JP3799456B2 - 液封入式防振装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車エンジン等の振動発生体を防振的に支承するのに使用される液封入式防振装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の振動発生体を、その振動を車体へ伝達させないように支承するマウント等の液体封入式の防振装置には、例えば、図7に示すような、特開平6−307487号公報に記載の液封入式防振マウント100が公知である。
【0003】
この液封入式防振マウント100は、振動発生体側と車体S側にそれぞれ締結される上側取付金具101と下側取付金具102とをゴム弾性体からなる防振基体103を介して結合してなり、防振基体103に対向してダイヤフラム104を配して、その上側に液室105を、下側に空気室106を形成し、さらに防振基体103に対向して仕切部材107を配して液室105をオリフィス108により連通する2室105a,105bに仕切り構成している。
【0004】
そして、この防振マウント100には、防振基体103の一定限度以上の変形を防止するためストッパ機構が配されている。すなわち、上側取付金具101に、その全周にわたって外方に突出するストッパ部109が設けられ、このストッパ部109に対してその上方から全周にわたって当接可能なストッパ金具110が設けられ、振動に伴なう上側取付金具101の上方への大変位時に、ストッパ部109がストッパ金具110に当接して、防振基体103の一定以上の変形を防止するようなされている。
【0005】
この防振マウント100において、液体の封入された液室105の密封は、下側取付金具102の下側開口縁で、ダイヤフラム104と空気室106を形成する椀状のカバー111とをかしめ締結することによりなされている。一方、ストッパ金具110の取付けに際しては、下側取付金具102の上端のフランジに溶接することによりなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、液体封入のためのかしめ部とストッパ金具の取付けのための溶接部とを別々に設けた場合、防振装置の組立て工数が多くかかり、また、製造コストが高いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、組立て工数が少なく、低コストに製造することができる液封入式防振装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の液封入式防振装置の製造方法は、上側取付金具と、椀状をなす下側取付金具と、両者を結合するゴム弾性体からなる防振基体と、前記防振基体に対向して配され当該防振基体との間に液室を形成するとともに下側取付金具との間に空気室を形成するダイヤフラムと、前記液室をオリフィスにより連通する2室に仕切る仕切部材とよりなる液封入式防振装置において、前記上側取付金具にその全周にわたって外方に突出するストッパ部を設け、このストッパ部に対して上方から全周にわたって当接可能に配され前記防振基体の大変位を規制するストッパ金具を設け、このストッパ金具が前記防振基体の外周を取囲む筒状胴部を有し、当該筒状胴部の下側開口縁で前記ダイヤフラムとともに前記下側取付金具の上側開口縁をかしめ締結して、前記液室を密封せしめてなる液封入式防振装置に関するものである。
【0009】
このように、防振基体の全周にわたるストッパ構造と液体封入構造とを、ストッパ金具の下側開口縁で、ダイヤフラムと下側取付金具をかしめ締結することにより行なっている、即ち、全周ストッパ金具の取付けと液体封入とを1つのかしめ部により同時に行なっているので、組立て工数が少なく、よって製造コストが低い。
【0010】
本発明に係る液封入式防振装置の製造方法は、かか液封入式防振装置の製造に際し、前記上側取付金具に取着された前記防振基体を前記ストッパ金具内に配し、液槽中にて、このストッパ金具に前記ダイヤフラムを仮装着し、この仮装着後に、前記空気室となる空間が液中から空気中に露出するまで、液槽の液面を下げるか又はこの仮装着された仮装着体を上昇させて、前記仮装着体に上方から前記下側取付金具を被せ、その後に前記のかしめ締結を行なうことを特徴とするものである。
【0011】
かかる製造方法であると、全周ストッパ金具の取付けと液体封入とを1つのかしめ部により同時に行なう構造を、1回の液面高さの調整によって、空気室内に液体を残留させることなく、組立てることができる。これにより、全周にわたるストッパ機能を有する液封入式防振装置を、簡単かつ低コストに製造することができる。また、前記液面の高さ調整により、かしめ部と空気室が離れた位置にある製品も容易に組立てることができ、装置設計の自由度が高い。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の1実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、1実施形態に係る液封入式防振装置10の縦断面図、図2は、その分解縦断面図である。
【0014】
この防振装置10は、自動車エンジン等の振動発生体側に取付けられる上側取付金具12と、車体のシャーシー等の支持側に取付けられる下側取付金具14と、両者を弾力的に結合するゴム弾性体からなる防振基体16と、防振基体16に対向して配され、当該防振基体16との間に液室18を形成するとともに、下側取付金具14との間に空気室20を形成するダイヤフラム22と、前記液室18をオリフィス24により連通する上下2室18a,18bに仕切る仕切部材26とを備えてなる。
【0015】
上側取付金具12は、図に示すように略コマ形状をなし、その軸方向中央部にて全周にわたって外方に突出するストッパ部28を有する。そして、加硫成形手段により防振基体16の上部に埋設されている。また、この上側取付金具12には、上方から軸方向にやや傾斜して取付用ボルト30が挿入固着されている。なお、ストッパ部28は、防振基体16から連なったゴムに包被されている。
【0016】
下側取付金具14は、椀状をなし、その上側開口縁が拡開されてフランジを形成し、また底部には取付用ボルト32,32が下方に突設されている。さらに、その内部に、ダイヤフラム22及び仕切部材26が収納されて、液室18及び空気室20が形成されている。
【0017】
防振基体16は、略傘形状をなし、その下端部に、下側取付金具14上端のフランジ上に配されるリング状の補助金具34が、加硫成形手段により取着されている。
【0018】
ダイヤフラム22は、下側取付金具14の内周面に配された円形ゴム膜よりなり、下側の空気室20に膨出可能に構成されている。このダイヤフラム22は、ゴムにより被覆された筒状金具36に一体的に形成され、この筒状金具36が下側取付金具14の内周面に嵌着されている。筒状金具36は、上端が拡開されてフランジを形成し、このフランジが下側取付金具14上端のフランジ上に配されており、下端が内側に折曲されてこの折曲部に前記円形ゴム膜が連続して形成されている。
【0019】
仕切部材26は、鉄鋼板のプレス加工により形成された扁平な有底筒状部材であり、ダイヤフラム22の筒状金具36の内周面に嵌着されている。この仕切部材26の上端は拡開されてフランジを形成し、このフランジが筒状金具36上端のフランジ上に配されている。また、仕切部材26の外周面にはオリフィス24形成用の凹部が形成されている。なお、仕切部材26には、その上下2室を連通する連通口38が形成されている。
【0020】
40は、上側取付金具12のストッパ部28に対してその上方から全周にわたって当接可能に配され、防振基体16の大変位を規制するストッパ金具である。このストッパ金具40は、防振基体16の外周を取囲む筒状胴部40aを有し、この筒状胴部40aの上端部には、内側に折曲延成されたストッパ用の内フランジ42が設けられている。そして、振動に伴なう上側取付金具12の上方への大変位時に、前記ストッパ部28が、この内フランジ42に全周にわたって当接する。なお、この内フランジ42の内側を上側取付金具12の上部が貫通している。
【0021】
図2に示すように、ストッパ金具40の筒状胴部40aの下側開口縁には、外側に拡開され、さらに下方に折曲形成されて外周フランジ44が設けられている。図1に示すように、この外周フランジ44内に、防振基体16の補助金具34、仕切部材26及びダイヤフラム22の各周縁部とともに下側取付金具14上端のフランジを装入して、それらを包み込むようにかしめ締結している。これにより、防振基体16と下側取付金具14とに対してダイヤフラム22及び仕切部材26がシール状態に固着されて、液室18及び空気室20が密封され、また、ストッパ金具40が下側取付金具14に取付けられて、防振基体16、液室18及び空気室20を収納するケース体が構成されている。
【0022】
46は、上側取付金具12の上面にネジ締結等の手段により固着された上側ストッパ部材であり、中央に取付用ボルト30が貫通する孔を有する略円形の金属板の外周端部に、外周部が軸方向下方に向ってスカート状に延成したゴムカバーを付設してなる。そして、振動に伴なう上側取付金具12の下方への大変位時に、前記ストッパ金具40の内フランジ42の上面に当接する。
【0023】
上記構成の液封入式防振装置10の使用状態においては、エンジン等の振動に伴う防振基体16の変形及び2つの液室18a,18bの容積変化により、内部の液体がオリフィス24を通じて流動し、低周波振動は防振基体16とオリフィス24の流動抵抗及び液体の粘性により吸収されて減衰し、また高周波振動は防振基体16及び液体自体の共振作用により吸収されて振動を低減する。
【0024】
この時、上側取付金具12の振動の変位量が大きくなったとき、例えば上方への大変位時には、上側取付金具12のストッパ部28がストッパ金具40の内フランジ42に当接してそれ以上の変位が規制される。また、下方への大変位時には、上側取付金具12の上面に設けた上側ストッパー部材46が内フランジ42に当接してそれ以上の変位を抑止する。
【0025】
つぎに、この防振装置10の製造方法について説明する。
【0026】
▲1▼ まず、ストッパ金具40内に、上側取付金具12に取着された防振基体16を周方向で位置決めして装入し、これを、図3に示すように、液室18内に封入する液体52が満された液槽50中に、ストッパ金具40の下側開口縁、即ち外周フランジ44を上方に向けた姿勢で設置する。ここで、防振基体16の補助金具34は、外周フランジ44の水平な段面44aに当接した状態で、当該フランジ44内に配されている。
【0027】
▲2▼ 同じく液槽50中で、空気の排除されたダイヤフラム22内に、仕切部材26を仮に圧入しておく。
【0028】
▲3▼ 図4に示すように、液槽50中にて、仕切部材26の圧入されたダイヤフラム22を、その円形ゴム膜側を上方に向けた状態で、ストッパ金具40に仮装着する。このとき、ダイヤフラム22及び仕切部材26の両フランジは、ストッパ金具40の外周フランジ44内に装入される。
【0029】
▲4▼ 図5に示すように、空気室20を形成するダイヤフラム22の上側の空間が、液槽50の液体52中から空気中に露出するまで、かかる仮装着体を上昇させて、図6に示すように、その上方から下側取付金具14を被せる。このとき、かしめ部に相当するストッパ金具40の外周フランジ44は、液体52中、即ち液面54よりも下方に配され、下側取付金具14のフランジは、ストッパ金具40の外周フランジ44内に装入される。
【0030】
▲5▼ 最後に、液槽50から出して、ストッパ金具40の外周フランジ44により、補助金具34、仕切部材26、ダイヤフラム22及び下側取付金具14の周縁部をかしめ締結する。
【0031】
上記▲4▼において、仮装着体を上昇させる代りに、空気室20を形成するダイヤフラム22の上側の空間が液槽50の液体52中から空気中に露出するまで、液槽50の液面54を下げてもよい。この場合においても、かしめ部となる外周フランジ44を液体52中に配した状態で下側取付金具14を被せることが、液室18内への空気混入防止の点より好ましい。
【0032】
なお、上記▲1▼において、ストッパ金具40内への防振基体16の装入は、液槽50中で行なってもよい。また、▲5▼において、かしめ締結は液槽50内で行なってもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態の液封入式防振装置10では、全周ストッパ構造と液室18への液体封入構造とを、ストッパ金具40の外周フランジ44で、防振基体16、仕切部材26、ダイヤフラム22及び下側取付金具14をかしめ締結することにより行なっている。すなわち、ストッパ金具40の取付けと液体封入とを1つのかしめ部により同時に行なっているので、組立て工数が少なく、よって製造コストが低い。
【0034】
また、本実施形態の液封入式防振装置10であると、下側取付金具14を被せて空気室20を形成する際に、液面54の高さを調整するので、空気室20内に液体52が入り込むことがない。また、この被せられた下側取付金具14をストッパ金具40によりかしめ締結して、ストッパ金具40の取付けと、液体の封入及び空気室20の密閉とを一度に行なうので、製造が容易である。このように、1回の液面54調整により、全周にわたるストッパ機能を有する液封入式防振装置10を、簡単かつ低コストに製造することができる。また、液面54の高さ調整により、本装置10のように空気室20がかしめ部から離れた位置にある場合にも、容易に組立てることができ、よって、装置設計の自由度が高い。
【0035】
【発明の効果】
本発明の液封入式防振装置の製造方法であると、全周にわたるストッパ機能を有するストッパ金具の取付けと液体封入とを、1つのかしめ部により同時に行なっているので、組立て工数が少なく、製造コストが低い。
【0036】
また、本発明の液封入式防振装置の製造方法であると、かかる全周ストッパ金具の取付部と液体封入のかしめ部とを同一箇所に設定した構造を、1回の液面高さの調整により、簡単かつ低コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態の液封入式防振装置10の縦断面図である。
【図2】液封入式防振装置10の分解断面図である。
【図3】液封入式防振装置10の製造時の断面図である。
【図4】液封入式防振装置10の製造時の断面図である。
【図5】液封入式防振装置10の製造時の断面図である。
【図6】液封入式防振装置10の製造時の断面図である。
【図7】従来の液封入式防振装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 液封入式防振装置
12 上側取付金具
14 下側取付金具
16 防振基体
18 液室
20 空気室
22 ダイヤフラム
24 オリフィス
26 仕切部材
28 ストッパ部
40 ストッパ金具
44 外周フランジ
50 液槽
52 液体
54 液面
Claims (1)
- 上側取付金具と、椀状をなす下側取付金具と、両者を結合するゴム弾性体からなる防振基体と、前記防振基体に対向して配され当該防振基体との間に液室を形成するとともに下側取付金具との間に空気室を形成するダイヤフラムと、前記液室をオリフィスにより連通する2室に仕切る仕切部材とよりなる液封入式防振装置であって、前記上側取付金具にその全周にわたって外方に突出するストッパ部が設けられ、このストッパ部に対して上方から全周にわたって当接可能に配され前記防振基体の大変位を規制するストッパ金具を備え、このストッパ金具が前記防振基体の外周を取囲む筒状胴部を有し、当該筒状胴部の下側開口縁で前記ダイヤフラムとともに前記下側取付金具の上側開口縁をかしめ締結して、前記液室が密封された液封入式防振装置の製造方法であって、
前記上側取付金具に取着された前記防振基体を前記ストッパ金具内に配し、液槽中にて、このストッパ金具に前記ダイヤフラムを仮装着し、
この仮装着後に、前記空気室となる空間が液中から空気中に露出するまで、液槽の液面を下げるか又はこの仮装着された仮装着体を上昇させて、前記仮装着体に上方から前記下側取付金具を被せ、
その後に前記のかしめ締結を行なうことを特徴とする液封入式防振装置の製造方法。
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