JP3797052B2 - 内燃機関のスロットル制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関のスロットル制御装置に関し、詳細には自動変速機を備えた内燃機関の変速機シフトアップ操作時のトルク相により生じる自動変速機出力トルクの一時的低下を抑制する内燃機関のスロットル制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機付の内燃機関を備えた車両等では、自動変速機のシフトアップ時、すなわち変速機の低速段から高速段へ変速比を増大させる切換操作時に、一時的に自動変速機出力トルク(車両の駆動トルク)が低下する、いわゆるトルク相が生じることが知られている。このトルク相のため、自動変速機付の内燃機関を備えた車両ではシフトアップ時にもトルクショックが発生し、車両の運転感覚が悪化する問題がある。この問題を解決するために自動変速機のシフトアップ操作時に機関出力トルクを増大させ、駆動トルクの低下を防止する制御装置が種々提案されている。
【0003】
この種の制御装置の例としては、例えば特開平8−218911号公報に記載されたものがある。
同公報の制御装置は、自動変速機のシフトアップ操作開始時に変速操作の状況に応じた量だけスロットル弁開度を増大することにより、トルク相による駆動トルク低下を補償するのに必要な量だけ機関出力トルクを増大させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開平8−218911号公報の装置では、トルク相発生時に駆動トルク低下を防止するのに必要とされるだけ機関出力トルクが増大されるものの、機関出力トルク増大を開始する時期、或いは終了する時期については詳細な検討がなされていない。このため、上記公報の装置では実際のトルク相により駆動トルクが低下する期間と機関出力トルクが増大される期間とが正確に合致しない場合が生じ、自動変速機シフトアップ操作時のトルクショックを有効に抑制することができない問題がある。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題に鑑み、実際にシフトアップ時のトルク相発生期間に正確に合致して機関の出力を増大させることが可能な内燃機関のスロットル制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、自動変速機を有する内燃機関のスロットル制御装置であって、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル弁開度を変更可能なスロットル弁駆動手段と、自動変速機のシフトアップ操作開始後に一時的に自動変速機出力トルクが低下するトルク相の発生を検出するトルク相検出手段と、前記検出されたトルク相の開始時期と終了時期とに基づいて、トルク相が生じている期間に合致して機関出力トルクが増大するように前記スロットル弁駆動手段によるスロットル弁開度変更操作を制御する制御手段と、を備え、前記トルク相検出手段は、機関出力トルク変化率と自動変速機出力トルク変化率とに基づいてトルク相の実際の開始時期と終了時期とを検出することを特徴とする内燃機関のスロットル制御装置が提供される。
【0007】
すなわち、請求項1の発明では、トルク相検出手段により実際にシフトアップ時のトルク相の開始時期と終了時期とを検出するとともに、検出されたトルク相開始時期と終了時期とに基づいて、トルク相が生じている間は機関出力トルクが増大するようにスロットル弁開度を制御する。これにより、機関出力トルクが増大される期間とトルク相の発生期間とが正確に合致するようになりシフトアップ時のトルクショックが抑制される。
更に、本発明ではトルク相検出手段は機関出力トルク変化率と自動変速機出力トルク変化率とから実際のトルク相の開始時期と終了時期とを検出する。これにより、正確にトルク相の開始時期と終了時期とを検出することができる。なお、機関出力トルクと自動変速機出力トルクとの変化率はそれぞれの出力軸にトルクセンサを取り付けて直接検出しても良いし、それぞれのトルク変化率と等価な物理量を検出し、これらの物理量に基づいてトルク変化率を間接的に検出(推定)するようにしても良い。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、前記制御手段は、前記トルク相検出手段の検出したトルク相の実際の開始時期を学習し、該学習結果に基づいてトルク相開始時期を予測するとともに、予測されたトルク相開始時期に合致して機関出力トルクが増大を開始するように前記スロットル弁駆動手段によるスロットル弁開度変更操作を制御する、請求項1に記載の内燃機関のスロットル制御装置が提供される。
【0009】
すなわち、請求項2の発明では、制御手段は学習結果に基づいてシフトアップ操作時のトルク相開始時期を予測し、予測された開始時期に合致して機関出力トルクが増大するようにスロットル弁開度を制御する。スロットル弁開度変更による出力トルク増大操作には、スロットル弁駆動手段の作動に要する時間やスロットル弁開度が変更されてから実際に機関出力トルクが変化するまでに要する時間等の遅れ時間を伴うため、スロットル弁開度変更操作の開始後実際に機関出力トルクが増大するまである程度の時間が必要となる。このため、実際にトルク相が開始してからスロットル弁開度変更による出力トルク増大操作を開始したのではトルク相開始時の駆動トルク低下を有効に抑制することはできない。本発明では、シフトアップ操作時のトルク相開始時期を予測し、予測されたトルク相開始時期に機関出力トルクが増大を開始するようにスロットル弁開度変更操作を行なう。これにより、トルク相開始時期と機関出力トルク増大時期が正確に合致するようになる。また、シフトアップ操作時のトルク相開始時期は同一の形式の車両であっても製品毎のばらつきや経年変化などにより一定値にはならない。本発明では、運転中に検出手段により検出した実際のトルク相開始時期を学習し、この学習値に基づいてトルク相開始時期を予測するようにしたことにより、製品毎のばらつきや経年変化が生じても正確にトルク相による変速ショックの発生を防止することが可能となっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明を適用した自動変速機付内燃機関の全体図である。図1において1は内燃機関を示す。本実施形態では内燃機関1としてはガソリン機関が使用されている。図1において、3は機関1の燃焼室、6は機関の吸気ポート、8は排気ポートを示す。各吸気ポート6は吸気枝管9を介してサージタンク10に接続されるとともに、各枝管9にはそれぞれの吸気ポート6に燃料を噴射する燃料噴射弁11が配置されている。
【0012】
また、サージタンク10は吸気通路12を介してエアクリーナ13に接続され、吸気通路12内にはスロットル弁14が配置されている。本実施形態のスロットル弁14は、後述する電子制御ユニット(ECU)30の指令に応じて動作するステッパモータ等の適宜な形式のアクチュエータ20を備えECU30からの指令信号に応じた開度をとる電子制御スロットル弁とされている。ECU30は、通常の運転時には運転者のアクセルペダル(図示せず)の操作量に応じた開度にスロットル弁14開度を制御するとともに、後述する自動変速機40のシフトアップ操作時には変速ショックを防止するために、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル弁14開度を制御する。
【0013】
機関1の排気ポート8は排気マニホルド16を介して排気通路17に接続されている。
また、図1に40で示したのは機関1の出力軸(図示せず)に接続された自動変速機である。自動変速機40は、トルクコンバータ41と変速機42とを備え、変速機42の出力軸は図示しないディフアレンシャルギヤを介して車両の駆動輪に接続されている。
【0014】
変速機42は遊星歯車列と摩擦要素とを備えた公知の形式のものであり、制御油圧を切換えて摩擦要素(ブレーキ、クラッチ等)の係合状態を切り換えて遊星歯車列の各要素の固定、接続を行うことにより変速操作を行う。
トルクコンバータ41は、機関出力軸に直結されたポンプと、このポンプ吐出流体により駆動されるタービンとを備えた公知の形式のものであり、タービン出力軸(以下コンバータ出力軸)は変速機42の入力軸に直結されている。トルクコンバータ41は、機関出力軸から入力するトルクを増幅してコンバータ出力軸に出力する公知のトルク増幅作用を行なう。また、自動変速機40には、変速機42の出力軸の回転数に応じた周波数のパルス信号を出力する変速機出力軸回転数センサ23と、自動変速機制御油の温度に応じた信号を出力する油温センサ22がそれぞれ設けられている。
【0015】
図1に30で示すのは、機関1の電子制御ユニット(ECU)である。ECU30はROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35、出力ポート36をそれぞれ双方向性バス31で接続した、公知の構成のディジタルコンピュータからなり、機関1の燃料噴射量制御、点火時期制御等の基本制御を行うほか、本実施例では車両の走行状態(スロットル弁開度と走行速度)に応じて自動変速機40の変速動作を制御するとともに、変速機40のシフトアップ操作時に変速ショック防止のためのスロットル弁14開度制御を行なっている。
【0016】
上記目的のため、制御回路30の入力ポート35には、車速センサ24から車両走行速度を表す電圧信号と、油温センサ22から自動変速機制御油温を表す電圧信号とががAD変換器37を介して入力されている他、機関のクランク軸(図示せず)に設けられた回転数センサ21から機関回転数を表すパルス信号と、変速機出力軸回転数センサ23とからのパルス信号がそれぞれ入力されている。
【0017】
また、制御回路30の出力ポート36は、駆動回路38を介して自動変速機40の変速操作を制御する制御弁に接続され、変速操作を制御している他、それぞれ対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁11と点火プラグ、及びスロットル弁アクチュエータ20に接続され、燃料噴射弁11からの燃料噴射と機関の点火時期及びスロットル弁14開度を制御している。
【0018】
次に、図2(A) から図2(C) を用いて、自動変速機のシフトアップ操作について説明する。図2は、自動変速機のシフトアップ操作時の一般的な変速機出力軸トルク(駆動トルク)、コンバータ出力軸回転数、変速制御油圧の変動を示すタイミング図であり、図2(A) はシフトアップ操作時の変速機出力軸トルク(駆動トルク)の変化を示す。また、図2(B) はシフトアップ操作時のコンバータ出力軸の回転数(変速機入力軸回転数)の変化を、図2(C) は自動変速機制御油圧変化をそれぞれ示している。
【0019】
図2(A) から(C) において、例えば、走行中に時点▲1▼でスロットル弁開度と車両走行速度との関係が、シフトアップの条件を満たしたとするとECU30は、時点▲1▼から所定の時間経過後の時点▲2▼でシフトアップ指令信号を出力する。
時点▲2▼で変速指令信号が出力されると、自動変速機の制御油圧回路の制御弁が切換えられて、図2(C) に示すように変速クラッチを制御する切換油圧が上昇を開始する。切換油圧は、変速指令出力後制御弁のリターンスプリングの撓み量に相当する期間(図2(A) から(C) の▲2▼から▲3▼の期間)は殆ど上昇せず、リターンスプリングの撓みが終了して制御弁の切換が完了した時点▲3▼から上昇を始める(図2(C) )。従って、実際に自動変速機の変速操作が開始されるのは図2(A) から(C) に▲3▼で示した時点になる。また、制御油圧回路には急激な油圧変化を防止するためのアキュムレータが装備されているため、切換後ある程度油圧が上昇すると、アキュムレータピストンがスプリングを圧縮して移動を始めるため(図2(C) 、▲5▼)油圧の上昇速度が低下し、変速クラッチの切換油圧は徐々に上昇する。また、アキュムレータピストンがスプリングを一杯に圧縮して限界まで移動するとアキュムレータ作用が停止して油圧は急激に上昇する(図2(C) 、▲7▼)。
【0020】
次に、上記のように切換油圧が変化した場合の変速機出力軸トルク(駆動トルク)の変化について図2(A) を用いて説明する。切換油圧が上昇を開始する前(時点▲3▼以前)は駆動トルクは変速機の低速段側の変速比に応じた値(正確には、機関出力トルク×コンバータトルク増幅比×低速段側変速比)になっている。次いで、時点▲3▼で切換油圧が上昇を開始すると、駆動トルクは一時的に低下して、時点▲4▼から再度上昇し、切換油圧の上昇による変速クラッチの押しつけ力の変化に応じて上昇する(▲4▼から▲6▼)。そして、切換油圧がある値に達すると急激に低下して(▲6▼)、その後は高速段側の変速比に応じた駆動トルク(機関出力トルク×コンバータトルク増幅比×高速段側変速比)になる。
【0021】
すなわち、自動変速機の低速段から高速段へのシフトアップ操作時には、操作開始後、駆動トルクが一時的に低下する期間(▲3▼から▲4▼)と、それに続いて駆動トルクが一時的に上昇する期間(▲4▼から▲6▼)が生じ、これらの期間が経過した後に初めて切り替え後の高速段の変速比に応じた駆動トルクが継続的に得られるようになる。
【0022】
ここで、時点▲3▼から▲4▼の期間は自動変速機中の高速段側のクラッチを徐々に係合させて高速段への変速を行う際に、今まで係合していた低速段側のクラッチが係合解除されるまでの期間であり、この期間は低速段側のクラッチが係合しているため機関回転数は変化しない。また、時点▲4▼から▲6▼の期間は低速段側のクラッチから高速段側のクラッチへの切換が終わってから機関回転数が低下するまでの過渡期間を、時点▲6▼以降は機関回転数の低下が終了して、高速段側の変速比に応じた回転数になった後の期間を示している。
【0023】
上記▲3▼から▲4▼の期間、すなわち一時的に駆動トルクが低下する期間は、高速段側クラッチが係合を開始してから機関回転数変化が現れるまでの期間であり、機関回転数が殆ど変化せずに駆動トルクのみが変化するため、一般にこの期間(現象)はトルク相と称される。
また、上記▲4▼から▲6▼の期間、すなわち一時的に駆動トルクが上昇する期間は、高速段への切換完了後、車両の走行慣性のために機関回転数が切換前の高い回転数から高速段の減速比にに応じた回転数に低下するまでの期間である。このため、この期間(現象)は一般にイナーシャ相と称される。
【0024】
トルク相(時点▲3▼から▲4▼の期間)で駆動トルクが低下する原因は複雑であるが、簡単に言うと、自動変速機中のクラッチの一方を徐々に係合させ、同時にもう一方のクラッチの係合を解除することにより高速段への切換を行う際に、双方のクラッチが伝達するトルクが互い相殺しあってクラッチのすべりにより伝達トルクが消費されるため変速機出力トルク(駆動トルク)が低下する現象が生じると考えられる。トルク相終了時(時点▲4▼)では、駆動トルクは一旦高速段側の変速比に切換後のトルク(イナーシャ相終了後の駆動トルク)まで低下する。
【0025】
また、イナーシャ相(時点▲4▼から▲6▼の期間)で駆動トルクが一旦増大した後で高速段側の変速比に応じた値まで低下するのは以下の原因による。
すなわち、時点▲4▼では動力伝達経路が低速段側から高速段側に切換られると、変速機入力軸は高速段側の動力伝達経路を介して車両駆動系に接続されることになり、低速段側の動力伝達経路を介して車両駆動系に接続されていた時よりも低い回転数で回転しようとする。しかし、この時点では機関自体は低速段側で走行していたときの高い回転数で運転されているため、変速機入力軸の回転(すなわち、コンバータ出力軸の回転)は直ちには低下しない。一方、変速機出力軸は車両駆動系に接続されているため、車速に対応した一定速度で回転を続けようとする。このため、高速段側への切換直後は変速機の入力軸回転数は変速機出力軸回転数に対応した値より高くなっており、この変速機入力軸と出力軸との回転数差は高速段側の変速クラッチのすべりにより吸収される。すなわち、トルク相終了時(時点▲4▼)では、高速段側の変速クラッチのすべりにより駆動トルクは高速段切換後の変速比に対応したトルク(イナーシャ相終了後の駆動トルク)まで低下する。一方、このクラッチのすべりにより車両駆動系から変速機入力軸側には入力軸回転数、すなわち機関回転数を低下させるブレーキトルクが作用することになるが、車両駆動系は逆にこのブレーキトルクの反力をうけるようになり、変速機出力トルク(駆動トルク)が増大する。また、上記ブレーキトルクは切換クラッチのすべりにより発生するため、その大きさは切換油圧(クラッチ押しつけ力)が上昇するにつれて増大する。従って、図2(A) の時点▲4▼から▲6▼の期間では切換油圧の上昇(図2(C) )とともにブレーキトルクが増大し、その反力により駆動トルクが増大する現象が生じる。このイナーシャ相は、上記ブレーキトルクにより、(B) に示すように機関回転数(コンバータ出力軸回転数)が低下して、変速機出力軸と入力軸との回転が同期したとき(時点▲6▼)に終了する。
【0026】
上記のように、自動変速機のシフトアップ操作時にはトルク相による駆動トルクの低下とイナーシャ相による駆動トルクの増大とが連続して起きるため、変速時にトルクショックが生じ、車両の運転感覚が悪化する問題がある。
前述したように、従来シフトアップ操作時に機関出力トルクを増大してトルク相による駆動トルク低下を補償する試みがなされている。しかし、このためには機関出力トルクの増大開始と終了とを正確にトルク相の開始時期と終了時期とに合致させる必要がある。ところが、実際にはトルク相の開始時期、終了時期を正確に判断することは困難であり、しかもトルク相の開始終了時期は製品毎の個体差や経年変化によるばらつきが生じやすく一定しない。このため、従来の方法ではトルク相と機関出力増大とのタイミングが正確に合致せず、逆に変速時のトルクショックを増幅してしまうような場合が生じる。
【0027】
本実施形態では、以下に説明する方法でトルク相の開始、終了時期を実際に検出するとともに、この検出したトルク相開始、終了時期に基づいて機関出力トルク増大操作を行なうことにより、変速機シフトアップ時のトルクショックを防止可能としている。
まず、本実施形態における実際のトルク相の検出操作について説明する。
【0028】
トルク相では駆動トルクが低下するため、例えば自動変速機出力軸(駆動軸)に軸トルクを検出するトルクセンサを設けて軸トルクを監視し、シフトアップ時に軸トルクが低下を開始した点をトルク相開始点とすることも可能である。
しかし、実際にはトルクセンサを設置することは装置のコストアップを招き好ましくない。そこで、本実施形態では機関出力トルクと駆動トルクとの変化率を間接的に検出し、この検出した変化率に基づいてトルク相の開始と終了とを判断するようにしている。
【0029】
図3は、トルク相開始前後の機関出力トルクTeと駆動軸トルクToとの変化を模式的に示す図である。図3において、縦軸はトルクを、横軸は時間をそれぞれ示している。
自動変速機の変速開始前(すなわち、トルク相開始前)のクラッチのすべりがない状態では、機関出力トルクTeと駆動軸トルクToとは釣り合っており、両者の関係は以下の式で表される。
【0030】
Te×A×B=To
ここでAはトルクコンバータの増幅比、Bは変速前(低速段)の変速比である。従って、トルク相開始前では曲線Te×A×Bと曲線Toとの傾き(時間に対する変化率)は一致する。
すなわち、(Te)(1) ×A×B−(To)(1) =0
ここで、(Te)(1) 、(To)(1) はそれぞれTeとToの時間に対する1階微分値を表している。
【0031】
ところが、前述したように、トルク相は変速機クラッチのすべりにより駆動トルクが消費されることにより生じるため、トルク相が開始すると機関出力トルクは低下しないにもかかわらず駆動トルクのみが低下するようになる。このため、トルク相が開始すると図3に模式的に示すように、Toの傾きは曲線Te×A×Bの傾きよりも必ず小さくなる。
【0032】
このため、(Te)(1) ×A×B−(To)(1) >0となった時がトルク相の開始時期であると判定することができる。
また、トルク相終了時には開始時とは逆に、機関出力トルクは増加しないにもかかわらず駆動トルクのみが増加するようになる。
このため、(Te)(1) ×A×B−(To)(1) <0となった時がトルク相の終了時期であると判定することができる。
【0033】
すなわち、
(Te)(1) ×A×B−(To)(1) =C ……(1)
とおけば、シフトアップ時に機関出力トルクの変化率(Te)(1) と、駆動軸トルク変化率(To)(1) とを検出し、(1)式により算出されるCの値を監視するようにすれば、Cの値がC=0からC>0に変化した時がトルク相の開始時期(図2、時点▲3▼)、C>0からC<0に変化した時がトルク相の終了時期(図2、時点▲4▼)と判定することができる。
【0034】
機関出力トルクと駆動軸トルクとは、それぞれにトルクセンサを設置して直接検出することも可能であるが、前述したようにトルクセンサを用いることは実際的でない。また、機関出力トルクは機関の運転状態(例えばスロットル弁14開度と機関回転数)に基づいて容易に算出することができる。そこで、本実施形態では、駆動軸トルク変化率についても直接検出することはせずに、これと等価な物理量を検出し、この物理量から間接的に求めることとしている。
【0035】
今、車両の走行抵抗を駆動軸トルクに換算した値(走行抵抗トルク)をTr、駆動軸回転数をWとすると、回転数Wの変化率(W)(1) は次の式で表される。
K2×(W)(1) =To−Tr ……(2)
すなわち、駆動軸トルクToより走行抵抗トルクTrが大きければ駆動軸回転数Wは低下(すなわち車両は減速)し、逆にToよりTrが小さければWは上昇(すなわち車両は加速)することになる。
【0036】
ここで、(2)式の両辺を時間で微分すると、
K2×(W)(2) =(To)(1) −(Tr)(1)
となる。((W)(2) はWの2階時間微分、(Tr)(1) はTrの1階時間微分である。)
いま、シフトアップ操作前後の短い時間では走行抵抗Trはほぼ一定と考えられるので、(Tr)(1) =0と置くことができる。このため、上式は
K2×(W)(2) =(To)(1) ……(3)、
となる。
【0037】
(3)式を用いて前述の(1)のトルク相判定式を変形すると、
(Te)(1) ×A×B−K2×(W)(2) =Cとなり、
更に、
(Te)(1) −K3×(W)(2) =D ……(4)
を得る。
【0038】
すなわち、前述の(1)式のCの代わりに上記(4)式で駆動軸回転数Wの2階時間微分値と機関出力トルクの1階時間微分値とから算出される値Dの正負を判別することにより、トルク相の開始、終了時期を検出することができる。
本実施形態では、機関出力トルクTeの値は、予めスロットル弁開度THと機関回転数NEとを用いた2次元数値マップの形でECU30のROM32に格納されている。ECU30は、例えば一定時間毎にスロットル弁14のアクチュエータ20のステッパモータのステップ数に基づいてスロットル弁14開度THを算出し、また、回転数センサ21の出力パルスに基づいて機関回転数NEを算出するとともに、THとNEとの値から上記数値マップに基づいて機関出力トルクTeを算出する。出力トルクTeの変化率(Te)(1) は、時間Δtの間のTeの変化量ΔTeを算出することにより、(Te)(1) =ΔTe/Δtとして求めることができる。
【0039】
また、ECU30は回転数センサ23出力に基づいて自動変速機出力軸(駆動軸)回転数Wを算出するとともに、時間Δtの間のWの変化量ΔWを算出する。そして、ΔWを用いて、(W)(1) を、(W)(1) =ΔW/Δtとして算出し、更に一定時間Δtの間の(W)(1) の変化量Δ(W)(1) から(W)(2) の値を、(W)(2) =Δ(W)(1) /Δt、として算出する。
【0040】
ECU30は、更に自動変速シフトアップ操作時に上記により求めた(Te)(1) と(W)(2) とに基づいて(4)式から判定値Dを計算し、Dの値に基づいてトルク相の開始、終了を判定する。
なお、前述の説明では(4)式により算出されるDの値が正になった時をトルク相の開始時期としていたが、実際の運転ではトルクコンバータによる駆動軸トルク変動のため、トルク相開始前にD>0となる場合がある。このため、本実施形態では、トルクコンバータによる駆動軸トルク変動を考慮して、Dが所定値Eより大きくなった時に(Eは正の値)トルク相が開始したと判定するようにしている。
【0041】
次に、上記のトルク相の実際の開始、終了時期の検出に基づく変速ショック防止操作について説明する。
図4は、本実施形態におけるトルク相での変速ショック防止操作を示すタイミング図である。図4において、(A)は変速指令のタイミングを、(B)は駆動軸トルクの変化を、(C) は本実施形態のスロットル弁開度変化を、(D)は機関出力トルクの変化を示している。
【0042】
本実施形態では、ECU30は運転中シフトアップ操作が行なわれる毎にトルク相の開始時期(図4、▲3▼)を前述した方法で検出し、学習値として記憶する。そして、運転中に、シフトアップ変速指令を入力すると、記憶した学習値に基づいて変速指令入力後の実際にトルク相が生じる時期(図4、▲3▼)を予測する。
また、ECU30は現在の運転状態に基づいて、スロットル弁14のアクチュエータの遅れ時間(スロットル弁開度変更信号を出力してから実際にスロットル弁開度が変化するまでの時間)とスロットル弁開度が変化してから実際に機関の出力トルクが増大するのに必要な時間との合計(トルク変化所要時間)を算出する。
【0043】
更に、ECU30はトルク相開始予測時期より上記トルク変化所要時間だけ前に、予めスロットル弁開度を所定量増大する予測制御を開始する(図4、T1 点)。すなわち、ECU30は、予測されたトルク相開始時期に合致した時期に機関出力が増大を開始するようにトルク相開始時期より以前にスロットル弁を所定開度開弁するようにしている。なお、この予測制御におけるスロットル弁開度は、トルク相によるトルク低下量を補償するだけの開度より小さく設定される。
【0044】
ECU30は、予測制御開始後所定時間内に実際にトルク相が開始した場合にはスロットル弁開度をトルク低下量を補償するのに充分な量にまで開弁する開度増大操作を行なう(図4、T2 点)。
そして、ECU30はトルク相の終了(図4、▲4▼)を検出するとスロットル弁開度を低下させて機関出力トルクを低下させる。
【0045】
このように、スロットル弁開度を制御することにより、図4(D)に示すように実際の機関出力トルクは、トルク相の期間に正確に合致して増大するようになり、この結果、従来図4(B)点線に示すようにトルク相による駆動トルク変化が生じていたの似対して、本実施形態では駆動トルクは、図4(B)に示すようにトルク相期間にもほぼ一定に維持されるようになり、トルク相における変速ショックが防止される。
【0046】
なお、予測制御開始後、上記所定時間内にトルク相が開始しない場合には、予測が不正確であったためこのまま予測制御によるスロットル弁開度を維持していると、逆に駆動トルクの変動を生じる可能性がある。このため、本実施形態では所定時間が経過してもトルク相が開始しない場合には、予測制御を中止してスロットル弁開度を一旦予測制御開始前の状態に戻して待機し、その後実際にトルク相が検出されると同時にスロットル弁開度を増大する操作を行なうようにしている。
【0047】
図5は、上記のトルク相における変速ショック防止操作を具体的に説明するフローチャートである。本操作はECU30により実行される。
図5、ステップ501はシフトアップ指令入力の待機操作を示す。ステップ503以下の操作は自動変速機のシフトアップ指令を入力したときにのみ開始される。
【0048】
ステップ501でシフトアップ指令を入力すると、ECU30は次に、予め記憶したトルク相開始時期(シフトアップ指令入力後トルク相が開始するまでの時間)の学習値TLを算出する。本実施形態では、トルク相開始時期の学習値はシフトアップ変速段(シフトアップの前後の変速段)、自動変速機の制御油圧をパラメータとする数値マップの形で記憶されており、トルク相開始時期の実測値に応じて更新されている。図6は、上記パラメータとトルク相開始時期との一般的な関係を示すずである。図6に示すように、開始時期は油圧が高い程、また高速側変速段でのシフトアップ操作であるほど短くなる傾向を示す。
【0049】
自動変速機の制御油圧は圧力センサを設けて直接検出することも可能である。しかし、自動変速機の制御油圧はトルクコンバータ入力軸により駆動される油圧ポンプにより供給されており、制御油圧はトルクコンバータ入力軸回転数の関数として表される。従って、制御油圧はトルクコンバータ入力軸回転数から算出するようにすることもできる。また、自動変速機には上記油圧ポンプから供給される油圧を、運転条件(機関回転数、車速、スロットル弁開度等)に応じて制御するリニアソレノイドバルブ等の油圧制御弁を有するものがあるが、この場合には制御油圧はトルクコンバータ入力軸回転数と制御弁開度(例えばリニアソレノイドバルブ駆動信号のデューティ比)との関数として求めることができる。
【0050】
ステップ503でトルク相開始時期の学習値が求められると、次にステップ505ではスロットル弁開度の予測制御開始時期(シフトアップ指令入力後、予測制御を開始するまでの時間)TPLが算出される。前述したようにTPLはトルク相が開始すると同時に機関出力トルクが増大を始めるようにするために必要とされるスロットル弁開度変更指令出力時期である。予測制御開始時期TPLは、トルク相開始時期学習値TLに自動変速機制御油温補正係数LTKを乗じた値から、前述のトルク変化所要時間(スロットル弁開度変更指令出力後、実際に機関出力トルクが変化を開始するまでの時間)TRQを減じた値として算出される。
【0051】
すなわち、TPL=TL×LTK−TRQとなる。
図7は油温補正係数LTKの油温に対する変化を示す図である。自動変速機の変速機構作動速度は制御油の粘度が高い程低くなり、シフトアップ指令入力後のトルク相開始までの時間も制御油粘度が高い程増大する。このため、図7に示すように補正係数LTKの値は制御油温が充分に高い温度範囲(例えば70℃以上)では一定値(1.0)となるが、それ以下の領域では温度が低いほど大きな値に設定される。本実施形態では、LTKと油温との図7に示す関係はECU30のROM32に予め格納されており、ECU30は油温センサ22で検出した制御油温度に基づいて、図7の関係から補正係数LTKを決定する。
【0052】
また、トルク変化所要時間TRQは、機関回転数NEとスロットル弁開度THとの関数として求められる。トルク変化所要時間TRQは、スロットル弁開度変更指令後、アクチュエータ20がスロットル弁開度を変化させるのに要する動作遅れ時間と、スロットル弁開度が変化してから実際の機関出力トルクが変化するまでに要する時間との合計時間である。ここで、アクチュエータの動作遅れ時間はほぼ一定と見なせるのに対して、スロットル弁開度変化から実際に機関出力トルクが変化するまでの時間はスロットル弁開度変化前の吸気圧力(スロットル弁下流側吸気管圧力)と開度変化後の吸気圧力とによって定まる。また、開度変化後の吸気圧力は、ほぼ一定の範囲になるためスロットル弁開度変化から機関出力トルクが変化するまでの時間は、変化前の吸気圧力の関数として近似することができる。更に、スロットル弁開度変化前の吸気圧力はスロットル弁開度THと機関回転数NEとにより定まる。
【0053】
そこで、本実施形態では、スロットル弁作動の上記遅れ時間とスロットル弁開度変化後実際に機関出力トルクが変化するまでに要する時間との合計(トルク変化所要時間)と、機関回転数NEと変化前のスロットル弁開度THとの関係を予め実験により求めておき、ECU30のROM32に格納してある。ECU30は、シフトアップ前の機関回転数NEとスロットル弁開度THとに基づいて上記関係からトルク変化所要時間TRQを算出する。図8は、機関回転数NE、スロットル弁開度THとトルク変化所要時間TRQとの一般的な関係を示す図である。図8に示すように、トルク変化所要時間TRQは、回転数NEが同一であれば変化前のスロットル弁開度THが大きいほど、またスロットル弁開度THが同一であれば回転数NEが低いほど大きくなる。
【0054】
上記により、予測制御開始時期TPLを算出後ステップ507、509ではシフトアップ指令入力後、算出した予測制御開始時期TPLまでの時間が経過すると予測制御が開始される。
予測制御においては、スロットル弁14開度を予測制御開度THPにするようにスロットル弁開度変更指令がスロットル弁14のアクチュエータ20に出力される。スロットル弁の予測制御開度THPは、後述するトルク増大のための設定開度THIに所定係数(例えば0.25)を乗じた開度に設定される。これにより、ステップ503、505で算出したトルク相開始時期の予測が正確であれば、トルク相が開始される時期には機関出力トルクが予測開度THPに応じた値に増大し、トルク相開始時期と機関出力増大の開始時期とが合致する。
【0055】
次いで、ステップ511では、予測制御の中止時期TPSが算出される。上述したように、本操作ではトルク相の開始時期を学習値に基づいて予測し、この開始時期に機関出力の増大が開始されるようにスロットル弁開度の予測制御を行なっている。このため、実際のトルク相が予測した開始時期になっても開始されない場合には、トルク相による駆動トルクの低下が生じていないにもかかわらず予測制御により機関出力トルクが増大してしまい、逆に駆動トルクの変動を生じる可能性がある。そこで、本実施形態では予測制御を開始してから所定の中止時間TPSが経過しても実際のトルク相の開始が検出されない場合には、スロットル弁開度の予測制御を中止して、スロットル弁開度を予測制御開始前の開度に復帰させる操作を行なう。上記中止時間はトルク相が開始しなかった場合の予測制御による駆動トルク増大時間が予め定めた時間以内になるように設定される。また、前述したようにスロットル弁開度を復帰させてから機関出力トルクが元の値に戻るまでには、図8で説明したトルク変化所要時間TRQを必要とする。そこで、ステップ511では再度図8を用いて予測制御中止から機関出力トルクが元の値に復帰するまでの時間TRQを算出し、TRQが短い場合には予測制御中止時間TPSを長く設定し、TRQが長い場合には予測制御中止時間を短く設定する。すなわち、TRQが短い場合には、実際のトルク相開始時期が予測開始時期より遅れた場合に実際のトルク相が開始されるまで比較的長い時間予測制御を継続したままで待っても、トルク変動の影響が大きくなる前に機関出力トルクを低下させることができる。このため、TRQが短いほど予測制御中止時間は長く設定される。
【0056】
次に、ステップ511から521では、上記予測制御開始中止時間TPSが経過するまでに(ステップ513)実際のトルク相が検出されたか否か(ステップ517)を判定し、時間TPS内にトルク相が検出されなかった場合にはステップ515で予測制御が中止され、スロットル弁開度THは予測制御開始前の開度に戻される。
【0057】
また、上記中止時間TPSが経過する前にトルク相が検出(ステップ517)された場合には、ステップ519を実行し、検出された実際のトルク相開始時期を用いてステップ503で用いた開始時期学習値TLを置き換える学習操作を行なう。このように、実際に検出した値を用いてトルク相開始時期の学習を行なうことにより、個体差によるばらつきや経年変化によって実際のトルク相開始時期が変化した場合にも、正確にトルク相開始時期を予測することが可能となる。なお、前述したように、トルク相開始時期は制御油の油温により大きく変化するため、ステップ519の学習操作は油温が充分に高く(例えば80℃以上、図7参照)トルク相開始時期が油温の影響を受けない温度領域でのみ実施する。
【0058】
ステップ519の学習操作実行後、ステップ521ではスロットル弁14開度を更にTHIまで増大し、トルク相による駆動トルク低下を補償可能となるまで機関出力トルクを増大する。
ステップ521のスロットル弁開度増大操作における増大後のスロットル弁開度THIは、以下のように設定される。
【0059】
すなわち、トルク相における駆動トルクの低下幅DToは、図2の時点▲3▼と▲4▼における駆動トルクの差に等しい。また、時点▲3▼における駆動トルクTo3 は機関出力トルクTeを用いて、To3 =Te3 ×(変速前の変速比)として表される。また、時点▲4▼における駆動To4 は、前述したようにイナーシャ相終了後のトルク、すなわち変速後のトルクに等しい。このためTO4 =Te4 ×(変速後の変速比)として表される(Te3 、Te4 はそれぞれ変速前後における機関出力トルク)。従って、トルク相における駆動トルク低下幅DToを補償する、すなわちDTo=0とするために必要な変速後の機関出力トルクTe4 は、DTo=To3 −To4 =0より、Te3 ×(変速前の変速比)−Te4 ×(変速後の変速比)=0となるため、Te4 =Te3 ×(変速前の変速比)/(変速後の変速比)となる。従って、駆動トルク低下幅DToを0にするために必要とされる変速後の機関出力トルクTe4 は、
Te4 =Te3 ×(S3 /S4 )
として算出される(Te3 はシフトアップ操作開始前の機関出力トルク、S3 、S4 は、それぞれ変速前と変速後の変速比である)。
【0060】
また、機関出力トルクTeは機関回転数NEとスロットル弁開度THとにより定まるため、変速前の機関回転数NEとスロットル弁開度THとが定まれば、回転数NEを一定に維持したままで出力トルクをTe4 まで増大するために必要なスロットル弁開度THIを算出することができる。
本実施形態では、予め機関回転数NE、スロットル弁開度THと機関出力トルクTeとの関係を求めてあり、ECU30のROM32に格納してある。ステップ521では、この関係に基づいてトルク増大のために必要なスロットル弁開度THIを算出し、スロットル弁開度をTHIに増大する操作を行なう。
【0061】
図9は、NE、THとTeとの一般的な関係を示す図である。本実施形態では、まず変速前の機関回転数NE3 とスロットル弁開度TH3 とから変速前における機関出力トルクTe3 を算出し、次いで駆動トルク低下を防止するために必要な変速後の機関出力トルクTe4 を、Te4 =Te3 ×(S3 /S4 )として算出する。Te4 を得るために必要なスロットル弁開度THIは図9の関係から、NE3 とTe4 とに基づいて求められる。
【0062】
なお、ステップ513、515で予測制御中止時間内にトルク相が開始しなかったために予測制御が中止された場合も、ステップ517で実際のトルク相が検出されると、ステップ519のトルク相開始時期の学習操作とステップ521のスロットル弁開度のTHIへの増大制御とが実施される。
次に、ステップ521ではトルク相の終了が検出されると、ステップ525では予め定めた値だけスロットル弁開度が低減され、トルク相における変速ショック防止操作は終了する。
【0063】
ステップ521でのトルク相終了時期の判定は、前述の(4)式で判定値Dの値がD<0になったか否かにより行なわれる。
【0064】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、自動変速機のシフトアップ操作時に実際にトルク相の発生を検出し、それに応じて機関出力トルクを増大させるようにしたことにより、正確にトルク相の期間に合致した機関出力増大を行なうことが可能となり、トルク相による変速ショックの発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を自動車用内燃機関に適用した場合の実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】従来のシフトアップ時の駆動軸トルク変動を説明するタイミング図である。
【図3】トルク相の検出原理を説明する図である。
【図4】図1の実施形態の変速ショック防止操作を説明するタイミング図である。
【図5】図示の実施形態の変速ショック防止操作を具体的に説明するフローチャートである。
【図6】図5の操作に用いる定数の設定を説明する図である。
【図7】図5の操作に用いる定数の設定を説明する図である。
【図8】図5の操作に用いる定数の設定を説明する図である。
【図9】図5の操作に用いる定数の設定を説明する図である。
【符号の説明】
1…内燃機関
12…吸気通路
14…スロットル弁
20…アクチュエータ
30…電子制御ユニット(ECU)
40…自動変速機
Claims (2)
- 自動変速機を有する内燃機関のスロットル制御装置であって、
運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル弁開度を変更可能なスロットル弁駆動手段と、
自動変速機のシフトアップ操作開始後に一時的に自動変速機出力トルクが低下するトルク相の発生を検出するトルク相検出手段と、
前記検出されたトルク相の開始時期と終了時期とに基づいて、トルク相が生じている期間に合致して機関出力トルクが増大するように前記スロットル弁駆動手段によるスロットル弁開度変更操作を制御する制御手段と、
を備え、
前記トルク相検出手段は、機関出力トルク変化率と自動変速機出力トルク変化率とに基づいてトルク相の実際の開始時期と終了時期とを検出することを特徴とする内燃機関のスロットル制御装置。 - 前記制御手段は、前記トルク相検出手段の検出したトルク相の実際の開始時期を学習し、該学習結果に基づいてトルク相開始時期を予測するとともに、予測されたトルク相開始時期に合致して機関出力トルクが増大を開始するように前記スロットル弁駆動手段によるスロットル弁開度変更操作を制御する、請求項1に記載の内燃機関のスロットル制御装置。
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