JP3795636B2 - 乾式減湿装置の運転方法及び乾式減湿装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式減湿装置の運転方法、及びロータ端面に位置する空気の通過域の面積の割合に特徴のある、乾式減湿装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に用いられる空気を減湿する方法には冷却減湿の方法があるが、冷却減湿では露点が−5℃以上の空気しかできず、低露点(−50℃以下)には対応できない。そこでこのような低露点の空気を供給する空調機には、回転式のロータを用いた乾式減湿機が使用されている。乾式減湿装置は、塩化リチウムや塩化カルシウムなどの吸収液を含浸させたハニカム状のロータや、シリカゲル、ゼオライトなどの吸着材で構成したロータを備え、このロータの端面に位置する空気の通過域を減湿区域と再生区域とに仕切り、ロータを回転させながら減湿区域に処理空気を通過させて乾燥空気を作り出すと共に、再生区域に高温の再生空気を通過させることによって、前記吸収液や吸着材中の水分を再生空気中に蒸発させて、連続的に減湿処理を行うように構成されている。
【0003】
この場合、ロータが高温のまま減湿区域に移行すると、処理空気が減湿しないままロータを通過して露点を上昇させるので、低湿度に制御された空間からの還気など、低温の空気を通過させてロータを冷却するためのパージ区域が再生区域と減湿区域との間に設定されていることがある。特に乾式減湿装置を二段直列に系統接続し、一段目の乾式減湿装置で減湿させた空気を二段目の乾式減湿装置でさらに減湿させるように構成された二段式乾式減湿システムにおける二段目の乾式減湿装置のロータ端面には、かかるパージ区域が設定されることが多い。
【0004】
従来のこの種の乾式減湿装置に用いられているロータを図に基づいて説明すると、図9、図10に示したように、乾式減湿装置100におけるロータ101の両端面にチャンバ102、103が配置されている。このロータ101の端面は、図10中の矢印に示したロータ101の回転方向順に、減湿区域101a、再生区域101b、パージ区域101cの3つの空気通過域に放射状に区画されている。またチャンバ102の外側端面には、これら各区域に対応して、ダクトなどに接続するための減湿入口102a、再生出口102b、パージ出口102cが形成されている。なおチャンバ103の外方端面にも、前記3つの区域に対応して減湿出口、再生入口、パージ入口が各々形成されている(いずれも図示せず)。
【0005】
そして前記ロータ101の3つの通過域である減湿区域101a、再生区域101b、パージ区域101cの区画割合は、放射状に区画形成されているときの中心角θで示すと、減湿区域101aの中心角θ1が225゜、再生区域101bの中心角θ2が90゜、パージ区域101cの中心角θ3が45゜に設定されていた。また各区域の空気の通過風量の割合は、これら通過域の面積に比例し、減湿区域101aに対して再生区域101bが0.4倍、パージ区域101cはその半分の0.2倍であった。このような区画割合、風量割合は、格別根拠があって定められたものではなく、これまで経験的に設定されていたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる構成を有する乾式減湿装置100は、一般の冷却減湿と比べて優れた減湿能力を有しているが、消費エネルギが多いのが難点であった。このような乾式減湿装置は、例えばリチウムイオン電池の製造工場における低露点空間に採用されているが、周知のようにこの種の製造工場は24時間稼働しており、かかる点に徴すると、エネルギの低減が強く求められているのが実情である。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ロータの再生に要する熱量、再生区域通過風量、パージ区域通過風量を低減させ、結果的に減湿区域での処理量を増大させて、同じ大きさのロータであっても従来より多くの風量を減湿することができる、乾式減湿装置の運転方法及び乾式減湿装置を提供して、前記省エネルギの要請に応えようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1によれば、回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、前記ロータの端面側に位置する減湿区域とその他の区域の面積の割合が、3:1であり、かつ再生区域とパージ区域の面積の割合が、1:1であり、さらに前記減湿区域に対する再生区域の通過風量の比Zを、減湿区域を1とした場合、0.2≦Z<0.4に設定して運転することを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法が提供される。
【0009】
発明者によれば、減湿区域に対する再生区域の風量を0.2倍〜0.4倍未満(好ましくは0.2〜0.25倍)に設定しても、減湿能力が全く変わらないことが発見できた。再生区域の風量を0.2倍〜0.4倍未満に設定して運転するということは、従来よりも再生風量を低減させることを意味し、また同時に減湿処理風量を従来より増加させることができる。換言すれば、従来と同量の減湿処理を行う場合、結果的によりコンパクトなシステムで足り、再生、パージに要するエネルギ、ファン、多段に接続した際の一段目の減湿装置での処理に要するエネルギを低減させて、全体として大きい省エネルギ効果が得られる。
【0010】
また請求項2によれば、回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、前記再生区域におけるパージ区域寄りの出口温度を、所定値に近づけるように再生風量を制御し、前記所定値は、減湿区域の通過風量を1としたときの再生空気の通過風量が、0.2倍〜0.4倍未満となるときの温度であることを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法が提供される。
【0011】
この場合、再生風量を制御するにあたっては、請求項3に記載したように、再生区域に送風するための送風機をインバータ制御したり、請求項4に記載したように、再生区域と接続される再生系統に介装するダンパの開度を調整することで、かかる制御を容易に行うことができる。
【0012】
ここで再生区域におけるパージ区域寄りの出口温度を近づける所定の温度、即ち目標温度は、減湿区域の通過風量を1としたときの再生空気の通過風量が、0.2倍〜0.4倍未満(好ましくは0.2〜0.25倍)となるときの温度である。したがって、予めかかる温度を求めておき、以後この温度に近づけるように再生風量を制御するようにすれば、請求項1の場合と同様、従来よりも再生風量を低減させることができ、再生、パージに要するエネルギ、ファン、一段目の減湿装置での処理に要するエネルギを低減させることができる。しかも温度に基づいて制御するので、逐次風量比を求める必要はなく、制御が容易である。
【0013】
また請求項5によれば、回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、前記ロータの端面側に位置する減湿区域とその他の区域の面積の割合が、3:1であり、かつ再生区域とパージ区域の面積の割合が、1:1であり、さらに前記減湿区域に対するパージ区域の通過風量の比Zを、減湿区域を1とした場合、0.1≦Z<0.2に設定して運転することを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法が提供される。
【0014】
これは従来、減湿風量1、再生風量0.4に対し、パージ風量を0.2としていたのを、再生風量の低減に伴ってパージ風量の低減を実施するものである。即ち、パージは再生で加熱されたロータを冷却するために行うため、再生風量が減るとパージ風量も低減させることができる。そしてパージ風量はロータの冷却のみに使用されるため、再生風量よりも少なくて済む。再生はロータの加熱と水分の蒸発の両方に熱を使用するからである。それゆえ風量比としては、パージ風量は再生風量の1/2で十分である。したがって、再生風量の低減に伴ってパージ風量も低減することができ、その結果として従来よりも省エネ効果を向上させることが可能である。
【0015】
また請求項6によれば、回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、前記パージ区域における減湿区域寄りの出口温度を、所定値に近づけるようにパージ風量を制御し、前記所定値は、減湿区域の通過風量を1としたときのパージ空気の通過風量が、0.1倍〜0.2倍未満となるときの温度であることを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法が提供される。したがって、この場合も、予めかかる温度を求めておき、以後この温度にちかづけるように再生風量を制御するようにすれば、必要なエネルギを低減させることができる。しかも温度に基づいて制御するので、逐次風量比を求める必要はなく、制御が容易となっている。
【0016】
パージ風量を制御するにあたっては、請求項7に記載したように、パージ区域に送風するための送風機をインバータ制御したり、請求項8に記載したように、パージ区域と接続されるパージ系統に介装されたダンパの開度を調整することが提案できる。
【0017】
請求項9によれば、回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面に位置する空気の通過域は、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置された乾式減湿装置において、前記ロータの端面側に位置する減湿区域とその他の区域の面積(再生区域+パージ区域)の割合が、3:1であり、かつ再生区域とパージ区域の面積の割合が、1:1であることを特徴とする、乾式減湿装置が提供される。
【0018】
このように減湿区域とその他の区域(再生区域+パージ区域)との面積割合を変更したので、従来の同種の乾式減湿装置よりも多くの減湿処理が可能である。従って、従来と同一量の空気を減湿処理するには、結果的によりコンパクトのシステムで足り、再生、パージに要するエネルギを節約でき、さらにはファンの定格、一段目の減湿装置等も従来より小さくて済むので、全体として大きい省エネルギ効果が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本実施形態にかかる乾式減湿装置を用いた二段式乾式減湿システムの系統の概略を示しており、この二段式乾式減湿システムは、低露点空間Rに低露点空気を供給するシステムとして構成されている。
【0021】
導入外気OAは、外気取り入れダクト1により導かれて、外気処理クーラ2によって冷却減湿される。冷却減湿された空気はその後、再生余剰空気冷却クーラ3で冷却された再生余剰空気と混合されて、外気処理ファン4によって、一段目の乾式減湿装置5の減湿区域5aに導入され、例えば露点温度−10℃まで減湿される。この一段目の乾式減湿装置5におけるロータ(図示せず)は、処理をする露点温度が高いため、減湿区域5aと再生区域5bとの2つに分割された空気の通過域をロータ端面側に有しているタイプである。またロータの厚みは200mmであり、減湿区域5aと再生区域5bの面積割合は3:1である。
【0022】
その後、一段目の乾式減湿装置5の減湿区域5aを通過して外気処理された空気は、低露点空間Rから還気ダクト6を通じて戻ってきた一部の還気RA1と混合され、処理ファン7によって、プレクーラ8に送られる。このプレクーラ8によって処理空気は冷却された後、本実施の形態にかかる二段目の乾式減湿装置10のロータ11の減湿区域11aに導入されて減湿処理される。
【0023】
二段目の乾式減湿装置10は、図2、図3に示したように、回転するロータ11の両端面にチャンバ12、13が配置された構成を有している。ロータ11の端面には、図3中の矢印に示したロータ11の回転方向順に、減湿区域11a、再生区域11b、パージ区域11cの3つの空気通過域に区画されている。そしてチャンバ12の外側端面には、これら各区域に対応して、ダクトなどに接続するための減湿入口12a、再生出口12b、パージ出口12cが形成されている。なおチャンバ13の外方端面にも、前記3つの区域に対応して減湿出口、再生入口、パージ入口が各々形成されている(いずれも図示せず)。この乾式減湿装置10のロータ11内には、塩化リチウム、シリカゲル、ゼオライトなどの吸湿材が収納されている。
【0024】
前記3つの通過区域である減湿区域11a、再生区域11b、パージ区域11cは、各々放射状に区画成形されたうちの1つの形態、すなわち略扇形状であり、各々の通過区域の中心角θは、減湿区域11aの中心角θ1が270゜、再生区域11bの中心角θ2が60゜、パージ区域11cの中心角θ3が30゜に設定されている。したがって各々の通過区域の面積割合は、9:2:1であり、減湿区域11aとその他の区域(再生区域11b+パージ区域11c)の面積割合は、3:1となっている。なおロータ11の厚みは400mmである。またロータ11の回転速度は、6回転/時である。
【0025】
かかる構成を有する乾式減湿装置10のロータ11の減湿区域11aで減湿され低露点となった空気は、ヒータ21、アフタークーラ22によって、所定の温度に調節された後、給気SAとして低露点空間Rに供給される。
【0026】
低露点空間Rからの他の一部の還気RA2は、パージ系還気ダクト23を通じ、パージ空気として、乾式減湿装置10のロータ11のパージ区域11cに導入され、これによってロータ11の冷却が行われる。
【0027】
そしてロータ11のパージ区域11cを通過したパージ空気は、再生系統Zに導かれ、さらに二段目の再生ファン26によって再生循環系統Pの空気に合流して混合される。このようにして混合された空気は、その大部分が再生系統ダクト27を通じて二段目の再生ヒータ28に送られ、この再生ヒータ28により、例えば120℃に加熱された後、乾式減湿装置10のロータ11の再生区域11bに導入されるのである。
【0028】
再生系統Zからの一部の空気は一段目の再生ファン29の作動により一段目の再生ヒータ30を通過した後、昇温されて一段目の乾式減湿装置5の再生区域5bに導入され、一段目の乾式減湿装置5のロータの再生に用いられる。そしてその後、排気EAとしてシステム外に排出される。他方、一段目の再生ヒータ30を通過しない残りの再生系統Zの空気は、再生余剰空気循環ダクト31を通じて前出再生余剰空気冷却用クーラ3へと送られ、そこで冷却された後、導入外気OAと混合されて一段目の乾式減湿装置5の減湿区域5aに導入されて減湿されるようになっている。即ち処理空気の一部として再使用される。なお図1におけるD1〜D8は、風量を調節するためダクト中に介装されたダンパである。
【0029】
本実施の形態にかかる乾式減湿装置10を用いた二段式乾式減湿システムは以上のように構成されており、既述したように、一段目の乾式減湿装置5の減湿区域5aで減湿された空気は、さらにプレクーラ8によって冷却減湿された後、二段目の乾式減湿装置10の減湿区域11aによってさらに減湿された後、ヒータ21、アフタークーラ22によって温度調整されて低露点空間Rに供給される。また低露点空間Rからの還気RA2は、乾式減湿装置10のロータ11のパージ区域11cに導入され、他方、再生ヒータ28によって加熱された空気は、ロータ11の再生区域11bに導入されている。
【0030】
この場合、ロータ11端面に位置する減湿区域11aと再生区域11bの割合は、9:2であり、したがって再生区域11bを通過する再生空気の通過風量は、減湿処理される空気の9/2、すなわち0.22倍であるが、発明者が調べたところ、そのように再生空気の通過風量が、減湿処理される空気の0.22倍であっても、図4のグラフに示したように、低露点空間Rに必要とされる露点温度(−50℃)を供給することができる。また当該グラフによれば、再生空気の通過風量が、減湿処理される空気の0.25倍であっても、ほぼ同等の減湿能力が得られていることが確認できる。但し、0.15倍程度であると、露点温度が−47℃程度に上昇するので好ましくない。したがって、本発明にいうように、風量比を0.2倍よりも多くしておけば、低露点空間Rに必要とされる露点温度を供給することが可能である。なお当該グラフにおいて、減湿区域に導入する処理空気の入口絶対湿度は1g/kg’(露点温度−20℃)である。
【0031】
そのように減湿能力が従来のこの種の乾式減湿装置と同等であるにもかかわらず、本実施形態において使用した乾式減湿装置10のロータ11端面(図3)と、従来の乾式減湿装置100のロータ101端面(図7)を比較すれば明らかなように、本実施形態において使用した乾式減湿装置10の減湿区域11aの面積は、従来の1.2倍の面積になっている。換言すれば、同一径のロータを使用した場合、本実施形態の方が1.2倍の減湿風量が得られることになる。また再生区域11bの面積も従来より小さく、再生風量についても、従来よりも少ない量で済んでいる。したがって、逆に所定風量の減湿処理を行う場合には、本実施形態の方がロータの径を小さくでき、それに伴って再生空気の風量も従来より少なくて済む。したがって、再生ヒータ28の要するエネルギが節約できる。また同時にパージ風量も低減できるから、導入外気OAの導入量も低減でき、その結果一段目の乾式減湿装置5の大きさも小さくできる。また系統で使用するファンの定格も従来より小さいもので足りる。それゆえ、システム全体として従来より大幅に省エネを図ることができ、しかも設備機器も小型化することが可能である。
【0032】
本実施形態にかかる乾式減湿装置10を用いた二段乾式減湿システムによれば、従来のこの種の二段乾式減湿システム、即ち二段目の乾式減湿装置10に代えて図9、10に示した乾式減湿装置100を使用したシステムと比較して、冷熱で25%、温熱で40%、合計で30%程度のエネルギ消費の低減ができることが確認できた。
【0033】
また二段目の乾式減湿装置10のロータ11の大きさも従来の83%で足り、さらに一段目の乾式減湿装置5のロータについても、従来の一段目のロータの2/3の大きさで同一レベルの減湿処理が可能になる。その他既述したように、各種ヒータ、クーラ、ファンなどの設備も小型化できるため、大幅な設備費の低減にもなる。それゆえ、イニシャルコスト、ランニングコストの双方のコストを低減させることができる。
【0034】
ところで、この種の乾式減湿装置の能力はロータの回転数にも関係する。すなわち回転数はある値までは高い方が減湿能力は向上するが、あまり回転数を高くしすぎると再生能力が足らなくなり、却って減湿能力が低下する。殊に二段目に配置される低露点用の乾式減湿装置では、その他に、回転数を高くするとパージでの冷却が足らなくなり、通常の減湿装置に比べて低い回転数で能力が低下する傾向がある。熱量的には回転数が高いほどロータ自体を加熱する熱量(再生区域)、および冷却する熱量(パージ区域および減湿区域)が大きくなるため、減湿量当たりの熱量は増加してしまう。従って、低露点用のこの種の乾式減湿装置では低い回転数で運転が行うことが好ましい。
【0035】
図5に示した乾式減湿装置50は、そのような低回転、例えば4回転/時に適した例を示しており、この乾式減湿装置50のロータ51の端面に位置する空気の通過区域は、前出乾式減湿装置10と同様、減湿区域51a、再生区域51b、パージ区域51cの3つに区画形成されているが、各通過区域の中心角θは、減湿区域51aの中心角θ1が270゜、再生区域51bの中心角θ2が45゜、パージ区域51cの中心角θ3が45゜に設定されている。したがって各々の通過区域の面積割合は、6:1:1となっている。
【0036】
この乾式減湿装置50を前記乾式減湿装置10に代えて使用すれば、前記実施形態の場合よりも能力が若干低下するが、再生区域51bの面積が前記乾式減湿装置10よりもさらに小さくなっているので、再生に要する風量、エネルギについてはいっそう低減させることができ、全体としての消費エネルギは、前記実施形態のシステムよりも少なくて済む。
【0037】
ところで高温の再生区域を通過する再生空気の熱は、減湿区域側に近いエリアではロータの加熱に、それより中程に寄ったところ(パージ区域側に寄ったところ)では、水分の蒸発に使用される。したがって再生空気の出口温度分布は、減湿区域側で温度が低く、パージ区域側に近いところでは温度が高くなる。このような温度分布は、減湿負荷の増加に伴い、減湿区域側での変化は少ないが、パージ区域側では温度の低下となって現れる。
【0038】
そこで発明者は、このような分布特性に着目し、再生区域におけるパージ区域寄りの出口温度、又はパージ区域における減湿区域寄りの出口温度を用いて再生風量又はパージ風量を制御することで、減湿負荷が小さいときには、従来必要以上に投入していた再生の熱エネルギを低減して、省エネを図ることを目的とした発明も提案できる。
【0039】
図10に示した従来型の乾式減湿装置100のロータ101に即して、図6に基づき詳述すれば、ロータ101の軸方向からみて、このロータ101の端面に位置する再生区域101bを5等分する線a、b、c、d上とパージ区域101cを3等分する線e、f上に位置し、かつロータ101の端面に近い箇所(ロータ101の端面から50mm程度離れた箇所)に、温度センサ(図示せず)を配置し、図6における前記各線上の○印で示した地点で、減湿区域101aを通過する風量に対する再生区域101bを通過する風量を変化させたときの、当該温度センサによって測定される各線a、b、c、d、e、f上の測定点での温度分布を調べた。
【0040】
その結果図7のグラフに示したような特性が得られた。なお同グラフ中、最適風量とあるのは、減湿区域101aを通過する風量、即ち処理風量に対する再生区域101bを通過する風量、即ち再生風量の比が0.2のときを意味し、風量過大とは同比が0.4のときを意味し、風量過小とは同比が0.15のときを意味している。
【0041】
これによれば、再生区域101bにおいては、線dにおける測定点において、減湿負荷が小さいときには温度が高く、減湿負荷が大きくなると温度が低くなっている。したがって、dにおける最適風量の際の温度(目標温度)を予め求めておき、この目標温度に近づけるように再生風量を制御することで、最適な再生風量が得られる。
【0042】
同様に、パージ区域101cにおいては、線fの測定点での温度特性が、過小風量、最適風量、過大風量の順で温度が低くなっている。したがって、fにおける最適風量の際の温度(目標温度)を予め求めておき、この目標温度に近づけるようにパージ風量を制御することで、最適なパージ風量が得られる。
【0043】
このように、所定の箇所に設置した温度センサによって測定される再生出口温度やパージ出口温度を、目標温度に近づけるように制御すれば、過大な風量を必要とせず、必要な運転を実施することができる。
【0044】
図8に示した乾式減湿装置60は、前記した出口温度を目標温度に近づけるように制御することで省エネを図るものである。即ち、乾式減湿装置60におけるロータ61の端面側に位置するチャンバ62内の空気の通過域を、前出乾式減湿装置10と同様、ロータ61の回転順に、減湿区域61a、再生区域61b、パージ区域61cの3つの区域に区画している。但し、各区域の面積割合は、図9、図10に示した従来の乾式減湿装置100における面積割合と同一に設定してある。
【0045】
そしてチャンバ62内の再生区域61bにおけるロータ61の端面から、例えば50mm程度軸方向に離れ、かつパージ区域61c寄りの箇所には、再生空気の出口温度を検出する温度センサ63が設置されている。
【0046】
かかる構成の乾式減湿装置60は、前記実施形態にかかる乾式減湿装置10に代えて図1に示した二段式乾式減湿システムに使用することができる。かかる場合、温度センサ63によって検出される温度を、予め求めてある前出目標温度(図7の線dの最適風量の温度)に近づけるように、再生ファン26をインバータ制御(例えば再生ファン26のモータのインバータ制御)して再生風量を調整したり、あるいはダンパD5の開度を制御して再生風量を調整すれば、最適な再生風量が得られる。したがって、再生に要する熱エネルギ等の節約を図ることが可能であり、またそれに伴って排気風量、外気導入量の低減に基づく省エネを図ることができる。そのうえ温度センサ63からの温度に基づいてかかる制御を実施するから、制御が容易であり、しかも応答性も良好である。そして過大な風量を創出することが防止されるので、従来よりも省エネ効果は高いものである。
【0047】
なお前記乾式減湿装置60は、再生区域に設けた温度センサ63によって検出される再生空気の出口温度に基づいてかかる制御を実施するようにしていたが、これに代えて、図8に示したように、パージ区域61cにおける減湿区域61a寄りの箇所にパージ空気の出口温度を検出する温度センサ64を設置し、この温度センサ64によって検出されるパージ空気の出口温度を、予め求めたパージ空気の出口温度の前出目標温度(図7の線fの最適風量の温度)に近づけるように、パージ風量の方を制御するようにしてもよい。そうすれば、パージ風量を従来よりも低減させることができ、それに伴って排気風量、外気の取り入れ量も低減でき、従来より省エネ性を高めることが可能である。
【0048】
なお温度センサ64によって検出されるパージ空気の出口温度に基づいてパージ風量を制御するには、図1に示した二段式乾式減湿システムに使用した場合、ダンパD4の開度を調整したり、あるいはパージ系統に設けたパージファン65をインバータ制御する(例えばパージファン65のモータをインバータ制御する)ことによって行えばよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の同種の乾式減湿装置よりも運転に必要なエネルギを低減することが可能であり、しかも送風機を始めとする各種設備機器もコンパクトにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる二段式乾式減湿システムの構成の概略を示す説明図である。
【図2】図1の二段式乾式減湿システムに用いた二段目の乾式減湿装置のロータ部分の斜視図である。
【図3】図2の乾式減湿装置の軸方向からみた正面図である。
【図4】乾式減湿装置の再生風量の減湿風量に対する比と、減湿区域出口空気の露点温度との関係を示すグラフである。
【図5】図1の二段式乾式減湿システムに用いることができる、他の乾式減湿装置のロータの軸方向からみた正面図である。
【図6】乾式減湿装置における再生区域とパージ区域での出口温度を測定する場合の測定箇所を示す説明図である。
【図7】乾式減湿装置における再生区域とパージ区域での出口温度と風量との関係を示すグラフである。
【図8】他の実施形態にかかる乾式減湿装置において温度センサの取付位置を示す説明図である。
【図9】従来の二段式乾式減湿システムに用いられている二段目の乾式減湿装置のロータ部分の斜視図である。
【図10】図9の乾式減湿装置の軸方向からみた正面図である。
【符号の説明】
1 乾式減湿装置(一段目)
10 乾式減湿装置(二段目)
11 ロータ
11a 減湿区域
11b 再生区域
11c パージ区域
12、13 チャンバ
14、15 温度センサ
D1〜D8 ダンパ
R 低露点空間
Claims (9)
- 回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、
前記ロータの端面側に位置する減湿区域とその他の区域の面積の割合が、3:1であり、かつ再生区域とパージ区域の面積の割合が、1:1であり、
さらに前記減湿区域に対する再生区域の通過風量の比Zを、減湿区域を1とした場合、0.2≦Z<0.4に設定して運転することを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法。 - 回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、
前記再生区域におけるパージ区域寄りの出口温度を、所定値に近づけるように再生風量を制御し、
前記所定値は、減湿区域の通過風量を1としたときの再生空気の通過風量が、0.2倍〜0.4倍未満となるときの温度であることを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法。 - 再生区域に送風するための送風機をインバータ制御することにより、再生風量を制御することを特徴とする、請求項2に記載の乾式減湿装置の運転方法。
- 再生区域と接続される再生系統に介装されたダンパの開度を調整することにより、再生風量を制御することを特徴とする、請求項2に記載の乾式減湿装置の運転方法。
- 回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、
前記ロータの端面側に位置する減湿区域とその他の区域の面積の割合が、3:1であり、かつ再生区域とパージ区域の面積の割合が、1:1であり、
さらに前記減湿区域に対するパージ区域の通過風量の比Zを、減湿区域を1とした場合、0.1≦Z<0.2に設定して運転することを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法。 - 回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面側に位置する空気の通過域が、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置され、−50℃以下の低露点空気を製造する乾式減湿装置において、
前記パージ区域における減湿区域寄りの出口温度を、所定値に近づけるようにパージ風量を制御し、
前記所定値は、減湿区域の通過風量を1としたときのパージ空気の通過風量が、0.1倍〜0.2倍未満となるときの温度であることを特徴とする、乾式減湿装置の運転方法。 - パージ区域に送風するための送風機をインバータ制御することにより、パージ風量を制御することを特徴とする、請求項6に記載の乾式減湿装置の運転方法。
- パージ区域と接続されるパージ系統に介装されたダンパの開度を調整することにより、パージ風量を制御することを特徴とする、請求項6に記載の乾式減湿装置の運転方法。
- 回転自在なロータ内に処理空気を通過させて当該処理空気を減湿させる装置であって、前記ロータの端面に位置する空気の通過域は、減湿区域と再生区域とパージ区域とに仕切られて、ロータの回転によって再生区域から減湿区域に移行する前にパージ区域が位置するようにこれら各区域が配置された乾式減湿装置において、
前記ロータの端面側に位置する減湿区域とその他の区域の面積の割合が、3:1であり、かつ再生区域とパージ区域の面積の割合が、1:1であることを特徴とする、乾式減湿装置。
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