JP3796877B2 - 無線通信装置、無線通信システム、無線送信装置、無線受信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(準)ミリ波帯等の波長の短い電波を使用して複数の端末間で無線通信を行う無線通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のマルチメディア化の流れに伴い、オフィス内ではローカルエリアネットワーク(LAN)の構築が盛んに行われているが、現在一般的に用いられているLANの方法はケーブル敷設工事などが煩雑であることや、その工事に高い経費を必要とする。そのため、それらの必要性がない無線伝送を用いて各端末間を接続する、ローカルエリアネットワークシステム(無線LAN)が注目を浴び始めている。現在、その主たる使用周波数帯は準マイクロ波帯であり、この周波数帯で伝送可能な通信速度は256Kbpsから2Mbps程度である。今後、さらに高速の伝送通信をこの周波数帯で考えた場合、広い周波数帯の割り当てが難しいため、その発展展開は困難である。
【0003】
これに対して(準)ミリ波帯等の波長の短い周波数帯においては、さらに高速の伝送が可能である。しかし、その波長の特性から、低い周波数帯に比べて電波の直進性が高く、回折効果が少ないため、伝搬路上の障害物により伝搬路が遮断され、著しい通信信頼性の低下を招くという問題点を有している。
【0004】
従来、見通しのきく伝搬路を確保するため、例えば、準ミリ波帯において、無線で端末間を接続する装置として、特開平5−304526号公報が開示されている。これによると、その装置は図9に示されるような装置である。図9において、90と98は机、91と97は子機、92と96はそれぞれ子機91、97のアンテナであり、93は親機、94は親機93のアンテナ、95は天井である。この装置において通信を行う際の動作原理を簡単に説明すると、机90等の低位置に設置された子機91に接続されたアンテナ92から放射された電波は、天井95等の高位置に設置されたアンテナ94と親機93を介して、別の子機97のアンテナ96において受信されることにより、無線通信装置間での通信を行っているものであった。このような親機を必要とする無線通信装置の問題点としては、後述するような三つの問題点が挙げられる。
【0005】
第1の問題点は、親機によって通信速度や通信信頼性が決定されてしまうという点である。この通信速度の問題点とは、通信速度が子機の性能に関わらず、親機の性能により決定されてしまうという点である。そして、通信信頼性については、親機が故障した場合、その親機に付随する全ての子機が不通になってしまうという問題点が挙げられる。
【0006】
第二の問題点は、子機が所属する親機を決定するための手段が、必ず必要であるという点である。これは、通信を行う際には、必ず親機を必要とするため、どの子機が、どの親機に属しているのかを、常に親機が認識していなければならないために生じる。
【0007】
そして、第三の問題点は、見通し伝搬路を確保するため、親機と子機の設置位置を考慮したり、また、その設置方法を工夫しなければならない点である。このため、無線通信装置を新たに設置したり移動させたりする場合には、非常に煩雑な作業を要することになる。さらに、親機は、一般的に天井等の高位置に設けられた支持物上に設置されるが、その支持物からの反射波が子機に及ぼす影響を低減するため、場合によっては、その支持物に当該使用周波数を吸収する層を設ける必要性が生じるという問題点も有している。
【0008】
このように、従来の無線通信装置においては、親機を必要とすることにより様々な問題点を有していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、従来の装置では親機が不可欠なため、通信速度や通信信頼性が親機によって決定されてしまうという問題点を有していた。更に、子機の所属する親機の決定方法や、無線LAN装置を構築する上での、親機、子機の設置位置および設置方法などの問題点も有していた。
【0010】
本発明は、親機を介することのない簡易かつ安価な回路構成で、端末間の無線通信を行うことができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信装置は、電波を送信あるいは受信するアンテナと、前記アンテナに対応して前記アンテナの上方に設けられた空気よりも比重の軽い浮遊反射物と、前記浮遊反射物を前記アンテナ上方に設置するための支持線と、信号を送信あるいは受信するための送受信器とを備え、前記浮遊反射物において電波を反射させることにより通信を行うことを特徴とする無線通信装置である。
【0012】
また、本発明の無線通信装置は、他の無線通信装置が有する前記浮遊反射物のどの2つとも同一直線上に乗らないように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
この無線通信装置において、前記浮遊反射物は、空気よりも比重の軽い気体で充填された風船と、電波を反射させる反射板を備えるもの、あるいは、前記浮遊反射物は、空気よりも比重の軽い気体で充填された風船と、電波を反射させる物質から成る反射層を備えたものである。
【0014】
また、この無線通信装置において、前記反射板および前記反射層は錐体の形状を有することを特徴とするものであり、前記支持線は、少なくとも3本以上の支線を用いて前記浮遊反射物を支持することを特徴とするものである。
また、この無線通信装置において、前記支持線の長さを調節することが可能であることを特徴とするものである。
また、この無線通信装置が複数存在する無線通信システムにおいて、複数の前記浮遊反射物はどの3つをとっても同一直線上に乗らないように配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図9を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である無線通信装置単体を説明するための概略図を示している。図1において、10は送受信器、11は浮遊反射物、12は送信あるいは受信を行うためのアンテナ、13は支持線である。この図1に示されているように、この無線通信装置は、電波を送信あるいは受信するアンテナ12と、アンテナ12に対応してアンテナ12の上方に、支持線13を介して設けられた空気よりも比重の軽い浮遊反射物11を備えることを特徴とする無線通信装置である。
【0017】
次に、図1に示された無線通信装置を用いて通信を行う場合の様子を、図2を用いて説明する。図2において、20は送受信器、21は浮遊反射物、22はアンテナ、23は支持線、24は障害物である。無線通信装置間で通信を行う場合の例として、一方の送受信器20で送信信号が発生され、アンテナ22よりその送信信号が電波として放射されたとする。その放射された電波は、その上方の浮遊反射物21で反射され伝搬していく。そして、その電波が他方の無線通信装置20に備えられた浮遊反射物21とアンテナ22を介して、無線通信装置20において受信されることにより無線通信装置間での通信が可能となる。この時、図2に示すように、各無線通信装置の浮遊反射物21を、電波を送受信する上で問題となる障害物24よりも十分高い位置に設置することが重要である。このような位置に浮遊反射物を設置することにより、天井等の高位置に設置された親機を必要とすることなく、より確実に見通しのきく伝搬路を確保することができる。
【0018】
以上のように、浮遊反射物を用いることにより、親機を設置することなく、無線通信に適した見通し伝搬路を確保することができる。また、親機および親機支持物が不必要となることから、従来の問題点の一つである、親機支持物に当該使用周波数帯を吸収するための層を設けなければならないという必要性を削除することができる。従って本発明の無線装置は、従来のような親機の存在による問題点を解決することができるとともに、親機を介さない無線通信を可能とし、通信速度や通信信頼性の向上を図ることができる。
【0019】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における、図1で示した無線通信装置を複数用いた無線通信装置を説明するための概略図を示している。図3において、30は送受信器、31は浮遊反射物、32はアンテナ、33は支持線、34は机である。親機を設けることなく、複数の無線通信装置間での通信を可能にするために、図3に示すように、各浮遊反射物31はどの3つをとっても同一直線上に乗らないように配置されている。ただし、浮遊反射物31を配置する際、実施の形態1で述べたように、全ての浮遊反射物31を、見通し伝搬路を確保するために、通信を行う上で問題となる障害物よりも十分高い位置に設置することが重要である。この浮遊反射物の設置高は、支持線33の長さを調節することにより容易に決定できる。そして、その調節にかかる作業は、支持線33を紐等の軽量で容易に変形できるものを用いることにより、より簡便なものになる。
【0020】
以上のように、各浮遊反射物31を、どの三つをとっても同一直線上に乗らないように配置することにより、浮遊反射物31自身が通信を行う上での障害物になることを防ぐことが可能となる。従って、どの浮遊反射物31からも、他の浮遊反射物31への見通し伝搬路を確保することができる。
【0021】
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3における、図1に示された浮遊反射物11を詳細に説明するための概略図を示し、図4において、41は風船、42はアンテナ、43は支持線、44は反射板である。図4に示したように、前記浮遊反射物は風船41と反射板44とを備えるものである。
【0022】
この風船41は、内部に充填された、空気よりも比重の軽い気体を自由に抜いたり、封入したりすることが可能であることを特徴とする風船である。従って、風船41の内部の気体の出し入れにより、浮遊反射物の浮力を調節することが可能である。
【0023】
反射板44としては、反射物体を用いて形成する方法が一例として考えられる。この方法を用いる場合、反射板44は、アルミ箔等の軽量な材料を用いて、内部を空洞にした立体構造にすることが望ましい。このような、構造にすることにより、浮遊反射物をより軽量なものにすることができるとともに、反射板44を浮遊させておくのに必要な風船の浮力を低減することが可能となる。
【0024】
なお、浮遊反射物の構成の仕方としては、図4に示したような、浮遊反射物を風船41と反射板44とから構成するのではなく、反射板44を省き、電波を反射させる物質から成る反射層を風船41に設ける方法を用いる方がさらに望ましい。このような構造をとることにより、反射層を風船41と一体化することが可能となる。その結果、反射板を用いる方法よりも、浮遊反射物をさらに軽量にできるとともに、浮遊反射物の収納性、機動性が向上する。
【0025】
その反射層の製作方法としては、風船41上に電波を反射する物質を、蒸着する方法や、風船41上に塗布する方法などが例として挙げられる。これは、反射板44を用いて浮遊反射物を製作する方法に比べると、その製作が非常に容易である。
【0026】
以上のように浮遊反射物の構造を形成することにより、製作や収納が容易で、軽量な機動性に優れた浮遊反射物を得ることができる。
【0027】
(実施の形態4)
図5は本発明の実施の形態4における、図1に示された浮遊反射物11および浮遊反射物11を支持するために設けられた支持線13の詳細を説明するための概略図を示し、図5において、51は浮遊反射物、52はアンテナ、53は支持線、54は支線である。図5に示すように、支持線53は、少なくとも3本以上の支線54を用いて浮遊反射物51をアンテナ52の上方に支持することを特徴とする支持線である。このように浮遊反射物51を3本以上の支線54から成る支持線53で支えることにより、浮遊反射物51が、アンテナ52の上方で大きく揺らぐのを防ぐことが可能となる。これにより、アンテナ52から放射された電波の放射メインローブが、浮遊反射物51で効率的に反射されないために生じる、通信信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0028】
なお、この支持線53の構成の仕方として、図5に示した例以外に、前述したような3本以上の支線54を用いて浮遊反射物51を支持するのは同じであるが、図6のようにその支線54を、途中から1本の線に束ねて支持する方法や、図7のように、支線54を最後に1つに束ねて支持する方法でもよい。
【0029】
(実施の形態5)
図8は本発明の実施の形態5における、図4に示された浮遊反射物の反射板44の詳細を説明するための概略図を示している。図8において、82はアンテナ、83は支持線、84は風船、85は反射板、86はアンテナと浮遊反射物の中心を結ぶ軸、αは反射板の頂角である。反射板85は、垂直方向に指向性を持つアンテナ82の中心と浮遊反射物の中心とを結ぶ軸86に対してなす角αを、頂角とするような錐体の形状を有することを特徴とする反射板である。このように反射板85を錐体の形状を有するものにし、かつその角度αを適当な角度にすることにより、浮遊反射物の下方にあるアンテナ82から垂直上方に放射された電波は、反射板85で反射され、主に水平方向に伝搬していくことになる。
【0030】
このように、電波が水平方向に効率的に反射され伝搬して行くことにより、反射板85において、不要な方向に反射されることにより形成されるマルチパスを、相対的に低減することができる。従って、より信頼性の高い通信を行うための伝搬路を確保することができる。更に、反射された電波が効率的に水平方向に伝搬して行くことにより、伝送距離をのばすことができる。
【0031】
以上のように、浮遊反射物の反射板85を錐体の形状を有するものにすることにより、実施の形態1および2で得られる効果よりも、さらに優れた効果を得ることができる。
【0032】
なお、この反射板85は、頂角αが45度であるような完全な円錘体にするのが望ましいが、その円錐の近似として三角錐体や四角錐体などの多角形を用いた錐体にしてもよい。更に、反射板85を用いる代わりに、風船84を、錐体の形状をした、電波を反射させる物質からなる反射層を有する風船にする方法でもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、本発明の無線通信装置によれば、従来のような親機を介した通信を行わずに、直接、他の無線通信装置間との通信が可能であるため、従来の無線通信装置よりも、通信信頼性や通信速度の向上、無線通信装置の設置位置および設置方法の簡便化を図ることが可能となる。また、親機が不必要となることから、装置の回路構成が安価かつ簡易になるという効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無線通信装置の概略図
【図2】本発明の第1の実施形態における無線通信装置間の通信を説明するための概略図
【図3】本発明の第2の実施形態による無線通信装置を複数用いて通信を行う場合の説明をするための概略図
【図4】本発明の第3の実施形態による浮遊反射物を示す概略図
【図5】本発明の第4の実施形態による支持線を示す概略図
【図6】本発明の第4の実施形態による支持線を示す概略図
【図7】本発明の第4の実施形態による支持線を示す概略図
【図8】本発明の第5の実施形態による浮遊反射物の反射板を示す概略図
【図9】従来の無線通信装置を示す概略図
【符号の説明】
10,20,30 送受信器
11,21,31,51,61,71 浮遊反射物
12,22,32,42,52,62,72,82,92,94,96 アンテナ
13,23,33,43,53,63,73,83 支持線
24 障害物
34,90,98 机
41,84 風船
44,85 反射板
54,64,74 支線
86 軸
91,97 子機
93 親機
95 天井
α 頂角
Claims (11)
- 他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置であって、
電波を送信あるいは受信するアンテナと、
前記アンテナの上方に設けられ、前記アンテナから送信された電波を反射して伝播させる浮遊反射物と、
前記浮遊反射物を前記アンテナの上方に設置するための支持線とを具備した無線通信装置。 - 前記浮遊反射物は、前記他の無線通信装置から送信されて伝播してきた電波を反射し、
前記アンテナは、前記他の無線通信装置から送信されて伝播してきた後、前記浮遊反射物で反射した電波を受信する請求項1記載の無線通信装置。 - 前記浮遊反射物は、
空気よりも比重の軽い気体で充填された風船と、
電波を反射させる反射板とを含む請求項1または2に記載の無線通信装置。 - 前記浮遊反射物は、
空気よりも比重の軽い気体で充填された風船と、
前記風船に備えられた電波を反射させる物質から成る反射層とを含む請求項1または2に記載の無線通信装置。 - 前記支持線は、前記浮遊反射物を支持する少なくとも3本以上の支線を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
- 前記反射板は、錐体の形状を有することを特徴とする請求項3記載の無線通信装置。
- 前記反射層は、錐体の形状を有することを特徴とする請求項4記載の無線通信装置。
- 前記無線通信装置は、前記支持線の長さを調節する手段をさらに具備する請求項1記載の無線通信装置。
- 少なくとも3つ以上の無線通信装置を含む無線通信システムであって、
前記各無線通信装置は、
他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置であって、
電波を送信または受信するアンテナと、
前記アンテナの上方に設けられた浮遊反射物と、
前記浮遊反射物を前記アンテナの上方に設置するための支持線とを具備し、
送信時には、前記浮遊反射物は、前記アンテナから送信された電波を反射して伝播させ、
受信時には、前記浮遊反射物は、前記他の無線通信装置から送信されて伝播してきた電波を反射し、前記アンテナは、前記他の無線通信装置から送信されて伝播してきた後、前記浮遊反射物で反射した電波を受信する無線通信装置であり、
前記各無線通信装置の浮遊反射物は、どの 2 つの浮遊反射物の組をとっても、両浮遊反射物を結ぶ直線上に他の浮遊反射物が存在しないように配置されている無線通信システム。 - 無線受信装置に対して電波の送信を行う無線送信装置であって、
電波を送信するアンテナと、
前記アンテナの上方に設けられ、前記アンテナから送信された電波を反射して伝播させる浮遊反射物と、
前記浮遊反射物を前記アンテナの上方に設置するための支持線とを具備した無線送信装置。 - 無線送信装置から送信された電波を受信する無線受信装置であって、
電波を受信するアンテナと、
前記アンテナの上方に設けられ、前記無線送信装置から送信された電波を反射する浮遊反射物と、
前記浮遊反射物を前記アンテナの上方に設置するための支持線とを具備し、
前記アンテナは、前記浮遊反射物で反射した電波を受信する無線受信装置。
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