JP3799585B2 - ボルト締結機のボルト回転機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールド工法において、セグメント間をボルトで締結するボルト締結機のボルト回転機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シールド工法とは、前面に切羽を有するシールド掘進機を地中で推進させ、周囲の地盤の崩壊を防ぎながら、その内部で安全に掘削および覆工作業を行いつつトンネルを構築する工法である。トンネルとなる部分は、その周方向にセグメントと呼ばれる複数のピースに分割されており、セグメント自動組立ロボットにより組み立てられる。また、組み立てたセグメントが落ちたり、ずれたりしないように、トンネルの周方向および進行方向の各セグメント間は、セグメント自動組立ロボットに搭載されたボルト締結機によりボルトで締結される。このボルト締結機の先端には、セグメントの各境界面を挟んで対峙するように形成された箱穴内において、ボルトをボルト穴に螺合するボルト回転機構が設けられている。
【0003】
ここで、図4は従来のボルト回転機構を示す説明図であり、トンネルの進行方向の各セグメント間(すなわちリング間)を結合する場合を示している。この図に示すように、ボルト回転機構は、トンネルの径方向に一列で進行方向に二段となるように並設された2個のソケット2を備えており、このソケット2を既設セグメントに形成された箱穴に挿入し、ボルト1を把持セグメントに形成されたボルト穴9に螺合できるように、締結用モータ(図示せず)の動力を複数の伝達ギヤからなる歯車列(図示せず)によりソケット2に伝達している。かかる構成によれば、以下のようにしてセグメント間をボルト1で締結することができる。なお、ソケット2が3個の場合、ソケット2はトンネルの径方向に一列で進行方向に三段となるように並設される。
(1)まず、各ソケット2,2に対して、自動供給装置(図示せず)によりボルト1,1を供給する。
(2)次に、そのソケット2を既設セグメントの箱穴に挿入し、箱穴の壁面を貫通する孔を通して把持セグメントに設けられているボルト穴9にボルト1を嵌め込む。
(3)そして、締結用モータを駆動させてソケット2を回転させ、ボルト1をボルト穴9に螺合することによりセグメント同士を結合する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、セグメントはコンクリート構造物であるため、ボルト穴を形成するときの位置精度は通常±1mm程度である。したがって、ボルトをボルト穴に嵌め込むときに、ボルトとボルト穴の軸芯がずれている場合がある。そのため、ボルト締結機のボルト回転機構を少なくともこの偏心誤差を許容することができる機構にしておかなければならない。そこで、図5に示すようなボルト締結機のボルト回転機構が提案されている(例えば、特公平3−64258号等)。この図に示すボルト回転機構は、ソケット2と歯車10とをユニバーサルジョイント11で連結し、ばね12でソケット2のセンタリングを行っているものである。かかる構成により、ボルト1とボルト穴の軸芯が傾いていたり、ずれていたりしていても、そのずれ等を補正してボルト1をボルト穴に螺合させることができる。しかし、このユニバーサルジョイント11のシャフトには、過大な負荷がかかるため、シャフトが細ければ破断してしまい、太くすればソケット2や歯車10が大きくなってしまう、という問題があった。また、このユニバーサルジョイント11を利用したボルト回転機構では、ユニバーサルジョイント11の傾斜に偏心許容範囲が拘束されるため、ユニバーサルジョイント11の剛性を高く維持したまま偏心許容範囲を拡大しようとすれば、ボルト回転機構が大きくなってしまう、という問題もあった。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、コンパクトな機構でソケットを偏心させることができ、偏心許容範囲を拡大することができるボルト締結機のボルト回転機構を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、トンネルを形成する複数のセグメントの各境界面を挟んで対峙するように形成された箱穴に、その境界面を貫通するようにボルトを挿入して回転させることによりセグメントを締結するボルト締結機のボルト回転機構であって、上記ボルトを把持するソケットと、そのソケットと同軸に設けられた歯車に同軸に形成され、歯車の動力をソケットに伝達する原動軸と、その原動軸とソケットの間に設けられたフローティングカムと、ソケットのセンタリングを行う弾性体からなる付勢手段と、を備え、上記ソケット,フローティングカムおよび原動軸がオルダム機構を形成している、ことを特徴とするボルト締結機のボルト回転機構が提供される。
【0007】
上述した本発明は、コンパクトな機構でボルトとボルト穴の軸芯のずれを補正することができるボルト締結機のボルト回転機構を提供するものである。すなわち、歯車の動力をソケットに伝達する手段としてオルダム機構を利用したものである。かかる構成により、ソケット,フローティングカムおよび原動軸の一方の係合部では上下(トンネルの径方向)にスライドすることができ、他方の係合部では左右(トンネルの接線方向)にスライドすることができ、ソケット(ボルト)を任意に偏心させつつボルトを螺合することができる。また、オルダム機構を利用したことにより、係合部の剛性を高めることができ、コンパクトな機構で過大な負荷に耐えることができる。さらに、付勢手段を設けたことにより、ソケットは常にセンタリングされ、ソケットやフローティングカムがはずれたり、他部位と接触したりすることがない。
【0008】
また、本発明の実施の形態によれば、上記付勢手段は、上記ソケット,フローティングカムおよび原動軸の各係合部の外周面に嵌め込まれた環状のゴムであることが好ましい。さらに、他の実施の形態によれば、上記ソケットは上記歯車の中央部に形成された凹部に挿入されており、上記付勢手段はソケット外周面と歯車内周面との隙間に挿着された環状のゴムであることが好ましい。
【0009】
上述したいずれの本発明の実施の形態であっても、常にソケットを略中央に位置決めすることができ、ソケットがはずれたり、他部位と接触したりすることがない。また、ボルト螺合時の遠心力によるボルトへの影響を抑制することができ、確実にボルトをボルト穴に螺合することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1から図3を参照して説明する。
図1は本発明によるボルト締結機のボルト回転機構を示す部分側面断面図である。この図に示すように、本発明のボルト回転機構は、ボルト1を把持するソケット2と、ソケット2と同軸に設けられた歯車3に同軸に形成され、歯車3の動力をソケット2に伝達する原動軸3gと、原動軸3gとソケット2の間に設けられたフローティングカム4と、ソケット2のセンタリングを行う弾性体からなる付勢手段5と、を備え、ソケット2,フローティングカム4および原動軸3gがオルダム機構を形成しているものである。
【0011】
ここで、図2はオルダム機構を説明する図であり、(A)は一般的なオルダム機構の鳥瞰図、(B)は本発明においてオルダム機構が作用したときの部分側面断面図である。図2(A)に示すように、オルダム機構は、直溝を有する継手本体が原動軸に接続され、その直溝と垂直な直溝を有する継手本体が従動軸に接続され、その中間にそれぞれの直溝に摺動可能に係合するフローティングカムが設けられたものである。かかる構成によれば、回転中にフローティングカムが各直溝に沿って自由に摺動するため、軸芯がずれていても原動軸の回転を従動軸に伝達することができる。したがって、この機構は、原動軸と従動軸が平行であって軸芯がずれている場合に使用できる軸継手である。しかるに、セグメントを締結するボルト1を螺合させる場合において、ボルト1とボルト穴の軸芯は平行であるが、上述したように偏心していることがある。そこで、図2(A)に示す原動軸,原動軸の継手本体,従動軸,従動軸の継手本体を、それぞれ歯車3,原動軸3g,ボルト1,ソケット2とみなせば、上述したオルダム機構を利用することができる。例えば、図2(B)に示すように、ボルト穴とボルト1の軸芯がずれていたとしても、フローティングカム4が直溝に沿って摺動することにより、確実にボルト1をボルト穴に螺合することができる。なお、ここでは付勢手段5を省略している。このように、オルダム機構を利用することにより、従来のユニバーサルジョイントを利用したボルト回転機構と比較して、軸芯の偏心許容範囲を拡大することができる、係合部の剛性を高めることができる、コンパクトな機構で過大な負荷に耐えることができる、等の利点を有する。また、フローティングカム4をソケット2等よりも柔らかい金属で形成すれば係合部の滑りをよくすることができ、オルダム機構の利点を最大限に発揮させることができる。もちろん、係合部に潤滑油を塗るようにしてもよい。なお、係合部の凹凸は図示したものに限られるものではなく、フローティングカム3に直溝が設けられ、原動軸3gにその直溝に係合する凸部を設けるようにしてもよい。
【0012】
次に、全体の構成について説明する。図1に示すように、歯車3は、ボルト締結機のケーシング6に複数の軸受け7を介して回転可能に支持されており、駆動モータ(図示せず)から動力が伝達される伝達ギヤ8と歯合している。また、その中央部には凹部3aが形成されており、その底部に原動軸3gが形成またはボルト止めされている。この原動軸3gに上述したフローティングカム4が係合し、その先端にソケット2が係合している。ソケット2は、奥部に環状の磁石2mを内蔵し、ボルト1の頭部を吸着して把持するようになっている。また、ソケット2の内周面の先端側にはテーパ面が形成されており、ソケット2にボルト1を容易に供給することができるようになっている。また、付勢手段5は、図1に示す実施の形態では、ソケット2,フローティングカム4および原動軸3gの各係合部の外周面に嵌め込まれた環状のゴムである。また、このゴム5が嵌め込まれるソケット2等の外周面には、ゴム用の溝が形成されていることが好ましい。この付勢手段5は、次の3つの作用を施すものである。すなわち、▲1▼ボルト1の螺合時には、その回転による遠心力でソケット2が振り回されてボルト1の頭部が不安定になるのを抑制し、▲2▼ボルト1をボルト穴に嵌め込む時には、ボルト1とボルト穴の軸芯がずれていたとしても±1mm程度であることを勘案し、ボルト1を把持したソケット2をセンタリングしてボルト1を嵌め込み易くし、▲3▼それ以外の時には、ソケット2が歯車3の内壁と接触しないようにしている。また、図3は、付勢手段5の他の実施の形態を示す図であり、ソケット2の外周面と歯車3の内周面との隙間に環状のゴムを挿着したものである。かかる構成でも、上述した3つの作用を施すことができる。また、ボルト1の偏心許容値を十分に得られるのであれば、図3に示す環状のゴムの代わりに、放射状に複数のコイルばねや板ばねを設けるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0014】
【発明の効果】
上述した本発明のボルト締結機のボルト回転機構によれば、歯車とソケットの連結機構としてオルダム機構を利用したことにより、軸芯の偏心許容範囲を拡大することができ、係合部の剛性を高めることができ、コンパクトな機構で過大な負荷に耐えることができる、ボルト回転機構がユニット化されてメンテナンスがしやすい、等の優れた効果を奏する。さらに、付勢手段を設けたことにより、遠心力によるボルトへの影響を抑制することができ、ソケット(ボルト)を常にセンタリングすることができる、等の優れた効果を奏する。したがって、コンパクトな機構でソケットを偏心させることができ、確実にボルトを螺合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるボルト締結機のボルト回転機構を示す部分側面断面図である。
【図2】図2はオルダム機構を説明する図であり、(A)は一般的なオルダム機構の鳥瞰図、(B)は本発明においてオルダム機構が作用したときの部分側面断面図である。
【図3】付勢手段の他の実施の形態を示す図であり。
【図4】従来のボルト締結機のボルト回転機構を示す説明図である。
【図5】ボルトの偏心誤差を許容することができる従来のボルト締結機のボルト回転機構を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1 ボルト
2 ソケット
3 歯車
3g 原動軸
3a 凹部
4 フローティングカム
5 付勢手段
6 ケーシング
7 軸受け
8 伝達ギヤ
9 ボルト穴
10 歯車
11 ユニバーサルジョイント
12 ばね

Claims (3)

  1. トンネルを形成する複数のセグメントの各境界面を挟んで対峙するように形成された箱穴に、その境界面を貫通するようにボルトを挿入して回転させることによりセグメントを締結するボルト締結機のボルト回転機構であって、
    上記ボルトを把持するソケットと、
    そのソケットと同軸に設けられた歯車に同軸に形成され、歯車の動力をソケットに伝達する原動軸と、
    その原動軸とソケットの間に設けられたフローティングカムと、
    ソケットのセンタリングを行う弾性体からなる付勢手段と、
    を備え、上記ソケット,フローティングカムおよび原動軸がオルダム機構を形成している、ことを特徴とするボルト締結機のボルト回転機構。
  2. 上記付勢手段は、上記ソケット,フローティングカムおよび原動軸の各係合部の外周面に嵌め込まれた環状のゴムである、請求項1に記載のボルト締結機のボルト回転機構。
  3. 上記ソケットは上記歯車の中央部に形成された凹部に挿入されており、上記付勢手段はソケット外周面と歯車内周面との隙間に挿着された環状のゴムである、請求項1に記載のボルト締結機のボルト回転機構。
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