JP3796195B2 - 圧延油ヘッダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間圧延機により圧延される圧延材料の表面に、圧延油をスプレーする圧延油ヘッダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼板などの圧延材料を冷間圧延する際には、圧延ロールと圧延材料との間の摩擦係数を低減させてヒートスクラッチと呼ばれる圧延疵を防止するために、圧延油ヘッダに設けられた多数のスプレーノズルから圧延材料に向けて圧延油をスプレーしている。圧延油は油分と水分その他の複数成分の混合液であり、静置すると油分が分離し易い性状を持つものである。
【0003】
図1は従来の圧延油ヘッダを示すもので、棒状のヘッダ本体1に多数のスプレーノズル2が設けられている。圧延材料の幅は多種多様であるため、圧延油の無駄を省くためには圧延材料の幅に応じて使用するスプレーノズル2の数を変えることが好ましい。そこで両端部のスプレーノズル2に弁3を取付け、図示のように幅広鋼板を圧延する場合には全部のスプレーノズル2を使用し、幅狭鋼板を圧延する場合には弁3を閉じて中央部のスプレーノズル2のみを使用する「幅切り」が試みられている。
【0004】
ところがこのような「幅切り」を行い、使用するスプレーノズル2の数を減らすと、ヘッダ1内の圧延油の流速が低下するために圧延材料の幅方向の油分濃度が不均一になる。図2はその具体例を示すグラフであり、幅広鋼板の場合には油分濃度は比較的均一であるが、幅狭鋼板の場合には両端部の油分濃度が高く、中央部では極端に低くなっている。これはヘッダ1の両端部に行くほど流速が低下して圧延油の攪拌力が低下し、油分が浮上して端部に凝集するためである。このような油分濃度の不均一はヒートスクラッチと呼ばれる圧延疵の発生を招くため、従来は実ラインで「幅切り」を行なうことはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決して、圧延材料の板幅に応じて「幅切り」を行った場合にも各スプレーノズルの油分濃度を均一に維持し、ヒートスクラッチの発生を防止することができるようにし、実ラインで「幅切り」を行なうことができるようにした圧延油ヘッダを提供するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明の圧延油ヘッダは、多数のスプレーノズルを備えたヘッダ本体の内部に、ヘッダ端部の圧延油供給ノズルから供給された圧延油を、次第に拡径したディフューザ部を通じてヘッダ本体内部の中央部に向かって噴出するとともに、そのヘッダ内端部付近の圧延油を吸引する2個のイジェクタを、左右対称かつ圧延油がヘッダ本体内でイジェクタ内部を通って循環できるように、イジェクタ両端をヘッダ端部内側と密着させないように、また中央側で相互に間隔を持たせて設けたことを特徴とするものである。
【0007】
また同一の課題を解決するためになされた請求項2の発明の圧延油ヘッダは、多数のスプレーノズルを備えたヘッダ本体の内部に、ヘッダ中央の圧延油供給ノズルから供給された圧延油を、次第に拡径したディフューザ部を通じてヘッダ本体の端部に向かって噴出するとともに、ヘッダ内中央部付近の圧延油を吸引する2個のイジェクタを、左右対称かつ圧延油がヘッダ本体内でイジェクタ内部を通って循環できるように、イジェクタ両端をヘッダ端部内側と密着させないように、また中央側で相互に間隔を持たせて設けたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の圧延油ヘッダは、ヘッダ本体の内部に2個のイジェクタを左右対称に設け、圧延油供給ノズルから供給された圧延油を外向きまたは内向きに噴出するとともに、イジェクタの基部周囲から吸引した圧延油をこの噴出流に同伴させて同方向に噴出させる構造である。このためヘッダ本体の内部で圧延油は激しく攪拌されて滞留部が生じないので、幅方向の油分濃度を均一とすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図3は請求項1の発明の実施形態を示す断面図であり、10は前面に多数のスプレーノズル11を備えたヘッダ本体である。このヘッダ本体10は太径のものであり、その内部には2個のイジェクタ12,12が基部に少しの間隔を空けて左右対称に設けられている。
【0010】
各イジェクタ12は基部側から順に大径の負圧部13、細径のストレート部14、先端側に向かって次第に拡径したディフューザ部15からなり、また中心にインジェクションノズル16を備えている。圧延油はオリフィス17を備えた中央の圧延油供給ノズルから18から左右に分岐してインジェクションノズル16に供給されている。なおオリフィス17は圧延油の攪拌効果を高めるためのものである。
【0011】
インジェクションノズル16から噴出された圧延油はストレート部14とディフューザ部15を経由してヘッダ本体10の中央部に向かうが、この流動に伴って負圧部13に負圧が発生する。このためヘッダ本体10の端部付近の圧延油は負圧部13に吸引され、インジェクションノズル16からの噴出流に同伴してヘッダ本体10の中央部から噴出する。このため、ヘッダ本体10の内部で圧延油は高速で流動して攪拌されることとなり、図4に示すように「幅切り」を行った場合にも各スプレーノズル11の油分濃度を均一に維持することができる。
【0012】
なお種々の実験を行った結果、イジェクタ12の最も好ましい寸法は図5に示すとおりである。すなわち、ストレート部14とディフューザ部15との比率は6:4であり、ストレート部14の内径dとインジェクションノズル16の径djとの比は3:1である。またインジェクションノズル16の先端は1.5djだけストレート部14に挿入されていることが好ましい。
【0013】
図6は請求項2の発明の実施形態を示す断面図である。この発明ではヘッダ本体10の内部に、2個のイジェクタ12,12が請求項1の発明とは逆向きとして左右対称に設けられている。そして圧延油はオリフィス17を備えた中央の圧延油供給ノズルから18から左右に分岐してヘッダ本体10の両端から、2個のイジェクタ12,12のインジェクションノズル16に供給されている。なお、2個のイジェクタ12,12の中央側の先端部には、密着しないようにやや間隔を設けてある。
【0014】
請求項2の発明では、両端部のインジェクションノズル16から噴出された圧延油はストレート部14とディフューザ部15を経由してヘッダ本体10の端部に向かう。またこの流動に伴って負圧部13に発生する負圧によってヘッダ本体10の両端部付近の圧延油は負圧部13に吸引され、インジェクションノズル16からの噴出流に同伴してヘッダ本体10の端部に噴出する。このため、ヘッダ本体10の内部で圧延油は高速で流動して攪拌されることとなり、「幅切り」を行った場合にも各スプレーノズル11の油分濃度を均一に維持することができる。
【0015】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によればヘッダ本体の内部に2個のイジェクタを設けることにより、ヘッダ本体の内部で強い循環流が生じて圧延油は激しく攪拌される。このため従来のようにヘッダ本体の内部に滞留部が生じないので油分の分離がなく、幅方向の油分濃度を均一とすることができるから、「幅切り」を行った場合にもヒートスクラッチの発生を防止することができる。このため実ラインで「幅切り」を行なうことが可能となる。なお本発明では2個のイジェクタを左右対称に設けたので、ノズル本体の左右でアンバランスが生ずることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の圧延油ヘッダの説明図である。
【図2】従来の圧延油ヘッダの油分濃度のグラフである。
【図3】請求項1の発明の実施形態を示す断面図である。
【図4】請求項1の発明における圧延油ヘッダの油分濃度のグラフである。
【図5】イジェクタの最も好ましい寸法を示す断面図である。
【図6】請求項2の発明の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 従来のヘッダ本体
2 スプレーノズル
3 弁
10 本発明のヘッダ本体
11 スプレーノズル
12 イジェクタ
13 負圧部
14 ストレート部
15 ディフューザ部
16 インジェクションノズル
17 オリフィス
18 圧延油供給ノズル
Claims (2)
- 多数のスプレーノズルを備えたヘッダ本体の内部に、ヘッダ端部の圧延油供給ノズルから供給された圧延油を、次第に拡径したディフューザ部を通じてヘッダ本体内部の中央部に向かって噴出するとともに、そのヘッダ内端部付近の圧延油を吸引する2個のイジェクタを、左右対称かつ圧延油がヘッダ本体内でイジェクタ内部を通って循環できるように、イジェクタ両端をヘッダ端部内側と密着させないように、また中央側で相互に間隔を持たせて設けたことを特徴とする圧延油ヘッダ。
- 多数のスプレーノズルを備えたヘッダ本体の内部に、ヘッダ中央の圧延油供給ノズルから供給された圧延油を、次第に拡径したディフューザ部を通じてヘッダ本体の端部に向かって噴出するとともに、ヘッダ内中央部付近の圧延油を吸引する2個のイジェクタを、左右対称かつ圧延油がヘッダ本体内でイジェクタ内部を通って循環できるように、イジェクタ両端をヘッダ端部内側と密着させないように、また中央側で相互に間隔を持たせて設けたことを特徴とする圧延油ヘッダ。
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