JP3796929B2 - アルミドロス残灰の処理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、アルミニウム(以下「アルミ」と略称する)又はアルミ合金からなるアルミ原材料を溶解するアルミ溶解工程で不可避的に発生するアルミドロスより金属状のアルミ又はアルミ合金を回収した後のアルミドロス残灰を、簡単な方法で処理して環境上又は利用上問題となる有害不純物を除去し、産業上有用資源化するのに容易なアルミナ組成物とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミ又はアルミ合金からなるアルミ製品は、その耐蝕性、軽量性、導電性、伝熱性等において優れた特性を有し、このために車両、船舶、機械、電気、建築、日用品、飲料用缶等の極めて多くの分野で広範囲に利用されており、また、その形態も鋳塊品、圧延品、押出品、鍛造品等の種々の製品として極めて多岐に及んでいる。
【0003】
そして、このようなアルミ製品の製造は、一般的には、アルミ新地金、アルミ母合金、工場内で生じる製品のアルミ切れ端(工場内リターン材)、二次アルミ塊、二次アルミ母合金塊、回収アルミスクラップ等のアルミ原材料を溶解して基本的な形態のスラブ、ビレット、アルミ塊、アルミ合金塊等のアルミ鋳塊品を製造し、次いで、このアルミ鋳塊品に圧延、押出、鍛造等の加工を施して所望の形状に形成し、このうち多くは、表面の清浄化や、表面に耐蝕性や意匠性を付与する等の目的で、陽極酸化処理等の表面処理を施し、所望のアルミ製品とされている。
【0004】
このため、アルミ原材料からアルミ鋳塊品を製造するにはこのアルミ原材料を溶解するアルミ溶解工程が不可欠であり、アルミ又はアルミ合金が元来酸化され易い金属であることから、このアルミ溶解工程で溶湯表面が酸化される。そこで、この溶湯表面の酸化を防止するために、通常フラックスが使用されているが、この溶湯表面の酸化を完全に防止することは困難であり、溶湯表面にアルミ酸化物を主成分とする、いわゆるアルミドロスが不可避的に発生する。
【0005】
そして、このアルミドロスについては、通常それが80重量%にも及ぶアルミを含んでいるので、溶湯表面上から掻き出されて固化したアルミドロスを再度溶解処理し、回転羽根式等のしぼり機を用いて高温及び/又は加圧下に物理的に溶融金属アルミを絞り出して回収し、また、必要によりこの操作を複数回繰り返して溶融金属アルミを可及的に回収している。
【0006】
このようにしてアルミドロスから溶融金属アルミを可及的に回収した後の残滓、すなわちアルミドロス残灰は、主としてアルミ酸化物からなるものであるが、依然として金属アルミ(合金も含む)を含み、また、水と反応してアンモニアや塩化水素を発生し、悪臭等の公害の原因になる窒化アルミ(AlN)やフラックス由来の塩素含有成分を含んでいる。
【0007】
このため、このアルミドロス残灰については、これまでに、無公害化処理したり、あるいは、アルミナ源として再利用することが種々検討されている。
しかしながら、このアルミドロス残灰に含まれている不純物の窒化アルミは、通常5〜15重量%にも達し、放置ないし保管中でも空気中の水分と反応してアンモニアを発生し、安全性や環境上の問題を引き起こすが、中性ないしは還元性雰囲気中では、高温でもかなり安定であり、例えば化学工業原料、窯業原料、金属製精錬用造滓剤等としての有用資源化の障害となっている。
【0008】
このような不純物の窒化アルミを除去する方法としては、古くからか焼法や水熱処理法が知られている。
そして、か焼法では、アルミドロス残灰を赤熱以上に加熱して窒化アルミを酸化分解しているが、90重量%以上を分解して生成物中の窒化アルミの量を1重量%以下にするには、1300℃にも及ぶ高温が必要になり、エネルギーコスト等の問題がある。
【0009】
また、古典的な水熱処理法では、アルミドロス残灰に多量の水、時には海水を加え、開放容器中で攪拌下に加熱して
AlN + 3H2 O → Al(OH)3 + NH3
の反応を行わせているが、処理に長時間を必要とし、反応槽の設備負担が大きくなり、しかも、なお窒化アルミの除去効率が十分ではなく、水熱処理過程でのアンモニアの発生が避けられないという問題がある。
【0010】
近年、無公害アンモニア燃焼装置等のアンモニア処理技術が発達し、このような技術を用いて発生するアンモニアを無公害化処理することも考えられるが、水熱反応が長時間を要するため、フード等によるアンモニアの捕集ではアンモニア濃度が希薄すぎて経済的な操業が困難であり、実用化には至っていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、アルミ製品の製造工程で発生する処理の困難なアルミドロス残灰を、環境上の問題がなく、しかも、効率的かつ経済的に有用資源化するための方法について鋭意検討した結果、従来の長時間かつ非効率的で、しかも、アンモニア対策の困難な水熱処理法において、少量の水酸化カルシウムを存在させることにより、極めて短時間で窒化アルミを分解することができ、その結果、発生するアンモニアの回収が容易になることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
従って、本発明の目的は、アルミドロス残灰から資源的及び設備的に効率良く有害不純物を除去し、産業上有用なアルミナ組成物を得ることができるアルミドロス残灰の処理方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ原材料を溶解するアルミ溶解工程で発生するアルミドロスより金属状のアルミニウム又はアルミニウム合金を回収した後のアルミドロス残灰を、水酸化カルシウムの存在下に水熱処理するアルミドロス残灰の処理方法であり、この水熱処理の際にアルミドロス残灰及び水酸化カルシウムを水に懸濁させてアルミドロス残灰濃度50〜250g/リットル及び水酸化カルシウム濃度2〜10g/リットルのスラリーとすることを特徴とするアルミドロス残灰の処理方法である。
【0014】
本発明において処理の対象となるアルミドロス残灰は、それがアルミやアルミ合金からなるアルミ原材料を溶解するアルミ溶解工程で副生するものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、アルミ新地金、アルミ母合金、工場内で生じる製品のアルミ切れ端(工場内リターン材)、二次アルミ塊、二次アルミ母合金塊、自動車部品やアルミ缶等の回収アルミスクラップ等のアルミ原材料を溶解して基本的な形態のスラブ、ビレット、アルミ塊、アルミ合金塊等のアルミ鋳塊品を製造する際のアルミ溶解工程で副生するアルミドロスから得られるアルミドロス残灰である。このようなアルミドロス残灰の組成は、概ね、金属アルミ8〜15重量%、酸化アルミ(Al2 O3 )50〜60重量%、窒化アルミ(AlN)5〜15重量%、鉄(Fe)0.5〜2重量%、珪素(Si)0.5〜10重量%、マグネシウム(Mg)0〜6重量%、アルカリ(Na+K)1.5〜3重量%、カルシウム(Ca)0〜1重量%、塩素(Cl)1〜6重量%、弗素(F)0.5〜2重量%等である。
【0015】
本発明においては、上記アルミドロス残灰を水酸化カルシウムの存在下に水熱処理する。
この水熱処理の際にアルミドロス残灰を水に懸濁させて形成されるスラリーにおいて、そのアルミドロス残灰の濃度は、通常の回転羽根による攪拌で均一な懸濁液が形成できる程度であるのがよく、通常50〜250g/リットル、好ましくは100〜200g/リットルの範囲がよい。アルミドロス残灰濃度が250g/リットルを超えて濃くなると、水熱処理槽の底部に沈殿物が沈降する等、均一な攪拌が難しくなり、また、50g/リットルより薄くなると、設備効率が低下して経済的でなくなる。
【0016】
また、本発明方法で用いる水酸化カルシウムとしては、特に制限はなく、通常の工業用水酸化カルシウムを用いることができる。そして、その使用量は、原則として水熱処理中の液相が充分にCa(OH)2 ・アルカリ性(例えばpH11.5以上)であることが必要であり、塩化カルシウム、アルミン酸カルシウム、珪酸カルシウム、アルミノ珪酸カルシウム等の生成による消費や、生成物による懸濁消石灰粒の溶解妨害等を勘案すると、通常スラリー中への水酸化カルシウム添加量が2〜10g/リットル、好ましくは3〜8g/リットルとするのがよい。水酸化カルシウム添加量が2g/リットルより少ないと、窒化アルミの分解促進効果が少なく、処理に長時間を要し、また、10g/リットルを超えて使用しても、窒化アルミの分解促進効果は飽和し、いたずらに生成物のアルミナ含有量(すなわち、アルミナ純度)を低下させるだけである。
【0017】
水熱処理の方法については、特に制限はなく、バッチ式であっても、また、複数の水熱処理槽を直列に接続して行う連続式であってもよいが、熱エネルギーの放散やアンモニア回収操作の点で連続式で行うのが便利である。また、加熱の方法についても、電熱式や蒸気による間接加熱法、あるいは、生蒸気吹込、高温空気吹込等の直接加熱法、更にはこれらの方法の組み合わせ等、任意の方法を採用することができる。
【0018】
水熱処理に用いるスラリーを調製する方法については、特に制限はなく、単純にアルミドロス残灰と、水酸化カルシウムと、水とを所定の割合で水熱処理槽に装入し、この水熱処理槽内で攪拌してスラリー化してもよく、また、アルミドロス残灰と、水酸化カルシウムと、水とを予め混合してスラリー化してから水熱処理槽内に装入してもよく、また、アルミドロス残灰と水酸化カルシウムとをそれぞれ個別に水と混合してスラリー化してから、水熱処理槽内で若しくは水熱処理槽に装入する前に、両者を混合してもよい。
【0019】
特に、水酸化カルシウムについては、均一な混合及び反応を達成するために、好ましくは100〜200g/リットルの濃度の石灰乳として用いるのがよく、また、添加方法についても、バッチ式であれば、水熱処理初期と所定時間経過後等、処理時間を考慮して複数回に分けて添加してもよく、また、連続式であれば、直列に接続された最初の水熱処理槽を含めて各水熱処理槽の全部若しくはその幾つかに分けて添加してもよい。
【0020】
この水熱処理の処理条件については、処理温度が通常80〜100℃、好ましくは85〜95℃であり、処理時間若しくは真滞留時間(空気吹込の場合の容積減少を考慮した真の滞留時間)については、アルミドロス残灰中に含まれる窒化アルミの含有量やその存在状態、更には所望の窒化アルミの分解率や設備コスト等を勘案して決定すればよいが、バッチ式で通常2〜6時間程度、連続式で真滞留時間3〜10時間程度である。
【0021】
更に、本発明の方法においては、その水熱処理中に、窒化アルミの分解によりアンモニアを発生し、また、金属アルミニウムの反応により水素が発生する。このため、本発明方法においては、水熱処理中、水熱処理槽の底部から空気を吹込、生成するアンモニアや水素をこの空気と同伴させ、水熱処理槽の上部から回収し、燃焼等の通常の排ガス処理方法により処理する。
【0022】
この水熱処理中の空気吹込量については、吹き込まれた空気中に同伴されるアンモニアや水素の濃度が乾燥気体換算でその爆発限界以内、すなわちアンモニアについては16体積%以下及び水素については4体積%以下である必要があり、好ましくはアンモニア濃度が4〜6体積%となる範囲であるのがよく、これによって水熱処理中に生成したアンモニアを効率良く回収できると共に、水熱処理後の液相中に含まれるアンモニアを容易に0.1g/リットル以下の濃度にまで低減することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図1に示すプロセスフローチャートに基づいて、本発明の好適な実施の形態の一例を説明する。
【0024】
図1に示すように、アルミドロス残灰と、消石灰と、水とが所定の割合で所定の方法でそれぞれ水熱処理槽に装入され、攪拌下に所定の温度に加熱され、アルミドロス残灰がスラリーの状態で水熱処理される。
この水熱処理槽には、その底部から所定の速度で空気が導入され、その上部からアンモニアや水素を同伴した空気を回収し、この回収した排ガスは燃焼処理され、更に、この燃焼処理した際の排熱は水熱処理槽の加熱のために利用される。
【0025】
このようにして水熱処理が終了した後、水熱処理槽から抜き出されたスラリーは、例えば加圧式濾過装置等の適当な固液分離手段で固液分離され、回収された固体(すなわち、アルミナ組成物)は洗浄水で洗浄され、乾燥されて製品のアルミナ組成物となり、また、濾液についてはアンモニア回収率を向上させ、また、省エネルギーを達成するために、アルミドロス残灰の分散媒として再び水熱処理槽に循環させて使用される。ここで、固液分離された直後のアルミナ組成物は、通常20〜50重量%の液相分を同伴しているが、このアルミナ組成物を洗浄したのちの洗浄廃液については、水熱処理分散媒中の可溶性不純物(例えば、アルミドロス残灰由来のアルカリ塩類等)の蓄積を防止するため、そのまま系外に排出して廃液処理される。
【0026】
なお、この固液分離に際して、予めスラリーを沈降処理し、その上澄み液を水熱処理槽に循環させ、濃密部については塩酸等により微酸性、例えばpH6程度に調整した後、濾過して洗浄してもよく、このような方法を採用することにより、アルミナ組成物中の可溶性カルシウム化合物を可及的に除去することができ、アルミナ組成物のアルミナ含有量(アルミナ純度)をより一層高くすることができる。また、空気に同伴させて回収したアンモニアについては、多量の水分(水蒸気)を随伴しているが、アンモニア水その他のアンモニア源として有用資源化することもできる。
【0027】
本発明によれば、従来法とは異なり、アンモニアの99重量%以上を効率的に回収して環境上の問題を解決しつつ、従来法に比べて極めて短時間(通常1/20〜1/60程度)にアルミドロス残灰中に含まれるその有用資源化に有害な不純物を除去することができる。例えば、本発明においては、窒化アルミ90重量%以上、アルカリ金属90重量%以上、並びに、塩素及び弗素85重量%以上が除去され、無水物換算で窒化アルミ1重量%以下及びアルミナ75重量%以上のアルミナ組成物が得られる。
【0028】
本発明により得られた水熱処理後の生成物中に含まれるアルミ成分は、そのほとんどが水酸化物の形で存在し、反応性がよくてそのまま化学的に有用資源化することができるが、加熱して水分を除去し、アルミナとして得ることもできる。加熱して水分を除去する場合には、原則として窒化アルミの分解除去は必要ないので、従来の窒化アルミ分解のための赤熱以上1300℃までの高温か焼の必要はなく、400〜500℃での焙焼で充分である。そして、この400〜500℃での焙焼の際には、アルカリ元素のほとんどが除去されているので、比較的低温の焙焼と相俟って、クリンカーの発生や耐火炉材の侵蝕が可及的に低減し、極めて安全に操業できるほか、水分の放出の際に残留した窒化アルミが分解されてアルミナ純度がより向上する傾向がある。
【0029】
【実施例】
以下、試験例及び実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
【0030】
試験例1
試料として金属状アルミニウム(Al)6.9重量%、窒化アルミ(AlN)14.9重量%、アルミナ(Al2 O3 )51.8重量%、シリカ(SiO2 )1.5重量%、CaO:0.4重量%、Na2 O:1.3重量%、K2 O:0.6重量%、及びF:1.7重量%を含むアルミドロス残灰を用いた。
【0031】
このアルミドロス残灰200gに水800gを加えてスラリー状態とし、▲1▼水酸化カルシウム8gを添加して500ml/分の速度で空気を吹き込みながら、▲2▼水酸化カルシウム4gを添加して500ml/分の速度で空気を吹き込みながら、▲3▼水酸化カルシウムの添加無しで攪拌のみの方法で、それぞれ95℃でプロペラ攪拌しながら水熱処理し、水熱処理時間と窒化アルミ分解率との関係を調べた。結果を図2に示す。
【0032】
試験例2
試料として試験例1と同じアルミドロス残灰を用い、このアルミドロス残灰200gに水800gを加えてスラリー状態とし、更に水酸化カルシウムの添加量をそれぞれ0.8g、1.6g、3.0g、5.6g、6.7g、及び10gの割合で添加し、500ml/分の速度で空気を吹き込みながら95℃でプロペラ攪拌下に窒化アルミ分解率94重量%となるまで水熱処理し、その際の所要時間を測定した。 上記試験例1の結果と合わせて、結果を図3に示す。
【0033】
図2及び図3に示す結果から明らかなように、窒化アルミ分解率が94重量%に達するまでの水熱処理の所要時間は、水酸化カルシウム無添加攪拌のみの場合に24時間であるのに対し、水酸化カルシウム4gを添加した場合には6時間とほぼ4倍の分解速度が観察され、また、水酸化カルシウム8gを添加した場合には約2時間とほぼ11倍の分解速度が観察され、更に、水酸化カルシウム10gを添加した場合には1.6時間であった。
【0034】
実施例1
アルミ合金塊製造の際に得られたアルミドロス残灰〔組成(105℃乾燥物):金属状アルミニウム(Al)13.3重量%、窒化アルミ(AlN)12.5重量%、アルミナ(Al2 O3 )52.4重量%、Fe:0.93重量%、Mg:5.60重量%、Si:1.59重量%、Na:0.67重量%、K:0.71重量%、Ca:0.78重量%、Cl:4.90重量%、及びF:1.60重量%〕750g/時、Ca(OH)2 100g/リットルの石灰乳0.3リットル/時、及び水約6.9リットル/時からなるスラリーを7.5リットル/時の速度で、容量40リットル及び溶液容量30リットルで、回転羽根攪拌装置を備えた外部電熱式の水熱処理槽に連続的に装入し、この水熱処理槽の底部からは16Nリットル/分の速度で空気を送り込み、その上部からアンモニア及び水素を同伴した排気ガスを抜き出し、処理温度95℃で水熱処理を行った。
【0035】
オーバーフロースラリー大略6.4リットル/時で排出されたが、その固形分濃度は210g/リットルであった。このオーバーフロースラリーを加圧濾過し、濾滓ケーキ上から濾滓容量の5倍の水で洗浄したのち、この濾滓を回収した。得られた湿濾滓(湿アルミナ組成物)の付着水分は35重量%(105℃乾燥減量)であり、その組成(105℃乾燥物)は、金属状アルミニウム(Al)1.7重量%(不純物除去率:77重量%)、窒化アルミ(AlN)0.6重量%(不純物除去率:91重量%)、アルミナ(Al2 O3 )47.4重量%、Fe:0.51重量%、Mg:3.09重量%、Si:0.87重量%、Na:0.03重量%(不純物除去率:92重量%)、K:0.03重量%(不純物除去率:92重量%)、Ca:0.73重量%、Cl:0.51重量%(不純物除去率:81重量%)、及びF:0.12重量%(不純物除去率:86重量%)であった。また、濾液中のアンモニア濃度は0.06g/リットルであり、pHは11.8であり、また、回収ガス中のアンモニア濃度は乾燥ベースで4.6〜4.7体積%であった。
【0036】
この実施例1で得られた湿アルミナ組成物を塩酸酸性の洗浄液でリパルピング洗浄し、液相のpHを6.5とした後、加圧濾過して洗浄した。
この湿アルミナ組成物の組成(105℃乾燥物)は、金属状アルミニウム(Al)1.5重量%(不純物除去率:77重量%)、窒化アルミ(AlN)0.4重量%(不純物除去率:94重量%)、アルミナ(Al2 O3 )42.9重量%、Fe:0.44重量%、Mg:2.78重量%、Si:0.79重量%、Na:0.02重量%(不純物除去率:94重量%)、K:0.02重量%(不純物除去率:94重量%)、Ca:0.50重量%、Cl:0.39重量%(不純物除去率:84重量%)、及びF:0.09重量%(不純物除去率:88重量%)であった。
【0037】
上記塩酸酸性洗浄液でリパルピング洗浄をして得られた湿アルミナ組成物を、電気炉を用いて500℃で焙焼し、アルミナ組成物を得た。
得られたアルミナ組成物の組成は、アルミナ(Al2 O3 )81.9重量%、金属状アルミニウム(Al)1.5重量%、窒化アルミ(AlN)0.6重量%、鉄分(Fe2 O3 )1.2重量%、酸化マグネシウム(MgO)8.3重量%、珪素(SiO2 として)3.1重量%、Na2 O:0.04重量%、K2 O:0.03重量%、酸化カルシウム(CaO):1.3重量%、Cl:0.6重量%、及びF:0.1重量%であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミ溶解工程で発生する処理の困難なアルミドロス残灰を水熱処理するに当たり、その処理時間を大幅に短縮できるほか、この水熱処理の間に発生するアンモニア等の有害ガスを効率良く回収して処理することができ、しかも、好ましくない不純物を効率良く除去できて工業的に有用なアルミナ組成物として回収することができ、アルミドロス残灰の有用資源化の観点から極めて実用的価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の一例を示すプロセスフローチャートである。
【図2】 図2は、試験例1に係るアルミドロス残灰の水熱処理時間と窒化アルミ分解率との関係を示すグラフ図である。
【図3】 図3は、試験例2に係るアルミドロス残灰の水熱処理の際の水酸化カルシウムの添加量と窒化アルミ分解率94重量%に達するまでの所要時間との関係を示すグラフ図である。
Claims (3)
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ原材料を溶解するアルミ溶解工程で発生するアルミドロスより金属状のアルミニウム又はアルミニウム合金を回収した後のアルミドロス残灰を、水酸化カルシウムの存在下に水熱処理するアルミドロス残灰の処理方法であり、この水熱処理の際にアルミドロス残灰及び水酸化カルシウムを水に懸濁させてアルミドロス残灰濃度50〜250g/リットル及び水酸化カルシウム濃度2〜10g/リットルのスラリーとすることを特徴とするアルミドロス残灰の処理方法。
- 水熱処理は、80〜100℃の温度で行われる請求項1に記載のアルミドロス残灰の処理方法。
- 水熱処理は、空気を吹き込み、生成するアンモニアを回収しながら行われる請求項1又は2に記載のアルミドロス残灰の処理方法。
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