JP3798072B2 - 熱収縮包装用多層フィルム - Google Patents

熱収縮包装用多層フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱収縮包装用多層フィルムに関するものである。更に詳しくは、高速自動包装適性に優れた熱収縮包装用多層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来技術】
食料品や日用雑貨品等の商品には、熱収縮性を有するフィルムで包被した後に熱収縮トンネル内を通過させて該フィルムを熱収縮させる、所謂、熱収縮包装が広く用いられている。これらの熱収縮包装に用いられるフィルムとしては、ポリプロピレン系樹脂やポリエステル系樹脂、或は、ポリ塩化ビニル系樹脂等からなる単層のフィルムが用いられている。しかし、前者のポリプロピレン系樹脂やポリエステル系樹脂からなるフィルムは、耐熱性や光学的特性に優れているが、ヒートシール性が悪い点で自動包装適性に劣っていた。又、後者のポリ塩化ビニル系樹脂からなるフィルムは、熱収縮包装用フィルムとして種々の優れた特性を有しているが、廃棄された際に該フィルムを焼却すると有毒ガスを発生し、自然環境を害すると云う問題を有していた。
【0003】
そこで、前者のポリプロピレン系樹脂やポリエステル系樹脂のような融点の高い樹脂からなる熱収縮性フィルムのヒートシール性を改良する方法として、該フィルムの表面に該フィルムの融点よりも低い融点を有するポリエチレン系樹脂等のヒートシール層を積層させる方法が試みられてきた。特に、ヒートシール性の面から直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下、「LLDPE」と称す。)と呼ばれている一般のエチレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられてきた。更に、低温ヒートシール性を向上させるために、これら一般の密度を有するLLDPEに、極低密度の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下、VLDPEと称する。)を添加させる試みがなされてきた。
【0004】
LLDPEにVLDPEを添加させた樹脂組成物をヒートシール層に用いると、確かに低温ヒートシール性は向上するが、滑り性が低下して、高速自動包装適性が阻害されていた。具体的には、包装時に被包装物を載せたトレイとの滑り性が悪く包装仕上がりが悪くなったり、ロール巻きされたフィルムがブロッキングを生じて繰り出しがスムーズに行われなかったりする。
【0005】
特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと称する。)は、酸素遮断性に優れているので、食料品等の包装に多用されているが、ヒートシール性に劣るためにヒートシール層を設けることが必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低温ヒートシール性に優れ、しかも、滑り性やロール巻きフィルムの巻き出し性が良好で、高速自動包装適性に適した熱収縮包装用多層フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、これらの課題を解決するために次のような手段を講じた。即ち、
少なくとも3層からなる熱収縮性多層フィルムにおいて、両外層が密度0.910〜0.935g/cm3 であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが2本存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[A]100重量部に対し、密度0.870〜0.910g/cm3 であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが1本のみ存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[B]を10〜50重量部混合させた樹脂組成物からなることを特徴とする熱収縮包装用多層フィルムが提供され、
又、両外層が密度0.910〜0.935g/cm3 であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが2本存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[A]100重量部に対し、密度0.870〜0.910g/cm3 であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが1本のみ存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[B]を10〜50重量部混合させた樹脂組成物からなり、芯層がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなり、両外層と芯層の間の中間層がポリオレフィン系接着性樹脂からなることを特徴とする熱収縮包装用多層フィルムが提供され、
更に、上記エチレン−α−オレフィン共重合体[B]のMw /Mn が3以下で、しかも、I10/I2 が6.5以上であることを特徴とする上記熱収縮包装用多層フィルムが提供される。
【0008】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明において用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体[A]としては、エチレン含有量が50モル%以上で、密度が0.910〜0.935g/cm3 であって、しかも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが2本存在する融点を有することが必要である。
エチレン−α−オレフィン共重合体[A]の密度が0.910g/cm3 未満では、滑り性が阻害され、包装機や他の包装体との滑りが悪くなり、包装体が包装ラインで滞るようになるので、高速自動包装適性が劣る。又、密度が0.935g/cm3 を越えると、低温ヒートシール性が低下するのみならず、得られるフィルムの透明性も劣るようになる。更に、エチレン含有量が50モル%未満では、ポリエチレン系樹脂の特性であるヒートシール性が劣ってしまう。尚、これら低温ヒートシール性の低下やヒートシール特性の低下は、高速自動包装適性を阻害させる。
【0009】
このような示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが2本存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[A]は、従来の一般的な不均一系触媒により製造される。
【0010】
本発明において用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体[B]としては、エチレン含有量が50モル%以上で、密度が0.870〜0.910g/cm3 であって、しかも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが1本のみ存在する融点を有することが必要である。
エチレン−α−オレフィン共重合体[B]の密度が0.870g/cm3 未満では、製膜が困難である。又、密度が0.910g/cm3 を越えると低温ヒートシール性の向上が望めない。更に、エチレン含有量が50モル%未満では、ポリエチレン系樹脂の特性であるヒートシール性が劣ってしまう。
【0011】
このような示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが1本のみ存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[B]は、例えば、特開平2−77410号の明細書に記載されている方法によって得ることができる。即ち、炭化水素溶媒中、(I)遷移金属成分として、下記一般式
【化1】
Figure 0003798072
(式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0<n<3)
で示されるバナジウム化合物(以下、Vと略称する。)、及び(II)有機金属成分として、下記一般式
【化2】
Figure 0003798072
(式中、R’は炭化水素基、Xはハロゲン、1<m<3)
で示される有機アルミニウム化合物(以下、Alと略称する。)、及び(III)第三成分として、下記一般式
【化3】
Figure 0003798072
(式中、R’’は炭素数1〜20の炭化水素基で、部分的或は全てハロゲン置換された有機基、R’’’は、炭素数1〜20の炭化水素基)
で示されるエステル化合物(以下、Mと略す)とから成形される触媒系を用いて、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンを共重合するに際し、Al/V(モル比)が2.5以上、M/V(モル比)が1.5以上となる触媒条件下、重合温度40〜80℃において、炭化水素溶媒不溶ポリマー(スラリー部)及び炭化水素溶媒可溶ポリマー(溶液部)共存状態で共重合して得られる。又、特開昭60−226514号の明細書に記載された、三塩化バナジウムとアルコールとを反応して得られるバナジウム化合物を前記(I)遷移金属成分として用いて同様に重合することによって得ることができる。更に、最近話題になっているメタロセン触媒を用いても得ることができる。
【0012】
更に、本発明において用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体[B]は、Mw /Mn が3以下で、しかも、I10/I2 が6.5以上であることがより好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体[B]のMw /Mn が3を越えると、熱収縮トンネル通過後の滑り性が多少劣る場合がある。しかし、高速自動包装適性を大幅に阻害するほどではない。又、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]のI10/I2 が6.5未満では延伸安定性が劣る。
尚、I10/I2 は、ASTM D−1238による190℃−10kgのメルトフロー条件と、190℃−2.16kgのメルトフロー条件におけるメルトフローの比である。
【0013】
これらエチレン−α−オレフィン共重合体[A]、及び[B]を構成するα−オレフィンモノマーとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−エチルペンテン、ヘプテン、ヘキセン−1、オクテン−1等を用いることができる。
【0014】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体[A]と、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]との混合割合は、エチレン−α−オレフィン共重合体[A]100重量部に対し、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]を10〜50重量部混合させることが必要である。エチレン−α−オレフィン共重合体[B]が10重量部未満では、低温ヒートシール性の向上が望めない。又、50重量部を越えると滑り性が劣ってしまう。更に、フィルムの引張強度や熱収縮包装時の結束力も弱くなる。
【0015】
両外層の各層の厚みとしては、本発明のフィルムが熱収縮包装として用いられることから、1〜20μmの範囲が好ましい。1μm未満ではヒートシール性が不十分である。又、20μmを越えるとコストが高くなり好ましくない。尚、本発明の熱収縮包装用多層フィルムの全体厚みとしては、熱収縮包装として用いられることから、10〜40μmの範囲が好ましい。
【0016】
芯層に用いる樹脂としては、両外層のエチレン−α−オレフィン共重合体[A]の融点よりも高い融点を有する樹脂が好ましい。両外層のエチレン−α−オレフィン共重合体[A]の融点よりも低いと、耐熱性に劣るようになり、熱収縮トンネル内でフィルムが溶融して孔が開くことがある。
尚、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]の融点は、密度の関係から、エチレン−α−オレフィン共重合体[A]の融点よりも一般に低い。
【0017】
芯層に用いる具体的な樹脂としては、両外層のエチレン−α−オレフィン共重合体[A]よりも融点の高い融点を有するエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂やエチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、或は、ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂等が用いられる。
特に好ましくは、食料品等の保存用包装のためにガス遮断性を付与させた熱収縮包装用多層フィルムを得るために、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が望ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、ガス遮断性や加工性等の面からエチレン含有率が27〜47モル%でケン化度が95%以上のものが好ましい。
又、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、両外層に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体との溶融接着性が悪いので、共押出成型する場合には、芯層と両外層の間に変性ポリオレフィン系樹脂等の接着性樹脂層を設けることが好ましい。
【0018】
芯層の厚みとしては、本発明のフィルムが熱収縮包装として用いられることから、3〜20μmの範囲が好ましい。特に、芯層にエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いた場合、3μm未満ではガス遮断性に劣り、20μmを越えると加工性、特に延伸加工性が劣ってしまう。
【0019】
本発明の熱収縮包装用多層フィルムを構成する各層の樹脂や樹脂組成物には、必要に応じて帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、或は、酸化防止剤等を添加することができる。更に、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、他の樹脂層を適宜設けることができる。
【0020】
本発明における熱収縮包装用多層フィルムの製造方法については、特に限定されるものではないが、次のような方法によって製造するのが好ましい。即ち、2種3層や3種5層のダイスを用いて、本発明のフィルム構成を満足させる積層未延伸原反シートを共押出した後、1軸方向、或は、2軸方向に延伸させて熱収縮包装用多層フィルムを得る。縦方向と横方向の熱収縮特性をバランスさせるためには、サーキュラーダイスを用いてチューブ状未延伸シートを形成し、インフレーション方式により2軸延伸させるのが好ましい。
【0021】
本発明の熱収縮包装用多層フィルムを用いた熱収縮包装方法としては、従来一般に行われている熱収縮包装方法、即ち、熱収縮時に包装体内の空気を排出させるために、フィルムに空気排出用の小孔を設ける方法を用いることができる。しかし、芯層にエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いた場合には、ガス遮断性を維持させるために、フィルムに空気排出用の小孔を設ける方法は好ましくないく、包装体内を脱気させる方法等を用いることが好ましい。又、芯層にエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いる場合には、包装体内を炭酸ガスや窒素ガス等によって置換して包装することもできる。
更に、本発明の熱収縮包装用多層フィルムは、トレーに盛られた商品を包装するストレッチ包装に、更に熱収縮させるストレッチシュリンク包装にも好適に用いることができる。
【0022】
【作用】
本発明の熱収縮包装用多層フィルムは、フィルムの滑り性が良好であるので、熱収縮トンネル後の包装ラインで、包装体が滞って流れを阻害するようなことがない。その理由は明らかではないが、次のようなことが考えられる。即ち、従来のLLDPEに低温ヒートシール性を付与させるために添加させるVLDPEは、低分子量成分が多量に含まれており、この低分子量成分がフィルム表面にブリードアウトし、滑り性を低下させているものと考えられる。これに対し、本発明の表面層に添加するエチレン−α−オレフィン共重合体[B]は、低分子量成分を殆ど含んでおらずフィルム表面にブリードアウトすることがないので、滑り性が損なわれないものと考えられる。
【0023】
しかも、本発明の熱収縮包装用多層フィルムには、外層に密度が0.870〜0.910g/cm3 と低い密度のエチレン−α−オレフィン共重合体[B]を添加しているので、低温ヒートシール性が付与されている。その理由としては、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体[B]は、密度の低下と共に融点も低下するためと考えられる。
【0024】
これらのことから、本発明の熱収縮包装用多層フィルムは、低温ヒートシール性を有しているので、高速で被包装物を包被することができるものと考えられる。しかも、熱収縮トンネルを通過した後でも包装体の表面の滑り性が阻害されず、熱収縮された包装体が包装ラインで滞るようなこともないので、高速自動包装が可能になるものと考えられる。
【0025】
更に、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]のMw /Mn が3を越える場合には、低分子量成分が多く含まれている場合があるので、上記した如く、該成分が熱収縮トンネル内で加熱されてフィルム表面にブリードアウトし、滑り性を多少低下させることがあるものと考えられる。しかし、その滑り性の低下は、高速自動包装適正を大幅に低下させる程ではない。又、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]のI10/I2 が6.5未満の場合には、適正な延伸温度範囲が狭くなり、延伸安定性が劣るようになるものと考えられる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例、比較例によって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものでない。
尚、実施例及び比較例におけるフィルム特性や高速自動包装適性等については、下記する方法によって評価した。
(1)示差熱分析(DSC)
精工電子工業(株)製(DSC−220C)を用い、熱プレスにより作成された厚さ約0.5mmのシートから切り出した約10mgの試験片をDSC測定用サンプルパンに入れ、150℃で5分間余熱加熱し、10℃/分で40℃まで降温し、5分間保持した後の10℃/分の速度で150℃まで昇温し、サーモグラフを得た。
【0027】
(2)低温ヒートシール性
2枚の試料フィルムを重ね合わせ、テスター産業(株)製のヒートシーラー試験機を用い、ヒートシール温度:130℃、140、150℃、160℃、ヒートシール面圧力:2.0kg/cm2 、ヒートシール時間:1.0秒間、ヒートシール幅:10mm、ヒートシール長さ:25mm、の条件でヒートシールを行った。そして、手によりヒートシール部の幅方向に剥離させ、その際容易に剥離できるできるものを「×」、力を入れると剥離できるものを「△」、ヒートシール縁部でフィルム切断を生じるもの、或は、ヒートシール縁部やフィルム部分で切断の生じないものを「○」で表示した。
【0028】
(3)高速自動包装適性試験
ハナガタ(株)製の包装機(エコラッパー)を用いて、発泡ポリスチレントレー(250×170×15mm)に載せられたスライスハム(100g)を、フィルム幅500mmの試料フィルムで包装を行った。具体的には、まず、フィルムを半折にし、先端部がヒートシールされると共に、重ね会わされたフィルム両端部が強制固定されて筒状体を形成し、該筒状体の中に前記トレーが挿入される。そして、該トレーの上下をスポンジ状板により押し圧して余分の空気を排出させた後に、強制固定された筒状フィルムの内側、及び、筒状フィルムの後端部をL型ヒートシール機によりヒートシールする。
得られたスライスハムの載ったトレーの包被体を2秒間隔で、160℃に設定された熱収縮トンネル内に送り込んで熱収縮包装させた。尚、熱収縮トンネル内の通過時間は3秒間とした。
その際、熱収縮トンネルを出た直後の包装体同士の滑り性や、包装体と包装機との滑り性等を評価し、滑り性の良好なものを「○」、滑り性に劣っているものを「×」で示した。又、包装時にロール巻きフィルムの繰り出し性が良好なものを「○」、巻き出し性が劣っているものを「×」で示した。
更に、これらの特性を総合評価して、高速自動包装適性に優れているものを「○」、高速自動包装適性に劣っているものを「×」で示した。
【0029】
〔実施例1〕
エチレン−α−オレフィン共重合体[A]として、密度が0.917g/cm3 で、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが117℃と124℃の2ケ所に存在するエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ製:ダウレックス2047)を用い、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]として、密度が0.902g/cm3 、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが100℃に1ケ所にのみ存在し、Mw /Mn が2.0で、I10/I2 が8.9のエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ社製:アフィニティー1880)を用い、エチレン−α−オレフィン共重合体[A]100量部に対し、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]を40重量部混合させた樹脂組成物を両外層とし、エチレン含有率が44モル%のエチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物(日本合成(株)製:ソアノールAT4403)を芯層とし、ポリプロピレン系接着性樹脂(三井石油化学工業(株)製:アドマーQF−580)を両外層と芯層の間の中間層とするチューブ状共押出積層未延伸原反シートを得た。
尚、製膜は、両外層用としてスクリュー口径が65mmφの押出機、芯層用として45mmφの押出機、そして、中間層用として45mmφの押出機を用い、成型用ダイスとして3種5層の共押出用環状ダイスを用い、共押出方法によって行った。得られたチューブ状積層未延伸原反シートの厚みは約270μmであり、各層の厚み比率は、各外層が25%、芯層が10%、そして、各中間層が20%で、チューブの折り径幅は280mmであった。尚、未延伸原反シートの表面はメルトフラクヤーが生ぜず、良好であった。
【0030】
更に、このチューブ状未延伸原反積層シートをインフレーション方式による2軸によって縦方向に3.4倍、横方向に3.4倍延伸し、その後多少弛緩を与えながら熱固定を行い、全体厚みが約30μmの熱収縮包装用多層フィルムを得た。尚、延伸時にバブルは安定しており、延伸加工性は良好であった。
得られたフィルムの諸特性、及び、高速自動包装適性を表1に示した。
表1からも明らかな如く、実施例1に記載された熱収縮包装用多層フィルムは、低温ヒートシール性は多少劣っていたが、滑り性やロール巻きフィルムの巻き出し性は良好であり、高速自動包装適性に優れていた。
【0031】
〔実施例2〕
両外層に添加させるエチレン−α−オレフィン共重合体[B]として、密度が0.900g/cm3 、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが90℃に1ケ所にのみ存在し、Mw /Mn が2.0で、I10/I2 が5.5のエチレン−ブテン共重合体(エクソン社製:EXACT3028)を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮包装用多層フィルムを得た。尚、押出成形されたチューブ状未延伸原反積層シートを延伸する際に、バブルの安定性がやや劣っていた。
得られたフィルムの諸特性、及び、高速自動包装適性を表1に併記した。
表1からも明らかな如く、実施例2に記載された熱収縮包装用多層フィルムは、滑り性は多少劣っていたが、低温ヒートシール性やロール巻きフィルムの巻き出し性は良好であり、高速自動包装適性に優れていた。
【0032】
〔比較例1〕
両外層に、実施例1の両外層に用いたエチレン−α−オレフィン共重合体[A]の吸熱ピークが117℃と124℃の2ケ所に存在するエチレン−オクテン−1共重合体のみとし、エチレン−α−オレフィン共重合体[B]を添加しない以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮包装用多層フィルムを得た。
得られた熱収縮包装用多層フィルムの諸特性、及び高速自動包装適性を表1に併記した。
表1から明らかな如く、比較例1に記載された熱収縮包装用多層フィルムは、滑り性やロール巻きフィルムの巻き出し性は使用可能な程度であったが、低温ヒートシール性に劣り、高速自動包装適性に欠けていた。
【0033】
〔比較例2〕
両外層に、実施例1の両外層に用いたエチレン−α−オレフィン共重合体[B]としての吸熱ピークが100℃に1ケ所にのみ存在するエチレン−オクテン−1共重合体の代わりに、密度が0.905g/cm3 で吸熱ピークが86℃と110℃の2ケ所に存在するエチレン−ブテン−1共重合体を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮包装用多層フィルムを得た。
得られた熱収縮包装用多層フィルムの諸特性、及び高速自動包装適性を表1に併記した。
表1から明らかな如く、比較例2に記載された熱収縮包装用多層フィルムは、低温ヒートシール性やロール巻きフィルムの巻き出し性は使用可能な程度であったが、滑り性に劣り、高速自動包装適性に欠けていた。
【0034】
【表1】
Figure 0003798072
【0035】
【発明の効果】
本発明の熱収縮包装用多層フィルムは、低温ヒートシール性に優れていると共に、滑り性が良好であるので、高速自動包装用に最適である。
又、本発明の熱収縮包装用多層フィルムは、廃棄された際に焼却しても有毒ガスを発生しすることがないので、自然環境を悪化させることがない。

Claims (3)

  1. 少なくとも3層からなる熱収縮性多層フィルムにおいて、両外層が密度0.910〜0.935g/cm3であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが2本存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[A]100重量部に対し、密度0.870〜0.910g/cm3であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが1本のみ存在するエチレン−α−オレフィン共重合体(融点があるとすると90℃より低い、分子量/サイズ分布が約3より小さい、結晶相全体が約90℃より低い温度で融解するという性質で特徴づけられるエチレンアルファ−オレフィンプラストマーを除く)[B]を10〜50重量部混合させた樹脂組成物のみからなることを特徴とする熱収縮包装用多層フィルム。
  2. 両外層が密度0.910〜0.935g/cm3であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが2本存在するエチレン−α−オレフィン共重合体[A]100重量部に対し、密度0.870〜0.910g/cm3であって、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークが1本のみ存在するエチレン−α−オレフィン共重合体(融点があるとすると90℃より低い、分子量/サイズ分布が約3より小さい、結晶相全体が約90℃より低い温度で融解するという性質で特徴づけられるエチレンアルファ−オレフィンプラストマーを除く)[B]を10〜50重量部混合させた樹脂組成物のみからなり、芯層がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなり、両外層と芯層の間の中間層がポリオレフィン系接着性樹脂からなることを特徴とする熱収縮包装用多層フィルム。
  3. 上記エチレン−α−オレフィン共重合体[B]のMw/Mnが3以下で、しかも、I10/I2が6.5以上であることを特徴とする請求項1乃至2に記載された熱収縮包装用多層フィルム。
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