JP3795359B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタなどに用いられるインクジェットヘッドに関する。より詳しくは、圧電部材を含む壁によって規定されたインク室の内部に貯まったインクを、この圧電部材に電圧を印加して変形させ、インク室内に圧力振動を生じさせることによって、噴出させる方式のインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリンタにおいては、インパクト印字装置に代わって、カラー化、多階調化に対応しやすいインクジェット方式などのノンインパクト印字装置が急速に普及している。これに用いるインク噴射装置としてのインクジェットヘッドとしては、特に、印字に必要なインク滴のみを噴射するというドロップ・オン・デマンド型が、噴射効率の良さ、低コスト化の容易さなどから注目されている。ドロップ・オン・デマンド型としては、カイザー(Kyser)方式やサーマルジェット方式が主流となっている。
【0003】
しかし、カイザー方式は、小型化が困難で高密度化に不向きであるという欠点を有していた。また、サーマルジェット方式は、高密度化には適しているものの、ヒータでインクを加熱してインク内にバブル(泡)を生じさせて、そのバブルのエネルギーを利用して噴射させる方式であるため、インクの耐熱性が要求され、また、ヒータの長寿命化も困難であり、エネルギー効率が悪いため、消費電力も大きくなるという問題を有していた。
【0004】
このような各方式の欠点を解決するものとして、圧電材料のシェアモードを利用したインクジェット方式が開示されている。この方式は、圧電材料からなるインクチャンネルの壁(以下、「チャンネル壁」という。)の両側面に形成した電極を用いて、圧電材料の分極方向と直交する方向に電界を生じさせることで、シェアモードでチャンネル壁を変形させ、その際に生じる圧力波変動を利用してインク滴を吐出するものであり、ノズルの高密度化、低消費電力化、高駆動周波数化に適している。
【0005】
(第1の構造)
図12、図13を参照して、このようなシェアモードを利用したインクジェットヘッドの第1の構造について説明する。図13は、図12のインクジェットヘッドを組み立てた状態でチャンネル溝4に沿って切断した断面図である。このインクジェットヘッドは、図12における上下方向に分極処理を施した圧電体に複数のチャンネル溝4が形成されたベース部材1と、インク供給口21と共通インク室22が形成されたカバー部材2と、ノズル孔10があけられたノズル板9を張り合わせることで、インクチャンネルを形成している。「インクチャンネル」とは、チャンネル溝4の内部の空間を利用して形成される圧力室の部分をいう。チャンネル壁3には、電圧を印加するための電極5が上半分のみに形成されている。
【0006】
インクチャンネルの後端部は、溝加工時に使用されるダイシングブレードの直径に対応したR形状に加工されており、外部との通電のための電極引き出し部としての浅溝部6が同じくダイシングブレードにより加工されている。浅溝部6に形成された電極は、浅溝部の後端部で例えばフレキシブル基板に設けられた外部電極8とボンディングワイヤ7によって接続されている。
【0007】
(第2の構造)
一方、インクジェットヘッドの第2の構造として、R形状の部分や浅溝部のない構造も提案されている。図14、図15を参照して、従来のインクジェットヘッドの第2の構造について説明する。第1の構造のインクジェットヘッドに比べて、大きな違いとしては電極5から外部電極8への接続方法が異なっている。図14に示すように、ベース部材1の後端(ノズル板9が貼り付けられるのと反対側の端)においては、導電性樹脂26がチャンネル溝4内に埋めこまれている。この導電性樹脂26によって1つのチャンネル溝4の両側の電極5は同電位になるように電気的に接続されている。1つのチャンネル溝4の導電性樹脂26と隣接するチャンネル溝4の導電性樹脂26とは互いに電気的に分離されている。さらに、外部電極8を表面に備えたフレキシブルプリント基板11がベース部材1と垂直になるようにベース部材1の端部に貼り合わせられ、導電性樹脂26は、それぞれ独立に外部電極8と接続されている。導電性樹脂26と外部電極8との接続には、異方性導電膜(ACF)が用いられている。
【0008】
このインクジェットヘッドでは、第1の構造のインクジェットヘッドと異なり、チャンネル溝4の後端が導電性樹脂26によって封止されているため、インクチャンネルへのインクの供給は、ベース部材1の図14における上側から行なわれる。そのために、マニホールド部材20によって形成されるマニホールド空間24aに加えて、カバー部材2にもマニホールド空間24bが設けられている。したがって、マニホールド空間24a,24bを合わせた空間が共通インク室の役割を果たす。マニホールド部材20のインク供給口21から供給されたインクはマニホールド空間24a,24bを経由してインクチャンネル内に入りこむ。
【0009】
(チャンネル壁の変形)
図16〜図19を参照して、これらの構成のインクジェットヘッドにおけるチャンネル壁3のシェアモード変形の様子について説明する。図16〜図19は、領域Aにおけるインクチャンネルの断面を示している。初期状態では、図16に示すように、チャンネル壁3はまっすぐ立っている。チャンネル壁3は、その左右両面に張られた電極5に電圧を印加することで、分極方向に垂直な電界を生じ、シェアモードの変形(せん断変形)を起こす。たとえば、電極5に、図17に示すように電圧を印加する。すなわち、最初の時間T1に渡って正の一定電圧を印加し、引き続き時間T2に渡って負の一定電圧を印加する。この結果、最初の時間T1の間は、図18の中央に示すように、チャンネル壁3は「く」の字形に変形し、ある1つのインクチャンネルに対して、断面積を広げるように作用する。次の時間T2の間は、先ほどと逆向きの電界が生じるので、チャンネル壁3は、図19に示すように、前記チャンネル室4に対して、断面積を狭めるように変形する。この変化は急激に起こる。シェアモード変形を利用したインクジェットヘッドでは、このような一連の電圧印加を適当なタイミングで行なうことにより、インクチャンネル内に圧力波変動を生じさせてノズル孔10よりインクを吐出させる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようなシェアモード変形は、図16に示すように、チャンネル壁3の上端がカバー部材2と接着固定されている領域、すなわち、図13、図15における領域Aで生じる。しかし、図13、図15における領域Bにおいても、チャンネル壁3には電極5が形成されており、しかも領域Aの電極5に電圧を印加することは、領域Bも含めて電圧を印加することにほかならないから、領域Aのチャンネル壁3にシェアモード変形を生じさせようとする場合、領域Bのチャンネル壁3にも何らかの変形を生じさせることとなる。しかし、領域Bでは、チャンネル壁3の上端がカバー部材2に接着固定されているわけではないので、チャンネル壁3は、領域Aにおけるような「く」の字形に変形する代わりに、上端を振るように変形する。したがって、たとえば、領域Aで図18に示したようにインクチャンネルの断面積を広げるように変形するときに、領域Bでは図20に示したように変形し、断面積を広げるどころか逆に狭めるように働く。領域Aで図19に示したように変形するときに、領域Bではチャンネル壁3の上端は外側に振られ、インクチャンネルの断面積を狭めるどころか逆に広げるように働く。しかも、チャンネル壁3の上端が固定されていないので、側方に向かうインクの流れを生じるだけで圧力変化はさほど生じない。
【0011】
一方、領域B(図13、図15参照)ではチャンネル壁3の上端が固定されていないので、チャンネル壁3の「く」の字形の変形は積極的には生じないが、領域A(図13、図15参照)で生じるチャンネル壁3の「く」の字形の変形が領域Bに伝播するために、領域Bでもある程度の圧力波の変動を生じる。しかし、領域Bで生じる圧力変動は、空間の体積やチャンネル壁3の拘束条件が領域Aと異なるため、伝播速度が異なる。
【0012】
その結果、同じ電圧印加を行なっても領域Aと領域Bとでは、生じる圧力波変動が異なることとなり、領域Bにおける圧力波変動は、領域Aにおける圧力波変動に不所望の影響を及ぼす。また、外部からのインクの供給にも影響を及ぼす。こういった現象により、インクの吐出が不安定になる。特に、電圧を印加する周波数、すなわち、駆動周波数を高くすると、領域Bの圧力波の変動がより大きくなり、インクの吐出はより不安定になる。
【0013】
本発明では、このような問題を解消し、安定したインク吐出を行なうことができるインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に基づくインクジェットヘッドは、圧電材料を含むチャンネル壁に隔てられるようにして複数のチャンネル溝を形成されたベース部材と、上記複数のチャンネル溝を覆うように上記ベース部材と接して配置されたカバー部材とを備え、上記カバー部材における上記ベース部材に対向する側の面は、上記チャンネル溝の長手方向に関して、上記チャンネル壁の上面に接する第1の領域と、上記チャンネル壁の上面と離隔するように凹部となっている第2の領域とを含み、上記カバー部材の上記第2の領域においては、上記凹部の底から上記チャンネル壁の上面と接するように上記ベース部材に向かって突出する凸部が配置され、上記凸部の先端と上記チャンネル壁の上面とは接合されている。この構成を採用することにより、凸部の先端とチャンネル壁の上面とが接合されていることにより、第2の領域においても、チャンネル壁の上端は拘束されることとなるため、第2の領域においてチャンネル壁の不所望な変形は起こらず、効率良くシェアモードで変形することができる。
【0015】
上記発明において好ましくは、上記凸部は、上記チャンネル壁が上記ベース部材に配置されているのと同じピッチで配置されている。この構成を採用することにより、各インクチャンネルの形状を等しくすることができ、各インクチャンネルにおけるインクの吐出条件を均一にすることができる。
【0016】
上記発明において好ましくは、上記凸部は、上記ベース部材に配置された上記チャンネル壁のうち1つおきに選択されたものと同じピッチで配置されている。この構成を採用することにより、共通インク室の一部をなす第2の領域の凹部の体積を大きく確保しつつ、各チャンネル壁の不所望な変形も抑制することができ、さらに、第2の領域においては、それぞれ2つずつ隣り合うインクチャンネル同士でのインクの移動が自在となるので、各チャンネル溝へのインクの均一な供給をより確実に行なうことができる。
【0017】
上記発明において好ましくは、上記凸部は、根元から先端に向かうにつれて細くなる形状である。この構成を採用することにより、凸部がこのような断面形状を有することにより、凸部は外力に対して剛性が高くなる。したがって、第2の領域では、チャンネル壁の先端は凸部によってより強固に拘束され、チャンネル壁は、効率良くシェアモード変形することができ、インクの吐出効率を向上させることができる。
【0018】
上記発明において好ましくは、上記凸部は、上記チャンネル壁の長手方向に沿って上記チャンネル壁の上面と断続的に当接する。この構成を採用することにより、第2の領域において、チャンネル壁の上面がカバー部材の凸部と接合されている部分があるので、チャンネル壁は拘束され、不所望の変形を抑えることができ、効率良くシェアモード変形をすることができる。また、凸部の部分が限られていることにより、共通インク室の一部をなす第2の領域の凹部の体積を大きく確保することができる。さらに、第2の領域の凹部において、異なるインクチャンネル間でのインクの移動が自在となるので、各チャンネル溝へのインクの均一な供給をより確実に行なうことができる。
【0019】
上記発明において好ましくは、上記凹部の底から見た上記凸部の高さが、上記チャンネル溝の底から見た上記チャンネル壁の高さの60%以上、200%以下である。この構成を採用することにより、第2の領域で生じる圧力波変動が第1の領域で生じる圧力波変動に及ぼす影響を小さく抑え、かつ、第2の領域においてチャンネル壁を拘束するための凸部の剛性を十分に確保することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜図3を参照して、本発明に基づく実施の形態1におけるインクジェットヘッドの構成について説明する。図1に示すように、図14、図15に示したものと基本的に同じ構造であるが、このインクジェットヘッドでは、カバー部材2に形成されたマニホールド空間24b内に凸部23が設けられている。凸部23は、ベース部材1側のチャンネル壁3と対応する位置に平行に線状に設けられており、その結果、マニホールド空間24bは、複数の細長い空間に分割されている。
【0021】
さらに、図2には、このインクジェットヘッドをインクチャンネル長手方向に平行に切断した場合の断面図を示す。このインクジェットヘッドは、図2に示すように、第1の領域としての領域Aと、第2の領域としての領域Bとに分けてとらえることができる。図3には、このインクジェットヘッドを領域Bにおいてインクチャンネル長手方向に垂直に切断した場合の断面図を示す。図3に示すように、凸部23の上面とチャンネル壁3の上面とはそれぞれ互いに接着固定されている。したがって、図2に示すように、インク供給口21から供給されたインクは、マニホールド空間24aから細長く区切られたマニホールド空間24bにそれぞれ分かれて入り、さらにチャンネル溝4に供給される。
【0022】
(製造方法など)
このインクジェットヘッドの各部の具体的な寸法や製造方法について以下に述べる。チャンネル溝4は深さ300μm、幅70μm、ピッチ141μmである。領域Aの長さは1.1mm、領域Bの長さは2.5mmである。カバー部材2に設けられている凸部23は、幅71μm、ピッチ141μm、長さ2.5mm、高さ400μmである。凸部23とチャンネル壁3とが等しいピッチで設けられているので、領域Bでの各インクチャンネルの形状は等しくすることができる。この例では、凸部23の上面の幅とチャンネル壁3の上面の幅とは、一致させているが、必ずしも一致させる必要はない。
【0023】
電極5は、材料としてAlを用い、斜め蒸着法によって形成されたものであり、厚みが1.0μmである。電極5の材料としては、Al以外に、Cu、Ni、Tiなどの導電性材料を用いてもよい。
【0024】
ノズル板9には、厚み90μmのポリイミドフィルムを用い、ノズル孔10は、エキシマレーザ加工によって設けられている。ノズル板9としては、ポリイミドフィルムに代えて、ポリエチレン系の高分子樹脂フィルムを用いることとしてもよい。あるいは、ステンレス板などの金属板に打抜加工によりノズル孔10をあけてもよい。
【0025】
本実施の形態におけるインクジェットヘッドにおいては、外部電極8と導電性樹脂26との接続には、異方性導電膜(ACF)が用いられている。
【0026】
本実施の形態におけるインクジェットヘッドにおいては、カバー部材2として、分極処理を施していない圧電体基板を用い、サンドブラスト加工により、マニホールド空間24bと、凸部23とを形成している。カバー部材2としては、分極処理を施していない圧電体基板に代えて、セラミック基板などを用いてもよい。マニホールド空間24bと、凸部23とを形成するためには、フライス加工、成形加工によってもよい。
【0027】
(作用・効果)
本実施の形態におけるインクジェットヘッドは、マニホールド空間24bが凸部23によって区切られ、凸部23とチャンネル壁3とは接着固定されているため、各ノズル孔10ごとに独立したインクチャンネルを有する形となっている。凸部23とチャンネル壁3とが接着固定されていることにより、領域Bにおいても、チャンネル壁3の上端は拘束されているため、従来の図20に示すような変形は起こらず、効率良くシェアモードで変形することができる。その結果、効率良くインクを吐出することができ、駆動電圧を低減することができる。
【0028】
なお、図14、図15に示した従来のインクジェットヘッドにおいては、インクの吐出は領域Aで生じる圧力波変動によって行なわれていたが、さらに、領域Aの長さが短いほど駆動周波数を高くできるという特徴がある。さらに、インクを吐出させるために外部電極8から電極5に印加される電圧の印加タイミングには、領域Aの長さに関係した最適値が存在する。これらの観点から、従来のインクジェットヘッドにおいては、領域Aの長さは非常に重要な因子である。
【0029】
本実施の形態のインクジェットヘッドでは、図14、図15に示した従来のインクジェットヘッドと異なり、領域Bにおいても、各インクチャンネルが独立しているため、ある程度の圧力波変動が生じるが、領域Bに比べて領域Aの方がインクチャンネルの断面積が小さいので、インクチャンネル全体としては、領域Aで生じる圧力波変動が支配的になる。したがって、インクの吐出は、実質的に、従来通り、領域Aで生じる圧力波変動によって行なわれる。
【0030】
上述の例では、凸部23の高さを400μmとしたが、凸部23の高さが、チャンネル壁3の高さの60%、すなわち、この例では300μmの60%である180μmより小さくなると、領域Aに比較しての領域Bでの断面積増加が不十分となって、領域Bで生じる圧力波変動が領域Aでの圧力波変動に及ぼす影響の程度が許容範囲を超えてしまう。逆に、凸部23の高さが、チャンネル壁3の高さの200%、すなわち、この例では300μmの200%である600μmより大きくなると、領域Bにおいてベース部材1のチャンネル壁3を拘束するための凸部23の剛性が不足し、領域Bにおけるチャンネル壁3の変形が図20に示したものに近い状態となり、シェアモード変形の効率が低いものとなってしまう。したがって、凸部23の高さは、チャンネル壁3の高さの60%以上200%以下であることが好ましい。
【0031】
(実施の形態2)
(構成)
図4、図5を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるインクジェットヘッドの構成について説明する。図4に示すように、実施の形態1で説明したものと基本的に同じ構造であるが、このインクジェットヘッドでは、カバー部材2のマニホールド空間24b内の凸部23が、チャンネル壁3のすべてに対応して設けられているわけではなく、チャンネル壁3のうち1つおきに選択されたものにのみ対応して配置されている。図5には、領域Bにおいてインクチャンネル長手方向に垂直に切断した場合の断面図を示す。図5に示すように、凸部23の上面は、1つおきに選択されたチャンネル壁3の上面とそれぞれ接着固定されている。
【0032】
(作用・効果)
このインクジェットヘッドにおいては、あるインクチャンネルからインクを吐出させる場合には、そのインクチャンネルのチャンネル溝4の両側のチャンネル壁を同じにシェアモード変形させる。したがって、図5に示すように、たとえ1つおきのチャンネル壁3にのみ凸部23が接着固定されていたとしても、いずれのインクチャンネルも、一方の側が凸部23に接着固定されたチャンネル壁3であって、もう一方の側が凸部23に接着固定されないチャンネル壁3であるという点で条件は等しいので、インクの吐出の仕方は均一である。どのインクチャンネルにおいても、左右どちらか一方のチャンネル壁3は凸部23と接着固定されることで拘束されているので、両側ともチャンネル壁3の上端が固定されていない場合に比べて、効率良くシェアモード変形をすることができる。
【0033】
このインクジェットヘッドでは、実施の形態1におけるものに比べて、凸部23の数を約半分に減らすことができるので、マニホールド空間24bの体積を大きくすることができる。したがって、マニホールド空間24aからチャンネル溝4へのインクの供給を円滑に行なうことができる。特に、マニホールド空間24bにおいては、それぞれ2つずつ隣り合うインクチャンネル同士でのインクの移動が自在となるので、各チャンネル溝4へのインクの均一な供給をより確実に行なうことができる。
【0034】
(実施の形態3)
(構成)
図6、図7を参照して、本発明に基づく実施の形態3におけるインクジェットヘッドの構成について説明する。図6に示すように、実施の形態2で説明したものと基本的に同じ構造であるが、凸部23の形状が異なる。このインクジェットヘッドでは、カバー部材2のマニホールド空間24b内の凸部23が、根元から先端にかけて等しい幅ではなく、先端に向かうにつれて幅が細くなっている。図7に、領域Bにおいてインクチャンネル長手方向に垂直に切断した場合の断面図を示す。凸部23は、図7に示すように、台形の断面形状を有する。
【0035】
(製造方法)
本実施の形態における凸部23の形状は、実施の形態1と同様に、サンドブラスト加工により、形成することができる。この加工について、図8、図9を参照して説明する。図8に示すように、サンドブラスト加工において、ドライレジストフィルム30のマスクの断面形状を台形とする。この状態でサンドブラスト加工を行なうと、カバー部材2が表面から徐々に削り取られていくが、ドライレジストフィルム30も徐々に削り取られて、マスクしている領域が狭くなる。マスクしている領域が狭くなるにつれてそれまでマスクされていた領域においてもカバー部材2が除去されるようになる。その結果、カバー部材2に台形の断面形状を有する凸部23が形成される。図9には、凸部23の形成途中の様子を示す。このままドライレジストフィルム30がほぼ全部除去されるまでサンドブラスト加工を続けることによって、図6、図7に示したような形状の凸部23が得られる。なお、ドライレジストフィルム30の初期形状は、露光量、現像時間、マスク形成後の熱処理条件などにより、任意に制御することができる。
【0036】
(作用・効果)
本実施の形態のインクジェットヘッドでは、実施の形態2と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。凸部23がこのような断面形状を有することにより、凸部23は図7における左右方向への外力に対して剛性が高くなる。したがって、領域Bでは、チャンネル壁3の先端は凸部23によってより強固に拘束され、チャンネル壁3の変形に所望のシェアモード変形以外の振動モードが混入するのを防ぐことができる。その結果、チャンネル壁3は、効率良くシェアモード変形することができ、インクの吐出効率を向上させることができる。
【0037】
上述の例では、カバー部材2は、凸部23の先端の幅が71μm、根元の幅が130μmとなっている。凸部23の先端の幅は、チャンネル壁3の上面と接着固定できれば、他の値でもよい。根元の幅は、より大きくしてもよく、たとえば、図7において破線で示すように、凸部23同士に挟まれるカバー部材2の谷状部分をV字形としてもよい。この場合、マニホールド空間24aの側から見たマニホールド空間24bの開口部は三角形となる。
【0038】
なお、本実施の形態では、実施の形態2と同様に、チャンネル壁3のうち1つおきに選択されたもののみに凸部23が接着固定される構造としているが、実施の形態1のようにすべてのチャンネル壁3に凸部23が接着固定される構造において、凸部23の断面形状を台形にしてもよい。
【0039】
(実施の形態4)
(構成)
図10、図11を参照して、本発明に基づく実施の形態4におけるインクジェットヘッドの構成について説明する。図10に示すように、実施の形態1で説明したものと基本的に同じ構造であるが、凸部23の形状が異なる。このインクジェットヘッドでは、カバー部材2のマニホールド空間24b内の凸部23が、インクチャンネル長手方向に見て領域Bの全長に渡って延びているのではなく、領域Bのうち限られた部分だけにおいて突出している。図11には、このインクジェットヘッドをインクチャンネル長手方向に平行に切断した場合の断面図を示す。凸部23が領域Bのうち限られた部分だけで突出している結果、図11に示すように、領域Bのうち領域C1,C2においては、各インクチャンネルのマニホールド空間24bは互いに連通している。
【0040】
(作用・効果)
このインクジェットヘッドは、領域Bにおいて、チャンネル壁3の上面がカバー部材2の凸部23と接着固定されている部分があるので、チャンネル壁3の変形はある程度拘束され、図14、図15に示したような従来のインクジェットヘッドに比べれば、チャンネル壁3は、図20のような不所望の変形を抑えることができ、効率良くシェアモード変形をすることができる。
【0041】
マニホールド空間24bは領域C1,C2において連通しているため、マニホールド空間24bの体積を大きくすることができる。したがって、マニホールド空間24aからチャンネル溝4へのインクの供給を円滑に行なうことができる。特に、マニホールド空間24bにおいて、異なるインクチャンネル間でのインクの移動が自在となるので、各チャンネル溝4へのインクの均一な供給をより確実に行なうことができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、領域C1の長さを0.5mm、領域C2の長さを0.7mmとし、凸部23のチャンネル壁3と接着固定される長さを1.3mmとしたが、これらの長さはこれらの値に限定されるものではなく、適宜選択すればよい。
【0043】
また、本実施の形態では、カバー部材2の凸部23は、図11に示すように、インクチャンネルの長手方向に見て領域Bの中の1ヶ所のみとしているが、インクチャンネルの長手方向に見て領域Bの中で2ヶ所以上に凸部23を設けてもよい。すなわち、凸部23は、チャンネル壁3の長手方向に沿ってチャンネル壁3の上面と断続的に当接していればよい。また、凸部23の形状は、実施の形態3で説明したように、断面形状が台形となるようにしてもよい。
【0044】
なお、実施の形態1〜4では、従来のインクジェットヘッドのうち第2の構造のものを基にして本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、従来の第1の構造のインクジェットヘッドについても適用可能である。
【0045】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、凸部の先端とチャンネル壁の上面とが接合されていることにより、第2の領域としての領域Bにおいても、チャンネル壁の上端は拘束されることとなるため、第2の領域としての領域Bにおいてチャンネル壁に不所望な変形が生じるのを抑制することができる。その結果、効率良くシェアモードで変形することができ、駆動電圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に基づく実施の形態1におけるインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】 本発明に基づく実施の形態1におけるインクジェットヘッドの縦断面図である。
【図3】 本発明に基づく実施の形態1におけるインクジェットヘッドの横断面図である。
【図4】 本発明に基づく実施の形態2におけるインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図5】 本発明に基づく実施の形態2におけるインクジェットヘッドの横断面図である。
【図6】 本発明に基づく実施の形態3におけるインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図7】 本発明に基づく実施の形態3におけるインクジェットヘッドの横断面図である。
【図8】 本発明に基づく実施の形態3における凸部を形成する工程の第1の説明図である。
【図9】 本発明に基づく実施の形態3における凸部を形成する工程の第2の説明図である。
【図10】 本発明に基づく実施の形態4におけるインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図11】 本発明に基づく実施の形態4におけるインクジェットヘッドの横断面図である。
【図12】 従来技術に基づく第1の構造のインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図13】 従来技術に基づく第1の構造のインクジェットヘッドの縦断面図である。
【図14】 従来技術に基づく第2の構造のインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図15】 従来技術に基づく第2の構造のインクジェットヘッドの縦断面図である。
【図16】 インクチャンネルの領域Aにおける初期状態の断面図である。
【図17】 インクチャンネルの電極に印加する電圧を示すグラフである。
【図18】 インクチャンネルの領域Aにおける第1の変形状態を示す断面図である。
【図19】 インクチャンネルの領域Aにおける第2の変形状態を示す断面図である。
【図20】 従来技術に基づくインクジェットヘッドのインクチャンネルの領域Bにおける変形状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ベース部材、2 カバー部材、3 チャンネル壁、4 チャンネル溝、5電極、6 浅溝部、7 ボンディングワイヤ、8 外部電極、9 ノズル板、10 ノズル孔、11 フレキシブルプリント基板、20 マニホールド部材、21 インク供給口、23 凸部、24a,24b マニホールド空間、26 導電性樹脂、30 ドライレジストフィルム。
Claims (4)
- 圧電材料を含み前後方向に延在するチャンネル壁に隔てられるようにして複数のチャンネル溝を形成されたベース部材と、前記複数のチャンネル溝を覆うように前記ベース部材と接して配置された分極処理を施していない圧電体基板またはセラミック基板からなるカバー部材とを備え、
前記カバー部材における前記ベース部材に対向する側の面は、前記チャンネル溝の長手方向に関して、前側に位置して前記チャンネル壁の上面に接する第1の領域と、後ろ側に位置して前記チャンネル壁の上面と離隔するように凹部となっている第2の領域とを含み、
前記第1の領域のチャンネル溝方向の長さが全てのチャンネル溝において同一であり、
前記カバー部材の前記第2の領域においては、前記凹部の底から前記チャンネル壁の上面と接するように前記ベース部材に向かって突出する凸部が配置され、前記凸部の上面と前記チャンネル壁の上面とは互いに接着固定されており、
前記凸部は、前記ベース部材に配置されている前記チャンネル壁と同じピッチ、あるいは、前記ベース部材に配置されている前記チャンネル壁のうち1つおきに選択されたものと同じピッチで配置されている、インクジェットヘッド。 - 前記凸部は、根元から先端に向かうにつれて細くなる形状である、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記凸部は、前記チャンネル壁の長手方向に沿って前記チャンネル壁の上面と断続的に当接する、請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
- 前記凹部の底から見た前記凸部の高さが、前記チャンネル溝の底から見た前記チャンネル壁の高さの60%以上、200%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
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