JP3800479B2 - 混入溶液徐放機能付き給水器 - Google Patents

混入溶液徐放機能付き給水器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴槽や洗面所に設置されるシャワーヘッドや、浴槽・洗面所・台所などの蛇口に設置される給水具などに適用される給水器に係り、特に供給する水道水(お湯の場合も含む)に、塩素中和剤や芳香剤・弱酸化剤・弱アルカリ剤・皮膚化粧水・入浴剤・保湿剤・洗髪剤などの混入剤溶液を混合して給水する給水器に関する。
【0002】
【従来の技術】
水道水には雑菌を滅菌消毒するため塩素の混合が義務付けされており、日本の水道法では蛇口から出る水道水に0.1ppm以上の残留塩素が混入されていなければならないという定めになっている。特に最近は、河川等の水源における水質が劣化する傾向にあり、またO−157大腸菌等が発生するなどの状況から、原水に大量の塩素が投入され、水道蛇口から出る水道水にはかなり多くの残留塩素が混在されている。
しかしながら、水道水に含まれる残留塩素(特に次亜塩素酸HOClなどの遊離残留塩素)は人の肌や毛髪に悪影響を及ぼし、肌の老化現象や、頭髪の脱色やぱさつき、抜け毛の原因になるといわれている。特に、肌の弱い体質の人や、乳幼児などには残留塩素の影響が大きく、且つアトピー性皮膚炎などのように皮膚に障害を持つ人にも悪影響を及ぼすといわれている。
【0003】
このようなことから、最近、水道水に含まれる残留塩素を中和する機能を持った脱塩素機能付きシャワーヘッドが開発され、特許出願されている(特開平5−293053号、特開平9−187681号など)。すなわち、これら脱塩素機能付きシャワーヘッドは、シャワーヘッドを構成する握り部またはヘッド部に、亜硫酸カルシウムやアスコルビン酸(ビタミンC)などの塩素中和剤(本発明の水溶性混入剤に相当する)を収容したカートリッジを取り付け、このカートリッジに形成した徐放口よりシャワーヘッド内を流れる水道水に上記塩素中和剤の水溶液を放出させるものである。このようなシャワーヘッドによれば、塩素中和剤と水道水に含まれる残留塩素とが化学反応して残留塩素を無害な塩素化合物に変えることになり、よってこのように中和処理された水(又は湯)がヘッド部先端の散水孔から放出されることになる。
上記公報の場合は、カートリッジ内にアスコルビン酸の粉末を収容しておき、シャワーヘッド内を流れる水道水の一部を徐放口よりカートリッジ内に導入し、この導入した水によってカートリッジ内のアスコルビン酸粉末を溶解し、この水溶液を上記徐放口を経てシャワーヘッド内の水道水に混合させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の場合、カートリッジに形成した徐放口が、シャワーヘッドを使用しない場合、すなわちシャワーヘッドを壁掛けフックに係止した姿勢で、下向きに開口されている。
このような構造によると、新規にシャワーヘッドを使い始めようとするとき、カートリッジ内には下向きに開口された徐放口から水が流入し、カートリッジ内の軽い空気は閉塞された上方に押しやられ、この空気はカートリッジから排除されずに残ってしまう。このため、カートリッジ内の粉末が円滑に溶解されないという不具合がある。
これを解消するため前記各公報に記載されたシャワーヘッドでは、アスコルビン酸粉末を充填したカートリッジに予め水を注入しておいてこのカートリッジをシャワーヘッドに取り付けるといった方法を用いているが、水を注入したカートリッジをシャワーヘッドに取り付けるときに徐放口が下向きに開口しているので水溶液が漏れ、この場合もカートリッジ内に空気が残留し、このような水溶液のこぼれを防止するため取り付けに多大な注意を要するなどの不具合がある。
【0005】
一方、上記従来の場合、シャワーヘッドを使用しないで壁掛けフックに係止している状態では、徐放口が下向きに開口している。しかし、アスコルビン酸の水溶液は比重が飽和水溶液の状態でほぼ1.1程度であるため、この水溶液が重力により下向きに開いた徐放口から流出し、カートリッジ周辺に滞留している水道水に溶け出してしまう。よって、シャワーを使用しないにも拘わらずアスコルビン酸が無駄に放出されてしまい、カートリッジの有効寿命が短くなるといった欠点がある。
前記特開平9−187681号の場合、薬剤漏出防止装置を設けるなどの技術が開示されているが、このような漏出防止装置は構造が複雑になるという不具合がある。
【0006】
このようなことから本発明者は、不使用時に徐放口がカートリッジの上端に位置するように工夫した。すなわち、徐放口をカートリッジの上端、つまりシャワーヘッド内を流れる水の下流側に開口するようにした。このようにすれば、新規にシャワーヘッドを使い始めるとき、カートリッジ内の軽い空気が上端部に開口した徐放口より放出されるので空気抜きが円滑になされるとともに、壁掛けフックに係止した不使用時には、カートリッジ内の水溶液がカートリッジの上端に形成した徐放口より不所望に漏れなくなる。
しかしこの場合、カートリッジ内の水溶液は比重が水より大であるためカートリッジの 下部に溜まろうとし、これに対し徐放口から侵入した水はカートリッジの上端部に滞留し、よってカートリッジ内で上下方向に液の濃度差が生じる。このため、使用中は徐放口近辺に滞留している濃度の薄い水溶液が放出されるようになり、所定濃度の水溶液が徐放されないといった不具合が生じることが判った。
【0007】
本発明はこのような事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、カートリッジ内の空気を速やかに排除することができるとともに、カートリッジ内の水溶液の濃度差をなくして水道水の塩素濃度に見合った適切な濃度の水溶液を放出することができ、さらに不使用時には水溶液の漏れを防止することができる混入溶液徐放機能付き給水器を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、導入口及び吐出口を有し、これら導入口と吐出口との間に給水通路が設けられた給水器本体と、上記給水通路内に設けられ、内部に水溶性混入剤又は混入剤溶液が収容された混入剤カートリッジと、給水を止めて使用しない姿勢で上記混入剤カートリッジの上部位置に形成され、給水中に上記給水通路内の水が導入されるとともに上記混入剤カートリッジ内の混入剤溶液が上記給水通路に流出される開口面積が小さな徐放口と、上記給水通路に設けられ、この給水通路内を流れる水により回転される回転羽根と、この回転羽根の回転により上記混入剤カートリッジ内の混入剤溶液に回転運動を与える手段と、を具備した混入溶液徐放機能付き給水器である。
【0009】
ここで、水溶性混入剤とは、粉末や顆粒もしくはペレット形状をなしていて、水(又はお湯)に対して溶解する混入剤をいう。また、混入剤溶液とは、既に液状になっている混入剤である。そしてまた、給水を止めて使用しないときの姿勢とは、例えばシャワーヘッドの場合は壁掛けフックに係止されているような場合であり、また蛇口取付け形給水具などの場合は蛇口に取り付けられている状態をいう。
【0010】
このような構成によれば、混入剤カートリッジに水溶性混入剤を収容したタイプの場合、新規に使い始めるときに給水通路に水を流すと、この給水通路内の水の圧力は大気圧以上になるから、それまで大気圧であった混入剤カートリッジ内に徐放口から水が侵入し、このカートリッジ内の圧力が高くなる。カートリッジ内の空気は圧縮され、しかも軽いのでカートリッジ内の上部に集まる。このとき、カートリッジの上部に徐放口を形成してあるので軽い空気はこの徐放口を通じて速やかに排除されることになる。したがって、給水通路に水を流せば、カートリッジ内の空気が自動的に排除されるとともに、カートリッジ内に水が入り、粉末の水溶性混入剤を溶解させてその水溶液を作ることになる
【0011】
給水器を使用中は、給水通路内を水が流れ、この水の一部が徐放口を通じて混入剤カートリッジ内に侵入し、これに伴い、カートリッジ内の水溶液が同じ徐放口を通じて給水通路に放出される。すなわち、カートリッジに侵入した水の量と同じ量の水溶液が徐放口より放出される。このとき、徐放口の開口面積を小さくしてあるので、カートリッジに侵入する水の量およびカートリッジより流出する水溶液の流出量が規制される。この徐放口の開口面積を適正に選択することにより、給水通路を流れる水の流量に適した量の混入剤溶液を混合させることができる。
カートリッジ内に侵入した水は水溶液より比重が小さいため、徐放口の近傍に滞留しようとし、このため、徐放口の近傍では水溶液の濃度が低下し、徐放口より放出される水溶液は次第に水の濃度に近づく。しかし、このとき給水通路内を流れる水により回転羽根が回転され、この回転によりカートリッジ内の混入剤溶液に回転運動が与えられるので、カートリッジ内の水溶液が撹拌される。よって、カートリッジ内における溶液の濃度差が軽減され、徐放口の近辺に常に濃度の高い水溶液が存在するようになるので、徐放される水溶液の濃度にばらつきを生じるのが防止される。
また、水溶液が攪拌されることで、カートリッジ内に残る未溶解の混入剤を薄い水で溶解し、常に飽和溶解状態の水溶液を作ることができる。
更に、給水を停止すると、給水通路からカートリッジ内に水が浸入しなくなり、徐放口から水溶液が放出されるのが停止される。しかも、徐放口はカートリッジの上部に開口されているから比重の大きな水溶液はカートリッジ内に留まり、徐放口より漏れ出ることがない。よって、不使用時に水溶液が無駄に漏出されるのが抑止されることになる。
【0012】
本発明の好ましい態様は、給水通路を流れる水により回転される回転羽根の回転を混入剤カートリッジに伝えてカートリッジ自身を回転させるようにした混入溶液徐放機能付き給水器が提供される。
カートリッジが回転すると、カートリッジ内の溶剤および水溶液がカートリッジの回転に伴って連れ回りし、よってカートリッジ内で攪拌される。
この場合、好ましくは、混入剤カートリッジに回転羽根を一体に形成し、この回転羽根が水の流れを受けて混入剤カートリッジ自身を回転させるようにすれば、簡単な構造でカートリッジを回転させることができ、結果として簡単な構造で水溶液を攪拌することができる。
【0013】
更に、本発明の他の態様は、混入剤カートリッジが給水器本体に対し脱着可能に取り付けられていることである。
このような構成であれば、カートリッジ内の混入溶剤または混入溶液が無くなれば、カートリッジを給水器本体から取り出して、交換もしくはカートリッジに混入溶剤または混入溶液を補充することができる。
【0014】
更に、本発明の他の態様は、徐放口の開口面積を0.8mm以下で0.02mm 以上に設定することである。
カートリッジ内の水溶液が給水通路に放出される場合、その放出量は給水通路内の流量および徐放口の大きさに依存する。徐放口の開口面積を小さくすれば水溶液の徐放量を少なくすることができ、本発明者の実験によれば、開口面積を0.8mm以下に設定すると流量に見合った徐放量を得ることができた。なお、開口面積は、残留塩素の濃度や給水通路内の流量にもよるが、一層好ましくは0.5mm以下0.02mm以上がよい。このような構成により、給水通路の流量に適した混入剤を無駄なく混合させることができる。
【0015】
更に他の好ましい態様は、混入剤カートリッジが外から透視可能であり、この混入剤カートリッジを収容した給水器の本体部分も外から透視可能であり、混入剤カートリッジに収容した水溶性混入剤又は混入剤溶液が外から見えるようになっていることである。この場合は外から見て水溶性混入剤又は溶剤の残量を確認できるから、混入剤や溶液の補充時期や交換時期を知ることができる。更に、外から給水器本体内のカートリッジや内容物が回転しているのを見ることができるから、見た目で楽しむこともできる。なお、この場合、透視可能な状態とは、透明、着色透明、または半透明などであってよく、要するに外から内部が見える状態であればよい。
【0016】
そして、本発明をシャワーヘッドに用いれば、頭髪や身体に対し混入剤溶剤で処理した処理液を浴びることができ、頭髪や皮膚に対する残留塩素の弊害を解消することができる。この場合、好ましくは、握り部を有するシャワーヘッドであれば、この握り部に混入剤カートリッジを脱着可能に収容してあることが望ましい。ここでシャワーヘッドは、一般家庭を始め、旅館、ホテル、スイミングプール、病院などのシャワー設備や洗面所、または美容院、理容院等の洗髪用シャワーなど、あらゆる分野のシャワーヘッドに使用可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明について、シャワーヘッドに適用した第1の実施例を図1にもとづき説明する。図1はシャワーヘッドの一部断面して示す側面図である。
図において、1は脱塩素機能付きシャワーヘッドの本体であり、握り部2およびヘッド部3を備えている。これら握り部2およびヘッド部3はABS樹脂、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなり、本例の場合、握り部2とヘッド部3がそれぞれ透明であってかつ別体に形成されており、互いに図示しないネジまたはバヨネット結合などの手段で脱着可能に連結されている。
握り部2は、中空円筒形をなして内部に給水通路4が形成されており、この給水通路4は基端部の導入口5を通じて図示しないシャワーホースに連結されるようになっている。
ヘッド部3の内部空間は上記握り部2の給水通路4に連なっており、先端には散水板6が取り付けられている。散水板6は全面に亘り多数個の散水孔7(本発明の吐出口に相当)が形成されており、これら散水孔7よりシャワー水が放出される。なお、散水板6は、ヘッド部3に対して押えリング8により脱着可能に取り付けられている。
【0018】
上記握り部2の給水通路4には、混入剤カートリッジ10が収容されている。混入剤カートリッジ10は両端が閉塞された円筒形をなしており、合成樹脂、例えばABS樹脂やポリプロピレンなどにより、内部が透けて見える透明に形成されている。そして、この混入剤カートリッジ10の内部には、水溶性混入剤または混入剤溶液が収容されている。本実施例の場合、混入剤として塩素中和作用を奏するアスコルビン酸(ビタミンC)が粉末11の形態で収容されており、カートリッジ10の上端まで満たされている。なお、塩素中和剤としては、ビタミンCのほかに、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウムなどであってもよい。
【0019】
このカートリッジ10の図示上端部(水道水の流れ方向に沿って下流側に位置する端部)には、周側面に単一の徐放口12が形成されている。この徐放口12は、開口面積は非常に小さく形成されており、面積で0.8mm以下、例えば直径0.8mm(0.5mm)となっている。
このようなカートリッジ10の両端には中心軸上に位置して軸13,14が一体に突出形成されている。
そして、握り部2の下部には、上記カートリッジ10の下方(流れ方向の上流側)に位置して、給水通路4内に回転羽根15が設けられている。回転羽根15は給水通路4を上流側から下流側に向けて流れる水道水の流れを受けて回転するもので、水道水の流量が変化すると回転数も変化する。なお、回転羽根15は、羽根の形状に制約を受けるものではなく、要するに水の流れにより回転されるものであれば形状、構造を問うものではない。
このような回転羽根15の回転軸16は、枠構造をなす軸受けホルダー17に取り付けられており、この軸受けホルダー17には両端に軸受18,19を備え、これら軸受18,19により上記回転軸16が回転自在に軸支されている。軸受けホルダー17は、握り部2の内面に圧入または接着などの手段で固定されており、このとき回転軸16が握り部2の中心軸上にほぼ一致するように組み付けられている。
上記回転軸16の上端は、前記混入剤カートリッジ10の下端側の軸13と連結されている。この場合、これら回転軸16とカートリッジ10側の軸13は、軸継手20によって脱着可能に、しかしながら連結された場合には回転羽根15の回転をカートリッジ10に伝達するようにして連結されている。
【0020】
カートリッジ10の上端側の軸14は、握り部2の上端部またはヘッド部3の連結開放端部に取り付けた軸受け21に回転自在に支持されている。この軸受け21が握り部2の上端部に取り付けられる場合は、握り部2に対して取り外し可能に固定されることが望ましく、またヘッド部3側に取り付けられる場合は圧入または接着などの手段でヘッド部3に固定されていてもよい。いずれの場合であっても、カートリッジ10の上端側の軸14は、この軸受け21に対して挿脱可能に挿通されており、握り部2の中心軸上に位置するようになっている。
このような軸支持構造により、混入剤カートリッジ10はその中心軸が握り部2の中心軸上にほぼ一致して握り部2内に取り付けられており、回転羽根15が回転すると、カートリッジ10はその中心軸を回転中心として回転羽根15と一体的に回転するようになっている。
そして、カートリッジ10の外周面と、握り部2の内周面との間には全周に亘り隙間が確保されており、この隙間は給水通路となっている。
なお、軸受けホルダー17および軸受け21は、これらを水道水が流れるのに充分な通路が確保される構造となっている。
【0021】
このような構造の脱塩素機能付きシャワーヘッドについて、作用を説明する。
使用する前の新規なシャワーヘッドは、混入剤カートリッジ10内に空気が残っているとともに、収容されたビタミンC11が粉末状である。このようなシャワーヘッド本体1をシャワーホースに連結し、給水栓を開けると水道水(又はお湯)がシャワーホースを通じてシャワーヘッドに供給される。水道水は、握り部2の下端の導入口5から給水通路4を通り、ヘッド部3に至り、散水板6の散水孔7よりシャワー水となって噴射される。
【0022】
給水通路4に水道水が流れるとこの水道水の一部は徐放口12を通ってカートリッジ10内部に流れ込む。カートリッジ10内に収容されているビタミンCの粉末11は吸水性、潮解性があり、このため侵入してきた水を吸って直ちに溶ける。なお、ビタミンCの粉末は、飽和溶解濃度が約25%程度であり、カートリッジ10内に水が満たされたとしても、一部のビタミンC粉末が溶け、残りは粉末の状態で残る。
上記徐放口12を通ってカートリッジ10内に水が侵入すると、カートリッジ10内の圧力が上昇し、このため残留していた空気が圧縮されるとともにこの空気は軽いので徐放口12を通って給水通路4に放出される。このとき、徐放口12を通じてカートリッジ10内に水が侵入する状態と、徐放口12から空気が放出される状態が交互にまたは同時に進行し、カートリッジ10内の圧力が給水通路4の圧力と等しくなるまで空気の排除が自動的に行われる。排除された空気は水に混入されて散水孔7からシャワーヘッドの外に放出される。
なお、このとき給水を止めると、給水通路4内の水圧は大気圧に戻るがカードリッジ10内の圧力は未だ上記通水時の高い圧力となっているので、これら圧力差によりカートリッジ10内に残っている空気が更に給水通路4に向けて排除される。
このように、カートリッジ10から空気が排除されるとき、空気は軽いからカートリッジ10の上部に集まる性質があり、したがって徐放口12をカートリッジ10の上部に開口しておけば、カートリッジ10内の空気は徐放口12を通って自動的に排除されることになる。
また、上記のように給水通路4に水が流れると、回転羽根15が回転する。この回転は軸16,13を介してカートリッジ10に伝えられ、カートリッジ10を回転させることになる。カートリッジ10が回転すると、内蔵物としてのビタミンC粉末およびその水溶液も回転する。この回転に伴い、カートリッジ10に侵入した水も撹拌され、ビタミンCの粉末と接触し、よってビタミンCを速やかに溶解する。
【0023】
次に、入浴などの時にシャワーを使用する場合、給水栓を開いて通水を始めると給水通路4を流れる水の一部が徐放口12を通じてカートリッジ10内に侵入し、同時にこの侵入した分量に見合うカートリッジ10内の水溶液が徐放口12より給水通路4へ放出される。
したがって、給水通路4を流れる水道水に、カートリッジ10から放出されたビタミンC水溶液が混ざり込み、このビタミンCが残留塩素と反応して残留塩素を中和し、この水が散水板7を通じて噴射されることになる。
【0024】
一方、カートリッジ10内では、徐放口12を経て水が侵入すると、この水はカートリッジ10内で未だ溶解していないビタミンCの粉末を溶かし、カートリッジ10内の水溶液を常に飽和溶解濃度に保とうとする。このような溶解は、外から侵入する水によってカートリッジ10内のビタミンCの粉末が無くなるまで続く。
【0025】
ところで、給水通路4に水が流れると、回転羽根15が回転し、この回転は軸16,13を介してカートリッジ10を回転させる。カートリッジ10が回転すると内蔵物としてのビタミンC粉末および水溶液も回転する。このため、カートリッジ10内では徐放口12から侵入した水と飽和水溶液とが撹拌されて濃度差が解消されるとともに、侵入した水が未だ溶解していない粉末を溶解して飽和水溶液を保とうとする。よって、徐放口12から徐放される水溶液は、常に濃度の高い水溶液となる。
【0026】
上記のような徐放作用においては、徐放口12よりビタミンC水溶液が放出される量は、主として給水通路4を流れる水道水の流量、圧力、徐放口の開口面積に依存し、その他、水溶液の拡散作用や水温などの影響も受ける。最も影響が大きい要素は、徐放口12の大きさである。すなわち、水溶液の放出量は徐放口12の開口面積が大きいほど多くなる。本発明者の実験によれば、徐放口12の開口面積を小さくすることにより徐放量を規制できることが確かめられ、実質的に開口面積を0.8mm以下にすれば、水の流量に見合った徐放量を得ることができることが判った。
【0027】
これについてさらに説明する。ビタミンC、つまりアスコルビン酸(化学式C、分子量176)は遊離残留塩素の主体である次亜塩素酸(化学式HOCl、分子量52.45)と、以下の化学反応を生じる。
【0028】
【化1】
+HOCl → C+HCl+H
【0029】
すなわち、ビタミンC1モルと次亜塩素酸1モルが反応して、デヒドロアスコルビン酸(C)1モルと、塩素酸(HCl)1モルおよび水(HO)1モルを生成する。つまり、ビタミンC176gは次亜塩素酸52.45gと化学反応を生じ、言い換えると次亜塩素酸1gを無害な塩素酸に変換するにはビタミンCが3.35g必要である。
したがって、例えばカートリッジ10にビタミンCを20g詰めた場合、前記化学反応が理想的に行われると仮定すると、次亜塩素酸を約6g中和できることになる。仮に次亜塩素酸濃度が1.0ppmの水道水であれば約6000リットル(6トン)を処理できることになる。そして、給水通路4に次亜塩素酸の濃度が1.0ppmの水道を毎分10リットル流すとすれば、約600分間に亘り連続して塩素中和処理を行うことができることになる。
【0030】
本発明者は、徐放口12の開口面積を変えて塩素が中和される有効処理時間を測定した。すなわち、給水通路4に次亜塩素酸濃度が1.0ppmの水道水を毎分10リットル流し、散水孔7から放出されるシャワー水に対し残留塩素検出試薬を用いて塩素中和作用がなされているか否かを調べた。塩素が中和されている場合は、徐放口12からカートリッジ10内のビタミンC水溶液が放出されていると判断することができ、このような中和が行われている時間、すなわち有効処理時間を測定した。ビタミンCの放出量が適正でかつ化学反応が理想的に行われているとすれば、有効通水時間は600分となる筈であり、これよりも有効処理時間が短い場合はビタミンCの放出が過剰であると判断することができる。
本発明者の実験では、徐放口12の開口面積を0.8mmに設定した場合、有効処理時間をほぼ560分にすることができた。開口面積がこれより大きい場合は有効処理時間が短くなり、ビタミンCが必要量より過剰に放出されていると判断することができる。
【0031】
しかし、上記実験の次亜塩素酸濃度が1.0ppmの水道水を毎分10リットル流すという条件は厳しい状況を想定した場合である。すなわち、日本の水道水の場合、統計によれば水道水に含まれる遊離残留塩素濃度は、0.8ppmから0.3ppmの範囲が80%を占める。このような残留塩素濃度の低い水道水に対してはビタミンCの混合量はもっと少なくてよく、徐放口12の開口面積を小さくしてもよい。また、通常、シャワーヘッドを使用するときの通水量は8リットル/分ないし10リットル/分の範囲が多い。このため、小水量の場合はビタミンCの混合量をもっと少なくてしてよく、よって徐放口12の開口面積を小さくしてもよい。
このようなことから、本発明者の実験によれば、徐放口12の開口面積を0.5mm以下0.02mm以上にすれば、一般的な使用に適することが判った。
なお、徐放口12の開口面積が0.02mm未満であると、新規に使用するとき、空気の排除に時間が掛かるので、開口面積は0.02mm以上がよい。
このように、徐放口12の開口面積を小さく形成すれば、通水量に適した水溶液の徐放量を制御することができ、ビタミンCを無駄なく使用してカートリッジ10の交換寿命を長くすることができる。
【0032】
また、このような使用中も、カートリンジ10が回転しているのでカートリッジ10内の水溶液も回転し、撹拌される。よってカートリッジ10内に侵入した水と、飽和水溶液とが撹拌されて濃度差が解消され、徐放口12から徐放される水溶液は、常に適正な濃度の水溶液となる。
【0033】
次に、シャワーの使用を止めるべく給水を停止すると、給水通路4に水が流れなくなり、よってカートリッジ10に水が供給されなくなるので徐放口12から水溶液が給水通路4に放出されるのが停止される。
しかも、このときシャワーヘッドを図示しない壁掛けフックに係止しておけば、シャワーヘッドは図のように導入口5が下向きでヘッド部3が上向きの姿勢に保たれるから、カートリッジ10に形成した徐放口12はカートリッジ10の上部に位置されことになる。これに対し、カートリッジ10内の水溶液は比重が重いのでカートリッジ10内で下部に沈もうとし、よって水溶液が上部に位置する徐放口12より漏出することはない。
よって、シャワーを使用しないときには、カートリッジ10から給水通路4内に溶液が漏れ出るのが防止され、無駄なビタミンCの消費が規制される。
【0034】
このような構成のシャワーヘッドは、混入剤カートリッジ10が外から透視可能であり、かつこの混入剤カートリッジ10を収容した握り部2も外から透視可能であるから、外から混入剤カートリッジ10に収容したビタミンC粉末11が見える。よって、外部からビタミンCの残量を視認できるので、残量が少なくなる又は無くなればカートリッジ10を交換することができる。
しかも、使用中は、外からカートリッジ10が回転しているのが見えるので、面白い
【0035】
この場合、握り部2とヘッド部3を分離し、握り部2の上端開放部を通じてカートリッジ10の交換を行うことができる。すなわち、カートリッジ10は、軸継手20を介して回転羽根15と分離可能であるから、握り部2の上端からカートリッジ10を引き出せば、カートリッジ10のみを取り出すことができ、よってカートリッジ10の交換が可能である。この場合、回転羽根15を交換する必要がなく、よってカートリッジ10の交換構造が安価にできる。
【0036】
上記第1の実施例の場合、回転羽根15とカートリッジ10を別体に形成し、相互に脱着可能に連結した構造にしたが、本発明は図2に示す第2の実施例のように構成してもよい。
第2の実施例は、カートリッジ10と回転羽根30を一体に形成したものである。すなわち、カートリッジ10の下端(上端でも可)にはスクリュー形の回転羽根30が一体に形成されている。この回転羽根一体形のカートリッジ10の両端には軸31,32が設けられており、これら軸31,32はそれぞれ軸受け33,34に回転自在に、かつ脱着可能に取り付けられている。その他の構成は、第1の実施例と同様であってよく、同一部材には同一番号を付して説明を省略する。
このような構成においても、給水通路4への通水中は、回転羽根30およびカートリッジ10が回転されるから、カートリッジ10内の水溶液が撹拌され、かつ第1の実施例と同様の作用を奏する。
【0037】
また本発明は、第3図に示す第3の実施例のように構成してもよい。
第3の実施例の場合、カートリッジ10はホルダー41,42を介して握り部2に対し脱着可能に、しかし回転不能に取り付けられている。カートリッジ10の下端には軸43が気液密にかつ回転自在に貫通されている。この軸43の給水通路4に延在する端部には回転羽根44が取り付けられているとともに、カートリッジ10内に延びる端部には従動羽根45が取り付けられている。その他の構成は、第1の実施例と同様であってよく、同一部材には同一番号を付して説明を省略する。
このような構成の場合、給水通路4への通水により回転羽根44が回転し、同時に従動羽根45も回転する。したがって、カートリッジ10内の水溶液が撹拌され、水溶液の濃度差を解消することができる。
【0038】
上記第1ないし第3の実施例では本発明をシャワーヘッドに適用した場合を説明したが、本発明は図4および図5に示する第4実施例としての給水具などであっても実施可能である。
図4および図5に示す給水具は、透明樹脂製の給水具本体51が、導水管52を通じて蛇口53に接続されている。導水管52は給水具本体51の上部側面に形成した導入口54に連通している。給水具本体51は、下端が開口した円筒形をなしており、内部には上記導入口54と下端吐出口に連なる給水通路55が形成されている。本体51の下端吐出口には散水板56がねじ込みなどの手段で脱着可能に取り付けられている。
上記給水通路55には、混入剤カートリッジ57が収容されている。混入剤カートリッジ57は密封構造の円筒形をなしており、内部が透けて見える透明に形成されている。この混入剤カートリッジ57の内部には、ビタミンCが粉末58の形態で収容されている。このカートリッジ57の上端部には、周側面に単一の徐放口59が形成されており、この徐放口59は、開口面積が0.8mm以下、好ましく0.5mm以下0.02mm以上とされている。
そして、カートリッジ57の上端には、回転羽根60が一体に形成されている。このような回転羽根一体のカートリッジ57の上下端には、図5に示すようにそれぞれ軸61,62が形成されており、これら軸61,62は本体51の天井面および散水板56の中央に設けられた軸受け63,64にそれぞれ脱着可能に取り付けられている。上記回転羽根60は導入口54から流れ込む水によって回転され、これによりカートリッジ57も一体に回転されるようになっている。
なお、カートリッジ57の外周面と本体51の内周面との間には給水通路が確保されており、また、散水板56を取り外すとカートリッジ57を交換できるようになっている。
【0039】
このような構成の給水具であっても、前記シャワーヘッドの例と同様に、新規に使用開始時にはカートリッジ57内の空気を速やかに排除して水を導入することができ、また通常の給水中は、流量に応じたビタミンCの水溶液を徐放口59より徐放して効果的に塩素を中和することができ、かつ給水を停止した場合も本体51内に残留している水に対しビタミンC水溶液が漏れ出るのを最小限に止めることができる。したがって、カートリッジ57に収容されているビタミンCの無駄な消費を抑え、有効な使用が可能になる。
【0040】
なお、図4および図5に示す回転羽根一体形のカートリッジを、図1に示すシャワーヘッドのヘッド部3に収容することもでき、このような場合はシャワーヘッドのヘッド部を有効に利用することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明によれば、新規に使用開始する場合にカートリッジ内に水を送り込んで速やかに空気を追い出し、よって空気と置換することができる。また、給水中はカートリッジ内の水溶液を撹拌して濃度差をなくすることができるとともに、給水量に応じた最適量の混入剤溶液を徐放することができる。そして、給水を停止した場合も給水通路内に混入剤溶液が漏れ出るのを最小限に止めることができる。したがって、カートリッジに収容されている混入剤の無駄な消費を抑え、有効な使用が可能になる。このことから、カートリッジの交換期間を長くすることができるなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例を示し、シャワーヘッドの一部断面した側面図
【図2】 本発明の第2の実施例を示し、シャワーヘッドの一部断面した側面図
【図3】 本発明の第3の実施例を示し、シャワーヘッドの一部断面した側面図
【図4】 本発明の第4の実施例を示し、給水具の斜視図
【図5】 同実施の断面図
【符号の説明】
1…シャワーヘッド本体
2…握り部
3…ヘッド部
4…給水通路
5…導入口
6…散水板
7…散水孔
10…混入剤カートリッジ
11…アスコルビン酸(ビタミンC)粉末
12…徐放口
15,30,44…回転羽根
45…従動羽根

Claims (8)

  1. 導入口及び吐出口を有し、これら導入口と吐出口との間に給水通路が設けられた給水器本体と、
    上記給水通路内に設けられ、内部に水溶性混入剤又は混入剤溶液が収容された混入剤カートリッジと、
    給水を止めて使用しない姿勢で上記混入剤カートリッジの上部位置に形成され、給水中に上記給水通路内の水が導入されるとともに上記混入剤カートリッジ内の混入剤溶液が上記給水通路に流出される開口面積が小さな徐放口と、
    上記給水通路に設けられ、この給水通路内を流れる水により回転される回転羽根と、
    この回転羽根の回転により上記混入剤カートリッジ内の混入剤溶液に回転運動を与える手段と、
    を具備したことを特徴とする混入溶液徐放機能付き給水器。
  2. 上記混入剤カートリッジ内の混入剤溶液に回転運動を与える手段は、上記回転羽根の回転を混入剤カートリッジに伝えて混入剤カートリッジ自身を回転させるものであることを特徴とする請求項1に記載の混入溶液徐放機能付き給水器。
  3. 上記回転羽根が混入剤カートリッジに一体に形成されており、この回転羽根の回転が混入剤カートリッジ自身を回転させることを特徴とする請求項2に記載の混入溶液徐放機能付き給水器。
  4. 混入剤カートリッジが給水器本体に対し脱着可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一に記載の混入溶液徐放機能付き給水器。
  5. 上記徐放口は、開口面積が0.8mm 以下で0.02mm 以上とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一に記載の混入溶液徐放機能付き給水器。
  6. 混入剤カートリッジは外から透視可能であり、この混入剤カートリッジを収容した給水器本体部分も外から透視可能であり、混入剤カートリッジに収容した水溶性混入剤又は混入剤溶液が外から見えるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一に記載の混入溶液徐放機能付き給水器。
  7. 上記給水器本体は、導入口がシャワーホースに連結されるとともに、吐出口に散水板を備えてなるシャワーヘッドであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一に記載の混入溶液徐放機能付き給水器。
  8. 上記シャワーヘッドは握り部を有し、この握り部に上記混入剤カートリッジが脱着可能に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の混入溶液徐放機能付き給水器。
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