JP3797265B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像データから作成されたプリントデータによって駆動制御されるプリントヘッドを用いてその表面層にインクがプリントドットとして付与された被記録媒体を加熱装置によって加熱することにより表面層に付与されたインクを被記録媒体の定着層に昇華定着させる画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクのような印刷用液体を被記録媒体を付与して印刷物を得る印刷技術として、例えば、熱転写シートにインクジェットプリンタ等でまず一次画像を形成し、次いで画像が形成された熱転写シートを被記録シートに重ね合わせて加圧・加熱を施すことにより、熱転写シートに形成されていた画像(インク)を熱転写シートのインク定着層に熱昇華転写して熱転写シートに二次画像を形成して、最終的な印刷物を得る熱転写技術が、特開平10−16188号公報などからよく知られている。
また、特開平10−230589号公報には、被記録シートのインク定着層にあらかじめラミネート材層を設けておき、このラミネート材層上からインクジェットプリンタ等で画像形成を行い、その後加熱ローラを通じて加圧・加熱することによりラミネート材層を透明化するとともにインク色素を定着層に定着させて印刷物を得る熱定着印刷技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような画像形成装置では、一般的に副走査方向に搬送される被記録媒体に昇華性インクを吐出することによってその上にインク滴(ここではこれを昇華前プリントドットと呼ぶ)からなる画像を形成した後、加熱定着工程においてさらにそのインク滴を加熱によって昇華させて被記録媒体の定着層に昇華インク色素(ここではこれを昇華後プリントドットと呼ぶ)を定着させることで、鮮やかに発色した昇華後プリントドットからなる最終的な画像を得る。
【0004】
このため加熱昇華定着工程におけるインクの定着層への昇華定着特性は最終製品としての印刷物の品質に大きな影響を与えることから非常に重要である。この昇華定着特性は、使用するインクや被記録媒体の種類及び加熱昇華方法の違いなどに依存することになるが、本出願発明者の知見による典型的な昇華定着特性によれば、加熱昇華定着工程における加熱装置による被記録媒体に対する加熱が、加熱時間に関して又は加熱温度に関してあるいはその両方に関して、不足している場合最終画像(昇華後プリントドット)においてその濃度が低くなる傾向があり、過剰である場合にじみが発生してシャープネスが低くなる傾向がある。これは、インク滴の不十分な昇華をもたらす加熱不足が濃度不足の昇華後プリントドットを作り出し、インク滴の十分すぎる昇華をもたらす加熱過剰がインク色素の大きな拡散のためぼやけた昇華後プリントドットを作り出すためと思われる。
【0005】
上記実状に鑑み、本発明の課題は、冒頭部で述べたタイプの画像形成装置を出発技術として、その加熱昇華定着処理が最適に行われるように被記録媒体に対する加熱挙動を制御できる画像形成装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、画像データから作成されたプリントデータによって駆動制御されるプリントヘッドを用いてその表面層にインクがプリントドットとして付与された被記録媒体を加熱装置によって加熱することにより表面層に付与されたインクを被記録媒体の定着層に昇華定着させる画像形成装置において、本発明では、前記被記録媒体の表面層に形成されたインクによる昇華前プリントドットが前記加熱装置による加熱を通じて昇華後プリントドットとして前記被記録媒体の定着層に定着される度合いを示す昇華度を評価する昇華度評価手段と、前記加熱装置における前記被記録媒体に対する加熱温度と加熱時間の組み合わせで決定される加熱挙動を制御する加熱制御部が備えられ、前記昇華度評価手段は前記被記録媒体に形成されたプリントドットを撮像する撮像素子と、この撮像素子によって取得されたプリントドットの時系列的な濃度値の変動を評価することで昇華度を算定する昇華度算定部とを含み、この昇華度評価手段によって得られた昇華度に基づいて前記加熱制御部は前記加熱挙動を制御する。
【0007】
この構成では、被記録媒体の表面層に形成された昇華前プリントドットが加熱昇華によって昇華後プリントドットとして被記録媒体の定着層に定着される度合いを示す昇華度を評価する昇華度評価手段が設けられており、この昇華度評価手段によって取得された実際の昇華度に基づいて加熱昇華定着処理を受ける被記録媒体に対する加熱挙動が制御されるので、最適な加熱昇華定着処理が行われる。
【0008】
さらに、本発明では、この昇華度評価手段が被記録媒体に形成されたプリントドットを撮像する撮像素子と、この撮像素子によって取得されたプリントドットの時系列的な濃度値の変動を評価することで昇華度を算定する昇華度算定部とからなる。本発明による画像形成装置で形成される画像は最小構成要素としてのプリントドットの集合から成り立っているものであるので、このプリントドットの経時的な濃度変動をチェックすることにより最適な加熱昇華定着過程を見極めることができる。
【0009】
前述したように、本発明による画像形成プロセスでは、被記録媒体の表面層に形成された昇華前プリントドットが加熱昇華によって昇華後プリントドットとして被記録媒体の定着層に定着されるので、濃度に直接関係するインク色素は加熱昇華時において昇華前プリントドットから昇華後プリントドットに移行すると考えてよい。つまり加熱昇華定着処理が進むと昇華前プリントドットの濃度が低下するとともに昇華後プリントドットの濃度が上昇する。このことから、昇華前プリントドットの濃度低下に基づいて昇華度を決定してもよいし、昇華後プリントドットの濃度上昇に基づいて昇華度を決定してもよい。昇華前プリントドットは被記録媒体の表面層に形成され、昇華後プリントドットが表面層の裏側に位置する定着層に形成されることを考慮するならば、被記録媒体の表側から昇華度を検知する方法を採用する場合には昇華前プリントドットを測定対象としてその昇華度算定を行うこと、あるいは、被記録媒体の裏側から昇華度を検知する方法を採用する場合には昇華後プリントドットを測定対象としてその昇華度算定を行うことが好都合である。
【0010】
昇華度評価手段による昇華度算定の対象となるプリントドット(昇華前プリントドット又は昇華後プリントドット)として、実際にプリントしようとしている画像を構成するプリントドット、つまりとするプリントソースとしての画像データに含まれている特定の画素に対応するプリントドットを利用することがまず考えられる。これは、特に、昇華度評価手段によって得られた昇華度に基づいて、最適な昇華度が達成され時点で加熱を停止するといった加熱昇華定着処理のリアルタイム制御において好都合である。実際にプリントしている画像の構成要素としてのプリントドットを測定対象としていることから、正確な結果が期待できる。
【0011】
これに代えて、昇華度評価手段による昇華度算定の対象となるプリントドットとして、実際にプリントしようとしている画像を構成するプリントドットではなく、予め用意されているテストパターンをプリントしてこのテストパターンに含まれているプリントドットを利用することも可能である。最適な昇華度を作り出す加熱挙動を現出させる加熱温度と加熱時間の組み合わせは、必ずしも毎回のプリントで変動するわけではなく、再調整が必要となるような変動はプリントサイズの大幅な変更や環境温度の変化等に基づくものである。このため、昇華度評価による加熱挙動の制御はリアルタイムではなく、適時にオフラインで行うことも可能である。このような場合には、テストパターンを利用した濃度値評価により加熱装置の加熱挙動の制御を再調整する方法が好都合である。具体的には、所定の加熱挙動で加熱定着されたテストパターンを有する被記録媒体から昇華度評価手段によって得られた昇華度に基づいて加熱制御部によって制御される加熱装置の前記所定の加熱挙動、例えば加熱時間や加熱温度を調整するのである。
【0012】
昇華度評価手段によって評価された昇華度に基づいてリアルタイムで加熱挙動を制御する方式を採用した場合での本発明の好適な実施形態の1つとして、被記録媒体を適切な昇華度が得られるまで加熱装置に滞在させるような構成が提案される。具体的には、被記録媒体の加熱装置からの搬出をその搬送速度の調整によって制御する構成や、適切な昇華度が得られるまで被記録媒体を加熱装置内に停止させておく構成が好ましい。
【0013】
搬送機構の制限から搬送速度を調整することが難しい場合や昇華度評価手段に含まれる撮像素子を加熱装置の外に設置しなければならない場合では、被記録媒体を適切な昇華度が得られるまで複数回加熱装置に投入させるように構成することも提案される。複数回の加熱装置への投入に関しては、加熱装置から出た被記録媒体を逆送させて下流側から再び加熱装置に投入してもよいし、加熱装置を迂回する搬送ラインを設けて加熱装置から出た被記録媒体を上流側から再び加熱装置に投入してもよい。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるだろう。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明による画像形成装置で扱われる被記録媒体1の一例を図1を用いて説明する。この被記録媒体1はPET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルムシートからなる基材10の表面にウレタン樹脂等でインクつまりインク色素のための定着層11を形成し、さらにその上にインクを浸透させることができる浸透層としての表面層12を形成している。基材10の表面がインク色素を定着することができる性質を持っている場合、定着層11を省略することができる。この被記録媒体1の表面層12にインクジェットプリンタ等でインク滴を付与することで昇華前プリントドットによるプリント画像が形成された後、適正な温度に加熱されると表面層12に付与されていたインク滴(昇華前プリントドット)は昇華を始め、そのインク滴が表面層12を浸透して定着層11にインク色素が昇華後プリントドットとして昇華定着される。従って、表面層12を引き剥がすことにより、定着層11に昇華後プリントドットによって形成されたプリント画像をもつ非常に光沢感のある鮮やかな画像記録済みシートが最終印刷物100として得られる。つまり、この加熱昇華過程においては、昇華前プリントドットとして表面層12に付与されたインク色素が表面層12を浸透して定着層11に達し、そこで昇華後プリントドットとしてプリント画像を形成する。なお、この被記録媒体1では最終的に表面層12を定着層11又は基材10から引き剥がす必要があるのでそれらの間に易剥離剤を与えておくと好都合である。
【0015】
このような被記録媒体1を用いて最終印刷物100を作製する画像形成装置の第1の実施形態を図2と図3を用いて説明する。この画像形成装置は、図2に示すようにプリントステーションPSとオペレートステーションOSとから構成されている。
【0016】
プリントステーションPSは、インクジェットプリントユニットIUとこのインクジェットプリントユニットIUの排紙側に装着された加熱定着ユニットHUとこれらをカバーするハウジングによって構成されている。
【0017】
図3から明らかなように、プリントステーションPSでは、ここでは図示されていないロールシートカートリッジに格納されているロール状に巻かれた被記録媒体1を巻き戻しながらプリント面であるその表面層12がプリントヘッドとしてのインクジェットヘッド2のインク吐出口側に来るように被記録媒体1がシート搬送機構6によって搬送される。インクジェットヘッド2は被記録媒体1の搬送方向に対して横断方向につまり主走査方向にヘッド送り機構3によって往復移動可能に支持されており、被記録媒体1の表面層12に吐出口からインクを吐出しながらのインクジェットヘッド2の主走査方向の移動毎に被記録媒体1が副走査方向に搬送されていくことによって順次プリント画像が形成されていく。カラープリント画像を形成するために異なる主要色を吐出可能な複数の吐出口モジュールがインクジェットヘッド2に用意されている。例えば、写真画質のカラープリント画像が要求される場合には、通常、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどのインクに加え同色の濃淡インクが用いられる。インクジェットヘッド2としては汎用的なインクジェットプリンタに搭載されているものが流用されるので、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0018】
インクジェットヘッド2から吐出されたインク滴2aによって表面層12にプリント画像を形成された被記録媒体1はインクジェットプリントユニットIUを通り抜けて、インクの定着層11への加熱定着が行われる加熱定着領域を作り出している加熱定着ユニットHUに送られる。この加熱定着ユニットHUには加熱装置4が備えられている。
【0019】
加熱定着領域を通過した被記録媒体1では、そのプリント画像を形成しているインク(色素)が定着層11に定着しているので、表面層12を剥離することによって、きれいに発色した画像を有する最終印刷物100が得られる。なお、被記録媒体1の一連の搬送はここではローラ方式で示されている搬送機構6によって行われているが、ベルト方式など他の搬送方式を採用してもよい。
【0020】
もともと長尺シートである被記録媒体1は、そこに形成されるプリント画像のサイズに合わせてカットする必要があるので、この実施形態では、インクジェットヘッド2に取り付けられたシートカッター5を備えている。このシートカッター5はその刃51がインクジェットヘッド2に取り付けられていることからヘッド送り機構3の駆動により被記録媒体1をカットすることができる。
【0021】
前記加熱装置4は断熱材製の壁体40で形成された加熱空間40Aの内部に、この加熱空間40A内の空気温度の上昇を図る電気ヒータ41と加熱空間40Aの内の温度を計測する温度センサ42と電気ヒータ41によって加熱された加熱空気を送るファン43と、ファン43を駆動するファンモータ44と、電気ヒータ41からの熱が被記録媒体に直接照射される現象を阻止する遮蔽板45を備えている。この加熱空間40Aの内部に送り込まれてきた被記録媒体1を所定温度に加熱された空気に接触させることで、被記録媒体1に対して非接触加熱を行い、この加熱によるインクの昇華定着を実現している。
【0022】
さらに、この加熱空間40Aの内部には、被記録媒体1におけるインクの昇華度を評価する昇華度評価手段9の撮像素子としてのCCDカメラ90が設けられている。このCCDカメラ90は加熱空間40A内に定置された被記録媒体1の表面層12にその焦点を合わせており、表面層12に形成されたプリントドット(インク滴)が加熱昇華過程において定着層11に昇華移行することでその濃度が低下する様子を撮影し、その撮影画像データに含まれる濃度値が昇華度評価のために利用される。
【0023】
なお、このCCDカメラ90の配置形態の変形例として、被記録媒体1の基材10が透明又は半透明な場合、CCDカメラ90を被記録媒体1の基材10側に配置し、その焦点を定着層11に合わせ、加熱昇華過程の進行とともに定着層11に形成されていく昇華後プリントドットの濃度が増加する様子を撮影し、その撮影画像データに含まれる濃度値を昇華度算定のために利用することも可能である。
【0024】
いずれにしても、加熱昇華過程で算定される昇華度が所定のレベルに達すると、被記録媒体1は加熱空間40Aから搬出され、被記録媒体1に対する加熱昇華定着処理が完了する。もちろん、加熱昇華過程で随時算定された昇華度が予想値より低い場合加熱空間40Aの温度を上昇させるような制御を行うことも好都合である。
【0025】
なお一般的な目安として、この実施の形態で使用される昇華性インクは、被記録媒体1の種類や環境温度によって異なるが、170℃〜200℃程度でインクの昇華を無理なく行えるものであり、200℃では1分程度の加熱、170℃では5分程度の加熱で適正な定着層12へのインク色素の昇華定着が実現する。
【0026】
インクジェットヘッド2、ヘッド送り機構3、加熱装置4、シートカッター5、そして搬送機構6などは、コントローラ7によって統括制御されている。搬送機構6によって搬送される被記録媒体1の位置を把握するため搬送機構6によって形成される搬送ラインの所定位置にシート検出センサ60が設置されており、その検出信号もコントローラ7に送られる。さらに、ロールシートカートリッジもしくは被記録媒体1を巻き取り支持している軸体に付与されているIDコードを検出する被記録媒体種別検出センサ61もその検出信号をコントローラ7に送るべく設置されており、コントローラ7はこの検出信号から装填されている被記録媒体1の仕様を認識することができる。
【0027】
この画像形成装置のコントローラ7は、オペレートステーションOS側の第1コントローラ7AとプリントステーションPS側の第2コントローラ7Bとから構成され、お互いに通信ケーブルによってデータ交換可能に接続されており、1つのコントローラのごとく機能することができる。
【0028】
図2に示されているように、オペレートステーションOSには、第1コントローラ7Aとしても機能する汎用のコンピュータ80、モニター81、キーボード82、マウス83、及び現像済みの銀塩式のフィルムFの撮影画像をカラー画像データに光電変換するフィルムスキャナ85、さらにはデータ保持メディア(CDやCD−R、あるいは、MO、さらにコンパクトフラッシュやスマートメディア等の半導体でなる媒体だけではなくデータ通信回線からなる通信メディアも含む)からカラー画像データを取り出す画像取得ユニット84(ここではコンピュータ80に内蔵されている)が備えられている。この画像形成装置では、フィルムスキャナー85や画像取得ユニット84を通じて第1コントローラ7Aに転送されたカラー画像データは、種々のデータ処理が行われた後、プリントデータとして第2コントローラ7Bに送られ、プリントステーションPSにおいて被記録媒体1にプリント画像が形成され、その被記録媒体1は昇華度評価手段9によって得られた昇華度に基づいて加熱装置4内で加熱昇華定着処理を受ける。
【0029】
コントローラ7は、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェース回路などからなるマイクロコンピュータシステムを中核部材とした第1コントローラ7Aと第2コントローラ7Bから構成されており、図6に示されるように、第1コントローラ7Aでは、I/Oインタフェース回路を介して、画像データを送り込む画像取得ユニット84、フィルムスキャナ85、などの周辺機器が接続されており、第2コントローラ7Bでは、I/Oインタフェース回路を介して、インクジェットヘッド2、ヘッド送り機構3、加熱装置4、昇華度評価手段9を構成するCCDカメラ90、搬送機構6などのプリントステーションPSに組み込まれている周辺機器が接続されている。第1コントローラ7Aと第2コントローラ7Bはそれぞれの通信モジュールを介してデータ伝送が可能であり、例えば、第1コントローラ7Aにおいて画像処理及び補正処理が施された画像データが最終的プリントデータに変換され、通信モジュール74a、74bを介して第2コントローラ7Bに伝送された後は被記録媒体1への昇華性インクの付与などのために利用される。
【0030】
コントローラ7による各機能はハードウエア又はソフトウエアあるいはその両方により作り出されるが、ここでは特に本発明に関連する機能要素だけをとり挙げるならば、オペレータによるキーボード82やマウス83の操作を通じて指定されたプリント画像サイズを設定するプリントサイズ設定部70、画像データ入力部9から転送された画像データに対してプリントサイズ設定部70で設定されたプリント画像サイズに基づき解像度変更やトリミングなどを施すとともに画像補正設定部72aとの相互作用により色補正やヘッドシェーディング補正などの画像補正処理を施す画像処理部72、画像処理された画像データから誤差拡散等の2値化の手法を用いてインクジェットヘッド2のためのプリントデータを作り出すプリントデータ生成部73、転送されてきたプリントデータに基づいてインクジェットヘッド2を駆動して吐出口からインク滴を放出するプリント制御部75、インクジェットヘッド2の駆動と同時にインクジェットヘッド2を主走査方向に移動させるヘッド送り制御部76、インクジェットヘッド2の主走査方向の1回の移動毎に被記録媒体1を間欠送りするとともに被記録媒体1の加熱装置4に対する搬入搬出を行う搬送制御部77、加熱装置4の電気ヒータ41やファンモータ44を駆動制御する加熱制御部78、CCDカメラ90から転送されてきた撮影画像データから加熱昇華中のプリントドットの濃度を読み取るとともにその濃度値から昇華度を算定する昇華度算定部91、被記録媒体種別検出センサ61によって読み取られたIDコードから装填されている被記録媒体1の種別情報を取得する被記録媒体種別決定部79などが代表的なものである。
なお、加熱制御部78と搬送制御部77は昇華度算定部91と連携しており、加熱制御部78は昇華度算定部91によって加熱昇華定着処理途中で算定された昇華度が所定レベルから外れている場合目標加熱温度を調整することなるし、搬送制御部77は昇華度算定部91によって算定された昇華度が適正レベルに達した場合被記録媒体1を加熱装置4から搬出させる。
【0031】
次に、フィルムスキャナ85を用いてカラーネガフィルムFから読み取られた撮影画像のカラー画像データを用いて被記録媒体1に撮影画像が形成される様子を図5の模式流れ図を用いて説明する。
【0032】
フィルムスキャナ85でカラーネガフィルムFの読取が行われると、フィルムスキャナ85のCCDの出力信号が増幅及びAD変換され12ビットのRGBカラー画像データとして画像データ入力部71に転送される(#01)。画像データ入力部71でカラー画像データはガンマ補正等のスキャナデータとしての典型的な補正を施された後、画像処理部72に送られる(#02)。これと前後して、オペレータがプリント注文伝票をみながらキーボード82やマウス83を操作し、プリント画像サイズを指定入力し、そのプリント画像サイズをプリントサイズ設定部70に設定する(#03)。
【0033】
画像処理部72は、まず送られてきた12ビットのカラー画像データに対して8ビットデータに変換して後、プリントサイズ設定部70から受け取った(#04)プリント画像サイズに基づいて仕上がりプリントサイズに対応した解像度変換や必要に応じてのトリミングを行う。さらに、デジタル写真プリントにおいて通常行われている色補正などの処理が、自動的に、あるいはオペレータによるキーボード82やマウス83の操作を通じて(#05)マニュアル的に行われる。これらの補正処理時には、各補正処理に見合った補正テーブルやフィルタが画像補正設定部72aによって画像処理部72にロードされる(#06)。
【0034】
画像処理部72においては、全ての画像処理を受けたカラー画像データはプリントデータ生成部73に送られる(#7)。なお、RGBカラー画像データは画像処理部72において他の画像処理の前後の適当な段階でCMYKカラー画像データに変換されてるので、プリントデータ生成部73へ送られるカラー画像データはCMYKカラー画像データである。
【0035】
プリントデータ生成部73は受け取った8ビットのCMYKカラー画像データからインクジェットヘッド2による面積階調による階調形成を行うための2値化処理を行って2値CMYKプリントデータを作りだし、プリント制御部75に転送する(#08)。
【0036】
プリント制御部75は転送されてきた2値CMYKプリントデータからインクジェットヘッド2のための駆動パルス信号を生成して(#09)、それによりインクジェットヘッド2の駆動素子を制御して被記録媒体1にインク滴を吹き付ける。同時にヘッド送り制御部75がヘッド送り機構3を駆動制御するとともに、搬送制御機構77が搬送機構6を駆動制御することで、被記録媒体1にプリントドットによる撮影画像が形成されていく(#10)。
【0037】
被記録媒体1に対する昇華加熱制御については図6の模式図をも参照して説明する。CCDカメラ90から転送されてきた撮影画像データ(#21)から、プリントサイズ設定部70からのプリントサイズ情報(#22)やシート検出センサ60からの被記録媒体1の位置情報(#23)を考慮して決定された注目すべき画像領域に対応する画素の濃度値を求める。図6で模式的に図示された各格子はプリントドットと1対1で対応させている画素を表しており、各格子内の数字は昇華度算出の対象となっているプリントドットの濃度値である。この濃度値の測定は、加熱装置1による昇華加熱の開始時より所定測定間隔で行われる。この実施の形態では、表面層12に形成されたプリントドット(インク滴)が加熱昇華過程において定着層11に昇華移行することでその濃度が低下する度合いから昇華度を算定する方法を採用しているので、昇華加熱の開始時では、得られたプリントドットの濃度値は最高値(8ビット濃度データでは255)に近い値となっている(加熱経過時間:t=t1)。加熱時間の経過とともに、表面層12に形成されたプリントドット(昇華前プリントドット)の昇華が進行するので、昇華度評価手段9を構成する昇華度算定部91によって算定されるプリントドットの濃度値は時間経過とともに低下する。低下する濃度値の値が所定レベルに達すると(例えば濃度値が100以下)、表面層12のインクが十分に昇華して定着層11に移行したと見なされ、昇華加熱処理が終了する。昇華度算定部91は搬送制御部77に対して被記録媒体1の加熱装置4からの搬出を指令するとともに(#24)、加熱昇華定着処理が連続しない場合加熱装置4の動作を停止させるように加熱制御部78に指令する(#25)。また、加熱昇華定着処理の途中で濃度値の低下速度が所定レベルを下回った場合、昇華遅延が生じているとして加熱制御部78に対して目標加熱温度の上昇を命じる。
【0038】
以上述べた実施形態の特徴は、加熱装置4に作り出された加熱空間40Aに被記録媒体1を定置させた状態で加熱し、表面層12に形成された昇華前プリントドットのインクが定着層11に昇華定着される度合い、つまり昇華度を加熱装置4内に設置されたCCDカメラ90と第2コントローラ7Bに構築されている昇華度算定部91とによって監視しながら、最適な昇華度が得られた段階で昇華加熱処理を終了するものであり、これにより最適な加熱昇華定着処理が実現する。
【0039】
〔別実施形態〕
(1)図7に示された別実施形態では、加熱装置4に本加熱空間40Aと調整加熱空間40Bが作り出されている。調整加熱空間40Bは本加熱空間40Aより被記録媒体1の搬送方向で下流側に位置するとともに本加熱空間40Aに較べて搬送方向の幅がはるかに短くなっている。本加熱空間40Aと調整加熱空間40Bにはそれぞれ電気ヒータ41と温度センサ42とファン43が備えられており、本加熱空間40Aと調整加熱空間40Bの間に昇華度評価手段9を構成するCCDカメラ90が設けられている。本加熱空間40Aが搬送されてくる被記録媒体1をほぼ完全に加熱昇華させるだけの加熱能力を有しているのに対して、調整加熱空間40Bは本加熱空間40Aで実施された加熱昇華定着処理のわずかな不足分を補う程度の加熱能力を有するものである。つまり、この別実施形態では、本加熱空間40Aを通過してきた被記録媒体1における昇華度をCCDカメラ90と昇華度算定部91によって評価し、加熱昇華の不足分だけをさらに調整加熱空間40Bの通過を通じて補うように構成されている。従って、調整加熱空間40Bにおける加熱温度は評価された昇華度に応じて調整される。この別実施形態で重要な点は、被記録媒体1を加熱装置4内で定置させる必要がなく、連続的に搬送されている被記録媒体1に対して最適な加熱昇華定着処理を実施できることである。
【0040】
(2)図8と図9に示された別実施形態においても、被記録媒体1を加熱装置4内で定置させる必要がなく、連続的に搬送されている被記録媒体1に対して最適な加熱昇華定着処理を実施できる。図7による別実施形態と対比するならば、加熱空間40Aが本加熱空間と調整加熱空間を兼ねていることに特徴がある。被記録媒体1は加熱空間40Aで加熱昇華定着処理を受けた後、加熱空間40Aの搬出側に位置するCCDカメラ90を通じてその昇華度がチェックされ、昇華度算定部91によって評価された昇華度に基づいて設定された加熱温度又は加熱時間をもって再度加熱空間40Aで加熱昇華定着処理を受ける。その際、図8の別実施形態では、加熱空間40Aから搬出された後(図8(イ))CCDカメラ90を通じて昇華度がチェックされた被記録媒体1を逆送させて(図8(ロ))その後端部から再度加熱空間40Aに投入して調整加熱する構成を採用しており、図9の別実施形態では、加熱空間40Aを出たところで(図9(イ))CCDカメラ90を通じて昇華度がチェックされた被記録媒体1を付加的に設けられている戻し搬送路(加熱空間40Aをバイパスする搬送路)に分岐させ、加熱空間40Aの搬入側に戻し、被記録媒体1をその前端部から再度加熱空間40Aに投入して(図9(ロ))調整加熱する構成を採用している。
【0041】
(3)図10に示された別実施形態では、加熱空間が複数に区画分割された加熱空間ユニット40Aから作り出されている。各加熱空間ユニット40Aにはそれぞれ独立的に制御可能な電気ヒータ41と温度センサ42が、必要の場合ファン43も、備えられており、昇華度評価手段9は加熱空間ユニット40Aの区画に対応して設定された昇華度算定エリア毎にその昇華度を評価するように構成されている。つまり、この別実施形態では、被記録媒体1に対して複数の分割された区画単位で加熱昇華定着処理を施すとともに、その区画毎に昇華度を評価し、各区画が最適な昇華度が得られるように各加熱空間ユニット40Aの加熱挙動を個別に調整するのである。この構成では、場合によっては生じるかも知れない被記録媒体1における二次面上での昇華度変動を補償することができる。
【0042】
(4)図11に示された別実施形態はその加熱装置4に特徴があるのではなく、昇華度評価のために利用される昇華前プリントドット又は昇華後プリントドットが実際のプリント画像の一部を構成しているものではなく、予め設定されたテストパターン、ここではプリント画像に隣接して配置されているラインパターンを構成しているものであるということに特徴がある。この場合、CCDカメラ90は、予め被記録媒体1の各エッジからの位置が規定されているラインパターンに照準を合わすことができるので、プリントドットの位置検出アルゴリズムが簡単になる。さらに、このテストパターンは、実際のプリント画像を形成している被記録媒体1とは別体の被記録媒体1に形成することが可能である。このことは、これまでの実施形態において述べられた昇華度評価による加熱挙動の制御をリアルタイムではなく、適時にオフラインで行う方法への道を開くものである。つまり、所定の加熱挙動で加熱定着されたテストパターンを有する被記録媒体から昇華度評価手段9によって得られた昇華度に基づいて加熱制御部78によって制御される加熱装置4の目標加熱挙動、例えば加熱時間や加熱温度を設定し、プリント毎のリアルタイムでの昇華度評価とそれに基づく加熱昇華定着処理の制御は省略するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による画像形成装置で扱われる被記録媒体の一例を示す断面図
【図2】本発明による画像形成装置の一つの実施形態を示す外観図
【図3】画像形成装置のプリントステーションの構成を示す断面模式図
【図4】コントローラの機能を説明する機能ブロック図
【図5】入力された画像データに基づいて駆動されたインクジェットヘッドによって形成された画像を有する被記録媒体を加熱することにより最終的な印刷物を作り出す様子を示す模式流れ図
【図6】注目すべき画像領域に対応する画素の濃度値を求める様子を示す説明図
【図7】本発明の画像形成装置における昇華度評価に基づく加熱昇華定着処理の別実施形態を示す模式図
【図8】本発明の画像形成装置における昇華度評価に基づく加熱昇華定着処理の別実施形態を示す模式図
【図9】本発明の画像形成装置における昇華度評価に基づく加熱昇華定着処理の別実施形態を示す模式図
【図10】本発明の画像形成装置における昇華度評価に基づく加熱昇華定着処理の別実施形態を示す模式図
【図11】本発明の画像形成装置における昇華度評価に基づく加熱昇華定着処理の別実施形態を示す模式図
【符号の説明】
1 被記録媒体
2 インクジェットヘッド
3 ヘッド送り機構
4 加熱装置
6 搬送機構
7 コントローラ
7A第1コントローラ
7B第2コントローラ
9 昇華度評価手段
72 画像処理部
73 プリントデータ生成部
75 プリント制御部
78 加熱制御部
90 CCDカメラ(撮像素子)
91 昇華度算定部

Claims (9)

  1. 画像データから作成されたプリントデータによって駆動制御されるプリントヘッドを用いてその表面層にインクがプリントドットとして付与された被記録媒体を加熱装置によって加熱することにより表面層に付与されたインクを被記録媒体の定着層に昇華定着させる画像形成装置において、
    前記被記録媒体の表面層に形成されたインクによる昇華前プリントドットが前記加熱装置による加熱を通じて昇華後プリントドットとして前記被記録媒体の定着層に定着される度合いを示す昇華度を評価する昇華度評価手段と、前記加熱装置における前記被記録媒体に対する加熱温度と加熱時間の組み合わせで決定される加熱挙動を制御する加熱制御部が備えられ、前記昇華度評価手段は前記被記録媒体に形成されたプリントドットを撮像する撮像素子と、この撮像素子によって取得されたプリントドットの時系列的な濃度値の変動を評価することで昇華度を算定する昇華度算定部とを含み、この昇華度評価手段によって得られた昇華度に基づいて前記加熱制御部は前記加熱挙動を制御することを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記濃度値評価が所定のテストパターンに含まれているプリントドットに対して行われることを特徴とする請求項に記載の画像形成手段。
  3. 前記濃度値評価がプリントソースとしての画像データに含まれている特定の画素に対応するプリントドットに対して行われることを特徴とする請求項に記載の画像形成手段。
  4. 前記プリントドットの濃度値評価が表面層に付与されたインクドットに基づいて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
  5. 前記プリントドットの濃度値評価が定着層に昇華定着されたインクドットに基づいて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
  6. 前記昇華度評価手段によって得られた昇華度に基づいて前記加熱制御部がリアルタイムで被記録媒体に対する加熱挙動を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
  7. 所定の加熱挙動で加熱定着された被記録媒体から前記昇華度評価手段によって得られた昇華度に基づいて前記加熱制御部の前記所定の加熱挙動が調整されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
  8. 前記被記録媒体を適切な昇華度が得られるまで前記加熱装置に滞在させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の画像形成装置。
  9. 前記被記録媒体を適切な昇華度が得られるまで複数回前記加熱装置に投入させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の画像形成装置。
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