JP2002361356A - ロールの補修方法及び補修ロール - Google Patents

ロールの補修方法及び補修ロール

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JP2002361356A
JP2002361356A JP2001173167A JP2001173167A JP2002361356A JP 2002361356 A JP2002361356 A JP 2002361356A JP 2001173167 A JP2001173167 A JP 2001173167A JP 2001173167 A JP2001173167 A JP 2001173167A JP 2002361356 A JP2002361356 A JP 2002361356A
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cylindrical
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cylindrical metal
sleeve
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JP2001173167A
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English (en)
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Yoichi Matsubara
洋一 松原
Toshio Nagano
敏雄 永野
Masatsugu Fujita
正継 藤田
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Dai Ichi High Frequency Co Ltd
Original Assignee
Dai Ichi High Frequency Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ロール胴部が摩耗した時に、そのロール胴部
を低コストで補修することの可能なロール補修方法を提
供する。 【解決手段】 既存ロール1の胴部2の、片側端部を含
む補修すべき軸線方向区間Aの外周面を切削して円筒面
6を形成し、その円筒面6に筒状金属体7を遊嵌し、そ
の筒状金属体に軸線方向に圧縮する熱間据込み加工を施
して増肉させ、増肉後の筒状金属体7Aを円筒面6に嵌
着させ、嵌着させた筒状金属体の外周面を所望形状に機
械加工して被覆スリーブとし、ロール補修を行う。この
方法では、ロール胴部の補修すべき軸線方向区間のみを
スリーブをかぶせて補修しており、低コストで補修でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、既存ロールの胴部
外周面が摩耗した時に、そのロールを補修する方法並び
にその補修によって再生した補修ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、各種の技術分野において多数
のロールが使用されており、その用途によっては摩耗の
きわめて激しいものがある。例えば、圧延工場でスラブ
を方向転換するためのターンテーブルに用いられている
テーブルロール(ターンローラ)は、胴部の片半側の外
径が大きく形成されており、その大径部にスラブが載
り、方向転換時にはスラブとの間に大きい滑りが必然的
に生じるため、その領域の摩耗がきわめて激しい。その
ため、摩耗した大径側を元の状態に戻すための補修が頻
繁に必要となる。
【0003】従来、摩耗したロールの補修方法として
は、ロール胴部外周面の摩耗した領域のみならず、ロー
ル胴部外周面全体を、場合によっては軸部を含むロール
全体の外周面を切削加工して各部の外径を小さく整え、
その表面全体に肉盛溶接を施して外径を増大させ、その
後、肉盛によって形成した肉盛溶接層の外周面に切削、
研磨等の機械加工を施して所望形状、寸法にする方法が
採られていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
従来の補修方法では、少なくともロール胴部外周面全体
を肉盛溶接に先立って機械加工し、次いで全体を予熱し
た状態で肉盛溶接を行い、その後肉盛溶接層を機械加工
するという多大な作業を必要とし、しかも、肉盛溶接時
にロール本体にも多大な熱影響を与えるため、肉盛溶接
層のみならずロール本体を含めた熱処理も必要とし、結
局、多くの作業を必要としてコスト高となるという問題
があった。
【0005】この問題を解決するには、肉盛溶接に代え
てスリーブを嵌着してロール胴部外周面を形成すること
が考えられる。すなわち、ロール胴部外周面を円筒状に
機械加工し、その上にスリーブを焼ばめによって嵌着さ
せ、そのスリーブの外周面を所望形状、寸法に機械加工
する方法が考えられる。しかしながら、焼ばめを行うに
は、ロール胴部外周面及びそれに被せるスリーブの内周
面を所定の直径、真直度、真円度、粗度となるように機
械加工して整え、その後、スリーブを変態しない程度の
温度に加熱して膨張させた状態で、ロール胴部外周面に
嵌合させるという嵌合操作を行う必要があり、従って、
嵌合操作に先立って高精度の機械加工を必要とし、しか
も嵌合操作においてはスリーブを終始好適な昇温状態に
維持してクリアランスを確保しつつ微少な隙間を介して
スリーブをロール胴部に注意深く嵌合しなければなら
ず、きわめて熟練と注力を要する作業が要求され、やは
りコスト高となるという問題が生じる。
【0006】本発明は、かかる問題点に鑑みて為された
もので、ロール胴部が許容値以上に摩耗した時に、低コ
ストでそのロール胴部を補修することを可能とするロー
ルの補修方法並びにその方法によって補修した補修ロー
ルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願第一の発明は、従来
行っていたロール胴部外周面全体に肉盛溶接して補修す
る代わりに、ロール胴部の摩耗が激しく補修を要する部
分にスリーブを被せて補修する構成とし、更にその補修
方法として、既存ロールの胴部の、その片側端部を含む
補修すべき軸線方向区間の外周面を対象として、その表
層部分を除去してほぼ一定直径の円筒面を形成し、その
円筒面に筒状金属体を遊嵌し、その筒状金属体に軸線方
向に圧縮する熱間据込み加工を施して少なくとも内面側
に増肉させて前記円筒面に嵌着させ、嵌着させた筒状金
属体の外周面を所望形状に機械加工して被覆スリーブと
するという方法を採用したものである。ここで、「筒状
金属体に軸線方向に圧縮する熱間据込み加工を施して少
なくとも前記円筒面側に増肉させて前記円筒面に嵌着さ
せ、」とは、筒状金属体に熱間据込み加工を施した後、
常温まで冷却した時に、筒状金属体がその内側に位置す
るロール胴部の円筒面に適当な締付力で固定された状態
となるように加工することを意味している。
【0008】上記構成によれば、ロール胴部の外周面を
全体に亘って、しかも精密に機械加工して整える必要は
なく、主として補修すべき軸線方向区間の表層のみを切
削等の簡単な機械加工により除去して円筒面を形成しそ
こにスリーブを嵌着させることでロールの補修を行うこ
とができ、このため既存ロールに対する切削等の機械加
工の工数を削減できる。更に、スリーブの嵌着に当たっ
ては、ロール胴部外周面に形成した円筒面に筒状金属体
を遊嵌し、その筒状金属体に軸線方向に圧縮する熱間据
込み加工を施すことで筒状金属体を嵌着させ、スリーブ
とする方法を採用したことで、焼ばめに比べて、はるか
に難度の低い作業で容易にスリーブを円筒面に嵌着で
き、且つその際の嵌着強度も焼ばめに比べて大きくでき
る。更に、筒状金属体の熱間据込み加工時にロール胴部
が熱影響を受けるが、その熱影響は、ロール胴部外周面
全体に肉盛溶接を行う場合に比べるとはるかに小さいの
で、後工程での熱処理を簡単に行うことができる。かく
して、ロール補修を低コストで実施できる。
【0009】また、本願第二の発明は、既存ロールの胴
部外周面を対象として、その表層部分を除去してほぼ一
定直径の円筒面を形成し、その円筒面に筒状金属体を遊
嵌し、その筒状金属体に軸線方向に圧縮する熱間据込み
加工を施して少なくとも内面側に増肉させて前記円筒面
に嵌着させ、嵌着させた筒状金属体の外周面を所望形状
に機械加工して被覆スリーブとし、更に、その被覆スリ
ーブとその下のロール本体にキー溝を形成してそのキー
溝にキーを装着し、この際、キー溝とキーの寸法関係設
定により前記被覆スリーブとロール本体とを回転方向に
は拘束するが軸線方向には相対的移動を許容する態様で
両者を固定する構成としたものである。ここで、スリー
ブをかぶせる領域は既存ロールの胴部全長であってもよ
いし、胴部の軸線方向の一部区間であってもよい。
【0010】上記構成によれば、第一の発明と同様に、
通常行われている焼ばめに比べて、はるかに難度の低い
作業で容易にスリーブを円筒面に嵌着できて作業コスト
を削減でき、且つその際の嵌着強度も焼ばめに比べて大
きくできる。しかも、ロール胴部に嵌着した被覆スリー
ブとロール本体とはキーで連結されるため、被覆スリー
ブに作用する回転力が過大となった場合とか、被覆スリ
ーブが熱膨張して嵌着力が低下した場合などのように、
被覆スリーブのロール本体に対する嵌着力では被覆スリ
ーブに作用する回転力に抗しきれなくなった場合でも、
キーがその回転力を支えるため被覆スリーブがロール本
体に対して円周方向にスリップするということがない。
また、被覆スリーブが搬送中のワーク等によって加熱さ
れた場合などにおいて被覆スリーブとその下のロール本
体との間に熱膨張差が生じ、被覆スリーブがロール本体
に対して軸線方向にずれようとした場合、前記したキー
は被覆スリーブのロール本体に対する軸線方向の相対的
移動を許容するので、被覆スリーブはロール本体に対し
て支障無く移動でき、キー或いは被覆スリーブに過大な
負荷が加わって変形や破損を生じるということがない。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明で補修の対象とする既存ロ
ールの形状、構造、用途、材質等は、特に限定されず、
外周面が摩耗して補修が必要なものであれば任意である
が、特に、圧延工場でスラブの方向転換のためのターン
テーブルに用いられているテーブルロールのように、軸
線方向の一部区間のみに大きい摩耗が生じるようなロー
ルが、本発明の補修方法を適用する効果が大きいので好
ましい。以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態
を説明する。
【0012】図1(a)は、圧延工場でスラブの方向転
換のためのターンテーブルに用いられている既存のテー
ブルロール(以下単にロールという)1を示す概略側面
図である。このロール1は、胴部2とその両端の軸部
3、4を備えた一体構造のものであり、その胴部2は一
端に位置する円筒状の大径部2aと、他端に位置する円
筒状の小径部2cと、その中間に位置するテーパ部2b
を備えている。このロール1は使用によって、大径側の
軸線方向区間Aに大きい摩耗が生じており、その他の部
分ではほとんど摩耗が生じていない。従って、領域Aの
みを補修すればよい。
【0013】このロール1を補修するため、まず、図1
(b)に示すように、ロール胴部の、その片側端部を含
む補修すべき軸線方向区間Aの外周面を対象として、そ
の表層部分を切削加工してほぼ一定直径の円筒面6を形
成し、次いで、図1(c)に示すように、その円筒面6
に別途作製した筒状金属体7を遊嵌する。なお、以下の
説明において、既存のロール1を構成していた部分をロ
ール本体1aとする。
【0014】ロール本体1aの円筒面6に遊嵌する筒状
金属体7は、円筒面6に遊嵌させた後、熱間据込み加工
によってその円筒面6に嵌着させ、その後その外周面を
所望形状に機械加工することで、ロール胴部の外周面の
一部を構成するスリーブ7B(図4参照)とするもので
ある。この筒状金属体7の材質としてはロール胴部に要
求される特性に適したものが選定され、例えば、胴部外
周面に高硬度、耐摩耗性が要求される場合には、筒状金
属体の材質として、多くの場合焼入に適した鋼材が使用
される。筒状金属体7の構造としては、ロール本体1a
に形成した円筒面6に遊嵌しうる寸法の筒状のものであ
れば任意であり、継目無しのものでも、継目ありのもの
でもよい。具体的な筒状金属体7としては、金属板を筒
状に曲げ加工し、会合した端部同志を溶接、拡散接合等
によって冶金的に接合する板巻き法によって製作したも
の、リング鍛造法で製作したもの、遠心鋳造で製作した
もの、削り出しで製作したもの等を挙げることができる
が、中でも、板巻き法によって製作したものがコスト的
に有利である。板巻き法による筒状金属体には継目があ
るが、本発明方法の実施にとって何ら支障はない。
【0015】筒状金属体7の内径及びロール本体1aに
形成した円筒面6の外径は、円筒面6と筒状金属体7の
間に適当な隙間があって両者を遊嵌させることができる
ように定めるものである。この隙間としては、円筒面6
の外径によっても異なるが、通常1mm前後もあれば十
分であり、この隙間を確保することで円筒面6に筒状金
属体7をきわめて容易に遊嵌することができる。因み
に、従来の焼ばめは、筒状金属体を200〜300°C
前後の温度に加熱して行うことから、嵌合代は0.1m
mオーダーであり、このため嵌合操作が前述のように難
しいものとなっている。筒状金属体7の厚さは、熱間据
込み加工によって増肉させ、スリーブ7Bを形成した時
に、そのスリーブ7Bに要求される厚さ及び外径を確保
できるように、また熱間据込み加工の作業性等を考慮し
て定められるものであり、材質や直径によっても異なる
が、通常、円筒面6の外径が100〜1000mmの場
合、3〜30mm程度に選定することが好ましい。
【0016】筒状金属体7の内面は、精密に機械加工す
る必要はなく、大きな歪みをなくし、さびや汚れ等を除
去する程度の内面加工を施しておけばよい。また、継目
ありの筒状金属体の場合には、継目の部分にばりが生じ
ることが多いので、そのばりは除去しておく。ロール本
体1aに形成する円筒面6も、高精度の仕上げ面となる
ように機械加工する必要はなく、大雑把な仕上げ加工で
よい。このように、円筒面6及び筒状金属体7の内面
は、焼ばめを行う場合に比べて、機械加工の程度を大幅
に低減できる。
【0017】ロール胴部2の補修すべき軸線方向区間A
に形成する円筒面6は、その全長に渡って一定外径のも
のとしてもよいが、図2(a)に示すように、胴部端部
とは反対側に位置する先端部分を、他の部分6bに比べ
て少し大径として嵌合部6aを形成し、その嵌合部6a
に筒状金属体7の先端を小さなクリアランスで嵌め合わ
せる構成とすることが好ましい。このように先端部分に
嵌合部6aを形成しておくと、図2(b)に示すよう
に、円筒面6に筒状金属体7を遊嵌した時、嵌合部6a
が概ねぴったり嵌合することで筒状金属体7を円筒面6
に対して同心状に保つことができ、筒状金属体7に熱間
据込み加工を行った際に、円周方向に均等に増肉が生じ
て、増肉後の筒状金属体7A〔図2(c)参照〕がロー
ル本体1aに対して同心状に形成される。
【0018】ロール本体1aに円筒面6を形成する際、
その先端(ロール胴部端部とは反対側)に隣接する部分
に段部8を形成する。この実施形態における段部8は、
円筒面6に遊嵌した筒状金属体7の先端を軸線方向に支
持するための、ロール軸線に直角な環状面8aとその外
周部分に形成された開先加工部8bを有している。一
方、筒状金属体7の先端も、環状面8aに突き当たる環
状面7aとその外周部分の開先加工部7bを備えてい
る。このように、開先加工部7b、8bを形成しておく
と、筒状金属体7を熱間据込み加工した後にも図2
(c)に示すように、筒状金属体7Aの先端とロール本
体1の段部8との間に開先加工部7b、8bによる溝が
残っており、この溝を利用して段部8と筒状金属体7A
先端を良好に溶接接合することができる。なお、これら
の開先加工部7b、8bは、円筒面6に筒状金属体7を
遊嵌し、熱間据込み加工によって嵌着した後、形成して
もよいが、この実施形態のように、あらかじめ開先加工
部7b、8bを形成しておく方が、機械加工を工程的に
集約して実施でき、好ましい。
【0019】前記したようにロール本体1aに円筒面6
を形成し、その円筒面6に筒状金属体7を遊嵌した後、
その筒状金属体7に軸線方向に圧縮する熱間据込み加工
を施して少なくとも内面側に増肉させ、図2(c)に示
すように、増肉後の筒状金属体7Aを胴部2の円筒面6
に嵌着させる。ここで、軸線方向に圧縮する熱間据込み
加工とは、増肉加工すべき領域を塑性変形容易な温度、
例えば赤熱状態に加熱し且つ軸線方向の圧縮力を加えて
増肉させる加工方法を意味しており、その具体的方法と
しては、(1)筒状金属体7に軸線方向の圧縮力を加え
た状態で軸線方向の短区間を環状に赤熱させて増肉させ
増肉部を直後に冷却する操作を、前記円筒面への嵌着に
足る区間長さに亘り軸線方向移動方式で適用して行う連
続移動方法、(2)筒状金属体7の軸線方向の短区間を
環状に赤熱させ、軸線方向に圧縮力を付与して赤熱した
短区間を増肉させ、その後、増肉部を冷却し、次いで軸
線方向に隣接した短区間に同様の操作を繰り返し適用し
て逐次増肉を行ってゆく逐次移動方法、(3)筒状金属
体7の増肉加工すべき領域全体を赤熱状態とし、その状
態で軸線方向の圧縮力を加えて全体に一度に増肉を生じ
させる方法等を挙げることができる。このうち、
(1)、(2)の連続的に或いは逐次に増肉を行う方法
は、短区間を対象とした小規模な設備により、また、型
具を用いることなく、安定して均一な増肉を行うことが
できる利点がある。特に、(1)の連続移動方法は、逐
次移動方法に比べて生産性が良く、且つ一層安定して均
一な増肉を行うことができるので好ましい。一方、
(3)の一度に増肉させる方法は、外面規制用の外型具
を用いることが必要であるが、加工時間が短くて良いと
いう利点がある。なお、(1)、(2)の方法において
も、外型具により外面の形状、寸法を規制するようにし
てもよい。
【0020】筒状金属体7の内周面とロール本体1aの
円筒面6の間に設けておく間隙g及び筒状金属体7に施
す熱間据込み加工の増肉比ηは、たとえば、次のような
方針で設定するとよい。すなわち、間隙gを、筒状金属
体7の円筒面6への遊嵌が容易に行える範囲でなるべく
小さくして、嵌着に必要な増肉量Δt、ひいては増肉比
η〔=t1 /t0 =(t0 +Δt)/t0 〕が小さくて
済むようにするのが、熱間据込み加工の作業性の点で通
常は得策となる。
【0021】前記したように、円筒面6に筒状金属体7
を遊嵌するには、間隙gは、筒状金属体の径にもよる
が、多くの場合、1mm前後もあれば十分である。一
方、筒状金属体7に、内外面を拘束しない状態で熱間据
込み加工を施した場合、内面側、外面側にほぼ等しい増
肉が生じるので、例えば筒状金属体7の厚さを10mm
とすると、その筒状金属体7に対して片側1mmの増肉
量を生じさせる際の増肉比は、 η=(10+1×2)/10=1.2 であり、熱間据込み加工において極めて容易に実現しう
るレベルである。
【0022】但し、ここで、筒状金属体を板巻き法によ
って製作する場合など、肉厚の薄いものの方が素材が入
手しやすく板巻き加工も容易であるという場合がある。
よって、20mmを越えるような厚肉のスリーブ7Bを
形成する場合や、形成すべきスリーブ7Bの肉厚/直径
比が大きい場合には、熱間据込み加工が容易に行える範
囲で増肉比をなるべく大きく取った方が有利となるケー
スも出てくる。増肉比1.5程度までの熱間据込み加工
は通常容易に行えるので、上記のようなケースにおいて
は、このような大き目の増肉比に設定するのが良い。こ
の場合も、前記gは高々5mm程度である。
【0023】筒状金属体7とロール本体1aの円筒面6
との間隙g及び筒状金属体に対する増肉比については、
上記大枠の設定方針に加えて、筒状金属体で形成するス
リーブ7Bのロール本体1aに対する締付け力を過不足
のない好適レベルとするために、gとηの量関係を実験
的に微調整することが望ましい。これは、上記締付け力
が主として筒状金属体の熱間据込み加工の際の1000
°C前後の高温からの冷却による、焼ばめよりもはるか
に大きい熱収縮によって生じることから、締付け力が過
大とならないようにgとηの関係を微調整するものであ
る。
【0024】本発明は上記したようにロール本体1aに
形成した円筒面6に、筒状金属体7を軸線方向に圧縮す
る熱間据込み加工を施すことによって嵌着させており、
従って、筒状金属体7から形成するスリーブ7B(図4
参照)とロール本体1aとの固定は、増肉並びに熱収縮
によるかしめ効果を利用している。しかしながら、スリ
ーブ7Bとロール本体1aとの固定は、このかしめ効果
のみの利用に限らず、ロール本体1aとスリーブ7Bと
の間に冶金的接合を生じさせ、その冶金的接合力を併用
してもよい。冶金的接合力を併用する場合には、かしめ
効果による締付力を小さくしうる。ここで使用可能な冶
金的接合の1例として、液相拡散接合を挙げることがで
きる。液相拡散接合を行う場合には、予めロール本体1
aの円筒面6に液相拡散接合用のインサート材料、例え
ばアモルファス合金の層を形成しておく。インサート材
料の層の形成は、インサート材料を溶射する方法、イン
サート材料の箔を貼り付ける方法等により行うことがで
きる。このようなインサート材料の層をロール本体1a
の円筒面6に形成した状態で、それに遊嵌した筒状金属
体7の熱間据込み加工を行うと、ロール本体1aに嵌着
した筒状金属体は赤熱状態であるので、液相拡散接合が
行われる。この際、必要ならロール本体1aを適当に加
熱するようにしてもよい。また、この工程のみでは液相
拡散接合が不十分な場合には、筒状金属体の熱間据込み
加工を終わった後、筒状金属体とロール本体との接合面
を液相拡散接合に適した温度に加熱、保持すればよい。
また、上記インサート材の代わりに、ろう材を適用して
上記と同様の操作を行うことにより、ロール本体と筒状
金属体の密着性を向上させることもできる。更には、ロ
ール本体の円筒面6を粗いブラスト加工や機械加工によ
って粗面化ないしは凹凸面化し、あるいはビッドやキー
溝を適宜方向に設けておくことにより剪断方向の拘束性
が増す。粗面ないしは凹凸面に冶金的接合を併用して上
記作用を増強してもよい。
【0025】熱間据込みを行う際の加熱温度は、筒状金
属体7が容易に塑性変形しうる温度とするものであり、
昇温に要するエネルギーや昇温時間、塑性変形抵抗等を
考慮して適宜設定すればよく、例えば、鋼材に対して
は、900〜1300°C程度に設定することが好まし
い。熱間据込みによる増肉を生じた後は、単に冷却して
固化させてもよいが、冷却時の冷却速度をコントロール
することで所望の熱処理、例えば、焼入れ、焼戻し、焼
ならし等を行うことができる。冷却速度のコントロール
は、冷却のために吹き付ける冷却媒体の種類、流量等に
よって行うことができ、例えば、急速な冷却を行うに
は、冷却媒体として水、油等の液体を使用し、ゆっくり
した冷却を行うには、冷却媒体として、気体或いはミス
トを用いることが好ましい。また、必要な熱処理の内容
によっては熱間据込みを、その熱処理に好都合な加熱温
度で行うことも有効である。このように、熱間据込み時
の冷却速度をコントロールすることで所望の熱処理を行
う構成とすると、別工程で熱処理を行う必要がなくな
り、工程を簡略化してコストダウンを図ることができ
る。なお、熱間据込み加工後に別途熱処理工程を設けて
も無論差支えなく、この場合も、熱間据込みの余熱を利
用して熱処理のための入熱あるいは加熱時間を低減でき
るというコストメリットが得られる。特に、筒状金属体
として、前記板巻き方によるものを用いた場合、接合部
に大なり少なり特性むらを内蔵しているが、熱間据込み
時の冷却速度コントロール等による熱処理で上記溶接部
の特性むらを解消できる利点が得られる。
【0026】次に、筒状金属体7に対して連続移動方法
による熱間据込み加工を行う具体例を説明する。図3
は、ロール本体1aの胴部2に形成した円筒面6に遊嵌
した筒状金属体7に熱間据込み加工を行う連続式の熱間
据込み装置(増肉加工装置)の1例を示す概略断面図で
ある。21は装置フレーム、22はロール本体1aの一
端を支持し、軸線方向の荷重を受ける固定装置、23は
ロール本体1aを支持する支持装置、24はロール本体
1aを支持する支持台、25は筒状金属体7を支持する
支持台である。支持台25は筒状金属体7を支持するた
めの支持ローラを備えており、筒状金属体7が軸線方向
に移動しても傷を付けないようにしている。これらの支
持台24、25は定位置に固定して設けても良いし、レ
ール等に保持させて移動可能とし、位置調整を容易に行
うことができるようにするとか、増肉加工時に増肉部位
の移動に応じて移動させるように構成してもよい。28
は筒状金属体7の後端を軸線方向に押して筒状金属体7
に軸線方向の圧縮力を作用させる加圧装置であり、筒状
金属体7の後端を保持する可動保持部材28aとその可
動保持部材28aを移動させる油圧シリンダ28bを備
えている。29は、ロール本体1aの軸部3に取り付け
られ、筒状金属体7をロール本体1aと同心状に案内す
るガイドである。31は、筒状金属体7の軸線方向の短
区間を環状に加熱する環状の加熱装置であり、ここでは
誘導加熱コイルが使用されている。この加熱装置31は
移動装置(図示せず)によって筒状金属体7に沿って矢
印X方向に所望の速度で移動する構成となっており、ま
た、その移動の際、冷却水等の冷却媒体32を加熱領域
の後側となる部分に吹き付ける冷却装置を備えている。
【0027】この熱間据込み装置では次のように熱間据
込み加工が行われる。すなわち、ロール本体1aの円筒
面6に筒状金属体7を遊嵌させた後、そのロール本体1
a及び筒状金属体7を図3に示すように装置に装着し、
加圧装置28で筒状金属体7に軸線方向の圧縮力を作用
させる。この状態で、加熱装置31によって筒状金属体
7の軸線方向の短区間を環状に加熱して、塑性変形容易
な赤熱状態の加熱部とし、その加熱部に圧縮力による増
肉を生じさせながら、その加熱装置31を筒状金属体7
に沿って矢印X方向に移動させ、同時に冷却媒体32を
加熱部の後端部分に吹き付けて増肉直後の部分を冷却、
固化する。これにより筒状金属体7が軸線方向に連続的
に増肉させられてゆき、内面側に増肉した部分はロール
本体1aの円筒面6に嵌着される。かくして、加熱装置
31を円筒面6の先端から後端まで移動させ、筒状金属
体7の増肉加工を行うことにより、円筒面6全長に、増
肉した筒状金属体7A〔図2(c)参照〕を密着嵌合さ
せることができる。
【0028】筒状金属体7に熱間据込み加工を施し、図
2(c)に示すように、ロール本体1aの円筒面6に増
肉後の筒状金属体7Aを嵌着した後、必要に応じ、増肉
した筒状金属体7Aの組織の整粒化等のための熱処理を
行う。この熱処理は、図3に示す熱間据込み装置に設け
ている加熱装置31で増肉後の筒状金属体を所望温度に
加熱し、次いで所望速度で冷却することで簡単に行うこ
とができる。
【0029】次に、図2(c)において、増肉後の筒状
金属体7Aの先端とそれに面するロール本体1aの部分
とを溶接接合し、次いで、その溶接部33及びその近傍
を局部的に熱処理する。その後、ロール本体1a全体を
炉でテンパー処理する。この際の処理条件は、従来のよ
うにロール本体1aの全体に肉盛溶接した場合に比べて
低目の温度、短時間でよく、例えば、420°C×6時
間程度でよい。
【0030】次に、ロール本体1aの円筒面6に嵌着し
た筒状金属体7Aの外周面をロール胴部に要求される所
定寸法に機械加工する。これにより、図4に示すよう
に、ロール本体1aに嵌着して胴部2の一部を構成する
スリーブ7Bが形成される。このスリーブ7Bはロール
本体1aに嵌着しているため、このままで使用しても良
いが、本実施形態ではスリーブ7Bのロール本体1aへ
の固定を一層確実なものとするため両者をキー37で連
結する。以下、キー37による連結構造を説明する。
【0031】ロール本体1aにスリーブ7Bを嵌着した
状態で、図5に示すように、スリーブ7B及びその下の
ロール本体1aにキー溝35、36を形成し、キー37
を嵌め込み、その上にキーカバー38を配置しキー溝3
5の内面に溶接する。このキー37は、ロール本体1a
に嵌着したスリーブ7Bが使用中にロール本体1aに対
して円周方向にずれることがないように安全策として設
けるものであり、キー溝35、36は、ロール円周方向
の寸法(幅)についてはキー37とほぼ等しく設定して
いるが、軸線方向の寸法(長さ)については、キー溝3
6はキー37とほぼ等しく設定し、キー溝35はキー3
7よりも長く設定してキー37のロール軸線方向の両側
でキー溝35との間に適当な隙間を生じさせている。こ
の構成により、スリーブ7Bにロール本体1aとの間の
大きい回転力が作用し、ロール本体1aに対する嵌着力
のみではその回転力に抗しきれない場合、或いはスリー
ブ7Bが搬送中のワーク等で加熱され、半径方向外方に
熱膨張して嵌着力が低下し、その嵌着力ではスリーブ7
Bに作用する回転力に抗しきれない場合であっても、キ
ー37がスリーブ7Bをロール本体1aに対して円周方
向に固定するので、スリーブ7Bがロール本体1aに対
して回転するということがない。一方、スリーブ7Bが
搬送中のワーク等によって加熱された場合などにおい
て、スリーブ7Bとその下のロール本体1aとの間に熱
膨張差が生じ、スリーブ7Bのキー37を配置した部分
がロール本体1aに対してロール軸線方向にずれようと
した時には、キー37とキー溝35との間にロール軸線
方向の隙間があるので、スリーブ7Bはロール本体1a
に対して軸線方向にずれることができ、キー37やスリ
ーブ7Bに過大な負荷が加わって変形や破損を生じると
いうことを防止できる。
【0032】キー37の上面を覆うキーカバー38の取
り付け位置は、スリーブ7Bの外周面に突き出さない位
置であれば任意であるが、本実施形態では、図5(d)
から良く分かるように、スリーブ7Bの外周面よりも内
方に引っ込んだ位置に配置し且つスリーブ7Bの外周面
からキーカバー38の表面までの距離dを、ロール胴部
外周面の許容摩耗量に等しく設定している。これによ
り、ロール胴部外周面(スリーブ7Bの外周面)が摩耗
してゆき、スリーブ7Bの外周面がキーカバー38の表
面に面一となった時に、許容値まで摩耗したことを知る
ことができる。すなわち、キーカバー38をロール胴部
外周面の減り代マークとして使用することができる。
【0033】以上のようにして、図1(a)に示す既存
のロール1に対する補修作業が終了し、図4に示す補修
ロール1Aが得られる。得られた補修ロール1Aでは、
スリーブ7Bがロール本体1aに強く嵌着しており、更
に、その先端をロール本体1aに溶接接合すると共に、
後端部分をキー37でロール本体1aに連結しているた
め、補修ロール1Aの使用中にスリーブ7Bがロール本
体1aに対して円周方向に滑るということがなく、長期
間に渡って安定して使用することができる。
【0034】なお、以上に説明した実施形態では、補修
ロール1Aに嵌着しているスリーブ7Bの外周面をその
ままロール胴部2の外周面として用いる場合を示した
が、本発明はこの構成に限らず、必要に応じそのスリー
ブ7Bの外周面の表層に硬化処理を施すとか、スリーブ
7Bの外周面或いはロール胴部2全体の外周面に耐摩耗
性、耐熱性等の被覆層を形成する等の変更を加えても良
い。
【0035】また、前記した実施形態では、既存のロー
ル1が胴部にスリーブを備えていないものとしている
が、本発明で補修の対象とするロール1は、図4に示す
補修ロール1Aのようにスリーブを備えたものでもよ
い。その場合には、ロール胴部の補修すべき軸線方向区
間のスリーブを除去してロール本体に円筒面を形成する
か、或いはスリーブの表層部分を切削除去して円筒面を
形成し、その円筒面に筒状金属体を遊嵌し、次いで熱間
据込み加工によって筒状金属体を増肉させると共に円筒
面に嵌着し、その後、その外周面を所望形状、寸法に機
械加工してスリーブとすることで、ロールの補修を行う
ことができる。
【0036】以上に、ロール胴部の軸線方向の一部区間
に対する補修を行う場合の実施形態を説明したが、本発
明はこれに限らずロール胴部全長に対する補修を行う場
合にも適用可能である。以下、その場合の実施形態を簡
単に説明する。なお、以下の実施形態において、図1〜
図5の実施形態と同一又は同様な部品には同一符号を付
している。図6(a)に示すロール1は、胴部2が全長
に亘って一定外径のものであり、外周面には使用によっ
て、大きい摩耗或いは損傷が生じているものとする。こ
のロール1を補修するため、まず、図6(b)に示すよ
うに、胴部2の外周面を対象として、その表層部分を切
削除去してほぼ一定直径の円筒面6を形成し、次いで、
図6(c)に示すように、その円筒面6に別途作製した
筒状金属体7を遊嵌する。この場合にも、筒状金属体7
の内径及びロール本体1aに形成した円筒面6の外径
は、円筒面6と筒状金属体7の間に適当な隙間があって
両者を遊嵌させることができるように定めておけばよ
い。また、ロール胴部2に形成する円筒面6は、その全
長に渡って一定外径のものとしてもよいが、図7(a)
に示すように、筒状金属体7を矢印方向に挿入するとし
た場合、挿入開始側とは反対側の先端部分に、他の部分
6bに比べて大径とした嵌合部6aを形成し、筒状金属
体7の先端をその嵌合部6aに対して小さなクリアラン
スで嵌め合わせる構成とすることが好ましい。このよう
に先端部分に大径の嵌合部6aを形成しておくと、図7
(b)に示すように、円筒面6に筒状金属体7を遊嵌し
た時、嵌合部6aが概ねぴったり嵌合することで筒状金
属体7を円筒面6に対して同心状に保つことができ、筒
状金属体7に熱間据込み加工を行った際に、円周方向に
均等に増肉が生じて、増肉後の筒状金属体7A〔図7
(c)参照〕がロール本体1aに対して同心状に形成さ
れる。嵌合部6aは単に円筒状のものでもよいし、図1
1に示すように、円周面に溝6aaを形成したものでも
よい。このように溝6aaを設けておくと、ロール本体
1aの上に嵌着させて形成したスリーブ7Bのロール本
体1aに対する円周方向の固定力を大きくできる利点が
得られる。
【0037】ロール本体1aに円筒面6を形成し、その
円筒面6に筒状金属体7を遊嵌した後、その筒状金属体
7に軸線方向に圧縮する熱間据込み加工を施して少なく
とも内面側に増肉させ、図7(c)に示すように、増肉
後の筒状金属体7Aを胴部2の円筒面6に嵌着させる。
この熱間据込み加工も、前記した第一の実施形態と同様
に行うことができ、連続移動方式で行う場合、図8に示
す連続式の熱間据込み装置(増肉加工装置)が使用され
る。この装置は、固定装置22が筒状金属体7の一端を
支持し、軸線方向の荷重を受ける構成となっている以外
は、図3に示す装置と同様な構成となっている。
【0038】図8に示す熱間据込み装置でも次のように
熱間据込み加工が行われる。すなわち、ロール本体1a
の円筒面6に筒状金属体7を遊嵌させた後、そのロール
本体1a及び筒状金属体7を図8に示すように装置に装
着し、加圧装置28で筒状金属体7に軸線方向の圧縮力
を作用させる。この状態で、加熱装置31によって筒状
金属体7の軸線方向の短区間を環状に加熱して、塑性変
形容易な赤熱状態の加熱部とし、その加熱部に圧縮力に
よる増肉を生じさせながら、その加熱装置31を筒状金
属体7に沿って矢印X方向に移動させ、同時に冷却媒体
32を加熱部の後端部分に吹き付けて増肉直後の部分を
冷却、固化する。これにより筒状金属体7が軸線方向に
連続的に増肉させられてゆき、内面側に増肉した部分は
ロール本体1aの円筒面6に嵌着される。かくして、加
熱装置31を円筒面6の先端から後端まで移動させ、筒
状金属体7の増肉加工を行うことにより、円筒面6全長
に、増肉した筒状金属体7A〔図7(c)参照〕を密着
嵌合させることができる。
【0039】その後、必要に応じ、増肉した筒状金属体
7Aの組織の整粒化等のための熱処理を行った後、筒状
金属体7Aの両端をロール本体1aの胴部端面に合わせ
るように切削し、その片端(図7に示すようにロール本
体1aに嵌合部6aを形成した場合には、その嵌合部6
aを形成した側の端部)をロール本体1aの胴部に溶接
接合し(図9の溶接部33参照)、次いで、その溶接部
33及びその近傍を局部的に熱処理する。その後、ロー
ル本体1a全体を炉でテンパー処理する。
【0040】次に、ロール本体1aの円筒面6に嵌着し
た筒状金属体7Aの外周面をロール胴部に要求される所
定寸法に機械加工する。これにより、図9に示すよう
に、ロール本体1aに嵌着して胴部2の一部を構成する
スリーブ7Bが形成される。その後、スリーブ7Bのロ
ール本体1aへの固定を一層確実なものとするため、ス
リーブ7Bのロール本体1aへの溶接接合端部とは反対
側の端部近傍を内部のロール本体1aにキー37で連結
する。このキー37による連結構造も、図5に示すキー
連結構造と同様な構成である。
【0041】以上のようにして、図6(a)に示す既存
のロール1に対する補修作業が終了し、図9に示す補修
ロール1Aが得られる。得られた補修ロール1Aでは、
スリーブ7Bがロール本体1aに強く嵌着しており、更
に、そのスリーブ7Bをロール本体1aに対して、片端
での溶接と他端側のキー37とで連結しているため、補
修ロール1Aの使用中にスリーブ7Bがロール本体1a
に対して円周方向にスリップするということがなく、長
期間に渡って安定して使用することができる。
【0042】なお、上記実施形態では、図9に示すよう
に、スリーブ7Bの片端をロール本体1aに溶接部33
によって接合しているが、スリーブ7Bの嵌着力及びキ
ー37による連結のみによってスリーブ7Bをロール本
体1aに対して必要な強度で固着できる場合には、溶接
部33は省略してもよい。また、溶接部33に代えてキ
ーによってスリーブ7Bをロール本体1aに固定しても
よい。この場合、スリーブ7Bをロール本体1aに連結
するキー構造は、スリーブ7Bをロール本体1aに対し
て円周方向及び軸線方向の両方向に固定するものとする
ことが好ましい。
【0043】また、上記実施形態では、図6に示すよう
に、ロール本体1aの胴部全長に機械加工を施して円筒
面6を形成し、その外周に筒状金属体7を遊嵌し、その
後熱間据込み加工を施しているが、この構造に限らず、
図10(a)に示すように、ロール本体1aの胴部の一
端をストッパー2eとして残し、その他の領域に、スト
ッパー2eに隣接した嵌合部6aを有する円筒面6を形
成し、図10(b)に示すようにその円筒面6に筒状金
属体7を遊嵌し且つ先端をストッパー2eの側面に突き
当て、この状態で筒状金属体7に熱間据込み加工を施し
て増肉後の筒状金属体をロール本体1aに嵌着させ、そ
の後ロール本体側のストッパー2eと筒状金属体とを溶
接部50にて溶接接合し、その後、筒状金属体の外周面
を所定外径に機械加工して被覆スリーブ7Bとするとい
う方法を採ってもよい。この構成とすると、図6〜図9
で説明した実施形態で行っていた増肉後の筒状金属体の
先端をロール本体の胴部端面に合わせるように切り落と
すという機械加工が不要となり、且つ溶接部位が円周面
となるので溶接が容易である等の利点が得られる。な
お、図10(b)に示す溶接部50を形成するに当たっ
ては、溶接位置に開先加工を施す必要がある。この開先
加工は、円筒面6に筒状金属体7を遊嵌し、熱間据込み
加工によって嵌着した後、形成してもよいが、図10
(a)に示すように、ロール本体1aのストッパー2e
側面及び筒状金属体7の先端面にあらかじめ開先加工を
施しておく方が、機械加工を工程的に集約して実施で
き、好ましい。
【0044】また、図6〜図11に示す実施形態におい
ても、スリーブ7Bの外周面をそのままロール胴部の外
周面として用いてもよいし、必要に応じそのスリーブ7
Bの外周面の表層に硬化処理を施すとか、耐摩耗性、耐
熱性等の被覆層を形成する等の変更を加えても良い。
【0045】
【発明の効果】以上に説明したように、本願第一の発明
は、既存ロールの胴部の、その片側端部を含む補修すべ
き軸線方向区間の外周面を対象として、その表層部分を
除去してほぼ一定直径の円筒面を形成し、その円筒面に
筒状金属体を遊嵌し、その筒状金属体に軸線方向に圧縮
する熱間据込み加工を施して少なくとも内面側に増肉さ
せてその円筒面に嵌着させ、嵌着させた筒状金属体の外
周面を所望形状に機械加工して被覆スリーブとするとい
う方法を採用したことにより、筒状金属体を嵌着する前
にロール胴部に加える機械加工は、主として補修すべき
軸線方向区間のみでよく、このため、既存ロールに対す
る切削等の機械加工の工数を削減でき、更に、スリーブ
をロール胴部に取り付ける作業は、ロール胴部外周面に
形成した円筒面に筒状金属体を遊嵌し、その筒状金属体
に軸線方向に圧縮する熱間据込み加工を施すという作業
であるので、通常行われている焼ばめに比べて、はるか
に難度の低い作業で容易に実施できると共に焼ばめより
も強い嵌着強度を得ることができ、しかも、ロール本体
が受ける熱影響は、ロール胴部外周面全体に肉盛溶接を
行う場合に比べるとはるかに小さいので、後工程での熱
処理を簡単に行うことができ、既存ロールの補修を低コ
ストで行うことができるという効果を有している。
【0046】また、本願第二の発明は、既存ロールの胴
部の外周面に被覆スリーブを装着した後、その被覆スリ
ーブとその下のロール本体にキー溝を形成してそのキー
溝に、前記被覆スリーブとロール本体とを回転方向には
拘束するが軸線方向には相対的移動を許容する寸法関係
のキーを装着して両者を固定したことにより、補修後の
ロールの使用中に被覆スリーブがロール本体に対して円
周方向にスリップするということがなく、また、被覆ス
リーブとその下のロール本体とに軸線方向の熱膨張差が
生じた場合には、前記キーが被覆スリーブのロール本体
に対する軸線方向の相対的移動を許容するので、キー或
いは被覆スリーブに過大な負荷が加わって変形や破損を
生じるということがない。かくして、本発明の補修方法
は、従来に比べて低コストでロール補修を行うことがで
き、また得られた補修ロールは、被覆スリーブがロール
本体に強固に固定されているので過酷な使用条件下でも
円周方向にスリップするということがなく、長期間安定
して使用することができるという効果を有している。
【0047】ここで、補修して得た補修ロールにおい
て、前記被覆スリーブに形成したキー溝内の、被覆スリ
ーブ外周面よりも引っ込んだ位置にキーカバーを取り付
けると共に、被覆スリーブ外周面から前記キーカバー外
面までの距離をロール胴部外周面の許容摩耗量に等しく
設定しておくと、キーカバーをロール胴部外周面の減り
代マークとして使用することができ、ロール胴部外周面
が許容最大値まで摩耗したことを容易に判断できるとい
う効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は補修すべき既存ロールの1例を示す概
略側面図 (b)はその既存ロールの補修すべき軸線方向区間を切
削加工して円筒面を形成した状板を示す概略側面図 (c)はその既存ロールの円筒面に筒状金属体を遊嵌し
た状態を示す概略断面図
【図2】(a)は補修すべき既存ロールに形成した円筒
部の先端部分及びそれに遊嵌する筒状金属体の先端部分
を示す概略断面図 (b)は(a)と同じ部分を筒状金属体を遊嵌した状態
で示す概略断面図 (c)は(b)と同じ部分を筒状金属体に熱間据込み加
工を施した後の状態で示す概略断面図
【図3】筒状金属体の熱間据込み加工に用いる熱間据込
み装置(増肉加工装置)の1例を示す概略断面図
【図4】既存ロールを補修して得た補修ロールの概略側
面図
【図5】図4に示す補修ロールのキー取り付け部分を示
すもので、(a)は概略側面図、(b)は概略断面図、
(c)は概略平面図、(d)は主要部を拡大して示す概
略断面図
【図6】(a)は補修すべき既存ロールの他の例を示す
概略側面図 (b)はその既存ロールの補修すべき領域を切削加工し
て円筒面を形成した状態を示す概略側面図 (c)はその既存ロールの円筒面に筒状金属体を遊嵌し
た状態を示す概略断面図
【図7】(a)は補修すべき既存ロールに形成した円筒
部の先端部分及びそれに遊嵌する筒状金属体の先端部分
を示す概略断面図 (b)は(a)と同じ部分を筒状金属体を遊嵌した状態
で示す概略断面図 (c)は(b)と同じ部分を筒状金属体に熱間据込み加
工を施した後の状態で示す概略断面図
【図8】筒状金属体の熱間据込み加工に用いる熱間据込
み装置(増肉加工装置)の1例を示す概略断面図
【図9】既存ロールを補修して得た補修ロールの概略側
面図
【図10】図6〜図9に示す実施形態とは異なる実施形
態を示すもので、(a)は補修すべき既存ロールに形成
した円筒部の先端部分及びそれに遊嵌する筒状金属体の
先端部分を示す概略断面図、(b)は(a)と同じ部分
を、補修後の状態で示す概略断面図
【図11】ロール本体に形成する嵌合部6aの変形例を
示す概略断面図
【符号の説明】
1 既存のロール 1A 補修ロール 1a ロール本体 2 胴部 3、4 軸部 6 円筒面 6a 嵌合部 7 筒状金属体 7A 増肉後の筒状金属体 7B スリーブ 8 段部 21 装置フレーム 22 固定装置 24、25 支持台 28 加圧装置 29 ガイド 31 加熱装置 32 冷却媒体 35、36 キー溝 37 キー 38 キーカバー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 正継 神奈川県川崎市川崎区殿町2丁目17番8号 第一高周波工業株式会社内 Fターム(参考) 4E081 YE01 4E087 AA10 CA31 CB01 DB04 DB24 HA18

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 既存ロールの胴部の、その片側端部を含
    む補修すべき軸線方向区間の外周面を対象として、その
    表層部分を除去してほぼ一定直径の円筒面を形成し、そ
    の円筒面に筒状金属体を遊嵌し、その筒状金属体に軸線
    方向に圧縮する熱間据込み加工を施して少なくとも内面
    側に増肉させて前記円筒面に嵌着させ、嵌着させた筒状
    金属体の外周面を所望形状に機械加工して被覆スリーブ
    とすることを特徴とするロールの補修方法。
  2. 【請求項2】 前記熱間据込み加工を、前記筒状金属体
    の軸線方向に圧縮力を加えた状態で軸線方向の短区間を
    環状に赤熱させて増肉させ増肉部を直後に冷却する操作
    を、前記円筒面への嵌着に足る区間長さに亘り軸線方向
    移動方式で適用して行うことを特徴とする請求項1記載
    のロールの補修方法。
  3. 【請求項3】 既存ロールの胴部外周面に形成した前記
    円筒面の、前記片側端部とは反対側に位置する先端部分
    を、他の部分に比べて大径とし、前記筒状金属体とのク
    リアランスがこの部分で小さくなるように構成したこと
    を特徴とする請求項1又は2記載のロールの補修方法。
  4. 【請求項4】 既存ロールの胴部外周面を対象として、
    その表層部分を除去してほぼ一定直径の円筒面を形成
    し、その円筒面に筒状金属体を遊嵌し、その筒状金属体
    に軸線方向に圧縮する熱間据込み加工を施して少なくと
    も内面側に増肉させて前記円筒面に嵌着させ、嵌着させ
    た筒状金属体の外周面を所望形状に機械加工して被覆ス
    リーブとし、更に、該被覆スリーブとその下のロール本
    体にキー溝を形成してそのキー溝に、前記被覆スリーブ
    とロール本体とを回転方向には拘束するが軸線方向には
    相対的移動を許容する寸法関係のキーを装着することを
    特徴とするロールの補修方法。
  5. 【請求項5】 既存ロールの胴部を、請求項1から4の
    いずれか1項記載の方法によって補修してなる補修ロー
    ル。
  6. 【請求項6】 前記既存ロールが胴部の片半側の外径が
    大きいロールであり、その胴部の大径側を補修している
    ことを特徴とする請求項5記載の補修ロール。
  7. 【請求項7】 既存ロールの胴部を、請求項4に記載の
    方法によって補修してなる補修ロールであって、前記被
    覆スリーブに形成したキー溝内の、被覆スリーブ外周面
    よりも引っ込んだ位置にキーカバーを取り付けると共
    に、被覆スリーブ外周面から前記キーカバー外面までの
    距離をロール胴部外周面の許容摩耗量に等しく設定した
    ことを特徴とする補修ロール。
  8. 【請求項8】 前記被覆スリーブの片端をロール本体に
    対して溶接接合し、他端側の近傍を前記したキー及びキ
    ー溝でロール本体に連結したことを特徴とする請求項7
    記載の補修ロール。
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