JP3794733B2 - 高いインヘレント粘度を有するp−ジオキサノンのポリマー - Google Patents

高いインヘレント粘度を有するp−ジオキサノンのポリマー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の分野】
本発明は高いインヘレント粘度を示すp−ジオキサノンポリマー類に関する。より詳細には、本発明は、溶融加工して改良された機械的特性とインビボ残存率を示す外科用デバイスおよびフィラメントを生じさせるに適切な高いインヘレント粘度を示すp−ジオキサノンポリマー類に関する。
【0002】
【従来技術の説明】
p−ジオキサノンのポリマー類は、最初、米国特許第3,063,967号および3,063,968号の中でSchultz他によって報告された。Schultzは、ウッベローデ(Ubbelohde)粘度計を用い100ccのテトラクロロエタン当たり0.5gの濃度において25℃で測定した時1.98から2.83dL/gの固有粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を亜鉛、水銀およびカドミウムを基とする触媒を用いて製造することを記述している。最初、Schultzは、これらのポリマー類を被覆材および織物用繊維で用いることを提案していた。しかしながら、ポリ(p−ジオキサノン)は加水分解に非常に敏感なことから、このポリマーを一般的な織物用繊維または被覆材として用いるのは不適切である。
【0003】
ポリ(p−ジオキサノン)が加水分解に敏感なことでポリ(p−ジオキサノン)がユニークな利用性を有することを認識したのはDoddi他が初めてであった。米国特許第4,052,988号の中で、Doddiは、生吸収性を示す医学用デバイス、例えば外科用縫合糸、ピン、ねじおよび補強用プレートなどでポリ(p−ジオキサノン)を用いることを記述している。その結果として、ポリ(p−ジオキサノン)から得られる医学用デバイス、例えばステープルおよびクリップなど、並びに医学用デバイスの成形方法が、米国特許第4,490,326号および4,620,541号の中に記述された。これらの発明で用いられたポリ(p−ジオキサノン)ポリマーが示すインヘレント粘度は一般に約1.2dL/gから約2.26dL/gの範囲であった。
【0004】
商業的に入手可能なポリ(p−ジオキサノン)製縫合糸および縫合クリップは、約1.6から約1.92dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリマー類から製造されたものである。この範囲のインヘレント粘度を示すポリマー類は、通常の押し出しおよび射出成形を行うに充分なほど低い溶融粘度を示すことから、このようなポリマーの押し出しおよび成形を行って医学用デバイスを生じさせる方が便利である。より高いインヘレント粘度を示すポリマー類では、それの製造および加工が非常に困難であることから、このようなポリマー類は用いられていなかった。更に、そのポリマーが示すインヘレント粘度をもっと高くすることを正当化するに充分なほど増分的にポリマー特性が改良されるであろうと考える理由は存在していなかった。例えば、成形では、ポリ(p−ジオキサノン)ポリマーが示すゼロせん断溶融粘度はインヘレント粘度の約5乗高くなることから、高いインヘレント粘度を示すポリマー類を用いる場合、しばしば、より高い圧力で加工を行う必要があることで、より高価な成形機を用いる必要がある。
【0005】
ポリ(p−ジオキサノン)の医学用デバイスを製造する他の方法で、2.26dL/g以上のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)が用いられている方法は、ヨーロッパ特許出願公開第274 898号の中でHinsch他が開示した方法のみである。Hinschは、最初にp−ジオキサノンを約120から150℃の温度で重合させた後そのポリマーに溶媒を添加しそしてその結果として得られる混合物の凍結乾燥を行うことでフォームを生じさせると共に過剰量の未反応モノマーを除去することによる、連続気泡フォームの製造方法を記述している。しかしながら、Hinschが記述しているポリ(p−ジオキサノン)の製造方法では連続気泡の多孔質フォーム材料が生じ、これは、溶融加工してフィラメントまたは医学用デバイスを生じさせるには不適切である。
【0006】
上に記述したように、従来技術のポリ(p−ジオキサノン)製造方法では、一般に、2.26dL/g以下のインヘレント粘度を示すか或は医学用デバイスで用いるには不適切なポリマー材料がもたらされていた。Schultzが記述した方法では、医学グレードのポリ(p−ジオキサノン)にとって認可されない触媒が用いられており、従って、Schultzの方法は外科用デバイスで用いるには不適切である。Doddiが記述した方法で製造されるポリ(p−ジオキサノン)は、外科用デバイスを製造するに適切であるが、しかしながら、Doddiは、2.26dL/gより高いインヘレント粘度を示すポリマー類を製造することを記述していなかった。Hinschが開示した方法を用いると高分子量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーが得られるが、この方法で生じる材料の場合、その連続気泡フォームの中に空気が連行されることから、この生じる材料を組み込んで溶融加工の外科用デバイスを生じさせるのは容易でない。更に、2.26dL/gを越えるインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を製造するのは非常に困難である。所望の分子量を示すポリ(p−ジオキサノン)を得ることを確保するには、そのモノマーの純度を高くして一貫性を示すようにする必要があると共に、重合の開始で加えるべき開始剤も正確に決定する必要がある。従って、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)の製造で利用できる代替方法が求められている。
【0007】
驚くべきことに、我々は、縫合クリップ、縫合糸およびプレートなどの如き医学用デバイスに溶融加工可能な高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を見い出し、そしてこの医学用デバイスが有意に改良された特性、例えばより長いインビボ外科用品残存性を示すと共により高い強度とじん性を示すことを見い出した。
【0008】
【発明の要約】
本発明は、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.3dL/gから約8dL/gのインヘレント粘度を示し、かさ密度が約1.3g/ccから約1.45g/ccであり、そしてモノマー含有量が5重量%未満である、外科用デバイスおよび外科用フィラメントで用いるに適切なポリ(p−ジオキサノン)のポリマーを提供するものである。
【0009】
本発明の追加的態様では、ポリ(p−ジオキサノン)のインヘレント粘度が25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.3dL/gから約8dL/gの範囲でありそしてかさ密度が約1.3g/ccから約1.45g/ccであるポリ(p−ジオキサノン)の溶融加工デバイスを含む医学用デバイスを提供する。
【0010】
本発明の別の態様では、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.3dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)のフィラメントを含む改良された外科用フィラメントを提供する。
【0011】
本発明のさらなる態様では、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時約2.10dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を含んでいる外科用品を含む変形可能(deformable)外科用品を提供する。
【0012】
本発明の更に別の態様では、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)ポリマーを製造する方法を提供し、この方法は、p−ジオキサノンが少なくとも80モル%含まれておりそしてモノマーの残りがグリコリッド、ラクチド、ε−カプロラクトンおよびトリメチレンカーボネートから成る群から選択されるラクトンモノマーである、あるロットのモノマーの中に含まれている水、遊離酸および反応性不純物の量を測定した後、このモノマーを重合させるに適切な条件下、適切な反応容器の中で、このロットのモノマーの中に含まれている水、遊離酸および反応性不純物の存在量を考慮して2.3dL/g以上のインヘレント粘度を示すポリマーを含んでいるポリ(p−ジオキサノン)を生じさせるに充分な量で供給して、重合開始剤と一緒に有機錫触媒を存在させてこのロットのモノマーを重合させることを含んでいる。
【0013】
本発明のさらなる態様では、外科用フィラメントを製造する方法を提供し、この方法は、2.3dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を含んでいるフィラメントを約135℃から約165℃の範囲の温度で押し出してフィラメントを生じさせ、次に、上記フィラメントのクエンチング(quenching)を行った後、上記フィラメントの延伸を行うことで配向したフィラメントを生じさせることを含んでいる。
【0014】
本発明のさらなる追加的態様では、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から外科用成形デバイスを製造する方法を提供し、この方法は、2.1dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を約105℃から約140℃の範囲の温度に加熱することでこのポリ(p−ジオキサノン)を溶融させ、次に、上記溶融させたポリ(p−ジオキサノン)を1秒当たり0.70立方インチ以上の体積流量で35℃以上の温度に維持されている鋳型の中に注入し、上記溶融させたポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型の中に入れながらそれの形状を維持するに充分なほど冷却し、そしてその固化したポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型から取り出すことを含んでいる。
【0015】
【発明の詳細な記述】
高い分子量、即ち高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を用いる場合、これを用いて製造した外科用フィラメントは向上した強度を示し、そしてこのポリ(p−ジオキサノン)を用いて製造した製品は向上したじん性と長期のインビボ残存性を示す。本発明の目的で、高いインヘレント粘度を示す(HIV)ポリ(p−ジオキサノン)は、約2.10dL/g以上のインヘレント粘度を示す。約2.10dL/g以上のインヘレント粘度を示す医学用デバイスを得ようとする場合、溶融加工を行う前の初期樹脂が示すインヘレント粘度は2.10dL/gを越えている必要がある。通常、このポリマーのインヘレント粘度は、溶融加工を行っている間に起こるポリマー劣化が原因で、この溶融を加工を行っている間に低下する。従って、このポリ(p−ジオキサノン)が示す初期インヘレント粘度は、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時、2.30dL/gから約8dL/gの範囲、好適には2.4dL/gから約8dL/gの範囲、より好適には3.25dL/gから約8dL/gの範囲でなくてはならず、任意に、約4.6dL/gから約8dL/gの範囲であってもよい。現在のところ、医学用デバイスに関して測定した時にポリ(p−ジオキサノン)が示すインヘレント粘度は、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時、2.10dL/gから約8dL/gの範囲、好適には2.3dL/gから約8dL/gの範囲、より好適には2.4dL/gから約8dL/g、更により好適には約3.25dL/gから約8dL/gの範囲であるのが好適であり、任意に、約4.6dL/gから約8dL/gの範囲であってもよい。外科用フィラメントでは、このフィラメントを用いて測定した時にポリ(p−ジオキサノン)が示すインヘレント粘度は約2.3dL/gから約3.5dL/gの範囲、好適には2.4dL/gから3.5dL/gの範囲であるのが特に好適である。以後、特に明記しない限り、示す粘度は全て25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定した粘度である。
【0016】
本発明の目的で、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)ポリマーはまた、別のラクトンモノマー(例えばラクチド、グリコリッド、ε−カプロラクトンまたはトリメチレンカーボネートなど)を20モル%以下の量で含んでいるポリ(p−ジオキサノン)のコポリマー類も包含している。しかしながら、現在のところ好適なポリマーはポリ(p−ジオキサノン)ホモポリマーである。
【0017】
図1に示すように、インヘレント粘度(分子量)を高くするに従ってポリ(p−ジオキサノン)の特性が有意に変化する。インヘレント粘度に対する降伏歪みのグラフは、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)が永久歪みを受ける時の伸び値は、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定した時約2.1dL/g未満の初期インヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から成形された物品に比べてずっと高い値の時であることを示している。成形後の測定で約2.1dL/gのインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)の成形品はまた、有意に改良された降伏歪み値を示す。従って、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を用いて製造した医学用デバイスは、有意に高い可逆性を示す変形を受ける性質を示す、即ちこれらは、永久歪みを受けるに先立って、より高い伸びまたは伸長を示す性質を有している。ヒンジ付き外科用クリップの成形を行う場合、これに高い降伏歪みを持たせることで、単一サイズのクリップを変形させて幅広い範囲の外科縫合糸直径に適合させることを可能にするのが特に望ましい。従って、外科医は、各サイズの縫合糸に合わせて特定のクリップを選択する代わりに、数多くのサイズの縫合糸に合う1種類のクリップを用いることができることになる。更に、数種の縫合糸サイズに合う1つのサイズの縫合クリップを用いると、クリップを製造してクリップの在庫を維持するに関連した病院および工場両方のコストを低くすることができる。
【0018】
更に、図3は、21.1dL/g以上の初期インヘレント粘度(溶融加工する前に測定した粘度)を示すポリ(p−ジオキサノン)ポリマーから製造した成形品が改良された降伏歪みじん性を有することを示している。図4は、溶融加工して試験品を生じさせた後のポリ(p−ジオキサノン)が示すインヘレント粘度を基にした、同様な降伏歪みじん性曲線を示している。成形後に測定したインヘレント粘度が約2.1dL/gであるポリ(p−ジオキサノン)の成形品もまた改良された降伏歪みじん性値を示す。溶融加工して外科用品、例えば外科用クリップ、ピン、ねじなどを生じさせる場合、高い降伏歪みじん性を示す材料を用いるのが特に望ましい。高い降伏歪みじん性を示す材料で作られた外科用品は、変形を生じることなく高い荷重に耐える能力を有している。このことから、例えば縫合クリップの場合、これに、より高い縫合糸保持力を生み出させることが可能になるであろう。
【0019】
図5は、約2.07dL/g以上のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から成形したヒンジが備わっている外科用デバイスは、1.91dL/gのインヘレント粘度を示す成形品に比較して、驚くべきほど改良されたインビボ残存率を表すことを示している。図5は、縫合クリップの製造で用いるポリ(p−ジオキサノン)のインヘレント粘度を高くするにつれてその縫合クリップが示すインビボ残存率が有意に改良されることを示している。この縫合クリップの中に縫合糸を固定し、この縫合クリップを動物に移植した後、移植して14日後にそのクリップを回収してその評価を行うことにより、この縫合クリップが示すインビボ残存率の測定を行った。この縫合クリップを回収した後、そのラッチがまだ閉じられていてそのヒンジが壊れていない場合、そのようなクリップを無傷と評価した。残存したクリップの全数をその評価したクリップの全数で割った値に100%を掛けることによって、残存パーセントを計算した。
【0020】
同様に、フィラメントの製造で用いるポリ(p−ジオキサノン)ポリマーのインヘレント粘度を高めることによって(25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定して約1.72dL/gのインヘレント粘度から約2.30dL/gのインヘレント粘度へ)、また、外科用フィラメントが示す特性を有意に改良することができる。実施例IVに示すように、最終インヘレント粘度が約2.3dL/gのポリ(p−ジオキサノン)ポリマーから製造したフィラメントが示す特性に関して、押し出しおよび延伸方法が最適でない場合でも、インヘレント粘度が約1.72dL/gのポリマーから製造した繊維に比較して、直接引張り強度(straight tensile strength)が31.5%改良されることが示された。引張り強度に破壊伸びの平方根を掛けた値として定義するフィラメントじん性が45%向上した。このフィラメントが示す伸びおよび結び目強度もまた各々約20%向上した。
【0021】
2.1dL/g以上のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を製造する時に用いる方法は、重合反応に存在させる鎖成長開始剤の量を調節できる方法でなくてはならない。これは、以前には、そのモノマーの純度(反応性を示さない希釈剤を除く)が例えば99.7%以上であることを指定することによって達成されていた。しかしながら、純度が99.7%以上のモノマーを商業的に製造するのは極めて高価である。更に、このモノマーは親水性を示すことから、精製後モノマーへの水混入を回避するのもまた困難である。高いインヘレント粘度を示す(HIV)ポリ(p−ジオキサノン)を製造するには高純度のp−ジオキサノンモノマーを用いて始めなくてはならないが、HIVポリ(p−ジオキサノン)を再現可能様式で製造するには他の要因も考慮に入れる必要がある。
【0022】
このポリ(p−ジオキサノン)のインヘレント粘度はこのポリマーの分子量分布に直接関係している。重合を行っている間に開始するポリマー鎖の数がこのポリ(p−ジオキサノン)の分子量を大きく調節する。本発明者は科学理論で範囲を限定することを望むものでないが、存在している分子量調節剤の全モルに対して異なったモルのポリマー鎖が生じると考えている。従って、バッチサイズが与えられている場合、開始させる、従って生じさせる鎖の数を多くすればするほど、その結果として得られるポリマーの平均分子量が相当して小さくなる。従って、反応を調節して正確な分子量、即ちインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を製造しようとする場合、必要な分子量調節剤量を正確に決定する必要がある。
【0023】
p−ジオキサノンモノマーの量と純度両方を含む関係を用いて、その用いる分子量調節剤の量を予め決定する。より詳細には、個別のp−ジオキサノン試験重合で、このp−ジオキサノンモノマーの純度に関する尺度である「インヘレント粘度に関するモノマー試験」を実施する。このインヘレント粘度に関するモノマー試験を行う結果として、高度に精製されたp−ジオキサノンモノマーの中に通常まだ含まれている遊離酸、水および雑多な不純物の量が分かる。実施例Iに概略を示す操作または同様なパラ−ジオキサノンモノマー試験を用いる場合、そのインヘレント粘度は、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定して約2dL/gから約8dL/gの範囲でなくてはならない。このレベルの純度を示すモノマー類を用いると高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)ポリマー類を製造することができる。本発明の高インヘレント粘度ポリマー類を製造するに好適な、p−ジオキサノン試験インヘレント粘度の範囲は、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定して2.1dL/gから4.8dL/gであり、3.0dL/gから4.4dL/gの範囲が最も好適である。低いインヘレント粘度値を示すモノマーロットは、本発明の高インヘレント粘度ポリマーを製造するに不適切である。
【0024】
実践有機化学者によく知られている方法を用いてモノマーの精製を達成することができる。適切な溶媒からの再結晶または蒸留が特に有効な方法である。
【0025】
本発明者は科学理論で範囲を限定することを望むものでないが、全分子量調節剤に対する全モノマーのモル比(Ro)と、分子量に影響を与え得る添加剤および不純物との間の関係は下記の通りであると考える:
(1) 1/Ro=1/Rmwca+1/RW+1/Rfa+1/Rm
ここで、
o=全分子量調節剤(意図的に加えた分子量調節剤と不純物の両方を含む)に対する全モノマーのモル比、
mwca=意図的に加えた分子量調節剤に対するモノマーのモル比、
w=モノマーの中に含まれている水に対するモノマーのモル比、
fa=モノマーの中に含まれている遊離酸に対するモノマーのモル比、
m=反応性を示す雑多な不純物に対するモノマーのモル比(取り扱いで発生する不純物などを表す)。
【0026】
意図的に加える分子量調節剤を存在させないで行うp−ジオキサノンモノマーの試験重合では、実際的な意味で、遊離酸、水、雑多な不純物、材料取り扱いなどの影響が一緒になって重合して高分子量を生じる個々のモノマーバッチが有する能力に対する相関関係を示すことができる、1つの測定可能数が得られる。
【0027】
従って、
iv=遊離酸、水、雑多な反応性不純物などを一緒にしたモル数でモノマーのモル数を割った値であるとして定義するモル比。
【0028】
(2) 1/Riv=1/Rw+1/Rfa+1/Rm
方程式1と2を一緒にすることによって下記が得られる:
1/Ro=1/Rmwca+1/Riv
与えられた条件設定下で製造したポリ(p−ジオキサノン)が示すインヘレント粘度(IV)は、下記の形態で、分子量調節剤全体のモル比に対して相関関係を示すことを、我々は経験的に見い出した:
(3) IV=A*Ro a
ここで、
aとAは、方程式IV=A*RO aにおける定数である。この定数Aおよびaの値は、重合条件に従って変化することになる。
【0029】
IV=ポリ(p−ジオキサノン)ポリマーのインヘレント粘度、そして
o=モノマーのモルに対する分子量調節剤全体のモル比。
【0030】
同様に、試験重合のインヘレント粘度は、一緒にした不純物のモルに対するモノマーのモルに関係している。
【0031】
(4) IVm=K*Riv k
ivを解く目的で再整理すると、
(5) Riv=B*IVm b
ここで、
bとBは、方程式Riv=B*IVm bの定数であり、ここで、
IVm=ポリ(p−ジオキサノン)試験重合のインヘレント粘度。
【0032】
置き換えを行い、ポリ(p−ジオキサノン)ポリマーの特性、分子量調節剤、およびp−ジオキサノンモノマー試験重合のインヘレント粘度の関係を方程式(5)に入れると下記が得られる:
(6) (A/IV)(1/a)=1/Rmwca+1/(B*IVm b
定数a、A、bおよびBはおおよそ下記の通りである:
a=0.61−0.71
A=0.015−0.058
b=3.4−7.5
B=3.7−76
実施例Iに記述した試験重合を用いた測定において、これらの定数は下記の通りであった:a=0.66、A=0.03、b=4.8およびB=25.8。これらの値を方程式(6)に挿入してRmwcaを解くと下記が得られる:
(7) 1/Rmwca=0.005/IV1.51−1/(25.8*IVm 4.8
p−ジオキサノンモノマー1キログラムに対するドデカノールのグラム数(DDf)で表すと下記の通りである:
(8) DDf=9.19/IV1.51−70.8/IVm 4.8
p−ジオキサノンモノマーの純度(このモノマーが示す試験インヘレント粘度に関する如き)は、比較的狭いIV範囲内で、高いインヘレント粘度を示すポリマーを生じさせるに必要な分子量調節剤全体量に有意な影響を与える。このモノマーの純度レベルおよびその中に含まれている不純物が全モノマーロットで正確に同じでないとしたならば、不純物に関する補正を行わない限り、高いインヘレント粘度を示すポリマーを再現可能様式で製造するのは不可能であろう。従って、モノマーに含まれている不純物の補正を行わないと、同じ条件下で重合させた場合、ポリ(p−ジオキサノン)のインヘレント粘度が幅広く変化することになるであろう。
【0033】
上に記述した如く製造した高分子量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーを用いると、これの処理を行うことでモノマー含有量を溶融加工して外科用デバイスを生じさせるに適切な5重量%未満、好適には4重量%未満にすることができる。ポリ(p−ジオキサノン)の合成で利用できる1つの方法は、高温、好適には約100℃から約150℃の範囲の温度の乾燥した不活性雰囲気中、開始剤(例えばドデカノールまたは他のモノもしくは二官能アルカノールなど)と触媒(例えば錫触媒、即ちカプリル酸錫(II)またはカプリル酸第一錫など)の存在下で2−オキソ−1,4−ジオキサン、即ちp−ジオキサノンの開環重合を約2から約10時間行うことを含んでいる。約100℃から約120℃の範囲の温度でこの重合を実施するのが今のところ好適である、と言うのは、このような温度範囲にすると重合反応速度と最終ポリマー内に存在している残存モノマー含有量との間で最適なバランスが得られるからである。その後、この方法で生じさせたポリマーの真空乾燥を行うか、或は排気付き2軸押出し機を用い、このポリマー内に存在している未反応モノマーを除去するに適切な条件下でこのポリマーの押し出しを行うことにより、変換率を高めそして/または全ての未反応モノマーを除去するさらなる処理を行うことも可能である。本分野の技術者は適切な押し出し条件を容易に決定することができるであろう。
【0034】
また、触媒(例えばカプリル酸第一錫など)と開始剤(例えばドデカノールまたは同様なモノもしくは二官能アルカノールなど)を容器に仕込んだ後、この反応容器を約90から約140℃の範囲の温度に約30分から約5時間の範囲の間加熱することによって、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)ポリマーを製造することも可能である。次に、この反応から回収したポリマーを約60から約100℃の範囲の温度の乾燥した不活性雰囲気下の通常の大きさを有する容器の中に約2から約7日間、好適には3から5日間の範囲の期間入れることで、それの重合を低温で完結させてもよい。本分野の技術者は、時間と温度を変化させることでこの反応条件を最適にすることができることを認識するであろう。重合温度が与えられている場合、反応時間を長くすればするほど反応マスを平衡モノマー含有量に益々近付かせることが可能になる。真空乾燥または同様な方法を用いてその生じさせたポリマー類のさらなる処理を行うことにより、残存モノマー含有量を低くすることができる。また、この方法で生じさせたポリマー類を用いる時まで、これらを真空下または不活性雰囲気下に貯蔵すべきである。
【0035】
上に示したように、これらに限定するものでないがグリコリッド、ラクチド、ε−カプロラクトンおよびトリメチレンカーボネートを含む他のラクトンモノマー類を20モル%以下の量で用いてp−ジオキサノンの共重合を行うことも可能である。この共重合では、上に示した他のラクトンモノマーが示すモノマー特性と同様に上の方程式(1)に記述した如きp−ジオキサノンモノマー特性を考慮に入れることによって、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を生じさせることができる。
【0036】
上に記述したポリマー類を溶融加工することで、これらに限定するものでないが、フィルム、膜、テープ、コード、ピン(即ち、押し出し、オレイントルージョン(oreintrusion)または機械加工などで生じさせた整形外科用ピンなど)、クランプ、ねじ、プレート(即ち上顎用人工器官、一時的頭蓋用プレートなど)、クリップ(縫合クリップおよび結糸クリップなど)、ステープル、ホック、ボタン、スナップ、骨用プラグ、骨用アンカー、骨用代替物、軟骨用代替物、管、ガーゼ、メッシュおよびフィラメント(即ちモノフィラメント、マルチフィラメント、2成分組みひもおよび不均質組みひも、結さつ糸、例えば縫合糸、人工腱およびじん帯など)から成る群から選択される外科用デバイスを含む外科用デバイスを生じさせることができる。上に記述したポリマー類から成形される特に有効なデバイスには、ヒンジ構成要素、例えばEthicon,Inc.に譲渡された米国特許第4,620,541号および5,160,339号に記述されている如きヒンジ構成要素と、2個のファスナー片から得られるレシーバー構成要素、例えば米国特許第4,805,617号、4,889,119号および4,890,613号の中に記述されている如きレシーバー構成要素とが備わっている外科用クリップが含まれる(これらの5つの特許は全部引用することによって本明細書に組み入れられる)。ポリ(p−ジオキサノン)ポリマー類の溶融加工を行って外科用デバイスを生じさせるに適切な方法は本技術分野でよく知られている。米国特許第4,052,988号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)には、繊維の溶融押し出しを行い、配向させた後、アニーリングを行うことで縫合糸を生じさせる1つの適切な方法が記述されている。同様に、米国特許第4,490,326号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)には、ポリ(p−ジオキサノン)の成形デバイスおよび上記デバイスの成形およびアニーリング方法が記述されている。
【0037】
高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から作られる外科用フィラメントの製造は、一般に、生吸収性を示すモノフィラメントに通常の製造方法を用いることで実施可能であるが、以下に示す指針に従ってこのフィラメントを製造するのが現在のところ好適である。
【0038】
用いるべき押し出し条件を決定するにおいて、本発明のポリマー類が示す溶融粘度が重要である。これらのポリマー類が示す溶融粘度は温度とせん断速度に依存している。一般に、約110℃から約190℃の範囲、好適には約135℃から約165℃の範囲、最も好適には約140℃から約165℃の範囲の温度でこれらのポリマー類の押し出しを行うことができる。溶融粘度は温度を高くすればするほど低くなり得るが、温度を高くすると劣化が生じることで、実際的な意味で使用できる温度は制限される。単軸押出し機または多軸押出し機を使用することができ、更に溶融ポンプを用いることでその溶融物生産量の正確さを高めてその繊維直径の変動を低くすることができる。
【0039】
温度を調節した空気クエンチングを受けさせた後、この押し出し物の巻取るか、或は液状媒体クエンチング浴に通した後、これを巻取ることができる。この押し出し物を押し出して直接上記液体浴の中に入れるか、或はその押出し機の面とその液体浴の表面との間にエアーギャップを設けてもよい。約0.25から約1.25インチの範囲のエアーギャップを設けるのが現在のところ好適である。例えば、水クエンチング浴を通してこの押し出し物を巻取ることができる。この浴の温度を約20℃から約35℃の範囲にするのが現在のところ好適である。この押し出し速度と同様にクエンチング温度も、その押し出し物の特性、特にそれの幾何形状、従って最終的に、それが示す延伸性およびこのようにして製造した外科用フィラメントの特性に影響を与え得る。
【0040】
この押し出したフィラメントを部分的に結晶化させることも可能である。この押し出し物の延伸を行うに先立ってこれをある一定期間室温に放置するか、或はバッチ式方法またはインライン方法でこの押し出し物のアニーリングを高温で行うことによって、この結晶化を達成することができる。この押し出し物の部分結晶化を行うに必要な時間は処理温度の関数である。室温でこの押し出し物の部分結晶化を行う場合、数時間かかる可能性があるが一般に24時間で充分であることを確認した。高温でこの押し出し物の結晶化を行う場合、要する時間が短くなる。また、その繊維の延伸を行う前にこれを加熱されているゴデットの上に通すインライン方法を用いるか、或は繊維製造の実施で通常のインラインアニーリング用オーブンに通すことによることでも、この押し出し物の結晶化度を高めることができる。
【0041】
その後、1段階延伸過程または多段階延伸過程でこの押し出し物に延伸を受けさせることにより、分子配向を達成すると共に改良された引張り特性を達成する。この全延伸比は約20Xの如く高い延伸比であってもよいが、一般に、この全延伸比は約4Xから7.5Xの範囲でなくてはならず、4Xから5.5Xの間の全延伸比が好適である。
【0042】
このフィラメントの延伸は数多くの方法で実施可能であるが、以下に示す方法が現在のところ好適である。加熱されていない数個のゴデットの上に上記押し出し物を通すことで、これに部分延伸を受けさせる。次に、この部分延伸を受けさせたフィラメントをインラインオーブンに通した後、追加的ゴデットの上に通すことで、この延伸過程を完結させる。この押し出し物が示す特徴、そのオーブンの長さ、この押し出し物の線形速度に応じて、このオーブンの温度を変化させることができる。このオーブンを約190℃から約400℃の範囲の温度に維持するのが現在のところ好適である。この押し出し物の加熱では、ゴデットと同様にオーブンを用いることができる。この第一段階の延伸では、その延伸比を変化させることができる。一般に、この第一段階の延伸比は約3Xから約20Xの範囲であり、第一段階の延伸比を3Xから6Xの範囲にするのが好適であり、第一段階の延伸比を約4Xから約5Xの範囲にするのが最も好適である。
【0043】
次に、第二段階の延伸操作で、その部分延伸を受けさせた繊維に延伸を受けさせることができる。この第二段階における延伸温度は、第一段階で用いた延伸温度よりも一般に高い。この第二段階延伸の延伸比は約0.75Xから約3Xの範囲であってもよく、この第二延伸比は好適には約1.01Xから約1.5Xの比率であり、ここで、この第一と第二延伸の全延伸比は20Xを越えない。上に示したように、この延伸過程全段階の全延伸比を約4Xから7.5Xの範囲にするのが現在のところ好適である。2段階の延伸過程で得られる配向したフィラメントは、良好な直線および結び目引張り強度を示す。
【0044】
この延伸過程で用いるゴデットの速度は可変であるが、一般に1分当たり約10フィートから1分当たり約200フィートの範囲になるであろう。例えば、2段階延伸でゴデットを3台用いるとしたならば、第一ゴデットを1分当たり約20から約30フィートの範囲にし、第二ゴデットを1分当たり約80から約120フィートの範囲にし、そして第三ゴデットを1分当たり約110から約145フィートの範囲にすべきである。
【0045】
その結果として得られる繊維をスプールの上に巻き取ってもよいか、或はそれのリラックス処理を若干行うことによって取り扱い特性をより良好にしてもよい。これは、第二ロールの線形速度を第一ロールの線形速度よりもゆっくりにした1組のゴデットロールの上にこの繊維を通すことによって容易に達成される。このゴデットロールを加熱するか、或はこれらのロールの間に位置させたインラインオーブンにその繊維を通すことによって、一般に、このリラックス処理過程を高温で実施する。
【0046】
その配向させたフィラメントにアニーリング処理を受けさせることによって、このフィラメントの寸法安定性を向上させることができる。この処理は、その延伸を受けさせたフィラメントを拘束して収縮を制御しながらこのフィラメントを約40℃から約100℃の温度、最も好適には約60℃から90℃の温度に加熱することから成る処理であってもよい。インライン工程でか或はラック過程を用いて便利にアニーリングを行うことができる。ラックアニーリング過程では、そのフィラメントを最初張力下に置くか、或は拘束を受けさせる前にそれを約20%に及んで収縮させておいてもよい。温度およびフィラメントの特徴に応じて数分間から数日間もしくはそれ以上に渡って、このフィラメントをそのアニーリング温度に維持する。本発明のポリマー類では一般に約24時間以下のアニーリングで満足される結果が得られる。各繊維に関して簡単な実験を行うことによって、最大の繊維インビボ強度保持および寸法安定性を得るに最適なアニーリング時間および温度を容易に決定することができる。また、本発明の範囲を制限することなく、本明細書に示す紡糸条件以外の条件を用いることも可能である。これらのフィラメントのアニーリングを行った後、通常、殺菌を行い、そして1本もしくは2本にして針を取り付ける。
【0047】
上記ポリマー類から製造したポリ(p−ジオキサノン)縫合糸は、2.30dL/gから約3.5dL/gの範囲、好適には約2.4dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すべきである。これらの縫合糸は、約80,000psiから約400,000psiの範囲、好適には95,000psiから約400,000psiの範囲の直線引張り強度を示すべきである。これらのポリマー類から製造した縫合糸の結び目強度は、少なくとも約45,000psi、好適には約45,000psiから約100,000psiの範囲でなくてはならない。
【0048】
本発明のHIVポリ(p−ジオキサノン)ポリマー類の鋳込みおよび成形もまた数多くの成形技術を用いて実施可能である。便利には、このポリマーを溶融させた後、鋳型の充填を行うに必要な最小油圧を用いて1秒当たり約0.39から約0.47立方インチの体積流量(これは、直径が0.125インチのノズルが備わっている直径が0.71インチ(18mm)のスクリュー付きEngel成形機を用いる場合、1秒当たり約1から1.2インチの注入速度に相当している)で注入することによって、ポリ(p−ジオキサノン)の射出成形を行う。別のポリ(p−ジオキサノン)射出成形方法が、1984年12月25日付けでBeroff他に発行された米国特許第4,490,326号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)の中に記述されている。Beroffは、鋳型温度を35℃以下の温度に維持することによって結さつクリップが示すインビボ性能の有意な改良を達成することができることを見い出した。しかしながら、我々は、鋳型温度を35℃を越える温度に維持しながらそのポリマーの体積流量を高めるとHIVポリ(p−ジオキサノン)の射出成形が本質的に改良され得ることを見い出した。HIVポリ(p−ジオキサノン)の射出成形で用いる鋳型温度を35℃以上、好適には36℃から約45℃の範囲、最も好適には約36℃から約40℃の範囲にするのが現在のところ好適である。更に、通常に用いられている体積流量である1秒当たり0.47立方インチから、1秒当たり少なくとも0.71立方インチ(これは、直径が0.125インチのノズルが備わっている直径が0.71インチ(18mm)のスクリュー付きEngel成形機を用いる場合、1秒当たり少なくとも1.8インチの注入流量に相当している)にまで高めると成形部品の特性が改良されることを見い出した。この体積流量は、好適には1秒当たり約0.71立方インチから1秒当たり約2.37立方インチ(これは、直径が0.125インチのノズルが備わっている直径が0.71インチ(18mm)のスクリュー付きEngel成形機を用いる場合、1秒当たり約1.8インチから1秒当たり約6インチの範囲の注入速度に相当している)の範囲であり、そしてこの体積流量は、最も好適には1秒当たり約0.79立方インチから1秒当たり約1.58立方インチ(これは、直径が0.125インチのノズルが備わっている直径が0.71インチ(18mm)のスクリュー付きEngel成形機を用いる場合、1秒当たり約2インチから1秒当たり約4インチの範囲の注入速度に相当している)の範囲である。この射出成形機に備わっているノズルの所の見掛け壁せん断速度は、好適には1秒当たり約3,700から1秒当たり12,300の範囲、最も好適には1秒当たり約4,100から1秒当たり約8,200の範囲である。
【0049】
図式的フローシート図6を参照して、この方法の第一段階は、ポリマーをそのポリマーの溶融温度以上の温度に加熱する段階である(ボックス1)。ポリ(p−ジオキサノン)を溶融させるに適切な温度範囲は約105℃から約140℃の範囲、好適には約110℃から約115℃の範囲である。このポリ(p−ジオキサノン)を溶融させる目的で用いる特定の装置は、それが充分な温度コントロールを与える限り、本発明にとって決定的でない。1つの適切な射出成形装置には、加熱されているバレルの内側に油圧ラムと往復スクリューが備わっている。この装置のバレル温度をそのポリマーが示す溶融温度に近い温度に維持することで、そのバレル由来の熱とそのスクリューが示すせん断作用由来の熱を一緒にして、そのポリマーを溶融させた後これを適切なノズルに通して鋳型の中に注入するに充分な熱を得ることができる。ポリマー類を溶融させてそのポリマー類を所望の温度範囲内に維持するに適切な他の技術および装置もまた使用可能であり、これらには、これらに限定するものでないが、プランジャー型成形装置、個別のアキュムレーターデバイスが備わっている射出成形装置などが含まれる。
【0050】
この使用する鋳型は、空洞部が1つ備わっている鋳型か或は空洞部が多数備わっている鋳型であってもよい。しかしながら、Beroff他が記述したポリ(p−ジオキサノン)成形方法とは異なり、HIVポリ(p−ジオキサノン)を用いる場合、この鋳型の温度を35℃以上、好適には36℃から約45℃の範囲、最も好適には約36℃から約40℃の範囲に維持するのが好適である(ボックス2)。
【0051】
加圧下、好適には1平方インチ当たり約500から約1650ポンドの範囲の圧力下でこのポリマーをその鋳型の中に注入すべきである(ボックス3)。この注入圧力は、その鋳型に備わっている全ての空洞を満たすに必要な最小油圧よりも30psi高い圧力でなくてはならず、好適にはその鋳型に備わっている全ての空洞を満たすに必要な最小油圧よりも約50から約75psi高い範囲の圧力である。このポリマーをその鋳型の中に注入した後、その鋳型の中に入っているポリマーに圧力をかけてそれを維持することによって、それを固めてその所望形状を維持すべきである(ボックス4)。この保持圧力を、成形サイクルの保持段階の間に維持した初期圧力の約50%から約85%の範囲(約250から約1400psiの範囲)にするのが現在のところ好適である。この保持サイクルの間に維持する圧力は、好適にはその初期圧力の約65%から約85%の範囲であり、最も好適にはその初期圧力の約75%である。このポリマーの上にかける圧力を少なくとも3秒間、好適には少なくとも4秒間維持すべきである。適切な冷却時間である75から120秒間置いた後(ボックス5)、その成形されたデバイスをその鋳型から取り出すことができる。この冷却時間を好適には90から105秒間にすべきである。このような成形方法は、成形するデバイスの質量が5グラム未満、好適には2グラム未満である小型の外科用デバイス、例えばステープルおよびクリップなどの成形を行うに特によく適合している。
【0052】
成形を行った後、ポリ(p−ジオキサノン)製成形デバイスのアニーリングおよび殺菌を行ってもよい。これらの成形デバイスのアニーリングを行うと、しばしば、このデバイスの安定化または特性の改良がもたらされる。ポリ(p−ジオキサノン)を含んでいる成形デバイスのアニーリングを行うに適切な技術が、1986年11月4日付けでGertzman他に発行された米国特許第4,620,541号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)の中に記述されている。本分野の技術者に知られている適切な如何なる手段を用いることでも殺菌を達成することができる。
【0053】
本発明のさらなる説明を行う目的で以下の非制限的実施例を示す。
【0054】
【実施例】
実施例I
この実施例では、p−ジオキサノンモノマーが高分子量ポリ(p−ジオキサノン)を製造するに適切であるか否かを試験する方法を説明する。
【0055】
仕込みを行っている間に溢れ出る固体を収容するための膨らんだ首部分で始まり、長さが約30cmで内径が14mmの首部が備わっており、内部容積が約25mLである球形のガラス球で終わる、奇麗にして乾燥させたガラス製アンプルに、奇麗にして乾燥させた磁気回転子を入れた後、試験すべきp−ジオキサノンモノマーを20.0g、そしてトルエン溶液中0.0331Mのカプリル酸第一錫を0.039mL仕込む。移す場合、一般に、これらの材料を大気水分に触れさせないように乾燥窒素のグローブボックス内でこれらを取り扱い、そしてこのアンプルに備わっている首部の所に堆積物が残らないように注意を払う。
【0056】
このアンプルを真空多岐管に連結し、乾燥窒素を用いたパージ洗浄を行うことで、存在している少量のトルエンを除去する。このアンプルの排気40から45分間行って100ミクロンの圧力にする。この期間の後、5インチHgに相当する圧力になるように乾燥窒素で圧力調整を行い、そして適切なトーチを用いた炎でその首部の上部領域を潰して閉じることによって、このアンプルを密封する。この仕込みを行ったアンプルを、予め120℃に加熱したシリコン油浴の中に浸漬し、適切な磁気撹拌機の上に位置させた。上記回転子/撹拌機システムのお陰で混合がほとんど直ちに始まり、ポリマーが生じるにつれて、その溶融マスの粘度が、それを磁気回転子で有効に撹拌するにはあまりにも高くなり過ぎたことで、この撹拌を停止する。120℃で20時間加熱した後、このアンプルをそのオイルバスから注意深く取り出し、奇麗な布で拭いてシリコン油をその表面から除去し、そして放置して室温にまで冷却する。
【0057】
このアンプルを液体窒素の中に浸漬した後、典型的にはハンマーを用いてそのガラスを壊して除去することによって、この反応マス、即ち生じたポリマーと残存している未反応のモノマーとの混合物を単離する。ねじ付きドリルとビットを用い、1秒当たり約1回転の低速で、上記マスの中心部に約1/2インチの深さまで穴を開けることによって、この反応マスのサンプリングを行う。この「試験卵(test egg)」の中心部分から取り出した片が示すインヘレント粘度をヘキサフルオロイソプロパノールの中で測定する。
【0058】
実施例II
この実施例では、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を製造する方法を記述する。
【0059】
高い粘性を示すポリマー類を取り扱うことができる反応槽を用いた1段階重合でか、或は低分子量のプレポリマーを第二段階の固体状態重合を行うための硬化用トレーに移して最大変換率を達成する2段階重合で、ポリ(p−ジオキサノン)ポリマーを製造することができる。
【0060】
組成
2段階から成るプレポリマー/固体状態重合を行うに適するように、本明細書に記述する実施例の調合を行う。この実施例では、平均試験インヘレント粘度が3.31dL/gのp−ジオキサノンモノマーを182.2モル(18.584kg)用いて、直径が0.0260インチの改良ASTM筒状ダイスが備わっている標準ASTM装置を用い6,600gの重りを加えて150℃で測定した時0.035g/10分のメルトインデックスを示すと共に2.61dL/gの目標インヘレント粘度を示す高IVのポリ(p−ジオキサノン)ポリマーを製造した。この重合に加える分子量調節剤の量は、1モルのMWCA当たりのモノマーの全モル数を基準にして見積もったMWCAのモル数と、このモノマーの中に不純物として含まれているMWCAのモル数との間の差である。所望の特性を示すポリマーを得るには、上の方程式(3)を基準にして、一緒にした分子量調節剤1モル当たりに必要なモノマーの全モル比は849モルであった。試験重合で3.31dL/gを示したp−ジオキサノンモノマーに関する、その一緒にした不純物量は、不純物としてMWCAの0.0001208モルを占めると見積った(不純物型の低分子量調節剤1モル当たり8279モルのモノマー)。方程式2に従って、この反応に加える実際の分子量調節剤の量は、モノマー1モル当たり0.0010571モルの分子量調節剤であると決定した(即ち分子量調節剤1モル当たり946モルのモノマー)。固体状態の重合では、触媒1モル当たり約10,000から約100,000モルのモノマーから成る範囲でカプリル酸第一錫触媒を用いることができる。本明細書に記述する実施例では、0.331モル規定のカプリル酸第一錫触媒溶液を、カプリル酸第一錫1モル当たりのモノマーが25,000モルになるような比率で用いた。最適な触媒レベルは染料レベルおよび染料の種類、並びに重合温度の関数である。この触媒の比率をあまりにも低くすると、重合が極めて遅くなり、その結果として、モノマーからポリマーへの完全な変換がもたらされない。触媒の比率があまりにも高すぎると、溶融加工で予め加熱している間にそのポリマーの劣化が生じる可能性がある。
【0061】
操作
予め加熱した(65℃)15ガロンのステンレス鋼製反応槽に、窒素パージしながら、182.2モルのp−ジオキサノンモノマー(試験IV=3.31dL/g)の約半分を仕込んだ。この反応槽の予熱有り無しで重合を生じさせることができる。このモノマーの一部をD&Cバイオレット#2染料(18.6g、即ち仕込んだモノマーの0.1重量%)と混合した後、上記反応槽に加えた。次に、上記p−ジオキサノンモノマーの残りをこの反応槽に加えた。方程式(8)を用いて、加えるべきドデカノールの量を計算した。この計算した量のドデカノール(35.9g)、即ち意図的に加える分子量調節剤を、上記反応槽に加える時もまた、窒素パージ下でその添加を行った。次に、この反応槽にカプリル酸第一錫触媒を、水分が入るのを防止する目的で再び窒素パージ下で加えた(トルエン中0.331モル規定溶液を22.04mL)。この反応槽を密封した。この反応槽内の圧力を下げて1000ミクロンまたはそれ以下にし、その状態を20分間維持した後、窒素を導入することによって0−2psig過圧にした。この排気/窒素パージ段階を全体で3回繰り返した。ジャケットの中を循環しているオイルの温度を高くして110℃にすることによって、重合を開始させた。このバッチ温度が90℃に到達した時点で(約15分以内)、そのオイルの温度を下げて95℃にした。この反応槽の底に位置しているバルブを通して溶融マスの一部を取り出してNo.2スピンドル使用B型モデルDV−II粘度計でポリマー粘度を測定することで、ポリマー粘度を監視した。100から500cpの粘度に到達した時点で、この反応槽の内容物全体を窒素下で硬化用トレーの中に排出させた。硬化用トレーは密封可能な容器から成っており、これは、重合マスと反応してそれを不適切にすることのない、120℃で変形もしくは劣化を生じない金属、プラスチックまたは他の適切な材料で出来ている。本明細書で用いるトレーは直径が9インチの総形アルミニウムトレーである。テフロンまたはテフロンで被覆されている金属製の蓋を用いて、硬化を行っている間閉じる貯蔵容器を得る。
【0062】
この硬化用トレーを窒素ブランケット下で密封して、80℃に設定されている窒素パージオーブンの中に入れた。我々は、固体状態の後硬化では約65から95℃の反応温度を用いるのが適切であり、70から90℃の温度が好適であり、そして最も好適な温度は約80℃であることを見い出した。この硬化温度に応じて約2日から7日間、その反応マスを加熱することができる。我々は、80℃では3日間から5日間の硬化時間が適切であることを見い出した。本実施例ではポリマーの硬化を80℃で4日間行った。
【0063】
この硬化させたポリマーをそのオーブンから取り出し、室温に冷却した後、その硬化用トレーから取り出した。このポリマーのサンプリングを行うことによってその特性を測定し、重量測定を行い、プラスチック製バッグの中に入れた後、次の段階、即ちサイズを小さくする段階で必要になるまで、冷凍庫に移して貯蔵した。この冷えた脆いポリマーをその冷凍庫貯蔵から取り出した後直ちに、Cumberland粉砕機の中に入れてそのポリマーのサイズを小さくした。所望の粒子サイズを得る目的で3/16インチの粉砕機用スクリーンを用いた。次に、通常のサイズ分離装置を用い、この粉砕したポリマーをふるいにかけることによって、ポリマーの微細片(18メッシュ未満)および過剰サイズ片(1/4インチ以上)を除去した。次に、この粉砕してふるいにかけたポリマーを真空タンブルドライヤーに移して、少量存在している未反応モノマーの量を低くした。この乾燥サイクルは、サイズを小さくしている間に吸収された水分を除去するための加熱なし10時間真空段階、未反応モノマーを除去するための32時間加熱真空段階に続いて、まだ真空をかけながら行う、このポリマーを室温に近付けるための冷却段階から成っている。揮発物除去(devolatilization)サイクルの最後にドライヤーを用いて200ミクロン以下の圧力に相当する真空度を達成した。次に、この乾燥させたポリマーを真空貯蔵容器に移して、処理を待っている間真空下に置く。ドライヤーから取り出している間に試験サンプルを採取した。
【0064】
その結果として得られるポリマーのインヘレント粘度は2.53であり、そのメルトインデックスは0.043g/10分であった。DSCにより(第一加熱)20℃/分の走査速度で測定した時の融点は119℃であると決定した。
【0065】
実施例III
実施例IIに記述した方法に従って製造した、数種の異なるインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を用いて、縫合糸結び用クリップの成形を行った。これらの結び用クリップをインビボで試験することで得られるデータは、ポリ(p−ジオキサノン)の分子量を高くすると結び用クリップのインビボ残存性が有意に改良され得ることを示している。
【0066】
それぞれ1.91dL/g、2.07dL/gおよび2.35dL/g(これらは全て25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定したインヘレント粘度である)のインヘレント粘度を示す3グレードのポリ(p−ジオキサノン)を、ヨーロッパ特許出願公開第519,703号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている縫合糸結び用クリップデザインに類似したデザインのヒンジとラッチの両方が備わっている成形縫合糸結び用クリップに関して評価した。この3グレードのポリ(p−ジオキサノン)を104−112℃の温度で溶融させた。空洞が4つ備わっている鋳型に合う直径が0.125インチのノズルと、直径が0.71インチ(18mm)のスクリューが備わっている、30トンのEngel OM361−002成形機を用いて、その溶融させたポリマーの射出成形を行った。625−1125psiのブースト圧力で、この溶融させたポリマーを注入した。その鋳型を39−53℃の温度に維持した。75から105秒後にその成形された部品を取り出した。
【0067】
次に、この縫合糸結び用クリップを2/0被覆Vicryl(商標)縫合糸に固定して、ラットに移植した。14日後、この結び用クリップをそのラットから注意深く取り出してそれの評価を行った。これらのクリップを評価して、そのラッチが閉じたままになていてそのヒンジが無傷のままであるか否かを決定した。これらのクリップをそのラットから取り出した時点で、そのラッチがその縫合糸上でまだ完全に閉じたままでありそしてそのヒンジが壊れていない場合、クリップがインビボで残存したと見なした。この試験で得られるデータを図5にグラフで示す。
【0068】
図5のデータは、インヘレント粘度が1.91dL/gのものを用いた場合、縫合糸結び用クリップで90%の残存率を示すサンプルは試験した40個のサンプル群の中で16個のみであることを明確に示している。インヘレント粘度を高くして2.07dL/gにすると、その結果として、縫合糸結び用クリップで90%の残存率を示すサンプルは、試験した36個のサンプル群の中で25個であった。しかしながら、インヘレント粘度を高くして2.35dL/gにすると、その結果として、90%の残存率を示すサンプルは、試験した32個のサンプル群の全部である32個のサンプルであり、そして100%の残存率を示すサンプルは、試験した32個のサンプル群の中で24個のサンプルであった。
【0069】
従って、縫合糸用クリップの成形で用いるポリ(p−ジオキサノン)のインヘレント粘度を高くすることによって(1.91dL/gから2.07dL/gへ)、このクリップが示すインビボ残存性を有意に高くすることができる。
【0070】
実施例IV
この実施例では、1.71dL/gの初期インヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)縫合糸と2.281dL/gの初期インヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)縫合糸とが示す特性を比較する。下記の条件下で上記縫合糸の製造を行った:
【0071】
【表1】
Figure 0003794733
【0072】
通常の試験操作を用いることで、本発明の縫合糸が示す特徴的特性を容易に測定することができる。本明細書で示す引張り特性(即ち直線および結び目引張り強度、並びに伸び)は、INSTRON引張り試験機で測定した特性である。この直線引張り、結び目引張りおよび破壊伸びを測定する目的で用いた設定は下記の通りであった:
【0073】
【表2】
Figure 0003794733
【0074】
破壊力を縫合糸の初期断面積で割ることによって、直線引張り強度を計算する。サンプルの応力−歪み曲線から破壊伸びを直接読み取る。
【0075】
個別の試験で、縫合糸が示す結び目引張り強度を測定する。外科医が行う結び目はこま結びであり、ここでは、最初にループの中に自由末端を1回ではなく2回通した後、その末端をぴんと張ることで、複合結び目の上に単一結び目を重ねる。右端の上に左端を置くように始めることで最初の結び目を生じさせた後、充分な張力をかけて、その結び目をしっかりと結ぶ。
【0076】
この結び目がクランプとクランプのほぼ中間部に来るようにしてこの試験片をINSTRON引張り試験機に位置させる。破壊に必要な力をこの繊維の初期断面積で割ることによって、この結び目引張り強度の計算を行う。KPSI(これはPSI X 103を意味している)としてこの引張り強度値を報告する。
【0077】
【表3】
Figure 0003794733
【0078】
表IIのデータは、縫合糸でポリ(P−ジオキサノン)の分子量を高くすると直線強度、結び目強度および伸びが非常に有意に変化することを示している。縫合糸の直線強度が31.5パーセント向上しており、そして縫合糸の結び目強度および伸びが20パーセント以上高くなっていた。また、この繊維のじん性(引張り強度に破壊伸びの平方根を掛けた値)も45パーセント以上高くなっていた。
【0079】
高いインヘレント粘度を示すフィラメントでは、押し出しおよび延伸方法が最適でない時でも例外的な特性改良が得られたことを認識すべきである。従って、常規実験を用いて、フィラメントを押し出す温度およびそれを配向させる延伸比を最適にすると、高いインヘレント粘度を示すポリ(P−ジオキサノン)から作られるフィラメントの特性を更に改良することができると期待される。
【0080】
実施例V
この実施例では、ポリ(P−ジオキサノン)を射出成形して引張り用棒材である試験品を生じさせた後これを用いて行う機械試験操作を記述する。この機械試験で得られるデータを図1−4に示す。
【0081】
異なるインヘレント粘度を示す3ロットのポリ(P−ジオキサノン)ポリマーを成形して、機械試験用の引張り用棒材である試験品(ドッグボーン)を生じさせた。樹脂を乾燥させたままにして置く目的で窒素パージをホッパーに取り付けた、一般目的のスクリューが備わっている15mmサイズの可塑化用シリンダー付きArburgモデル170−CMD/E射出成形機を用いて、1.68dL/gのインヘレント粘度を示すポリ(P−ジオキサノン)樹脂を成形して引張り用棒材である試験品を生じさせた。供給ゾーン、転移ゾーンおよび圧縮ゾーンの温度をそれぞれ121℃、143℃および143℃にする一方、ノズル温度と鋳型温度をそれぞれ129℃と40℃にした。12cc/秒の最大注入速度を用いた。受けさせる注入圧力を2495バールにした。各サイクルで、圧力下の全保持時間を11秒にし、この鋳型を閉じて保持する間を40秒にし、そして典型的なサイクル時間を58秒にした。
【0082】
樹脂を乾燥させたままにして置く目的で窒素パージをホッパーに取り付けた、一般目的のスクリューが備わっている18mmサイズの可塑化用シリンダー付きArburgモデル170−90−200射出成形機を用いて、それぞれ2.13および2.43dL/gのインヘレント粘度を示す2種のポリ(P−ジオキサノン)樹脂を成形して引張り用棒材である試験品(ドッグボーン)を生じさせた。特定の機械設定を含む成形条件を以下の表IVに示す。
【0083】
【表4】
Figure 0003794733
【0084】
高分子量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマー類は、一般に、相当する中間的分子量のポリマー類よりも高い溶融粘度を生じ、その結果として、加工圧力がより高くなる。加工温度を用いて高い溶融粘度を相殺するのが通常であるが、温度を高くすると劣化度合が高くなることから、これには実際的な制限がある。ある種の射出成形機は、高分子のポリ(p−ジオキサノン)樹脂を成形するに必要な圧力を生じる能力を有していない。従って、本主題発明のポリマーが与え得る向上した特性から充分な利点を得るには、上記樹脂を加工するに必要な圧力を生じる能力を有する機械を用いる必要がある。
【0085】
50パーセントの最大歪み仕様を示す10mmゲージ長の自己同定(self−identifying)Instron歪みゲージエクステンシオメーターが備わっているモデル4201 Instron引張り試験機を用いて、その射出成形したドッグボーン試験品が示す機械的特性を測定した。クロスヘッド速度が1分当たり0.5インチになるようにしてこの機械を運転した。その成形したドッグボーン試験品の全体長は3.26インチであり、その厚さは0.040インチであった。このドッグボーンに備わっている2つのタブ部分各々の幅は0.375インチでその長さは1.00インチであり、その均一な中心ゲージ部分の長さは0.600で幅は0.125インチであった(そして厚さは0.040インチであった)。そのゲージ部分に接する半径が0.500インチになるように、この2つのタブ部分を上記中心ゲージ部分につなげている転移部分を定義した。
【0086】
実施例VI
実施例IIIのデータは、ポリ(P−ジオキサノン)の分子量を高くすると縫合糸結び用クリップのインビボ残存性が有意に改良されることを明らかに示している。この実施例では、縫合糸用クリップの射出成形を特定的に変えると更にインビボ残存性および引張り特性の有意な改良がもたらされることを示す。
【0087】
それぞれ1.87から1.92dL/g(25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定)のインヘレント粘度を示すポリ(ジオキサノン)ポリマー類を用いて、ヒンジとラッチの両方が備わっている縫合結び用クリップを製造した。104から107℃の溶融温度でこれらのポリマー類を溶融させた後、空洞が4つ備わっている鋳型に合う直径が0.125インチのノズルと直径が0.71インチ(18mm)のスクリューが備わっている30トンのEngel成形機を用い、表Vの加工条件Iに挙げる条件下でその溶融させたポリマー類の射出成形を行った。その注入圧力は、その鋳型を充填するに必要な最小油圧であった。1秒当たり1.0から1.2インチの注入速度は、ノズルの所の見掛け壁せん断速度が1秒当たり2100から2500であるとして、1秒当たり0.39から0.47立方インチの体積流量に相当している。
【0088】
【表5】
Figure 0003794733
【0089】
次に、この縫合糸結び用クリップを3/0被覆Vicryl(商標)縫合糸に固定または締め付けた後、ラットに移植した。10日後、この結び用クリップをそのラットから注意深く取り出してそれの評価を行った。これらのクリップを評価して、そのラッチが閉じたままになっていてそのヒンジが無傷のままであるか否かを決定した。これらのクリップをそのラットから取り出した時点で、そのラッチがその縫合糸上でまだ完全に閉じたままでありそしてそのヒンジが壊れていない場合、クリップがインビボで残存したと見なした。ランダムに選んだ10個のクリップを10日間試験した。それぞれ1.87から1.92dL/gのインヘレント粘度を示すポリマーから製造したクリップでは、全てのクリップが成功裏に10日間残存した。
【0090】
2.18dL/g(25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定)のインヘレント粘度を示すポリ(ジオキサノン)ポリマーを用いて、ヒンジとラッチの両方が備わっている縫合結び用クリップを射出成形技術で製造した。この用いた成形機は、4個の内側空洞と4個の外側空洞から成る8個の空洞が備わっている鋳型に合う直径が0.125インチのノズルと直径が0.71インチ(18mm)のスクリューが備わっている30トンのEngel成形機であった。結び用クリップの成形で用いた条件は、表Vの加工条件IIとして記述した条件である。このポリマーのインヘレント粘度を、加工条件Iに従うクリップの製造で用いたポリマーのインヘレント粘度よりも高くしたが、射出成形条件は同様であった。供給ゾーンにおけるバレル設定値を106℃にしてそのポリマーを溶融させ、そしてそのバレルに備わっている他の3つのゾーンおよびノズルにおける温度設定を106から108℃で変化させたが、個々の実験いずれでも同じにした。鋳型温度を38から44℃で変化させた。注入圧力を、この鋳型を満たすに必要な最小油圧よりも50psi高くした。1秒当たり1.2インチの注入速度は、ノズルの所の見掛け壁せん断速度が1秒当たり2500であるとして、1秒当たり0.47立方インチの体積流量に相当している。使用した他の成形条件を表Vの加工条件IIの中に挙げる。
【0091】
次に、この縫合糸結び用クリップを2/0被覆Vicryl(商標)縫合糸に固定または締め付けた後、ラットに移植した。この2/0被覆Vicryl(商標)は、上に示した工程条件Iの結び用クリップを試験した時に用いた3/0縫合糸よりも大きい直径を有していた。14日後および16日後、この結び用クリップをそのラットから注意深く取り出してそれの評価を行った。これらのクリップを評価して、そのラッチが閉じたままになっていてそのヒンジが無傷のままであるか否かを決定した。これらのクリップをそのラットから取り出した時点で、このラッチがその縫合糸上でまだ完全に閉じたままでありそしてそのヒンジが壊れていない場合、クリップがインビボで残存したと見なした。また、これらのクリップを目で検査して、この移植から取り出したクリップに生じた亀裂の相対的レベルを決定した。ランダムに選んだ40個のクリップ(1個の空洞当たり5個)を14日間および16日間のインビボ残存に関して試験した。
【0092】
表VIのデータは、内側空洞および外側空洞が示す引張り特性と16日後のインビボ残存性を示している。表VIの内側および外側は、それぞれ4個の内側空洞および4個の外側空洞から得られた引張り特性の平均値を表しており、空洞1個当たりに10個のクリップを試験した。「ヒンジ」は、縫合糸結び用クリップに備わっている2つのビームをつかむ取り付け具が備わっているInstron引張り試験機を用いた引張り試験でその縫合結び用クリップが示す最大引張り荷重(ポンドで表す)を表している。「伸び」は、引張り試験でその縫合結び用クリップが示すヒンジ領域における破壊伸び値(インチで表す)を表している。「エネルギー」は、引張り試験における破壊エネルギー(ポンド−インチで表す)を表しており、引張り試験で得られる荷重−変位(load−displacement)曲線の下の面積としてこれを測定する。外側空洞から得られる縫合糸結び用クリップは、内側空洞から得られる縫合糸結び用クリップよりも低い特性を示すことは明らかである。14日目では、3グループの縫合糸結び用クリップが100%の残存を示し、1つのグループが100%未満の残存を示した。16日目では、2つのグループが100%の残存を示し、そして2つのグループが100%未満の残存を示した。外側空洞で成形したクリップでは全部にインビボ破壊が観察された。一般に、14日に比較して16日の方が亀裂のレベルがより顕著であった。この亀裂評価では、加工条件を同じにすると外側空洞から得られるクリップの方が内側空洞から得られるクリップに比較して多くの亀裂を有することが示された。加工条件IIで得られる結び用クリップでは14日および16日目にインビボ破壊が更にいくらか見られるが、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を加工条件IIで用いた方が、低いインヘレントを示すポリマーを加工条件Iで用いるよりも、縫合糸の直径が大きいことで大きな歪みがかかったとしても、より長いインビボ期間に渡ってクリップが残存することも明らかである。
【0093】
【表6】
Figure 0003794733
【0094】
2.18dL/g(25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で測定)のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)ポリマーを用いて、ヒンジとラッチの両方が備わっている縫合糸結び用クリップを射出成形技術で製造したが、ここでは、4個の内側空洞と4個の外側空洞から成る8個の空洞が備わっている鋳型に合う直径が0.125インチのノズルと直径が0.71インチ(18mm)のスクリューが備わっている30トンのEngel成形機を用いた。供給ゾーンにおけるバレル設定値を106℃にしてそのポリマーを溶融させ、そしてそのバレルに備わっている他の3つのゾーンおよびノズルにおける温度設定を110から114℃で変化させたが、個々の実験いずれでも同じにした。鋳型温度を36から40℃で変化させた。1秒当たり2.4インチの注入速度は、体積流量が1秒当たり0.94立方インチでありそしてノズルの所の見掛け壁せん断速度が1秒当たり4900であることに相当している。その注入圧力を、この鋳型を充填するに必要な最小油圧より50psi高くした。他の条件を表Vの加工条件IIIの中に明記する。
【0095】
次に、この縫合糸結び用クリップを2/0被覆Vicryl(商標)縫合糸に固定または締め付けた後、ラットに移植した。16日後、この結び用クリップをそのラットから注意深く取り出してそれの評価を行った。これらのクリップを評価して、そのラッチが閉じたままになっていてそのヒンジが無傷のままであるか否かを決定した。これらのクリップをそのラットから取り出した時点で、このラッチがその縫合糸上でまだ完全に閉じたままでありそしてそのヒンジが壊れていない場合、クリップがインビボで残存したと見なした。また、これらのクリップを目で検査して、この移植から取り出したクリップに生じた亀裂の相対的レベルを決定した。ランダムに選んだ40個のクリップ(1個の空洞当たり5個)を16日間のインビボ残存に関して試験した。
【0096】
表VIIのデータは、内側空洞および外側空洞が示す引張り特性と16日後のインビボ残存性を示している。外側空洞から得られる縫合糸結び用クリップは、内側空洞から得られる縫合糸結び用クリップよりも低い破壊伸びおよび低い破壊エネルギーを示すが、ヒンジ強度に関しては内側空洞と外側空洞との間でほとんど同じであることは明らかである。しかしながら、表VIIに示す引張り特性は表VIに示す引張り特性よりも有意に高かった。内側空洞または外側空洞から得られるクリップに全くインビボ破壊が見られなかった。この亀裂評価は、加工条件を同じにすると外側空洞から得られるクリップと内側空洞から得られるクリップとの間で亀裂に有意な差がないことを示しており、これは、注入速度を高くしそして鋳型温度を低くしたことによるものである。表VIIのインビボ結果は、表VIに報告した結果に比較して有意な改良を示していた。
【0097】
【表7】
Figure 0003794733
【0098】
体積注入速度をより高くしそして鋳型温度をより低くするとこの高いインヘレント粘度を示す縫合糸結び用クリップの特性とインビボ性能が有意に改良されることを認識すべきである。
【0099】
本発明の特徴および態様は以下のとおりである。
【0100】
1. ポリ(p−ジオキサノン)が示すインヘレント粘度が25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.3dL/gから約8dL/gの範囲でありそしてポリ(p−ジオキサノン)に関するかさ密度が約1.3g/ccから約1.45g/ccの範囲であるポリ(p−ジオキサノン)を含んでいる外科用デバイスを含む吸収性を示す医学用デバイス。
【0101】
2. 該外科用デバイスをフィルム、膜、テープ、コード、ピン、クランプ、ねじ、プレート、クリップ、ステープル、ホック、ボタン、スナップ、骨用プラグ、骨用アンカー、骨用代替物、軟骨用代替物、管、ガーゼおよびメッシュから成る群から選択する第1項の吸収性を示す医学用デバイス。
【0102】
3. 該インヘレント粘度が25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時約2.4dL/gから約8dL/gの範囲である第2項の吸収性を示す医学用デバイス。
【0103】
4. 該外科用デバイスがクリップである第2項の吸収性を示す医学用デバイス。
【0104】
5. 25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.3dL/gから約8dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)のフィラメントを含む外科用フィラメント。
【0105】
6. 該ポリ(p−ジオキサノン)の外科用フィラメントが25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.3dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示す第5項の外科用フィラメント。
【0106】
7. 該外科用フィラメントを配向させる第6項の外科用フィラメント。
【0107】
8. 約4Xから約7.5Xの範囲で延伸を行うことによって該外科用フィラメントを配向させる第7項の外科用フィラメント。
【0108】
9. 該外科用フィラメントを腱、じん帯および縫合糸から成る群から選択する第7項の外科用フィラメント。
【0109】
10. 該フィラメントが縫合糸である第7項の外科用フィラメント。
【0110】
11. 該縫合糸をモノフィラメント、撚糸、マルチフィラメント、2成分組みひもおよび不均質組みひもから成る群から選択する第10項の縫合糸。
【0111】
12. 該縫合糸を被覆する第11項の縫合糸。
【0112】
13. 該インヘレント粘度が25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.4dL/gから約3.5dL/gの範囲である第10項の縫合糸。
【0113】
14. 該縫合糸がモノフィラメントである第10項の縫合糸。
【0114】
15. 該縫合糸が約95,000から約400,000psiの範囲の直線引張り強度を示す第10項の縫合糸。
【0115】
16. 該縫合糸が少なくとも45,000psiの結び目強度を示す第10項の縫合糸。
【0116】
17. 25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.3dL/gから約8dL/gのインヘレント粘度を示し、かさ密度が約1.3g/ccから約1.45g/ccであり、そして残存モノマー含有量が5重量%未満である、外科用デバイスおよび外科用フィラメントで用いるに適切なポリ(p−ジオキサノン)のポリマー。
【0117】
18. 該インヘレント粘度が25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時約2.4dL/gから約8dL/gの範囲である第17項のポリマー。
【0118】
19. 該インヘレント粘度が25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時約3.25dL/gから約8dL/gの範囲である第18項のポリマー。
【0119】
20. a)p−ジオキサノンが少なくとも80モル%含まれておりそしてモノマーの残りがグリコリッド、ラクチド、ε−カプロラクトンおよびトリメチレンカーボネートから成る群から選択されるラクトンモノマーである、あるロットのモノマーの中に含まれている水、遊離酸および反応性不純物の量を測定した後、
b)このモノマーを重合させるに適切な条件下、適切な反応容器の中で、このモノマーの中に含まれている反応性不純物の存在量を考慮して、2.3dL/g以上のインヘレント粘度を示すポリマーを含んでいるポリ(p−ジオキサノン)を生じさせるに充分な量で重合開始剤と一緒に有機錫触媒を存在させて上記ロットのモノマーを重合させる、
ことを含む、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)ポリマーの製造方法。
【0120】
21. 該モノマーの試験重合を行うことによってこのモノマーの中に含まれている水、遊離酸および反応性不純物の量を測定する第20項の方法。
【0121】
22. 該ロットのモノマー重合に添加する重合開始剤の量を下記の式:
1/Rmwca=(A/IV)(1/a)−1/(B*IVm b
[式中、aは約0.61から約0.71の範囲であり、Aは約0.015から約0.058の範囲であり、bは約3.4から約7.5の範囲であり、そしてBは約3.7から約76の範囲である]
を用いて決定する第21項の方法。
【0122】
23. 該モノマーを有機錫触媒1モル当たり約10,000から約100,000モルの範囲で用いてこのモノマーの試験重合を約60から約140℃の範囲の温度で約2から7日間の範囲の期間実施する第22項の方法。
【0123】
24. 25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時約2.10dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を含んでいる変形可能外科用品を含む変形可能外科用品。
【0124】
25. 該変形可能外科用品が縫合クリップである第24項の変形可能外科用品。
【0125】
26. 該クリップ内の該ポリ(p−ジオキサノン)が示すインヘレント粘度が25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中0.1g/dLの濃度で試験した時2.30dL/gから約3.5dL/gの範囲である第25項の変形可能外科用品。
【0126】
27. a)約2.30dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を含んでいるフィラメントを約135℃から約165℃の温度範囲で押し出してフィラメントを生じさせ、次に、
b)上記フィラメントのクエンチングを行い、次に、
c)上記フィラメントの延伸を行うことで配向したフィラメントを生じさせる、
ことを含む、外科用フィラメントの製造方法。
【0127】
28. 該配向したフィラメントのアニーリングを行う第27項の方法。
【0128】
29. 約4Xから約7.5Xの範囲で該フィラメントの延伸を行う第27項の方法。
【0129】
30. 約20℃から約30℃の範囲の温度に維持されている液体浴の中で該フィラメントのクエンチングを行う第27項の方法。
【0130】
31. 空気を用いて該フィラメントのクエンチングを行う第27項の方法。
【0131】
32. 約4Xから約5.5Xの範囲で該フィラメントの延伸を行う第31項の方法。
【0132】
33. 多段階延伸方法を用いて該フィラメントを配向させる第27項の方法。
【0133】
34. 該多段階延伸方法が第一段階延伸工程と第二段階延伸工程を含んでいる第27項の方法。
【0134】
35. 該フィラメントの全延伸比が4Xから7.5Xである第34項の方法。
【0135】
36. 該延伸工程の第一段階で該フィラメントの延伸を約3Xから約6Xの範囲で行いそして第二段階で該フィラメントの延伸を約0.75Xから約3Xの範囲で行う第35項の方法。
【0136】
37. 該第二段階で該フィラメントの延伸を約1.01Xから約1.5Xの範囲で行う第36項の方法。
【0137】
38. a)約2.10dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を約105℃から約140℃の範囲の温度に加熱することで溶融したポリ(p−ジオキサノン)を生じさせ、次に、
b)上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を1秒当たり0.70立方インチ以上の体積流量で35℃以上の温度に維持されている鋳型の中に注入し、
c)上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型の中に入れながらそれの形状を維持するに充分なほど冷却し、それによって固化したポリ(p−ジオキサノン)デバイスを生じさせ、そして
d)上記固化したポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型から取り出す、
ことを含む、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から外科用成形デバイスを製造する方法。
【0138】
39. 該溶融したポリ(p−ジオキサノン)を1秒当たり約0.71立方インチから1秒当たり約2.37立方インチの範囲の体積流量で該鋳型の中に注入する第38項の方法。
【0139】
40. 該溶融したポリ(p−ジオキサノン)の冷却を行う時、この溶融したポリ(p−ジオキサノン)を固めて所望形状を維持する目的で、その鋳型の中に入っているその溶融したポリ(p−ジオキサノン)に圧力をかけてそれを維持する第38項の方法。
【0140】
41. 該鋳型の温度が36℃から約45℃の範囲である第38項の方法。
【0141】
42. 該ポリ(p−ジオキサノン)を約110℃から約140℃の範囲の温度に加熱する第38項の方法。
【0142】
43. 該溶融したポリ(p−ジオキサノン)を約500psiから約1,650psiの範囲の圧力で該鋳型の中に注入する第40項の方法。
【0143】
44. ノズルの所における見掛け壁せん断速度が1秒当たり約3,700から1秒当たり約12,300の範囲になるようにノズルを通して該溶融したポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型の中に注入する第38項の方法。
【0144】
45. 該溶融したポリ(p−ジオキサノン)を固めている間、その注入圧力の少なくとも50%をその溶融したポリ(p−ジオキサノン)の上にかけてそれを維持する第44項の方法。
【0145】
46. a)約2.10dL/gから約3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を約105℃から約140℃の範囲の温度に加熱することで溶融したポリ(p−ジオキサノン)を生じさせ、次に、
b)上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を1秒当たり約0.71立方インチから1秒当たり約2.37立方インチの範囲の体積流量で35℃以上の温度に維持されている鋳型の中に注入し、
c)上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を約200psiから約1400psiの範囲の圧力下で該鋳型の中に入れながらそれの形状を維持するに充分なほど上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を固めた後、その溶融したポリ(p−ジオキサノン)の冷却を行うことによって、固化したポリ(p−ジオキサノン)デバイスを生じさせ、そして
d)上記固化したポリ(p−ジオキサノン)デバイスを該鋳型から取り出す、
ことを含む、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から外科用成形デバイスを製造する方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験品を成形する元のポリマー類が示すインヘレント粘度に対する、4つのポリ(p−ジオキサノン)試験品から得られた降伏歪み値を、グラフで示している。この4つの試験品の3つは、示した温度の不活性雰囲気下で8時間アニーリングを受けさせた(annealed)試験品である。4番目の試験品はアニーリングを受けさせなかった試験品(生)である。
【図2】成形後の試験品に含まれているポリマー類が示すインヘレント粘度に対する、4つのポリ(p−ジオキサノン)試験品から得られた降伏歪みを、グラフで示している。この4つの試験品の3つは、示した温度の不活性雰囲気下で8時間アニーリングを受けさせた試験品である。4番目の試験品はアニーリングを受けさせなかった試験品(生)である。
【図3】試験品を成形する元のポリマー類が示すインヘレント粘度に対する、4つのポリ(p−ジオキサノン)試験品から得られた降伏歪みじん性を、グラフで示している。せん断応力にせん断歪みの平方根を掛けることによって降伏歪みじん性の計算を行った。この4つの試験品の3つは、示した温度の不活性雰囲気下で8時間アニーリングを受けさせた試験品である。4番目の試験品はアニーリングを受けさせなかった試験品(生)である。
【図4】成形後の試験品に含まれているポリマー類が示すインヘレント粘度に対する、4つのポリ(p−ジオキサノン)試験品から得られた降伏歪みじん性を、グラフで示している。せん断応力にせん断歪みの平方根を掛けることによって降伏歪みじん性の計算を行った。この4つの試験品の3つは、示した温度の不活性雰囲気下で8時間アニーリングを受けさせた試験品である。4番目の試験品はアニーリングを受けさせなかった試験品(生)である。
【図5】低いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から成形した試験品に比較して、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から成形した試験品が改良されたインビボ残存性を示すことを、グラフで示している。
【図6】高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)の成形方法における種々の段階を示す図式的流れ図である。

Claims (9)

  1. a) 2.10dL/gから3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を105℃から140℃の範囲の温度に加熱することで溶融したポリ(p−ジオキサノン)を生じさせ、次に、
    b) 上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を1秒当たり0.70立方インチ(11.47立方センチ)以上の体積流量で35℃以上の温度に維持されている鋳型の中に注入し、
    c) 上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型の中に入れて冷却し、それによって固化したポリ(p−ジオキサノン)デバイスを生じさせ、そして
    d) 上記固化したポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型から取り出す、
    ことを含む、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から外科用成形デバイスを製造する方法。
  2. 上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を1秒当たり0.71立方インチ(11.63立方センチ)から1秒当たり2.37立方インチ(38.84立方センチ)の範囲の体積流量で、鋳型の中に注入する請求項1記載の方法。
  3. 上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を鋳型の中に充填し、圧力を維持しながら所望の形状を保つように冷却する請求項1記載の方法。
  4. 該成型温度が36℃から45℃の範囲である請求項1記載の方法。
  5. 上記ポリ(p−ジオキサノン)を110℃から140℃の温度に加熱する請求項1記載の方法。
  6. 上記溶融ポリ(p−ジオキサノン)を、500から1650psi(35.16から116.01kg/cm 2 の圧力で鋳型の中へ注入する請求項3記載の方法。
  7. 上記溶融ポリ(p−ジオキサノン)を、ノズルの所における見掛け壁せん断速度が1秒当たり3700から1秒当たり12300でノズルを通して鋳型の中に注入する請求項1記載の方法。
  8. 上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を固めている間、その注入圧力の少なくとも50%を溶融したポリ(p−ジオキサノン)の上に維持する請求項7に記載の方法。
  9. a) 2.10dL/gから3.5dL/gの範囲のインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)を105℃から140℃の範囲の温度に加熱することで溶融したポリ(p−ジオキサノン)を生じさせ、次に、
    b) 上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を1秒当たり0.71立方インチ(11.63立方センチ)から1秒当たり2.37立方インチ(38.84立方センチ)の範囲の体積流量で35℃以上の温度に維持されている鋳型の中に注入し、
    c) 上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を200psi(14.06kg/cm 2 から1400psi(98.43kg/cm 2 の範囲の圧力下で該鋳型の中に入れながらそれの形状を維持するに充分なほど上記溶融したポリ(p−ジオキサノン)を固めた後、その溶融したポリ(p−ジオキサノン)の冷却を行うことによって、固化したポリ(p−ジオキサノン)デバイスを生じさせ、そして
    d) 上記固化したポリ(p−ジオキサノン)を該鋳型から取り出す、
    ことを含む、高いインヘレント粘度を示すポリ(p−ジオキサノン)から外科用成形デバイスを製造する方法。
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