しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、印刷対象物が静止している場合には濃度斑の発生を抑制することができるものの、印刷対象物が相対的に移動している状態で画像を形成する場合には必ずしも濃度斑の発生を抑制することができるとは限らない、という問題点があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、記録媒体を相対的に移動させつつ画像を形成する場合であっても当該画像の濃度斑の発生を抑制することのできる液滴吐出装置、液滴吐出方法、及び液滴吐出プログラムを提供することを目的とする。
ここで、本発明の原理を説明する。
前述したように、記録媒体が高さ方向に変位しており、三次元的な構造を有している場合に、二次元的な記録媒体と同様に打滴すると、当該記録媒体に形成された画像に濃度斑が発生する。これは、一例として図6及び図7に示されるように、記録媒体の傾斜により、二次元的な記録媒体に画像を形成する場合に対して打滴間隔が変化するためである。なお、図6及び図7におけるLは記録媒体が傾斜していない場合の打滴間隔を表し、L’,L+,L−は記録媒体が傾斜している場合の打滴間隔を表す。ここで、L+は、記録媒体の画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴に向かう方向に相対的に移動する状態での打滴間隔を表し、L−は、記録媒体の画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴から離れる方向に相対的に移動する状態での打滴間隔を表す。
記録媒体が液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動している場合、形成画像の濃淡状態は、画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴に向かう方向に相対的に移動しているのか、当該液滴から離れる方向に移動しているのかによって決定される。なお、図7におけるθ+は、画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴に向かう方向に相対的に移動している場合の記録媒体の傾斜角度を表し、θ−は、画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴から離れる方向に相対的に移動している場合の記録媒体の傾斜角度を表す。
例えば、画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴に向かう方向に相対的に移動している場合(傾斜角度がθ+である場合)、一例として図8の右半分の打滴パターンにより示されるように、二次元平面状の記録媒体に形成した場合に比較して濃度が高くなる(濃くなる)。これは、打滴間隔が傾斜のない場合に打滴間隔Lであったのに対し、当該傾斜により打滴間隔L+となって打滴間隔Lより短くなったことで、ドット密度が上昇したためである。逆に、画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴から離れる方向に相対的に移動している場合(傾斜角度がθ−である場合)には、打滴間隔が打滴間隔L−となり、打滴間隔Lより長くなる結果、ドット密度が低下し、一例として図8の左半分の打滴パターンにより示されるように、濃度が低くなる(薄くなる)。
従って、記録媒体の高さ方向の変位に起因する濃度斑の発生を抑制するためには、画像形成面が液滴吐出ヘッドによって吐出される液滴に向かう方向に移動する状態及び当該液滴から離れる方向に移動する状態の各状態に応じて、画像情報及び液滴の吐出量の少なくとも一方の調整を行うことが必要である。
以上の原理に基づき、上記目的を達成するために、請求項1に記載の液滴吐出装置は、画像情報に基づき記録媒体に対して液滴を吐出して当該記録媒体にドットを形成することにより、前記画像情報により示される画像を前記記録媒体の画像形成領域における幅方向の全域又は一部領域にわたり形成する液滴吐出ヘッドと、前記記録媒体及び前記液滴吐出ヘッドの少なくとも一方を前記幅方向に直交する方向に相対的に移動させる移動手段と、前記記録媒体における画像形成面と前記液滴吐出ヘッドとの距離が、前記移動手段による移動によって減少する第1状態及び増加する第2状態の何れの状態にあるかに応じて、前記液滴により前記記録媒体に形成される画像の前記幅方向に直交する方向に対する濃度斑が抑制されるように前記画像情報及び前記液滴の吐出量の少なくとも一方の調整を行う調整手段と、を備えている。
請求項1に記載の液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドにより、画像情報に基づき記録媒体に対して液滴が吐出されて当該記録媒体にドットが形成されることにより、前記画像情報により示される画像が前記記録媒体の画像形成領域における幅方向の全域又は一部領域にわたり形成されると共に、移動手段により、前記記録媒体及び前記液滴吐出ヘッドの少なくとも一方が前記幅方向に直交する方向に相対的に移動される。
ここで、本発明では、調整手段により、前記記録媒体における画像形成面と前記液滴吐出ヘッドとの距離が、前記移動手段による移動によって減少する第1状態及び増加する第2状態の何れの状態にあるかに応じて、前記液滴により前記記録媒体に形成される画像の前記幅方向に直交する方向に対する濃度斑が抑制されるように前記画像情報及び前記液滴の吐出量の少なくとも一方の調整が行われる。
このように、請求項1に記載の液滴吐出装置によれば、画像情報に基づき記録媒体に対して液滴を吐出して当該記録媒体にドットを形成することにより、前記画像情報により示される画像を前記記録媒体の画像形成領域における幅方向の全域又は一部領域にわたり形成する液滴吐出ヘッドと、前記記録媒体及び前記液滴吐出ヘッドの少なくとも一方を前記幅方向に直交する方向に相対的に移動させる移動手段と、を備え、前記記録媒体における画像形成面と前記液滴吐出ヘッドとの距離が、前記移動手段による移動によって減少する第1状態及び増加する第2状態の何れの状態にあるかに応じて、前記液滴により前記記録媒体に形成される画像の前記幅方向に直交する方向に対する濃度斑が抑制されるように前記画像情報及び前記液滴の吐出量の少なくとも一方の調整を行っているので、記録媒体を相対的に移動させつつ画像を形成する場合であっても当該画像の濃度斑の発生を抑制することができる。
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記調整手段が、前記第1状態にある領域に対する前記画像情報の濃度又は前記液滴の吐出量が、前記第2状態にある領域に対する前記画像情報の濃度又は前記液滴の吐出量に比較して少なくなるように前記調整を行うものとしてもよい。これにより、簡易に濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記記録媒体の画像形成面の高さを取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された高さに基づいて前記画像形成面の前記幅方向に直交する方向における傾斜角度、及び前記移動手段による移動により前記第1状態にあるのか、前記第2状態にあるのかを示す傾斜方向を導出する導出手段と、をさらに備え、前記調整手段が、前記導出手段によって導出された傾斜角度及び傾斜方向に基づいて前記調整を行うものとしてもよい。これにより、より低コストで濃度斑の発生を抑制することができる。
なお、上記取得手段による取得には、センサを介した取得、記憶手段から読み出すことによる取得、外部装置からの通信回線を介した取得等が含まれる。
ところで、前述したように、形成画像の濃度の変化は、打滴間隔の変化に伴うドット密度の変化に起因して生じる。従って、打滴間隔の比(=L’/L)に基づいて補正を行うことが妥当である。以下、傾斜角度θにより打滴間隔が打滴間隔Lから打滴間隔L’に変化した場合について説明する。
時刻tnに液滴吐出ヘッドから吐出された液滴が時刻tn+Δtnに記録媒体上に着弾し、さらに時刻tnからt0秒後の時刻tn+1に液滴吐出ヘッドから液滴が吐出され、時刻tn+1+Δtn+1に記録媒体上に着弾するものとする。このときの打滴間隔L及び打滴間隔L’を求める。なお、以下では、記録媒体が液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動している場合の一例として、記録媒体が予め定められた搬送面により移動されている場合について説明する。
時刻tnに吐出された液滴が記録媒体に着弾するとき、記録媒体の搬送面に垂直な方向に関して次の(1)式が成立し、記録媒体の移動方向に平行な方向に関して次の(2)式が成立する。但し、簡単のため、液滴は等速運動するものとした。なお、(1)式におけるDは上記搬送面と液滴吐出点との距離を示し、h(x)は位置xでの高さ方向の誤差を示し、x(t)は時刻tでの液滴の搬送方向位置を示す。
Δtnを(1)式について解くと、次の(3)式となる。
また、吐出間隔がt0であることからtn=nt0と表すことができる。
記録媒体が傾斜していないときについては、次の(4)式が成立する。
従って、(3)式及び(4)式を(2)式に代入すると、次の(5)式が得られる。
従って、記録媒体に傾斜がある場合とない場合の打滴面積率の比(=A’/A)は、次の(6)式となる。
よって、記録媒体の傾斜によって変化した打滴面積率を、傾斜がないときの打滴面積率に戻すためには、次の(7)式により得られる補正量をかけてやればよい。
なお、図9には、(7)式により得られる記録媒体の傾斜角度と補正量との関係を示すグラフが示されている。
以上の点から、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記移動手段による移動速度及び前記液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出速度を取得する第2取得手段をさらに備え、前記調整手段は、前記第2取得手段によって取得された移動速度及び吐出速度と、前記導出手段によって導出された傾斜角度及び傾斜方向とに基づいて前記調整を行うものとしてもよい。これにより、確実に濃度斑の発生を抑制することができる。
なお、上記第2取得手段による取得には、キーボード等の入力手段を介した取得、記憶手段から読み出すことによる取得、外部装置からの通信回線を介した取得等が含まれる。
特に、請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記調整手段が、前記移動速度をvpとし、前記吐出速度をvjとし、前記第1状態である前記傾斜角度θを正とし、前記第2状態である前記傾斜角度θを負として、次の演算式により前記調整に用いる補正量を算出してもよい。
これにより、簡易に濃度斑の発生を抑制することができる。
一方、前述した説明では、簡単のため、記録媒体の移動方向に直交する方向については当該記録媒体の高さ方向の変位がないものと仮定したが、この傾斜に対応するためには、傾斜したときの単位面積の比を求めてやればよい。概略的には、一例として図10に示すように、記録媒体の移動方向に直交する方向の傾きをθpとして、cosθpで除算してやればよい。
すなわち、打滴面積率の補正量として、次の(8)式を用いればよい。
以上の点から、請求項4に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記取得手段によって取得された高さに基づいて前記画像形成面の前記幅方向における傾斜角度を第2傾斜角度として導出する第2導出手段をさらに備え、前記調整手段が、前記第2取得手段によって取得された移動速度及び吐出速度と、前記導出手段によって導出された傾斜角度及び傾斜方向と、前記第2導出手段によって導出された第2傾斜角度とに基づいて前記調整を行うものとしてもよい。これにより、より確実に濃度斑の発生を抑制することができる。
特に、請求項6に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記調整手段が、前記移動速度をvpとし、前記吐出速度をvjとし、前記第1状態である前記傾斜角度θを正とし、前記第2状態である前記傾斜角度θを負とし、前記第2傾斜角度をθpとして、次の演算式により前記調整に用いる補正量を算出するものとしてもよい。
これにより、簡易に濃度斑の発生を抑制することができる。
また、請求項5又は請求項7に記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記記録媒体の画像形成面における傾斜角度が所定値以上である領域に対応する前記補正量を空間的にぼかすぼかし手段をさらに備えてもよい。これにより、より確実に濃度斑の発生を抑制することができる。なお、上記ぼかし手段によるぼかしには、移動平均をとることによるぼかしや、ガウシアン・フィルタによるぼかしが含まれる。
また、請求項5又は請求項7又は請求項8に記載の発明は、請求項9に記載の発明のように、前記補正量を示す値が前記画像情報における画素値量子化間隔より小さい量子間隔を持つ場合、当該補正量として小数点を有する値を適用し、誤差拡散法を用いて近傍画素に補正効果を拡散させる拡散手段をさらに備えてもよい。これにより、より確実に濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本発明は、請求項10に記載の発明のように、前記調整手段が、前記記録媒体における画像形成面の高さ方向の変位量が所定量以上である領域のみを対象として前記調整を行うものとしてもよい。これにより、より短時間で濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本発明は、請求項11に記載の発明のように、前記取得手段による取得結果を所定領域毎に平均化する平均化手段をさらに備え、前記調整手段が、前記平均化手段によって平均化された取得結果を用いて前記調整を行うものとしてもよい。これにより、取得手段による取得結果に生じるノイズの影響を抑制することができる結果、形成画像の画質を向上させることができる。
また、本発明は、請求項12に記載の発明のように、前記液滴吐出ヘッドにおける液滴の吐出口の液滴吐出特性を示す物理量に基づいて前記画像情報を補正する補正手段をさらに備えてもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、形成画像の画質を向上させることができる。
また、本発明は、請求項13に記載の発明のように、前記液滴吐出ヘッドが、液滴の吐出口を前記記録媒体の幅方向の全域に対応するように複数有するものとしてもよい。これにより、一度に記録媒体の幅方向の全域に対する画像形成を行うことができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、より高速に濃度斑の発生が抑制された画像を形成することができる。
さらに、本発明は、請求項14に記載の発明のように、前記記録媒体を前記液滴吐出ヘッドによる液滴の打滴位置まで搬送する搬送手段と、前記搬送手段に設けられ、当該搬送手段によって搬送されている記録媒体を、前記液滴吐出ヘッドによる予め定められた画像形成位置に保持する保持手段と、をさらに備えてもよい。これにより、記録媒体の高さ方向の変位を抑制することができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、形成画像の画質を向上させることができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項15に記載の液滴吐出方法は、画像情報に基づき記録媒体に対して液滴を吐出して当該記録媒体にドットを形成することにより、前記画像情報により示される画像を前記記録媒体の画像形成領域における幅方向の全域又は一部領域にわたり形成する液滴吐出ヘッドと、前記記録媒体及び前記液滴吐出ヘッドの少なくとも一方を前記幅方向に直交する方向に相対的に移動させる移動手段と、を備えた液滴吐出装置における液滴吐出方法であって、前記記録媒体における画像形成面と前記液滴吐出ヘッドとの距離が、前記移動手段による移動によって減少する第1状態及び増加する第2状態の何れの状態にあるかに応じて、前記液滴により前記記録媒体に形成される画像の前記幅方向に直交する方向に対する濃度斑が抑制されるように前記画像情報及び前記液滴の吐出量の少なくとも一方の調整を行う調整工程を有するものである。
従って、本発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、記録媒体を相対的に移動させつつ画像を形成する場合であっても当該画像の濃度斑の発生を抑制することができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項16に記載の液滴吐出プログラムは、画像情報に基づき記録媒体に対して液滴を吐出して当該記録媒体にドットを形成することにより、前記画像情報により示される画像を前記記録媒体の画像形成領域における幅方向の全域又は一部領域にわたり形成する液滴吐出ヘッドと、前記記録媒体及び前記液滴吐出ヘッドの少なくとも一方を前記幅方向に直交する方向に相対的に移動させる移動手段と、を備えた液滴吐出装置により実行される液滴吐出プログラムであって、前記記録媒体における画像形成面と前記液滴吐出ヘッドとの距離が、前記移動手段による移動によって減少する第1状態及び増加する第2状態の何れの状態にあるかに応じて、前記液滴により前記記録媒体に形成される画像の前記幅方向に直交する方向に対する濃度斑が抑制されるように前記画像情報及び前記液滴の吐出量の少なくとも一方の調整を行う調整ステップをコンピュータに実行させるものである。
従って、本発明によれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、記録媒体を相対的に移動させつつ画像を形成する場合であっても当該画像の濃度斑の発生を抑制することができる。
本発明によれば、記録媒体を相対的に移動させつつ画像を形成する場合であっても当該画像の濃度斑の発生を抑制することができる、という効果が得られる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、インク滴により画像を形成する所謂インクジェットプリンタ(以下、「画像形成装置」という。)に適用した場合について説明する。
まず、本実施の形態に係る画像形成装置10の全体構成について説明する。
[画像形成装置]
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という)の搬送方向上流側に、用紙を給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙の搬送方向に沿って、用紙の記録面(画像形成面)に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙の記録面に画像を形成する画像形成部16、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙に定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙を排出する排出部21が設けられている。
以下、各処理部について説明する。
(給紙搬送部)
給紙搬送部12には、用紙が積載される積載部22が設けられており、積載部22の用紙の搬送方向下流側(以下、「用紙の搬送方向」を省略する場合もある)には、該積載部22に積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。この給紙部24によって給紙された用紙は、複数のローラ26対で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
(処理液塗布部)
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙の先端部を挟持して用紙を保持する保持部材32が設けられており、該保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙を保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38及び定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙の受け渡しが行われる。
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42及び処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙の記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、該処理液が乾燥される。
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、該ゴムローラ50が用紙の記録面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙の記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
処理液膜厚はヘッド打滴の液滴より十分小さいことが理想である。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴の液滴の平均直径は15.6μmであり、処理液膜厚が厚い場合、インクドットは用紙の記録面と接触することなく処理液内で浮遊する。2plの打滴量で着弾ドット径を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54及び赤外線ヒータ56(以下、「IRヒータ56」という)が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54及びIRヒータ56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部16でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすい。
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙は、処理液塗布部14と画像形成部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
(中間搬送部)
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム34の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
(画像形成部)
画像形成部16には、画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙を保持し、画像形成ドラム36の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、各々インク滴を吐出する複数のノズルが2次元状に設けられたシングルパス方式のインクジェットラインヘッド64(以下、「ヘッド64」という。)を有するヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のヘッド64が画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上に各色の画像を形成する。
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用い色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
ヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴斑を低減することが可能となる。
なお、ヘッドユニット66は画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、該ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
一方、画像形成ドラム36の上部で、かつヘッドユニット66の上流側には、用紙の記録面の高さを検出する高さ測定部81が配設されている。
本実施の形態に係る高さ測定部81には、半導体レーザ等の発光素子と、当該発光素子から射出されて測定対象物(用紙)の表面で反射された光のスポット位置を検出する光位置検出素子(PSD)とが組み合わされて構成された光学式変位センサを好適に用いることができる。本実施の形態に係る高さ測定部81は、各ヘッド64によるインク吐出幅(画像記録幅)の全域の高さを検出するため、一例として図2に示されるように、複数の光学式変位センサを用紙の搬送方向に直交する方向に並べて配置する。
なお、高さ測定部81は、このような発光素子とPSDを組み合わせた光学式変位センサを複数用いるものに限らず、発光素子とCCDエリアセンサを組み合わせたセンサ等の他の光学式変位センサや、超音波式変位センサ等の非接触式の変位センサの他、用紙が比較的厚く、表面に接触しても、その高さが殆ど変化しない場合には、接触式の変位センサを用いる形態とすることもできる。
また、1つの変位センサを移動機構(不図示)によって支持し、当該変位センサを移動(走査)させることによって画像記録幅の全域にわたり高さを検出する構成も可能であり、さらには、比較的幅広なレーザビームで測定対象物の表面形状を2次元センシングする形状計測センサを適用することもできる。
このように、高さ測定部81は、用紙の画像記録幅全域にわたる記録面の高さを検出するものであり、検出結果を示す情報(以下、「高さ情報」という。)を後述するプリント制御部89に送信する。なお、本実施の形態に係る高さ測定部81は、画像形成ドラム36の表面の高さを基準位置(高さが0(零)の位置)とした高さを検出するものとされている。
また、画像形成ドラム36の上部で、かつヘッドユニット66の下流側には、ヘッドユニット66による画像形成結果を読み取る画像検出部82が配設されている。
画像検出部82は、ヘッドユニット66の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。
本実施の形態に係る画像検出部82には、受光面に複数の受光素子(光電変換素子)が2次元配列されてなるCCDエリアセンサを好適に用いることができる。エリアセンサは、少なくとも各ヘッド64によるインク吐出幅(画像記録幅)の全域を撮像できる撮像範囲を有しているものとする。1つのエリアセンサで所要の撮像範囲を実現してもよいし、複数のエリアセンサを組み合わせて(繋ぎ合わせて)所要の撮像範囲を確保してもよい。或いはまた、エリアセンサを移動機構(不図示)によって支持し、エリアセンサを移動(走査)させることによって所要の撮像範囲を撮像する構成も可能である。
また、エリアセンサに代えてラインセンサを用いることも可能である。この場合、ラインセンサは、少なくとも各ヘッド64によるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列(光電変換素子列)を有する構成が好ましい。
このように、画像検出部82は、イメージセンサを含むブロックであり、用紙に形成された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って画像形成状況(吐出量、着弾位置誤差、ドット形状、光学濃度など)を検出し、その検出結果を示す情報を後述するシステムコントローラ84に送信する。
記録面に画像が形成された用紙は、画像形成ドラム36の回転によって、画像形成部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
(インク乾燥部)
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥ドラム38の表面に近接して、熱風ノズル72及びIRヒータ74が複数配設されている。この熱風ノズル72及びIRヒータ74による温風によって、用紙の画像形成部では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
温風は用紙の搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収しても良い。
記録面の画像が乾燥した用紙は、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
(画像定着部)
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20では、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙上に固着定着する機能を有する。
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、該加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている。この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙に対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙は、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
なお、本実施の形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
[システム構成]
次に、図3を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10のシステム構成を説明する。
同図に示されるように、画像形成装置10は、通信インタフェース83、システムコントローラ84、画像メモリ85、ROM86、モータドライバ87、ヒータドライバ88、プリント制御部89、画像バッファメモリ90、画像処理部91、ヘッドドライバ92等を備えている。
通信インタフェース83は、ユーザが画像形成装置10に対して画像形成の指示等を行うため等に用いられるホスト装置99とのインタフェース部である。通信インタフェース83にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホスト装置99から送出された画像情報は通信インタフェース83を介して画像形成装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ85に記憶される。画像メモリ85は、通信インタフェース83を介して入力された画像情報を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ84を通じて情報の読み書きが行われる。画像メモリ85は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ84は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ84は、通信インタフェース83、画像メモリ85、モータドライバ87、ヒータドライバ88等の各部を制御し、ホスト装置99との間の通信制御、画像メモリ85及びROM86の読み書き制御等を行うとともに、用紙搬送系のモータ93やIRヒータ56,74を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部89に対しては、制御信号の他に、画像メモリ85に記憶された画像情報を送信する。また、システムコントローラ84は、画像検出部82から読み込んだテストパターンの読み取りデータから着弾位置誤差のデータや吐出量誤差のデータ等(以下、「液滴吐出特性情報」という。)を生成することもできる。
また、ROM86には、システムコントローラ84のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM86は、書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
画像メモリ85は、画像情報の一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ87は、システムコントローラ84からの指示に従って用紙搬送系のモータ93を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ88は、システムコントローラ84からの指示に従ってIRヒータ56,74を駆動するドライバである。
一方、プリント制御部89は、CPU及びその周辺回路等から構成され、システムコントローラ84の制御に従い、画像処理部91と協働して画像メモリ85内の画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正等の処理を行うと共に、生成したインク吐出データをヘッドドライバ92に供給してヘッドユニット66の吐出駆動を制御する。
プリント制御部89には、プリント制御部89のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されているROM94が接続されている。ROM94もまた書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
画像処理部91は、入力された画像情報からインク色別のドット配置データを生成するものであり、入力画像情報に対してハーフトーニング処理を行って高品質のドット位置を決定する。
本実施の形態に係る画像処理部91は、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む。)及び必要な場合には画素数変換処理、濃度補正処理、並びに多値の濃度データから2値(又は多値)のドット配置データに変換するハーフトーニング処理(中間階調処理)等を行う。
なお、図3において、画像処理部91は、システムコントローラ84やプリント制御部89とは別個のものとして図示しているが、例えば、画像処理部91は、システムコントローラ84或いはプリント制御部89に含まれて、その一部を構成するようにしてもよい。
また、プリント制御部89は、画像処理部91で生成されたドット配置データに基づいてインクの吐出データ(ヘッド64のノズルに対応するアクチュエータの制御信号)を生成するインク吐出データ生成機能と、駆動波形生成機能とを有している。
インク吐出データ生成機能にて生成されたインク吐出データはヘッドドライバ92に与えられ、ヘッドユニット66のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成機能は、ヘッド64の各ノズルに対応したアクチュエータを駆動するための駆動信号波形を生成する機能であり、当該駆動波形生成機能にて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ92に供給される。なお、駆動波形生成機能にて生成される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
プリント制御部89には画像バッファメモリ90が備えられており、プリント制御部89における画像情報処理時に画像情報やパラメータ等のデータが画像バッファメモリ90に一時的に格納される。なお、図3において画像バッファメモリ90はプリント制御部89に付随する態様で示されているが、画像メモリ85と兼用することも可能である。
また、本実施の形態に係るプリント制御部89は、画像処理部91で生成されたドット配置データを用紙の実際の傾斜状態に応じて補正する傾斜対応補正機能を有している。
このため、ROM94には、当該傾斜対応補正機能で適用する補正量を算出するための演算式(一例として上記(8)式で示される演算式であり、以下、「補正量演算式」という。)が予め記憶される一方、プリント制御部89には前述した高さ測定部81が接続されており、プリント制御部89におけるCPUは、高さ測定部81により測定された用紙の画像形成領域における高さを把握することができる。
なお、プリント制御部89とシステムコントローラ84とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
次に、本実施の形態に係る画像形成装置10の作用として、本発明に特に関係するプリント制御部89の作用を、図4を参照しつつ説明する。なお、図4は、画像形成時にプリント制御部89のCPUによって実行される画像形成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM94の所定領域に予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、システムコントローラ84により、前述した液滴吐出特性情報が生成されて画像バッファメモリ90の所定領域に予め記憶されている場合について説明する。また、ここでは、画像形成ドラム36による用紙の搬送速度vp及びヘッドユニット66によるインク滴の吐出速度vjがROM94の所定領域に予め記憶されている場合について説明する。さらに、ここでは、錯綜を回避するために、用紙1枚分の画像を形成する場合について説明する。
同図のステップ100では、上記用紙の搬送速度vp及びインク滴の吐出速度vjをROM94から読み出すことにより取得し、次のステップ102では、上記液滴吐出特性情報を画像バッファメモリ90から読み出すことにより取得する。
次のステップ104では、読み出した液滴吐出特性情報に基づいて画像形成の対象とする画像情報(以下、「処理対象画像情報」という。)に対して予め定められた補正処理を行う。なお、本実施の形態に係る画像形成処理プログラムでは、本ステップ104における補正処理として、液滴吐出特性情報により示される着弾位置誤差を結果的に相殺するように処理対象画像情報を補正する処理を適用している。但し、当該補正処理は、これに限らず、例えば、液滴吐出特性情報により示される吐出量誤差を結果的に相殺するように処理対象画像情報を補正する処理等の他の補正処理や、これらの補正処理を組み合わせた処理を適用することもできる。
次のステップ106では、高さ測定部81から上記高さ情報が受信されるまで待機した後、次のステップ108にて、受信した高さ情報を画像バッファメモリ90の所定領域に記憶する。
次のステップ110では、上記ステップ108の処理による高さ情報の記憶数が所定数(本実施の形態では、5)に達したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ112に移行する。
ステップ112では、画像バッファメモリ90に記憶した高さ情報により示される高さの全てが所定高さ以下であったか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ114に移行する。
ステップ114では、高さ測定部81による測定点の各々毎に、画像バッファメモリ90に記憶されている高さ情報により示される高さの平均値(以下、「平均高さ」という。)を算出し、画像バッファメモリ90の所定領域に記憶する一方、上記高さ情報を画像バッファメモリ90から消去する。
次のステップ116では、直前の上記ステップ114の処理によって画像バッファメモリ90に記憶した平均高さと、その前回の上記ステップ114の処理によって画像バッファメモリ90に記憶した平均高さに基づいて、上記測定点の各々毎に、用紙の搬送方向における傾斜角度θと、用紙の搬送移動により当該用紙における画像形成面とヘッドユニット66の各ヘッド64との距離が減少する方向であるのか、増加する方向であるのかを示す傾斜方向の各情報を導出する。なお、本画像形成処理プログラムの実行が開始されてから最初にステップ116が実行される際には、上記前回のステップ114の処理によって画像バッファメモリ90に記憶した平均高さは存在しないが、この場合は、当該平均高さとして0(零)を適用する。
また、ステップ116では、導出した傾斜角度と傾斜方向の各情報に基づいて、当該傾斜方向も反映させた傾斜角度θを上記測定点の各々毎に導出する。具体的には、上記傾斜方向が上記減少する方向である傾斜角度θを正とし、上記傾斜方向が上記増加する方向である傾斜角度θを負とする。
さらに、ステップ116では、隣接する測定点間の上記平均高さに基づいて、上記測定点の各々毎に、用紙の搬送方向に直交する方向に対する傾斜角度θpを導出する。
次のステップ118では、上記補正量演算式をROM94から読み出し、当該補正量演算式に上記ステップ116の処理によって導出した傾斜角度θ及び傾斜角度θpと、上記ステップ100の処理によって取得した搬送速度vp及び吐出速度vjとを代入することにより、上記測定点の各々毎に、インク滴吐出量の補正量を算出する。
次のステップ120では、画像処理部91に対し、上記ステップ118の処理によって得られたインク滴吐出量の補正量を、処理対象画像情報を用いてハーフトーニング処理を実行する際に適用する打滴面積率に対して1度のみ乗算するように設定し、その後にステップ122に移行する。なお、上記ステップ112において肯定判定となった場合には、上記ステップ114〜ステップ120の処理を実行することなく、ステップ122に移行する。
ステップ122では、画像処理部91に対し、上記ステップ104の処理によって補正処理を施した処理対象画像情報を用いてハーフトーニング処理を実行させることによりドット配置データを生成させ、次のステップ124にて、以上の処理によって得られたドット配置データに基づき、インク吐出データ生成機能によってインク吐出データを生成すると共に駆動波形生成機能によって駆動波形を生成してヘッドドライバ92に供給することにより、ヘッドユニット66のインク吐出動作を制御する。これにより、用紙の記録面における画像形成領域には、1ライン分のインク滴が打滴されることになる。なお、この際、上記ステップ122の処理によって得られたドット配置データは、ヘッドユニット66より上流側に設けられた高さ測定部81によって得られた高さ情報に基づいて必要に応じて補正されたものであるので、当該高さ測定部81の配設位置とヘッドユニット66の各ヘッド64による打滴位置との位置のずれを考慮して、各ヘッド64毎にインク滴を打滴するタイミングを設定することは言うまでもない。
次のステップ126では、1枚分の画像の形成が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻る一方、肯定判定となった時点で本画像形成処理プログラムを終了する。
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、画像情報に基づき記録媒体(ここでは、用紙)に対して液滴(ここでは、インク滴)を吐出して当該記録媒体にドットを形成することにより、前記画像情報により示される画像を前記記録媒体の画像形成領域における幅方向の全域又は一部領域(ここでは、全域)にわたり形成する液滴吐出ヘッド(ここでは、ヘッド64)と、前記記録媒体及び前記液滴吐出ヘッドの少なくとも一方(ここでは、前記記録媒体のみ)を前記幅方向に直交する方向に相対的に移動させる移動手段(ここでは、画像形成ドラム36)と、を備え、前記記録媒体における画像形成面と前記液滴吐出ヘッドとの距離が、前記移動手段による移動によって減少する第1状態及び増加する第2状態の何れの状態にあるかに応じて、前記液滴により前記記録媒体に形成される画像の前記幅方向に直交する方向に対する濃度斑が抑制されるように前記画像情報及び前記液滴の吐出量の少なくとも一方(ここでは、前記液滴の吐出量のみ)の調整を行っているので、記録媒体を相対的に移動させつつ画像を形成する場合であっても当該画像の濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、前記第1状態にある領域に対する前記画像情報の濃度又は前記液滴の吐出量(ここでは、前記液滴の吐出量)が、前記第2状態にある領域に対する前記画像情報の濃度又は前記液滴の吐出量(ここでは、前記液滴の吐出量)に比較して少なくなるように前記調整を行っているので、簡易に濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、取得手段(ここでは、高さ測定部81)により、前記記録媒体の画像形成面の高さを取得し、取得した高さに基づいて前記画像形成面の前記幅方向に直交する方向における傾斜角度、及び前記移動手段による移動により前記第1状態にあるのか、前記第2状態にあるのかを示す傾斜方向を導出し、導出した傾斜角度及び傾斜方向に基づいて前記調整を行っているので、より低コストで濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、前記移動手段による移動速度及び前記液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出速度を取得し、取得した移動速度及び吐出速度と、導出した傾斜角度及び傾斜方向と、前記取得手段によって取得された高さに基づいて導出された前記画像形成面の前記幅方向における第2傾斜角度(ここでは、傾斜角度θp)とに基づいて前記調整を行っているので、確実に濃度斑の発生を抑制することができる。
特に、本実施の形態では、前記移動速度をvpとし、前記吐出速度をvjとし、前記第1状態である前記傾斜角度θを正とし、前記第2状態である前記傾斜角度θを負とし、前記第2傾斜角度をθpとして、(8)式により前記調整に用いる補正量を算出しているので、簡易に濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、前記記録媒体における画像形成面の高さ方向の変位量が所定量以上である領域のみを対象として前記調整を行っているので、より短時間で濃度斑の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、前記取得手段による取得結果を所定領域毎に平均化し、平均化した取得結果を用いて前記調整を行っているので、取得手段による取得結果に生じるノイズの影響を抑制することができる結果、形成画像の画質を向上させることができる。
また、本実施の形態では、前記液滴吐出ヘッドにおける液滴の吐出口の液滴吐出特性を示す物理量(ここでは、液滴吐出特性情報に含まれる物理量)に基づいて前記画像情報を補正しているので、形成画像の画質を向上させることができる。
また、本実施の形態では、前記液滴吐出ヘッドを、液滴の吐出口を前記記録媒体の幅方向の全域に対応するように複数有するものとしているので、一度に記録媒体の幅方向の全域に対する画像形成を行うことができる結果、より高速に濃度斑の発生が抑制された画像を形成することができる。
さらに、本実施の形態では、記録媒体を保持手段(ここでは、保持部材32)により前記液滴吐出ヘッドによる予め定められた画像形成位置に保持しているので、記録媒体の高さ方向の変位を抑制することができる結果、形成画像の画質を向上させることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
例えば、上記実施の形態では、(8)式によりインク滴吐出量の補正量を算出した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、(7)式によりインク滴吐出量の補正量を算出する形態とすることもできる。この場合、(8)式に代えて(7)式を画像バッファメモリ90に予め記憶しておく。なお、この場合、傾斜角度θpを算出する必要がなくなる。この場合、上記実施の形態に比較して、用紙の幅方向に対する濃度斑の発生を抑制することはできないものの、上記補正量を導出するための処理時間を短縮することができる。
また、上記実施の形態では、インク滴吐出量のみを補正する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像情報の濃度のみを補正する形態や、インク滴吐出量及び画像情報の濃度の双方を補正する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、上記測定点の各々毎に、インク滴吐出量を補正する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、プリント制御部89により、用紙の画像形成面における傾斜角度の大きさが所定値(一例として、θ<−50mrad:最も斑が見えやすい黒において、段差として視認される値)以上である領域に対応するインク滴吐出量の補正量を空間的にぼかす(なまらせる)形態とすることもできる。この場合、プリント制御部89が本発明のぼかし手段に相当することになる。この場合、より確実に濃度斑の発生を抑制することができる。
また、インク滴吐出量の補正量を示す値が画像情報における画素値量子化間隔より小さい量子間隔を持つ場合、当該補正量として小数点を有する値を適用し、誤差拡散法を用いて近傍画素(一例として、着目画素の上・下・左・右・斜めに隣接する8画素)に補正効果を拡散させる形態とすることもできる。この場合、プリント制御部89が本発明の拡散手段に相当することになる。この場合も、より確実に濃度斑の発生を抑制することができる。
また、上記実施の形態では、本発明の液滴吐出ヘッドとして、液滴の吐出口を記録媒体の幅方向の全域に対応するように複数有する、所謂シングルパス方式のヘッド64を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、主走査方向に移動しつつ画像を形成する、所謂シャトル・スキャン方式のヘッドを本発明の液滴吐出ヘッドとして適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、本発明の液滴吐出ヘッドとして、液滴の吐出口が2次元状に設けられたヘッド64を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液滴の吐出口が主走査方向に沿った1次元状に設けられたヘッドを本発明の液滴吐出ヘッドとして適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、画像形成ドラム36によって搬送されている用紙を対象として本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として図5に示されるように、複数(同図では2つ)のローラに巻き掛けられた無端状のベルトにより搬送されている用紙を対象として本発明を適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、補正量演算式を予め記憶しておき、当該補正量演算式を用いてインク滴吐出量の補正量を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、液滴吐出装置の仕様等により予め想定される範囲内の複数の打滴間隔L’(図6参照。)の各々毎に対応する上記補正量、または打滴面積率を示す情報を画像バッファメモリ90等の記憶手段に予め記憶しておき、画像を形成する際に、高さ測定部81によって得られた高さ情報に基づいて打滴間隔L’を導出し、当該打滴間隔L’に対応する補正量または打滴面積率を上記情報から特定して適用する形態とすることもできる。この場合、上記情報を記憶するための記憶容量が必要になるものの、上記補正量演算式による演算を行う必要がなくなるため、上記実施の形態に比較して、より高速に本発明を実現することができる。
また、上記実施の形態では、記録媒体のみを当該記録媒体の幅方向に直交する方向に移動させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、記録媒体及び液滴吐出ヘッドの双方、または液滴吐出ヘッドのみを上記幅方向に直交する方向に移動させる形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、高さ測定部81により画像形成面の高さを検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、記録媒体の種類毎に画像形成面の高さを示すプロファイルを記憶手段によって予め記憶しておき、実際に使用する記録媒体の種類に応じた上記プロファイルを適用する形態とすることもできる。この場合、上記プロファイルを記憶するための記憶容量が必要になるものの、高さ測定部81を設ける必要がなくなる結果、上記実施の形態に比較して、低コスト化及び小型化することができる。
その他、上記実施の形態に係る画像形成装置10の構成(図1〜図3参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
さらに、上記実施の形態において説明した画像形成処理プログラムの処理の流れ(図4参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、各ステップの処理順序の変更、処理内容の変更、不要なステップの削除、新たなステップの追加等を行うことができることは言うまでもない。