JP3797449B2 - 圧延設備の高温マンドレル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、圧延設備の高温マンドレルに関し、連続熱間圧延設備のコイルボックス内に設置される高温マンドレルの耐焼付性の向上を図り、ステンレス鋼板などの巻き取り巻き戻しにも使用できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延によって圧延される圧延材の先後端の歩留まり向上を目的として、粗圧延されたシートバーを接合して仕上圧延機に送って連続して薄板に圧延することが行われつつある。
【0003】
このような連続熱間圧延設備では、図5(a)に示すように、罐着き1で加熱され、粗圧延機2で粗圧延されたシートバーAの温度の低下を防止するため、コイルボックス3内に一旦コイル状に巻き取って保温しながら、このコイル状の圧延材Bの中心部に両側からマンドレル4を差し込んだ後、先後を逆にして巻き戻し端部をシャー5で切断して先行シートバーCに接合することが行われており、マンドレル自体も800℃程度の高温に加熱して使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このマンドレルを差し込む際コイル内面とマンドレル外周面で微摺動が生じること及びマンドレル自体を高周波加熱などによって800℃程度に加熱するため材料の強度が低下することなどに起因して焼き付きが発生しやすいという問題がある。
【0005】
このため従来の常温で使用され常温材(例えばSNCM材)で作られたマンドレルでは、高温強度が低く高温マンドレルとして使用することが出来ず、これに代わりステライト系材料(Co-Cr-W)を用いて作られ現在高温マンドレルとして使用されているものでは、普通鋼の場合には、何等問題はないものの、今後連続熱間圧延が適用されようとしているステンレス鋼や特殊鋼の場合では、焼き付きの問題があり、特にステンレス鋼では、著しい焼き付きを起すという問題がある。
【0006】
そこで、高温での強度と硬度が高い材料をマンドレルの母材(耐熱鋼)の表面に肉盛り溶接することが考えられるが、母材との硬度差が大きく、熱膨張も異なるため、肉盛り溶接した材料に割れが生じてしまうという問題がある。
【0007】
この発明は、かかる従来技術に鑑みてなされたもので、ステンレス鋼や特殊鋼に対しても焼き付きを生じること無く巻き取り巻き戻しができる圧延設備の高温マンドレルを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためこの発明の圧延設備の高温マンドレルは、連続熱間圧延設備の高温圧延材をコイル状に巻き取った後、巻き戻す加熱された高温マンドレルであって、前記マンドレルを耐熱鋼の母材とし、この母材の表面にステライト材を肉盛りし、このステライト材の表面にコバルト−炭化クロム系複合材料を肉盛りして形成したことを特徴とするものである。
【0009】
この圧延設備の高温マンドレルによれば、耐熱鋼の母材の表面に中間層としてステライト材を肉盛りし、この表面にコバルト−炭化クロム系複合材料を肉盛りするようにしており、表面の硬度を高くして焼き付きを防止するようにし、中間層としてのステライト材によって母材から硬度がなだらかに変化するようにして割れなどを防止できるようにしている。
【0010】
また、この発明の請求項2記載の圧延設備の高温マンドレルは、請求項1記載の構成に加え、前記コバルト−炭化クロム系複合材料の常温でのビッカース硬度を600程度としたことを特徴とするものである。
【0011】
この圧延設備の高温マンドレルによれば、コバルト−炭化クロム系複合材料の常温でのビッカース硬度を600程度とするようにしており、高温での硬度の低下も少なく耐焼付性にも優れた高温マンドレルとしている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の圧延設備の高温マンドレルの一実施の形態について図面に基づき具体的に説明する。
【0013】
図1はこの発明の圧延設備の高温マンドレルの一実施の形態にかかる正面図、部分縦断面図及び部分横断面図である。
【0014】
この圧延設備の高温マンドレル10は、つば部11とコイルに挿入される中空円筒状の挿入部12とで構成されており、これらつば部11及び挿入部12が耐熱鋼(例えばステンレス鋼など)で形成してある。そして、この高温マンドレル10の挿入部12のコイルと接触する部分の外周が焼付性を改善するために別の素材を肉盛りできるように細径に形成してある。
【0015】
この高温マンドレル10の挿入部12の細径部分には、母材である耐熱鋼の表面に中間層としてステライト材(例えばSTL#6)13が溶接などで肉盛りしてある。
【0016】
この中間層のステライト材は母材と最外層との硬度差による割れなどを防止するための緩衝層とするものであり、これによって硬度をなだらかに変化させることができるようにする。
【0017】
この中間層のステライト材13の表面には、高温での硬度及び強度が高いコバルト−炭化クロム系複合材料14が溶接などで肉盛りされている。
【0018】
このコバルト−炭化クロム系複合材料としては、例えば炭化クロムを45〜50重量%に対してコバルト及びクロムが残りの55〜50重量%で構成される複合材料が用いられる。
【0019】
炭化クロムの添加量が増大するにしたがって材料の硬度が上昇することからその添加量は50重量%が限度であり、添加量が少ないと耐摩耗性の改善を図ることができなくなることから30重量%以上にする必要がある。
【0020】
また、このコバルト−炭化クロム複合材料としては、常温における硬度(ビッカース硬度)が600程度(500以上〜700以下)であるものが望ましく、硬度が高くなると中間層のステライト材との硬度差が大きくなって800℃程度に加熱した場合に熱膨張差などによる割れが発生する一方、これより硬度が低いと従来のステライト材だけの場合に比べて耐焼付性の向上効果が顕著にならないためである。
【0021】
このような3層構造の高温マンドレル10とすることで、表面のコバルト−炭化クロム系複合材料の硬度は、常温で600程度の場合に、800℃程度まで加熱した場合でも、図2に示すように、硬度の低下が少なく高い硬度を維持することができ、高温での強度を十分確保することができる。
【0022】
また、800℃の高温での摩擦試験後の表面あらさを測定した結果が、図3であり、実験条件は、温度T:800℃、荷重W:5N/mm、摩擦回数N:3600回、摩擦速度V:20mm/sec、往復摩擦のストロークS:10mmである。
【0023】
この摩擦試験後の表面あらさが、非常に小さく、焼付きが生じ難くなっていることが分かる。
【0024】
また、このような3層構造の高温マンドレル10の表面から母材までの硬度を測定したものの一例が図4であり、同図からコバルト−炭化クロム系複合材料の表面から中間層のステライト材を経て母材の耐熱鋼までの硬度の変化がなだらかになっていることが分かる。
【0025】
なお、このようなコバルト−炭化クロム系複合材料は、溶解法によって均一に作ることができないことから、粉末冶金法で作ったり、ステライト材の表面に、各成分の粉末を混合して粉体プラズマ溶接法で肉盛り溶接することで作ることができる。
【0026】
このような圧延設備の高温マンドレル10を用いることで、ステンレス鋼や特殊鋼等の連続熱間圧延のコイルボックス内で使用する場合でも、耐焼付性に優れるとともに、高温強度が高いので耐摩耗性にも優れ耐久性もある。
【0027】
また、従来のステライト材で構成したものに比べ10倍以上の寿命があり、交換の頻度を減らしコストダウンを図ることができる。
【0028】
さらに、従来から使用されているステライト材を肉盛りしたマンドレルに対してはさらにその表面にコバルト−炭化クロム系複合材料を肉盛りすることで本願発明の効果を得ることができ、既存マンドレルへの適用も容易にできる。
【0029】
【発明の効果】
以上、一実施の形態とともに具体的に説明したようにこの発明の圧延設備の高温マンドレルによれば、耐熱鋼の母材の表面に中間層としてステライト材を肉盛りし、この表面にコバルト−炭化クロム系複合材料を肉盛りするようにしたので、表面の硬度を高くして焼き付きを防止することができるとともに、中間層としてのステライト材によって母材から硬度がなだらかに変化するようにすることができ、高温で使用した場合にも割れなどを防止することができる。
【0030】
また、この発明の請求項2記載の圧延設備の高温マンドレルによれば、コバルト−炭化クロム系複合材料の常温でのビッカース硬度を600程度とするようにしたので、高温での硬度の低下も少なく耐焼付性にも優れた高温マンドレルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の圧延設備の高温マンドレルの一実施の形態にかかる正面図、部分縦断面図及び部分横断面図である。
【図2】この発明の圧延設備の高温マンドレルの一実施の形態にかかる硬度と温度との関係を示すグラフである。
【図3】この発明の圧延設備の高温マンドレルの一実施の形態にかかる摩擦試験後の表面あらさの測定結果を示すグラフである。
【図4】この発明の圧延設備の高温マンドレルの一実施の形態にかかる表面から母材までの硬度の測定結果を示すグラフである。
【図5】この発明の圧延設備の高温マンドレルが適用される連続熱間圧延設備の一部分を示す概略構成図および高温マンドレル部分の拡大図である。
【符号の説明】
10 圧延設備の高温マンドレル
11 つば部
12 挿入部
13 ステライト材
14 コバルト−炭化クロム系複合材料
Claims (2)
- 連続熱間圧延設備の高温圧延材をコイル状に巻き取った後、巻き戻す加熱された高温マンドレルであって、前記マンドレルを耐熱鋼の母材とし、この母材の表面にステライト材を肉盛りし、このステライト材の表面にコバルト−炭化クロム系複合材料を肉盛りして形成したことを特徴とする圧延設備の高温マンドレル。
- 前記コバルト−炭化クロム系複合材料の常温でのビッカース硬度を600程度としたことを特徴とする請求項1記載の圧延設備の高温マンドレル。
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