JP3796514B2 - 収納自在な穿刺針を備えた医療用器具及び同医療用器具の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の分野】
本発明は、例えば、カテーテル又はガイドワイヤを患者の血管に挿入するのに用いられる穿刺針付き医療用器具に関するものである。より詳述すると、本発明は、医療用器具を再使用不能にして安全に使い捨てできるように穿刺針を引っ込めることができる機能を有する医療用器具に関するものである。
【0002】
【発明の背景】
種々の医療用器具においては、診断又は治療目的のために患者の皮膚に刺される穿刺針が用いられている。このような器具の一つとしては、患者の血管に穿刺針装着カテーテルを位置決めするための静脈カテーテル挿入器具がある。別のこのような器具としては、ガイドワイヤを患者に導入するための器具がある。ガイドワイヤは、カテーテルを患者内に導くために用いられる。ガイドワイヤ又はカテーテルを正しく位置決めさせて、ガイドワイヤ又はカテーテルを血管の所定位置に残したままカテーテル挿入器具は引き抜かれる。患者から穿刺針を引き抜いた後のこのような医療用器具の取扱い如何によって、例えば、医師が不注意で穿刺針を自分に突き刺してしまうようなことによって、各種病原菌、特に、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の伝染を引起す可能性がある。
【0003】
穿刺針の偶発的な突き刺しによる傷害の危険性についての問題を契機に、1980年代の中頃以来、安全な穿刺針器具を確保しようとする多くの設計上の試みがなされてきた。そのような器具は、使用後に物理的バリアを穿刺針の先端に位置させるようになっているスライド鞘式穿刺針器具と、使用後に穿刺針の露出部分を器具内に引っ込める、即ち、器具内に収納させる機能を備えた器具とに大別される。後者の穿刺針収納式器具は、更に、手動収納式のものと、半自動収納式のものとに分類することができる。
【0004】
Hallerに付与された米国特許第4,026,287号,Jaggerに付与された米国特許第4,592、744号,Haberに付与された米国特許第4,808,169号及びHaberに付与された米国特許第5,067,490号によって具体化されている手動収納式器具においては、穿刺針を器具内に引っ込めるためには、穿刺針連結機構をユ−ザーが後方に引張るか又はスライドさせる必要がある。
【0005】
穿刺針半自動収納式器具においては、解放機構をユーザーが操作するのに応じて穿刺針を器具内に押し込め或いは引張るためのスプリングの如き付勢手段を用いることができる。そのような器具は、Haber等に付与された米国特許第4,813,426号及びDysarzに付与された米国特許第5,125,414号で具体化されている。
【0006】
Kulliに付与された米国特許第4,747,831号及びKulliに付与された米国特許第4,900,307号は、穿刺針半自動収納機能を備えた、カテーテル挿入器具及び注射器を開示している。これら二つの特許によって開示された収納機構は、カテーテルを挿入器具から取外した後又は穿刺針を患者から引き抜いた後に、ユーザーが解放ボタンを押すことによって作動される。
【0007】
従来の半自動収納器具は、操作者の手による操作を必要とする。緊急事態の如き多くの事態の場合には、操作者は混乱し又は急がされ、その結果、意識的に或いは無意識に、穿刺針を引っ込めるのに必要な手動操作を行わないことがある。このような場合に、使用した穿刺針は露出したままであり、不注意で穿刺針を突き刺してしまうという危険性が発生する。従って、別個の手動操作を行うことなく、患者にカテーテルを挿入する通常の操作により穿刺針を引っ込めることのできる穿刺針自動収納機構を提供することが望ましい。更に、実際に低コストで製造することができるように部品点数が制限された器具を提供することが望ましい。
【0008】
【発明の概要】
上述したことを念頭において、本発明は、中空ハウジングとそのハウジングに取り付けられたカテーテルとを有する医療用器具を提供することを目的とする。この器具は、ハウジングから前方に延びる突出した位置と、穿刺針がハウジング内に封入される収納位置との間を移動可能な穿刺針を有している。その穿刺針は付勢手段によって収納位置方向へ付勢されている。穿刺針保持部が穿刺針に固定的に接続されている。穿刺針保持部は、付勢手段による付勢力に抗して、穿刺針を突出位置で解放自在に保持している。穿刺針保持部は、カテーテルと係合するフォロワ部分を有する延長したアームにて構成するのが好ましい。ハウジングからカテーテルを取り外した時に、カテーテルはフォロワ部分を解放し、それにより穿刺針保持部が穿刺針を解放する。この時、穿刺針は付勢手段によってハウジング内の後方へ押し遣られる。
【0009】
また、本発明に依れば、中空ハウジングとガイドワイヤを挿入するための穿刺針とを有する医療用器具が得られる。この器具は、ハウジングから前方に延びる突出する位置と、穿刺針がハウジング内に封入される収納位置との間を移動可能な穿刺針を有している。その穿刺針は、付勢手段によって収納位置方向へ付勢されている。この器具は、付勢手段による後方への付勢力に抗して穿刺針を解放自在に穿刺針と係合する第一の位置と、穿刺針を解放して付勢手段が穿刺針を後方へ押し遣るのを許す第二の位置との間を移動可能な穿刺針保持部を備えている。ガイドワイヤは、穿刺針保持部と係合して、穿刺針保持部が第二の位置方向へ移動するのを阻止する。ガイドワイヤを患者に挿入した後に、穿刺針保持部は第二の位置方向へ移動し、穿刺針は付勢手段によってハウジング内の後方へと押し遣られる。
【0010】
更に、本発明に依れば、静脈カテーテル又はガイドワイヤの如き、穿刺針で体内に導入される医療用器具を挿入する方法が得られる。この方法は、ハウジング,穿刺針及び穿刺針保持部を有する挿入器具を提供する工程を含んでおり、穿刺針保持部は、穿刺針がハウジングから前方に突出するようにして穿刺針を解放自在に保持している。その医療用器具は穿刺針を介して患者に挿入される。操作者が手で選択的に穿刺針保持部を操作して、穿刺針の引っ込みを阻止する。そして、操作者は穿刺針保持部に対する手動操作を解放して、穿刺針を解放させる。この時、穿刺針はハウジング内に引っ込められる。
【0011】
上述した本発明の概要及び本発明の好ましい実施形態についての以下に記載する詳細な説明は、添付図面を参照することにより、より明確に理解できるであろう。
【0012】
【好ましい実施形態の詳細な説明】
茲で、図1〜4、特に図1を参照すると、穿刺針を覆うカテーテル70を患者に挿入するための医療用器具が参照符号10で示されている。この器具10は、患者の皮膚に突き刺してカテーテル70を挿入するための引っ込み自在な穿刺針30を有している。カテーテル70を患者に挿入後、穿刺針30を自動的に器具10内に収納、即ち、引っ込めて、汚染された穿刺針の鋭利な先端を器具内に封入させることにより、穿刺針を不注意に人に刺してしまうことを防止する。
【0013】
図2〜図4を参照すると、この器具は、略円筒形ハウジング20と、穿刺針30と、穿刺針30を後方に付勢するスプリング60と、スプリングの付勢力に抗して穿刺針を解放自在に保持する保持部40とを有している。穿刺針は突出位置と収納位置間を移動できるようになっている。突出位置では、穿刺針30はハウジング20の前端部から前方に突出している。収納位置では、穿刺針30はハウジング内に収納されて、鋭利な先端がハウジング内に封入されることにより、穿刺針30の鋭利な先端と不用意に接触することがないようにされる。
【0014】
図2に示したように穿刺針30が突出位置にある時、スプリング60が穿刺針30を収納位置方向である後方に付勢している。穿刺針保持部40は、スプリング60の付勢力に抗して、穿刺針30を突出位置で解放自在に保持している。穿刺針保持部40は、カテーテル70と協働し、カテーテル70を器具から取外した時に、穿刺針保持部40が穿刺針30を自動的に解放し、その結果、図4に示したように穿刺針がハウジング内に収納される。
【0015】
茲で、図2を参照して、この器具の各部品をより詳しく説明する。ハウジング20は略円筒形に形成され、ハウジング20の前端部はテーパーが付いた小径の鼻部22を有している。カテーテル70は鼻部22に取り付けられている。従って、鼻部22には、カテーテル70のハブ72の内側テーパー部と協働するようにテーパーが付けられている。
【0016】
カテーテル70は、略円錐形のハブ72と、そのカテーテルハブに固定的に連結された可撓性カニューレ74とを有している。カテーテル70は、カニューレ74が穿刺針の先端を覆うようにして、ハウジングの鼻部22に取り付けられている。然しながら、この器具の使用前においては、穿刺針の鋭利な先端はカニューレ74から前方へ突出し、露出している。
【0017】
カテーテル70を鼻部22に取り付けた時に、カテーテルハブ72は穿刺針保持部40と係合する。穿刺針保持部40は、穿刺針30に固定的に接続された細長いアームである。このアームは、ハウジング20の前端部に形成された開口を貫通して前方に突出している。アーム40の前方部分はフォロワ部46を構成している。このフォロワ部46は、鼻部22に近接したハウジングの開口を貫通してハウジングから前方に突出し、カテーテルハブ72と係合している。
【0018】
図3を参照すると、穿刺針保持部40は、フォロワ部46の後方部分で径方向内方へ突出した段部45を有している。この段部45は、アーム40が貫通突出している開口によって形成されたリップ24と係合している。段部45は、穿刺針保持部40を保持するためのラッチとして機能し、穿刺針保持部40に取り付けられた穿刺針30をスプリングの付勢力に抗して保持している。
【0019】
カテーテル70を鼻部22に取り付けた時に、カテーテルハブ72は穿刺針保持部40のフォロワ部46と係合し、段部45がリップ24と係合する。このようにしてカテーテルを器具に取り付けた時に、穿刺針30はスプリング60の付勢力に抗して突出位置に維持される。カテーテル70を取外すと、穿刺針保持部40が径方向内側へ偏位して、段部45がリップ24から解放される。この場合、カテーテル70を取り外した時に、スプリング60の後方付勢力によって穿刺針保持部40が径方向へ偏位させられる。
【0020】
穿刺針保持部のアームは可撓性プラスチックから形成されていて、それによりアームは弾性変形可能になっている。緩和状態では、穿刺針保持部のアーム40はリップ24と係合している。好ましくは、リップ24に後方へ向かって延びたテーパ面を設け、穿刺針保持部40の段部45にはリップ24のテーパ面と係合するテーパー面を形成するとよい。これらのテーパ面は、図3及び図4に最も明瞭に図示されている。このように構成されて、スプリング60による軸線方向後方への付勢力が、アームに対して、径方向の分力と軸線方向の分力として作用する。径方向の分力によって穿刺針保持部のアーム40が内方へ付勢され、それにより段部45がリップ24から外れるまで段部45はリップ24に乗り上がってリップ24を越える。この時、スプリング60によって穿刺針保持部と穿刺針保持部に取り付けられた穿刺針とがハウジング内の後方へ追い遣られ、穿刺針の鋭利な先端がハウジング内に封入される。
【0021】
この器具10は、穿刺針の後端部に取り付けられた液溜め50を更に有し、この液溜め50は穿刺針の後端部を取り囲んでいる。液溜め50は、穿刺針30と連通していて、フラッシュバックチャンバとして作用する。従って、穿刺針を患者の静脈に挿入した時に、血液が穿刺針を通ってフラッシュバックチャンバに流れ込む。フラッシュバックチャンバ50の後端部は、通気性の疎水性プラグ52によって封止されている。血液がフラッシュバックチャンバに入ると、空気はプラグを通過してフラッシュバックチャンバから外へ排出される。然し、プラグ52は血液を透過させないため、血液はフラッシュバックチャンバから漏れ出るのを防止される。ハウジングとフラッシュバックチャンバは半透明プラスチックで形成されていて、それにより、フラッシュバックチャンバ内の血液は、穿刺針が正しく患者の静脈内に挿入されていることを示す可視インジケータとして役立つ。
【0022】
図示実施形態においては、フラッシュバックチャンバ50と穿刺針保持部40とが単一構造として一体に形成されている。これら二つの部品は、紫外線硬化性エポキシ等の接着剤で穿刺針に固定的に取付けられている。スプリング60は、ハウジング20内に配置され、穿刺針を取り囲んでいる。スプリング60の前端部はハウジング20の前端部に対して支えられ、スプリング60の他端部は一体構造の穿刺針とフラッシュバックチャンバに対して支えられている。
【0023】
また、図示実施形態においては、ハウジング20は、穿刺針30とフラッシュバックチャンバ50とを組合せた長さよりも短く形成されている。従って、図4に示したように穿刺針30がハウジング20内に引っ込められた時に、フラッシュバックチャンバ50がハウジング20から後方に突出できるようにハウジング20の後端部は開口されている。この器具は、穿刺針30がハウジング20から後方へ押し遣られないようにするためのロック機構、即ち、後方移動制限機構を更に有している。好ましくは、穿刺針保持部のアーム40の前端部46が受入れられる寸法を有する開口26を、穿刺針30の後方移動ロック手段として、ハウジングの側部に形成することができる。穿刺針保持部の有する弾力性によって穿刺針保持部は径方向外方へ偏位されている。穿刺針が後方へ押し遣られた時に、穿刺針保持部40の前端部46が開口26と係合し、それにより、段部45が開口26の後端部と係合し、穿刺針はそれ以上後方に移動しないように保持される。更に、穿刺針保持部40の前端部46が開口26の前端縁部と係合して、穿刺針が前方に移動しないように保持されるため、一旦引っ込められた穿刺針は、再度突出させることができなくなる。
【0024】
カテーテル70を器具から取外して患者内に挿入した時に、患者からの血液はカテーテルの後端部から流れ出す可能性がある。一般に、カテーテルを点滴バッグのような液溜めに一旦取付けると、点滴バッグ内の液体による液圧は、カテーテルを通る患者からの血液の流れを止め或いは制限するのに十分なものとなっている。然し、点滴バッグをカテーテルに接続させるまで、血液はカテーテルから漏れ出す可能性がある。従って、カテーテルに栓をすることにより、カテーテルを患者に挿入した後の血液漏れを防止するのが好ましい。
【0025】
従って、カテーテルを鼻部22に取付けた時に、鼻部22がカテーテルハブ72の内側との液密シールを構成するようにするのが望ましい。そのように構成すれば、カテーテルをハウジングから取外して穿刺針を収納した後、鼻部22をカテーテルに挿入してカテーテルを塞ぐことができる。更に、図3を参照すると、好ましくは、穿刺針の収納直後に鼻部20によりカテーテルを実質的に塞ぐように鼻部22が穿刺針保持部40のフォロワ部46の前方に延びているのが望ましい。加えて、鼻部22がフォロワ部46の前方に突出していると、収納の間及び収納後に穿刺針が露出することがない。
【0026】
上述したように構成された医療用器具の操作について、以下に説明する。使用前においては、穿刺針の鋭利な先端が露出するように穿刺針は突出位置に位置されている。この状態で、穿刺針の鋭利な先端を患者の静脈に挿入する。フラッシュバックチャンバ50に血液が流入すると、医師は穿刺針が静脈に挿入されたことを知る。この時、カテーテル70を前進させてカテーテル70を器具10から取り外すことにより、カテーテルは患者の静脈に挿入される。このため、カテーテルハブ72は、医師が器具を保持する手の指1本で前方に押すことのできる突起73を備えていることが好ましい。カテーテルを穿刺針保持部40のフォロワ部46より前方へ前進させた時、穿刺針保持部40が穿刺針を解放するよう内側方向に偏位する。この時、穿刺針30、穿刺針保持部40及びフラッシュバックチャンバ50がスプリング60によって後方へ押し遣られて、穿刺針の鋭利な先端がハウジング20内に封入される。医師が希望する場合には、鼻部22をカテーテルに挿入して、血液漏れを防ぐようにカテーテルを再封止することができる。
【0027】
茲で、図5〜図7を参照すると、本発明に係る第二の実施形態が図示されている。図5〜図7においては、図1〜図4に図示され且つ上述した第一の実施形態の部品と類似の部品は、図1〜図4に示した参照符号数字に100を加えた参照符号数字で示されている。
【0028】
第二の実施形態に係る医療用器具は、参照符号110で示されている。この器具110は、ハウジング120と、引っ込み自在な穿刺針130と、穿刺針を後方へ付勢するスプリング160と、スプリングによる付勢力に抗して穿刺針を解放自在に保持する穿刺針保持部140とを有している。穿刺針を覆うカテーテル170が器具110の前端部に取付けられている。穿刺針保持部140は、カテーテルと協働し、器具110からカテーテルを取り外した時に、穿刺針を解放し、スプリングが穿刺針をハウジング120内の後方へ押し遣る。
【0029】
穿刺針保持部140は、第一の実施形態に関連して述べた穿刺針保持部40と同様に構成されている。穿刺針保持部140は、穿刺針130に固定的に連結された細長い弾性変形自在な可撓性アームを有している。穿刺針保持部の前端部146は、ハウジングの先端部122に近接したハウジングの前端部に形成された開口を通して突出している。穿刺針保持部の前端部146は、カテーテルハブ172の側面に係合している。第一の実施形態と同様に、カテーテルハブ172は、穿刺針保持部のアームを径方向外側へ偏位させ、アームの段部145がハウジングの前端部の開口によって形成されたリップ124と係合している。従って、カテーテル170が器具110より取り外された時に、穿刺針保持部140が内側方向に偏位して、穿刺針130が解放される。この時、穿刺針はスプリング160によってハウジング120内の後方へ押し遣られる。図7に示したように、ハウジング内に引っ込められた時に穿刺針とフラッシュバックチャンバとの全長がハウジング内に閉じ込められるようにハウジングは長尺に形成されている。
【0030】
このようにして、第一の実施形態と同様に、使用後に穿刺針が自動的に収納されることにより、医師が、汚染された穿刺針を安全に封入することを確実にするための追加の作業を行う必要がなくなる。カテーテル170を患者に挿入する作業だけで、穿刺針の収納を実現するのに十分である。然し、後述する如く、必要に応じて、医師が収納を遅らせることができる。
【0031】
カテーテルを患者に挿入した後に、医師が穿刺針の収納を遅らせることができることが望ましい。このため、この器具110は、ハウジング120の側部に窓121を有している。穿刺針保持部140が窓121に近接して配置されていて、医師が穿刺針保持部を操作することができるようになっている。医師が穿刺針の収納をコントロールすることを望む場合には、医師が圧力を加えて、穿刺針保持部を径方向内側へ偏位させて、保持部を内壁125に当接させることができる。この方法で、穿刺針保持部を医師の把持力によって内壁125に対して当接させることによる挟み込みによって、穿刺針のハウジング内への引っ込みを阻止することができる。医師が穿刺針保持を解放すると、穿刺針はハウジング内に引っ込められる。
【0032】
窓121は、使用時に医師が器具110を握った時に、穿刺針保持部を操作することができるように配置するのが好ましい。この目的のために、握り部をハウジングの前端部に形成するのが好ましい。その握り部はハウジングの側面に沿って延びた一対の対向した窪み曲面で形成されている。窓121は、握り部の対向した曲面の一方に形成されている。
【0033】
図5〜図7に示した器具は次のように操作される。使用前においては、穿刺針は、図5に示したように、ハウジングから前方に突出している。医師は、ハウジングの握り部を握って、器具110を保持する。この操作中に、医師は窓121を通して穿刺針保持部を押圧する。この状態で、穿刺針130を患者の静脈に挿入する。フラッシュバックチャンバ150内に血液が流れたことが検出されると、カテーテルを軸線方向へ前進させて、カテーテルを患者に挿入する。カテーテルを穿刺針保持部より前方へ軸線方向に前進させると、医師によって穿刺針保持部に付加されている力がなければ、穿刺針は自由に引っ込むことができる。医師が穿刺針の収納を遅らせることを望まない場合には、穿刺針保持部に対する指圧力を解放すればよい。
【0034】
これに代えて、医師は、スプリング160による付勢力に打ち勝つ十分な力で器具を握り続けることによって、穿刺針の収納を遅らせることができる。医師が器具を解放すると、穿刺針は自動的にハウジング内に収納され、穿刺針の鋭利な先端がハウジング内に封入される。このようにして、器具使用後に穿刺針は自動的に引っ込められ、ボタンを押圧するような余分な操作をする必要がない。同時に、医師が穿刺針の収納を遅らせることにより穿刺針の収納をコントロールすることを望む場合には、余分な操作をしなくてもそれを実行することができる。器具を普通に握るだけで、そのようにコントロールすることが可能となる。然し、医師が穿刺針の収納を遅らせることを望んでも、一旦医師が器具の握りを解放すると、付加的な操作をしなくても穿刺針は結局自動的に収納されることになる。
【0035】
器具110は、調節自在な鼻部122を更に有している。第一の実施形態においては、鼻部22はハウジングと一体に形成されているが、第二の実施形態においては、鼻部は、ハウジングとは別体の部品として形成され、鼻部を受入れるようハウジングの前端部に形成されたソケット部に挿入されている。鼻部122はハウジング120に対して軸線方向に調整することができる。鼻部の軸線方向の位置を調整することにより、カテーテルカニューレから突出したむき出しの鋭利な穿刺針先端の長さを変更することができる。
【0036】
茲で、図8〜図10、特に図8を参照すると、患者にガイドワイヤ270を導入するための医療用器具が参照符号210で示されている。この器具は、患者の静脈に突き刺される穿刺針240を有している。ガイドワイヤ270は穿刺針240を通して患者の静脈に挿入される。ガイドワイヤを患者に挿入した後、汚染された穿刺針が器具を使用している医師の手に触れないように自動的に引っ込む。更に、必要に応じて、器具を使用する医師は穿刺針の収納を遅らせるようにコントロールすることができる。然し、穿刺針の収納を遅らせる場合でも、医師が器具を握るのを止めると、穿刺針は自動的に収納される。
【0037】
図8に示したように、器具は小径の先端部224を備えたハウジング220を有している。穿刺針240は先端部224の開口を貫通して前方へ突出している。ハウジング220の後端部は、ガイドワイヤ270を貫通させてハウジング内に挿入させるため小径な開口を持って実質的に閉塞されている。ゴムシール280がハウジングの後端部に配置されている。ガイドワイヤ270はシールの穴を貫通して延在し、シール280と液密なシールを構成している。更に、シール280は、摩擦作用によりガイドワイヤと係合し、ガイドワイヤを摩擦作用でハウジング220に対して接続している。
【0038】
先端部224の後方部位において、ハウジングは複数の起立隆起にて成るグリップ領域222を有している。通常の操作では、ガイドワイヤの挿入最中にユーザはグリップ領域を握って器具を保持する。
【0039】
スプリング260は穿刺針240を取り囲んで、穿刺針240を後方の収納位置方向へ付勢している。穿刺針保持部230は、図8に示したように、穿刺針がハウジングから前方に突出した状態の突出位置において穿刺針を解放自在に保持している。図9を参照すると、穿刺針保持部230は、細長いアーム232を有し、穿刺針保持部の回転軸を構成するピボットピン233によってハウジング220に回転自在に支持されている。ピボットピン233から離れたアームの端部には、ラッチ235がアーム232と一体に形成されている。このラッチ235はハウジングの内部に突出している。
【0040】
ラッチ235は、穿刺針240の後端部に取り付けられたフラッシュバッグチャンバ250と係合している。フラッシュバッグチャンバは、略円筒形中空チャンバである。穿刺針240の後端部には側穴242が形成されていて、穿刺針を患者の静脈に突き刺した時に、血液がこの側穴240を通ってフラッシュバックチャンバに流入し、それによって穿刺針が静脈に刺されたことを医師が知ることができる。ガイドワイヤ270を前進させる前においては、ガイドワイヤの前端部が穿刺針の側穴242の後方に位置するように、ガイドワイヤ270は穿刺針内に突出している。このように構成することにより、ガイドワイヤが穿刺針の後端部を封止して、血液がフラッシュバックチャンバの後端部から漏れ出すのを防止している。この時、ガイドワイヤは側穴242を閉塞していないので、血液は穿刺針を通ってフラッシュバックチャンバに流入することができる。
【0041】
フラッシュバックチャンバ250の前端部は、空気は透過させるが、フラッシュバックチャンバ内の血液は透過させない多孔質プラグ255によって封止されている。フラッシュバックチャンバの後端部は、ガイドワイヤ270を受入れる小さい開口を備えて、実質的に閉塞されている。ガイドワイヤはフラッシュチャンバの後端部開口を通過して、穿刺針内に挿入されている。これにより、ガイドワイヤがフラッシュバックチャンバの後端部開口を閉塞し、血液がフラッシュバックチャンバから漏れ出すのを防止している。
【0042】
上述した構成においては、穿刺針保持部230は、穿刺針保持部がスプリング260による後方への付勢力に抗して穿刺針を突出状態で保持している施錠位置と、穿刺針保持部が穿刺針を解放して、穿刺針の鋭利な先端がハウジング内に封入されるように穿刺針がスプリングによって後方へ押し遣られる開錠位置との間を回転するようになっている。ガイドワイヤ270が患者に挿入された後に、穿刺針保持部230は施錠位置から開錠位置方向へ自動的に回転する。ガイドワイヤ270は、ガイドワイヤが患者に挿入されるまで、穿刺針保持部が開錠位置方向へ回転するのを防止している。
【0043】
ガイドワイヤを受け入れるための通路236がラッチ235を貫通して延びている。図9に示したように、ガイドワイヤ270は通路236を通り抜けてフラッシュバックチャンバ内に突出している。ガイドワイヤが通路236内に留まっている間は、ラッチは開錠位置方向へ回転することができない。ガイドワイヤ270が通路236より外れるようにガイドワイヤ270の後端部が通路236の前方に移動させられた時に、ガイドワイヤは、径方向外方へのラッチの動きを阻止するようにラッチを保持することができなくなる。スプリング260による後方への付勢力によって、穿刺針と穿刺針に取り付けられたフラッシュバックチャンバは、後方へ付勢されている。これにより、ラッチが径方向外方へ付勢され、それによりアーム232が穿刺針から離れる径方向外方へ回転する。この時、図10に示したように穿刺針がスプリングによってハウジング220内に押し込まれる。
【0044】
上述した如く、器具210を操作する医師は、任意に操作することにより穿刺針の収納を遅らせることができる。図8に示したように、施錠位置では、穿刺針保持部230はグリップ部222のスロット内に留まっている。そして、医師がグリップ部222を握った時に、穿刺針保持部のアーム232も共に握ることになる。医師が穿刺針保持部を握っている限り、穿刺針保持部は開錠位置方向へ回転しない。こうして、ガイドワイヤを患者に挿入した後に、医師は穿刺針の収納を遅らせることができる。然し、医師が穿刺針保持部230を解放すると、穿刺針保持部は開錠位置方向へ回転し、スプリングが穿刺針を収納位置方向へ押し遣る。
【0045】
上述した如く構成した器具210の操作について以下に説明する。先ず、穿刺針240を患者に挿入する。フラッシュバックチャンバに流入する血液により、穿刺針が静脈に挿入されたことを目で確認できる。そして、医師は穿刺針を通してガイドワイヤ270を前進させて、患者の静脈内にガイドワイヤ270を挿入する。ガイドワイヤを前進させるにつれて、ガイドワイヤはラッチ235を貫通している通路236を通過する。ガイドワイヤ270がラッチより前方へ進められると、穿刺針保持部は開錠位置方向へ回転し、スプリングが穿刺針をハウジング220内の後方へと押し遣る。医師が穿刺針の収納を遅らせることを望む場合は、ガイドワイヤをラッチより前方へ進める前に、穿刺針保持部を握る。そして、医師は、穿刺針保持を握り続けながら、ガイドワイヤをラッチより前方へ前進させる。穿刺針を収納させることを望む場合は、医師は単に穿刺針保持部の握りを解放するだけでよい。この時、スプリングが自動的に穿刺針を後方の収納位置へ押し遣る。
【0046】
図11及び図12を参照すると、ガイドワイヤ370を患者に導入するための医療用器具の第二の実施形態が参照符号310で示されている。この器具は患者の静脈に突き刺される穿刺針340を有している。ガイドワイヤ370は穿刺針を通して患者の静脈内に挿入される。ガイドワイヤを患者に挿入した後、汚染された穿刺針が器具を使用している医師に触れないように挿入穿刺針は自動的にハウジング320内に収納される。また、この器具を使用する医師は、必要に応じて、穿刺針の収納を遅らせるようにコントロールすることができる。然し、穿刺針の収納を遅らせる場合にも、医師が器具を握るのを止めると、穿刺針は自動的に収納される。
【0047】
ガイドワイヤ370は実質的に伸長しない半可撓性ワイヤであることが好ましい。ガイドワイヤの前端は丸く、ガイドワイヤは頑丈であることが好ましい。ワイヤは、直径が穿刺針340の孔より僅かに小さく形成されていて、それ故、ワイヤは穿刺針内をスライドすることができるようになっている。
【0048】
この器具310は中空状のハウジング、即ち、胴体320を備えている。穿刺針340はハウジング320の前端部に形成された開口を貫通して前方へ突出している。ハウジング320の後端部は、ハウジング内部に挿入されているガイドワイヤ370が貫通した小径の開口を有して、実質的に閉塞されている。ゴムシール380がハウジングの後端部内に配置されている。ガイドワイヤ370は、シール380の穴を貫通してゴムシールと液密シールを構成している。更に、シール380は摩擦作用でガイドワイヤと係合して、摩擦作用でガイドワイヤをハウジング320に対して接続している。
【0049】
図12に示したように、スプリング360は穿刺針を取り囲んで穿刺針340を後方の収納位置方向へ付勢している。図11に示したように、穿刺針保持部330は、穿刺針340がハウジングから前方へ突出した突出位置において、穿刺針を解放自在に保持している。穿刺針保持部330は、ハウジングと一体形成された細長いアームであり、それ故、アーム330とハウジング320とは一体構造になっている。アーム330は、図12に示した位置へ向かって径方向外側へ偏位するよう構成されている。
【0050】
図11に示したように、使用前においては、アーム330はハウジング320の内部に突出している。アーム330の前端部はラッチ335を構成し、このラッチ335は穿刺針340の後端部に固定されたフラッシュバックチャンバ350に係合している。フラッシュバックチャンバ350は略円筒形の中空チャンバである。穿刺針の後端部には側穴342が形成されていて、穿刺針を患者の静脈に突き刺した時に、血液がこの側穴342を通ってフラッシュバックチャンバに流入し、それによって静脈が穿刺針によって突き刺されたことを医師は知ることができる。ガイドワイヤ370を前進させる前においては、ガイドワイヤの前端部が穿刺針340の側穴342の後方に位置するようにして、ガイドワイヤは穿刺針内に挿入されている。こうして、ガイドワイヤが穿刺針の後端部を封止して、血液がフラッシュバックチャンバの後端部から漏れ出すのを防止している。この時、血液が穿刺針を通ってフラッシュバックチャンバに流入するようにするために、ガイドワイヤは穿刺針の側穴342を閉塞していない。
【0051】
フラッシュバックチャンバ350の前端部は、通気性であるが血液をフラッシュバックチャンバから流出させない多孔質プラグ355によって封止されている。フラッシュバックチャンバの後端部はガイドワイヤ370を受け入れる小さい開口を有して、実質的に閉塞されている。ガイドワイヤはフラッシュバックチャンバの後端部開口を貫通して、穿刺針内に挿入されている。これにより、ガイドワイヤがフラッシュバックチャンバの後端部開口を閉塞し、血液がフラッシュバックチャンバから漏れ出すのを防止している。
【0052】
上述したように構成した器具310においては、穿刺針保持部330は、穿刺針保持部がスプリング360による後方への付勢力に抗して穿刺針を突出させた状態で保持している施錠位置と、穿刺針保持部が穿刺針を解放して、穿刺針の鋭利な先端がハウジング内に封入されるようにスプリングが穿刺針を後方へ押し遣ることを可能にする開錠位置との間を回転するようになっている。ガイドワイヤ370が患者に挿入された後に、穿刺針保持部330は施錠位置から開錠位置方向へ自動的に回転する。ガイドワイヤ370が患者に挿入されるまで、ガイドワイヤは穿刺針保持部が開錠位置方向へ回転するのを阻止している。
【0053】
アーム330は前方のワイヤ通路322と後方のワイヤ通路334を有し、これらワイヤ通路322,334はガイドワイヤ370を受入れている。通路322,334は、アーム330が図11に示したように施錠位置に位置している時に、穿刺針340とほぼ同軸線上に位置するように配置されている。
【0054】
こうして、ガイドワイヤ370は穿刺針保持部アーム330と係合して、アームを施錠位置で解放自在に保持し、それによりスプリング360による付勢力に抗して穿刺針340を突出位置で解放自在に保持している。ガイドワイヤ370がラッチ通路322、334の一方内に留まっている限り、アームは開錠位置方向へ回転することができない。ガイドワイヤ370の後端部が前方のワイヤ通路322の前方へ移動することにより、ガイドワイヤが通路から外れると、ガイドワイヤはアームを径方向外側へ偏位させないように保持することができなくなる。
【0055】
スプリング360による後方への付勢力によって、穿刺針340と穿刺針に取り付けられたフラッシュバックチャンバ350は後方へ付勢されている。これとアーム330の径方向外方への偏位力とにより、アームが径方向外方へ付勢され、それ故、アームは穿刺針から離れる径方向外方へ回転する。この時、図12に示したように、スプリング360が穿刺針をハウジング320内の後方へと押し遣る。
【0056】
図11に示したように、アーム330は、トラフ、即ち、へこみを構成するよう折り曲げられているのが好ましい。そのトラフの上面は穿刺針340の中心線より下方へ離間しているのが好ましい。図11に示したように、ワイヤ通路322とワイヤ通路334との間のガイドワイヤ370の部分は、ハウジング320の外側に位置し、医師が手で操作できるように露出している。こうして、医師は片手で、器具を保持して、ガイドワイヤ370を患者に挿入するよう移動させることができる。より詳述すると、片手で器具を保持しながら、通路322、334間のワイヤ370の露出部分に触れて、ガイドワイヤ370を前方へ移動させて穿刺針340を通して患者に挿入することができる。
【0057】
茲で、図13〜17、特に図13を参照すると、カテーテル450を患者に挿入するためのカテーテル挿入器具410が示されている。この器具410は、患者の血管内にカテーテル450を導入する穿刺針420を有している。挿入器具410は、操作者がカテーテル450を器具から取外した時に、穿刺針420を挿入器具410内に自動的に収納するようになっている。更に、この器具は操作者が穿刺針の収納を遅らせることができるようにも構成されている。これらの機能により、操作者は穿刺針の収納をコントロールすることができると共に、使用後穿刺針を自動的に収納して、穿刺針の再使用を防止し、安全な廃棄を確実にすることができる。
【0058】
カテーテル挿入器具410は小径の先端部434を備えた略円筒形の中空胴体、即ち、ハウジング430を有している。穿刺針420は、それの前端部がハウジング先端434に形成された穴を貫通して前方に突出した状態で解放自在に保持されている。穿刺針は突出位置と収納位置間との間で移動可能になっている。収納位置で、穿刺針はハウジング内に封入される。
【0059】
カテーテル450は、穿刺針420がカテーテルを貫通して器具の前端部から突出した状態で、カテーテル挿入器具410の前端部に取付けられている。カテーテル450は、カニューレ452とハブ454とから構成されている。カニューレ452は穿刺針420の前部分を受けて覆い、穿刺針の鋭利な先端はカニューレの先端開口より外方へ僅かに延びている。
【0060】
カテーテル450は、カテーテルハブ454に取付けられた可撓性の細長いカニューレ452を有している。カニューレ452は、穿刺針を被覆するように穿刺針とテレスコープ式に嵌め合わされていて、穿刺針の鋭利な先端はカニューレの前端部より突出している。穿刺針の鋭利な先端422の後端は、穿刺針傾斜面ヒール(heel of needle bevel)と呼ばれている。穿刺針傾斜面ヒールとカニューレの前端部との間の穿刺針長さは、見かけ長さ(lie length)と呼ばれている。その見かけ長さは、調整できるのが望ましい。
【0061】
図示実施形態においては、穿刺針の延長位置を一定にし、使用前にカテーテルを胴体430に取付ける時に、カテーテル450の位置を調整することにより見かけ長さを調整することができる。胴体430の先端部はカテーテルの位置を調節できるように調整可能になっている。
【0062】
茲で、図15を参照すると、胴体430は変位自在な先端部434を備えている。この実施形態においては、先端部434は、胴体430とは別体に形成されたもので、胴体430の前端部の開口内に挿入されている。先端部434は外周面にフランジ439を備え、そのフランジに対してカテーテルハブ454の後端部455が定置されている。従って、先端部434の軸線方向位置を変えることにより、フランジ439の軸線方向位置を調整して、見かけ長さを調整することができる。
【0063】
先端部434は、胴体430の前端部の内径より僅かに小さい外径を有する略円筒形の後方部分を備えている。先端部434の後端の外側面から複数の顎438が突出している。顎438を胴体430の内側面と係合させることによって、先端部434は胴体に接続されている。フランジ439の軸線方向の位置は、胴体430に挿入されている先端部434の後端の距離によって決まる。先端部を挿入する長さを調整することによりフランジ439の軸線方向の位置を調整して、見かけ長さが調整される。
【0064】
図15に示したように、略円筒形チャンバ470が穿刺針の後端部に取り付けられている。チャンバ470はフラッシュバックチャンバを構成している。フラッシュバックチャンバ470は、穿刺針420の後端部を取り囲むように穿刺針420の後端部に取り付けられている。フラッシュバックチャンバの後端部は多孔質プラグ472によって封止されている。多孔質プラグ472は、空気がチャンバ470から外へ流れるのは許すものの、血液がフラッシュバックチャンバ470から漏れ出るのを阻止する。
【0065】
穿刺針420は、付勢手段460によって後方の収納位置方向へ付勢されている。図示実施形態においては、付勢手段は穿刺針を取り囲んだコイルスプリング460である。このスプリング460の前端は先端部434の内側に形成された肩部に支えられている。スプリングの後端はフラッシュバックチャンバ470に対して支えられて、フラッシュバックチャンバとフラッシュバックチャンバに取り付けられた穿刺針とを後方へ付勢している。これに代えて、スプリング60をエポキシ等の接着剤で穿刺針に連結してもよい。穿刺針420とフラッシュバックチャンバ470は、ハウジング430に回転自在に接続された穿刺針保持部、即ち、レバーアーム440によって、スプリング460による付勢力に抗して解放自在に保持されている。
【0066】
穿刺針保持部440は、前方部分444と後方部分448とを有している。図示実施形態においては、前方部分444はピボット442から前方へ延び、後方部分448はピボット442から後方へ延びている。カテーテルを挿入器具410に取り付けた時に、保持部440の前方部分444の内側面はカテーテル450のハブ454と接触する。保持部440の前方部分444は、カテーテルハブ454の外側面に接触即ち係合させるようにするのが好ましい。これに代えて、保持部440の前方部分をカテーテルハブ454の内側面に係合させるようにしてもよい。カテーテルを挿入器具に取り付けた時に、穿刺針保持部440の後方部分448はピボット点及びカテーテル450より後方に位置する。
【0067】
穿刺針保持部440の後方部分448は、ラッチ446を備えた解放レバーを構成している。この解放レバーは、施錠位置と開錠位置との間を回転自在になっている。施錠位置では、解放レバーは器具410の軸線と略平行に延びている。解放レバーの端部に設けられたラッチ446は、胴体430の側面に形成された開口432を貫通し、それ故、フラッシュバックチャンバ470の後端部がラッチと当接して穿刺針は突出位置に保持されている。
【0068】
穿刺針420の鋭利な先端422を、図13に示したように穿刺針の鋭利な先端の傾斜面が胴体430に対して周方向で位置決めされるよう位置合わせするのが望ましい。より詳述すると、穿刺針の鋭利な先端の最前端点を穿刺針傾斜面ヒールより下方に位置させるように穿刺針の鋭利な先端を周方向で位置決めさせるのが好ましい。図示実施形態においては、後述する如く、穿刺針保持部と協働して穿刺針の傾斜面の位置合わせをし易くするようにフラッシュバックチャンバ470は構成されている。
【0069】
フラッシュバックチャンバ470は略円筒形に形成されていて、フラッシュバックチャンバの長手方向に沿って延びた平坦面を有している。フラッシュバックチャンバを穿刺針に接続する時に、穿刺針の傾斜面をフラッシュバックチャンバの平坦面に対して所望の周方向向きに位置させる。図15を参照すると、穿刺針保持部の後方部分448は、フラッシュバックチャンバ470と協働して穿刺針420を胴体430に対して周方向で整合させる略平坦な面、即ち、棚449を有している。図15に示したように、穿刺針保持部440が施錠位置に位置している時に、フラッシュバックチャンバ470の平坦面は穿刺針保持部の棚449と整合し係合している。こうして、フラッシュバックチャンバ470とフラッシュバックに取り付けられた穿刺針420は、穿刺針保持部及び胴体430に対して周方向に位置決めされている。
【0070】
カテーテルを挿入器具に取り付けた時に、穿刺針保持部レバーの前方部分444とカテーテルハブ454とが係合することにより、レバーが開錠位置方向へ回転するのを防止する。保持部440の後方部分448をハウジング430の側部から離れる方向へ付勢するのが好ましい。図示実施形態においては、スプリング460による後方付勢力の一部をレバーを径方向外方へ偏位させる力としてレバーに伝達させるようにするために、フラッシュチャンバと係合するラッチ446の面は傾斜している。カテーテル450をレバーの端部を越えて取り外すと、保持部は開錠位置方向へ自由に回転できるようになり、それによりラッチ446が穿刺針420の後端との係合状態から解除されるように移動する。この時、穿刺針はハウジング430内の後方へスプリング460によって押し遣られる。
【0071】
操作者は、必要に応じて、後述する如く穿刺針の引っ込みをコントロールすることができる。穿刺針保持部440は、穿刺針保持レバーの長手方向軸を横切るリブ445を備えている。図13及び図14に示したように、胴体430は互いに並行に離間配置された複数のリブ431から構成されるグリップ部を有している。穿刺針保持部のリブ445は、グリップリブ431と略平行に配置されて、グリップ部の一部を構成している。こうして、操作者が穿刺針の収納をコントロールしたい場合には、器具410のグリップ部を握る時に、穿刺針保持部のリブ445を握ればよい。
【0072】
穿刺針保持部のリブ445を握ることにより、操作者は穿刺針保持部440が施錠位置から開錠位置方向へ回転するのを阻止することができる。操作者がカテーテル450を患者に挿入した後に、穿刺針保持部の前方部分444をカテーテルから取外すと、穿刺針保持部が開錠位置方向へ回転するのを許されるようになる。然し、操作者が穿刺針保持部のリブ445を補助手動部材として操作して、穿刺針保持部が開錠位置方向へ回転するのを阻止することができる。操作者は、穿刺針を収納させることが必要になるまで、穿刺針保持部のリブ445に内側方向への力を与えることにより穿刺針の収納をコントロールすることができる。カテーテル450を穿刺針保持部440から解放させた後に、操作者が穿刺針保持部のリブ445を解放すると、穿刺針保持部は自由に開錠位置方向へ回転できるようになり、穿刺針はスプリング460によって胴体430内の後方へ押し遣られる。こうして、カテーテル450が挿入器具のハウジングから外されるまで、この器具は穿刺針の収納を阻止する。更に、この器具は、使用後の穿刺針の収納を確実にすると共に、穿刺針の収納タイミングを操作者がコントロールすることができるように構成されている。
【0073】
カテーテル挿入器具は、図13に示された状態で最初に提供される。カテーテル挿入器具410の操作者は、最初に穿刺針先端422を患者の血管に突き刺して用いる。穿刺針先端422を患者の血管に突き刺すと、血液は穿刺針420を通って流れて、透明なフラッシュバックチャンバ470に集められる。フラッシュバックチャンバ470内に存在する血液は、血管を適正に突き刺したこと及びカテーテル450が正しい位置にあることを操作者に目を通して確認させるものとして作用する。この後、操作者はカテーテルハブ454を穿刺針420の先端422の方向へ、即ち、器具410の前端部から離れるようにスライドさせて、カテーテルカニューレ452を患者の血管に挿入する。
【0074】
器具からカテーテルハブ454を取外してカテーテルハブのリム455がレバー444の端部を通過した時に、保持部440が自動的に回転して穿刺針の端部から外れる。然し、カテーテルハブを取外す前に、操作者が穿刺針保持部のリブ445を握ることにより、一時的に穿刺針の自動収納を阻止することができる。操作者が穿刺針保持部のリブ445を解放すると、穿刺針保持部は穿刺針420との係合状態から解放されるように回転する。それにより、穿刺針は解放されて、スプリング460の付勢力によって、カテーテル挿入器具410の胴体430内に引っ込められる。操作者は、通常のカテーテル挿入操作において必要とされる作業以外に追加の作業を全く必要とせずに、穿刺針の収納を実行することができる。同時に、操作者は、必要に応じて穿刺針の収納を遅らせるようにすることができる。
【0075】
図15を参照すると、先端部434は、穿刺針420の外径より僅かに大きい内径を有する収縮部435を有している。その収縮部435と穿刺針との間の緊密な嵌め合いにより、後述の再栓止をする間に、血液が胴体430内へ漏れるのを抑制する。更に、先端部434の前端から外側環状リブ437が径方向に突出している。このリブ437はカテーテルハブ454の内部キャビティと協働して液密シールを構成している。内部キャビティにはテーパーが付けられていて。内部キャビティは先端部434のリブ437の直径より大きい直径を有している。
【0076】
略円筒状のゼロドラフトゾーン(zero draft zone)を内部キャビティの最先端部分に形成するのが好ましい。このゼロドラフトゾーンは先端部434のリブ437の外径と同一の内径を有する。こうして、カテーテル450を胴体430に取り付けた時に、リブ437がカテーテルハブ454の内部キャビティのゼロドラフトゾーンと係合して液密シールを構成する。
【0077】
カテーテルを患者に挿入し、穿刺針420を収納した後に、血液がカテーテルから漏れ出すのを防止するために、器具の先端部434をカテーテル450に挿入してカテーテルを再栓止することができる。この目的のために、カテーテル450及び(又は)穿刺針保持部440の前端は、穿刺針保持部の前端がカテーテルの再栓止を妨げないように、穿刺針保持部が回転し易い構成になっている。より詳述すると、穿刺針保持部がカテーテル450のリム455と係合した時に、穿刺針保持部の前端部444が図13及び図15の状態から下方へ回転するように、穿刺針保持部440の前端縁は丸く形成されている。これに代えて、穿刺針420から穿刺針保持部を取り外すのに十分な程度にカテーテルを器具から取り外した後に、先端部434をカテーテル450に対して軸線方向前方へ移動させた時に、穿刺針保持部440が回転し易くするためにリム455を丸く形成するか或いはリム455にテーパーを付けることができる。
【0078】
穿刺針を収納した後に胴体430の先端部434をカテーテルキャビティに挿入することにより、カテーテル450を再栓止し、それにより環状リブ437がゼロドラフトゾーンと係合するようになる。リブ437とゼロドラフトゾーンは、血液が先端部434の周囲でカテーテルから漏れないようにするために、互いに協働して液密シールを構成している。更に、引っ込められた穿刺針420は先端部434の収縮部435と共にシールを構成して、カテーテル450から胴体430方向への血液の漏れを少なくし又は防いでいる。収納位置では、ラッチ446が穿刺針を偏位及び(又は)変形させる。
【0079】
先端部434は、その外周面に窪み部436を更に有している。当初は、操作者が窪み部436を見ることができないようにカテーテル450が先端部434を取り囲んでいる。操作者がカテーテル450を先端部434から取外すにつれて、窪み部436は露出されて操作者は窪み部436を見ることができるようになる。窪み部436が露出した後に、カテーテル450の取外しを継続して行なってカテーテルを穿刺針保持部440の前端縁を越えて移動させ、それにより穿刺針保持部が開錠位置方向へ回転する。こうして、窪み部は、カテーテルの継続した前方移動により穿刺針の収納が行われることを知らせるための可視サインをを操作者に提供するよう機能する。好ましくは、先端部の窪み部436と残りの外表面との間に見た目の相違を持たせるために窪み部436に質感を出させるようにするとよい。それに代えて、穿刺針保持部440の前端より軸線方向後方の先端部434の周回りに色付きラインのような、異なる可視インジケータを設けるようにしてもよい。
【0080】
図18〜図20を参照すると、カテーテル挿入器具の別の実施形態510が図示されている。図18〜図20に示した別の実施形態には、図13〜図17を参照して上述した実施形態の部品と同様の部品が組み込まれている。図13〜図17に示した部品と同様の部品は、図18〜図20においては、図13〜図17に示した参照符号数字に500を加えた参照符号数字で示されている。
【0081】
カテーテル挿入器具510は、胴体、即ち、ハウジング530から前方へ突出した挿入穿刺針520を有している。穿刺針520は、解放レバーを有する穿刺針保持部540によって解放自在に保持されている。穿刺針保持部540は、ハウジング530の先端部534に取り付けられたカテーテル550と係合している。こうして、カテーテル550は穿刺針保持部540の回転を防止し、カテーテルが器具510のハウジング530に取り付けられている限り穿刺針520の収納を阻止している。
【0082】
図13〜図17を参照して上述した実施形態と同様に、図18のカテーテル挿入器具510も、穿刺針を収納させるための別の手動操作をすることなく、穿刺針を自動的に引っ込めることができるよう作動する。穿刺針保持部540は開錠位置方向へ付勢され、それ故、カテーテル550を挿入器具510から取り外した時に、穿刺針保持部540は、穿刺針520を解放する開錠位置方向へ自動的に回転する。この時、スプリング560によって穿刺針520がハウジング530内の後方へ押し遣られて穿刺針520の鋭利な先端が安全にハウジング内に封入される。
【0083】
更に、上述した実施形態と同様に、器具510は、操作者が必要に応じて穿刺針の引っ込みを遅らせることを可能にする手動操作可能な露出面を有している。より詳述すると、この器具は、穿刺針保持部540に連結された爪549と係合する制御ボタン580を備えている。制御ボタン580は、施錠位置と開錠位置との間で作動する。施錠位置では、制御ボタンは、穿刺針保持部540の爪549に係合して、穿刺針保持部が穿刺針520を解放する開錠位置方向へ回転するのを防止している。制御ボタンは、穿刺針保持部540の開錠位置に相当する制御ボタンの開錠位置方向へ移動自在になっている。
【0084】
制御ボタン580と爪549とは、対になった傾斜面を有している。穿刺針保持部540が回転した時に、爪及び制御ボタンの対になった傾斜面が、制御ボタンを上方の開錠位置方向へ移動させる縦方向の力をボタンに対して付加する。従って、操作者が操作しなくとも、カテーテル550をハウジング530から取り外した時に、穿刺針保持部540が開錠位置方向へ回転して、制御ボタンを開錠位置方向へ移動させる。この時、穿刺針はハウジング内に引っ込められる。
【0085】
カテーテルを取外す前に、操作者は、制御ボタン580を押すことにより穿刺針の引っ込みを遅らせることができる。操作者によって制御ボタンへ加えられる下方への押圧力によって、爪549を所定位置にロックして、穿刺針保持部の回転を防止する。カテーテルをハウジングから取り外した後に、操作者が制御ボタンを押している限り、穿刺針保持部は穿刺針を保持する。操作者が制御ボタンを解放するや否や、爪が自由となり、穿刺針保持部は開錠位置方向へ回転して、穿刺針は引っ込められる。このようにして、器具使用後の挿入穿刺針の引っ込みは自動的に行われるが、操作者は必要に応じてその引っ込みを遅らせることができる。
【0086】
この実施形態のフラッシュバックチャンバ520は、上述したフラッシュバックチャンバ470におけるように、フラッシュチャンバが穿刺針420の開口後端を取り囲み、穿刺針保持部440がフラッシュバックチャンバと係合するように構成することができる。これに代えて、この実施形態では、穿刺針520の後端がフラッシュバックチャンバ570から後方に突出し、穿刺針保持部540が穿刺針の後端と係合するように構成することができる。穿刺針の後端を塞いで、血液がハウジング内に流れ込むのを防止している。更に、穿刺針の側部には側穴が形成されていて、フラッシュバックチャンバがその側穴を取り囲んでいる。患者からの血液は、側穴を通ってフラッシュバックチャンバ内に流入し、患者の静脈を突き刺したことを示す可視インジケータとして役立つ。
【0087】
図22〜図25を参照すると、カテーテル挿入器具の別の実施形態610が図示されている。この器具610には、上述した実施形態の部品と同様の部品が組み込まれている。その各部品は、上述した実施形態における各部品に付された参照符号数字に600を加えた参照符号数字で示されている。
【0088】
カテーテル挿入器具610は、胴体、即ち、ハウジング630から前方へ突出した挿入穿刺針620を有している。穿刺針620は、解放レバーを備えた穿刺針保持部640により解放自在に保持されている。穿刺針保持部640の一端部は、ハウジング630の先端部634に取り付けられたカテーテル650と係合している。このような構成においては、カテーテルが保持部640を介してハウジング630に取り付けている限り、カテーテル650は穿刺針保持部640が穿刺針620を解放するのを阻止している。
【0089】
図13〜図21を参照して説明した上述の実施形態と同様に、図22のカテーテル挿入器具610も、別の手動操作を必要とすることなく、穿刺針を自動的に収納させるように作動する。穿刺針保持部640は開錠位置方向へ付勢され、それ故、カテーテル650を挿入器具610から取り外した時に、穿刺針保持部640が開錠位置方向へ自動的に回転して、穿刺針620を解放する。この時、スプリング660によって穿刺針620がハウジング630内の後方へ押し遣られて、穿刺針620の鋭利な先端が安全にハウジング内に封入される。
【0090】
更に、上述した実施形態と同様に、この器具610は操作者が必要に応じて穿刺針の引っ込みを遅らせることを可能にする手動操作可能な露出面を有している。より詳述すると、ハウジングは、操作者が器具610を握るための表面を構成しているグリップ部631を有している。穿刺針保持部640はグリップ部分631の近くに配置されており、それ故、操作者は穿刺針保持部を簡単に操作して、穿刺針保持部が開錠位置方向へ回転するのを阻止することができる。
【0091】
図22〜図23を参照すると、ハウジング630は、互いに離間した複数の平行なリブから構成されたグリップ部631を有している。そのリブは確実な滑り止め表面を構成する凸状曲面を形成している。図23に示したように、ハウジングは、器具を握るための対向したグリップ表面を有しているものであってもよい。
【0092】
この実施形態においては、ハウジングは、ハウジングの一側面上にグリップ部631を有し、穿刺針保持部640の後方部分648は、グリップ部631と対向するハウジングの他方の側面上に配置されている。穿刺針保持部640の後方部分648の露出面は、グリップ部631と同じように構成され且つ同じような表面形状になっている。従って、使用時に操作者が器具を握る時に、操作者が器具を普通に握ることにより、穿刺針保持部の後方部分が押される。操作者が穿刺針保持部の後方部分を押している限り、穿刺針を引っ込めるよう解放させる方向である径方向外方へ穿刺針保持部が回転するのを阻止する。
【0093】
この器具610は、使用前にハウジング全体の長さが縮められているテレスコープ式のハウジングを有している。これに代えては、器具610では、上述した器具410、510が有しているのと同様の単一のハウジングを用いることもできる。
【0094】
この器具610のハウジング630は、二つの部品、即ち、外側スリーブ690と内側スリーブ695とを有している。内側スリーブ695は外側スリーブ690内にテレスコープ式に嵌め込まれている。使用前においては、内側スリーブ695は外側スリーブ690の後端部内に収納されている。穿刺針620が引っ込められた時に、フラッシュバックチャンバ670とそれに取り付けられた穿刺針は内側スリーブと係合し、穿刺針が引っ込められるに応じて、内側スリーブは後方へ押し遣られる。このようにして、内側スリーブが後方へ移動することにより、ハウジングの全体の長さが伸長して穿刺針の全体を収納することができるようになる。
【0095】
ハウジングは、内側スリーブ695が外側スリーブ690内に再び挿入されるのを防止するための前側ストッパーを備えている。また、ハウジングは、内側スリーブが外側スリーブの後端より更に後方へ移動するのを防止する後側ストッパーを備えている。
【0096】
内側スリーブ695の側面には、一対の弾性ロックタブ697が形成されていて、このロックタブ697は、外側スリーブ690の後端と協働して前側ストッパーとして機能する。ロックタブ697は径方向外方へ偏位している。内側スリーブ695が外側スリーブ690内に収納されている状態では、ロックタブ697は、内側スリーブの外面とほぼ面一になるように外側スリーブの内面と係合している。ロックタブが外側スリーブの後方に位置するように内側スリーブを後方に移動させた時に、ロックタブは、図23及び図24に示したように径方向外方へ弾発偏位する。従って、穿刺針を引っ込めた後に、内側スリーブを前方に移動させようとすると、ロックタブが外側スリ−ブの後端に係合して内側スリーブの前方への移動を阻止する。
【0097】
外側スリーブ690には、環状リップ693が設けられ、この環状リップ693は、内側スリーブ695の内周面に設けられたフランジ696と係合して、後側ストッパーとして機能する。図23及び図24を参照すると、環状リップ693は外側スリーブ690の後端から径方向内方へ突出している。フランジ696は、内側スリーブ695の前端から径方向外方へ突出している。内側スリーブが後方へ移動した時に、フランジ696は環状リップ693に係合し、内側スリーブが更に後方へ移動するのを阻止する。
【0098】
本明細書を通して使用した用語及び表現は、本発明の説明上便宜的に用いたに過ぎないものであって、本発明を何ら限定するものではない。そのような用語及び表現を用いたからと言って、そのことにより、図示及び上述した本発明の何らかの均等物又はその一部を除外することを意図するものではない。特許請求の範囲で特定されている本発明の範囲及び精神の範囲内で、種々の変更を加えることができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 引っ込み自在な穿刺針を有するカテーテル挿入器具の斜視図である。
【図2】 図1に示した器具の断面図である。
【図3】 図2に示した器具の断面図で、穿刺針が引っ込められる前にカテーテルが取り外された状態の器具を示した図である。
【図4】 図2に示した器具の断面図で、穿刺針が引っ込められた後の器具を示した図である。
【図5】 引っ込み自在な穿刺針を有するカテーテル挿入器具の別の実施形態の断面図である。
【図6】 図5に示した器具の断面図で、穿刺針が引っ込められる前にカテーテルが取り外された状態の器具を示した図である。
【図7】 図5に示した器具の断面図で、穿刺針が引っ込められた後の器具を示した図である。
【図8】 ガイドワイヤを患者内に導入するための引っ込み自在な穿刺針器具の断面図である。
【図9】 図8に示したガイドワイヤ導入器具の拡大部分断面図である。
【図10】 図8に示したガイドワイヤ導入器具の断面図で、穿刺針が引っ込み位置にある状態を示した図である。
【図11】 ガイドワイヤを患者内に導入するための引っ込み自在な穿刺針器具の第二の実施形態を示した断面図である。
【図12】 図11に示したガイドワイヤ導入器具の断面図で、穿刺針が引っ込み位置にある状態を示した図である。
【図13】 本発明による引っ込み自在な穿刺針を有するカテーテル挿入器具の側面図である。
【図14】 図13に示したカテーテル挿入器具の底面図である。
【図15】 図13に示したカテーテル挿入器具の断面図である。
【図16】 図13に示したカテーテル挿入器具の穿刺針保持部の底面図である
【図17】 図16に示した穿刺針保持部の側面図である
【図18】 本発明による引っ込み自在な穿刺針を有するカテーテル挿入器具の別の実施形態を部分的に断面で示した側面図である。
【図19】 図18に示したカテーテル挿入器具の拡大部分図で、ロックボタンが施錠位置にある状態を示した図である。
【図20】 図18に示したカテーテル挿入器具を部分的に断面で示した側面図で、穿刺針が引っ込み位置にある状態を示した図である。
【図21】 図20に示したカテーテル挿入器具の拡大部分図で、ロックボタンが開錠位置にある状態を示す。
【図22】 本発明による引っ込み自在な穿刺針を有するカテーテル挿入器具の第二の実施形態を示した断面図である。
【図23】 図22に示したカテーテル挿入器具の断面図で、穿刺針が引っ込み位置にある状態を示した図である。
【図24】 図23に示したカテーテル挿入器具の拡大部分断面図である。
【図25】 図23に示したカテーテル挿入器具の拡大部分断面図である。
Claims (25)
- 中空ハウジングと、
カテーテルと、
鋭利な先端を有して、使用時に前記先端が露出する延長位置と、前記鋭利な先端が封入されるよう前記ハウジング内に収納される収納位置との間を移動可能な穿刺針と、
前記穿刺針を前記収納位置方向へ付勢する付勢手段と、
前記穿刺針に固定的に接続され、前記カテーテルと係合して、前記穿刺針を前記延長位置で解放自在に保持する細長いアームとを有し、
前記カテーテルが前記アームから外れて前記穿刺針が解放されると、前記穿刺針が前記付勢手段によって前記収納位置へ押し遣られるようになっていることを特徴とする医療用器具。 - 前記穿刺針を前記収納位置に施錠するロック機構を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の医療用器具。
- 前記細長いアームが前記ハウジングと解放自在に係合するラッチを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の医療用器具。
- 前記細長いアームと一体に形成されたフラッシュバックチャンバを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
- 前記穿刺針が収納される前に、前記細長いアームが回転運動しないように規制されていることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
- 前記医療用器具が先端部を備え、その先端部に前記カテーテルが取り付けられ、前記ハウジングがリップ部を有し、前記カテーテルを前記先端部に取り付けた時に、前記カテーテルが前記アームを前記リップ部と係合させて、前記付勢手段による付勢力に抗して前記穿刺針を保持させるようにしたことを特徴とする、請求項3に記載の医療用器具。
- 前記アームが、前記カテーテルと係合する第一の部分と、
前記穿刺針に接続された第二の部分と、
前記第一の部分と前記第二の部分との間のラッチとを有し、
前記ラッチが、前記ハウジングに設けられたリップ部と係合していることを特徴とする、請求項1に記載の医療用器具。 - 前記ラッチと前記リップとが対になった係合傾斜面を有していることと特徴とする、請求項7に記載の医療用器具。
- 前記カテーテルが外側面を有するカテーテルハブを有し、前記アームが前記カテーテルハブの前記外側面と係合して前記穿刺針を解放自在に保持していることを特徴とする、請求項1に記載の医療用器具。
- 前記アームが前記ハウジングの一部分と係合するラッチを有し、前記アームが径方向へ弾発偏位自在で、それにより、前記カテーテルを前記アームから外した時に、前記ラッチが前記ハウジングの前記一部分から外れるように前記アームが径方向へ偏位するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の医療用器具。
- 中空ハウジングと、
前記ハウジングから前方に延びる延長位置と前記ハウジング内に封入される収納位置との間を移動可能な穿刺針と、
前記穿刺針を前記収納位置方向へ付勢する付勢手段と、
前記ハウジングに取り付けられて、施錠位置と開錠位置との間を回転可能なレバーと、
前記レバーと前記穿刺針とを貫通して突出し、前記レバーと係合して、前記レバーが開錠位置方向へ回転するのを阻止するガイドワイヤとを有し、
前記ガイドワイヤを患者に挿入すると、前記レバーがガイドワイヤから外れて、前記レバーが開錠位置方向へ回転し、前記穿刺針が前記付勢手段によってハウジング内の後方へ押し遣られるようになっていることを特徴とする医療用器具。 - 前記レバーが手動操作可能な露出面を有し、その露出面を操作者が握ることにより前記穿刺針の収納を遅らせることができるようにしたことを特徴とする、請求項11に記載の医療器具。
- 前記医療用器具が、前記穿刺針と液密に連通された液チャンバを備えていることを特徴とする、請求項11に記載の医療器具。
- 前記レバーが前記ハウジングに固定的に連結されていることを特徴とする、請求項11に記載の医療用器具。
- 前端部を有する中空ハウジングと、
前記ハウジングの前記前端部に連結された先端部と、
前記先端部に取り付けられたカテーテルと、
前記ハウジングから前方に延びる延長位置と前記ハウジング内に封入される収納位置との間で移動可能な穿刺針と、
前記穿刺針を前記収納位置方向へ付勢する付勢手段と、
前記ハウジングに取り付けられて、施錠位置と開錠位置との間を回転可能なレバーとを有し、
前記レバーが、前方部と、後方部と、前記レバーを前記施錠位置に保持させるために手動操作される露出面とを有し、
前記前方部が前記カテーテルと係合して前記レバーが開錠位置方向へ回転するのを阻止し、前記後方部が前記付勢手段による付勢力に抗して前記穿刺針を保持し、前記カテーテルを前記先端部から取り外すと、前記カテーテルが前記レバーとの係合から外れて前記レバーの開錠位置方向への回転を許容し、その結果、前記付勢手段によって前記穿刺針が前記ハウジング内の後方へ押し遣られるようになっていることを特徴とする医療用器具。 - 前記カテーテルが内面と外面とを有し、前記レバーの前方部が前記カテーテルの外面と係合していることを特徴とする、請求項15に記載の医療用器具。
- 前記医療用器具が、前記穿刺針と液密に連通している液チャンバを有していることを特徴とする、請求項15に記載の医療用器具。
- 前記レバーが前記ハウジングに固定的に接続されていることを特徴とする、請求項15に記載の医療器具。
- 前記レバーの後方部が前記カテーテルから後方に離間されていることを特徴とする、請求項15に記載の医療用器具。
- 前記カテーテルが、前記カテーテルを前記先端部に取り付ける取付け位置と、前記カテーテルを前記ハウジングから取り外す取外し位置との間を移動可能であって、前記カテーテルが前記取付け位置と前記取外し位置との中間位置に移動した時に、操作者に対して表示シグナルを提供するインジケータを前記先端部が有していることを特徴とする、請求項15に記載の医療用器具。
- 前記表示シグナルが可視シグナルであることを特徴とする、請求項20に記載の医療用器具。
- 前端部を有する中空ハウジングと、
前記ハウジングの前記前端部に連結された先端部と、
前記先端部に取り付けられたカテーテルと、
前記ハウジングから前方に延びる延長位置と前記ハウジング内に封入される収納位置との間を移動可能な穿刺針と、
前記穿刺針を後方の前記収納位置方向へ付勢する付勢手段と、
施錠位置と開錠位置との間を移動可能で、前記施錠位置において前記カテーテルと解放自在に係合して、前記付勢手段による付勢力に抗して、前記穿刺針を前記延長位置に解放自在に保持させる穿刺針保持部と、
前記穿刺針保持部を前記施錠位置に保持させるために手動操作可能な露出面とを有していることを特徴とする医療用器具。 - 径方向へ偏位自在なアームを有する穿刺針ハブを成形する工程と、
穿刺針を前記穿刺針ハブにほぼ永久的に取り付ける工程と、
前記穿刺針ハブを後方へ付勢する付勢手段を提供する工程と、
前記穿刺ハブをハウジングの第一の部分内に挿入する工程と、
前記アームと係合させるようにカテーテルを前記穿刺針に取り付けて、前記アームを径方向で前記ハウジングの第二の部分と係合させることにより、前記付勢手段による付勢力に抗して解放自在に前記穿刺針を保持させる工程とを有していることを特徴とする医療用器具の製造方法。 - アームを有する穿刺針ハブを成形する前記工程が、前記アームが径方向へ偏位できるように前記アームを可撓性プラスチックにて成形する工程を含んでいることを特徴とする、請求項23に記載の医療用器具の製造方法。
- 前記穿刺針と液密に連通するようにフラッシュチャンバを前記穿刺針ハブに一体に成形する工程を含んでいることを特徴とする、請求項23に記載の医療用器具の製造方法。
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