JP3799929B2 - 直噴火花点火式内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直噴火花点火式内燃機関に関し、特にピストンの冠面形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の直噴火花点火式内燃機関のピストンにおいては、例えば特開平10−205413号公報や特開平10−339138号公報に示されるように、その冠面に、凹状でかつ周縁部が隆起して稜線をなすキャビティ(凹状燃焼室)を有し、かつ、このキャビティはその内側の周縁部上方に点火プラグが位置するようにピストン中心に対しオフセットして設けられている。そして、所定の運転条件で、圧縮行程にて燃料噴射弁からキャビティ内に向けて燃料を噴射し、燃焼室内のスワール成分のあるガス流動を用いて、点火プラグ回りに集中的に層状の混合気を形成して成層燃焼を行うようにしている。
【0003】
また、他の運転条件では、吸気行程にて燃料を噴射することにより、燃焼室全体に燃料を拡散させて均質の混合気を形成して均質燃焼を行うようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の直噴火花点火式内燃機関においては、成層燃焼時に、回転数が上昇して(中速回転)、スワール流が強くなると、噴霧がスワール下流側へ流されて、キャビティからはみ出し、成層化をなし得なくなる(点火プラグ回りの空燃比が薄過ぎる)と共に、噴霧が点火プラグに届きにくくなるという問題点があった。
【0005】
逆にアイドルのような極低回転では、スワール流が弱いので、噴射された直後の勢いのある噴霧は曲げられずに直進して点火プラグに達するものの、燃料量が少なく、言い換えれば噴霧のかたまりが小さいので、次第に気化することにより、キャビティ内での噴霧の貫徹力は弱く、スワール流が弱いものの、キャビティ内のスワール流に流されて点火プラグ付近を短時間で通過してしまうことから、成層化できるタイミングが限られるという問題点があった。
【0006】
ここで、特開平10−205413号公報では、キャビティをスワール下流方向にオフセットして設けているが、燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向も点火プラグ方向ではなく、スワール下流側に設定しているため、燃料噴霧のキャビティからのはみ出しを防止することができない。
【0007】
また、特開平10−339138号公報では、燃料噴射弁からの燃料噴霧の噴射方向を点火プラグ方向に設定して、キャビティの上面側開口部に対し、底面平坦部をスワール下流方向にオフセットしているが、このような形状であると、キャビティ内のスワールが乱れやすく、また傾斜の大きな方の側壁部から燃料噴霧が逃げやすくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、ピストン冠面に、凹状でかつ周縁部が隆起して稜線をなすキャビティを有し、かつ、このキャビティはその内側の周縁部上方に点火プラグが位置するようにピストン中心に対しオフセットして設けられ、所定の運転条件で、圧縮行程にて燃料噴射弁からキャビティ内に向けて燃料を噴射し、燃焼室内のスワール成分のあるガス流動を用いて、点火プラグ回りに集中的に層状の混合気を形成して成層燃焼を行うようにした直噴火花点火式内燃機関において、燃料噴霧の成層化を確実にして、成層燃焼性能を向上させることを主たる目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明では、上記の直噴火花点火式内燃機関において、上面視で、燃料噴射弁からの噴霧を点火プラグに向けて噴射させる一方、前記キャビティを、上面視で、燃料噴射弁と点火プラグとを結ぶ直線を点火プラグを中心にスワール下流方向に10〜30°回転させた直線上に中心を有する円形としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、上記の直噴火花点火式内燃機関において、上面視で、燃料噴射弁からの噴霧を点火プラグに向けて噴射させる一方、前記キャビティを、上面視で、燃料噴射弁と点火プラグとを結ぶ直線上に中心を有する第1の円と、該第1の円を点火プラグを中心にスワール下流方向に所定角度回転させた第2の円と、を想定したときに、前記第1の円のスワール上流側の円弧と前記第2の円のスワール下流側の円弧とをつないだ長円形状とし、燃料噴射弁からの噴霧が衝突するキャビティの内壁に傾斜した直線部を持つようにしたことを特徴とする。請求項3に係る発明では、請求項2に係る発明において、前記回転角度を10〜30°の範囲としたことを特徴とする。
【0011】
更に、成層燃焼性能の向上に加え、均質燃焼性能をも併せて向上させることを目的として、以下のような最適化を提供する。
請求項4に係る発明では、ピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面からの、前記キャビティの底面平坦部の深さAを、3〜9mmの範囲としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明では、ピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面からの、前記キャビティの底面平坦部の深さをA、前記基準平面からの、前記稜線の最上部の高さをHとしたとき、これらの合計値B=A+Hを、10〜20mmの範囲としたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、前記キャビティ内の隅部のアールRを、5〜20mmの範囲としたことを特徴とする。
請求項7に係る発明では、ピストン冠面の前記キャビティの稜線の外周側に、ピストン冠面の外周側に向かって低くなる円錐面からなる傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明では、前記傾斜面を、前記キャビティの稜線の外周側に連なる内側傾斜面と、この内側傾斜面とピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面とをつなげる外側傾斜面とで、2段の角度で形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明では、前記内側傾斜面の水平面に対する角度αを、10〜60°の範囲としたことを特徴とする。
【0016】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、成層燃焼において、中速回転時に、燃料噴射弁から点火プラグ方向に噴射された噴霧がスワール流によって流されても、キャビティをスワール下流方向にオフセットしているので、噴霧がキャビティからはみ出すことがない。従って、スワールで転向した噴霧もキャビティ内に収まり、良好な成層化が可能となる。
【0017】
また、極低回転時には、スワール流が弱いため、燃料噴射弁からの噴霧は直進して、キャビティの内壁に衝突する。この際、キャビティをスワール下流方向にオフセットしたことで、噴霧が衝突するキャビティ内壁が噴霧の衝突方向に対し傾斜しているので、キャビティ内壁に沿って、ベクトル(噴霧の貫徹力)を生じ、このベクトルがキャビティ内のスワールと対向するので、これらのバランスにより、噴霧が点火プラグ回りに長く留まることになり、良好な成層化が可能となる。従って、極低回転から中速回転まで、広範囲な成層運転が可能となる。
【0018】
請求項2、3に係る発明によれば、成層燃焼において、中速回転時には、燃料噴射弁から点火プラグ方向に噴射された噴霧がスワール流によって流されても、キャビティを長円形状としてスワール下流方向に長くしているので、噴霧がキャビティからはみ出すことがない。従って、スワールで転向した噴霧もキャビティ内に収まり、良好な成層化が可能となる。また、キャビティ内のスワールは上流側に渦中心を持つので、噴霧を点火プラグ側へ容易に届かせることができる。
【0019】
また、極低回転時には、スワール流が弱いため、燃料噴射弁からの噴霧は直進して、キャビティの内壁に衝突する。この際、キャビティをスワール下流方向に長くしてキャビティの内壁に傾斜した直線部を持つようにしたことで、この傾斜した直線部に沿って、燃料噴霧にベクトル(噴霧の貫徹力)を生じ、このベクトルがキャビティ内のスワールと対向するので、これらのバランスにより、噴霧が点火プラグ回りに長く留まることになり、良好な成層化が可能となる。従って、極低回転から中速回転まで、広範囲な成層運転が可能となる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、キャビティの底面平坦部の深さAを最適化することで、成層燃焼性能を確保しつつ、均質燃焼性能を良好にすることができる。すなわち、深さAを大きくすれば、成層燃焼時にキャビティ内の燃料保持性を向上させて成層混合気を形成し易くなり、成層燃焼性能が向上するが、均質燃焼時にキャビティ内外の空間不連続(ピストンの凹凸)により、燃焼室全体に均質混合気を形成し難くなるので、これらを両立させる範囲とするのである。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、キャビティの底面平坦部の深さAと稜線の最上部の高さHとの合計値B=A+Hを最適化することで、成層燃焼性能を確保しつつ、均質燃焼性能を良好にすることができる。すなわち、合計深さBについても、深さAと同様に、これを大きくすれば、成層燃焼時に成層混合気を形成し易くなり、成層燃焼性能が向上するが、均質燃焼時にキャビティ内外の空間不連続により、均質混合気を形成し難くなるので、これらを両立させる範囲とするのである。また、ピストンコンプレッションハイト(ピストンピン中心からピストン最上部までの高さ)を短縮でき、ピストン軽量化と、首振り防止による音振性能向上という効果も得ることができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、キャビティ内の隅部のアールRを最適化することで、成層燃焼時にキャビティ内の燃料噴霧を点火プラグ側へ指向させて確実に輸送する効果を得ることができる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、ピストン冠面のキャビティを囲む稜線の外周側に、平坦部を設けることなく、ピストン冠面の外周側に向かって低くなる円錐面からなる傾斜面を形成したので、均質燃焼時に、キャビティ内と外との間でのガス流動を確保できて、混合気の均質化を促進できると共に、ピストン表面積を低減して、冷却損失を低減できる。
【0024】
また、請求項8に係る発明によれば、前記傾斜面を、内側傾斜面と外側傾斜面とで、2段の角度で形成してあるため、燃費向上のためピストン側の容積を大きくして高圧縮比化を図る場合、外側傾斜面の立上がりによって内側傾斜面を緩傾斜として稜線につなげることができ、該稜線の外側に平坦部分が生じるのを回避できて、均質燃焼時の火炎伝播の阻害要因をなくすことができることと併せて、キャビティ内と外とでのガス流動を確保できて燃費の向上と良好な燃焼性の保持との両立を図ることができる。
【0025】
また、請求項9に係る発明によれば、前記内側傾斜面の角度を、均質燃焼時の軸トルクと成層燃焼時の燃費とを勘案した最適値に設定することで、均質燃焼時の出力の向上と成層燃焼時の燃費の向上とを図ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
先ず本発明の第1実施形態について説明する。
【0027】
図1は第1実施形態を示す直噴火花点火式内燃機関の概略平面図、図2は同上の概略断面図、図3は図1のa−a’断面に相当するピストンの断面図である。
シリンダヘッド1には、点火プラグ2を挟んで、2つの吸気バルブ3A,3Bと2つの排気バルブ4A,4Bとが対向配置され、点火プラグ2はシリンダ中心(ピストン中心)より若干排気バルブ4A,4B側にオフセットして配置されている。
【0028】
また、2つの吸気バルブ3A,3Bにそれぞれ連なる吸気ポート5A,5Bのうち、一方の吸気ポート5Bには、所定の運転条件にて閉じるスワール制御弁6が設けられていて、燃焼室内に図1で反時計方向のスワール流Sを生成できるようになっている。
【0029】
シリンダヘッド1にはまた、吸気バルブ3A,3B間でかつこれらより燃焼室外周側に、斜め下向きで、かつ上面視(図1)で点火プラグ2を指向するように、燃料噴射弁7を配置してある。
【0030】
ピストン10の冠面は、最外周側に環状に平坦な基準平面11を残して、2段の傾斜面12,13により、円錐状に隆起させ、その隆起させた部分に、凹状(皿状)のキャビティ14を形成してある。従って、キャビティ14は、凹状でかつ周縁部が隆起して稜線15をなしている。
【0031】
このキャビティ14は、その内側の周縁部上方に点火プラグ2が位置するように、ピストン中心に対し吸気バルブ3A,3B側(燃料噴射弁7側)にオフセットして設けられると共に、上面視(図1)で、燃料噴射弁7と点火プラグ2とを結ぶ直線L1を点火プラグ2を中心にスワール下流方向に所定角度θ回転させた直線L2上に中心C0を有する円形としてある。回転角度θは、10〜30°の範囲とする。
【0032】
また、キャビティ14内の隅部にはアールRが設けられ、底面は平坦部16をなしている。
また、キャビティ14のピストン中心側の周縁部の稜線15の外周側には、前記傾斜面12,13より緩傾斜の緩傾斜面17を設けて、ピストン10の最高部の高さを抑えてある。更に、図では省略したが、稜線15の一部を切り欠いて、吸気バルブ3A,3B(又は排気バルブ4A,4B)を逃げるバルブリセスを形成するようにし、バルブタイミングあるいは圧縮比の要求に応えるようにしてもよい。尚、最外周部の平坦な基準平面11は最小限の幅を持たせ、生産加工時に基準面として用いる。
【0033】
ここにおいて、上面視で、燃料噴射弁7からの噴霧を点火プラグ2に向けて噴射させる一方、キャビティ14を、上面視で、燃料噴射弁7と点火プラグ2とを結ぶ直線L1を点火プラグ2を中心にスワール下流方向にθ=10〜30°回転させた直線L2上に中心C0を有する円形としたことで、中速回転及び極低回転での成層燃焼時にそれぞれ次のような作用効果が得られる。
【0034】
図4(a)は中速回転での燃料噴射中、図4(b)は中速回転での点火時期付近の噴霧形態をそれぞれ示している。
燃料噴射弁7から点火プラグ2方向に噴射された噴霧がスワール流によって流されても、キャビティ14をスワール下流方向にオフセットしているので、噴霧がキャビティ14からはみ出すことがない。従って、スワールで転向した燃料もキャビティ14内に収まり、良好な成層化が可能となる。
【0035】
尚、図14はキャビティを回転させていない場合の中速回転での噴霧形態で、噴霧がスワール下流側へ流されると、キャビティからはみ出し、成層化をなし得なくなる(点火プラグ回りの空燃比が薄過ぎる)と共に、噴霧が点火プラグに届きにくくなることを示している。
【0036】
図5(a)は極低回転での燃料噴射中、図5(b)は極低回転での点火時期付近の噴霧形態をそれぞれ示している。
この場合は、スワール流が弱いため、燃料噴射弁7からの噴霧は直進して、キャビティ14の内壁に衝突する。この際、キャビティ14をスワール下流方向にオフセットしたことで、噴霧が衝突するキャビティ14の内壁が噴霧の衝突方向に対し傾斜しているので、キャビティ14の内壁に沿って、図5で時計方向のベクトル(噴霧の貫徹力)Vを生じ、このベクトルVがキャビティ14内のスワールと対向するので、これらのバランスにより、噴霧が点火プラグ2回りに長く留まることになり、良好な成層化が可能となる。
【0037】
尚、図15はキャビティを回転させていない場合の極低回転での噴霧形態で、スワール流が弱いので、噴射された直後の勢いのある噴霧は曲げられずに直進して点火プラグに達するものの、燃料量が少なく、キャビティ内での貫徹力が弱いことから、スワール流が弱くても、キャビティ内のスワール流に流されて点火プラグ付近を短時間で通過してしまい、成層化できるタイミングが限られることを示している。
【0038】
ここで、前記回転角度θは、10〜30°の範囲とする。
図6は、横軸をキャビティ回転角度θとして、縦軸に成層燃焼時の燃費をとったグラフであり、θ=10〜30°の範囲で成層燃焼時の燃費を向上できることを示している。
【0039】
すなわち、中速回転では、キャビティ回転角度θを大きくすると、スワールで転向した燃料もキャビティ内に収まり、成層度が向上し、燃費が向上する。但し、θが大き過ぎると、キャビティのスワール上流側の噴霧干渉の影響により、成層度が悪化して、燃費が悪化すると考えられる。
【0040】
極低回転では、キャビティ回転角度θを大きくすると、前記ベクトル(噴霧の貫徹力)とキャビティ内のスワールとがバランスされ、点火プラグ回りに燃料が長く留まり、点火時期の設定自由度が大きくなって、燃費が向上する。但し、θが大き過ぎると、やはりキャビティのスワール上流側の噴霧干渉の影響により、成層度が悪化して、燃費が悪化すると考えられる。
【0041】
本実施形態では、成層燃焼性能の向上に加え、均質燃焼性能をも併せて向上させるという観点から、以下のような各部の最適化をも行っている。
ピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面11からの、キャビティ14の底面平坦部16の深さAは、3〜9mmの範囲とする。
【0042】
図7は、横軸を深さAとして、縦軸に均質燃焼時の軸トルク(実線示)及び成層燃焼時の燃費(点線示)をとったグラフであり、A=3〜9mmの範囲で、均質燃焼時の軸トルクと成層燃焼時の燃費とを両立できることを示している。
【0043】
すなわち、深さAを大きくすれば、成層燃焼時にキャビティ14内の燃料保持性を向上させて成層混合気を形成し易くなり、成層燃焼性能が向上するが、均質燃焼時にキャビティ14内外の空間不連続により、燃焼室全体に均質混合気を形成し難くなるので、これらを両立させる範囲とするのである。
【0044】
また、ピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面11からの、キャビティ14の底面平坦部16の深さをA、前記基準平面11からの、稜線15の最上部の高さをHとしたとき、これらの合計値(合計深さ)B=A+Hは、10〜20mmの範囲とする。
【0045】
図8は、横軸を合計深さB=A+Hとして、縦軸に均質燃焼時の軸トルク及び成層燃焼時の燃費をとったグラフであり、B=10〜20mmの範囲で、均質燃焼時の軸トルクと成層燃焼時の燃費とを両立できることを示している。
【0046】
すなわち、深さAと同様に、合計深さBを大きくすれば、成層燃焼時にキャビティ14内に成層混合気を形成し易くなり、成層燃焼性能が向上するが、均質燃焼時にキャビティ14内外の空間不連続により、均質混合気を形成し難くなるので、これらを両立させる範囲とするのである。
【0047】
また、キャビティ14内の隅部のアールRは、5〜20mmの範囲とする。
図9は、横軸をRとして、縦軸に均質燃焼時の軸トルク及び成層燃焼時の燃費をとったグラフであり、R=5〜20mmの範囲で、均質燃焼時の軸トルクと成層燃焼時の燃費とを両立できることを示している。
【0048】
アールRにより、成層燃焼時に成層混合気をスムーズに点火プラグ2近傍に輸送する一方、均質燃焼時にキャビティ14内外をスムーズに混合気が流れるようにするのであり、アールRが小さ過ぎると、その役目を果たせず、アールRが大き過ぎても、成層混合気がキャビティ14外へ誘導され、点火プラグ2への輸送が良好になされないからである。
【0049】
また、本実施形態では、ピストン10冠面のキャビティ14を囲む稜線15の外周側に、平坦部を設けることなく、ピストン10冠面の外周側に向かって低くなる円錐面からなる傾斜面12,13を形成したので、均質燃焼時に、キャビティ14内と外との間のガス流動を確保でき、混合気の均質化を促進できる。また、平坦部を設けないので、ピストン10の表面積を低減でき、冷却損失を低減できる。
【0050】
しかも、この傾斜面は、キャビティ14の稜線15の外周側に連なる内側傾斜面13と、この内側傾斜面13と最外周部の平坦な基準平面11とをつなげる外側傾斜面12とで、2段の角度で形成してある。
【0051】
このようにすることで、燃費向上のためピストン側の容積を大きくして高圧縮比化を図る場合、外側傾斜面12の立上がりによって内側傾斜面13を緩傾斜として稜線15につなげることができ、該稜線15の外側に平坦部分が生じるのを回避できて、均質燃焼時の火炎伝播の阻害要因をなくすことができることと併せて、キャビティ14内と外とでのガス流動を確保できて燃費の向上と良好な燃焼性の保持との両立を図ることができる。
【0052】
ここで、前記内側傾斜面13の水平面(基準平面11と平行)に対する角度αは、10〜60°の範囲、望ましくは15〜45°の範囲に設定する。
図10は、横軸を傾斜面角度αとして、縦軸に均質燃焼時の軸トルク及び成層燃焼時の燃費をとったグラフであり、α=10〜60°の範囲で、均質燃焼時の軸トルクと成層燃焼時の燃費とを両立できることを示している。
【0053】
但し、傾斜面角度αが大きくなると、ピストン高さが高くなるので、同じ燃焼性能であれば、S/V比、すなわち冠面表面積の観点からも前記範囲内でできるだげθを小さく設定するのが好ましく、また前述のキャビティ深さ等の最適化を考慮して前記範囲内で設定する。
【0054】
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図11は第2実施形態を示す直噴火花点火式内燃機関の概略平面図である。尚、同上の概略断面図については図2と同様であり、図1のa−a’断面(若しくはa−a断面)に相当するピストンの断面図についても図3と同様であるので、省略した。
【0055】
本実施形態でのキャビティ14は、上面視(図1)で、燃料噴射弁7と点火プラグ2とを結ぶ直線L1上に中心C1を有する第1の円と、該第1の円を点火プラグ2を中心にスワール下流方向に所定角度θ回転させた第2の円(燃料噴射弁7と点火プラグ2とを結ぶ直線L1を点火プラグ2を中心に所定角度θ回転させた直線L2上に中心C2を有する第2の円)と、を想定したときに、前記第1の円のスワール上流側の円弧A1と前記第2の円のスワール下流側の円弧A2とをつないだ長円形状としたことを特徴とする。回転角度θは、10〜30°の範囲とする。
【0056】
ここで、2つの円弧A1,A2は、点火プラグ2側では直線(接線)Tによりつなぎ、反対側は直線又は弧状につなぐ。
その他の構成は、第1実施形態(図1)と同じである。
【0057】
ここにおいて、上面視で、燃料噴射弁7からの噴霧を点火プラグ2に向けて噴射させる一方、キャビティ14を、上面視で、燃料噴射弁7と点火プラグ2とを結ぶ直線L1上に中心C1を有する第1の円と、該第1の円を点火プラグ2を中心にスワール下流方向に所定角度θ=10〜30°回転させた第2の円(直線L2上に中心C2を有する第2の円)と、を想定したときに、前記第1の円のスワール上流側の円弧A1と前記第2の円のスワール下流側の円弧A2とをつないだ長円形状としたことで、中速回転及び極低回転での成層燃焼時にそれぞれ次のような作用効果が得られる。
【0058】
図12(a)は中速回転での燃料噴射中、図12(b)は中速回転での点火時期付近の噴霧形態をそれぞれ示している。
燃料噴射弁7から噴射された噴霧がスワール流によって流されても、キャビティ14を長円形状としてスワール下流方向に長くしているので、噴霧がキャビティ14からはみ出すことがない。従って、スワールで転向した噴霧もキャビティ14内に収まり、良好な成層化が可能となる。また、キャビティ14内のスワールは上流側に渦中心を持つので、噴霧を点火プラグ2側へ容易に届かせることができる。
【0059】
図13(a)は極低回転での燃料噴射中、図13(b)は極低回転での点火時期付近の噴霧形態をそれぞれ示している。
この場合は、スワール流が弱いため、燃料噴射弁7からの噴霧は直進して、キャビティ14の内壁に衝突する。この際、キャビティ14をスワール下流方向に長くして傾斜した直線部Tを持つようにしたことで、この傾斜した直線部Tに沿って、燃料噴霧に、図13で時計方向のベクトル(噴霧の貫徹力)Vを生じ、このベクトルVがキャビティ14内のスワールと対向するので、これらのバランスにより、噴霧が点火プラグ2回りに長く留まることになり、良好な成層化が可能となる。
【0060】
本実施形態においても、回転角度θにより図6の特性が得られるので、回転角度θは、10〜30°の範囲とするのがよい。
また、本実施形態におけるその他の構成(キャビティ深さA等)は、第1実施形態(図1)と同じであるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態を示す直噴火花点火式内燃機関の概略平面図
【図2】 同上の概略断面図
【図3】 図1のa−a’断面に相当するピストンの断面図
【図4】 中速回転での噴霧形態を示す図
【図5】 極低回転での噴霧形態を示す図
【図6】 回転角度θの適正範囲を示す図
【図7】 深さAの適正範囲を示す図
【図8】 合計深さBの適正範囲を示す図
【図9】 アールRの適正範囲を示す図
【図10】 傾斜面角度αの適正範囲を示す図
【図11】 第2実施形態を示す直噴火花点火式内燃機関の概略平面図
【図12】 第2実施形態の中速回転での噴霧形態を示す図
【図13】 第2実施形態の極低回転での噴霧形態を示す図
【図14】 参考例の中速回転での噴霧形態を示す図
【図15】 参考例の極低回転での噴霧形態を示す図
【符号の説明】
1 シリンダヘッド
2 点火プラグ
3A,3B 吸気バルブ
4A,4B 排気バルブ
6 スワール制御弁
7 燃料噴射弁
10 ピストン
11 基準平面
12 外側傾斜面
13 内側傾斜面
14 キャビティ
15 稜線
16 底面平坦部
17 緩傾斜面
Claims (9)
- ピストン冠面に、凹状でかつ周縁部が隆起して稜線をなすキャビティを有し、かつ、このキャビティはその内側の周縁部上方に点火プラグが位置するようにピストン中心に対しオフセットして設けられ、
所定の運転条件で、圧縮行程にて燃料噴射弁からキャビティ内に向けて燃料を噴射し、燃焼室内のスワール成分のあるガス流動を用いて、点火プラグ回りに集中的に層状の混合気を形成して成層燃焼を行うようにした直噴火花点火式内燃機関において、
上面視で、燃料噴射弁からの噴霧を点火プラグに向けて噴射させる一方、
前記キャビティを、上面視で、燃料噴射弁と点火プラグとを結ぶ直線を点火プラグを中心にスワール下流方向に10〜30°回転させた直線上に中心を有する円形としたことを特徴とする直噴火花点火式内燃機関。 - ピストン冠面に、凹状でかつ周縁部が隆起して稜線をなすキャビティを有し、かつ、このキャビティはその内側の周縁部上方に点火プラグが位置するようにピストン中心に対しオフセットして設けられ、
所定の運転条件で、圧縮行程にて燃料噴射弁からキャビティ内に向けて燃料を噴射し、燃焼室内のスワール成分のあるガス流動を用いて、点火プラグ回りに集中的に層状の混合気を形成して成層燃焼を行うようにした直噴火花点火式内燃機関において、
上面視で、燃料噴射弁からの噴霧を点火プラグに向けて噴射させる一方、
前記キャビティを、上面視で、燃料噴射弁と点火プラグとを結ぶ直線上に中心を有する第1の円と、該第1の円を点火プラグを中心にスワール下流方向に所定角度回転させた第2の円と、を想定したときに、前記第1の円のスワール上流側の円弧と前記第2の円のスワール下流側の円弧とをつないだ長円形状とし、燃料噴射弁からの噴霧が衝突するキャビティの内壁に傾斜した直線部を持つようにしたことを特徴とする直噴火花点火式内燃機関。 - 前記回転角度を10〜30°の範囲としたことを特徴とする請求項2記載の直噴火花点火式内燃機関。
- ピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面からの、前記キャビティの底面平坦部の深さAを、3〜9mmの範囲としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の直噴火花点火式内燃機関。
- ピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面からの、前記キャビティの底面平坦部の深さをA、前記基準平面からの、前記稜線の最上部の高さをHとしたとき、これらの合計値B=A+Hを、10〜20mmの範囲としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の直噴火花点火式内燃機関。
- 前記キャビティ内の隅部のアールRを、5〜20mmの範囲としたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の直噴火花点火式内燃機関。
- ピストン冠面の前記キャビティの稜線の外周側に、ピストン冠面の外周側に向かって低くなる円錐面からなる傾斜面を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の直噴火花点火式内燃機関。
- 前記傾斜面を、前記キャビティの稜線の外周側に連なる内側傾斜面と、この内側傾斜面とピストン冠面の最外周部の平坦な基準平面とをつなげる外側傾斜面とで、2段の角度で形成したことを特徴とする請求項7記載の直噴火花点火式内燃機関。
- 前記内側傾斜面の水平面に対する角度αを、10〜60°の範囲としたことを特徴とする請求項8記載の直噴火花点火式内燃機関。
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