JP3796669B2 - はんだ付用フラックス - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、特に電子工業のプリント配線板の製造に際して使用されるはんだ付け用フラックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板に電子部品をはんだ付けするに際し、はんだ付部分にフラックスを適用して、該部分の酸化皮膜を除去し、溶けたはんだの表面張力を低下させ、該部分が溶けたはんだ金属で一様に覆われるようにしている。溶けたはんだの表面張力を低下させ、はんだ付けされる金属面上に一様になじませる性質を通常濡れ性として捉えているが、このような性質はフラックスとして重要な性質である。
【0003】
更に、はんだ付けした後、従来はフラックス残渣は洗浄によって除去することが行われていたが、最近はんだ付け後のフラックス残渣がはんだ接合部の保護被膜として作用するとの考えより洗滌すること無く、積極的にフラックス残渣をはんだ付け部の保護膜として残す場合が生じた。そして、このような場合、フラックス残渣ははんだ付される金属面に対し腐食性がなく、しかもフラックス残渣が剥離しないと共に温度の冷熱又は振動による衝撃によって、フラックス残渣に亀裂を生じないようなものが要求されている。
【0004】
従来の電子工業で用いられるフラックス組成物は、一般的に天然ロジン、或いは、合成ロジンを主成分とし、これに活性剤を混合したもので、高い絶縁性を有するものの、温度の冷熱又は振動による衝撃によって、フラックス残渣表面にクラックを発生し、フラックス残渣が剥離に至ることがある。そして、この剥離したフラックス残渣は、プリント配線板から剥離してボリュームや接点、或いはモーター等へ混入して導通不良等のトラブルを発生することがあった。そのため、プリント配線板や車載プリント配線板は、従来とおり洗浄されることが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者は、従来のフラックス組成物における上記の欠点を改良し、温度の冷熱又は振動による衝撃によって、フラックス残渣の被膜にクラックを発生しないようなはんだ付用フラックス組成物について、種々検討した結果、ある種の長鎖二塩基酸またはその無水物を添加することにより前述の欠点を改良することが見出され、本発明を完成するに至ったもので、本発明の目的は、はんだ付部分におけるフラックス残渣の被膜が使用中、表面亀裂を生ずることなく、また、剥離を起こさないようなはんだ付用フラックスを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明の要旨は、 天然ロジンあるいは合成ロジンまたはその誘導体と活性剤を含むはんだ付用フラックス組成物に、下記の化学式1〜2で示される化合物を含有せしめることを特徴とするはんだ付用フラックスである。
【化1】
式中nは1である。
【化2】
式中nは1である。
【0007】
即ち、本発明のフラックス組成物は分岐状長鎖二塩基酸またはその無水物を含有せしめることにより半だの金属面への濡れ性を向上させると共にフラックス残渣の表面クラックを生じないという性質を付与し、その結果、フラックス残渣が剥離することが無く優れたはんだ付用フラックス組成物を提供する。
【0008】
本発明において分岐状長鎖二塩基酸またはその無水物を添加するフラックスは、例えば、やに入りハンダの芯用、噴流ハンダ用ポスト・フラックス、表面実装ハンダ・ペース用などで用いられるフラックスである。そして、これらのフラックスを構成する成分は従来使用されているフラックス組成物と異ならない。即ち、天然ロジン或いは合成ロジン又はその誘導体の1種、又は2種以上と活性剤とを添加したはんだ付け用フラックスからなる。
【0009】
天然ロジンとしては通常のガムトール、ウッドロジンが用いられ、その誘導体としては熱処理された重合ロジン、水素添加ロジン、完全水素添加ロジン、ロジンエステル、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂などが挙げられる。そして、これらは混合して使用しても良い。
【0010】
活性剤としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、シクロロキシルアミン、アニリン等のハロゲン化水素酸塩、コハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ステアリン酸等の有機カルボン酸の使用が好ましい。
使用量としては、フラックス全体の0.01〜20(重量)%が好ましい。0.01重量%以下であると活性力が不足し、はんだ付け性が低下してしまうし、20重量%以上であるとフラックスの皮膜固着性が低下して、親水性が強くなるので、腐食及び絶縁性が低下してくる。
【0011】
また、本発明のフラックスを液状にして使用する場合には、これらの組成物に更に溶剤を加える。この溶剤としては、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基を有するポリオレフィンに天然ロジン又は合成ロジン又はその誘導体の一種又は二種以上と、活性剤の成分を溶解して溶液とするためには、通常のアルコール系、特にイソプロピルアルコールと酢酸ブチルのような極性溶剤を用いることが好ましい。溶剤の使用量は30〜99(重量)%が好ましい。
溶剤が30重量%以下である時は、フラックスの粘度が高いため、フラックスの塗布性が悪くなり、99重量%以上ではフラックスの有効成分が希薄になり、はんだ付け性が低下してしまう。
【0012】
本発明において使用する分岐状長鎖二塩基酸またはその無水物はC12〜C22程度の分岐状長鎖二塩基酸のまたはその無水物であるが、特に下記一般式で示される化合物(1)又は(2)が好ましい。
【0013】
【化4】
【化5】
【0014】
このような化合物は、例えばC6の環状ケトンであるシクロヘキサノンを過酸化水素と第一鉄塩とからなる溶液を作用させて開環二量化させることによって得られる。更に、オレフィン存在下で上記の反応、即ちシクロヘキサノンを過酸化水素と第一鉄塩とからなる溶液を作用させて開環二量化させると、オレフィンの一分子〜二分子が間にはさまれる。
【0016】
長鎖二塩基酸またはその無水物の添加量はフラックス組成物中0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%存在すれば良く、0.1重量%以下では目的を達成することが出来ず、また、20重量%以上では残渣が常温でかたまらず好ましくない。
【0017】
【実施例及び比較例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
重合ロジン(軟化点137℃) 97.0重量%
活性剤ジエチルアミンHBr塩 1.0
化合物(1) 2.0
実施例2
重合ロジン(軟化点137℃) 97.0重量%
活性剤ジエチルアミンHBr塩 1.0
化合物(2) 2.0
比較例1
重合ロジン(軟化点137℃) 99.0重量%
活性剤ジエチルアミンHBr塩 1.0
上記の実施例及び比較例の配合割合によって得られたフラックスを用いてJIS−2形で規定されているくし形電極を試験片として使用してはんだ付を行い、時間と共にその電気抵抗値の変化を調べたところ、図1のような結果を得た。なお、JIS−2形で規定されているくし形電極の導体幅は0.318mm、導体間隙0.318mmで重ね代15.76mmである。
【0018】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明においては、はんだ付用フラックス組成物において、長鎖二塩基酸またはその無水物を含有せしめることによって、はんだの濡れ特性を向上し、またフラックス残渣に亀裂を生ぜず、その結果図1に示すように長時間にわたり電気抵抗値の変化が少なかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1と2及び比較例1の時間に対する電気抵抗値の変化
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