を用いて井戸水の脱塩処理を行った。第1段目、第2段目および第3段目の逆浸透膜モジュール3a,3b,3cとしては、4インチサイズのスパイラル型逆浸透膜エレメントを24本用い、4本ずつ6本の圧力容器に入れ、6本の圧力容器を1段目に3本、2段目に2本および3段目に1本配列した。このスパイラル型逆浸透膜エレメントは、pH6.5に調整した食塩濃度0.05%の水溶液を原水として温度25℃および操作圧力7.5kgf/cm2 での食塩阻止率が99.5%以上および透過水量が0.80m3 /m2 ・日以上となる性能を有する。
【0054】
凝集型濾過装置13としては、[リキッドコンサンド株式会社製SAフィルター]を用いた。
【0055】
シリカ濃度が35mg/L、pHが7.2、電気伝導度が150μS/cmで水温が18℃の井戸水5m3 /hを凝集型濾過装置13で処理し、その処理水を一旦透過水タンク7Aに貯留した。その処理水のシリカ濃度は10mg/L、pHは10であった。
【0056】
透過水タンク7Aの透過水に炭酸カルシウムスケール防止剤としてFMC社製の商品名Flocon100を3mg/L注入して逆浸透膜モジュール3a,3b,3cへ供給し、回収率が90%になるように操作圧力を調整し処理した。
【0057】
SAフィルターを3ケ月に1回交換した。また、原水に殺菌目的で1日1回10分間次亜塩素酸ナトリウムを1mg/L注入した。
【0058】
その結果、シリカスケールが発生することなく1年間安定した性能で運転が可能であった。
【0059】
[実施例2]
図2に示した液体分離装置を用いて井戸水の脱塩処理を行った。逆浸透膜モジュール3a,3b,3cおよび井戸水は実施例1と同じものを使用した。
【0060】
前処理用濾過膜装置14としては、限外濾過膜モジュール[日東電工株式会社製RS30]を用いた。また、凝集濾過装置13としては、実施例1と同様に、[リキッドコンサンド株式会社製SAフィルター]を用いた。
【0061】
井戸水5m3 /hを前処理用濾過膜装置14および凝集型濾過装置13で処理し、その処理水を一旦透過水タンク7Aに貯留した。その処理水のシリカ濃度は10mg/L、pHは10であった。
【0062】
実施例1と同様に、透過水タンク7Aの透過水に炭酸カルシウムスケール防止剤としてFMC社製の商品名Flocon100を3mg/L注入して逆浸透膜モジュール3a,3b,3cへ供給し、回収率が95%になるように操作圧力を調整し処理した。
【0063】
SAフィルターを6ケ月に1回交換した。また、原水に殺菌目的で1日1回10間次亜塩素酸ナトリウムを1mg/L注入した。
【0064】
その結果、シリカスケールが発生することなく、1年間安定した性能で運転が可能であった。
【0065】
[比較例]
図4に示した流体分離装置を用いて井戸水の脱塩処理を行った。逆浸透膜モジュール3a,3b,3cおよび井戸水は実施例1,2と同じものを使用した。また、前処理装置10としては、活性炭濾過装置を用いた。
【0066】
井戸水5m3 /hを前処理装置10により処理して一旦透過水タンク7Aに貯留した。その処理水のpH値は7.0であった。
【0067】
実施例1,2と同様に、透過水タンク7Aの透過水に炭酸カルシウムスケール防止剤としてFMC社製の商品名Flocon100を3mg/L注入して逆浸透膜モジュール3a,3b,3cへ供給し、回収率が90%になるように操作圧力を調整し処理した。
【0068】
その結果、15日目で透過水量が初期の50%にまで低下したため、逆浸透膜エレメントを分解し膜面を分析したところ、膜面にはシリカスケールが発生していた。
【0069】
実施例1,2と比較例との比較から、凝集型濾過装置13を使用することにより、逆浸透膜モジュール3a,3b,3cの膜面にシリカスケールが発生することなく、長期間にわたって高回収率で運転することが可能になることがわかる。
【0070】
また、実施例1と実施例2との比較から、前処理用膜モジュール14を用いることにより、回収率が向上するとともに凝集型濾過装置13の使用期間が延長されることがわかる。
【0071】
したがって、実施例1,2の液体分離装置を用いたかん水脱塩処理は、他のかん水脱塩処理技術であるイオン交換法の回収率90%以上と比べて同等以上であり、かつ経済性を有し、実用的である。しかも、塩分以外に有機物や微粒子も同時に除去することができ、さらに、再生用の薬品が不要である等、イオン交換法に比べ利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体分離装置の第1の例のを示す模式図である。
【図2】本発明に係る液体分離装置の第2の例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る液体分離装置の第3の例を示す模式図である。
【図4】従来の液体分離装置の一例を示す模式図である。
【図5】従来の液体分離装置の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
3a,3b,3c 逆浸透膜モジュール
8 スケール防止処理装置
11 吸着剤
12 濾過材
13 凝集型濾過装置
14 前処理用濾過膜装置
15 脱炭酸装置

Claims (12)

  1. 一段または複数段の逆浸透膜モジュールにより液体の分離を行う液体分離装置において、前記逆浸透膜モジュールの上流側に、液体中のシリカを凝集してシリカ塊を生成する吸着剤と前記吸着剤により生成されたシリカ塊を捕捉する濾過材とを備えた凝集型濾過装置を設け
    前記吸着剤はマグネシウム、カリウム、ホウ酸アルミニウム、ガラスウールおよびセルローズの少なくとも1つを主成分とする顆粒状または粉末状の物質であることを特徴とする液体分離装置。
  2. 前記濾過材は、精密濾過膜、限外濾過膜またはフィルターであることを特徴とする請求項1記載の液体分離装置。
  3. 前記凝集型濾過装置と前記逆浸透膜モジュールとの間に前記逆浸透膜モジュールの濃縮液中のスケール成分の析出防止処理を行う処理手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の液体分離装置。
  4. 前記スケール成分の析出防止処理は、カルシウムスケールの析出を防止または低減するカルシウムスケール防止剤の注入を含むことを特徴とする請求項3記載の液体分離装置。
  5. 前記スケール成分の析出防止処理は、シリカスケールの析出を防止または低減するシリカスケール防止剤の注入を含むことを特徴とする請求項3記載の液体分離装置。
  6. 前記凝集型濾過装置の上流側に、前処理用濾過膜装置を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体分離装置。
  7. 前記前処理用濾過膜装置は、限外濾過膜装置であることを特徴とする請求項6記載の液体分離装置。
  8. 前記前処理用濾過膜装置は、精密濾過膜装置であることを特徴とする請求項6記載の液体分離装置。
  9. 前記凝集型濾過装置の上流側に、脱炭酸装置を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体分離装置。
  10. 前記逆浸透膜モジュールは、pH6.5の食塩濃度0.05%の水溶液を原水として温度25℃および操作圧力7.5kgf/cm2 での食塩阻止率が95%以上および透過水量が0.7m3 /m2 ・日以上となる性能を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の液体分離装置。
  11. 前記逆浸透膜モジュールへの供給液量aと、前記逆浸透膜モジュールからの透過液量bとの比率が、
    b/a>0.8
    であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の液体分離装置。
  12. 一段または複数段の逆浸透膜モジュールにより液体中の分離を行う液体分離方法において、前記逆浸透膜モジュールの上流側で吸着剤によりシリカを凝集してシリカ塊を生成し、生成されたシリカ塊を濾過材で捕捉し、前記吸着剤として、マグネシウム、カリウム、ホウ酸アルミニウム、ガラスウールおよびセルローズの少なくとも1つを主成分とする顆粒状または粉末状の物質を用いることを特徴とする液体分離方法。
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