JP3802174B2 - 開放型電磁石 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は磁気共鳴撮像(MRI)システムに用いる電磁石に関するものであり、特に開放型である磁石(open magnet)に関するものである。すなわち撮像しようとする患者の部分が置かれる体積部分が磁石によって囲まれていない磁石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
MRIに特に要求される条件は典型的には0.2〜2テスラである強く、一様な磁界であり、典型的には直径が30cm〜50cmである撮像体積内において数ppm(several parts per million)の磁界均一性を有していることである。最も普通の場合、そのような磁界はソレノイド構造を有する電磁石によって生成されるが、このことは必然的に患者が磁石によって取囲まれ、チューブ内に封入されることを意味し、患者に閉所恐怖症感覚を生じさせることになる。しかしながら、本発明の主題とされている開放型磁石(open magnets)を用いれば、この問題は克服することが出来る。
【0003】
MRIシステムにおいて用いる開放型電磁石は周知のものである。既知の一形態によれば前記電磁石は相対する極性を有する一対の並設磁極を含んでおり、これらの磁極間において撮像体積(imaging volume)が画成されている。前記磁極は1本のヨークによって連結され、支持されており、該ヨークは磁束帰還路を提供するとともに、基本的には全体とてC字形状の鉄フレームを形成している。大量の鉄が必要とされるので、これらの既知のC字形状の磁石は極めて重く、特に強磁界磁石の場合には磁束帰還路を画成するために何トンもの鉄が必要とされる。
【0004】
しばしば「スプリット・ペア(split−pair)」と記述される別の形態の既知の開放型電磁石は一対の並設されたコイル対を有しており、該コイル対は一般的にはソレノイド構造をしており、軸線のまわりに有孔チューブ(bore tube)を含むことが出来る。前記コイルのセットは1つの支持体によって分離保持されており、撮像体積へのアクセス(access)は前記コイル間においてシステムの主軸線のいずれかに沿って確保することが出来る。そのようなシステムは米国特許出願第5381122号およびLaskairs氏他による論文「干渉式MRI応用のための冷媒不要開口式超電導磁石」<IEEE TransactionsのApplied Superconductivity部門の第5巻第2号(1995年6月号)に記載>において説明されている。
【0005】
既知の開放型磁石の並設磁極間に作用する磁力は極めて大きいため、当該磁極を支持するのに用いる構造体には大きな力が作用する。更には、磁極を画成する磁界巻線が低温維持装置内に収納される超電導電磁石においては、前述の極めて大きな磁力にさらされる巻線を低温維持装置内で支持する必要があるため、機械的設計の問題が生ずる。既知の「スプリット・ペア」システムにおいては、この問題を克服するために、磁力に抵抗する支持構造体を直接巻線間に接続し、したがって巻線と同一の低温度に維持するという方策がとられている。しかしながら、こうするためには並設磁極間の間隙を横切って大型の構造部品を設置せざるを得ず、このことはシステムの開口性を著しく阻害するとともに、低温維持装置の配列を極めて複雑かつ高価なものにせしめる。
【0006】
別の解決方法は低温維持されて収納された並設巻線上に作用する力を、低温維持装置構造体の「ウォーム(Warm)」部材に機械的に伝達し、以って2つの低温維持装置を隔離して保持する役目を果す支持フレームを提供する方法である。慣用的には、低温維持装置内の「低温」部品はガラス繊維補強プラスチック材のような低熱伝導度および高強度を有する材料から作られたロッド(rods)またはバンド(bands)によって支持されている。しかしながら、磁極間に作用する磁力は磁極自身の重力の数倍もの大きさなため、これらの力を伝達する支持バンドまたはロッドはずっと大きな横断面を備える必要が生じ、したがってシステムの「低温」部品内にはずっと大きな熱流が流入するという結果が生ずる。液体ヘリウムによって冷却されたシステムにおいては、このことは液体の蒸発量が多くなることに通じ、低温冷凍機によって冷却されるシステムにおいては電力の消費が過度になることに通ずる。
【0007】
コイルに近接して大量の鉄を配することは同コイルに作用する力を実質的に変更させるものであるということは既知である。例えばPCT WO88/04057号(Danby氏他)においては、鉄シールド磁石内のコイルに作用する力はコイルを鉄に対して適正に配置することにより一ケタ以上小さくすることが出来ることが示されている。しかしながらこのPCT特許は重量の問題については言及しておらず、この場合の重量を見積るとシステムの重量は漂遊磁界(stnay field)を適当な値迄制限するために100トンを超えてしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の1つの目的は低重量および低減された漂遊磁界を有する開放型電磁石(open electromagnet)であって、低温維持装置内に実質的な支持部材を設ける必要の無い開放型電磁石を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、開放型電磁石は一対の磁界コイルにして、それぞれが並設電磁石磁極を有し、それら磁極間において実質的に均一な磁界を有する撮像体積(imaging volume)が画成される磁界コイルと、該コイルを隔置された関係で剛固に支持する作用を行なう支持構造体を有しており、前記支持構造体は磁気材料からなる2枚のプレート(plates)を含み、これらプレート間において前記磁界コイルが配置されており、磁界コイルとプレートの相対位置は、電磁石の磁界の強度と関連し、磁界コイル間の磁気吸引力がプレートと磁界コイル間の吸引力によって少なくとも部分的に釣り合うようにされ、以って前記磁極間の吸引力が前記プレートを介して前記支持構造体へと磁気的に伝達されるように選ばれており、更に開放型電磁石は一対のシールドコイル(shieding coils)を有しており、互いに対立する極性の前記プレート及び磁界コイルの間に該シールドコイルは配置されており、且つ該シールドコイルは磁界コイルとは反対方向に付勢されている。
【0010】
前述の釣り合い作用は磁力のみを釣り合わせるように磁気的に調節してやることも出来る。しかしながら、磁界コイル部品の重量に帰因する力をも相殺するために、プレートと磁界コイル間の吸引力が2つ磁極の上側の方で対応する磁極の下側の方よりも大きくなるようにしてやることが可能なることを理解されたい。上側および下側磁極間のこの違いは重量による力を考慮した釣り合わせ作用を実現するために必要である。何故ならば、上側磁極においては重量は磁極間の吸引力と同一方向に作用する一方、下側磁極においては重量は反対方向に作用するからである。
【0011】
かくして、両磁極間に作用する正味の力は、実質的には変更されないものの、室温にある部品に限定することが可能となるので、低温維持装置内に実質的な構造支持部材を設ける必要性が解消される。
【0012】
前記電磁石は一対のシールドコイルを含むことが可能であり、該シールドコイルはそれぞれプレート及び磁界コイル(プレートと磁界コイルとは互いに対立する極性を有する)との間に配置され、且つ該シールドコイルは磁界コイルとは反対方向に付勢されている。
【0013】
少なくとも一対のシムコイル(shimming coils)をそれぞれ撮像体積部の各側上において磁界コイル間に配置してやることが可能である。
【0014】
前記支持構造体非磁性フレームを有し、これに前記プレートを取付けることが可能である。別法として、前記プレートは磁気ヨークの一部を形成せしめ、該ヨークが少なくとも部分的に支持構造体を画成するようにすることが出来る。
【0015】
前記電磁石は超電導電磁石とすることが出来、その際電磁石のコイルは液体ヘリウム内に低温収納されるか、直接冷凍される。
【0016】
【発明の実施の形態および実施例】
次に付図を参照して本発明の一実施例について説明する。
【0017】
図1を参照すると、「C」電磁石はそれぞれ一対の磁界コイル3および4を有する一対の磁極1および2を有しており、これら磁極は撮像体積部(imaging volume)5内に実質的に均質一様な磁界を提供している。磁界コイル3および4は一対のシールドコイル(shielding coils)6および7間に配置されており、コイル6および7は磁界コイル3および4が付勢されている向きと反対向きに付勢されている。良好な撮像を行うために必要な撮像体積部5内における均質化された磁界を得るために、2対のシムコイル8,9および10,11が設けられており、これらのコイルは撮像体積部5と磁界コイル3および4の間に配置されている。
【0018】
前記コイルはコイル間力に耐えるよう巻型12および13上に支持されており、巻型12および13はそれぞれ強固点12aおよび13aを介して取付けられている。コイル3,6,8,10および4,7,9,11はそれぞれ低温維持容器14および15内に収納された巻型12および13上に装着されている。巻型12および13は(図示せぬ)2段式低温冷凍機の低温度段に接続して低温度に冷却されており、コイル3,4,6,7,8,9,10および11は超電導化されている。前記低温冷凍機の第1段はコイル上に放射される熱量を最小にすべく放射シールド16および17に接続され、これらのシールドを60K前後の温度へと冷却している。低温維持容器14および15内のそれぞれのスペース18および19は排気されている。
【0019】
巻型12および13によって支持されているコイル3,6,8および10とコイル4,7,9および11の間には極めて大きな磁力が作用している。巻型12を巻型13に向けて引き寄せようとしているこれらの力の合力はそれぞれコイル3,6,8,10および4,7,9,11をして、低温維持容器14,15の部分を形成する鉄プレート20および21に向けて引付けている力によって相殺されている。これらの鉄プレート20,21および低温維持容器14,15は構造体22によって支持されている。コイル群3,6,8,10および鉄プレート20間の力がコイルを反対磁極に向けて引付けている力を相殺する程度はこれらのコイルとプレート20の間の間隔を変更することによって調節することが可能である。プレートがコイルにより近接されると、コイル群3,6,8,10とプレート20間の吸引力は増大する一方、これらコイル群を反対磁極に向けて吸引する力はほとんど一定のままに保持される。市販の有限要素コンピュータプログラム(finite element computer progurams)を用いれば、これらの力がバランスしてコイル群3,6,8,10とそれらの巻型12上に正味の磁力が作用しなくなる点の存在を計算することが出来る。
【0020】
この平衡点は鉄プレートの寸法に依存する間隔距離によって達成される。すなわち厚味寸法が大きくなればなる程前記距離は大きくなる。
【0021】
巻型12および13上に作用する合計磁力はかなり低減されるものの、ゼロではない。何故ならば重量を支えることも必要だからである。しかしながら、上記のように、必要とあらば重量の故に発生する力を補償することも可能である。支持目的のために慣用の支持ロッドが設けられており、これらの内の幾つか23a,23b,23c,23dのみが簡明さのために図示されている。これらのロッドの寸法、したがってそれらがシステムの低温部品に伝達する熱量は慣用の超電導磁石において用いられるロッドのそれと実質的に等しい。というのは、(もしも重量を補償しないとして)それらのロッドは既知のスプリット・ペアおよび開放型磁石の場合のように多数トンという磁力を支える代りに、システムの重力のみを支持すれば良いからである。もしも重量をも補償しているのであれば、更に小さな寸法のロッドを用いることが可能である。
【0022】
前述の記載はコイルが直接低温冷凍機によって冷却されているシステムに関してのものである。しかしながら、別法としてコイルおよび巻型をして低温維持容器内に設けた液体ヘリウムを充満した容器内に収納する構造を採用することが出来る。
【0023】
図2を参照すると、図1と対応する部品には適宜同一の符号が付されている。磁石支持構造体は鉄製磁束帰還ヨーク26を有しており、該ヨークは鉄リング24および25に接続されている。これらのリングは一方の極において磁界コイル3とシールドコイル6の間に配置され、電磁石の他方の磁極においては磁界コイル4とシールドコイル7の間に配置されている。図2に示すように、リング24および25は低温維持装置14および15の部分を形成するように配設されている。
【0024】
図1および図2において、シールドコイル6および7の役目は磁束帰還を拘束することにあることが理解されよう。この磁束拘束(flux constraint)は鉄製磁束帰還ヨーク26を設けた図2の構造によって実質的に助成されている。
【0025】
前記のごとく、本発明の両実施例において、「C」形状電磁石の磁極内のコイルを支持する構造体上に作用する力は磁石の磁界コイルをして間にそれらが同軸状に配置される鉄プレートに関して適当に配置してやることにより、実質的にゼロとするかまたは顕著に減少してやることが出来る。容易に理解されるように、磁界コイルの精確な配置は磁石の強度および磁極の寸法を考慮して、所要の程度の力の釣り合いが実現されるよう実施される。また「C」字形状の磁石がここでは説明されてきたが、本発明は例えば「H」字またはテンプル(temple)のような形状の他の開放型磁石にも等しく適用可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】MRI(磁気共鳴撮像)システムのための「C」字形状電磁石の幾分図式的な側面図。
【図2】MRIシステムに用いる別の「C」字形状磁石の幾分図式的な側面図。
【符号の説明】
1,2 一対の磁極
3,4 磁界コイル
5 撮像体積部
6,7 シールドコイル
8,9,10,11 シムコイル
12,13 巻型
14,15 低温維持容器
20,21 鉄プレート
22 支持構造体

Claims (6)

  1. 各磁界コイルが一対の低温維持容器(14、15)の一つに含まれ、磁界コイルのそれぞれが並設された電磁石の磁極を備え該磁極の間に実質的に均質な磁界の撮像体積部を画成する一対の磁界コイルと、各磁界コイルをそれが含まれる前記低温維持容器内で剛固に支持する役目を果す一対の巻型(12、13)と、隔置関係で前記一対の低温維持容器を剛固に支持する役目を果す支持構造体(22)と、間に前記磁界コイルが配置されている磁気材料の一対のプレートとを有し、前記支持構造体が前記プレートを取付ける非磁性フレームを設け、前記磁界コイルとプレートの相対的位置は、電磁石の磁界強度を考慮し、磁界コイル間の磁気吸引力が少なくとも部分的に前記プレートおよび磁界コイル間の吸引力によって相殺され、以って前記磁極間の吸引力が前記プレートを介して磁気的に前記支持構造体に伝達されるように選ばれており、更に前記開放型電磁石は一対のシールドコイルを有しており、前記対のシールドコイルは、互いに対立する極性の前記磁界コイルと前記プレートとの間にそれぞれ配置されており、前記シールドコイルは前記磁界コイルとは反対向きに不勢されている開放型電磁石。
  2. 請求項1に記載の開口電磁石において、撮像体積部の各側上において磁界コイル間にそれぞれ配置された少なくとも一対のシムコイルが設けられていることを特徴とする開放型電磁石。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の開放型電磁石において、該電磁石は超電導電磁石であり、前記コイルは低温維持装置内に置かれ、冷媒を用いることにより絶対ゼロに近い温度に保持されていることを特徴とする開放型電磁石。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の開放型電磁石において、前記電磁石は超電導電磁石であり、前記コイルは液体ヘリウム内において低温維持状態で収納されていることを特徴とする開放型電磁石。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の開放型電磁石において、該磁石が「C」字形状をしていることを特徴とする開放型電磁石。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された開放型電磁石を含んでなる磁気共鳴撮像システム
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